(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735211
(24)【登録日】2020年7月15日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】センタ装置
(51)【国際特許分類】
B23B 23/04 20060101AFI20200728BHJP
B23B 25/00 20060101ALI20200728BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
B23B23/04
B23B25/00 Z
B23Q3/155 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-215785(P2016-215785)
(22)【出願日】2016年11月4日
(65)【公開番号】特開2018-69423(P2018-69423A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰教
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 和也
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 政士
(72)【発明者】
【氏名】森 勇太
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−307207(JP,A)
【文献】
特開2004−160589(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0085681(KR,A)
【文献】
実公昭49−032372(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 5/00,23/00−25/00,
B23Q 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックに着脱可能に取り付けられる回転センタと、
ツールマガジンに着脱可能に取り付けられるツールホルダと、
上記ツールホルダと上記回転センタとを結合及び分離するセンタチェンジャとを備えたセンタ装置であって、
上記センタチェンジャは、
上記ツールホルダの中心凹部に挿入されるチェンジャ先端部と、
上記チェンジャ先端部に連続する円板部と、
上記円板部に連続し、上記回転センタの最大外径よりも大きい内径を有し、該回転センタを収容可能な円筒部と、
上記チェンジャ先端部の貫通孔に挿入されて第1付勢部材によって上記回転センタ側に付勢される押圧部材と、
上記円筒部の複数箇所に設けられた貫通孔に挿入され、上記回転センタの外周に当接するボール部材を付勢する第2付勢部材とを備えている
ことを特徴とするセンタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンタ装置において、
上記回転センタは、円錐状先端部と、該円錐状先端部の最大外径部底面に連続する円柱部とを備え、上記ボール部材は、上記回転センタが上記センタチェンジャに挿入された状態で、上記最大外径部底面に当接する位置に設けられている
ことを特徴とするセンタ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンタ装置において、
上記ボール部材は、上記センタチェンジャの同一円周上に等間隔に複数個設けられている
ことを特徴とするセンタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合加工機等に設けられるツールホルダと回転センタとを結合及び分離するセンタチェンジャを備えたセンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転する軸物ワークの外径を加工する場合、その振れ防止のために一端を回転センタで支持することが知られている。特に複合加工機では、ワーククランプ用のチャックに回転センタを取り付けるので、回転センタは精密な芯出しが必要であり、自動工具交換装置(ATC)を用いた自動交換が困難であった。このため、回転センタの脱着は、機械停止を伴う手動交換となり、連続運転の妨げとなっている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1及び2のように、回転センタを自動で脱着できるようにするセンタ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−307207号公報
【特許文献2】特開2004−160589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、ピンでセンタの一側面を抑えるだけであるので、ATCを用いた回転センタの交換時に回転センタのずれを十分に防ぐことができない。また特許文献2のものでは、複数の剛球でセンタの外周を押圧するようにしているが、一度センタが傾いてしまうと、そのまま傾きが残ってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ATCを用いて回転センタを傾けることなく取付及び交換できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、回転センタを軸方向に押圧する押圧部材と半径方向内側に押圧する複数のボール部材とで支持するようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、チャックに着脱可能に取り付けられる回転センタと、
ツールマガジンに着脱可能に取り付けられるツールホルダと、
上記ツールホルダと上記回転センタとを結合及び分離するセンタチェンジャとを備えたセンタ装置を対象とする。
【0009】
そして、上記センタチェンジャは、
上記ツールホルダの中心凹部に挿入されるチェンジャ先端部と、
上記チェンジャ先端部に連続する円板部と、
上記円板部に連続し、上記回転センタの最大外径よりも
大きい内径を有し、該回転センタを収容可能な円筒部と、
上記チェンジャ先端部の貫通孔に挿入されて第1付勢部材によって上記回転センタ側に付勢される押圧部材と、
上記円筒部の複数箇所に設けられた貫通孔に挿入され、上記回転センタの外周に当接するボール部材を付勢する第2付勢部材とを備えている。
【0010】
上記の構成によると、回転センタをセンタチェンジャの円筒部に挿入する際に複数のボール部材が回転センタの外周を押圧するので、回転センタが傾きにくい上に、第1付勢部材によって押された押圧部材が回転センタをチャック側に押圧するので、回転センタが安定する。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記回転センタは、円錐状先端部と、該円錐状先端部の最大外径部底面に連続する円柱部とを備え、上記ボール部材は、上記回転センタが上記センタチェンジャに挿入された状態で、上記最大外径部底面に当接する位置に設けられている。
【0012】
上記の構成によると、回転センタをセンタチェンジャに挿入するときに、挿入中には、円錐状先端部が複数のボール部材に半径方向内側に押圧されるので、回転センタが傾きにくい。円錐状先端部が通過して回転センタの先端が押圧部材に当接すると、最大外径部底面がボール部材に当接するので、回転センタの動きが規制されると共に、自重で回転センタが落下することを防止できる。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記ボール部材は、上記センタチェンジャの同一円周上に等間隔に複数個設けられている。
【0014】
上記の構成によると、ボール部材が回転センタの外周を均等に半径方向内側に向かって押圧するので、回転センタの傾きを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、回転センタをセンタチェンジャ内に押圧部材と複数のボール部材とで押圧した状態で収容するようにしたことにより、ATCを用いて回転センタを傾けることなく取付及び交換できるので、連続運転の妨げとならず、より長く無人化運転を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】チャックに把持された回転センタが、ツールホルダが取り付けられたセンタチェンジャに挿入された状態のセンタ装置を示す断面図である。
【
図2】センタ装置を含む複合加工機の一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1及び
図2は本発明の実施形態のセンタ装置1を示し、このセンタ装置1は、例えば複合加工機20に設けられる。詳しくは図示しないが、複合加工機20には、各種ツールが取り付けられる工具軸21が設けられると共に、ワークを把持するための一対の対向するチャック22,23が軸心X上に設けられている。また、複合加工機20は、複数の各種ツールを格納するツールマガジン24を備えている。
【0019】
そして、センタ装置1は、一方のチャック22に着脱可能に取り付けられる回転センタ3と、ツールマガジン24に着脱可能に取り付けられるツールホルダ4とを備えている。ツールホルダ4は、ツールマガジン24との間で工具を交換する公知の工具交換装置5を用いてハンドリング可能となっている。さらに、センタ装置1は、ツールホルダ4と回転センタ3とを結合及び分離可能なセンタチェンジャ10を備えている。
【0020】
そして、センタチェンジャ10は、
図3にも示すように、ツールホルダ4の中心凹部4aに挿入される円柱状のチェンジャ先端部11を備えている。チェンジャ先端部11は、側面が一部面取りされ、中心には断面円形の貫通孔11aが形成されている。またセンタチェンジャ10は、チェンジャ先端部11に連続し、ツールホルダ4の中心凹部4a周縁に当接可能な円板部12を備えている。さらにセンタチェンジャ10は、円板部12に連続し、回転センタ3の最大外径よりも
大きい内径を有し、回転センタ3を収容可能な円筒部13を備えている。円筒部13の内径は、回転センタ3の最大外径よりも若干大きく、例えば、0.05mmの差が設けられている。
【0021】
チェンジャ先端部11の貫通孔11aには、内径の小さいバネ受部11bが形成されている。この貫通孔11aには、第1付勢部材としての第1コイルバネ14に回転センタ3側に付勢されるピン状の押圧部材15が軸方向に移動可能に挿入されている。第1コイルバネ14は、押圧部材15の円柱状本体の外周に嵌め込まれ、円板状頭部15aと、円板状抜止部15bとの間に配置されている。これにより、第1コイルバネ14は、バネ受部11bに一端が当接し、他端が押圧部材15に当接することで、押圧部材15を適切な力で回転センタ3側へ付勢するようになっている。
【0022】
円筒部13の中間部には、例えば軸方向に長い長円形の複数の肉抜き13aが円周方向に等間隔に配置されている。この肉抜き13aよりも回転センタ3側には、例えば、6箇所に周方向に均等にボール用貫通孔13bが設けられている。この肉抜き13aは、軽量化目的であり、なくてもよい。各ボール用貫通孔13bは、センタチェンジャ10の径方向に延びる断面円形の貫通孔であり、その径方向内側には、回転センタ3の外周に当接するボール部材16が設けられている。ボール用貫通孔13bには、ボール部材16を付勢する第2付勢部材としての第2コイルバネ17が内蔵されている。この第2コイルバネ17は、受け座金18を介してボール部材16に当接し、ボール用貫通孔13bは、埋込ネジ19で塞がれている。そして、ボール用貫通孔13bの半径方向内側端部は、ボール部材16の外径よりも小径となってボール部材16が飛び出さないようになっている。このように、ボール部材16は、センタチェンジャ10の同一円周上に等間隔に6個設けられ、それぞれが半径方向内側に付勢されている。ボール部材16は、例えば直径4.5mmの超硬金属よりなり、半径方向内側から力がかからない状態で、ボール用貫通孔13bから例えば、1.4mm飛び出している。
【0023】
回転センタ3は、円錐状先端部3aと、この円錐状先端部3aの最大外径部底面3cに連続する円柱部3bとを備えている。ボール部材16は、回転センタ3が上記センタチェンジャ10に挿入された状態で、最大外径部底面3cに当接する位置に設けられている。なお、回転センタ3の形状はこれに限定されないが、センタチェンジャ10の形状は、回転センタ3の形状に合わせて設定すればよい。
【0024】
次に、本実施形態に係るセンタ装置1の作動について説明する。具体的には、ワークの加工後の回転センタ3の取り外し作業について説明する。
【0025】
まず、ツールホルダ4に取り付けられたセンタチェンジャ10を有する工具交換装置5をツールマガジン24から呼び出す。
【0026】
次いで、
図2に示すように、工具交換装置5を工具軸方向に旋回させる。
【0027】
次いで、工具交換装置5を工具軸の位置まで下げ、チャック22に掴まれた回転センタ3の位置まで近付ける。
【0028】
次いで、ボール部材16が当接するまで回転センタ3に向けてセンタチェンジャ10を押し込む。
【0029】
次いで、6つのボール部材16が全て回転センタ3の最大外径部を通過し、その最大外径部底面3cに当接する。これにより、回転センタ3がセンタチェンジャ10に確実に固定される。
【0030】
次いで、チャック22をアンクランプすることで、回転センタ3がセンタチェンジャ10側に残る。このとき、回転センタ3は、6つのボール部材16に均等に押されてセンタチェンジャ10の中心に保持される。
【0031】
次いで、工具交換装置5がチャック22から離れ、ツールマガジン24の位置へ移動する。
【0032】
次いで、回転センタ3を掴んだまま工具交換装置5が旋回する。このとき、最大外径部底面が6つのボール部材16に当接しているので、自重で回転センタ3が落下することを防止できる。
【0033】
次いで、工具交換装置5がツールマガジン24に回転センタ3ごとセンタチェンジャ10及びツールホルダ4を嵌め込む。
【0034】
一方、回転センタ3を工具交換装置5が掴んでチャック22に取り付ける場合は、上記と逆の手順を行えばよい。回転センタ3をチャック22に残すときには、6つのボール部材16を第2コイルバネ17の付勢力に抗して押し戻すようにセンタチェンジャ10をチャック22と反対側に移動させて回転センタ3の最大外径部を通過させて離脱させればよい。
【0035】
このように、本実施形態では、回転センタ3をセンタチェンジャ10の円筒部13に挿入する際には、複数のボール部材16が回転センタ3の外周を押圧すると共に、第1コイルバネ14に押された押圧部材15が回転センタ3をチャック22側に押圧するので、回転センタ3が傾きにくく、安定した状態で保持される。周方向に均等に配置された6つのボール部材16が、最大外径部の通過後に回転センタ3の最大外径部底面3cを均等な力で押さえると共に、押圧部材15が軸方向に回転センタ3を押圧するので、回転センタ3が軸心X上に確実に取り付けられて傾かない。
【0036】
すなわち、本実施形態では、回転センタ3をセンタチェンジャ10に挿入するときに、挿入中には、円錐状先端部3aが複数のボール部材16によって半径方向内側に押圧されるので、回転センタ3が傾きにくい。そして、円錐状先端部3aが通過して回転センタ3の先端が押圧部材15に当接すると、最大外径部底面3cがボール部材16に当接するので、回転センタ3の動きが規制されると共に、自重で回転センタ3が落下することを防止できる。しかも、本実施形態では、ボール部材16が回転センタ3の外周を均等に半径方向内側に向かって押圧するので、回転センタ3が傾きにくい。
【0037】
したがって、本実施形態に係るセンタ装置1によると、回転センタ3をセンタチェンジャ10内に押圧部材15と複数のボール部材16とで押圧した状態で収容するようにしたことにより、ATCを用いて回転センタ3を傾けることなく取付及び交換できるので、連続運転の妨げとならず、より長く無人化運転を実施できる。
【0038】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0039】
すなわち、上記実施形態では、ボール部材16は、センタチェンジャ10の同一円周上に等間隔に6個設けているが、その個数は特に限定されず、4個以上あればよい。ただし外径の大きな回転センタは動きの規制を高めるために個数を多くした方がよい。
【0040】
また、上記実施形態では、球形のボール部材16で回転センタ3の外周を押すようにしているが、先端が半球状のピン部材で回転センタ3を押圧するようにしてもよい。しかし、球形のボール部材16だとそれ自体も回転するので、回転センタ3の脱着がさらに容易となる。
【0041】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 センタ装置
3 回転センタ
3a 円錐状先端部
3b 円柱部
3c 最大外径部底面
4 ツールホルダ
4a 中心凹部
5 工具交換装置
10 センタチェンジャ
11 チェンジャ先端部
11a 貫通孔
11b バネ受部
12 円板部
13 円筒部
13a 肉抜き
13b ボール用貫通孔
14 第1コイルバネ
15 押圧部材
15a 円板状頭部
15b 円板状抜止部
16 ボール部材
17 第2コイルバネ
18 受け座金
19 埋込ネジ
20 複合加工機
21 工具軸
22,23 チャック
24 ツールマガジン