(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、様々な位置・姿勢でワークや工具などにアクセスできるロボットは、得られなかった。すなわち、通常、工作機械の本体部は、安全性や環境性などへの対応から、カバーで覆われる。したがって、特許文献1,2のように、工作機械の本体部以外の箇所に設けられたロボットを用いて、加工室の内部へアクセスしようとすると、加工室のドアを開く必要がある。そのため、特許文献1,2のロボットでは、ワークを加工していないときに、ワークの着脱等を行うことはできる。しかし、加工中、すなわち、加工室のドアを閉めた状態においては、ロボットが、ワークや工具にアクセスすることができない。その結果、特許文献1,2の技術では、ロボットの用途が限られていた。
【0006】
特許文献3,4のように、搬送具等のロボットを主軸頭に固定する技術もある。かかる技術によれば、加工室のドアを閉めた状態でも、ロボットがワークや工具にアクセスできる。しかし、この場合、主軸頭に対するロボットの位置が固定されるため、主軸頭を挟んでロボットの反対側にアクセスするためには、ロボットを大型にする必要がある。例えば、ロボットが、複数のアームを関節を介して接続した多関節型ロボットの場合、各アームの長さを長くする必要がある。しかし、アームを長くすると、その分、他部材への干渉が生じやすくなり、また、関節を動かすために必要なトルクも大きくなる。
【0007】
そこで、本発明では、様々な位置・姿勢で、ワークや工具等にアクセスできる、より小型のロボットを備えた工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の工作機械は、工具によりワークを切削する工作機械であって、前記工具を規定の工具回転軸を中心として自転可能に保持する工具主軸装置で
あって、円筒形の主軸ヘッドと、前記主軸ヘッドの軸方向下側に取り付けられた工具主軸と、を有する工具主軸装置と、1以上のロボットと、前記1以上のロボットが前記工具回転軸を中心として前記工具主軸装置の周囲を前記工具とは独立して移動するべく、前記1以上のロボットを前記
主軸ヘッドに取り付ける連結機構と、を備え
、前記ロボットは、対象物に働きかける1以上のエンドエフェクタと、前記1以上のエンドエフェクタを支持する1以上のアームと、前記1以上のアームの端部に設けられる1以上の関節と、を備えたアーム型ロボットであり、前記1以上のアームのうち前記連結機構に直接連結されるアームの基端は、前記主軸ヘッドの下端とほぼ同じ高さに位置している、ことを特徴とする。
【0009】
好適な態様では、前記ロボットは、前記工具による前記ワークの加工の実行中に、前記工具および前記ワークの少なくとも一方にアクセス可能である。
【0010】
他の好適な態様では、前記ロボットは、前記工具による前記ワークの加工の補助、前記加工中における前記工具または前記ワークに関するセンシング、および、付加的な加工の少なくとも一つを行う。
【0012】
他の好適な態様では、前記工具主軸装置は、前記工具回転軸に直交する軸を中心として揺動可能である。
【0013】
他の好適な態様では、前記ロボットが、前記工具またはワークを把持可能な把持部を備える。
【0014】
他の好適な態様では、前記工作機械が、前記ワークを旋削する旋盤機能を備えた複合加工機であり、前記ワークを自転可能に保持するワーク主軸装置と、前記自転するワークを旋削する旋削工具を保持する刃物台と、を有する。この場合、前記ロボットは、前記旋削工具による旋削加工中に、前記ワークおよび旋削工具の少なくとも一方にアクセス可能である、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロボットが、工具主軸装置、または、放射ヘッドに、回転可能に取り付けられている。そのため、ロボットを小型化しても、ロボットの位置および姿勢を大きく変化させることができる。結果として、ロボットが、様々な位置・姿勢で、ワークや工具等にアクセスできる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態である工作機械10の概略構成を示す図である。以下の説明では、ワーク主軸32の回転軸方向をZ軸、Z軸に直交する鉛直方向をX軸、Z軸およびX軸に直交する方向をY軸と呼ぶ。また、Z軸においては、ワーク主軸32から刃物台18に近づく方向をプラス方向、X軸においては、ワーク主軸32から工具主軸38に近づく方向をプラス方向、Y軸においては、工具主軸38から中台28に近づく方向をプラス方向とする。
【0019】
この工作機械10は、ワーク110を回転させながら旋削工具102を当ててワーク110を切削する旋削機能と、回転工具100でワーク110を切削する転削機能と、を有した複合加工機である。工作機械10の本体部12の周囲は、カバー(図示せず)で覆われている。このカバーで区画される空間が、ワーク110の加工が行われる加工室となる。カバーには、少なくとも一つの開口部と、当該開口部を開閉するドア(いずれも図示せず)と、が設けられている。オペレータは、この開口部を介して、工作機械10の本体部12やワーク110等にアクセスする。加工中、開口部に設けられたドアは、閉鎖される。これは、安全性や環境性等を担保するためである。
【0020】
本体部12は、ワーク110を自転可能に保持するワーク主軸装置14と、回転工具100を自転可能に保持する工具主軸装置16と、旋削工具102を保持する刃物台18と、を備えている。ワーク主軸装置14は、基台22に設置された主軸台30と、当該主軸台30に取り付けられたワーク主軸32と、を備えている。ワーク主軸32は、ワーク110を着脱自在に保持するチャック33やコレットを備えており、保持するワーク110を適宜、交換できる。また、ワーク主軸32は、水平方向(
図1におけるZ軸方向)に延びるワーク回転軸Rwを中心として自転する。
【0021】
工具主軸装置16は、転削用の工具(回転工具100)、例えば、フライスやエンドミルと呼ばれる工具を自転可能に保持するもので、その内部に駆動モータ等を内蔵した主軸ヘッド36と、当該主軸ヘッド36に取り付けられた工具主軸38と、を備えている。工具主軸38は、回転工具100を着脱自在に保持するクランパを備えており、必要に応じて保持する回転工具100を交換できる。また、工具主軸38は、垂直方向(
図1におけるX軸方向)に延びる工具回転軸Rtを中心として自転する。
【0022】
また、主軸ヘッド36には、連結機構40を介して機内ロボット20が取り付けられている。この機内ロボット20は、加工の補助や、各種センシング、補助的作業等に用いられる。この機内ロボット20の構成や機能については、後に詳説する。
【0023】
さらに、主軸ヘッド36は、当該主軸ヘッド36を通るとともにY軸方向に延びる揺動軸St(
図2参照)回りに揺動可能となっている。そして、主軸ヘッド36が、揺動軸St回りに揺動することで、回転工具100や、機内ロボット20の姿勢が変化する。
【0024】
主軸ヘッド36は、中台28に取り付けられている。この中台28は、X軸ガイドレール(図示せず)を介してコラム26に取り付けられており、コラム26に対して昇降自在(X方向に移動可能)となっている。また、コラム26は、Y軸ガイドレールを介してサドル24に取り付けられており、サドル24に対してY軸方向に移動可能となっている。さらに、サドル24は、Z軸ガイドレールを介して基台22に取り付けられており、基台22に対してZ軸方向に移動可能となっている。そして、このサドル24、コラム26、中台28を適宜、移動させることで、工具主軸装置16、ひいては、工具主軸装置16に取り付けられた回転工具100や機内ロボット20が、所望の位置に直線移動する。
【0025】
刃物台18は、旋削工具102、例えば、バイトと呼ばれる工具を保持する。この刃物台18は、X軸ガイドレールを介して下サドル19に取り付けられ、下サドル19に対して昇降自在(X方向に移動可能)になっている。下サドル19は、Z軸ガイドレールを介して、基台22に取り付けられており、Z軸方向に移動可能となっている。結果として、旋削工具102は、X軸方向、Z軸方向に移動可能となっている。
【0026】
制御装置34は、オペレータからの指示に応じて、工作機械10の各部の駆動を制御する。この制御装置34は、例えば、各種演算を行うCPUと、各種制御プログラムや制御パラメータを記憶するメモリと、で構成される。また、制御装置34は、通信機能を有しており、他の装置との間で各種データ、例えば、NCプログラムデータ等を授受できる。この制御装置34は、例えば、工具100,102やワーク110の位置を随時演算する数値制御装置を含んでもよい。また、制御装置34は、単一の装置でもよいし、複数の演算装置を組み合わせて構成されてもよい。
【0027】
次に、工具主軸装置16に取り付けられた機内ロボット20について
図2〜
図5を参照して説明する。
図2〜
図5は、機内ロボット20周辺の斜視図である。
図2に示す通り、機内ロボット20は、複数のアーム42a〜42cと、複数の関節44a〜44cを有した多関節ロボットである。この機内ロボット20は、既述した通り、連結機構40を介して主軸ヘッド36に取り付けられている。本実施形態の主軸ヘッド36は、略円筒形をしており、その中心軸は、工具回転軸Rtと一致している。この主軸ヘッド36は、既述した通り、サドル24、コラム26、中台28の移動に伴い、直線移動できる。さらに、主軸ヘッド36は、中台28に回転可能に取り付けられており、Y軸(水平)方向に延びる揺動軸Stを中心として揺動可能となっている。
【0028】
連結機構40は、ベアリング(図示せず)を介して主軸ヘッド36に取り付けられており、主軸ヘッド36に対して回転可能となっている。この連結機構40の回転軸は、工具回転軸Rtと一致している。連結機構40には、モータ等のアクチュエータが取り付けられており、このアクチュエータの駆動は、制御装置34により制御される。
【0029】
機内ロボット20は、第一〜第三アーム42a〜42c(以下、第一〜第三を区別しない場合は、添字のアルファベットを省略して「アーム」とのみ言う。他部材においても同じ)と、これらの端部に設けられた第一〜第三関節44a〜44cと、エンドエフェクタ46と、を備えている。第一アーム42aの基端は、第一関節44aを介して連結機構40に、第二アーム42bの基端は、第二関節44bを介して第一アーム42aの先端に、第三アーム42cの基端は、第三関節44cを介して第二アーム42bの先端に、それぞれ接続されている。第一〜第三関節44a〜44cは、いずれも、Y軸方向(工具回転軸Rtに直交する方向)の揺動軸を有しており、各アーム42は、当該揺動軸を中心として揺動する。第一〜第三関節44a〜44cには、モータ等のアクチュエータが取り付けられており、このアクチュエータの駆動は、制御装置34により制御される。制御装置34は、連結機構40および各関節44a〜44cに設けられたアクチュエータの駆動量から、後述するエンドエフェクタ46の位置を算出する。
【0030】
第三アーム42cの先端には、対象物に働きかけるエンドエフェクタ46が設けられている。エンドエフェクタ46は、何らかの効果を発揮するものであれば、特に限定されない。したがって、エンドエフェクタ46は、例えば、対象物や対象物の周辺環境に関する情報をセンシングするセンサとすることができる。この場合、エンドエフェクタ46は、例えば、対象物への接触の有無を検知する接触センサや、対象物までの距離を検知する距離センサ、対象物の振動を検知する振動センサ、対象物から付加される圧力を検知する圧力センサ、対象物の温度を検知するセンサ等とすることができる。これらセンサでの検知結果は、連結機構40および関節44a〜44cの駆動量から算出されるエンドエフェクタ46の位置情報と関連付けて記憶され、解析される。例えば、エンドエフェクタ46が、接触センサの場合、制御装置34は、対象物への接触を検知したタイミングと、そのときの位置情報と、に基づいて、対象物の位置や形状、動きを解析する。
【0031】
また、別の形態として、エンドエフェクタ46は、対象物を保持する保持機構とすることもできる。保持の形式は、一対の部材で対象物を把持するハンド形式でもよいし、対象物を吸引保持する形式でもよいし、磁力等を利用して保持する形式等でもよい。
【0032】
また、別の形態として、エンドエフェクタ46は、加工を補助するための流体を出力する装置でもよい。具体的には、エンドエフェクタ46は、切粉を吹き飛ばすためのエアや、工具100,102またはワーク110を冷却するための冷却用流体(切削油や切削水等)を放出する装置でもよい。また、エンドエフェクタ46は、ワーク造形のためエネルギまたは材料を放出する装置でもよい。したがって、エンドエフェクタ46は、例えば、レーザやアークを放出する装置でもよいし、積層造形のために材料を放出する装置でもよい。さらに別の形態として、エンドエフェクタ46は、対象物を撮影するカメラでもよい。この場合、カメラで得た映像を操作パネル等に表示してもよい。
【0033】
また、エンドエフェクタ46が働きかける対象物は、加工室内にあるものであれば、特に限定されない。したがって、対象物は、工具主軸38に保持される回転工具100でもよいし、ワーク主軸装置14に保持されているワーク110でもよい。また、対象物は、刃物台18に保持されている旋削工具102でもよい。さらに、対象物は、工具100,102およびワーク110以外のもの、例えば、加工室内に飛散した切粉や、ワーク110に組み付けられる部品、工作機械10の構成部品(ワーク主軸32のチャック33や、工具主軸38のコレット等)でもよい。
【0034】
また、本実施形態では、エンドエフェクタ46の個数を一つとしているが、エンドエフェクタ46の個数は、一つに限らず、複数でもよい。また、エンドエフェクタ46は、少なくとも、機内ロボット20に設けられていればよく、その設置位置は、多関節アームの先端に限らず、多関節アームの途中に設けられていてもよい。
【0035】
次に、上述したような機内ロボット20の動きについて説明する。主軸ヘッド36は、加工の状況に応じて、適宜、移動および揺動する。この主軸ヘッド36に取り付けられた機内ロボット20は、必要に応じて、加工の補助や、センシング、補助的作業等を行う。このとき、機内ロボット20は、必要に応じて、各関節44を動かして、エンドエフェクタ46の位置および姿勢を変化させる。特に、本実施形態では、エンドエフェクタ46が対象物にアクセスするときの位置や向きに応じて、機内ロボット20を、工具回転軸Rtを中心として回転させることができる。別の言い方をすれば、機内ロボット20は、工具回転軸Rtを中心として、主軸ヘッド36の周囲を移動できる。なお、以下の説明において、「アクセスする」とは、機内ロボット20が、機内ロボット20の動作の目的を達成できる位置まで対象物に接近することを意味する。したがって、機内ロボット20のエンドエフェクタ46が、接触して温度を検知する温度センサである場合、「アクセスする」とは、当該エンドエフェクタ46が対象物に接触する位置まで接近することである。また、エンドエフェクタ46が、非接触で温度を検知する温度センサである場合、「アクセスする」とは、当該エンドエフェクタ46が対象物の温度が検知できる位置まで対象物に接近することである。
【0036】
本実施形態では、エンドエフェクタ46を、回転工具100近傍に位置する対象物(例えばワーク110)に、Z軸方向プラス側から、アクセスさせたい場合、
図2に示すように、第二アーム42bが主軸ヘッド36よりもZ軸方向プラス側に位置するように、連結機構40を回転させる。一方、エンドエフェクタ46を、回転工具100近傍に位置する対象物に、Y軸方向プラス側からアクセスさせたい場合、
図3に示すように、第二アーム42bが主軸ヘッド36よりもY軸方向プラス側に位置するように、連結機構を回転させる。また、エンドエフェクタ46を使用しない場合には、
図4、
図5に示すように、第一〜第三関節44a〜44cを駆動し、エンドエフェクタ46を、ワーク110や工具100,102と干渉しない位置に移動させる。
【0037】
こうした機内ロボット20は、種々の用途に用いることができる。例えば、機内ロボット20は、ワーク110を加工している間、当該加工を補助してもよい。具体的には、例えば、機内ロボット20は、加工中、ワーク110および工具100,102の少なくとも一方を、支持する。これにより、低剛性のワーク110/工具100,102の振動等を抑制できる。また、別の形態として、機内ロボット20は、加工中、ワーク主軸装置14に替わって、ワーク110を保持してもよい。これにより、加工中、ワーク110の姿勢を自由に変化させることができ、複雑な形状の加工が可能になる。また、別の形態として、機内ロボット20は、加工中、ワーク110や工具100,102に振動を付与するようにしてもよい。これにより、振動を付与しながら切削を行う特殊な加工が可能となる。さらに、別の形態として、機内ロボット20は、加工中、冷却用の流体(切削油、切削水)や、切粉除去のためのエアを放出してもよい。その位置や姿勢を自由に変更できる機内ロボット20で冷却用流体またはエアを放出すれば、ワーク110および工具100,102の切削性や温度を、より自由にコントロールできる。
【0038】
また、機内ロボット20は、例えば、ワーク110を加工している間、または、加工の前後において、各種センシングを行ってもよい。具体的には、例えば、機内ロボット20で、切削状態(加工面精度や切粉の状態)を監視してもよい。また、別の形態として、機内ロボット20は、加工中に、ワーク110や、工具100,102の状態、例えば、温度や振動、ひずみ等をセンシングし、制御装置34に出力してもよい。この場合、制御装置34は、機内ロボット20で検知された情報に基づいて、必要であれば、各種加工条件(送り速度や回転速度等)を変更することが望ましい。また、機内ロボット20は、加工の開始前、または、終了後に、ワーク110の形状を計測する構成としてもよい。加工開始前にワーク110の形状を計測することで、ワーク110の取付間違いを確実に防止できる。また、加工開始後にワーク110の形状を計測することで、加工結果の良否を判定することができる。また、別の形態として、機内ロボット20は、例えば、加工の開始前、または、終了後に、工具100,102の状態(摩耗量や突き出し量等)を計測してもよい。
【0039】
さらに、機内ロボット20は、例えば、加工に直接関係ない作業を行ってもよい。具体的には、機内ロボット20は、加工中、または加工の完了後に、加工室内に飛散した切粉を回収する清掃作業を行ってもよい。また、別の形態として、機内ロボット20は、加工を行っていない期間中に、工具の点検(摩耗の有無や突き出し量の確認等)や、工作機械10の可動部の点検を行ってもよい。
【0040】
さらに、機内ロボット20は、従来、機外ロボットが行っていた作業を、加工中または加工の完了後に、行うようにしてもよい。例えば、機内ロボット20は、ワーク110に対して付加的な加工(バリ取り加工や金型の磨き加工のような除去加工、表面改質、付加加工等)を行ってもよい。また、機内ロボット20は、ワーク110や工具100,102の搬送や、交換、段取等を行ってもよい。また、機内ロボット20は、各種部品の検査や組み立て等を行ってもよい。
【0041】
以上の通り、機内ロボット20は、種々の用途に用いることができる。機内ロボット20に設けるエンドエフェクタ46の種類は、機内ロボット20に要求される用途に応じて選定されればよい。ところで、こうした機内ロボット20を使用する場合、機内ロボット20は、少なくとも、加工に用いられるワーク110および回転工具100にアクセスできることが望ましく、加工室内の大部分にアクセスできれば、より望ましい。また、工作機械が、転削機能と旋削機能とを備えた複合加工機の場合、機内ロボット20は、旋削工具102にもアクセスできることが望ましい。機内ロボット20のアクセス範囲を広げるために、機内ロボット20そのものの可動範囲(すなわち、連結機構40に対するエンドエフェクタ46の可動範囲)を広げようとした場合、機内ロボット20の可動機構が大きくなる。その結果、機内ロボット20の大型化を招き、他部材との干渉等の問題を招く。また、機内ロボット20が大型化することで、これを駆動するためのモータ等のアクチュエータも大型化し、機内ロボット20全体としての大重量化、コストアップ等の問題も招く。
【0042】
本実施形態では、既述した通り、機内ロボット20を工具主軸装置16に取り付けている。工具主軸装置16は、周知の通り、ワーク110を加工するための回転工具100を保持している。そして、通常、回転工具100によるワーク110の加工を実現するために、工具主軸装置16は、回転工具100が、適宜、ワーク110にアクセスできるように、ワーク主軸装置14に対して相対移動できる。したがって、この工具主軸装置16に機内ロボット20を取り付ければ、機内ロボット20そのものの可動範囲が小さくても、機内ロボット20を、回転工具100およびワーク110の近傍に、位置させることができる。その結果、可動範囲の小さい、比較的小型の機内ロボット20でも、加工中の回転工具100およびワーク110に確実にアクセスさせることができる。また、機内ロボット20を工具主軸装置16に取り付けることで、機内ロボット20そのものの可動範囲が小さくても、機内ロボット20のワーク110に対する可動範囲を大きくすることができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、工具主軸装置16は、X,Y,Z軸方向への直線移動と、Y軸方向の軸回りの揺動とが可能となっている。このように、加工室内で移動可能な工具主軸装置16に機内ロボット20を取り付けることで、機内ロボット20を、ワーク110や工具100,102だけでなく、加工室内の広い範囲にアクセスさせることができる。その結果、機内ロボット20で、加工室の清掃や、ワーク110の搬入出等、様々な作業を行うことができる。さらに、加工室の端部等、加工の邪魔にならない位置に、機内ロボット20の点検や清掃のための装置を設けておけば、必要に応じて、工具主軸装置16ごと機内ロボット20を移動させて、当該機内ロボット20の点検や清掃を行うこともできる。
【0044】
また、本実施形態では、機内ロボット20が工具回転軸Rtを中心として、主軸ヘッド36の周囲を移動できるように、機内ロボット20を主軸ヘッド36に取り付けている。そのため、機内ロボット20の可動範囲を小さくしても、機内ロボット20のアクセス方向や位置を大きく変更できる。これについて
図8、
図9を参照して説明する。
図8、
図9は、多関節型の機内ロボット20を、主軸ヘッド36のZ軸方向プラス側の側面に固着した場合、すなわち、機内ロボット20が、工具回転軸Rt回りに回転移動できない場合を示す図である。主軸ヘッド36のZ軸方向プラス側の側面に固着された機内ロボット20で、Z軸方向マイナス側から回転工具100にアクセスする場合を考える。この場合、
図8に示すように、機内ロボット20は、主軸ヘッド36の前方を横断して、主軸ヘッド36よりもZ方向マイナス側位置まで延びる必要がある。そのため、この機内ロボット20は、本実施形態の機内ロボット20に比して、各アーム42の長さ、ひいては、機内ロボット20全体のサイズが大幅にアップしている。
【0045】
この機内ロボット20で、Z軸方向プラス側から回転工具100にアクセスする場合を考える。この場合、
図9に示すように、機内ロボット20の第一、第二アーム42a,42bを折り畳む必要があるが、第一、第二アーム42a,42bが比較的長い。そのため、これら第一、第二アーム42a,42bを折り畳んでも、Z方向プラス側への突出量が大きくなる。このように機内ロボット20の突出量が大きくと、その分、他部材への干渉が生じやすくなる。また、大きく突出した機内ロボット20と、他部材との干渉を避けるために、工具主軸装置16の可動範囲を大幅に制限する必要も生じる。さらに、大型で重量のあるアーム42を駆動するためのトルクが増加するため、各関節44に設けるモータ等のアクチュエータを大型にする必要がある。
【0046】
一方、本実施形態の機内ロボット20は、繰り返し述べたように、工具回転軸Rt回りに回転できる。そのため、
図2〜
図5に示すように、比較的小型の機内ロボット20でも、そのアクセスの向きやエンドエフェクタ46の位置を自由に変更でき、機内ロボット20の突出量を小さく抑えることができる。結果として、機内ロボット20と他部材との干渉を効果的に防止し、さらに、工具主軸装置16の可動範囲も広げることができる。また、アーム42を小型化できるため、各アーム42を駆動するためのトルクも低減でき、各関節44に設けるモータ等のアクチュエータの小型化も可能となる。
【0047】
なお、これまで説明した機内ロボット20の構成は、一例である。機内ロボット20は、工具回転軸Rtを中心として、工具主軸装置16の周囲を移動できる状態で、工具主軸装置16に取り付けられているのであれば、その他の構成は、限定されない。したがって、機内ロボット20の関節44やアーム42の数、揺動の方向等は、適宜、変更されてもよい。
【0048】
例えば、機内ロボット20でワーク110搬送を行う場合には、
図6、
図7に示すように、第一アーム42aと、ハンド形式のエンドエフェクタ46と、第一関節44aと、を備えた構成としてもよい。ワーク110を搬送する場合、機内ロボット20は、工具主軸38や回転工具100に対して、様々な姿勢を取る必要がないため、機内ロボット20の関節44の数を少なくすることが可能となる。特に、主軸ヘッド36が、揺動可能である場合には、主軸ヘッド36そのものの自由度が高くなるため、機内ロボット20の関節44の数が少なくても、エンドエフェクタ46の自由度を高くすることができる。また、旋削においては、加工の途中でワーク110を反転させたい場合も多い。かかる旋削機能を備えた複合加工機の場合において、ハンド形式のエンドエフェクタ46を有した機内ロボット20を設けると、機内ロボット20の公転移動を利用して、ワーク110の反転を容易に行うことができる。
【0049】
また、機内ロボット20は、1以上のアーム、1以上の関節を備えたアーム型ロボットであることが望ましいが、他の形式のロボットでもよい。したがって、機内ロボット20は、例えば、2軸または3軸の直交するスライド軸により構成される直交ロボットや、パラレルメカニズムを用いたパラレルリンクロボット等でもよい。また、機内ロボット20の移動(公転)の中心軸は、工具回転軸Rtと厳密に一致している必要はなく、若干のズレがあってもよい。また、連結機構40は、機内ロボット20が工具回転軸Rtを中心として工具主軸装置16の周囲を移動できるように、機内ロボット20を工具主軸装置16に取り付けるのであれば、他の構成でもよい。例えば、連結機構40は、ベアリングに替えて、主軸ヘッド36の周囲に配された略環状または略矩形状のレールを備えた構成でもよい。この場合、機内ロボット20は、レールに沿って移動可能に構成される。また、連結機構40は、機内ロボット20と別体でもよいし、機内ロボット20と一体化されていてもよい。機内ロボット20の主要な部分が、工具回転軸Rtを中心として、工具主軸装置16の周囲を移動できる構成であればよい。
【0050】
また、これまでの説明では、回転工具100を保持する工具主軸装置16を有する複合加工機を例に挙げて説明したが、本実施形態の技術は、他の工作機械に適用されてもよい。本実施形態の機内ロボットは、刃物台やワーク主軸装置を有さない、マシニングセンタやフライス盤に搭載されてもよい。また、別の形態として、本実施形態の機内ロボットは、規定の放射軸方向に、エネルギまたは材料を放射して、ワークを造形する工作機械に設けられてもよい。エネルギを放射する工作機械としては、例えば、ウォータジェット加工機、レーザ加工機、放電加工機等が挙げられる。材料を放射する工作機械としては、3Dプリンタに代表される積層造形機が挙げられる。こうした工作機械は、エネルギまたは材料を規定の放射軸向に放射する放射ヘッドが設けられている。この場合、連結機構は、放射軸を中心として、機内ロボットが放射ヘッドの周囲を移動できるように、機内ロボットを放射ヘッドに取り付ける。また、工具主軸装置や放射ヘッドに取り付けられる機内ロボットは、一つに限らず、複数でもよい。