(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的とするところは、不織布が採用された係合層を有する面ファスナー雌部材であって、面ファスナー雄部材との係合力に優れた、面ファスナー雌部材を提供することにある。また、本発明の目的とするところは、本発明の面ファスナー雌部材を有する面ファスナーを提供することにある。また、本発明の目的とするところは、本発明の面ファスナー雌部材を有する衛生用品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の面ファスナー雌部材は、
面ファスナー雄部材に係合可能な係合層と該係合層を保持する物性層とを有する面ファスナー雌部材であって、
該係合層が繊維の不織布を含み、
式(1)で表される柔軟性指数Aが0.004g
−2以上である。
A=1/(P1×P2) (1)
P1:幅25mmの長尺状の面ファスナー雌部材の長尺方向の前端部と後端部を巻径20mmのリング状となるようにステープラーで連結して得られるリング体に、軸方向から圧縮荷重を加え、該リング体が変形する際の最大圧縮荷重。
P2:幅25mmの長尺状の面ファスナー雌部材の長尺方向の前端部と後端部を巻径20mmのリング状となるようにステープラーで連結して得られるリング体に、幅方向から圧縮荷重を加え、該リング体が変形する際の最大圧縮荷重。
【0008】
1つの実施形態においては、上記柔軟性指数Aが0.01g
−2〜0.08g
−2である。
【0009】
1つの実施形態においては、上記柔軟性指数Aが0.02g
−2〜0.05g
−2である。
【0010】
1つの実施形態においては、上記P1が70g以下である。
【0011】
1つの実施形態においては、上記P1が15g〜40gである。
【0012】
1つの実施形態においては、上記P2が4.05g以下である。
【0013】
1つの実施形態においては、上記P2が1g〜2.5gである。
【0014】
1つの実施形態においては、上記係合層中の不織布の坪量と上記物性層中の不織布の坪量との合計が60g/m
2以下である。
【0015】
1つの実施形態においては、上記係合層中の不織布の坪量と上記物性層中の不織布の坪量との合計が30g/m
2〜47g/m
2である。
【0016】
1つの実施形態においては、上記面ファスナー雌部材の密度が110kg/m
3以下である。
【0017】
1つの実施形態においては、上記面ファスナー雌部材の密度が50kg/m
3以下である。
【0018】
1つの実施形態においては、上記面ファスナー雌部材が不織布のみからなる。
【0019】
1つの実施形態においては、上記面ファスナー雌部材がエンボスパターンを有する。
【0020】
1つの実施形態においては、上記面ファスナー雌部材の表面全体の面積に対する上記エンボスパターンによる溶着部の面積の割合が35%以下である。
【0021】
1つの実施形態においては、上記面ファスナー雌部材の表面全体の面積に対する上記エンボスパターンによる溶着部の面積の割合が12%〜28%である。
【0022】
1つの実施形態においては、上記エンボスパターンによる溶着部の厚みが100μm以下である。
【0023】
1つの実施形態においては、上記エンボスパターンによる溶着部の厚みが25μm〜55μmである。
【0024】
1つの実施形態においては、上記エンボスパターンが不連続のエンボスパターンである。
【0025】
1つの実施形態においては、上記繊維の表面と上記物性層の上記係合層側の表面が、同種のポリマーを含む。
【0026】
1つの実施形態においては、上記ポリマーがポリオレフィンである。
【0027】
本発明の面ファスナーは、本発明の面ファスナー雌部材と、該面ファスナー雌部材と係合する面ファスナー雄部材とを有する。
【0028】
本発明の衛生用品は、本発明の面ファスナー雌部材を有する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、不織布が採用された係合層を有する面ファスナー雌部材であって、面ファスナー雄部材との係合力に優れた、面ファスナー雌部材を提供することができる。また、そのような面ファスナー雌部材を有する面ファスナーを提供することができる。また、そのような面ファスナー雌部材を有する衛生用品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
≪面ファスナー雌部材≫
本発明の面ファスナー雌部材は、雄部材(メカニカルフック部材ともいう)に係合可能な係合層を有する面ファスナー雌部材である。面ファスナー雌部材の係合層とは、具体的には、面ファスナー雄部材の係合用フック(あるいはそれと同等の性質を有するもの)が係合可能な層である。本発明の面ファスナー雌部材と、該面ファスナー雌部材と係合する面ファスナー雄部材とを有するものが、面ファスナーとなる。
【0032】
本発明の面ファスナー雌部材は、面ファスナー雄部材に係合可能な係合層と該係合層を保持する物性層とを有する。本発明の面ファスナー雌部材は、このような係合層と物性層とを有していれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の部材を有していても良い。本発明の面ファスナー雌部材は、好ましくは、面ファスナー雄部材に係合可能な係合層と該係合層を保持する物性層とからなる。
【0033】
本発明の面ファスナー雌部材の厚みは、目的に応じて、任意の適切な厚みを設定し得る。本発明の面ファスナー雌部材の厚みは、代表的には、好ましくは、0.2mm〜5.0mmであり、より好ましくは、0.3mm〜4.0mmであり、さらに好ましくは、0.5mm〜3.0mmであり、特に好ましくは、0.5mm〜2.0mmである。なお、本発明において面ファスナー雌部材(不織布)の厚みは、後述する方法に基づき測定される。
【0034】
係合層は、繊維の不織布を含む。係合層は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。係合層は、好ましくは、繊維の不織布のみからなる。
【0035】
係合層に含まれる繊維の不織布は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0036】
係合層に含まれる繊維の不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、接着接合不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、スパンボンドメルトブロースパンボンド不織布、スパンボンドメルトブローメルトブロースパンボンド不織布、非接合不織布、エレクトロスパン不織布、フラッシュスパン不織布(例えば、DuPont社のTYVEKTM)、カーデッド不織布などが挙げられる。これらの不織布の中でも、好ましくは、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、接着接合不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、スパンボンドメルトブロースパンボンド不織布、スパンボンドメルトブローメルトブロースパンボンド不織布であり、より好ましくは、スパンボンド不織布、エアスルー不織布であり、より好ましくは、スパンボンド不織布である。係合層に含まれる繊維の不織布として、例えば、サーマルポイントボンドされたスパンボンド不織布やエアスルー不織布を用いることにより、係合層に含まれる不織布を構成する繊維同士が結合点を有し得る。これにより、本発明の面ファスナー雌部材がエンボスパターンを有する場合に、エンボスパターン部分はエンボス処理によって係合層に含まれる不織布を構成する繊維同士がしっかりした結合点を有するだけでなく、エンボスパターンのない領域においても、係合層に含まれる不織布を構成する繊維同士が結合点を有する。このような構造を達成できることにより、本発明の面ファスナー雌部材は、不織布が採用された係合層を有する面ファスナー雌部材であって、面ファスナー雄部材との係合力に優れる。
【0037】
係合層に含まれる繊維の不織布がスパンボンド不織布の場合、係合層に含まれる繊維の不織布を光学顕微鏡で観察した際に確認される単位面積当たりの結合点の個数は、エンボスパターンのない領域において、17mm×13mmの視野(7.5倍)において、好ましくは10個〜200個であり、より好ましくは30個〜150個であり、さらに好ましくは50個〜100個である。係合層に含まれる繊維の不織布がスパンボンド不織布の場合、係合層に含まれる繊維の不織布を光学顕微鏡で観察した際に確認される単位面積当たりの結合点の個数が上記範囲内に収まることにより、本発明の面ファスナー雌部材は、面ファスナー雄部材を係合してから剥離した後の係合層の毛羽立ちをより効果的に抑えることができる。
【0038】
係合層に含まれる繊維の不織布がエアスルー不織布の場合、係合層に含まれる繊維の不織布をSEMで観察した際に確認される単位面積当たりの結合点の個数は、エンボスパターンのない領域において、1.3mm×1.0mmの視野(100倍)において、好ましくは1個以上であり、より好ましくは2個〜100個であり、さらに好ましくは5個〜50個である。係合層に含まれる繊維の不織布がエアスルー不織布の場合、係合層に含まれる繊維の不織布をSEMで観察した際に確認される単位面積当たりの結合点の個数が上記範囲内に収まることにより、本発明の面ファスナー雌部材は、面ファスナー雄部材を係合してから剥離した後の係合層の毛羽立ちをより効果的に抑えることができる。
【0039】
係合層に含まれる繊維の不織布は、均一な構造体である繊維を含んでもよく、芯鞘構造、サイドバイサイド構造、海島構造、および他の二成分構造などの、二成分構造体である複合繊維を含んでもよい。不織布の詳細な説明に関しては、例えば、「Nonwoven Fabric Primer and Reference Sampler」、E.A.Vaughn、Association of the Nonwoven Fabrics Industry、第3版(1992)を参照することができる。
【0040】
係合層に含まれる不織布を構成する繊維としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な繊維を採用し得る。このような繊維は、例えば、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、エラストマー、レーヨン、セルロース、アクリル、それらのコポリマー、またはそれらのブレンド、またはそれらの混合物などを含む。このような繊維は、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、好ましくは、ポリオレフィンの繊維(ポリオレフィン繊維)、ポリエステルの繊維(ポリエステル繊維)、および、ポリオレフィンとポリエステルから選ばれる2種以上の樹脂の複合繊維から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0041】
ポリオレフィン繊維としては、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、α−オレフィンコポリマー繊維などが挙げられる。ポリオレフィン繊維としては、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、好ましくは、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維であり、より好ましくは、ポリプロピレン繊維である。
【0042】
ポリエステル繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリ乳酸繊維、ポリグリコール酸繊維などが挙げられる。ポリエステル繊維としては、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維である。
【0043】
ポリオレフィンとポリエステルから選ばれる2種以上の樹脂の複合繊維としては、例えば、芯鞘構造を有する繊維、サイドバイサイド構造を有する繊維、中空繊維などが挙げられる。ここでいう「ポリオレフィンとポリエステルから選ばれる2種以上の樹脂の複合繊維」とは、2種以上のポリオレフィンの樹脂の複合繊維、2種以上のポリエステルの樹脂の複合繊維、1種以上のポリオレフィンと1種以上のポリエステルの樹脂の複合繊維を意味する。
【0044】
ポリオレフィンとポリエステルから選ばれる2種以上の樹脂の複合繊維としては、具体的には、例えば、2種類のポリオレフィンの一方を芯部、もう一方を鞘部に有する、芯鞘構造を有する繊維、ポリエステルを芯部、ポリオレフィンを鞘部に有する、芯鞘構造を有する繊維、ポリオレフィンとポリエステルがサイドバイサイド構造をなす繊維などが挙げられる。
【0045】
係合層に含まれる不織布を構成する繊維は、捲縮性繊維であってもよい。捲縮性繊維としては、例えば、サイドバイサイド構造、もしくは、偏配置した芯鞘構造を有する凝固点の異なる2つの成分を含有する繊維であって、溶融状態から固体状態に相変化するときに、凝固点の高い成分が先行して凝固、収縮することにより、比較的半径の小さい微細なコイル状捲縮を発現する繊維などが挙げられる。
【0046】
係合層に含まれる不織布を構成する繊維は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでよい。このような他の成分としては、例えば、他のポリマー、粘着付与剤、可塑剤、劣化防止剤、顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、発泡剤、熱安定化剤、光安定化剤、無機フィラー、有機フィラーなどが挙げられる。これらは、1種のみであっても、2種以上であっても良い。係合層に含まれる不織布を構成する繊維中の他の成分の含有割合は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは7重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、特に好ましくは2重量%以下であり、最も好ましくは1重量%以下である。
【0047】
本発明の面ファスナー雌部材においては、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、係合層中の不織布の密度が、好ましくは5kg/m
3〜100kg/m
3であり、より好ましくは10kg/m
3〜100kg/m
3であり、さらに好ましくは10kg/m
3〜80kg/m
3であり、さらに好ましくは10kg/m
3〜70kg/m
3であり、特に好ましくは10kg/m
3〜60kg/m
3であり、最も好ましくは20kg/m
3〜50kg/m
3である。本発明の面ファスナー雌部材において、係合層中の不織布の密度が上記範囲内に収まることにより、面ファスナー雄部材との係合力により優れ、使い捨ておむつなどでは装着時や排泄後等においてズレ落ちの問題を効果的に解消し得る。本発明の面ファスナー雌部材において、係合層中の不織布の密度が5kg/m
3より小さいと、面ファスナー雄部材が引っかかりにくくなる、もしくは、生産性が悪くコスト高になるというおそれがある。係合層中の不織布の密度が100kg/m
3より大きいと、面ファスナー雌部材の不織布の繊維が密に詰まった状態になるため、面ファスナー雄部材の係合部分が面ファスナー雌部材中に装入され難くなり、優れた係合力が発現できないおそれがある。なお、本発明において係合層中の不織布の密度(kg/m
3)は、不織布の坪量(Xg/m
2)と、後述する方法に基づき測定される不織布の厚み(Ymm)から計算される値である。より具体的には、係合層中の不織布の密度(kg/m
3)は、X/Y(kg/m
3)として計算される。
【0048】
本発明の面ファスナー雌部材においては、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、係合層中の不織布の繊維の直径(以後、単に繊維径ともいう)が、好ましくは5μm〜60μmであり、より好ましくは10μm〜60μmであり、さらに好ましくは10μm〜50μmであり、さらに好ましくは10μm〜40μmであり、特に好ましくは15μm〜40μmであり、最も好ましくは20μm〜40μmである。本発明の面ファスナー雌部材において、係合層中の不織布の繊維の直径が上記範囲内に収まることにより、面ファスナー雄部材との係合力により優れ、使い捨ておむつなどでは装着時や排泄後等においてズレ落ちの問題を効果的に解消し得る。本発明の面ファスナー雌部材において、係合層中の不織布の繊維の直径が5μmより小さいと、面ファスナー雄部材との係合力が低下するおそれがある。係合層中の不織布の繊維の直径が60μmより大きいと、面ファスナー雄部材と係合しにくくなる、もしくは、生産速度が低下してコスト高になるというおそれがある。なお、本発明において係合層中の不織布の繊維の直径(繊維径)は、後述する方法に基づき測定される。
【0049】
本発明の面ファスナー雌部材においては、係合層中の不織布の坪量が、好ましくは10g/m
2〜60g/m
2であり、より好ましくは12g/m
2〜50g/m
2であり、さらに好ましくは15g/m
2〜40g/m
2であり、特に好ましくは15g/m
2〜30g/m
2であり、最も好ましくは15g/m
2〜25g/m
2である。本発明の面ファスナー雌部材において、係合層中の不織布の坪量が上記範囲内に収まることにより、不織布が採用された係合層を有する面ファスナー雌部材であって、面ファスナー雄部材との係合力により優れた、面ファスナー雌部材を提供することができる。
【0050】
物性層の材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な材料を採用し得る。本発明の効果がより発現し得る点で、物性層の材料としては、好ましくは、繊維の不織布、フィルムが挙げられ、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、より好ましくは、繊維の不織布である。すなわち、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、本発明の面ファスナー雌部材は、好ましくは、不織布のみからなる。
【0051】
物性層の材料が繊維の不織布である場合、その不織布は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0052】
物性層の材料が繊維の不織布である場合、その不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、接着接合不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、スパンレース不織布、スパンボンドメルトブロースパンボンド不織布、スパンボンドメルトブローメルトブロースパンボンド不織布、非接合不織布、エレクトロスパン不織布、フラッシュスパン不織布(例えば、DuPont社のTYVEKTM)、カーデッド不織布などが挙げられる。
【0053】
物性層の材料が繊維の不織布である場合、その不織布は、均一な構造体である繊維を含んでもよく、芯鞘構造、サイドバイサイド構造、海島構造、および他の二成分構造などの、二成分構造体である複合繊維を含んでもよい。不織布の詳細な説明に関しては、例えば、「Nonwoven Fabric Primer and Reference Sampler」、E.A.Vaughn、Association of the Nonwoven Fabrics Industry、第3版(1992)を参照することができる。
【0054】
物性層の材料が繊維の不織布である場合、その繊維としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な繊維を採用し得る。このような繊維は、例えば、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、エラストマー、レーヨン、セルロース、アクリル、それらのコポリマー、またはそれらのブレンド、またはそれらの混合物などを含む。このような繊維は、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、好ましくは、ポリオレフィンの繊維(ポリオレフィン繊維)、ポリエステルの繊維(ポリエステル繊維)、および、ポリオレフィンとポリエステルから選ばれる2種以上の樹脂の複合繊維から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0055】
ポリオレフィン繊維としては、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、α−オレフィンコポリマー繊維などが挙げられる。ポリオレフィン繊維としては、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、好ましくは、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維であり、より好ましくは、ポリプロピレン繊維である。
【0056】
ポリエステル繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリ乳酸繊維、ポリグリコール酸繊維などが挙げられる。ポリエステル繊維としては、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維である。
【0057】
ポリオレフィンとポリエステルから選ばれる2種以上の樹脂の複合繊維としては、例えば、芯鞘構造を有する繊維、サイドバイサイド構造を有する繊維、中空繊維などが挙げられる。ここでいう「ポリオレフィンとポリエステルから選ばれる2種以上の樹脂の複合繊維」とは、2種以上のポリオレフィンの樹脂の複合繊維、2種以上のポリエステルの樹脂の複合繊維、1種以上のポリオレフィンと1種以上のポリエステルの樹脂の複合繊維を意味する。
【0058】
ポリオレフィンとポリエステルから選ばれる2種以上の樹脂の複合繊維としては、具体的には、例えば、2種類のポリオレフィンの一方を芯部、もう一方を鞘部に有する、芯鞘構造を有する繊維、ポリエステルを芯部、ポリオレフィンを鞘部に有する、芯鞘構造を有する繊維、ポリオレフィンとポリエステルがサイドバイサイド構造をなす繊維などが挙げられる。
【0059】
物性層の材料が繊維の不織布である場合、不織布を構成する繊維は、捲縮性繊維であってもよい。捲縮性繊維としては、例えば、サイドバイサイド構造、もしくは、偏配置した芯鞘構造を有する凝固点の異なる2つの成分を含有する繊維であって、溶融状態から固体状態に相変化するときに、凝固点の高い成分が先行して凝固、収縮することにより、比較的半径の小さい微細なコイル状捲縮を発現する繊維などが挙げられる。
【0060】
物性層の材料が繊維の不織布である場合、不織布を構成する繊維は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでよい。このような他の成分としては、例えば、他のポリマー、粘着付与剤、可塑剤、劣化防止剤、顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、発泡剤、熱安定化剤、光安定化剤、無機フィラー、有機フィラーなどが挙げられる。これらは、1種のみであっても、2種以上であっても良い。係合層に含まれる不織布を構成する繊維中の他の成分の含有割合は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは7重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、特に好ましくは2重量%以下であり、最も好ましくは1重量%以下である。
【0061】
物性層の材料がフィルムである場合、そのフィルムの材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な材料を採用し得る。このような材料としては、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、好ましくは、例えば、10μm〜60μmの厚みの、無延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムなどが挙げられる。
【0062】
物性層が繊維の不織布である場合、物性層中の不織布の坪量は、好ましくは10g/m
2〜40g/m
2であり、より好ましくは10g/m
2〜30g/m
2であり、さらに好ましくは10g/m
2〜25g/m
2であり、特に好ましくは10g/m
2〜20g/m
2である。物性層が繊維の不織布である場合、物性層中の不織布の坪量が上記範囲内に収まることにより、ウェブハンドリング中に幅方向の収縮変形が生じにくく、コスト競争力に優れ、印刷性が良好であり、印刷のシースルー性が良好であり、粘着塗工が容易であり、塗工した粘着剤が係合表面に染みだしにくく、柔軟性が良好である。
【0063】
物性層が繊維の不織布である場合、その繊維の直径は、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは1μm〜40μmであり、さらに好ましくは1μm〜30μmであり、特に好ましくは1μm〜25μmであり、最も好ましくは1μm〜20μmである。物性層が繊維の不織布である場合、その繊維の直径が上記範囲内に収まることにより、ウェブハンドリング中に幅方向の収縮変形が生じにくく、コスト競争力に優れ、印刷性が良好であり、印刷のシースルー性が良好であり、粘着塗工が容易であり、塗工した粘着剤が係合表面に染みだしにくく、柔軟性が良好である。物性層が繊維の不織布である場合、その繊維の直径が40μmより大きいと、ウェブハンドリング中に幅方向の収縮変形が生じやすく、コスト競争力に劣り、印刷性が悪く、粘着塗工が困難であり、塗工した粘着剤が係合表面に染みだすリスクがあるというおそれがある。
【0064】
物性層が繊維の不織布である場合、本発明の面ファスナー雌部材においては、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、不織布の密度が、好ましくは5kg/m
3〜200kg/m
3であり、より好ましくは20kg/m
3〜150kg/m
3であり、さらに好ましくは50kg/m
3〜150kg/m
3であり、さらに好ましくは50kg/m
3〜120kg/m
3であり、特に好ましくは60kg/m
3〜120kg/m
3であり、最も好ましくは70kg/m
3〜120kg/m
3である。なお、本発明において物性層中の不織布の密度(kg/m
3)は、不織布の坪量(Xg/m
2)と、後述する方法に基づき測定される不織布の厚み(Ymm)から計算される値である。より具体的には、物性層中の不織布の密度(kg/m
3)は、X/Y(kg/m
3)として計算される。
【0065】
物性層が繊維の不織布である場合、異なる繊維の不織布の積層体(例えば、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体など)であってもよい。
【0066】
なお、厚さ方向で繊維の直径が大きく異なる場合(例えば、SMS、SSMMSなど)、各々でN=5以上で同数の繊維の直径を計測し、その平均値を繊維の直径とした。ただし、スパンボンドやスパンメルトなど、熱溶着などにより局所的に厚さが薄くなっている部分は含まないものとした。
【0067】
物性層がフィルムである場合、その厚みは、好ましくは60μm以下であり、より好ましくは10μm〜50μmであり、さらに好ましくは10μm〜40μmであり、特に好ましくは10μm〜30μmであり、最も好ましくは15μm〜25μmである。物性層がフィルムである場合、その厚みが上記範囲内に収まることにより、ウェブハンドリング中に幅方向の収縮変形が生じにくく、コスト競争力に優れ、印刷のシースルー性が良好であり、粘着塗工が容易であり、柔軟性が良好である。物性層がフィルムである場合、その厚みが60μmより大きいと、コスト競争力で劣り、印刷のシースルー性が悪化し、柔軟性が悪化するというおそれがある。
【0068】
本発明の面ファスナー雌部材においては、係合層中の不織布の坪量と物性層中の不織布の坪量との合計である総坪量が、好ましくは60g/m
2以下であり、より好ましくは10g/m
2〜57g/m
2であり、さらに好ましくは15g/m
2〜53g/m
2であり、特に好ましくは20g/m
2〜50g/m
2であり、最も好ましくは30g/m
2〜47g/m
2である。本発明の面ファスナー雌部材において、係合層中の不織布の坪量と物性層中の不織布の坪量との合計である総坪量が上記範囲内に収まることにより、面ファスナー雄部材との係合力により優れる。また、本発明の面ファスナー雌部材において、係合層中の不織布の坪量と物性層中の不織布の坪量との合計である総坪量が上記範囲内に収まることにより、ウェブハンドリング中に幅方向の収縮変形がより生じにくく、コスト競争力により優れ、印刷性がより良好であり、印刷のシースルー性がより良好であり、粘着塗工がより容易であり、塗工した粘着剤が係合表面により染みだしにくく、柔軟性がより良好である。
【0069】
本発明の面ファスナー雌部材の密度は、好ましくは110kg/m
3以下であり、より好ましくは5kg/m
3〜110kg/m
3であり、さらに好ましくは10kg/m
3〜110kg/m
3であり、さらに好ましくは10kg/m
3〜80kg/m
3であり、さらに好ましくは10kg/m
3〜70kg/m
3であり、特に好ましくは10kg/m
3〜60kg/m
3であり、最も好ましくは20kg/m
3〜50kg/m
3である。本発明の面ファスナー雌部材の密度が上記範囲内に収まることにより、面ファスナー雄部材との係合力により優れ、使い捨ておむつなどでは装着時や排泄後等においてズレ落ちの問題を効果的に解消し得る。本発明の面ファスナー雌部材の密度が100kg/m
3より大きいと、面ファスナー雌部材の不織布の繊維が密に詰まった状態になるため、面ファスナー雄部材の係合部分が面ファスナー雌部材中に装入され難くなり、優れた係合力が発現できないおそれがある。なお、本発明の面ファスナー雌部材の密度(kg/m
3)は、本発明の面ファスナー雌部材中の不織布の坪量(Xg/m
2)と、後述する方法に基づき測定される本発明の面ファスナー雌部材中の不織布の厚み(Ymm)から計算される値である。より具体的には、本発明の面ファスナー雌部材の密度(kg/m
3)は、X/Y(kg/m
3)として計算される。
【0070】
本発明の面ファスナー雌部材においては、好ましくは、係合層に含まれる不織布を構成する繊維の表面と物性層の該係合層側の表面が、同種のポリマーを含む。係合層に含まれる不織布を構成する繊維の表面と物性層の該係合層側の表面が同種のポリマーを含むことにより、面ファスナー雄部材との係合力により優れた面ファスナー雌部材を提供することができる。ここで、「係合層に含まれる不織布を構成する繊維の表面」とは、該繊維の表面であればよく、例えば、芯鞘構造を有する繊維における鞘部などがこれにあたる。
【0071】
係合層に含まれる不織布を構成する繊維の表面と物性層の該係合層側の表面が同種のポリマーを含む場合、そのポリマーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリマーを採用し得る。このようなポリマーとしては、好ましくはポリオレフィンである。係合層に含まれる不織布を構成する繊維の表面と物性層の該係合層側の表面が同種のポリオレフィンを含むことにより、面ファスナー雄部材との係合力により優れた面ファスナー雌部材を提供することができる。
【0072】
本発明の面ファスナー雌部材は、式(1)で表される柔軟性指数Aが0.004g
−2以上である。
A=1/(P1×P2) (1)
【0073】
ここで、P1は、幅25mmの長尺状の面ファスナー雌部材の長尺方向の前端部と後端部を巻径20mmのリング状となるようにステープラーで連結して得られるリング体に、軸方向から圧縮荷重を加え、該リング体が変形する際の最大圧縮荷重である。また、P2は、幅25mmの長尺状の面ファスナー雌部材の長尺方向の前端部と後端部を巻径20mmのリング状となるようにステープラーで連結して得られるリング体に、幅方向から圧縮荷重を加え、該リング体が変形する際の最大圧縮荷重である。P1およびP2のより詳細な測定方法については後述する。
【0074】
本発明の面ファスナー雌部材は、式(1)で表される柔軟性指数Aが0.004g
−2以上であり、好ましくは0.004g
−2〜0.5g
−2であり、より好ましくは0.006g
−2〜0.3g
−2であり、さらに好ましくは0.008g
−2〜0.1g
−2であり、さらに好ましくは0.01g
−2〜0.08g
−2であり、特に好ましくは0.015g
−2〜0.05g
−2であり、最も好ましくは0.02g
−2〜0.05g
−2である。柔軟性指数Aが上記範囲内に収まることにより、面ファスナー雄部材との係合力に優れた、面ファスナー雌部材を提供することができる。柔軟性指数Aが上記範囲内から外れると、面ファスナー雄部材との係合力が低下するおそれがある。
【0075】
本発明者らは、柔軟性指数Aを上記特定の範囲内に調整することにより、驚くべきことに、面ファスナー雄部材との係合力が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。おそらく、柔軟性指数Aを上記特定の範囲内に調整することにより、面ファスナー雌部材が適度に十分に柔軟になり、面ファスナー雄部材との係合面積が十分に確保され、面ファスナー雄部材との係合力が向上するものと推察される。そして、柔軟性指数Aが上記特定の範囲から外れて低すぎると、面ファスナー雌部材の柔軟性が十分ではなくなるため、実使用場面で形成され得る3次元曲面状に面ファスナー雌部材が容易に変形し難くなり、面ファスナー雄部材が面ファスナー雌部材に広い範囲で係合できなくなるものと推察される。なお、柔軟性指数Aが上記特定の範囲から外れて大き過ぎると、面ファスナー雌部材が過度に柔らかくなってしまい、実使用における取り扱い性が低下するだけでなく、面ファスナー雄部材が面ファスナー雌部材にうまく係合できなくなるものと推察される。
【0076】
P1は、好ましくは70g以下であり、より好ましくは1g〜60gであり、さらに好ましくは5g〜50gであり、特に好ましくは10g〜40gであり、最も好ましくは15g〜40gである。P1が上記範囲内に収まることにより、面ファスナー雄部材との係合力により優れた、面ファスナー雌部材を提供することができる。P1が上記範囲内から外れると、面ファスナー雄部材との係合力が低下するおそれがある。
【0077】
P2は、好ましくは4.05g以下であり、より好ましくは0.1g〜4gであり、さらに好ましくは0.5g〜3.5gであり、特に好ましくは0.8g〜3gであり、最も好ましくは1g〜2.5gである。P2が上記範囲内に収まることにより、面ファスナー雄部材との係合力により優れた、面ファスナー雌部材を提供することができる。P2が上記範囲内から外れると、面ファスナー雄部材との係合力が低下するおそれがある。
【0078】
本発明の面ファスナー雌部材は、エンボスパターンを有する。このようなエンボスパターンは、好ましくは、エンボス処理によって形成される。エンボスパターンの具体例としては、例えば、連続格子状、不連続格子状、連続曲線状、不連続曲線状、連続ジグザグ状、不連続ジグザグ状、連続直線状、不連続直線状、円状、楕円状、中空円状、中空楕円状、円弧状、中空円弧状などが挙げられる。
【0079】
本発明の面ファスナー雌部材が有するエンボスパターンとしては、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、好ましくは、不連続のエンボスパターンであり、より好ましくは、円弧状のエンボスパターンである。円弧状のエンボスパターンを有する本発明の面ファスナー雌部材の概略平面図を
図1に示す。
図1において、本発明の面ファスナー雌部材100は、円弧状のエンボスパターンを構成する複数のエンボス10を有する。
図1において、本発明の面ファスナー雌部材は、エンボスパターンのない領域20を有する。円弧状のエンボスパターンにおいては、好ましくは、個々のエンボスが「角」を有さないエンボスである。
【0080】
本発明の面ファスナー雌部材においては、係合層に含まれる繊維の不織布として、例えば、スパンボンド不織布やエアスルー不織布を用いることにより、係合層に含まれる不織布を構成する繊維同士が結合点を有し得る。これにより、本発明の面ファスナー雌部材がエンボスパターンを有する場合に、エンボスパターン部分(
図1では複数のエンボス10の部分)はエンボス処理によって係合層に含まれる不織布を構成する繊維同士がしっかりした結合点を有するだけでなく、エンボスパターンのない領域(
図1ではエンボスパターンのない領域20)においても、係合層に含まれる不織布を構成する繊維同士が結合点を有する。このような構造を達成できることにより、本発明の面ファスナー雌部材は、面ファスナー雄部材との係合力により優れる。
【0081】
本発明の面ファスナー雌部材は、エンボスパターンを構成する複数のエンボスのエンボス幅が、好ましくは0.1mm〜3.0mmであり、より好ましくは0.3mm〜2.0mmであり、さらに好ましくは0.3mm〜1.5mmであり、特に好ましくは0.5mm〜1.5mmであり、最も好ましくは0.5mm〜1.0mmである。エンボス幅が上記範囲内に収まることにより、本発明の面ファスナー雌部材は、面ファスナー雄部材との係合力により優れる。なお、本発明の面ファスナー雌部材における、エンボス幅とは、例えば、
図1に示すエンボス10のMD方向の幅Wのことである。
【0082】
本発明の面ファスナー雌部材は、エンボスパターンを構成する複数のエンボス中の隣接する2つのエンボスの距離が、MD方向のいずれの線上においても、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは1mm〜10mmであり、さらに好ましくは1.5mm〜9mmであり、特に好ましくは2mm〜8mmであり、最も好ましくは2.5mm〜7mmである。エンボスパターンを構成する複数のエンボス中の隣接する2つのエンボスの距離が、MD方向のいずれの線上においても、上記範囲内に収まることにより、本発明の面ファスナー雌部材は、面ファスナー雄部材との係合力により優れる。なお、本発明の面ファスナー雌部材における、エンボスパターンを構成する複数のエンボス中の隣接する2つのエンボスのMD方向の線上の距離とは、例えば、
図1に示すMD方向の線P(CD方向のいずれの位置におけるMD方向の線でもよい)上における、隣接する2つのエンボスの距離Lのことである。すなわち、距離Lは、エンボスパターンにおけるMD方向の線(CD方向のいずれの位置におけるMD方向の線でもよい)上における、隣接する2つのエンボスの距離の最大値(最大エンボス間距離と称することがある)である。
【0083】
エンボスの深さは、好ましくは0.1mm〜2.0mmであり、より好ましくは0.2mm〜1.8mmであり、さらに好ましくは0.3mm〜1.5mmであり、特に好ましくは0.5mm〜1.5mmであり、最も好ましくは0.7mm〜1.2mmである。エンボスの深さが上記範囲内に収まることにより、本発明の面ファスナー雌部材は、面ファスナー雄部材との係合力により優れる。
【0084】
本発明の面ファスナー雌部材は、該面ファスナー雌部材の表面全体の面積に対する、エンボスパターンによる溶着部の面積の割合(以下、「エンボス溶着面積割合」と称することがある)が、好ましくは35%以下であり、より好ましくは5%〜33%であり、さらに好ましくは10%〜30%であり、特に好ましくは12%〜28%であり、最も好ましくは12%〜23%である。上記エンボス溶着面積割合が上記範囲内に収まることにより、本発明の面ファスナー雌部材は、面ファスナー雄部材との係合力により優れる。
【0085】
本発明の面ファスナー雌部材は、エンボスパターンによる溶着部の厚みが、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは10μm〜100μmであり、さらに好ましくは15μm〜80μmであり、さらに好ましくは20μm〜70μmであり、特に好ましくは25μm〜60μmであり、最も好ましくは25μm〜55μmである。エンボスパターンによる溶着部の厚みが上記範囲内に収まることにより、本発明の面ファスナー雌部材は、面ファスナー雄部材との係合力により優れる。
【0086】
≪本発明の面ファスナー雌部材の製造方法≫
本発明の面ファスナー雌部材の好ましい製造方法の一つとしては、原反不織布を積層し、パターンロールによるエンボス処理を、任意の適切な処理温度(例えば、160℃)、任意の適切な線圧(例えば、160N/mm)、任意の適切な処理速度(例えば、10m/分)で施して、所望の面ファスナー雌部材を得る。
【0087】
本発明の面ファスナー雌部材の別の好ましい製造方法の一つとしては、原反不織布を積層し、超音波融着設備によるエンボス処理を、任意の適切な周波数(例えば、20kHz(出力強度1800W))、任意の適切な処理速度(例えば、50m/分)で施して、所望の面ファスナー雌部材を得る。
【0088】
≪本発明の面ファスナー雌部材の用途≫
本発明の面ファスナー雌部材は、面ファスナー雌部材と係合する面ファスナー雄部材と組み合わせることにより、面ファスナーとすることができる。すなわち、本発明の面ファスナーは、本発明の面ファスナー雌部材と、該面ファスナー雌部材と係合する面ファスナー雄部材とを有する。また、本発明の面ファスナー雌部材は、本発明の効果を有効に利用できる任意の適切な物品に用いることができる。このような物品としては、代表的には、例えば、衛生用品などが挙げられる。すなわち、本発明の衛生用品は、本発明の面ファスナー雌部材を有する。このような衛生用品としては、例えば、おむつ(特に、使い捨ておむつ)、サポーター、マスクなどが挙げられる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、特に断りがない限り、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。
【0090】
<柔軟性指数A>
(リング体の作製)
得られた面ファスナー雌部材をMD方向に25mm×CD方向に50mmに切出し、切出した面ファスナー雌部材の物性層表面を巻き内側として、CDが円周となるようにリング状とし、端部が互いに重なることのないようにステープラーで2箇所固定した。
(P1の測定)
得られた面ファスナー雌部材のリング体に軸方向から50mm/分の速度で14mmまで圧縮荷重を加え、該リング体が変形する際の最大圧縮荷重を測定した。測定機はミネベア株式会社製テクノグラフTG−2kNを用いた。この操作を合計3回繰り返し、その平均値をP1とした。
(P2の測定)
得られた面ファスナー雌部材のリング体に幅方向から高さ35mmから高さ5mmまでプラスティック板を自由落下し圧縮荷重を加え、該リング体が変形する際の最大圧縮荷重を測定した。測定機は株式会社エー・アンド・デイ社製GX−300を用いた。この操作を合計3回繰り返し、その平均値をP2とした。
(柔軟性指数Aの算出)
A=1/(P1×P2)にしたがって、柔軟性指数Aを算出した。
【0091】
<係合性の評価>
得られた面ファスナー雌部材を5cm×5cmに切出し、市販の紙オムツの上に静置した。一方、60μmの厚さのポリエチレン製フィルムの導きを有する25mm×13mmの雄部材(市販されている面ファスナー用のメカニカルフック部材)を準備し、25mmの辺と係合層の流れ方向が平行になるように、雌部材上に静置し、指で圧着した。その後、上記導きを手で剥離し係合性を確認した。
評価は下記の基準に従って行った。
○○○:係合性が非常に強い。
○○:係合性が十分に強い。
○:係合性が十分。
×:係合性が不足もしくは係合しない。
【0092】
<繊維径測定>
キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ「VHX−1000」を用いて、倍率500倍で不織布表面を撮影し、同機の画像解析ソフトにてN=5以上繊維径を計測し、その平均値を繊維径とした。
【0093】
<不織布厚さ>
キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ「VHX−1000」を用いて、倍率100倍で不織布断面を撮影し、同機の画像解析ソフト不織布厚さを計測した。なお、厚さ測定においては、不織布断面の上部と下部のそれぞれにおいて、繊維との交点が10点となるような平行な線を、それぞれ上辺および下辺とし、上辺および下辺の間の長さを不織布厚さとした。
【0094】
〔実施例1−11、比較例1−3〕
表1、表2に示す原反不織布を積層し、エンボスパターンロールによるエンボス処理を、処理温度200℃、線圧160N/mm、処理速度20m/分で施して、面ファスナー雌部材を得た。
用いたエンボスパターンは、
図1に示す円弧状のエンボスパターンであり、エンボス幅、隣接する2つのエンボスのMD方向の線上の距離の最大値(最大エンボス間距離)、エンボス溶着面積割合、エンボスパターンによる溶着部の厚みは表1、表2に示す通りであった。
【0095】
〔実施例12−13〕
表2に示す原反不織布を積層し、超音波融着設備(Herrmann社製、装置名:MICROBOND(ULTRABOND48:20))によるエンボス処理を、周波数20kHz(出力強度1800W)、処理速度50m/分で施して、面ファスナー雌部材を得た。
用いたエンボスパターンは、
図1に示す円弧状のエンボスパターンであり、エンボス幅、隣接する2つのエンボスのMD方向の線上の距離の最大値(最大エンボス間距離)、エンボス溶着面積割合、エンボスパターンによる溶着部の厚みは表2に示す通りであった。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】