(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透光性部材によって形成され上面と下面とを有する平板からなる本体と、前記本体の上面から下面に向けて垂直方向に延び細胞を保持する複数の保持凹部と、を有するディッシュであって、前記保持凹部は、
前記垂直方向に対して25°〜55°の範囲から選ばれる第1の傾きを持ち、下方に向けて開口面積が徐々に小さくなるテーパ面からなる第1部分と、
前記垂直方向に対して実質的に平行な内壁面を持つ筒状部分からなり、細胞を収容する空間を区画する共に、収容された細胞の水平方向の移動を規制する第2部分と、
前記垂直方向に対して55°〜80°の範囲から選ばれ、且つ前記第1の傾きよりも大きい第2の傾きを持ち、下方に向けて開口面積が徐々に小さくなるテーパ面であって細胞の接地面となる第3部分と、
保持対象の細胞が通過できないサイズの排出孔を有する底板からなる第4部分と、を備え、
前記上面から前記下面へ向けて、前記第1部分から前記第4部分が順次連設されることによって構成されている前記ディッシュを、所定位置に水平に配置する第1ステップと、
撮像装置を前記下面の側に配置して前記ディッシュの画像の撮像動作を実行すると共に、前記撮像動作の際のフォーカス情報に基づいて、前記ディッシュの所定の形状特徴部の高さ位置を認識する第2ステップと、
前記ディッシュが液体中に浸漬された状態で、前記上面の側から細胞を含む細胞懸濁液を撒き、重力により前記第1部分を通して前記細胞を前記保持凹部内へ導くと共に、当該細胞を前記第2部分に沿って沈降させて前記第3部分に接地させる第3ステップと、
前記下面の側に配置した前記撮像装置で、前記形状特徴部の高さ位置を基準位置として、前記細胞が前記保持凹部に保持された状態の前記ディッシュの画像の撮像動作を実行する第4ステップと、
前記撮像動作により得られた前記ディッシュの画像データに基づき、前記細胞の形状を特定する第5ステップと、を含む細胞の撮像方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る細胞の撮像方法の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本発明において撮像対象とされるのは、生体由来の細胞、特に細胞凝集塊(スフェロイド;spheroid)である。生体由来の細胞凝集塊は、細胞が数個〜数十万個凝集して形成されている。そのため、細胞凝集塊の大きさは様々である。生きた細胞が形成する細胞凝集塊は略球形であるが、細胞凝集塊を構成する細胞の一部が変質したり、死細胞となっていたりすると、細胞凝集塊の形状は歪になる、あるいは密度が不均一となる場合がある。以下の説明では、上記のような細胞凝集塊を含む意味で、簡略的に細胞Cと表現する。
【0020】
本発明に係る細胞の撮像方法が好適に適用されるのは、例えば細胞移動装置である。細胞移動装置は、バイオ関連技術や医薬の分野における試験において、選別ステージ上のディッシュに担持された種々の形状を呈する複数の細胞の中から、使用可能な細胞をピッキッングし、これをマイクロプレートまで移動する。マイクロプレートでは、細胞に対して、観察、薬効確認、検査、培養等の各種の処理が実行される。細胞の撮像は、例えばディッシュ上における使用可能な細胞凝集塊の判別のために実行される。以下、このような細胞移動装置に本発明に係る細胞の撮像方法が適用される例を主に説明する。
【0021】
[細胞移動装置の全体構成]
図1A及び
図1Bは、細胞移動装置Sの全体構成を概略的に示す図である。ここでは、細胞Cを3つの容器間で移動させる細胞移動装置Sを例示している。細胞移動装置Sは、分注容器100、ディッシュ10を備えた選別容器1、マイクロプレート4、カメラユニット5(撮像装置)、及び分注チップ60又はチップ6が搭載されるヘッドユニット61を備えている。大略的に細胞移動装置Sは、分注容器100から細胞Cを多数含む細胞懸濁液LCを吸引し、該細胞懸濁液LCを選別容器1のディッシュ10上に撒き、本発明に係る細胞の撮像方法を適用して使用可能な細胞Cを選別し、ディッシュ10から使用可能な細胞Cを吸引すると共にこれをマイクロプレート4に吐出する装置である。
図1Aは、細胞移動装置Sの分注容器100及び選別容器1の部分を、
図1Bは、選別容器1及びマイクロプレート4の部分をそれぞれ図示している。
【0022】
分注容器100は、細胞Cを多数含む細胞懸濁液LCを貯留する、上面開口の容器である。この細胞懸濁液LCには、選別容器1において選別対象となる細胞Cと不可避的に混在する夾雑物とが含まれている。
【0023】
選別容器1は、細胞Cの移動元となる容器であり、培地Lを貯留し、細胞選別用のディッシュ10を培地Lに浸漬される状態で保持している。ディッシュ10は、細胞Cを担持するプレートであり、細胞Cを個別に収容することが可能な保持凹部3を上面に複数有している。
【0024】
培地Lは、細胞Cの性状を劣化させないものであれば特に限定されず、細胞Cの種類により適宜選定することができる。培地Lとしては、たとえば基本培地、合成培地、イーグル培地、RPMI培地、フィッシャー培地、ハム培地、MCDB培地、血清などの培地のほか、冷凍保存前に添加するグリセロール、セルバンカー(十慈フィールド株式会社製)等の細胞凍結液、ホルマリン、蛍光染色のための試薬、抗体、精製水、生理食塩水などを挙げることができる。たとえば、細胞Cとして生体由来の細胞であるBxPC−3(ヒト膵臓腺癌細胞)を用いる場合には、培地LとしてはRPMI−1640培地に牛胎児血清FBS(Fetal Bovine Serum)を10%混ぜたものに、必要に応じて抗生物質、ピルビン酸ナトリウムなどのサプリメントを添加したものを用いることができる。このような培地Lは、細胞懸濁液LCのベース液体としても用いることができる。
【0025】
選別容器1は、円柱形の形状を備え、その上面側に矩形の上部開口1Hを備えている。上部開口1Hは、細胞Cの投入、並びに、選別された細胞Cをピックアップするための開口である。ディッシュ10は、上部開口1Hの下方に配置されている。選別容器1及びディッシュ10は、透光性の樹脂材料やガラスで作製されたものが用いられる。これは、選別容器1の下方に配置されたカメラユニット5により、ディッシュ10に担持された細胞Cを観察可能とするためである。
【0026】
選別容器1には、分注チップ60から細胞懸濁液LCが注入される。分注チップ60は、先端開口60Hを備えたチューブ状の部材であり、分注容器100からの細胞懸濁液LCの吸引と、内部に保持した細胞懸濁液LCの選別容器1への吐出とを行う。前記吸引の際、分注チップ60の先端開口60Hが分注容器100の細胞懸濁液LCへ浸漬され、吸引動作が実行される。前記吐出の際、分注チップ60の先端開口60Hが選別容器1の培地Lに浸漬された状態で、分注チップ60内に保持された細胞懸濁液LC(細胞C)が吐出される。
【0027】
マイクロプレート4は、細胞Cの移動先となる容器であり、細胞Cを受け入れる複数のウェル41を有する。1つのウェル41には、培地Lと共に必要個数(通常は1個)の細胞Cが収容される。マイクロプレート4もまた、透光性の樹脂材料やガラスで作製されたものが用いられる。これは、マイクロプレート4の下方に配置されたカメラユニット5により、マイクロプレート4に担持された細胞Cを観察可能とするためである。
【0028】
カメラユニット5は、カメラレンズ51を備え、選別容器1においてディッシュ10に担持されている細胞C、或いはマイクロプレート4においてウェル41に保持されている細胞Cの画像を撮像する。カメラユニット5は、CCDイメージセンサのような撮像素子を備える。カメラレンズ51は、前記撮像素子の受光面に、細胞Cの光像を結像させる。
【0029】
カメラユニット5は、カメラレンズ51が選別容器1及びマイクロプレート4の各下面と対向するように、これらの下方に配置されている。つまり、カメラユニット5は、選別容器1又はマイクロプレート4に担持されている細胞Cの画像を、これらの下面側から撮像する。カメラユニット5は、図中に矢印X2で示すように、ガイドレール52に沿って、選別容器1の下方とマイクロプレート4の下方との間を水平方向に移動可能である。
【0030】
チップ6は、先端開口6Hを備えたチューブ状の部材であり、細胞Cを含む培地Lの吸引及び吐出を行う。具体的にはチップ6は、選別容器1のディッシュ10から細胞Cを、より詳しくはディッシュ10の保持凹部3(
図3)に担持されている細胞Cを培地Lと共に吸引し、これらをマイクロプレート4のウェル41へ吐出する。また、図示は省いているが、必要に応じてチップ6は試薬液等を吸引し、細胞Cを担持しているウェル41内へこれを吐出する。
【0031】
ヘッドユニット61は、細胞懸濁液LCを分注容器100から選別容器1のディッシュ10へ移動させ、細胞Cをディッシュ10からマイクロプレート4へ移動させるために設けられ、ヘッド本体62とヘッド63とを備える。ヘッド本体62は、ヘッド63を上下方向に進退可能に保持し、ガイドレール61Rに沿って図中に矢印X1で示すように、分注容器100からマイクロプレート4の配置位置まで水平方向に移動可能である。なお、
図1A及び
図1Bでは図示していないが、ヘッド本体62は、
図1の紙面と直交する方向(前後方向)にも移動可能である。
【0032】
ヘッド63は、中空のロッドからなる。分注チップ60及びチップ6は、ヘッド63の下端に装着される。ここでは1本のヘッド63を例示しているが、複数本としても良い。また、分注チップ60用とチップ6用のヘッド63とを、各々ヘッド本体62に具備させても良い。或いは、1本のヘッド63に対して分注チップ60及びチップ6を交互に着脱するようにしても良い。ヘッド63の中空部内にはピストン機構が搭載されており、該ピストン機構の動作によって分注チップ60の先端開口60H若しくはチップ6の先端開口6Hに吸引力及び吐出力が与えられる。ヘッド本体62には、前記ピストン機構の動力部と、ヘッド63を上下方向に移動させる昇降機構及びその動力部が内蔵されている。
【0033】
細胞移動装置Sの動作を説明する。まず、分注チップ60がヘッド63に装着されたヘッドユニット61が、分注容器100の上空へ移動される。ヘッド63が下降され、分注チップ60の先端開口60Hが分注容器100の細胞懸濁液LCへ浸漬される。この状態でヘッド63に吸引力が発生され、細胞懸濁液LCが分注チップ60内に吸引される。その後、ヘッド63が上昇されると共に、ヘッドユニット61が選別容器1の上空位置へ移動される。ヘッド63が再び下降され、分注チップ60の先端開口60Hが選別容器1の培地Lに浸漬された状態で、分注チップ60内に保持された細胞懸濁液LCが吐出される。つまり、細胞Cがディッシュ10上に撒かれる(
図1A参照)。
【0034】
細胞Cのディッシュ10からマイクロプレート4への移動に際しては、チップ6がヘッド63に装着されたヘッドユニット61が、選別容器1の上空へ移動される。その前段階で、ディッシュ10に担持された細胞Cの本実施形態に係る撮像と、その撮像画像に基づいた使用可能な細胞Cの選別とが実行され、抽出対象の細胞Cの座標が求められている。そして、ヘッド63が下降され、チップ6の先端開口6Hが上部開口1Hを通してディッシュ10の上面にアクセスする。この状態でヘッド63に吸引力が発生され、ディッシュ10から使用可能な細胞Cがチップ6内に吸引される。その後、ヘッド63が上昇されると共に、ヘッドユニット61がマイクロプレート4の上空位置へ移動される。ヘッド63が再び下降され、マイクロプレート4のウェル41内にチップ6内の細胞Cが吐出される。
【0035】
[ディッシュの構成]
図2は、選別容器1の斜視図、
図3は、ディッシュ10の上面図、
図4は、
図3のIV−IV線断面図である。選別容器1は、底皿11、外周壁12、内周壁13及び天壁14を備える。底皿11は、選別容器1の底部を構成する上面開口の円柱型の皿部材である。外周壁12、内周壁13及び天壁14は、底皿11に被せられる蓋部材を構成している。外周壁12は底皿11の側周壁よりも径大の部分、内周壁13は、外周壁12の内部に配置された角筒状の部分である。天壁14は、選別容器1の上面側において、上部開口1H以外の領域を覆う板部材である。
【0036】
内周壁13は、上部開口1Hを区画する壁であり、上部開口1Hから下方に向けて開口面積が徐々に縮小するように傾斜している。天壁14には、上下方向への貫通孔からなる作業孔15が穿孔されている。この作業孔15を通して、選別容器1のキャビティへの培地Lの注液、薬品類の注液、若しくは培地Lの吸液又は廃液などの作業が行われる。さらに天壁14には、選別容器1のキャビティ内の気圧調整を行うための配管接続口16が設置されている。
【0037】
ディッシュ10は、透光性部材によって形成されたディッシュ本体2と、該ディッシュ本体2に形成される複数の保持凹部3とを備えている。ディッシュ本体2は、所定の厚みを有する平板状の部材からなり、上面21と下面22とを有する。上面21には、移動対象となる細胞Cを保持する複数の保持凹部3が設けられている。ディッシュ10は、下面22が選別容器1の底皿11に対して間隔を置いた状態で、内周壁13の下端部において保持される。ディッシュ10は、選別容器1内の培地L中に浸漬されている。つまり、ディッシュ10の上面21が培地Lの液面よりも下方に位置するよう、選別容器1に培地Lが注液される。
【0038】
保持凹部3の各々は、開口部31、底部32、筒状の壁面33、孔部34(排出孔)及び稜線部35を含む。本実施形態では、上面視で正方形の保持凹部3がマトリクス状に配列されている例を示している。開口部31は、上面21に設けられた正方形の開口であり、選別用のチップ6の先端開口6Hの進入を許容するサイズを有する。底部32は、ディッシュ本体2の内部であって、下面22の近くに位置している。底部32は、中心(前記正方形の中心)に向けて緩く下り傾斜する傾斜面である。筒状の壁面33は、開口部31から底部32に向けて鉛直下方に延びる壁面である。孔部34は、底部32の前記中心と下面22との間を鉛直に貫通する貫通孔である。孔部34の形状は上面視で正方形であり、開口部31と同心である。稜線部35は、上面21に位置し、各保持凹部3の開口縁となる部分であって、保持凹部3同士を区画する稜線である。なお、保持凹部3の上面視形状は、丸形、三角形、五角形、六角形等であってもよく、これらがハニカム状、直線状、ランダムにディッシュ本体2へ配置されていても良い。この保持凹部3の態様については、
図7に基づき後記でさらに詳述する。
【0039】
各保持凹部3の底部32及び筒状の壁面33は、細胞Cを収容する収容空間3Hを区画している。収容空間3Hには、一般的には1個の細胞Cが収容されることが企図されている。従って、保持凹部3は、ターゲットとする細胞Cのサイズに応じて設定される。但し、多数の細胞Cを含む細胞培養液を選別容器1に分注する作業では、一つの保持凹部3に複数の細胞Cが入り込んでしまう場合がある。孔部34は、所望のサイズ以外の小さな細胞や夾雑物を収容空間3Hから逃がすために設けられている。従って、孔部34のサイズは、所望のサイズの細胞Cは通過できず、所望のサイズ以外の小さな細胞や夾雑物を通過させるサイズに選ばれている。これにより、選別対象となる細胞Cは保持凹部3にトラップされる一方で、夾雑物等は孔部34から選別容器1の底皿11に落下する。
【0040】
図5は、選別容器1における実際のディッシュ10の配置例を示す図である。ここでは、4枚の四角形の小ディッシュ10A、10B、10C、10Dが、1つの大きな四角形を作るように配列されてなるディッシュ10を例示している。ミクロンオーダーの細胞Cを保持させるディッシュ10の保持凹部3は微小サイズとなり、ディッシュ本体2としても自ずと薄肉のプレートが用いられることとなる。この場合、プレートサイズを大きくするとプレートの平面度が出難くなるため、小サイズの小ディッシュ10A〜10Dを集合させて所要のサイズのディッシュ10を形成することが多い。マイクロプレート4についても同様である。
【0041】
図5には、カメラユニット5によるディッシュ10の撮影範囲AVの一例も示されている。ミクロンオーダーの細胞Cを撮像する光学系の画角は、自ずと小さくなる。一般的には、画角=2mm程度のカメラが用いられる。従って、カメラユニット5による1回の撮像では、到底ディッシュ10の全域をカバーすることはできない。このため、ディッシュ10の一部を順次カメラユニット5で撮像する手法が採られる。
図5では、小ディッシュ10Aの約1/4程度をカバーする撮影範囲AVが描かれているが、実際は1枚の小ディッシュ10Aの全域をカバーするだけで、数十回〜100回程度の撮像が必要となる。従って、
図5の例では4枚の小ディッシュ10A〜10Dが用いられているので、その4倍の撮像動作が必要となる。
【0042】
[ディッシュ上の細胞の撮像方法]
図6は、本実施形態に係る細胞Cの撮像方法の手順を示す図である。細胞Cの撮像方法は、順次実行される、ディッシュ10を準備しこれを所定位置への配置する第1ステップ#1、ディッシュ10の稜線部35(形状特徴部)の高さ位置を認識する第2ステップ#2、細胞Cをディッシュ10の保持凹部3に収容させる第3ステップ#3、細胞Cを保持しているディッシュ10をカメラユニット5で撮像する第4ステップ#4、及び、前記撮像により得られた画像に基づいて細胞Cの形状を特定(評価)する第5ステップ#5を含んでいる。以下、各ステップについて説明する。なお、第2ステップ#2よりも先に第3ステップ#3を実行する態様としても良い。
【0043】
<第1ステップ>
第1ステップ#1では、細胞Cの選別及び撮像に好適な保持凹部3を備えるディッシュ10が準備される。
図7は、本実施形態で用いられるディッシュ10の詳細を説明するための断面図である。上述の通りディッシュ10は、上面21と下面22とを有するディッシュ本体2と、上面21に開口部31を有し上面21から下面22に向けて延びる保持凹部3とを備える。
図7には、保持凹部3の孔芯位置に上面21及び下面22と直交する垂直線Vが描かれている。保持凹部3が延びる方向は、垂直線Vが延びる垂直方向である。
【0044】
ディッシュ本体2を構成する透光性材料としては特に限定されないが、たとえば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を採用することが好ましい。より具体的には、透光性材料として、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(CPC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、セロファン、芳香族ポリアミド樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレンやスチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、エチルセルロースやセルロースアセテートやセルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0045】
上記の中でも、耐熱性COPを用いることが望ましい。COPは、透明性に優れるため、ディッシュ10に担持された細胞Cを下面22側から撮像する場合に有利となり、耐熱性を具備させることで加熱滅菌処理に耐えることができる。さらに、COPはタンパク質が付着し難い特性を有しており、細胞Cがディッシュ10に付着しないようにすることができる。
【0046】
保持凹部3は、上面21から下面22にかけて、稜線部35、開口テーパ部31T、筒状の壁面33、底部32及び孔部34を備えている。これら各部の繋ぎ目を境界として、
図7では保持凹部3を4つの特徴部分、すなわち第1部分P1、第2部分P2、第3部分P3及び第4部分P4に区分している。つまり保持凹部3は、上面21から下面22へ向けて、第1部分P1から第4部分P4が順次連設されることによって構成されている。
【0047】
第1部分P1は、上面21と面一の稜線部35と、開口テーパ部31T(第1の傾きを持つテーパ部)とを有する部分である。開口テーパ部31Tは、下方に向けて開口面積が徐々に小さくなるテーパ面からなる。当該テーパ面の垂直線Vに対する傾き角θ1(第1の傾き)は、比較的小さく設定される。好ましい傾き角θ1の範囲は、25°〜55°程度である。
【0048】
本実施形態では、複数の保持凹部3がマトリクス配置されており、一の保持凹部3の開口テーパ部31Tの頂点と、他の保持凹部3の開口テーパ部31Tの頂点同士が隣接することで、上面21に稜線部35が形成されている。つまり、隣接する開口テーパ部31Tによって上面21に尖った峰が形成され、上面21の残る部分は開口部31である。従って、上面21の側に細胞懸濁液LCが撒かれた場合でも、細胞Cは上面21に滞留せず、開口テーパ部31Tによって収容空間3Hに導かれる。上記の尖った峰の好ましい頂角θAは、50°〜110°程度である。
【0049】
第2部分P2は、筒状の壁面33が存在する領域であり、第1〜第4部分P1〜P4の中で、最も上下方向の長さが長い部分である。筒状の壁面33は、垂直線Vに対して実質的に平行な内壁面(垂直壁面)を持つ筒状部分からなり、細胞Cを収容するための収容空間3Hの大部分を区画している。細胞Cが保持凹部3に収容される際、筒状の壁面33は重力で沈降する細胞Cを下方へガイドする。この際、筒状の壁面33は垂直壁面であるので、細胞Cは抵抗を受けることなく自重で沈降することができる。さらに、筒状の壁面33は、収容された細胞Cの水平方向の移動を規制する役目も果たす。また、後記で詳述するが、筒状の壁面33が垂直壁面であるゆえ、カメラユニット5でディッシュ本体2の下面22の側からディッシュ10を撮像すると、その画像に筒状の壁面33が映り込まないようにすることができる。
【0050】
第3部分P3は、底部32が存在する領域である。底部32は、下方に向けて開口面積が徐々に小さくなるテーパ面からなり、筒状の壁面33の下端から孔部34の上端まで延びている。当該テーパ面は、細胞Cの接地面となる。底部32のテーパ面の垂直線Vに対する傾き角θ2(第2の傾き)は、傾き角θ1よりも大きい傾きに設定されている。好ましい傾き角θ2の範囲は、55°〜80°程度である。このような傾き角θ2とすることで、細胞Cを安定的に底部32へ接地させることができると共に、底部32のテーパ面に沿って夾雑物を孔部34へ案内することができる。さらに、第3部分P3の肉厚を薄くすることができる。
図3に示されている通り、上面21の側から見た平面視では、底部32は4つの台形片からなり、錐台の形状を備えた面である。
【0051】
第4部分P4は、保持対象の細胞Cが通過できないサイズの孔部34を有する底板からなる部分である。孔部34は、保持凹部3の孔芯(
図7の垂直線Vが相当)の位置に配置された、垂直方向に延びる孔である。
図3に示されているように、下面22の側から見た平面視では、孔部34は正方形の形状を備えている。これにより、一般に略球形の形状を有する細胞C(細胞凝集塊)と孔部34との区別が、画像上で容易に行えるようになる。なお、孔部34は、三角形や五角形などの多角形としても良い。また、細胞Cとの区別が容易に行えるならば、円形の孔部34としても良い。
【0052】
第4部分P4は、保持凹部3を構成する第1〜第4部分P1〜P4の中で、垂直線Vの方向の厚さにおいて最も薄い部分である。第4部分P4は、第3部分P3の底部32に接地した細胞Cとカメラユニット5との間に位置することになる。このため、第3部分P3に加えて第4部分P4の存在は、細胞Cの撮像に際し、光量損失や像歪みの発生要因となり得る。しかし、第4部分P4が最も薄肉とされ、底部32もまた垂直線Vに対して比較的大きい傾き角θ2のテーパ面とされて第3部分P3を薄肉化しているので、画像劣化の要因を最小限に抑制することができる。
【0053】
以上の第1〜第4部分P1〜P4の特徴を有するディッシュ10が準備され、これが所定位置に水平に配置される。本実施形態では、ディッシュ10は選別容器1の上部開口1Hに臨み、培地Lに浸漬された状態で配置される。
【0054】
<第2ステップ>
第2ステップ#2では、第1ステップ#1で所定位置に据え付けられたディッシュ10の高さ位置のキャリブレーションが行われる。具体的には、カメラユニット5でディッシュ10を撮像し、予め定められたディッシュ10の所定の形状特徴部の高さ位置を認識する処理が行われる。本実施形態では、認識される前記形状特徴部が、ディッシュ10の上面21に形成された稜線部35である例を示す。稜線部35は一例であり、前記形状特徴部はディッシュ10の他の部位であっても良く、例えば孔部34の下端エッジであっても良い。
【0055】
図8は、第2ステップ#2における稜線部35の撮像態様を模式的に示す図である。
図8では選別容器1が簡略的に描かれており、ディッシュ10は、水平状態で選別容器1内に据え付けられ、上面21が培地Lの液面下にあり、下面22が容器底面から離間した状態で培地L中に浸漬されている。カメラユニット5は、下面22の側に配置され、下方からディッシュ10の画像の撮像動作を実行する。なお、ディッシュ10を選別容器1へ据え付けた後であって培地Lを注液する前に、前記撮像動作を行うようにしても良い。
【0056】
カメラレンズ51がフォーカスを合わせるのは、稜線部35である。選別容器1、ディッシュ10及び培地Lが透光性を有するので、下面22の側からの稜線部35の撮像が可能である。このフォーカス合わせには、例えばコントラスト検出方式を採用することができる。具体的には、稜線部35の下方であると確定できる所定位置を撮像始点として、数十ミクロン単位でフォーカス位置を上方にシフトさせつつ、カメラユニット5にディッシュ10の画像を撮像させる。撮像終点は、稜線部35の上方であると確定できる所定位置である。つまり、フォーカス位置の上方シフトによりコントラスト値が徐々に上がり、最も高くなった状態(稜線部35に対する合焦位置)後、徐々にコントラスト値が低下することが確認できる位置が撮像終点となる。
【0057】
得られた画像の中で、稜線部35と推定されるラインが最も高いコントラストで写っている画像が撮像されたフォーカス位置を合焦位置と扱い、そのフォーカス距離に基づいて稜線部35の高さ位置が求められる。このように、前記撮像動作の際のフォーカス情報に基づいて、形状特徴部としての稜線部35の高さ位置が認識される。形状特徴部は稜線部35以外でも良いが、稜線部35は、細胞Cが接地する第3部分P3からは比較的遠い上面21にあり、また隣接する保持凹部3の間に位置するので細胞Cによって隠されることはなく、しかも単純な直線形状であるので、形状的特徴として画像上で認識し易い利点がある。
【0058】
第1ステップ#1にてディッシュ10を所定位置に配置しても、完全な水平状態を作ることは困難であり、またディッシュ10の反りなども生じ得る。このため、一つの稜線部35の高さ位置を求めるだけでは、全ての保持凹部3の基準位置とはなり難く、理想的には全ての保持凹部3に対応する稜線部35の高さ位置を求めることが望ましい。しかしながら、
図5に基づき上述した通り、カメラユニット5の画角は小さく1枚のディッシュの全域を撮像するには多数回の撮像を要するため、全ての保持凹部3に対応する稜線部35を撮像したのでは手間が掛かりすぎる。従って、ディッシュ10の要部のみを撮像し、得られた各要部の稜線部35の高さ位置に基づき、ディッシュ10の上面21の任意位置における稜線部35の高さ位置を算出する方式を採ることが望ましい。
【0059】
図9は、稜線部35の撮像箇所の例を示す平面図である。ディッシュ本体2は、四角形の平板である。この場合、前記要部として、ディッシュ本体2の四隅に位置する保持凹部3A、3B、3C、3D(これらの付近の保持凹部でも良い)と、ディッシュ本体2の中央の保持凹部3Eとが選ばれ、これらに対応する各稜線部35の高さ位置が、例えば上掲のコントラスト検出方式にて認識される。保持凹部3Eは、ディッシュ本体2の四隅の対角線の交点付近に存在する保持凹部である。なお、ディッシュ本体2は、四角形以外の多角形、円形、楕円形などの形状を有するものとしても良い。また、実際に撮像されるのは、
図5で説明した通り撮影範囲AVの範囲に含まれる保持凹部3であり、選ばれた保持凹部3A〜3Eを含むように撮影範囲AVが設定される。
【0060】
このように、ディッシュ本体2の上面21の互いに離間した5箇所の稜線部35の高さ位置を認識しておくことで、上面21の任意の位置における稜線部35の高さ位置を算出することが可能となる。従って、後段の第4ステップ#4において、細胞Cの撮像の対象となる任意の保持凹部3の稜線部35の高さ位置情報を得るに際し、ディッシュ10が備える全ての保持凹部3について稜線部35の高さ位置を認識せずとも、前記四隅付近及び前記交点付近の稜線部35の高さ位置の情報に基づいて算出することが可能となる。従って、撮像に要する時間を短縮することができる。勿論、全ての保持凹部3について稜線部35の高さ位置を認識させるようにしても良い。また、保持凹部3A〜3Eを撮影する際の撮影範囲AVの範囲に含まれる全ての保持凹部3の各稜線部35の高さ位置を求めるようにしても良い。そして、これらの平均値を算出し、当該平均値をディッシュ本体2の四隅及び中央の各々高さ位置情報と扱うようにしても良い。
【0061】
<第3ステップ>
第3ステップ#3は、細胞Cをディッシュ10の保持凹部3に収容させるステップである。
図1Aに基づき説明した通り、ディッシュ10が選別容器1内の培地L(液体)中に浸漬された状態で、上面21の側から細胞Cを含む細胞懸濁液LCが撒かれる。細胞Cは、重力により第1部分P1(開口部31)を通して保持凹部3内へ導かれる。さらに当該細胞Cは、第2部分P2(筒状の壁面33)に沿って沈降され、第3部分P3(底部32)に接地する。
【0062】
図10は、細胞Cがディッシュ10の保持凹部3へ収容される態様を示す断面図である。細胞懸濁液LCには、各種サイズ及び形状の細胞C(
図10では単純に円で描いている)と、不可避的に混入する夾雑物Cxとが含まれている。これらは重力により、培地L中を沈降し、ディッシュ本体2の上面21に至る。保持凹部3の開口部31上に沈降した細胞Cは、そのまま収容空間3Hに入る。一方、保持凹部3間の壁部の上に沈降した細胞Cは、稜線部35に衝突する。しかし、第1部分P1において稜線部35は尖った峰によって形成されており、稜線部35の下方に続く開口テーパ部31Tは比較的急峻な傾きを持つ。このため、当該細胞Cは開口テーパ部31Tに案内され、第2部分P2にスムースに進入する。
【0063】
第2部分P2では、細胞Cは、垂直方向に延びる筒状の壁面33によって水平方向の移動を規制されつつ、自重で沈降する。この沈降の際、細胞Cは実質的に筒状の壁面33から抵抗を受けない。沈降が進むと、やがて細胞Cは第3部分P3に至り、底部32のテーパ面に接触する。保持凹部3の孔芯(孔部34の位置)から外れた位置に接面した細胞C(
図10において点線で示す細胞C)は、底部32のテーパ面にガイドされて孔部34の上の位置に落ち着く。細胞Cのサイズは孔部34の開口サイズよりも大きいので、細胞Cはこれ以上沈降することはない。一方、夾雑物Cxも底部32に接面し、孔部34へ向けてガイドされる。夾雑物Cxのサイズは孔部34の開口サイズよりも小さいので、孔部34(第4部分P4)を通過する。その後、夾雑物Cxは、選別容器1の底皿11(
図2)で受け取られる。従って、保持凹部3には細胞Cだけが保持される。なお、一つの保持凹部3に複数個の細胞Cが進入した場合、孔部34を通して上方に向かう噴流を発生させ、細胞Cを分散させるようにしても良い。
【0064】
<第4ステップ>
第4ステップ#4では、細胞Cが保持凹部3に保持された状態のディッシュ10の画像の撮像動作が、カメラユニット5にて行われる。
図11は、ディッシュ10が撮像されている状態を示す断面図である。カメラユニット5は、光像を光電変換する撮像素子53と、撮像光学系としてのカメラレンズ51及び絞り54とを含む。図略の照明系によってディッシュ10が照明された状態で、ディッシュ本体2の下面22の側からカメラユニット5により細胞C1、C2を保持するディッシュ10の画像が撮像される。
【0065】
細胞C1、C2は、そのサイズに応じて水平方向に幅を持つ。このため、細胞C1、C2の光像M1、M2は、相応の水平幅を持つ物体として撮像素子53に結像される。このため、細胞C1、C2の輪郭を画像としてキャプチャーすることができる。これに対し、保持凹部3の筒状の壁面33は垂直壁であるので、光軸上からずれた位置にあるとしても、水平方向には殆ど幅を持たない。従って筒状の壁面33の光像M3は、撮像される画像には殆ど写り込まない(幅の狭い線として写り込む程度)。また、保持凹部3の第3部分P3及び第4部分P4は、既述の通り薄肉化されているので、光量損失や像歪みは少ない。これらのことは、キャプチャーされる細胞C1、C2の画像の明確化に貢献する。
【0066】
上記の撮像動作に際しては、第2ステップ#2で得られた稜線部35の高さ位置の情報が利用される。具体的には、稜線部35の高さ位置を基準位置とし、この基準位置から所定距離だけ下方の位置を撮像始点とする。この所定距離は、保持凹部3の深さなどを考慮して、稜線部35から保持凹部3に担持された細胞Cの下面付近に相当する位置までの距離に応じて設定することができる。例えば、垂直方向において、第1部分P1と第2部分P2との合算長さ(稜線部35から筒状の壁面33の下端までの距離)が293μm、第1部分P1〜第3部分P3までの合算長さが360μm、第1部分P1〜第4部分P4の合算長さ(上面21〜下面22の距離)が390μmのディッシュ10であるならば、前記所定距離は、例えば360μmとすることができる。
【0067】
上記撮像始点においてカメラユニット5にディッシュ10の画像を撮像させたら、続いて、数十ミクロン単位でフォーカス位置を上方にシフトさせつつ、カメラユニット5にディッシュ10の画像を複数回撮像させる。上方にシフトさせるピッチは、例えば20μm〜40μmである。撮像終点は、稜線部35の下方の適宜な位置である。これらの撮像で取得された画像のうち、例えば細胞Cの輪郭と推定されるラインが最も高いコントラストで写っている画像を選択し、当該画像に係る画像データを次段の第5ステップ#5の画像処理に供するようにすることができる。上記とは逆に、撮像始点をディッシュ10の上方位置に設定し、フォーカス位置を徐々に下方にシフトさせるようにしても良い。
【0068】
<第5ステップ>
第5ステップ#5では、前記撮像動作により得られたディッシュ10の画像データに基づき、細胞Cの形状や色合いを特定する。例えば、第4ステップ#4で得られた画像データに画像処理を施し、細胞Cの存在を画像上で認識する処理、認識された細胞Cの形状を認識する処理などが実行される。さらに、特定された形状や色合いに基づき、当該細胞Cが実験や検査に用いることができる健全な細胞であるか否かの評価がなされる。
【0069】
第4ステップ#4で得られた画像には、不可避的にディッシュ10(保持凹部3)の形状が映り込むことになる。従って、上記の画像処理では、ディッシュ10の形状部分を画像からフィルタリング処理することが望ましい。
図12(A)は、第4ステップ#4の撮像動作により得られた保持凹部3及び細胞Cの画像の一例である。当該画像には、稜線部35に相当する線、筒状の壁面33及び孔部34の輪郭線、底部32の四角錐台の線が映り込んでいる。これらの線はいずれも直線であり、汎用の直線エッジの検出処理等で容易に検出することができる。特に、孔部34は細胞Cと完全にオーバーラップする形で画像に映り込むが、本実施形態の孔部34は正方形であるため、画像上での検出が容易である。
図12(B)は、検出された直線を消去する画像処理を行った後の細胞Cの画像を示す図である。前記画像処理により、細胞Cのクリアな画像を得ることができる。
【0070】
[細胞移動装置の電気的構成]
図23は、細胞移動装置Sの電気的構成を示すブロック図である。細胞移動装置Sは、ヘッドユニット61(
図1A及び
図1B)の移動、ヘッド63の位置決め及び昇降、ヘッド63による細胞Cの吸引及び吐出動作、並びにカメラユニット5の移動及び撮像動作を制御する制御部7を備える。また、細胞移動装置Sは、カメラユニット5を水平移動させる機構としてカメラ軸駆動部55、ヘッドユニット61を水平移動させる機構としてヘッドユニット軸駆動部64、ヘッド63を昇降させる機構並びに吸引及び吐出動作を行わせる機構としてヘッド駆動部65、及び表示部66を備えている。
【0071】
カメラ軸駆動部55は、ガイドレール52に沿ってカメラユニット5を移動させる駆動モータを含む。好ましい態様は、ガイドレール52に沿ってボールねじが敷設され、該ボールねじに螺合されたナット部材にカメラユニット5が取り付けられ、前記駆動モータが前記ボールねじを正回転又は逆回転させることにより、カメラユニット5を目標位置へ移動させる態様である。
【0072】
ヘッドユニット軸駆動部64は、ガイドレール61Rに沿ってヘッドユニット61(ヘッド本体62)を移動させる駆動モータを含む。好ましい態様は、カメラ軸駆動部55と同様に、ボールねじ及びナット部材を具備し、前記駆動モータが前記ボールねじを正回転又は逆回転させる態様である。なお、ヘッド本体62をXYの2方向に移動させる場合は、ガイドレール61Rに沿った第1ボールねじ(X方向)と、第1ボールねじに螺合された第1ナット部材に装着された移動板に搭載された第2ボールねじ(Y方向)とを用いる。この場合、ヘッド本体62は第2ボールねじに螺合された第2ナット部材に装着される。
【0073】
ヘッド駆動部65は、ヘッド63を上下方向に移動させる昇降機構のための動力部、中空ロッドからなるヘッド63の中空部内に組み付けられるピストン機構を駆動するための動力部(例えばモータ)が相当する。上述の通り、昇降機構はヘッド本体62からヘッド63が下方に延び出した下降位置と、ヘッド本体62に大部分が収容された上昇位置との間で、ヘッド63を上下移動させる。ピストン機構の動力部は、ヘッド63内に配置されたピストン部材を昇降させることで、ヘッド63に装着されたチップ6の先端開口6H若しくは分注チップ60の先端開口60Hに、吸引力及び吐出力を発生させる。
【0074】
表示部66は、液晶ディスプレイ等からなり、カメラユニット5により撮影された画像や、制御部7によって画像処理等がなされた画像などを表示する。
【0075】
制御部7は、マイクロコンピュータ等からなり、所定のプログラムが実行されることで、撮像制御部71、画像メモリ72、画像処理部73、軸制御部74、ヘッド制御部75及び記憶部76を備えるように機能する。撮像制御部71は、カメラユニット5の移動動作及び撮像動作、特に上述の第2ステップ#2及び第4ステップ#4で説明したディッシュ10の撮像動作を制御するものであり、機能的に、カメラ移動制御部711、稜線検出部712、稜線高さ算出部713及び細胞検出部714を備える。
【0076】
カメラ移動制御部711は、カメラ軸駆動部55を制御して、カメラユニット5をガイドレール52に沿って移動させる動作を制御する。また、カメラ移動制御部711は、ディッシュ10を撮像する際、カメラユニット5を微小移動させる。既述の通り、カメラユニット5の画角はディッシュ10のサイズに比べて相当に小さいので、カメラ移動制御部711は、カメラ軸駆動部55を制御してカメラユニット5をXY方向に微小移動させつつ、ディッシュ10の撮像動作を実行させる。
【0077】
稜線検出部712は、上記第2ステップ#2で説明した稜線部35を検出するための撮像動作を制御する。稜線高さ算出部713は、稜線検出部712により検出された幾つかの保持凹部3(例えばディッシュ10の四隅及び中央)の稜線部35の高さ位置に基づき、任意の保持凹部3の稜線部35の高さ位置を算出する処理を行う。細胞検出部714は、上記第4ステップ#4で説明した細胞Cを検出するための撮像動作を制御する。
【0078】
画像メモリ72は、前記マイクロコンピュータに具備されている記憶領域や外部ストレージ等からなり、カメラユニット5により取得された画像データを一時的に格納する。
【0079】
画像処理部73は、カメラユニット5が撮像し、画像メモリ72に格納された画像データを画像処理する。画像処理部73は、細胞Cが分注された後のディッシュ10の画像に基づき、上記第5ステップ#5で説明したような、ディッシュ10上における細胞Cの存在を画像上で認識する処理、細胞Cの分布を認識する処理、認識された細胞Cの形状を認識する処理などを、画像処理技術を用いて実行する。また、画像処理部73は、取得された画像から保持凹部3に相当する線(稜線部35)をフィルタリングする処理等を実行する。
【0080】
軸制御部74は、ヘッドユニット軸駆動部64の動作を制御する。すなわち、軸制御部74は、ヘッドユニット軸駆動部64を制御することで、ヘッドユニット61を水平方向の所定の目標位置へ移動させる。ヘッド63(チップ6又は分注チップ60)の、分注容器100と選別容器1との間の移動、吸引対象となるディッシュ10の保持凹部3の鉛直上空での位置決め、並びに吐出対象となるマイクロプレート4のウェル41の鉛直上空での位置決め等は、軸制御部74によるヘッドユニット軸駆動部64の制御によって実現される。
【0081】
ヘッド制御部75は、ヘッド駆動部65を制御する。ヘッド制御部75は、ヘッド駆動部65の前記昇降機構のための動力部を制御することにより、制御対象とするヘッド63を所定の目標位置に向けて昇降させる。また、ヘッド制御部75は、制御対象とするヘッド63についての前記ピストン機構の動力部を制御することにより、所定のタイミングで当該ヘッド63に装着されているチップ6又は分注チップ60の先端開口6H、60Hに吸引力又は吐出力を発生させる。
【0082】
記憶部76は、細胞移動装置Sにおける各種設定値やデータを記憶する。この他、記憶部76は、カメラユニット5によるディッシュ10の撮像シーケンス、稜線検出部712により検出された稜線部35の高さ位置データ等も記憶する。
【0083】
[撮像動作のフロー]
続いて、本実施形態の細胞移動装置Sによる細胞Cの撮像動作のフローについて説明する。
図14は、前記撮像動作の全体フローを示すフローチャート、
図15は、稜線検出処理の詳細フローチャート、
図16は、細胞撮像処理の詳細フローチャートである。ここででは、
図5に例示したように、4枚のディッシュ10(ディッシュ番号N=1〜4)が選別容器1に配置されているケースの撮像動作例を示す。
図14のフローが開始されるのは、
図6に示した第1ステップ#1におけるディッシュ10の準備及び選別容器1への配置が完了した後である。
【0084】
図14を参照して、撮像動作が開始されると、制御部7はディッシュ10の配置データの読み込みを行う(ステップS1)。配置データとは、所定の作業ステージ上に配置された選別容器1中における、4枚のディッシュ10の位置を特定するXY座標データである。ここでは4枚のディッシュ10が用いられる例を示すが、5枚以上のディッシュ10を用いても、或いは3枚以下のディッシュ10を用いても良い。
【0085】
次に、撮像制御部71の主に稜線検出部712により、ディッシュ10の稜線部35の高さ位置を検出する処理が実行される(ステップS2)。この稜線検出処理は、
図6の第2ステップ#2において説明した稜線部35の認識に相当する。
図15のフローチャートでは、
図9に示したように、ディッシュ本体2の上面21の互いに離間した5箇所の稜線部35の高さ位置を認識する場合の処理を例示している。
【0086】
その後、軸制御部74及びヘッド制御部75がヘッドユニット軸駆動部64及びヘッド駆動部65を介してヘッドユニット61を動作させて、
図1Aに例示しているように、分注チップ60から選別容器1に細胞懸濁液LCを吐出させる。この動作により、ディッシュ10に細胞Cが撒かれる(ステップS3)。細胞Cが保持凹部3に収容されるまで、つまり
図6の第3ステップ#3が完了するまで、暫く待ち時間が設定され、その後に次段のステップS4が開始される。なお、ステップS3をステップS2に先行して実行させても良い。
【0087】
しかる後、撮像制御部71の主に細胞検出部714により、ディッシュ10に担持された細胞Cを撮像する処理が実行される(ステップS4)。この細胞撮像処理は、
図6の第4ステップ#4において説明したディッシュ10の撮像に相当する。
図16のフローチャートでは、
図5に示したように、4枚のディッシュ10A〜10Dの各々につき、ディッシュ全域の撮像には複数回の撮像が必要となる場合の処理を例示している。
【0088】
<稜線検出処理>
図15を参照して、稜線検出処理の詳細を説明する。先ず制御部7は、ディッシュ番号N=1に設定し、稜線検出処理対象とする1枚目のディッシュ10を指定する(ステップS11)。
図5の例では、例えば小ディッシュ10Aが処理対象に指定される。これを受けてカメラ移動制御部711は、カメラ軸駆動部55を制御して、カメラユニット5をN番目のディッシュ10の直下へ移動させる(ステップS12)。
【0089】
より詳しくは、稜線部35の撮像を行う5箇所の保持凹部3のうち、最初に撮像を行うように設定されている保持凹部3にカメラ光軸が合うように、カメラユニット5が移動される。例えば、
図9に示す左上の角部の保持凹部3Aの直下である。なお、中央の保持凹部3Eを最初に撮像するように指定しても良いが、中央部は撓みが生じ易いため他の4隅の角部とは高さ位置が相違しがちであることから、角部のいずれかを最初に撮像し、これを残り4箇所の撮像の際の基準とすることが好ましい。以下のフローの説明では、
図5の4隅の角部にある保持凹部3A、3B、3C、3Dの各稜線部3を第1、第2、第3、第4角部の稜線部3と呼び、中央の保持凹部3Eの稜線部3を中央部の稜線部3と呼ぶ。
【0090】
第1角部の保持凹部3Aの直下へカメラユニット5が移動されたら、稜線検出部712は、当該第1角部の稜線部高さZ1を検出するための撮像動作をカメラユニット5に実行させる(ステップS13)。具体的には稜線検出部712は、ディッシュ10(稜線部35)の配置位置よりも明らかに下方の所定位置を撮像始点とし、フォーカス位置を所定ピッチで順次上方へシフトさせながらディッシュ10の画像の撮像を行わせる方式で、所定回数の撮像動作をカメラユニット5に実行させる。上記所定ピッチは、例えば数十ミクロンである。所定回数は、所定ピッチの上方へのシフトによって、フォーカス位置が稜線部35の上方に至ると推定できるに足りる回数である。
【0091】
稜線検出部712は、コントラスト検出方式により稜線部高さZ1を検出する。すなわち、稜線検出部712は、上記の所定回数分の撮像により得られた画像の中で、稜線部35と推定されるラインが最も高いコントラストで写っている画像を選択する。そして、稜線検出部712は、最高コントラストの画像が撮像されたフォーカス位置を合焦位置と扱い、そのフォーカス距離に基づいて稜線部高さZ1を検出する。
【0092】
続いて、稜線部高さZ1が検出できたか否かが確認される(ステップS14)。例えば、配置忘れ等の理由で、ディッシュ番号N=1のディッシュ10が所定位置に据え付けられていない場合、ステップS13の検出動作を行っても稜線部高さZ1は検出できないし、他の稜線部高さも当然検出できない。従って、稜線部高さZ1が検出できなかった場合(ステップS14でNO)、そのディッシュ10における稜線検出処理は中止され、処理はステップS20へスキップする。
【0093】
稜線部高さZ1が検出できた場合(ステップS14でYES)、第2角部の保持凹部3Bの直下へカメラユニット5が移動され、当該第2角部の稜線部高さZ2を検出するための撮像動作が実行される(ステップS15)。具体的には、カメラ移動制御部711がカメラ軸駆動部55を制御して、カメラユニット5を第2角部の保持凹部3Bの直下へ移動させる。そして、稜線検出部712が、ステップS13と同様にして、保持凹部3Bを含む領域の撮像動作をカメラユニット5に実行させる。すなわち、所定の撮像始点から、フォーカス位置を所定ピッチで順次上方へシフトさせながら、ディッシュ10の画像の撮像を行わせる。
【0094】
この際、ステップS13で得られた稜線部高さZ1の情報が利用される。具体的には、撮像始点が、稜線部高さZ1を基準位置として所定距離だけ下方の位置に設定される。つまり、稜線部高さZ1が既知であるので、稜線部高さZ2が存在する範囲をある程度推定することができる。これにより、撮像シフトの回数を減らし、作業時間を短縮することができる。例えば、稜線部高さZ1の検出では、基準位置が未知であるため、フォーカス位置を所定ピッチで情報へシフトさせる回数が30回程度必要であるとすると、稜線部高さZ2の検出では前記シフトさせる回数を10回程度に減じることが可能となる。
【0095】
同様にして、第3角部の保持凹部3Cの直下へカメラユニット5が移動され、当該第3角部の稜線部高さZ3を検出するための撮像動作が実行される(ステップS16)。続いて、第4角部の保持凹部3Dの直下へカメラユニット5が移動され、当該第4角部の稜線部高さZ4を検出するための撮像動作が実行される(ステップS17)。されに、中央部付近の保持凹部3Eの直下へカメラユニット5が移動され、当該中央部の稜線部高さZ5を検出するための撮像動作が実行される(ステップS18)。
【0096】
稜線検出部712は、以上の処理で検出した稜線部高さZ1〜Z5のデータを、記憶部76に記憶する(ステップS19)。これにより、上面21の任意の位置における稜線部35の高さ位置を、稜線部高さZ1〜Z5のデータに基づいて算出することが可能となる。従って、全ての保持凹部3についての稜線部高さデータを取得する手間を省くことができる。
【0097】
次に制御部7は、ディッシュ番号NがMax(本実施形態ではN=4)であるか否かを確認する(ステップS20)。ディッシュ番号NがMaxでない場合(ステップS20でNO)、ディッシュ番号Nがインクリメントされ(ステップS21)、ステップS12に戻り、次のディッシュ10について同様の処理が実行される。一方、ディッシュ番号NがMaxである場合(ステップS20でYES)、制御部7は処理を終える。
【0098】
<細胞撮像処理>
図16を参照して、細胞撮像処理の詳細を説明する。先ず制御部7は、ディッシュ番号N=1に設定し、稜線検出処理対象とする1枚目のディッシュ10を指定する(ステップS31)。これを受けてカメラ移動制御部711は、カメラ軸駆動部55を制御して、カメラユニット5をN番目のディッシュ10の直下へ移動させる(ステップS32)。
【0099】
続いて制御部7は、N番目のディッシュ10について、細胞撮像ポイントM=1に設定する(ステップS33)。1枚のディッシュ10に対する細胞撮像ポイントMの数は、カメラユニット5の画角により定まる。例えば、1枚のディッシュ10の全域の撮像に80回の撮像を要するならば、細胞撮像ポイントMのMaxはM=80である。これを受けてカメラ移動制御部711は、カメラ軸駆動部55を制御して、カメラユニット5をM番目の細胞撮像ポイントの直下へ微小移動させる(ステップS34)。
【0100】
その後、稜線高さ算出部713が、細胞撮像ポイントMの座標と、記憶部76に格納されている稜線部高さZ1〜Z5のデータとを用いて、細胞撮像ポイントMの位置に存在する保持凹部3における稜線部35の高さ位置Zmを算出する(ステップS35)。ディッシュ10に全く反りがなく、且つ、完全に水平に配置されていれば、Z1〜Z5=Zmとなる。一方、Z1〜Z5にバラツキがあるならば、Zmを囲む3点の高さ位置のXY座標及び傾きと、ZmのXY座標とから、Zmを算出することができる。
【0101】
しかる後、細胞検出部714は、算出された高さ位置Zmを基準位置とし、この基準位置から所定距離だけ下方の位置を撮像始点とするフォーカス調整を行う。そして、当該撮像始点において、カメラユニット5に細胞撮像ポイントMの位置に存在する保持凹部3に担持されている細胞Cを撮像させる。続いて、細胞検出部714は、数十ミクロン単位でフォーカス位置を上方にシフトさせつつ、カメラユニット5にディッシュ10の画像を複数回撮像させる。これらの撮像で取得された画像のうち、例えば細胞Cの輪郭と推定されるラインが最も高いコントラストで写っている画像が、当該細胞Cの画像として選択される(ステップS36)。
【0102】
次に制御部7は、細胞撮像ポイントMがMaxであるか否かを確認する(ステップS37)。細胞撮像ポイントMがMaxでない場合(ステップS37でNO)、細胞撮像ポイントMがインクリメントされ(ステップS38)、ステップS34に戻り、次の細胞撮像ポイントMについて同様の処理が実行される。一方、細胞撮像ポイントMがMaxである場合(ステップS37でYES)、制御部7はディッシュ番号NがMax(本実施形態ではN=4)であるか否かを確認する(ステップS39)。ディッシュ番号NがMaxでない場合(ステップS39でNO)、ディッシュ番号Nがインクリメントされ(ステップS40)、ステップS32に戻り、次のディッシュ10について同様の細胞撮像処理が実行される。一方、ディッシュ番号NがMaxである場合(ステップS39でYES)、制御部7は処理を終える。
【0103】
[主な作用効果]
以上説明した本実施形態に係る細胞移動装置Sによれば、ディッシュ10が備える保持凹部3の第1部分P1に稜線部35と、垂直方向に対して比較的小さい傾きを持つ開口テーパ部31Tが存在するので、第3ステップ#3において細胞懸濁液LCが撒かれたとき、細胞Cはディッシュ10の上面21に滞留することなく、確実に保持凹部3内に導かれる。また、第2部分P2は、鉛直方向に延びる筒状部分からなる筒状の壁面33にて構成されるので、細胞Cは抵抗を受けることなく自重でそのまま沈降できる。
【0104】
さらに、細胞Cが接地する第3部分P3の底部32は、垂直方向に対して比較的大きい傾きを持つので、水平により近い接地面となる。このため、細胞Cの接地面からディッシュ10の下面22までの距離を短くでき、第4ステップ#4の撮像動作における細胞Cへのフォーカス合わせの際に、ディッシュ10の存在が与える影響を小さくすることができ、また画像の解像度の向上にも寄与する。さらに、第3部分P3のテーパ部の傾きによって、細胞Cを保持凹部3の孔芯に集めることが可能となる。これに加え、保持凹部3の第2部分P2は、垂直方向に対して実質的に平行な内壁面を持つ筒状の壁面33であるので、第4ステップ#4において下面22の側からの撮像によって取得される画像に前記内壁面が映り込み難くなり、画像上での細胞Cの認識性が向上する。また、保持凹部3の第4部分P4には孔部34が備えられているので、撮像の障害物となる夾雑物などを該孔部34から逃がすことができ、細胞Cの認識性が高められる。なお、孔部34は垂直方向に延びる孔であるので、撮像によって取得される画像に孔部34も映り込み難くすることができる。
【0105】
また、第2ステップ#2においてディッシュ10の稜線部35の高さ位置が認識され、第4ステップ#4において稜線部35の高さ位置を基準位置として、ディッシュ10の撮像動作が行われる。このため、保持凹部3において細胞Cが接地する第3部分P3と稜線部35との位置関係を把握しておくことで、細胞Cへのフォーカス合わせが迅速に行えるようになり、撮像時間の短縮化を図ることができる。特に稜線部35は、細胞Cが接地する第3部分P3からは比較的遠い上面21にあり、また隣接する保持凹部3の間に位置するので細胞Cによって隠されることはなく、形状的特徴として画像上で認識し易い。従って、基準位置を簡単且つ正確に求めることができる。