特許第6735189号(P6735189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735189
(24)【登録日】2020年7月15日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】ガスセンサユニットおよびガス検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20200728BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20200728BHJP
【FI】
   G01N21/27 A
   G01N21/3504
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-172051(P2016-172051)
(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公開番号】特開2018-36227(P2018-36227A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】514274487
【氏名又は名称】リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】千葉 善幹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 靖
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0301214(US,A1)
【文献】 特表平11−506202(JP,A)
【文献】 特開2012−151014(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0286340(US,A1)
【文献】 特開2014−170066(JP,A)
【文献】 特表2001−503865(JP,A)
【文献】 特開2009−148401(JP,A)
【文献】 特表平09−510550(JP,A)
【文献】 特開2002−022652(JP,A)
【文献】 特表2016−537638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象の赤外光画像の撮像と、前記撮像対象における特定のN(≧1)種のガスの有無の検出に用いるガスセンサユニットであって、
中赤外光および遠赤外光に対して正レンズ機能を持つ赤外光レンズと、
該赤外光レンズによる結像光束を複数の光束に分離する光束分離手段と、
該光束分離手段により分離された一部の結像光束による赤外光画像を撮像する赤外光撮像素子と、
前記N種のガスによる吸収波長:λi(i=1〜N)の赤外光に対する受光感度を有する受光手段と、
前記光束分離手段により分離された他の結像光束を前記受光手段に向けて導光する導光手段と、
該導光手段により導光される光束から、前記吸収波長:λi(i=1〜N)の赤外光を分離する波長分離手段と、
を有し、
前記導光手段は、M(1≦M)個の導光体であり、
前記受光手段が2以上の受光素子を有し、前記導光体が、複数の受光素子に共通化されているガスセンサユニット。
【請求項2】
請求項1記載のガスセンサユニットであって、
前記N(≧1)種のガスは、中赤外光の波長領域に吸収波長:λi(i=1〜N)を有するガスセンサユニット。
【請求項3】
請求項2記載のガスセンサユニットであって、
前記光束分離手段は、前記赤外光レンズによる結像光束を、遠赤外光成分と中赤外光成分に分離するフィルタであるガスセンサユニット。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のガスセンサユニットであって、
前記受光手段は、受光素子Pdi(i=1〜N)を有し、受光素子Pdiは前記吸収波長:λiに受光感度を有するガスセンサユニット。
【請求項5】
撮像対象の赤外光像の撮像と、前記撮像対象における特定のN(≧1)種のガスの有無を検出するガス検出装置であって、
請求項1〜4の何れか1項に記載のガスセンサユニットと、
前記ガスセンサユニットの前記受光手段の出力に基づき前記特定のN種のガスの有無を判定して出力する判定手段と、
該ガスセンサユニットの前記赤外光撮像素子の出力と、前記判定手段の出力に基づき、前記撮像対象のイメージ情報と、前記特定のN(≧1)種のガスの有無に関する情報とを画像表示するディスプレイ手段と、
該ディスプレイ手段に画像表示する画像を生成する画像処理手段と、
前記ガスセンサユニットと前記判定手段と前記ディスプレイ手段と前記画像処理手段を制御する制御手段と、を有するガス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はガスセンサユニットおよびガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、赤外光領域には、COやCO、HSや水蒸気、エチルアルコールガス等の種々のガスの吸収波長があり、この吸収波長を検知することにより、各種ガスの有無の検出、あるいは測定を行うことが知られている(特許文献1〜3等)。
撮像対象の赤外光画像を撮像し、撮像対象における特定のN(≧1)種のガスの分布状態を可視画像として表示することも可能であり、例えば、火山から噴出されている噴煙中に含まれるガス種とその分布状態を可視画像化することも可能である。
ガスの検出は、このような場合のみならず種々の場合に有用である。例えば、マンホールや密閉された地下空間には、COガスが高濃度で存在している場合があり、このような空間にCOガスの存在を知らずに入るとCOガス中毒を起こす恐れがある。このような場合に、上記空間内の状態と「COガスの有無」を検出することが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、撮像対象の様子とともに、撮像対象における特定のガスの有無の検出に用いる新規なガスセンサユニットの実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明のガスセンサユニットは、撮像対象の赤外光画像の撮像と、前記撮像対象における特定のN(≧1)種のガスの有無の検出に用いるガスセンサユニットであって、中赤外光および遠赤外光に対して正レンズ機能を持つ赤外光レンズと、該赤外光レンズによる結像光束を複数の光束に分離する光束分離手段と、該光束分離手段により分離された一部の結像光束による赤外光画像を撮像する赤外光撮像素子と、前記N種のガスによる吸収波長:λi(i=1〜N)の赤外光に対する受光感度を有する受光手段と、前記光束分離手段により分離された他の結像光束を前記受光手段に向けて導光する導光手段と、該導光手段により導光される光束から、前記吸収波長:λi(i=1〜N)の赤外光を分離する波長分離手段と、を有し、前記導光手段は、M(1≦M)個の導光体であり、前記受光手段が2以上の受光素子を有し、前記導光体が、複数の受光素子に共通化されている
【発明の効果】
【0005】
この発明によれば、撮像対象の様子と、撮像対象における特定のガスの有無の検出に用いる新規なガスセンサユニットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ガス検出装置を説明するための図である。
図2】導光体と波長分離手段と受光手段の組み合わせの例を2例示す図である。
図3】導光体と波長分離手段と受光手段の組み合わせの例を3例示す図である。
図4】ガス検出装置の実施の別形態を説明するための図である。
図5】ディスプレイ手段に表示された画像の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態を説明する。
具体的な実施の形態を説明するのに先立って、用語等を簡単に説明する。
この明細書において「赤外光」は、赤外光領域の電磁波である。赤外光領域は「可視光の波長領域の上限よりも長波長側の波長領域」で、一般に、近赤外光、中赤外光、遠赤外光に分類される。近赤外光の波長域は「0.7〜2.5μm」、中赤外光の波長領域はその上限が必ずしも一義的には特定されていないが「2.5〜4.6μm程度」であり、これより長波長の領域の赤外光が遠赤外光であるとされる。
赤外光は一般に「赤外線」とも称されるが、この明細書では「赤外光」と称する。
この発明において用いられる「赤外光レンズ」は「中赤外光と遠赤外光に対して正レンズ機能を持つレンズ」である。
【0008】
この発明のガスセンサユニットは、撮像対象の赤外光画像の撮像と、前記撮像対象における特定のN(≧1)種のガスの有無の検出に用いられる。
撮像対象からの赤外光は「中赤外光成分と遠赤外光成分と」を含み得る。撮像対象からの赤外光は「赤外光レンズ」によるレンズ作用を受けて赤外光結像光束となる。
即ち、撮像対象が放射する赤外光は「赤外光レンズ」により「赤外光画像を結像する結像光束」となる。「赤外光画像」は、赤外光レンズにより結像される画像であり、中赤外光成分(中赤外光の波長領域に含まれる赤外光)の画像と遠赤外光成分(遠赤外光の波長領域に含まれる赤外光)の画像とを含む。
これらのうちで、遠赤外光成分が結像する赤外光画像を「遠赤外光画像」とも言う。
【0009】
遠赤外光および中赤外光に対して正レンズ機能を有する赤外光レンズとしては、従来から、Ge(ゲルマニウム)やZnSe(セルシウム化亜鉛)、MgF(2フッ化マグネシウム)を材料とするレンズが知られている。
なお、可視光領域から遠赤外光領域までの波長領域の電磁波に対してレンズ作用を持つレンズも知られており(例えば、特許文献1記載の「赤外線および可視光線の何れをも透過させるレンズ」)、このようなレンズも赤外光レンズとして用い得る。
赤外光は「肉眼では不可視」であるから、赤外光画像自体は目視できない。
赤外光画像は、赤外光画像を撮像する赤外光撮像素子の出力に画像処理を施すことにより、各種のディスプレイ手段(印刷用紙、液晶等の各種の表示パネル等)に目視可能な画像として表示可能である。
【0010】
図1は、ガス検出装置を説明するための図である。
図1に示すガス検出装置は、特定の1種類(N=1)のガスの有無を検出するものである。説明の具体性のため、以下、図1の実施の形態のガス検出装置は、検出対象とするガスを「COガス」とし、前述のマンホール等の地下空間の画像と、該空間内におけるCOガスの有無を検出するものであるとする。
図1において、符号LIは「赤外光レンズ」を示し、符号OLIは「撮像対象(マンホールや地下空間)」からの赤外光成分を示す。
赤外光レンズLIは、赤外光成分OLIに含まれる中赤外光成分と遠赤外光成分に対して正レンズ作用を有する。即ち、赤外光成分OLIは赤外光レンズLIに入射すると、その正レンズ作用により「結像光束」となり、「光束分離手段」であるダイクロイックフィルタSPに入射する。
ダイクロイックフィルタSPは、入射してくる結像光束中の遠赤外光成分(波長:5μm以上)は透過させ、中赤外光成分(波長:2.5〜5μm)は反射する。
【0011】
ダイクロイックフィルタSPを透過した遠赤外光成分は、赤外光撮像素子10Aの受光面上に「遠赤外光画像」として結像し、赤外光撮像素子10Aにより撮像される。赤外光撮像素子10Aは「遠赤外光の波長領域に感度を有する受光素子」を2次元にアレイ配列した撮像素子であり、市販のものを適宜用いることができる。
従って、赤外光撮像素子10Aにより「赤外光画像」として遠赤外光画像が撮像される。
【0012】
一方、ダイクロイックフィルタSPにより反射された中赤外光成分は、導光手段20に入射し、導光手段20により受光手段10Bに向けて導光され、結像することなく波長分離手段F1を介して受光手段10Bに入射する。
導光手段20は「截頭円錐状の導光体」であり、大きい開口部をダイクロイックフィルタSPの側に向け、小径の開口部を波長分離手段F1に近接もしくは接触させており、ダイクロイックフィルタSP側から入射する「中赤外光成分の結像光束」を、円錐面をなす周面部で反射させつつ波長分離手段F1側へ導光する。導光の途上で、中赤外光成分は反射を繰り返すことにより強度を均一化される。
以下、導光手段20を導光体20と呼ぶ。図1に示す実施の形態では、1個の導光体20により「導光手段」が構成されている。
波長分離手段F1は、この実施の形態において「バンドパスフィルタ」である。説明中の実施の形態において、唯一種の検出対象であるガスは「COガス」である。COガスは、中赤外光の波長領域に吸収波長:4.26μmを有する。
即ち、撮像対象が放射する赤外光は、撮像対象がCOガスを含むときは「赤外光中の波長:4.26μmの中赤外光」がCOガスに吸収される。
波長分離手段F1であるバンドパスフィルタは、上記吸収波長:4.26μmと、その近傍の波長領域(波長バンド:例えば、4.00μm〜4.50μm)の中赤外光を選択的に透過させ、他の波長の中赤外光は透過させない。
以下、波長分離手段F1を「バンドパスフィルタF1」と呼ぶ。図1に示す実施の形態では、1個のバンドパスフィルタF1により「波長分離手段」が構成されている。
【0013】
受光手段10Bは、吸収波長:4.26μmの中赤外光に対して受光感度を有する。
受光手段10Bとしては、波長:4.26μmの中赤外光に対して受光感度を有する適宜の受光素子、例えば、フォトダイオードやCMSセンサ、焦電センサ等を用いることができる。
以下、受光手段10Bを「受光素子10B」と呼ぶ。図1示す例では、1個の受光素子10Bが「受光手段」を構成している。
撮像対象に検出対象であるCOガスが含まれていると、撮像対象から放射されて赤外光レンズLIに入射する赤外光成分OLIにおける「波長:4.26μm」の中赤外光の光強度は、COガスにより吸収されるから「COガスが含まれない場合に比して減少」している。即ち、撮像対象のCOガス含有量(濃度)が大きいほど、受光素子10Bの受光出力は減少する。
そこで、予め「COガスがない場合における受光素子10Bの出力の値」を基準値:0として校正(キャリブレーション)しておけば、受光素子10Bの出力と基準値:0との差により、撮像対象に「どれほどのCOガスが含まれているか」を検出できる。
図1において、赤外光レンズLI、ダイクロイックフィルタSP、赤外光撮像素子10A、導光体20、バンドパスフィルタF1、受光素子10Bは「ガスセンサユニットの要部」を構成する。
【0014】
図1に示す「ガス検出装置」は、撮像対象におけるCOガスの有無の検出と、撮像対象の赤外光画像の撮像とを行う装置である。
ガス検出装置は、上に説明したガスセンサユニットに加えて、制御部100とディスプレイ手段としてのディスプレイ110を有する。
制御部100は、判定手段と、画像処理手段と、制御手段とを含んでいる。
「判定手段」は、ガスセンサユニットの受光素子10Bの出力に基づき、特定のガスであるCOガスの有無を判定して出力する。判定手段は、COガスが「有」と判定するときは、COガスの濃度も出力する。
【0015】
ディスプレイ110は、ガスセンサユニットの赤外光撮像素子10Aの出力と、判定手段の出力に基づき、撮像対象のイメージ情報と、特定のガス(COガス)の有無に関する情報とを画像として画像表示する。
「画像処理手段」は、ディスプレイ110に画像表示する画像を生成する。
【0016】
「制御手段」は、上述のガスセンサユニットと、判定手段とディスプレイ110と画像処理手段を制御する。
制御部100に含まれる「判定手段」、「画像処理手段」、「制御手段」は、例えば、CPU等として構成できる。例えば、判定手段と画像処理手段を、独立したCPUで構成し、これらのCPUを、制御手段として別個に構成されたCPUにより制御して、各手段の機能を実行させるようにすることができる。
あるいはまた、制御部100を「マイクロコンピュータ」として構成し、このマイクロコンピュータに機能領域として、判定手段、画像処理手段、制御手段を設定し、制御手段により機能手段や画像処理手段の制御を行うようにすることもできる。
【0017】
図1に示されたように、赤外光撮像素子10Aの出力、受光素子10Bの出力は、制御部100に入力する。制御部100の制御手段は、赤外光撮像素子10Aの出力により赤外光画像を構成する。説明中の例では、マンホール等の地下空間が撮像対象であるので、上記の如く構成される赤外光画像は「地下空間の画像」である。
制御部100に含まれる判定手段は、制御部100に入力する受光手段10Bの出力に基づき、前記地下空間におけるCOガスの有無を判定する。
この判定は、1例として以下のように行われる。即ち、前述の如く、受光素子10Bの出力が「COガスがない場合における値を基準値:0として校正」されているものとすると、受光素子10Bの出力(≦0)の絶対値をSBとすれば、該絶対値:SBの大きさにより、COガスの濃度(%)がわかる。
空気中に自然に存在するCOガスの濃度は0.038%程度であることが知られており、前述した「COガス中毒」を引き起こす濃度は3%〜5%以上とされている。
【0018】
そこで、例えば、予め、CO濃度のレベル:LV1、LV2、LV3を、
LV1 1%未満 安全
LV2 1%以上2%未満 注意
LV3 3%以上 危険
の如く定め、レベル:LV1に対して緑色、レベル:LV2に対してオレンジ色、レベル:LV3に対して赤色を用意する。
そして、判定手段は「濃度レベルLV1 1%未満 安全」、「濃度レベルLV2 1%以上2%未満 注意」、「濃度レベルLV3 3%以上 危険」の3種のメッセージを用意し、これらのメッセージの何れかと各レベルに対応する色を判定結果に応じて出力する。
【0019】
制御部100の制御手段は、画像処理手段を制御して、ディスプレイ110に画像表示する画像を生成する。
画像処理手段では、赤外光撮像素子10Aの出力に応じて得られる赤外光画像(マンホール等の地下空間の状態)と、判定手段の出力とに基づき「撮像対象のイメージ情報と、特定のガス(COガス)の有無に関する情報」とを画像として生成する。
【0020】
1例を挙げれば、判定手段の出力が「濃度レベルLV1 1%未満 安全」である場合には、前記赤外光画像を「緑色画像」として表示し、この緑色画像に重ね合わせて「濃度レベルLV1 1%未満 安全」の文字によるメッセージを表示する。
同様に、判定手段の出力が「濃度レベルLV2 1%以上2%未満 注意」である場合には、前記赤外光画像を「オレンジ色画像」として表示し、このオレンジ色画像に重ね合わせて「濃度レベルLV2 1%以上2%未満 注意」の文字によるメッセージを表示する。また、判定手段の出力が「濃度レベルLV3 3%以上 危険」である場合には、前記赤外光画像を「赤色画像」として表示し、この赤色画像に重ね合わせて「濃度レベルLV3 3%以上 危険」の文字によるメッセージを表示する。
ディスプレイ110に表示される上記の画像のうち、緑色、オレンジ色、赤色の各色画像は「撮像対象のイメージ情報」であり、これらの画像に重畳される各メッセージは「COガスの有無に関する情報」である。
なお、ディスプレイ110に表示される画像の「コントラストや輝度、生成された画像の表示形態」は、図示を省略された操作パネルの操作により制御手段を介して画像処理手段を制御することにより、適宜に調整できる。
また、図1に示すガス検出装置に「送信手段」を組み込み、画像処理手段により生成される画像を、外部装置に送信して外部装置のディスプレイに表示するように構成することもできる。
【0021】
上に説明したガス検出装置において、導光手段として「截頭円錐状の導光体20」を例示したが、導光手段は、これに限らず、図2図3に例示するような種々のものが使用可能である。
なお、繁雑を避けるため、図2以下の図においても、混同の恐れがないと思われるものについては図1におけると同じ符号を用いる。
例えば、図2(a)に示す導光手段は「反射面をなす部分が回転放物面をなす導光体20a」であり、大口径の側から入射する光束LFX(光束分離手段により分離された中赤外光の結像光束)を、周面部で反射させつつ波長分離手段F1側へ導光する。
また、図2(b)に示す導光手段は所謂「導光ロッド20b」であり、側面から入射する光束LFXを「斜面部20b1」で、ロッドの長手方向へ反射し、反射された光束を、ロッドの長手方向をなす側面で反射させつつ、バンドパスフィルタF1の側へ導光し、波長分離手段F1により波長分離された赤外光を受光素子10Bで受光する。
【0022】
図1に即して実施の形態を説明したガス検出装置は、検出すべきガスが「COガス」唯一種であるが、この発明のガスセンサユニット、ガス検出装置は、検出対象としてのガスが2種あるいは3種類以上であっても実施可能であることは言うまでもない。
【0023】
一般に、検出すべきガスの種類をN(≧2)とし、その吸収波長をλi(i=1〜N)とする。
このような場合、例えば、図1図2に示した「導光体とバンドパスフィルタと受光素子の組み合わせ」をN組用意する。そして、各組に用いられるバンドパスフィルタは「組ごとに異なる吸収波長:λiの赤外光を波長分離」するものとし、このバンドパスフィルタと組み合わせられる受光素子は波長:λiに受光感度を有するものを用いる。
図3(a)に示す例では、「図1に示した導光体とバンドパスフィルタと受光素子の組み合わせ」と同様のものが3種類組み合わせられている。
導光体201に組み合わせられたバンドパスフィルタF11は、吸収波長:λ1の赤外光を波長分離し、受光素子10B1は波長:λ1の赤外光に受光感度を有する。
導光体202に組み合わせられたバンドパスフィルタF12は、吸収波長:λ2の赤外光を波長分離し、受光素子10B2は波長:λ2の赤外光に受光感度を有する。
導光体203に組み合わせられたバンドパスフィルタF13は、吸収波長:λ3の赤外光を波長分離し、受光素子10B3は波長:λ3の赤外光に受光感度を有する。
各吸収波長:λ1、λ2、λ3の赤外光の強度を検出することにより、これらの吸収波長を有する3種類のガスが撮像対象に含まれるか否かを、図1に即して説明した実施の形態と同様にして検出できる。
【0024】
図3(a)に示す例では、導光体201、202、203が「導光手段」を構成し、バンドパスフィルタF11、F12、F13が「波長分離手段」を構成し、受光素子10B1、10B2、10B3が「受光手段」を構成する。
【0025】
図3(b)に示す例では、吸収波長:λ1、λ2の波長分離を行う「波長分離手段」がバンドパスフィルタF14、F15により構成され、これらの波長:λ1、λ2に受光感
度を有する受光素子10B4、10B5により「受光手段」が構成されている。
単一の導光体204は、これら波長分離手段、受光手段に光束LFXを導光する「導光手段」を構成する。この例は、この発明のガス検出装置の実施の1形態である。
逆に、図3(c)に示す例では、1つの吸収波長の波長分離を行うバンドパスフィルタF16と、この波長の赤外光に対して受光感度を有する受光素子10B6の組み合わせに対して、2つの導光体205、206を組み合わせて光束LFXの導光を行うようにしている。即ち、この場合、導光体205、206が「導光手段」を構成し、バンドパスフィルタF16は単独で「波長分離手段」を構成し、受光素子10B6は単独で「受光手段」を構成する。
【0026】
導光手段としては、上に例示したもののほか、従来から知られた各種の導光手段、例えば、コーンレンズやロッドレンズ、光ファイバ、集光ミラー等およびこれらの組み合わせを適宜に用いることができる。
「導光手段と波長分離手段、受光手段の組み合わせ」として、図2(a)、(b)に示すものや、図3(a)〜(c)に示すものを、図1に示す「導光手段20、波長分離手段F1、受光手段10B」の組み合わせに代えて、適宜用いることができることは言うまでもない。
【0027】
上には波長分離手段として「バンドパスフィルタ」を用いる例を示したが、これに限らず「回折を利用する波長分離手段」を用いてもよい。
図1に即して説明した例では、光束分離手段F1として「ダイクロイックフィルタ」を用い、赤外光レンズLIによる結像赤外光を遠赤外光成分と中赤外光成分とに分け、中赤外光成分を導光手段20により受光手段10Bに導光した。このように構成した理由は、有無を検出すべきガスがCOガスであり、その吸収波長:4.26μmが中赤外光の波長領域に含まれるからである。
【0028】
例えば、2.5μm〜7μm程度(中赤外光と遠赤外光の波長領域を含む。)の波長領域において、上記COガス以外に、遠赤外光の波長領域に吸収波長:λAを持つガス(仮にAガスと称する。)をも「有無の検出対象」とする場合も考えられる。
この場合には、光束分離手段として「通常の半透鏡」を用い、中赤外光成分と遠赤外光成分を含む赤外光全体を、反射と透過により光束分離し、光束分離された赤外光光束を、例えば、図3(b)に示す如き導光手段204により導光する。
「波長分離手段」を構成するバンドパスフィルタF14、F15のうち、バンドパスフィルタF14には「4.26μmとその近傍の波長の赤外光(中赤外光)を選択的に透過させるバンドパスフィルタ」を用い、バンドパスフィルタF15には「Aガスの吸収波長:λAμmとその近傍の波長の赤外光(遠赤外光)を選択的に透過させるバンドパスフィルタ」を用いる。
【0029】
また「受光手段」を構成する受光素子10B4、10B5のうち、受光素子10B4としては波長:4.26μmの中赤外光に受光感度を有するものを用い、受光素子10B5としては波長:λAμmの遠赤外光に受光感度を有するものを用いる。
【0030】
この場合、「赤外光撮像素子」は、遠赤外光のみに感度を有するものを用いてもよいし、遠赤外光と中赤外光とに感度を有するものを用いてもよい。
【0031】
上には、図1を参照して、マンホール等の地下空間の状態を撮像対象とし、地下空間にCOガスがどの程度存在するかを検出する場合を説明した。
この発明のガス検出装置は、このような場合に限定されるものでないことは勿論であり、種々の用途に使用できる。
例えば「火山から噴出される噴煙中に含まれるガスの種類や濃度を検出」する用途を持ったガス検出装置も実施可能である。
図4に、このような場合のガス検出装置の1例を示す。
繁雑を避けるため、混同の恐れがないと思われるものについては、図4においても図1図3におけると同一の符号を用いている。
火山から噴出する噴煙に含まれているガスは種々のものがあるが、水蒸気、HS(硫化水素)ガス、COガスが代表的である。図4に実施の形態を示すガス検出装置は、噴煙中の水蒸気、HSガス、COガスの有無、濃度を検出するものである。
水蒸気の吸収波長は2.66μm、COガスの吸収波長は4.26μm、HSガスの吸収波長は3.81μmであり、これらのガスは何れも「中赤外光の波長領域」に吸収波長を有している。
【0032】
そこで、図4の実施の形態において、光束分離手段SPとしては「遠赤外光成分を透過させ、中赤外光成分を反射するダイクロイックミラー」を用いる。また、赤外光撮像素子10Aとしては、遠赤外光に対して受光感度を有するものを用いる。
【0033】
図4において、符号200で示すのは「導光手段と波長分離手段と受光手段」の部分であり、便宜上、以下において検出部200と称する。
検出部200は、図3(a)に示すタイプのものである。以下、図3(a)を参照して検出部200の説明を行う。
図3(a)において導光体201に組み合わせられたバンドパスフィルタF11は、吸収波長:2.66μm(λ1とする。)の赤外光を波長分離し、受光素子10B1は波長:2.66μmの赤外光に受光感度を有する。導光体202に組み合わせられたバンドパスフィルタF12は、吸収波長:3.81μm(λ2とする。)の赤外光を波長分離し、受光素子10B2は波長:3.81μmの赤外光に受光感度を有する。
導光体203に組み合わせられたバンドパスフィルタF13は、吸収波長:4.36μm(λ3とする。)の赤外光を波長分離し、受光素子10B3は波長:4.36μmの赤外光に受光感度を有する。
吸収波長:λ1(=2.66μm)、λ2(=3.81μm)、λ3(=4.36μm)の赤外光の強度を検出することにより、これらの吸収波長を有する3種類のガス(水蒸気、HSガス、COガス)が撮像対象に含まれるか否かを、図1に即して説明した実施の形態と同様にして検出できる。
即ち、図4に示すように、検出部200の受光手段(受光素子10B1、10B2、10B3)からの出力を、制御部100に取り込み、受光手段の各受光素子の出力に対して設定された基準値:0に対する相対的な差により、各ガスの有無、濃度を検出できる。
そして、このように検出された各ガスの濃度値と、赤外光撮像素子10Aにより撮像された遠赤外光画像に対し、検出された各ガスの濃度を重畳させてディスプレイ110に画像表示させる。
【0034】
図5は、ディスプレイの表示部110Aに表示された画像の1例である。火山VOLから噴出された噴煙GSが含む、水蒸気(HO)、炭酸ガス(CO)、硫化水素ガス(HS)の濃度が%単位で表示されている。
【0035】
判定は、例えば、上述した例の場合と同様に行うことができる。即ち、受光素子10B1、10B2、10B3の各出力に対し、それぞれ、水蒸気、HSガス、COガスがない場合における値を基準値:0として、それぞれ校正しておけば、受光素子10B1、10B2、10B3の出力(≦0)の絶対値:SB1、SB2、SB3の大きさにより、水蒸気、HSガス、COガスの濃度(%)がわかる。
ところで、撮像対象が放射する輻射の強度は、撮像対象の温度:Tの4乗に比例して変化する。上に説明した地下空間の場合、大深度と呼ばれる程の深さになると、空間内の温度は四季を通じて略一定しており、撮像対象の温度は一定と考えられ、このような場合には上記「基準値:0」は、定数として扱うことができる。
【0036】
地下空間の場合でも、マンホールのように比較的浅い場合には、その温度は四季を通じて変化する。上に説明した火山ガスが撮像対象であるような場合には、撮像対象の温度は数百度ないしそれ以上の温度範囲で変化する。
【0037】
このように、撮像対象の温度が「撮像状況により変化する」場合には、上記基準値:0は「撮像対象の温度:T」の関数として扱う必要がある。
【0038】
例として、噴煙中の水蒸気の場合を説明すると、噴煙温度:Tの水蒸気から放射される赤外光の「吸収波長における強度」を予め実測値として測定し、基準値:0(T)として「温度:Tの関数式もしくはテーブル」として、制御手段のメモリに記憶させておく。
【0039】
そして、噴煙中の水蒸気の温度:Tを測定して、測定された温度:Tに応じた基準値:0(T)を用いて、噴煙中の水蒸気の濃度を測定することができる。
撮像対象の温度の測定には、公知の適宜の温度測定手段を用いて行うことができるが、赤外光撮像素子10A等を「遠赤外光に受光感度を有するサーモパイルの素子を2次元的に配置したもの」で構成すれば赤外光撮像素子の出力から「撮像対象の温度:T(必要に応じて、平均演算により平均温度として求める。)」を特定することができ、この温度:Tにより基準値:0(T)を特定して、撮像対象における各種ガスの有無・濃度を測定することができる。
【0049】
以上、発明の好ましい実施の形態について説明したが、この発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、図1に示す実施の形態において、光束分離手段SPとして、中赤外光成分を反射し、遠赤外光成分を透過させるダイクロイックフィルタを用いたが、これに限らず、例えば半透鏡のように、結像光束を単純に透過と反射とにより分離せてもよい。この場合には、赤外光撮像素子10Aに結像する赤外光は、遠赤外光成分も中赤外光成分も含むことになるし、導光手段に入射する光束も遠赤外光成分と中赤外光成分を含む。
【0050】
あるいはまた、鏡面内に「赤外光透過部やスリット等の開口部」を有する「孔あきミラー」等を光束分離手段として用いてもよい。
【0051】
この発明の実施の形態に記載された効果は、発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、発明による効果は「実施の形態に記載されたもの」に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
LI 赤外光レンズ
SP 光束分離手段
10A 赤外光撮像素子
10B 受光手段(受光素子)
F1 波長分離手段
20、20a、20b 導光手段(導光体)
201、202、203、204、205、206 導光体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2002−22652号公報
【特許文献2】特許第5573340号公報
【特許文献3】特許第5096126号公報
図1
図2
図3
図4
図5