特許第6735145号(P6735145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735145
(24)【登録日】2020年7月15日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】毛髪洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20200728BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20200728BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   A61K8/36
   A61K8/362
   A61K8/39
   A61Q5/02
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-92589(P2016-92589)
(22)【出願日】2016年5月2日
(65)【公開番号】特開2016-210774(P2016-210774A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2019年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-95669(P2015-95669)
(32)【優先日】2015年5月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】井上 将来
(72)【発明者】
【氏名】平野 祐司
(72)【発明者】
【氏名】江連 美佳子
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−001512(JP,A)
【文献】 特開2010−235523(JP,A)
【文献】 特開2000−327540(JP,A)
【文献】 特開2007−161605(JP,A)
【文献】 特開2001−131592(JP,A)
【文献】 特開平09−194333(JP,A)
【文献】 特開2015−027977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C)および水を含み、前記成分(B)に対する成分(A)の質量割合((A)/(B))が、0.3以上50以下である、毛髪洗浄剤。
(A)下記一般式(1)で表されるエーテルカルボン酸塩型アニオン界面活性剤 0.5質量%以上12質量%以下
1O−(CH2−CH2O)s−CH2COOX1 (1)
(上記一般式(1)中、R1は炭素数10以上18以下のアルキル基またはアルケニル基を示し、X1はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンまたは塩基性アミノ酸由来のカチオンを示し、sは質量平均で0.5以上10以下の数を示す。)
(B)コハク酸またはその塩 0.1質量%以上5質量%以下
(C)下記一般式(2)で表される界面活性剤 0.1質量%以上2質量%以下
2O(CH2CH(CH3)O)uH (2)
(上記一般式(2)中、R2は炭素数8以上10以下の直鎖または分岐アルキル基またはアルケニル基を示し、uは質量平均で0.5以上4以下の数を示す。)
【請求項2】
当該毛髪洗浄剤における前記成分(C)に対する前記成分(B)の質量割合((B)/(C))が、0.05以上40以下である、請求項1に記載の毛髪洗浄剤。
【請求項3】
さらに(D)カチオン化セルロースおよびカチオン化グアーガムからなる群から選択される1種以上のカチオン化多糖を含む、請求項1または2に記載の毛髪洗浄剤。
【請求項4】
前記成分(D)が、下記一般式(5)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01以上2.5以下であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.1以上2.8以下であるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを含む、請求項に記載の毛髪洗浄剤。
【化1】
(上記一般式(5)中、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に下記一般式(6)または(7)で表されるカチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nはアンヒドログルコースの平均重合度を示し、50以上5000以下である。)
【化2】
(上記一般式(6)および(7)中、Y1およびY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(8)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(6)または(7)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を示し、qは一般式(6)または(7)中に含まれるプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、pおよびqはそれぞれ独立に0または正の整数である。pおよびqのどちらもが0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、さらにpおよび/またはqが2以上である場合は、ブロック結合またはランダム結合のいずれであってもよい。)
【化3】
(上記一般式(8)中、R10、R11およびR12は、それぞれ独立に炭素数1以上3以下の直鎖または分岐のアルキル基を示し、Z2-はアニオン性基を示す。)
【請求項5】
請求項1乃至いずれか1項に記載の毛髪洗浄剤を毛髪に適用し、洗い流すことを含む、毛髪の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、太陽光による紫外線や熱、乾燥等の影響を常に受けるとともに、日々の洗髪やブラッシング、ドライヤーの熱等によりダメージに晒されている。また、近年では、自由に髪色を変え(カラーリング等)、髪形を化学処理によって変化させる(パーマ等)など、髪の外観を変化させ、おしゃれを楽しむことが一般化している。このような施術の頻度が高まると、髪にダメージが蓄積され、枝毛や切れ毛が発生したり、毛先がパサついたりすることがわかっている。
【0003】
具体的には、特許文献1(特開2000−327540号公報)には、洗髪過程におけるキューティクルの脱落は、アニオン性界面活性剤によるキューティクル部位の膨潤に伴うリフトアップ時の毛髪同士の擦れあいによって生じることが記載されており、キューティクルリフトアップを抑制する技術が提案されている。
【0004】
また、毛髪を本質的に改質し、毛髪のツヤ、まとまり性を向上させる技術として、有機ジカルボン酸を用いた技術が提案されている(特許文献2、特開2005−239667号公報)。
【0005】
また、特定の構造を有する硫酸塩型アニオン界面活性剤と特定の構造を有するエーテルカルボン酸塩型界面活性剤を利用した、優れた泡立ち性を有し、頭皮の角層の膨潤を抑制し頭皮への刺激やかゆみを抑制する技術が提案されている(特許文献3、特開2010−235523号公報)。
【0006】
また、特定のアニオン界面活性剤やノニオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いて、皮脂等の汚れがある条件でも十分に泡立ち、洗浄力に優れ、泡立て時およびすすぎ時に滑らかであって、かつ乾燥後に毛髪が滑らか、柔らかで、まとまりを付与する技術が提案されている(特許文献4、特開2012−1512号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−327540号公報
【特許文献2】特開2005−239667号公報
【特許文献3】特開2010−235523号公報
【特許文献4】特開2012−1512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
髪の外観を変化させておしゃれを楽しみたい消費者にとって、カラーやパーマは必需品であり、日々のヘアケア行動の中で、ブラッシング、ブロー、アイロン使用により毛髪には引き延ばすような力が加えられる。毛髪は、延伸させられると、キューティクルがめくり上がる現象(リフトアップ)が観察され、キューティクルの剥離が促進されると考えられる。従って、毛髪を延伸するような力が加わった際に生じるリフトアップを抑制し、キューティクル剥離を抑制できる毛髪化粧料が求められる。
【0009】
この点、特許文献1では、アニオン界面活性剤に特定の酸を作用させ、特定のpHにすることで、キューティクルのリフトアップを抑制し、キューティクルの剥離を抑制する旨の開示があるが、毛髪を延伸した際のリフトアップ抑制効果は十分ではない点で改善の余地があった。
また、特許文献2〜4においても、種々のヘアケア効果が開示されているが、毛髪を延伸した際のキューティクルの剥離抑制に関する記述は見られず、その効果は十分ではない点で改善の余地があった。
【0010】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、日々のヘアケア行動の中で、ブラッシング、ブロー、アイロン使用等の繰り返しに伴う毛髪の延伸時のキューティクルの剥離を抑制し、感触の悪化の低減や仕上がりのツヤ・まとまり性を向上し得る毛髪洗浄剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、特定のアニオン性界面活性剤中に特定の有機酸およびノニオン性界面活性剤を配合することにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0012】
本発明によれば、次の成分(A)〜(C)および水を含む毛髪洗浄剤が提供される。
(A)下記一般式(1)で表されるエーテルカルボン酸塩型アニオン界面活性剤 0.5質量%以上12質量%以下
1O−(CH2−CH2O)s−CH2COOX1 (1)
(上記一般式(1)中、R1は炭素数10以上18以下のアルキル基またはアルケニル基を示し、X1はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンまたは塩基性アミノ酸由来のカチオンを示し、sは質量平均で0.5以上10以下の数を示す。)
(B)コハク酸またはその塩 0.1質量%以上5質量%以下
(C)下記一般式(2)で表される界面活性剤 0.1質量%以上2質量%以下
2O(CH2CH(CH3)O)uH (2)
(上記一般式(2)中、R2は炭素数8以上10以下の直鎖または分岐アルキル基またはアルケニル基を示し、uは質量平均で0.5以上4以下の数を示す。)
【0013】
また、本発明によれば、上記本発明における毛髪洗浄剤を毛髪に適用し、洗い流すことを含む、毛髪の洗浄方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、日々のヘアケア行動の中で、ブラッシング、ブロー、アイロン使用等の繰り返しに伴う毛髪の延伸時のキューティクルの剥離を抑制し、感触の悪化の低減や仕上がりのツヤ・まとまり性を向上し得る毛髪洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、各成分の具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本明細書中、pHは25℃、20倍希釈した場合での測定値(ガラス電極測定法)を意味する。
【0016】
(成分(A))
成分(A)は、下記一般式(1)で表されるエーテルカルボン酸塩型アニオン界面活性剤である。
1O−(CH2−CH2O)s−CH2COOX1 (1)
(上記一般式(1)中、R1は炭素数10以上18以下のアルキル基またはアルケニル基を示し、X1はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンまたは塩基性アミノ酸由来のカチオンを示し、sは質量平均で0.5以上10以下の数を示す。)
【0017】
本実施形態の毛髪洗浄剤において、成分(A)のエーテルカルボン酸塩型アニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン鎖を介して、疎水基とカルボキシル基とを有する化合物群であり、上記一般式(1)で表される。
【0018】
上記一般式(1)中、R1としては、洗浄時の泡立ちを豊かにし、後述する成分(B)および(C)を併用することで毛髪を延伸した際のキューティクル剥離抑制効果を充分に得る観点から、好ましくは炭素数12以上のアルキル基であり、また、好ましくは炭素数16以下のアルキル基である。
【0019】
また、上記一般式(1)中、エチレンオキシドの平均付加モル数であるsは、泡立ちを性を向上させる観点から、質量(重量)平均で0.5以上であり、好ましくは1以上であり、また、10以下であり、好ましくは6以下である。
【0020】
また、上記一般式(1)中、対イオンであるX1としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;
カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;
アンモニウム;
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のカチオン;および
アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸由来のカチオンなどが挙げられる。
【0021】
成分(A)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよく、またその毛髪洗浄剤中の含有量は、キューティクル剥離抑制の観点から、毛髪洗浄剤全体に対して、0.5質量%以上、好ましくは0.7質量%以上であり、また、12質量%以下であり、好ましくは8質量%以下である。さらに基剤の溶解性の観点から4質量%以下とすることがより好ましい。
【0022】
(成分(B))
次に、成分(B)について説明する。成分(B)は、コハク酸またはその塩である。
本実施形態においては、毛髪洗浄剤中に成分(B)と成分(A)および後述する成分(C)とを組み合わせて用いることにより、日々のヘアケア行動の際に生じるキューティクル剥離を効果的に抑制することができる。また、成分(A)〜(C)を組み合わせて用いることにより、毛髪を健常な状態に維持することができるため、たとえば毛髪の感触の悪化を低減したり、仕上がりのツヤ・まとまり性を向上させたりすることが可能となる。
【0023】
毛髪洗浄剤中の成分(B)の含有量は、毛髪延伸時のキューティクルの剥離抑制効果や毛髪へのツヤの付与の観点から、毛髪洗浄剤全体に対して0.1質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上とすることができる。また、毛髪洗浄剤の安定性の観点から、成分(B)の含有量は、毛髪洗浄剤全体に対して5質量%以下であり、好ましくは3.5質量%以下とすることができる。
【0024】
(成分(C))
次に、成分(C)について説明する。成分(C)は、下記一般式(2)で表されるポリオキシプロピレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤である。
2O(CH2CH(CH3)O)uH (2)
(上記一般式(2)中、R2は炭素数8以上10以下の直鎖または分岐アルキル基またはアルケニル基を示し、uは質量平均で0.5以上4以下の数を示す。)
【0025】
上記一般式(2)中、R2は、泡立ちや毛髪のツヤ向上の観点から、好ましくは炭素数8のものである。
また、上記一般式(2)中、uは、泡立ちや毛髪のツヤ向上の観点から、好ましくは質量平均で2以上3.5以下である。
【0026】
毛髪洗浄剤中の成分(C)の含有量は、毛髪洗浄剤の泡立ちや毛髪のツヤを向上させるという観点から、毛髪洗浄剤全体に対して0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、洗浄時の毛髪のきしみの低減という観点から、成分(C)の含有量は、毛髪洗浄剤全体に対して2質量%以下であり、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.2質量%以下である。
【0027】
また、本実施形態の毛髪洗浄剤においては、成分(A)、(B)および(C)の含有比率(質量比率)は、毛髪延伸時のキューティクル剥離抑制効果、汚れの洗浄性の向上、および、洗い上がりのツヤ・まとまり性向上の効果のバランスの向上を図る観点から、以下のようにすることが好ましい。
【0028】
すなわち、毛髪延伸時のキューティクル剥離抑制効果と汚れの洗浄性、洗い上がりのツヤ・まとまり性向上の観点から、毛髪洗浄剤中の成分(B)に対する成分(A)の質量割合((A)/(B))は、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1以上であり、また、好ましくは50以下であり、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。
【0029】
また、毛髪延伸時のキューティクル剥離抑制効果と汚れの洗浄性、洗い上がりのツヤ・まとまり性向上の観点から、毛髪洗浄剤中の成分(C)に対する成分(A)の質量割合((A)/(C))は、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、また、好ましくは45以下であり、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
【0030】
また、毛髪延伸時のキューティクル剥離抑制効果と汚れの洗浄性、洗い上がりのツヤ・まとまり性向上の観点から、毛髪洗浄剤中の成分(C)に対する成分(B)の質量割合((B)/(C))は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは1以上であり、また、好ましくは40以下であり、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下である。
【0031】
本実施形態における毛髪洗浄剤は、さらに具体的には、水性毛髪洗浄剤である。
すなわち、本実施形態における毛髪洗浄剤は、さらに水を含む。水としては、イオン交換水や蒸留水等を用いることができる。
毛髪洗浄剤中の水の含有量は、たとえば毛髪洗浄剤中の水以外の成分を除いた残部とすることができる。また、水の含有量は、毛髪洗浄剤全体に対し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。また98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
【0032】
次に、毛髪洗浄剤のpHについて説明する。
本実施形態の毛髪洗浄剤においては、成分(B)のコハク酸が、毛髪延伸時のキューティクル剥離を抑制する効果の最大化の観点から、水で20倍に希釈したときの25℃におけるpHが、好ましくは10以下であり、より好ましくは9.6以下であり、さらに好ましくは6.5以下である。また、毛髪洗浄剤の汚れ落ち性能の観点からpHは6.5以下、好ましくは6以下、より好ましくは5.5以下である。また、上記と同様の観点からpHが、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは3.5以上である。
【0033】
また、本実施形態において、毛髪洗浄剤は、前述した成分以外の成分を含んでもよい。
たとえば、毛髪洗浄剤は、以下の成分(D)を含んでもよい。
(D)カチオン化セルロースおよびカチオン化グアーガムからなる群から選択される1種以上のカチオン化多糖
【0034】
成分(D)のうち、カチオン化セルロースとしては、次の一般式(3)で表わされるものが好ましい。
【0035】
【化1】
【0036】
上記一般式(3)中、Aはアンヒドログルコース単位の残基を示し、aは50以上20000以下の整数であり、各R3は、それぞれ次の一般式(4)で表わされる置換基を示す。
【0037】
【化2】
【0038】
(上記一般式(4)中、R'およびR''はそれぞれ独立に炭素数2または3のアルキレン基、bは0以上10以下の整数、cは0以上3以下の整数、dは0以上10以下の整数、R'''は炭素数1以上3以下のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、R4、R5およびR6は同じであるかまたは異なっており、炭素数10以下のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を示すか、または式中の窒素原子を含んで複素環を形成してもよく、そしてZ1は1価の陰イオン(塩素、臭素、沃素、硫酸、スルホン酸、メチル硫酸、リン酸、硝酸等)を表す。)
【0039】
上記一般式(3)に示したカチオン化セルロースのカチオン置換度は、好ましくは0.01以上1以下である。すなわち、上記一般式(4)中、アンヒドログルコース単位あたりのcの平均値は、好ましくは0.01以上1以下であり、より好ましくは0.02以上0.5以下である。また、b+dの合計は平均1以上3以下であることが好ましい。また、置換度は、反応収率の点より1以下が好ましい。
たとえば、R4、R5およびR6としてはすべてCH3基であるもの、または、R4、R5およびR6のうち2つがCH3基などの短鎖アルキル基であり、残り1つが炭素数10以上20以下の長鎖アルキル基であるものが好ましい。ここで用いられるカチオン化セルロースの分子量は、好ましくは約100000以上8000000以下である。
【0040】
カチオン化セルロースの市販品としては、ポイズC−60H(花王社製)、ポイズC−80H(花王社製)、カチセロL−150(花王社製)、ポリマーJR−400(ダウケミカル社製)等が挙げられる。
【0041】
また、成分(D)は、下記一般式(5)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01以上2.5以下であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.1以上2.8以下であるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを含んでもよい。
【0042】
【化3】
【0043】
(上記一般式(5)中、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に下記一般式(6)または(7)で表されるカチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nはアンヒドログルコースの平均重合度を示し、50以上5000以下である。)
【0044】
【化4】
【0045】
(上記一般式(6)および(7)中、Y1およびY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(8)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(6)または(7)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を示し、qは一般式(6)または(7)中に含まれるプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、pおよびqはそれぞれ独立に0または正の整数である。pおよびqのどちらもが0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、さらにpおよび/またはqが2以上である場合は、ブロック結合またはランダム結合のいずれであってもよい。)
【0046】
【化5】
【0047】
(上記一般式(8)中、R10、R11およびR12は、それぞれ独立に炭素数1以上3以下の直鎖または分岐のアルキル基を示し、Z2-はアニオン性基を示す。)
【0048】
また、成分(D)のうち、カチオン化グアーガムとしては、次の一般式(9)で表わされるものが好ましい。
【0049】
【化6】
【0050】
(上記一般式(9)中、Dはグアーガム残基、R13はアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、R14、R15およびR16は同じであるかまたは異なっており、炭素数10以下のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を示すか、または式中の窒素原子を含んで複素環を形成してもよく、Z3-は陰イオン(塩素、臭素、沃素、硫酸、スルホン酸、メチル硫酸、リン酸、硝酸等)、そしてfは正の整数を示す。)
【0051】
カチオン化グアーガム誘導体のカチオン置換度は、好ましくは0.01以上1以下であり、より好ましくは0.02個以上0.5個以下のカチオン基が1個の糖ユニットに導入されたものである。この型のカチオン性ポリマーは、特公昭58−35640号公報、特公昭60−46158号公報および特開昭58−53996号公報中に記載されており、たとえば市販品としては、ローディア社(Rhodia Inc.)から商標名ジャガー(Jaguar)で市販されており、ジャガーC−13C、ジャガーC−14SK等が挙げられる。また、大日本住友製薬社製のラボールガム CG−Mが挙げられる。
【0052】
毛髪洗浄剤中の成分(D)の含有量は、洗浄時の指通りや乾燥後の毛髪のまとまりを向上させるという観点から、毛髪洗浄剤全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。また、洗浄基剤の粘度を好ましいものとする観点から、成分(D)の含有量は、毛髪洗浄剤全体に対して好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは1.2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0053】
本実施形態の毛髪洗浄剤には、洗浄性能を向上、乾燥後の仕上がり等について所望の効果を得るために、さらに、成分(A)以外のアニオン界面活性剤、成分(C)以外のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン類、他の油剤等を含有させてもよい。
【0054】
このうち、成分(A)以外のアニオン界面活性剤の具体例として、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸アルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸塩型アニオン界面活性剤;スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩等のスルホン酸型アニオン界面活性剤が挙げられる。中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩が好ましく、中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩としては、下記一般式(10)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。
【0055】
17O(CH2CH2O)vSO3M (10)
(上記一般式(10)中、R17は炭素数10以上18以下のアルキル基またはアルケニル基を示し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンまたは塩基性アミノ酸由来のカチオンを示し、vはエチレンオキシドの平均付加モル数であり、質量平均で0.5以上5以下の数を示す。)
【0056】
これらの中でも、すばやい泡立ちと良好な泡の感触を両立する観点から、一般式(10)中のR17が炭素数12以上14以下のアルキル基であるものが好ましい。また、エチレンオキシドの平均付加モル数vは、0.9以上4以下であるのが好ましく、1以上3以下であるのがより好ましい。さらに、Mがアンモニウムまたはナトリウムであるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。
【0057】
成分(A)以外のアニオン界面活性剤の含有量は、泡立ちをさらにより向上させる観点から、毛髪洗浄剤全体に対して、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。また、泡切れの向上およびすすぎ時の残留感の抑制の観点から、毛髪洗浄剤全体に対する成分(A)以外のアニオン界面活性剤の含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0058】
また、本実施形態における毛髪洗浄剤には、上記成分(B)以外のpH調整剤を配合してもよい。このようなpH調整剤として、たとえば、上記成分(B)以外の有機酸が挙げられ、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等の有機カルボン酸を用いることもできる。また、他のpH調整剤として、これら有機酸と合わせて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化アンモニウム等の塩基を用いてもよい。
【0059】
本実施形態の毛髪洗浄剤においては、上記成分のほか、通常の毛髪洗浄剤に用いられる成分を所望の効果に応じて適宜配合できる。このような任意成分としては、たとえば、抗フケ剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤(グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、その誘導体等)、防腐剤、キレート剤、保湿剤(ソルビトール、パンテノール等)、着色剤(染料、顔料等)、エキス類(ユーカリの極性溶媒抽出物、真珠層を有する貝殻または真珠から得られる蛋白質またはその加水分解物、蜂蜜、ローヤルゼリー、シルクから得られる蛋白質またはその加水分解物、マメ科植物の種子から得られる蛋白含有抽出物、オタネニンジン抽出物、米胚芽抽出物、ヒバマタ抽出物、アロエ抽出物、ハス抽出物、ザクロ抽出物、ノバラ抽出物、カモミラ抽出物、カンゾウ抽出物、月桃葉抽出物、クロレラ抽出物等)、酸化チタン等のパール化剤、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シアバター、ローズ水、オレンジ油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0060】
本実施形態の毛髪洗浄剤は、たとえば、成分(A)〜(C)と適宜他の成分とを混合して水に溶解することで製造される。具体的には、70〜100℃程度に加熱した水に、成分(B)および(C)を加え撹拌し溶解させる。更に、成分(A)を加え撹拌し均一にした後、室温まで冷却することで得られる。更には、他の界面活性剤を含む場合には、加熱している間であればいつ混合してもよいが、たとえば、70〜100℃程度に加熱した水に、成分(A)、(C)以外の他の界面活性剤を加え、撹拌し均一にする。この後、成分(B)および(C)を加え撹拌し溶解させ、成分(A)を加え、撹拌し均一にした後、30℃以下まで冷却することが好ましい。成分(B)以外の酸、塩基によるpHの調整は、40℃以下で行うことが好ましい。成分(D)を含む場合は、水を70〜100℃程度に加熱している場合であれば、いつでもよいが、成分(A)を加える前に加え、溶解又は均一に分散させることが好ましい。
【0061】
本実施形態の毛髪洗浄剤の形態は、液状、ゲル状等適宜選択できるが、溶剤として水、または水および低級アルコールを用いた液状のものが好ましい。
【0062】
また、本実施形態における毛髪洗浄剤を用いた毛髪の洗浄方法は、たとえば、毛髪洗浄剤を毛髪に適用し、洗い流すことを含む。
本実施形態における毛髪洗浄剤では、成分(A)〜(C)を組み合わせて用いられているため、キューティクルの剥離を抑制することができる。たとえば、日々のヘアケア行動の中で、ブラッシング、ブロー、アイロン等の加熱器具の使用により毛髪を引き延ばす力がかかった際に進行するキューティクルの剥離を抑制することができるため、毛髪を健常な状態に維持することも可能となる。また、本実施形態における毛髪洗浄剤を用いることにより、感触の悪化を低減することや、仕上がりのツヤ・まとまり性を向上することも可能となる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0064】
以上に述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様をさらに開示する。
【0065】
<1> 次の成分(A)〜(C)および水を含む毛髪洗浄剤。
(A)下記一般式(1)で表されるエーテルカルボン酸塩型アニオン界面活性剤 0.5質量%以上12質量%以下
1O−(CH2−CH2O)s−CH2COOX1 (1)
(上記一般式(1)中、R1は炭素数10以上18以下のアルキル基またはアルケニル基を示し、X1はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンまたは塩基性アミノ酸由来のカチオンを示し、sは質量平均で0.5以上10以下の数を示す。)
(B)コハク酸またはその塩 0.1質量%以上5質量%以下
(C)下記一般式(2)で表される界面活性剤 0.1質量%以上2質量%以下
2O(CH2CH(CH3)O)uH (2)
(上記一般式(2)中、R2は炭素数8以上10以下の直鎖または分岐アルキル基またはアルケニル基を示し、uは質量平均で0.5以上4以下の数を示す。)
【0066】
<2> 当該毛髪洗浄剤における前記成分(B)に対する成分(A)の質量割合((A)/(B))が、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1以上であり、また、好ましくは50以下であり、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である、前記<1>に記載の毛髪洗浄剤。
<3> 当該毛髪洗浄剤における前記成分(C)に対する成分(B)の質量割合((B)/(C))が、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは1以上であり、また、好ましくは40以下であり、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下である、前記<1>または<2>に記載の毛髪洗浄剤。
<4> さらに(D)カチオン化セルロースおよびカチオン化グアーガムからなる群から選択される1種以上のカチオン化多糖を含み;
好ましくは上記一般式(3)および下記一般式(5)で表されるカチオン化セルロースならびに上記一般式(9)で表されるカチオン化グアーガムからなる群から選ばれる1種以上を含み;
より好ましくは、ポイズC−60H、ポイズC−80H、カチセロL−150、ポリマーJR−400、ジャガーC−13C、ジャガーC−14SKおよびラボールガム CG−Mからなる群から選ばれる1種以上を含む、前記<1>乃至<3>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<5> 前記成分(D)が、下記一般式(5)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01以上2.5以下であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.1以上2.8以下であるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを含む、前記<4>に記載の毛髪洗浄剤。
(上記一般式(5)中、R7、R8およびR9は、それぞれ独立に下記一般式(6)または(7)で表されるカチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nはアンヒドログルコースの平均重合度を示し、50以上5000以下である。)
(上記一般式(6)および(7)中、Y1およびY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(8)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(6)または(7)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を示し、qは一般式(6)または(7)中に含まれるプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、pおよびqはそれぞれ独立に0または正の整数である。pおよびqのどちらもが0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、さらにpおよび/またはqが2以上である場合は、ブロック結合またはランダム結合のいずれであってもよい。)
(上記一般式(8)中、R10、R11およびR12は、それぞれ独立に炭素数1以上3以下の直鎖または分岐のアルキル基を示し、Z2-はアニオン性基を示す。)
<6> 成分(A)において、上記一般式(1)中のR1が好ましくは炭素数12以上のアルキル基であり、また、好ましくは炭素数16以下のアルキル基であり;
上記一般式(1)中のsが、好ましくは1以上であり、また、好ましくは6以下であり;
上記一般式(1)中のX1が、好ましくはナトリウムおよびカリウムからなる群から選ばれるアルカリ金属;カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選ばれるアルカリ土類金属;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンからなる群から選ばれるアルカノールアミン由来のカチオン;ならびにアルギニンおよびリジンからなる群から選ばれる塩基性アミノ酸由来のカチオンである、前記<1>乃至<5>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<7> 毛髪洗浄剤中の成分(A)の含有量が、毛髪洗浄剤全体に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上であり、また、好ましくは12質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である、前記<1>乃至<6>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<8> 毛髪洗浄剤中の成分(B)の含有量が、毛髪洗浄剤全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、よりさらに好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3.5質量%以下である、前記<1>乃至<7>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<9> 成分(C)において、上記一般式(2)のR2の炭素数が好ましくは8であり;
上記一般式(2)のuが好ましくは質量平均で2以上3.5以下である、前記<1>乃至<8>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<10> 毛髪洗浄剤中の成分(C)の含有量が、毛髪洗浄剤全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.2質量%以下である、前記<1>乃至<9>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<11> 毛髪洗浄剤における成分(C)に対する成分(A)の質量割合((A)/(C))が、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、また、好ましくは45以下であり、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である、前記<1>乃至<10>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<12> 毛髪洗浄剤中の水の含有量が、好ましくは毛髪洗浄剤中の水以外の成分を除いた残部であり、毛髪洗浄剤全体に対してより好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、また、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である、前記<1>乃至<11>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<13> 毛髪洗浄剤を水で20倍に希釈したときの25℃におけるpHが、好ましくは10以下であり、より好ましくは9.6以下、さらに好ましくは6.5以下であるか、あるいは、
毛髪洗浄剤を水で20倍に希釈したときの25℃におけるpHが、好ましくは6.5以下であり、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5.5以下であり、また、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは3.5以上である、前記<1>乃至<12>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<14> さらに(D)カチオン化セルロースおよびカチオン化グアーガムからなる群から選択される1種以上のカチオン化多糖を含み、
毛髪洗浄剤中の成分(D)の含有量が、毛髪洗浄剤全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは1.2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である、前記<1>乃至<13>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<15> 成分(A)以外のアニオン界面活性剤、成分(C)以外のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン類、および、他の油剤からなる群から選択される1種以上をさらに含み;
好ましくは、成分(A)以外のアニオン界面活性剤をさらに含み;
より好ましくは、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸アルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸塩型アニオン界面活性剤;スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩およびアルカンスルホン酸塩等のスルホン酸型アニオン界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上を含み;
さらに好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩およびアルケニル硫酸塩からなる群から選ばれる1種以上を含み;
よりさらに好ましくは上記一般式(10)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を含み;
殊更好ましくは上記一般式(10)中のR17が炭素数12以上14以下のアルキル基であり、vが0.9以上4以下であり、Mがアンモニウムまたはナトリウムであるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を含む、前記<1>乃至<14>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<16> 成分(A)以外のアニオン界面活性剤をさらに含み、毛髪洗浄剤中の成分(A)以外のアニオン界面活性剤の含有量が、毛髪洗浄剤全体に対して、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である、前記<1>乃至<15>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<17> 成分(B)以外のpH調整剤をさらに含み、好ましくは、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等の有機カルボン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化アンモニウム等の塩基からなる群から選択される1種以上をさらに含む、前記<1>乃至<16>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤。
<18> 前記<1>乃至<17>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤を毛髪に適用し、洗い流すことを含む、毛髪の洗浄方法。
<19> 前記<1>乃至<17>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤を毛髪に適用し、洗い流すことを含む、毛髪延伸時のキューティクル剥離を抑制する方法。
<20> 前記<1>乃至<17>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤を毛髪に適用し、洗い流すことを含み、好ましくは前記洗い流すことの後、毛髪を延伸することを含む、毛髪洗浄剤の使用方法。
<21> 前記<1>乃至<17>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤の、毛髪延伸時のキューティクル剥離の抑制のための使用。
<22> 毛髪延伸時のキューティクル剥離を抑制する洗浄剤の製造のための、前記<1>乃至<17>のいずれか1に記載の毛髪洗浄剤の使用。
【実施例】
【0067】
(実施例1〜15、比較例1〜7)
表2および表3に示す組成のシャンプーを以下の方法に従って調製し、得られたサンプル溶液を評価した。評価方法および評価基準を以下に示す。
(シャンプーの製造方法)
約80℃に加温した水にポリオキシエチレン(1)ラウリル硫酸アンモニウムを加え、撹拌し均一にした。次に、これに成分(B)または(B')および(C)をそれぞれ加えて完全に溶解させた後、一部の水に均一に分散させた成分(D)を加えて溶解させた。その後、成分(A)を加えてから室温まで冷却し、水酸化ナトリウムでpHを調整した(25℃)。
表2および表3において、各例のシャンプーは、全成分の合計が100質量%となる量の水を含む。
【0068】
(評価用毛髪サンプルの作製)
美容処理(花王社製プリティア泡ブリーチハイブリーチにて3回処理、浴比1:3、処理時間40分/回)をおこなった日本人毛髪10gを用いて、横幅5.7cmのプラスチック板2枚の間に毛髪を挟み込んで2剤式接着剤で固定することで、毛髪長さ約30cmの毛束を作り、その毛束を以下の手順に従って評価した。
【0069】
(毛髪キューティクル剥離抑制の評価方法)
1.実施例および比較例で得られた各サンプル溶液の20倍希釈溶液を作製し、その溶液を500mLビーカーに300mL入れ、その溶液に上記毛束を1分間浸漬処理した。
2.その後、イオン交換水を500mLビーカーに300mL入れ、その中に1.で処理した毛束を投入して30秒間上下に振動させながらすすいだ。
3.その後、毛束をイオン交換水から取り出し、タオルドライし毛束から水分を取り除いた。
4.上記1〜3の操作を洗髪1回の操作とし、1回の操作のみおこなった毛束と、これを30回繰り返した毛束の2種類を評価用毛髪サンプルとして作製した。なお、後述の評価を行うにあたり、毛髪の絡まりを解くため、以下の評価用コンディショナーを1g塗布して、イオン交換水で十分にすすぎ流した後、タオルドライし手ぐし操作を加えながらドライヤーで3分間乾燥させた。評価用コンディショナーの処方を以下の表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
(毛髪のダメージ促進度の評価(延伸した毛髪の評価))
1.上述した処理をおこなった評価用毛髪サンプルの毛束から無作為に毛髪を5本ピックアップし、毛先から10cm〜15cm部位(毛髪長5cm)をカミソリで切り出した。切り出した毛髪の両端0.5cm部位にメンディングテープ(Scotch社製)を上下から挟み込むように貼り合わせ固定部とした。
そして、切り出された毛髪は、この固定部を把持し毛髪の軸方向に引っ張り速度0.1cm/秒、延伸率が25%(テープ未貼り付け部の毛髪を延伸前の4cmから5cmになるまで伸ばす。)になるように延伸した。延伸後の毛髪を動かないようにスライドガラス上に二剤式接着剤で固定して測定用サンプルとした。
2.上記測定用サンプルを用いて、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製、VK-8700)で毛髪表面形状を測定(測定ピッチ:0.1μm)し、サンプル作製上生じる毛髪由来以外の傾き(スライドガラスやメンディングテープ、マスキングテープ等によるもの。)をソフトウェア上で面傾き補正(3点指定)した。この後、JIS規格である粗さ曲線要素の平均高さRc値(JIS B0601:2001)を算出した。算出方法としては、さきほど傾き補正した毛髪表面上の軸方向に200μmの長さの直線を引き、その直線上のRc値をソフトウェア上で算出した。この操作を無作為に選んだ毛髪表面上で計5回行い、その平均値を求めた。
Rc値(μm)が大きい程、表面形状が粗くなる、つまりキューティクルの剥離が促進されていることを示唆しており、この値が小さければ小さい程、キューティクル剥離が抑制されていることを示している。
【0072】
(乾いた髪のまとまりの評価)
前述した方法で処理した評価用毛髪サンプルの毛束(美容処理・洗髪・ドライヤー乾燥後)のまとまりを、以下の方法で評価した。
1.前述した洗髪操作を行う前の毛束根元から5cm、10cm、15cm、20cm、25cmの5か所の毛束の幅をそれぞれ測定し、その平均値を算出した。
2.その後、前述した「毛髪キューティクル剥離抑制の評価方法」の1.〜4.の手順に従い1回または30回の洗髪操作を行った後に、上記同様に5か所の毛束の幅をそれぞれ測定し、その平均値を算出した。
3.洗髪処理前後での毛束の幅の差分Δd(cm)を求めた。
ここで、Δdが大きい程、洗髪処理をした後の毛束の横幅が洗髪処理前と比べて広がっており、まとまりが失われていることを意味する。
【0073】
(官能評価:髪を乾かした後のツヤ感)
前述した方法で処理した評価用毛髪サンプルの毛束(美容処理・1回または30回洗髪・ドライヤー乾燥後)のツヤ感を、専門パネラー10名により、下記基準に従って、評価し、その合計得点をそれぞれ算出した。
+2:比較例1に比べ、ツヤがある
+1:比較例1に比べ、ツヤがややある
0:比較例1に比べ、ツヤがほぼ同等である
−1:比較例1に比べ、ツヤがややない
−2:比較例1に比べ、ツヤがない
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
実施例1〜15で得られたシャンプーで洗浄して得られた評価用毛髪サンプルでは、いずれも、30回処理後の感触の悪化が抑制されていた。
また、表1および表2より、実施例1〜15で得られたシャンプーで洗浄して得られた評価用毛髪サンプルでは、洗髪を30回繰り返した後の延伸リフトアップ時のRc値が各比較例のものに比べて小さく、キューティクルの剥離の抑制効果に優れていた。また、実施例1〜15で得られたシャンプーで洗浄して得られた評価用毛髪サンプルでは、洗髪を30回繰り返した後のΔd値が各比較例のものに比べて小さく、髪のまとまりを維持する効果に優れていた。また、実施例1〜15で得られたシャンプーで洗浄して得られた評価用毛髪サンプルでは、各比較例のものに比べて、洗髪を30回繰り返した後のキューティクル剥離の抑制、髪のツヤおよびまとまりの効果のバランスに優れていた。