(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735195
(24)【登録日】2020年7月15日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】ベビーカー
(51)【国際特許分類】
B62B 9/12 20060101AFI20200728BHJP
B62B 7/08 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
B62B9/12
B62B7/08
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-181621(P2016-181621)
(22)【出願日】2016年9月16日
(65)【公開番号】特開2018-43710(P2018-43710A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】平野 雅大
(72)【発明者】
【氏名】仲田 良
【審査官】
岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−121730(JP,A)
【文献】
特開2008−272212(JP,A)
【文献】
特開2015−013569(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3164669(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0183843(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02241492(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 9/12
B62B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開状態から折り畳み状態へ折り畳み可能なベビーカー本体と、
前記ベビーカー本体と一体的に取り付けて、前記ベビーカー本体の折り畳み動作に倣って背部と座部の間で折り畳み可能な幼児用シートを備え、
前記ベビーカー本体は、前記幼児用シートよりも上方で乳児用シートを前記ベビーカー本体に着脱可能な取付部を備えたことを特徴とするベビーカー。
【請求項2】
前記乳児用シートは、前記ベビーカー本体の折り畳み動作に倣って折り畳み可能なことを特徴とする請求項1に記載のベビーカー。
【請求項3】
前記取付部には、前記乳児用シートを取り外した時にガード部材が着脱可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のベビーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳幼児を乗車させるベビーカーに関し、特に展開状態から折り畳み状態へと折り畳み可能なベビーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳幼児を着座又は寝かせて移動するベビーカーが広く利用されている。
特に折り畳み式のベビーカーは、ハンドルのグリップ付近のボタン操作で容易に折り畳むことができるため、移動時、収納時において使い勝手が良い。
【0003】
特許文献1は、展開状態から折り畳み状態へと折り畳み可能であり、ハンドルを揺動させて対面押し位置又は背面押し位置へと切換え可能なベビーカーが開示されている。
【0004】
特許文献2は、車体と、車体に着脱可能に取付けられたシートを備え、車体は折り畳み可能に構成されたベビーカーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−148449号公報
【特許文献2】特許第5442729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に乳児期は、路面からの輻射熱や埃の影響をできるだけ低減して、乳児の乗せ降ろしの利便性を考慮した場合、ベビーカー本体に対するシートの取付け位置は高い方が望ましい。一方、幼児期は、乳児の体重を考慮すると操縦性、走行安定性、転倒のリスクの観点から、シートの取り付け位置を乳児の時期よりも低くする方が望ましい。
【0007】
しかしながら特許文献1に開示のベビーカーは、シートがベビーカー本体に固定されており、乳児から幼児まで1つのシートで対応する構成である。またシートの取付け位置の調整や着脱をすることができない。このため、乳児および幼児のいずれにも適したベビーカーとは言い難い。
【0008】
また特許文献2に開示のベビーカーは、車体に対してシートを着脱可能に構成しているが、シートの高さ位置を調整することができない。また、乳児用シートから幼児用シートへの変更は、シートを交換しなければならず、作業が煩雑となり誤って取り付けるなどの不具合が生じるおそれがある。さらに、ベビーカー本体を折り畳む際には、シートを外さなければならない。このため使い勝手が悪く、乳児及び幼児のいずれにも適したベビーカーとは言い難い。
【0009】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、乳児及び幼児のいずれにも対応可能な折り畳み式のベビーカーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の手段として、本発明は、展開状態から折り畳み状態へ折り畳み可能なベビーカー本体と、前記ベビーカー本体と一体的に取り付けて、前記ベビーカーの折り畳み動作に倣って背部と座部の間で折り畳み可能な幼児用シートを備え、前記ベビーカー本体は、前記幼児用シートよりも上方で乳児用シートを前記ベビーカー本体に着脱可能な取付部を備えたことを特徴とするベビーカーを提供することにある。
上記構成の第1の手段によれば、ベビーカー本体に固定された幼児用シートの上に乳児用シートを着脱可能に構成しているため、乳児期において乳児用シートを幼児用シートよりも高い位置で使用することができ、また幼児期において乳児用シートを取り外すだけの作業で幼児用シートを使用できるので、使い勝手が良く、従来の付け替えミスや、煩雑な交換作業が無くなる。
【0011】
上記課題を解決するための第2の手段として、本発明は、前記第1の手段において、前記乳児用シートは、前記ベビーカー本体の折り畳み動作に倣って折り畳み可能なことを特徴とするベビーカーを提供することにある。
上記構成の第2の手段によれば、乳児用シートの使用時においても、取り外すことなく容易にベビーカーを折り畳むことができる。
【0012】
上記課題を解決するための第3の手段として、本発明は、前記第1又は第2の手段において、前記取付部
には、前記
乳児用シート
を取り外した時にガード部材
が着脱可能
であることを特徴とするベビーカーを提供することにある。
上記構成の第3の手段によれば、乳幼児用シートと、幼児用シートの使用時に必要なガード部材の取付け箇所を共通化して、装置構成の簡略化及び軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のベビーカーによれば、ベビーカー本体に固定された幼児用シートの上に乳児用シートを着脱可能に構成しているため、幼児期において乳児用シートを取り外すだけの作業で幼児用シートを使用できるので、従来の付け替えミスや、煩雑な交換作業が無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のベビーカーの展開状態から折り畳み状態への段階的に移行する斜視図である。
【
図2】本発明のベビーカーの展開状態から折り畳み状態への段階的に移行する側面図である。
【
図3】ベビーカー本体へ乳児用シートを取り付ける説明図である。
【
図7】幼児用シートを備えたベビーカーの説明図である。
【
図8】幼児用シートのリクライニングの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のベビーカーの実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0016】
[ベビーカー10]
図1は本発明のベビーカーの展開状態から折り畳み状態への段階的に移行する斜視図である。
図2は本発明のベビーカーの展開状態から折り畳み状態への段階的に移行する側面図である。
図3はベビーカー本体へ乳児用シートを取り付ける説明図である。本発明のベビーカー10は、ベビーカー本体20と、幼児用シート40と、乳児用シート50を主な基本構成としている。
なお本実施形態中の前・後・左・右とは、ベビーカー10を展開させて、幼児を幼児用シート40に着座させたときに幼児を基準とした前・後・左・右と同一である。
【0017】
[ベビーカー本体20]
ベビーカー本体20は、前脚22と、後脚24と、アームレスト26をそれぞれ左右に一対配置して、さらにハンドル28を備えている。
前脚22は下端に前輪22aを備え、上端を後脚24側へ湾曲させて後脚24の上端付近に回動可能に接続している。
後脚24は下端に後輪24aを備え、上端がアームレスト26と回動可能に接続している。
【0018】
アームレスト26は、前脚22および後脚24の上端を覆い、後端がハンドル28と回動可能に接続した部材である。アームレスト26の上面側は緩やかな湾曲形状に形成し、後脚24が接続する箇所の上方に後述する取付部60を設けている。
ハンドル28は、一対の直線部28aと直線部28aを連結する中間部28bからなり、ほぼU字状に形成されている。ハンドル28は、直線部28a側の下端を後述する折り畳みロック部30に回動可能に接続している。またハンドル28は側面視で上端の中間部28b側を後方へ湾曲させている。
【0019】
図4は折り畳みロック部の説明図であり、(1)はベビーカーの斜視図、(2)はロック部の斜視図、(3)はワイヤー動作の説明図、(4)は折り畳みとロック位置の説明図である。図示のように折り畳みロック部30は、ロック部32とリンク部34を主な基本構成としている。
ロック部32は、ハンドル28の下端側に設けて、ハンドル28の下端側を覆う円筒状の部材である。ロック部32は、上端側に直径方向に延出した係止部32aを設けている。ロック部32の円筒表面には矩形の凸部32bを設けている。ハンドル28の下端側には、ロック部32の係止部32aが嵌る長孔28cを設けている。長孔28cはハンドル28の長手方向に沿って形成している。そして係止部32aは、ハンドルの中間部に設けた折り畳み操作部29に接続するワイヤー29aの下端と接続している。係止部32aとワイヤー29aの接続箇所にコイルばね29bを設けている。このコイルばね29bは、ロック部32をハンドル28の下端に向けて押し付けるように付勢している。
リンク部34は、ベビーカー10の展開状態において上端側がハンドル28の下端と回動可能に接続し、下端側が後脚24と回動可能に接続した部材である。リンク部34は、ハンドル28の下端との接続箇所にストッパー34aを設けている。ストッパー34aは、ロック部32の凸部32bと嵌め合う凹部を設けている。この凹部は、ベビーカー10の展開状態において凸部32bが嵌る第1凹部34bと、ベビーカー10の折り畳み状態において凸部32bが嵌る第2凹部34cを設けている。
【0020】
[乳児用シート50]
図5は乳児用シートの説明図であり、(1)は展開状態、(2)は折り畳み状態の側面の断面図である。乳児用シート50は、第1及び第2U字フレーム51,52と、生地53と、第1及び第2支持部材54,55と、底板56からなり、主に乳児の寝台として機能する。
第1及び第2U字フレーム51,52は、乳児を収容可能な容器状に形成した生地53の上面開口の周縁に沿って接続している。
【0021】
図6は取付部及び解除部の説明図である。図示のように取付部60は、アームレスト26の上面から上方へ突出した円筒状の部材である。取付部60は上端側に水平方向(直径方向)に孔を形成して、その孔から外側に延出する一対の凸部62を設けている。そして取付部60の中空内部にはU字板ばね64を取り付けている。このU字板ばね64は直線部の両端側がそれぞれ一対の凸部62の中空側端部に接続させている。このような構成の取付部60は、凸部62がU字板ばね64によって孔から外側へ突出するように付勢されている。
【0022】
乳児用シート50の第1支持部材54の下端には、解除部70を設けている。解除部70は、取付部60が嵌る穴72と、この穴72に取付部60を嵌めたときに凸部62と重なる箇所であって直径方向に開口した開口74と、この開口74から外部へ付勢された一対の解除ボタン76を備えている。解除ボタン76を穴72の中心に向けて押し込むと、取付部60の凸部62に当たり、さらに押し込むと凸部62も中心側に押された状態となる。この状態で解除部70を引き抜くことにより、乳児用シート50をベビーカー本体20から取り外すことができる。
【0023】
[幼児用シート40]
図7は幼児用シートを備えたベビーカーの説明図である。
図8は幼児用シートのリクライニングの説明図であり、(1)は平面側の斜視図であり、(2)は底面側の斜視
図1であり、(3)は底面側の斜視
図2である。幼児用シート40は、座部42と背部44からなり、それぞれU字フレームに生地を張り付けた構成とし、所定の強度及び柔軟性を備え、主に幼児の座部として機能する。
【0024】
座部42は、U字中間部側に下面へ延びる座部支持部材42aを取り付けて、前脚22の上端側と回動可能に接続している。また座部42のU字直線部の両端側に一対の座部保持部42bを取り付けている。座部保持部42bは、リンク部34内のハンドル28下端が接続する軸と同軸上で回動可能な軸部42cを設けている。また座部保持部42bは、底面側に一対の座部保持部42bに跨る補強バー42dを取り付けて座部42の剛性を高めている。
【0025】
背部44は、U字直線部に上面へ延びる背部支持部材44aを取り付けて、ハンドル28の直線部28aと回動可能に接続している。背部支持部材44aは、内側に調整紐44eを通した袋状の生地であり、ハンドルの一対の直線部28aに跨るように接続している。このとき背部支持部材44aとハンドルの間に背部44が配置されている。背部支持部材44aの中間部分には、紐固定具44cを取り付けている。紐固定具44cは調整紐44eを通してあり、さらにリクライニングレバー44dを設けている。
背部44のU字直線部の両端側に一対の背部保持部材44bを取り付けている。背部保持部材44bは、座部保持部42bとヒンジ部45を介して回動自在に接続している。
【0026】
幼児用シートの背部44は、座部42に対して、背部支持部材44aを用いて取付け角度を任意角度に調整することができる。
図8(2)に示すように背部44を寝かせる場合には、紐固定具44cのリクライニングレバー44dを引くことにより背部支持部44aの両端と紐固定具44cの間の調整紐44eが長くなり、背部44を任意の角度で寝かすことができる。
一方、
図8(3)に示すように背部44を起こす場合には、紐固定具44cからはみ出した調整紐44eを引くことにより背部支持部材44aの両端と紐固定具44cの間の調整紐44eが短くなり、背部44を任意の角度で起こすことができる。
【0027】
ガード部材80は、一対のアームレスト26を跨ぐ部材であり、両端の下部に乳児用シートと同一構成の解除部70を設けている。このような構成のガード部材80は、乳児用シート50を取り外した取付部60に解除部70を嵌め合わせることにより、容易に取り付けることができる。また、ガード部材80は、解除部70のボタン操作により容易に取付部60から取り外すことができる。
【0028】
[作用]
上記構成による本発明の展開状態のベビーカーを折り畳む動作について以下説明する。
展開状態のベビーカー10は、リンク部34の第1凹部34bとロック部32の凸部32bが嵌合しており展開状態のロック状態を維持している(
図4(4)A)。
ハンドル28の中間部28bに設けた折り畳み操作部29の操作ボタンを押下すると、ボタンに接続しているワイヤー29aが上方(中間部28b側)へ引っ張られる。
【0029】
リンク部34の第1凹部34bと嵌め合っていたロック部32の凸部32bが第1凹部34bから外れる(
図4(4)B)。
折り畳み操作部29の操作ボタンを押下した状態を維持しながら、前脚22を後脚24側へ、又は後脚24を前脚22側へ押し込む(
図4(4)C)。
さらにハンドル28を上方へ向けて押し込むと、乳児用シート及び幼児用シートが2つ折りに折り畳まれる。
【0030】
ベビーカー10が折り畳み状態となった後、折り畳み操作部29の操作ボタンを離すと、コイルばね29bの付勢によって、ロック部32の凸部32bと第2凹部34cが嵌合して折り畳み状態のロック状態となる(
図4(4)D)。このようにしてベビーカー10を折り畳むことによりベビーカー本体20と乳児用シート50と幼児用シート40を一体的に小型化できる。
また、本発明の折り畳み状態のベビーカーを展開する動作については、上記と逆の動作を行うことにより実現できる。
また、幼児期において乳児用シート50は、解除部70のボタン操作により、取付部60から容易に取り外すことができる。そしてガード部材80を取付部60に取り付けることにより、幼児に適したベビーカー10として使用できる。
【0031】
このような本発明のベビーカーによれば、ベビーカー本体に固定された幼児用シートの上に乳児用シートを着脱可能に構成しているため、幼児期において乳児用シートを取り外すだけの作業で幼児用シートを使用できるので、従来の付け替えミスや、煩雑な交換作業が無くなる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、特に乳幼児を対象としたベビーカーなどの車両分野において産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0033】
10………ベビーカー、20………ベビーカー本体、22………前脚、22a………前輪、24………後脚、24a………後輪、26………アームレスト、28………ハンドル、29………折り畳み操作部、30………折り畳みロック部、40………幼児用シート、42………座部、42a………座部支持部材、44………背部、44a………背部支持部材、50………乳児用シート、51………第1フレーム、52………第2フレーム、53………生地、54………第1支持部材、55………第2支持部材、56………底板、60………取付部、62………凸部、64………U字板ばね、70………解除部、80………ガード部材。