(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材と、該基材上に形成されたインク受容層と、該インク受容層上に形成された着色インク層と、少なくとも着色インク層を覆うように形成されたクリアー層とを備える建築板であって、前記インク受容層が、熱軟化温度が90〜193℃の樹脂(X)であって、ウレタン樹脂からなる樹脂(X)を含む塗料組成物により形成されることを特徴とする建築板。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の建築板を詳細に説明する。本発明の建築板は、基材と、該基材上に形成されたインク受容層と、該インク受容層上に形成された着色インク層と、少なくとも着色インク層を覆うように形成されたクリアー層とを備える建築板であって、前記インク受容層が、熱軟化温度が90〜193℃の樹脂(X)であって、ビニル樹脂及びウレタン樹脂のうち少なくとも一方からなる樹脂(X)を含む塗料組成物により形成されることを特徴とする。
【0021】
本発明の建築板を構成する基材は、建材である限り特に限定されるものではない。建材の具体例としては、例えば、窯業系サイディングボード、フレキシブルボードや、珪酸カルシウム板、石膏スラグバーライト板、木片セメント板、石綿セメント板、パルプセメント板、プレキャストコンクリート板、軽量気泡コンクリート(ALC)板及び石膏ボード等の窯業建材板、並びにアルミニウム、鉄及びステンレス等の金属建材板等が挙げられる。基材の表面性状は、特に制限はなく、表面が平滑なものであっても、凹凸形状を有するものであってもよい。また、基材は、シーラーやプライマー等によって下地処理が施されていてもよい。
【0022】
本発明の建築板を構成するインク受容層は、主に着色インク層を定着させる目的で、基材上に配置されている。本発明の建築板においては、インク受容層が、熱軟化温度が90〜193℃の樹脂(X)であって、ビニル樹脂及びウレタン樹脂のうち少なくとも一方からなる樹脂(X)を含む塗料組成物により形成される。このような樹脂(X)を含む塗料組成物を用いることで、インクの発色性、温感性及び可撓性に優れるインク受容層を基材上に形成させることができる。
【0023】
上記インク受容層の形成に用いる塗料組成物(以下、インク受容層用塗料組成物という)は、熱軟化温度が90〜193℃の樹脂(X)であって、ビニル樹脂及びウレタン樹脂のうち少なくとも一方からなる樹脂(X)を含むことを要する。ここで、樹脂(X)は、熱軟化温度が90〜193℃のビニル樹脂及びウレタン樹脂のうち少なくとも一方からなっており、このようなビニル樹脂又はウレタン樹脂は、インクの発色性、温感性及び可撓性が高く、同程度の熱軟化温度を有するアクリル樹脂と比べても十分な発色性、温感性及び可撓性を確保することができる。
【0024】
上記樹脂(X)の熱軟化温度は、90〜193℃である必要があり、好ましくは92〜192℃であり、より好ましくは95〜190℃である。
上記熱軟化温度が高くなればインクの発色性及び温感性をより一層向上させることができるものの、上記樹脂(X)の熱軟化温度が193℃を超えると、インク受容層の可撓性が得られない場合がある。
【0025】
本発明において、樹脂(X)の熱軟化温度は、JIS K 7196−1991に準じ、熱機械分析装置(TMA)を用いて測定される。
【0026】
ビニル樹脂は、ビニル基(CH
2=CH−)を有する化合物の重合体であり、常法に従って合成できる。但し、本発明において、ビニル樹脂の合成に使用されるビニル基含有モノマーは、後述するアクリル樹脂の合成に使用されるアクリル成分を除く。ビニル基含有モノマーとしては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、モノマーの種類や重合度等を調整することによって、ビニル樹脂の熱軟化温度を90〜193℃にすることができる。ビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体等が好ましい。また、上記ビニル樹脂には、ビニル基含有モノマーと、マレイン酸やアクリル成分等の他のモノマーとを重合させて得られる重合体も含まれるが、この場合、ビニル基含有モノマーに由来する繰り返し単位の割合はビニル樹脂中50質量%を超える。
【0027】
ウレタン樹脂は、複数のウレタン結合(NHCOO)を有する重合体であり、常法に従いポリオールとポリイソシアネートを反応させることで合成できる。ポリオールやポリイソシアネートの種類や重合度等を調整することによって、ウレタン樹脂の熱軟化温度を90〜193℃にすることができる。
【0028】
上記ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。アクリルポリオールは、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと重合性不飽和基を有する化合物を共重合して得られる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。重合性不飽和基を有する化合物としては、スチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これら重合性不飽和基を有する化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリエステルポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の多塩基カルボン酸とを脱水縮合反応して得られる。また、大豆油、亜麻仁油、米ぬか油、綿実油、桐油、ひまし油、やし油等の天然油を上記多価アルコールで分解して得られる水酸基含有脂肪酸エステルを多価アルコールの全部又は一部として含むこともできる。ポリウレタンポリオールは、上記多価アルコールと、後述するポリイソシアネートとをアルコール過剰の条件で反応して得られる。ポリエーテルポリオールは、例えば、上記多価アルコールや水酸基含有脂肪酸エステルに、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させて得られる。なお、これらポリオールは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族又は芳香族のポリイソシアネートが含まれ、具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のほか、これらイソシアネート化合物の変性体が挙げられる。変性体の具体例としては、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体(例えばトリメチロールプロパン付加物)、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられる。なお、これらポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ウレタン樹脂の合成において、ポリイソシアネートは、ポリオールの水酸基に対してイソシアネート基が0.5〜1.5当量であることが好ましく、0.8〜1.2当量であることが更に好ましい。
【0030】
上記インク受容層において、樹脂(X)の含有量は、2〜40質量%が好ましく、3〜15質量%が更に好ましい。上記含有量が2〜40質量%であると、得られるインク受容層は、インクの発色性、温感性及び可撓性が更に向上しやすい。なお、上記インク受容層用塗料組成物中において、樹脂(X)の含有量は、インク受容層中での上記特定した含有量の範囲を満たすように調整されることが好ましく、例えば、0.5〜20質量%である。
【0031】
上記インク受容層用塗料組成物は、更に、アクリル樹脂(Y)を含むことが好ましい。アクリル樹脂は、インクの発色性が高い上、透明性及び耐久性に優れる樹脂である。また、アクリル樹脂のガラス転移温度は、耐久性及び可撓性の向上効果の観点から、30〜100℃が好ましい。アクリル樹脂のガラス転移温度が30℃以上であると、耐久性が低下しにくく、アクリル樹脂のガラス転移温度が100℃以下であると、可撓性が低下しにくい。
【0032】
本発明において、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)とは、次のFOX式を用いて計算されるものをいう。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wi/Tgi+・・・+Wn/Tgn
【0033】
上記FOX式において、Tgは、n種類のモノマーからなるポリマーのガラス転移温度(K)であり、Tg(1、2、i、n)は、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)であり、W(1、2、i、n)は、各モノマーの質量分率であり、W1+W2+・・・+Wi+・・・+Wn=1である。
【0034】
アクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸並びにそのエステル、アミド及びニトリル等から選択されるアクリル成分の1種又は複数種を重合させて得られる重合体が挙げられる。上記アクリル成分の具体例としては、下記(a)〜(h)に示されるような化合物が挙げられる。但し、下記(h)に示される化合物をアクリル成分として用いる場合、重合反応と競合してシロキサン縮合反応も起こるため、本発明においては、下記(h)に示される化合物を構成単位として含むアクリル樹脂は、アクリルシリコーン樹脂に分類される。また、上記アクリル樹脂には、アクリル成分と、例えば、スチレン等の他のモノマーとを重合させて得られる重合体も含まれるが、この場合、アクリル成分に由来する繰り返し単位の割合はアクリル樹脂中50質量%を超える。
【0035】
(a):(メタ)アクリル酸と炭素数1〜24のアルコールとのエステル
例えば、メチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
(b):多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物
例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
(c):カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー
例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0038】
(d):エポキシ基含有重合性不飽和モノマー
例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
(e):アミノアルキル(メタ)アクリレート
例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
(f):(メタ)アクリルアミド又はその誘導体
例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテル等が挙げられる。
【0041】
(g):(メタ)アクリロニトリル又はその誘導体
例えば、(メタ)アクリロニトリル、3−アミノ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0042】
(h):アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル又はその誘導体
例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
上記インク受容層において、アクリル樹脂の含有量は、2〜35質量%が好ましい。上記含有量が2〜35質量%であると、得られるインク受容層は、インクの発色性、透明性及び耐久性が更に向上しやすい。なお、上記インク受容層用塗料組成物中において、アクリル樹脂の含有量は、インク受容層中の上記特定した含有量の範囲を満たすように調整されることが好ましく、例えば、0.5〜20質量%である。
【0044】
上記インク受容層又はインク受容層用塗料組成物において、樹脂(X)とアクリル樹脂(Y)の質量比(X/Y)は、85/15〜15/85であることが好ましい。両樹脂の質量比が上記特定した範囲内にあれば、両樹脂の効果を更にバランスよく発揮することが可能である。
【0045】
上記インク受容層用塗料組成物は、塗料業界で通常使用される顔料を含んでもよい。上記顔料としては、着色顔料、体質顔料等が挙げられる。着色顔料としては、公知の材料が使用でき、例えば、酸化チタン及びカーボンブラック等の無機顔料やフタロシアニン系顔料及びアゾ系顔料等の有機顔料が挙げられる。また、体質顔料としても、公知の材料が使用でき、例えば、タルク、マイカ、硫酸バリウム、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられる。これら顔料は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
上記インク受容層において、顔料の含有量は、インクの発色性をより向上させる観点から、10〜70質量%が好ましい。なお、上記インク受容層用塗料組成物中において、顔料の含有量は、インク受容層中の上記特定した含有量の範囲を満たすように調整されることが好ましく、例えば、3〜30質量%である。
【0047】
上記インク受容層用塗料組成物には、上述した成分以外にも、塗料業界で通常使用される添加剤、例えば、バインダー樹脂、水、有機溶剤、成膜助剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、粘度調整剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、防腐剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0048】
上記インク受容層用塗料組成物は、上記樹脂(X)と、必要に応じて適宜選択される各種成分とを混合することによって調製できる。なお、樹脂(X)やアクリル樹脂等の樹脂は、溶液、エマルジョン又はディスパージョンの形態で配合されるのが好ましい。また、上記インク受容層用塗料組成物は、水系や有機溶剤系等の各種塗料形態が利用可能である。
【0049】
上記インク受容層用塗料組成物を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法を特に制限無く使用することができる。具体的には、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装、ロールコーター塗装、フローコーター塗装等が挙げられる。特に、基材表面が凹凸を有している場合には、凹凸形状への追従性や、塗装速度の適合性からエアレススプレー塗装や静電塗装が好適である。これら塗布方法においては、所望の膜厚が得られるまで塗装を繰り返し行ってもよい。なお、塗装時の基材の表面温度が30〜80℃に加熱されていることが、良好な被印刷面を形成する上で有効である。
【0050】
上記インク受容層は、基材上にインク受容層用塗料組成物を塗布した後、常温下、又は適度な加温下でこれを放置し、乾燥させることによって形成できる。上記インク受容層は、インクの発色性をより向上させる観点から、その乾燥膜厚が5〜40μmであることが好ましい。
【0051】
本発明の建築板を構成する着色インク層は、建築板に意匠を施す目的で、インク組成物を用いてインク受容層上で印刷を行うことによって形成される。本発明の建築板においては、通常の印刷手段によって着色インク層を形成することができるが、インクジェットプリンターを用いる印刷手段(即ち、インクジェット方式)が好ましい。インクジェットプリンターとしては、例えば、荷電制御方式又はインクオンデマンド方式によりインク組成物を噴出させるインクジェットプリンターを挙げることができる。なお、上記インク組成物は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせたインクセットとして用いてもよい。また、印刷時の基材の表面温度が30〜80℃に加熱されていることが、インクの発色性の観点から有効である。
【0052】
前記インク組成物の形態としては、特に制限されず、水系インク組成物、有機溶剤系インク組成物、活性エネルギー線硬化形インク組成物等の各種インク組成物が利用できる。中でも、速乾性及び環境への負荷が小さい点から、活性エネルギー線硬化形インク組成物を用いることが好ましく、本願のインク受容層上に活性エネルギー線硬化形インク層を積層させることにより、より発色性に優れた意匠を形成することができる。
【0053】
上記着色インク層の形成に用いるインク組成物(以下、着色インク層用インク組成物という)は、建築板に意匠を施す目的で、着色顔料を含む。着色顔料としては、公知の材料が使用でき、例えば、カーボンブラック、黄色酸化鉄、弁柄、複合酸化物(ニッケル・チタン系、クロム・チタン系、ビスマス・バナジウム系、コバルト・アルミニウム系、コバルト・アルミニウム・クロム系、ウルトラマリンブルー)、酸化チタン等の無機顔料や、キナクリドン系、ジケトプロロピール系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アンスラピリミジン系、フタロシアニン系、スレン系、ジオキサジン系、アゾ系等の有機顔料が挙げられる。尚、耐候性の観点から、無機顔料を用いることが好ましい。
【0054】
上記インク組成物中において、上記着色顔料の含有量は、特に限定されるものではない。活性エネルギー線硬化形インク組成物の場合、上記含有量は、インクの発色性の観点から、2〜20質量%であることが好ましい。また、水系インク組成物や有機溶剤系インク組成物の場合、上記含有量は、インクの発色性の観点から、0.2〜10質量%であることが好ましい。
【0055】
上記着色インク層用インク組成物は、分散剤を含むことが好ましい。分散剤としては、水系インク組成物においては、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤及びノニオン性分散剤が好ましく、非水系インク組成物においては、塩基性分散剤(又は塩基性基を有する分散剤)、酸性分散剤(又は酸性基を有する分散剤)、並びに塩基性基と酸性基の両方を有する分散剤が好ましい。なお、分散剤は、市販品を好適に使用することができる。
【0056】
上記インク組成物が水系インク組成物の場合、上記着色顔料の他、バインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等が好適に用いられる。これらの樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記樹脂は、水中に分散させて、樹脂分散液の形態で用いることが好ましい。バインダー樹脂は、インク組成物中に1.0〜10.0質量%含まれることが好ましい。
【0057】
また、上記水系インク組成物においては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール等の溶媒、更には、上述した成分以外にも、インク業界で通常使用される添加剤、例えば、酸化防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、表面調整剤等を本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0058】
上記インク組成物が有機溶剤系インク組成物の場合、上記着色顔料の他、バインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等が好適に用いられる。これらの樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。バインダー樹脂は、インク組成物中に1.0〜10.0質量%含まれることが好ましい。
【0059】
上記有機溶剤系インク組成物に配合される有機溶剤としては、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤やジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等が好適に用いられる。更には、上述した成分以外にも、インク業界で通常使用される添加剤、例えば、酸化防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、表面調整剤等を本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0060】
上記インク組成物が活性エネルギー線硬化形インク組成物の場合、活性エネルギー線重合性モノマーを含む。活性エネルギー線重合性モノマーとは、紫外線等の活性エネルギー線の照射により重合反応を起こすモノマーであり、例えば、活性エネルギー線照射時に反応性を示す官能基として、アクリロイルオキシ基やメタクリロイルオキシ基を有するものが好適である。活性エネルギー線重合性モノマーの重合後に得られるポリマーは、バインダーとして機能する。なお、活性エネルギー線重合性モノマーは、官能基の数に応じて、官能基数が1である単官能モノマー、官能基数が2である2官能モノマー及び官能基数が3以上の多官能モノマーに分類できる。
【0061】
上記活性エネルギー線重合性モノマーのうち、単官能モノマーは、その分子量が1000以下であるものが好ましく、具体例としては、ステアリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、デシルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、イソアミルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、EO(エチレンオキシド)変性2−エチルヘキシルアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。なお、これら単官能モノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
上記活性エネルギー線重合性モノマーのうち、2官能モノマーは、その分子量が1000以下であるものが好ましく、具体例としては、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,7−ヘプタンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、及びジプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。なお、これら2官能モノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
上記活性エネルギー線重合性モノマーのうち、3官能以上の多官能モノマーは、その分子量が2000以下であるものが好ましく、具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。なお、これら多官能モノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
上記活性エネルギー線硬化形インク組成物中において、活性エネルギー線重合性モノマーの含有量は、反応性の観点から、1〜95質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることが更に好ましい。また、インク層の基材追随性及び耐クラック性を向上させる観点から、単官能モノマーを多く配合することが好ましく、上記活性エネルギー線硬化形インク組成物中において、単官能モノマーの含有量は、20〜85質量%であることが好ましい。基材として金属サイディング材を用いる場合、インク層の基材追随性及び耐クラック性が求められる場合がある。
【0065】
また、上記活性エネルギー線重合性モノマーの中でも、インク層の耐擦過性を向上させる観点から、アクリロイルモルホリン、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が好適に挙げられる。同観点から、このような耐擦過性に優れる活性エネルギー線重合性モノマーの含有量は、該インク組成物の全質量中0.5〜60.0質量%であることが好ましく、5.0〜60.0質量%であることがより好ましい。
【0066】
また、上記着色インク層用インク組成物は、アクリレートオリゴマーを使用してもよい。アクリレートオリゴマーとは、アクリロイルオキシ基(CH
2=CHCOO−)を一つ以上有するオリゴマーであり、官能基数は3〜6であることが好ましい。また、アクリレートオリゴマーは、分子量が2000〜20000であることが好ましい。なお、該分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。そして、アクリレートオリゴマーの具体例としては、アミノアクリレートオリゴマー[アミノ基(−NH
2)を複数持つアクリレートオリゴマー]、ウレタンアクリレートオリゴマー[ウレタン結合(−NHCOO−)を複数持つアクリレートオリゴマー]、エポキシアクリレートオリゴマー[エポキシ基を複数持つアクリレートオリゴマー]、シリコーンアクリレートオリゴマー[シロキサン結合(−SiO−)を複数持つアクリレートオリゴマー]、エステルアクリレートオリゴマー[エステル結合(−COO−)を複数持つアクリレートオリゴマー]及びブタジエンアクリレートオリゴマー[ブタジエン単位を複数持つアクリレートオリゴマー]等が挙げられる。なお、上記着色インク層用インク組成物中において、アクリレートオリゴマーの含有量は、例えば0.4〜20.0質量%である。
【0067】
上記活性エネルギー線硬化形インク組成物には、光重合開始剤、光安定剤、重合禁止剤等を配合することが好ましく、更には、上述した成分以外にも、インク業界で通常使用される添加剤、例えば、水、有機溶剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、表面調整剤等を本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0068】
上記活性エネルギー線硬化形インク組成物において、印刷時の温度における表面張力は20〜35mN/mであることが好ましく、また、印刷時の温度における粘度は、5〜15mPa・sであることが好ましい。なお、印刷時のインク組成物の温度は、35〜50℃であることが好ましい。
【0069】
上記インク組成物は、上記着色顔料と、必要に応じて適宜選択される各種成分とを混合することによって調製できる。
【0070】
上記着色インク層用インク組成物が、水系インク組成物又は有機溶剤系インク組成物である場合、印刷後に形成されるインク層を自然乾燥又は強制乾燥させることが好ましい。また、上記着色インク層用インク組成物が、活性エネルギー線硬化形インク組成物である場合、印刷後に形成されるインク層を、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ又は紫外線LED等を用いて紫外線光等の活性エネルギー線を照射して、硬化させることが好ましい。上記インク層を硬化させるために照射する活性エネルギー線の波長は、光重合開始剤の吸収波長と重複していることが好ましく、活性エネルギー線の主波長が360〜425nmであることが好ましい。
【0071】
本発明の建築板を構成するクリアー層は、主に着色インク層の表面を保護する目的で、少なくとも着色インク層を覆うように配置されている。例えば、インク受容層の表面全体が着色インク層で被覆されている場合、クリアー層は、着色インク層の表面にのみ形成され、インク受容層の一部が露出している場合、クリアー層は、着色インク層の表面と、露出したインク受容層の表面に形成される。
【0072】
本発明の建築板において、クリアー層は、例えば、クリアー層用塗料組成物を着色インク層と、場合により露出したインク受容層の表面に塗布し、その後、乾燥等により成膜させることによって形成できる。クリアー層用塗料組成物の塗布方法としては、従来公知の塗布方法を特に制限無く使用することができ、具体的には、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装、ロールコーター塗装、フローコーター塗装等が挙げられる。
【0073】
上記クリアー層用塗料組成物には、従来から公知の各種塗料が利用可能であるが、特に、耐候性のよい塗料が好ましい。具体的に、上記クリアー層用塗料組成物は、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂のいずれかを含むことが好ましく、アクリルシリコーン樹脂を含むことがより好ましい。アクリルシリコーン樹脂は、アクリル樹脂が持つ付着性に加えて、シリコーン樹脂が持つ耐候性を発揮することができる。また、これらの樹脂のうち、2種類以上の樹脂を組み合わせて用いることもできる。
【0074】
クリアー層用塗料組成物に用いられるアクリル樹脂は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸並びにそのエステル、アミド及びニトリル等から選択されるアクリル成分の1種又は複数種を重合させて得られる重合体が挙げられ、段落0034に記載したものが使用できる。
【0075】
アクリルシリコーン樹脂は、通常、アクリル樹脂を構成するような繰り返し単位からなるブロックと、シリコーン樹脂を構成するような繰り返し単位からなるブロックとを有する樹脂であり、例えば、上述のアクリル樹脂の合成に関する説明において上記(h)に示される化合物を配合して、アクリル重合反応とシロキサン縮合反応を競合させて重合させる方法や、ジクロロジメチルシラン等のシラン化合物を常法により重合させて、主骨格にシロキサン結合を有するポリマー(シリコーン樹脂)を合成し、次いで、該ポリマーに、上述のアクリル成分を常法によりグラフト重合させたり又はアクリル樹脂を常法により結合させたりすることによって製造できる。
なお、シリコーン樹脂には、特に限定されるものではないが、例えばアルキド変性シリコーン樹脂のように、分子構造中に不飽和二重結合を有するものを用いてもよいし、アクリル成分のグラフト重合には、該アクリル成分以外のモノマーを用いてもよい。
【0076】
また、上記クリアー層用塗料組成物には、耐候性を向上させる観点から、紫外線吸収剤や光安定剤を配合することが好ましく、更には、上述した成分以外にも、塗料業界で通常使用される添加剤、例えば、バインダー樹脂、顔料、水、有機溶剤、成膜助剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、粘度調整剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、防腐剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0077】
上記クリアー層用塗料組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。なお、バインダー樹脂は、溶液、エマルジョン又はディスパージョンの形態で配合されるのが好ましい。また、上記クリアー層用塗料組成物は、水系や有機溶剤系等の各種塗料形態が利用可能である。
【0078】
次に、図を参照しながら、本発明の建築板の実施態様について説明する。
図1は、本発明の建築板の一実施態様の概略断面図である。
図1の建築板1は、基材2と、該基材2上に配置されたインク受容層3と、該インク受容層3上に配置された着色インク層4と、着色インク層4上に配置されたクリアー層5とを備える。
図1の建築板1においては、インク受容層3の表面全体が着色インク層4で被覆されているため、クリアー層5は、着色インク層4の表面にのみ形成されている。尚、
図1では、インク受容層3の表面全体が着色インク層4で被覆されているが、インク受容層3表面の一部のみに着色インク層4が被覆される場合もある。この場合には、クリアー層5は、着色インク層4が被覆されていないインク受容層3表面と着色インク層4表面に形成される。
【0079】
<塗料組成物>
以下に、本発明の塗料組成物を詳細に説明する。本発明の塗料組成物は、建築板のインク受容層を形成するための塗料組成物であって、熱軟化温度が90〜193℃の樹脂(X)であって、ビニル樹脂及びウレタン樹脂のうち少なくとも一方からなる樹脂(X)を含むことを特徴とする。また、本発明の塗料組成物の実施態様は、本発明の建築板のインク受容層用塗料組成物の説明において記載した通りである。具体的に、本発明の塗料組成物は、アクリル樹脂(Y)を含むことが好ましく、ここで、樹脂(X)とアクリル樹脂(Y)の質量比(X/Y)は85/15〜15/85であることが更に好ましい。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0081】
<インク受容層用塗料組成物の調製例>
表1〜3に示す配合処方に従い、原料とチタニアビーズ(φ1.4mm)を混合した後、ビーズミルで分散した。分散後、チタニアビーズを取り除き、インク受容層用塗料1〜18をそれぞれ調製した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
表1〜3に示される配合剤は、以下の通りである。
1)酸化チタン、密度3.8g/cm
3,(TITONE R−62N,堺化学社製)
2)重質炭酸カルシウム、密度2.7g/cm
3、平均粒子径2μm(丸尾カルシウム社製)
3)ポリウレタン水分散液、(スーパーフレックス820、第一工業製薬社製)
4)ポリウレタン水分散液、(スーパーフレックス470、第一工業製薬社製)
5)ポリウレタン水分散液、(スーパーフレックス460、第一工業製薬社製)
6)ポリウレタン水分散液、(スーパーフレックス150HS、第一工業製薬社製)
7)ポリウレタン水分散液、(スーパーフレックス420、第一工業製薬社製)
8)ヨドゾール AD57 (ヘンケルジャパン社製、樹脂成分 50質量%、樹脂成分の密度 1.2g/cm
3、ガラス転移温度 55℃)
9)SNデフォーマー1316(サンノプコ社製)
10)ASE−60(ロームアンドハース社製)
11)Proxel AM(アーチケミカルズ社製)
【0086】
<活性エネルギー線硬化形インク組成物の調製例>
表4、5に示す配合処方に従い、原料とジルコニアビーズ(φ0.5mm)を混合した後、ビーズミルで分散した。分散後、ジルコニアビーズを取り除き、3色のインク組成物を調製し、活性エネルギー線硬化形インクセットを準備した。
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
表4、表5に示される配合剤は、以下の通りである。
12) コバルトブルー(Sicopal Blue K 6310、BASF社製)
13) 酸化鉄(黄色)(Sicotrans Yellow L1916,BASF社製)
14) 酸化鉄(赤色)(Sicotrans Red L2817,BASF社製)
15) DISPERBYK−2155(BYK社製)
16) BYK−UV3500(BYK社製)
【0090】
なお、活性エネルギー線硬化形インク組成物の表面張力は、温度45℃にて表面張力計(協和界面化学製CBVP−Z)を用いて測定した。また、活性エネルギー線硬化形インク組成物の粘度は、温度45℃、ずり速度10s
−1にてレオメーター(AntonpaarPysica社製MCR301)を用いて測定した。
【0091】
<クリアー層用塗料組成物の調製例>
表6に示す配合処方に従い、原料を混合して、クリアー塗料を調製した。
【0092】
【表6】
【0093】
表6に示される配合剤は、以下の通りである。
17) ポリデュレックスG613,旭化成社製,固形分41.5質量%
18) TINUVIN 1130,BASF社製
19) TINUVIN 292,BASF社製
【0094】
<建築板(加飾試験板)の製造例>
1.基材
スレート板(150mm×70mm×5mm、TP技研社製)の表面に水系シーラー(大日本塗料製、製品名:水性マイティーシーラーマルチ)を塗布量100g/m
2となるようにエアスプレーで塗装し、室温で2時間乾燥することにより、基材を作製した。
【0095】
2.インク受容層
シーラー塗装済みの基材を60℃に加温した状態で、基材のシーラー塗装面に、上述のインク受容層用塗料組成物を塗布量120g/m
2(乾燥膜厚30μm相当)となるようにエアレススプレーで塗装した。その後、100℃で3分間乾燥させて、インク受容層を形成させた。尚、基材表面の温度測定は、赤外線放射型非接触温度計(ISK−8700II、アズワン(株)社製)を用いて行った。
【0096】
3.インク層
(インク層作製条件1)
インク受容層を作製した後、基材温度を60〜70℃に調整した状態で、インクジェットプリンターを用いて、上記で準備した活性エネルギー線硬化形インク組成物(インクA(黄色、赤色、青色)又はインクB(黄色、赤色、青色))をそれぞれ単色での階調パターン(記録濃度を10%から150%まで20%刻みで段階的に記録したベタ画像)及び各色の組合せでの混色の階調パターンをそれぞれ形成させた。この際、インクを吐出する際のインクの温度は45℃であった。パターン形成後、メタルハライドランプにより、ピーク照度800mW/cm
2で1回あたりの積算光量50mJ/cm
2の紫外線を照射して、インク組成物を硬化させた。尚、基材表面の温度測定は、赤外線放射型非接触温度計(ISK−8700II、アズワン(株)社製)を用いて行った。
【0097】
(インク層作製条件2)
基材温度を60〜70℃から30〜40℃に変更した以外は、インク層作成条件1と同様にして、操作を行った。
【0098】
4.クリアー層
インク層作製条件1又はインク層作製条件2にてインク組成物を硬化させた後、硬化塗膜の表面温度が50℃になるよう調整した状態で、上述のクリアー塗料を塗布量が80g/m
2(乾燥膜厚25μm相当)になるよう塗装した。塗装後、80℃で20分乾燥させ、クリアー層を形成させた。尚、基材表面の温度測定は、赤外線放射型非接触温度計(ISK−8700II、アズワン(株)社製)を用いて行った。
【0099】
<破断伸び率測定用のサンプル製造例>
ポリプロピレン板に、上述のインク受容層用塗料組成物を塗布量120g/m
2(乾燥膜厚30μm相当)となるようにエアレススプレーで塗装した。その後、60℃で5分間乾燥させて、インク受容層を形成させた。その後、ポリプロピレン板からインク受容層を単離し、長さ30mm、幅10mmの大きさに切りだした。
【0100】
<実施例1〜22、比較例1〜8>
上記加飾試験板の製造例に従って加飾試験板を用意した。なお、使用したインク受容層用塗料組成物及びクリアー層用塗料組成物の組み合わせを表7〜12に示す。また、破断伸び率測定用のサンプルを別途作成した。
【0101】
<評価>
下記に示す方法に従って、インク受容層の可撓性、温感性及び加飾試験板の耐候性を評価した。結果を表7〜12に示す。
【0102】
1.インク受容層の可撓性
インク受容層の可撓性は、膜の伸び率(破断伸び率)により評価した。破断伸び率は、破断伸び率測定用のインク受容層(長さ30mm、幅10mm)に対して、引張り強度試験器(島津製作所製オートグラフAG2000B)を用いて、引張速度20mm/minで測定した。
○:15%以上である。
△:5〜15%未満である。
×:5%未満である。
【0103】
2.温感性
加飾試験板作製1日後のそれぞれの階調パターンのベタ画像について、肉眼及びマイクロスコープで観察することによって、発色性を評価した。その後、インク印刷時の温度による発色性への影響を評価した結果を表7〜12に示す。尚、評価基準は以下の通りである。
○:インク印刷時の基材温度を30〜40℃とした場合と、60〜70℃とした場合での発色性を評価し比較した結果、発色性の差異は認められず、いずれの乾燥温度でもインク本来の色が均一に印刷されており、ムラやくすみがほとんど認められない。
×:インク印刷時の基材温度の違いによる発色性の差異が認められ、インク印刷時の基材温度が60〜70℃の場合では、階調パターンにムラ、くすみが認められる。
【0104】
【表7】
【0105】
【表8】
【0106】
【表9】
【0107】
【表10】
【0108】
【表11】
【0109】
【表12】