(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中央の区画のコンクリートスラブの両側の区画のコンクリートスラブをそれぞれ移動させ、前記間隔を広げることを特徴とする請求項1記載のコンクリートスラブの施工方法。
少なくともいずれかの区画のコンクリートスラブのコンクリートの打設開始日の日平均気温の平年値より、間詰材の充填開始日の日平均気温の平年値が低いことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のコンクリートスラブの施工方法。
所定期間内において、前記打設開始日の日平均気温の平年値から前記充填開始日の日平均気温の平年値を引いた差が最大となる前記打設開始日と前記充填開始日に、少なくともいずれかの区画のコンクリートスラブのコンクリートの打設と、間詰材の充填とをそれぞれ開始することを特徴とする請求項6に記載のコンクリートスラブの施工方法。
コンクリートスラブの移動方向に沿って見た時に、コンクリートスラブの移動量の総和が、前記移動方向の全区画のコンクリートスラブの端から端までの長さをLとして、2×10-4×L/2以上且つ12×10-4×L/2以下となることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のコンクリートスラブの施工方法。
コンクリートスラブの移動量を、コンクリートスラブの移動方向に沿ったコンクリートスラブの長さに応じて定めることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のコンクリートスラブの施工方法。
【背景技術】
【0002】
免震構造物では、
図12(a)に簡単に示すように免震装置10の上に柱20を設け、その上のコンクリートスラブ1等を支持するものがある。このような免震構造物でコンクリートスラブ1を施工する際に、打設したコンクリートが日を経て収縮すると、
図12(b)に示すようにコンクリートの収縮に追従して柱20等が水平移動し、免震装置10が水平変形(せん断変形)し歪が生じてしまう。
【0003】
コンクリートの収縮には乾燥収縮と温度収縮があり、乾燥収縮と温度収縮による収縮量はコンクリートスラブの規模に応じて増加する。コンクリートスラブの規模が大きく収縮量が大きくなると、免震装置に大きな歪が生じて許容範囲を超え、所定の性能を発揮できなくなる恐れがある。
【0004】
そのため、従来は、コンクリートスラブの規模を一定以下に抑えるべく、コンクリートスラブを数区画に分割して施工し、各区画のコンクリートスラブの間にエキスパンションジョイントを設ける方法が一般的であった。
【0005】
また、特許文献1には、コンクリートの収縮に伴う免震装置の歪を抑制するため、コンクリートスラブを数区画に分割して施工し、且つ各区画のコンクリートを打設し硬化した後に当該コンクリートの側方からジャッキ等で圧力を加えて強制的に収縮させ、その後隣り合う区画のコンクリートスラブの間に間詰材を充填する方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コンクリートスラブの間にエキスパンションジョイントを設ける場合、施工後、建物を使用していく中でのメンテナンスが難しいという難点があった。
【0008】
また、特許文献1のようにコンクリートを強制的に圧縮する場合、ジャッキによる大きな圧力が必要となる。そのため、強力なジャッキが必要でコストがかかり、ジャッキの圧力管理も難しい。また、ジャッキによる圧縮作業はコンクリートが完全に硬化した後に行う必要があるので工期面での課題もある。
【0009】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、コンクリートの収縮による免震装置の歪を容易に抑制できるコンクリートスラブの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決するための本発明は、免震装置を介して支持される複数の区画のコンクリートスラブを形成する工程と、隣り合う区画のコンクリートスラブの少なくとも一方を移動させ、隣り合う区画のコンクリートスラブの間隔を広げる工程と、隣り合う区画のコンクリートスラブの間に間詰材を充填する工程と、を有することを特徴とするコンクリートスラブの施工方法である。
【0011】
本発明では、複数の区画にコンクリートを打設しコンクリートスラブを形成した後に、隣り合う区画のコンクリートスラブを移動させ、その間隔を広げて間詰材を充填する。この時免震装置には歪が生じるが、日を経てコンクリートが収縮することにより免震装置が元の形状に戻り、免震装置の歪を抑制して許容範囲内に抑えることができる。本発明では前記したようにコンクリートスラブを圧縮するのではなくコンクリートスラブを移動させるので、ジャッキ等による大きな圧力をかけることは必要なく、コストを低減でき圧力管理も容易である。またコンクリートの脱型後に作業を開始できるので工期の面でも好ましい。またコンクリートスラブの間にエキスパンションジョイントを設ける必要も特に無く、メンテナンスも容易である。
【0012】
本発明では、例えば隣り合う区画のコンクリートスラブの両方を移動させ、前記間隔を広げる。この時、隣り合う区画のコンクリートスラブを支持する免震装置の数は同程度であることが望ましい。
本発明では、上記のように隣り合う区画のコンクリートスラブの両方を移動させ、その間隔を広げることができる。この時、両区画のコンクリートスラブを支持する免震装置の数が同程度であることで、ジャッキ等を用いてコンクリートスラブ間を押し広げる場合にこれらのコンクリートスラブを均等に移動させ、一方の区画のコンクリートスラブが大きく移動するのを防ぐことができる。
【0013】
本発明では、中央の区画のコンクリートスラブの両側の区画のコンクリートスラブをそれぞれ移動させ、前記間隔を広げることも可能である。この時、前記両側の区画のコンクリートスラブを支持する免震装置の数は同程度であることが望ましい。
本発明では、上記のように中央の区画のコンクリートスラブの両側の区画のコンクリートスラブをそれぞれ移動させ、隣り合う区画のコンクリートスラブの間隔を広げることもできる。この時は、両側の区画のコンクリートスラブを支持する免震装置の数が同程度であることで、ジャッキ等を用いてコンクリートスラブ間を押し広げる場合にこれらのコンクリートスラブを均等に移動させることができる。
【0014】
少なくともいずれかの区画のコンクリートスラブのコンクリートの打設開始日の日平均気温の平年値より、間詰材の充填開始日の日平均気温の平年値が低いことが望ましい。
これにより、温度によるコンクリートの収縮が存在する状態で間詰材の充填を行い、その後のコンクリートの温度収縮の影響を小さくして免震装置の歪を許容範囲内に収めることができる。
【0015】
また、所定期間内において、前記打設開始日の日平均気温の平年値から前記充填開始日の日平均気温の平年値を引いた差が最大となる前記打設開始日と前記充填開始日に、少なくともいずれかの区画のコンクリートスラブのコンクリートの打設と、間詰材の充填とをそれぞれ開始することも望ましい。
これにより、温度によるコンクリートの収縮が最大となる条件で間詰材の充填を行い、その後のコンクリートの温度収縮の影響をより小さくできる。
【0016】
コンクリートスラブの移動方向に沿って見た時に、コンクリートスラブの移動量の総和が、前記移動方向の全区画のコンクリートスラブの端から端までの長さをLとして、2×10
-4×L/2以上且つ12×10
-4×L/2以下となることが望ましい。また、コンクリートスラブの移動量を、コンクリートスラブの移動方向に沿ったコンクリートスラブの長さに応じて定めることも望ましい。
コンクリートスラブの移動量の総和を上記の範囲とすることで、コンクリートの乾燥収縮等に伴う変形により、最終的に免震装置を元の形状に戻すことができる。また、コンクリートの乾燥等による収縮量はその長さに依るので、コンクリートスラブの移動量をコンクリートスラブの長さに応じて定めることで、免震装置を好適に元の形状に戻すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、コンクリートの収縮による免震装置の歪を容易に抑制できるコンクリートスラブの施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
(1.コンクリートスラブ1の施工方法の概略)
図1〜
図4は、本発明の第1の実施形態に係るコンクリートスラブの施工方法の概略を示す図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態では、免震構造物において免震装置10の上に柱20が設置されており、その上で型枠(不図示)を用いてコンクリートを打設することでコンクリートスラブ1(以下、単にスラブということがある)が形成される。
図1の例では、施工予定領域のコンクリートスラブが2つの区画に分割して施工され、各区画のスラブ1が免震装置10を介して支持される。各区画のスラブ1からは互いの方向に向けて鉄筋11が突出しており、これらの鉄筋11によってスラブ1の間で重ね継手が形成されるようになっている。
【0022】
なお、各区画のスラブ1の下面には梁30が設けられる。
図1の例では梁30が鉄骨梁であり、隣り合う区画の梁30同士は接合プレート31によって接合される。接合プレート31はボルト32によって各梁30に取付けられるが、一方の梁30(
図1の例では左の区画の梁30)側のボルト32は接合プレート31の梁軸方向の長孔33に通された状態であり、当該ボルト32を本締めするまでは両区画の梁30が梁軸方向に相対移動可能である。
【0023】
本実施形態では、各区画のスラブ1のコンクリートを打設した後、型枠(不図示)を脱型して
図2(a)に示すように隣り合う区画のスラブ1の間にジャッキ2を配置する。そして、
図2(b)に示すようにジャッキ2によってスラブ1の間隔を押し広げ、両区画のスラブ1を距離xだけ外側に向かって移動させる。
【0024】
スラブ1の移動とともに両区画の柱20、梁30も移動し、両区画の免震装置10は柱20の移動に応じて変形する。スラブ1の移動量は、この後の乾燥収縮と温度収縮によるコンクリートの収縮量を見込んで定められ、ジャッキ2によって強制的に収縮予定分だけスラブ1が押し広げられる。
【0025】
乾燥収縮等を考慮すると、スラブ1の移動方向(
図2(b)の左右方向に対応する)に沿って見た時に、ジャッキ2によるスラブ1の移動量の総和(
図2(b)の例では2x)は、2×10
-4×L/2以上且つ12×10
-4×L/2以下となるようにするのが望ましい。ここで、Lは上記した移動方向の全区画のスラブ1の端から端までの長さである。この長さLは、例えばスラブ1の移動前の長さ(
図2(a)のL参照)とする。
【0026】
上記の範囲は、多数のコンクリートスラブの乾燥収縮による変形のデータに温度収縮による変形を加味して得られたものである。すなわち、コンクリートの乾燥による収縮量はおよそ2×10
-4×L/2〜8×10
-4×L/2の範囲に収まり、この範囲の最大値にコンクリートの温度変化による収縮量の最大値として4×10
-4×L/2を加えることで上記の範囲を定めている。ジャッキ2によるスラブ1の移動量の総和をこの範囲内に収めることで、当該移動量によってコンクリートの乾燥等による収縮量をキャンセルし、後述するように最終的に免震装置10を元の形状に戻すことができる。
【0027】
さらに、スラブ1の移動量は、上記した移動方向に沿って見た時のスラブ1の長さに応じて定めることができる。すなわち、コンクリートの乾燥や温度変化による収縮量はその長さに依るので、スラブ1の移動量をスラブ1の長さに応じて定めることで、上記と同じく当該移動量によってコンクリートの乾燥等による収縮量をキャンセルし、後述するように最終的に免震装置10を元の形状に戻すことができる。
【0028】
こうしてスラブ1の間を押し広げ両区画のスラブ1を移動させた状態で、
図3に示すように両区画のスラブ1の間に間詰材3を充填し、両区画のスラブ1を連結する。間詰材3には例えばコンクリートが用いられ、スラブ1間にコンクリートを後打ちすることで両区画のスラブ1が連結され一体化される。
【0029】
間詰材3の充填開始日(以下、連結日ということがある)は、温度収縮を考慮し、最初に少なくともいずれかの区画のスラブ1のコンクリートの打設を開始した日(以下、単にコンクリート打設開始日ということがある)の日平均気温の平年値T1より、間詰材3の充填開始日の日平均気温の平年値T2が低くなるように定めるとよい。
【0030】
これにより、温度によるコンクリートの収縮が存在する状態で間詰材3の充填を行い、その後のコンクリートの温度収縮の影響を小さくして免震装置10の歪を許容範囲内に収めることができる。なお、日平均気温の平年値は、日ごとに、過去の当該日の日平均気温を過去の所定期間(例えば、過去10年、過去20年、過去30年など)で平均したものであり、気象庁が提供するデータ(気象庁ホームページ参照)を用いることができる。また、平年値として採用する値は、例えば、上記のような平年値が得られ、且つコンクリートスラブ1の施工箇所に最も近い地点の値とする。
【0031】
特に本実施形態では、所定期間内において、コンクリート打設開始日の日平均気温の平年値T1から連結日の日平均気温の平年値T2を引いた差(T1-T2)が最大となるようなコンクリート打設開始日と連結日に、少なくともいずれかの区画のスラブ1のコンクリートの打設と、間詰材3の充填を開始する。これにより、温度によるコンクリートの収縮が最大となる条件で間詰材3の充填を行い、その後のコンクリートの温度収縮の影響をより小さくできる。上記の所定期間は、免震構造物全体の施工手順その他を考慮し、
図1〜
図3で説明した工程を実施可能な期間として定めることができる。
【0032】
なお、実際に間詰材3を充填する際には、当日の気温(例えば当日の前日までに得られる当日の予想平均気温など)を確認し、コンクリート打設開始日の日平均気温の実際の値T1’から当日の気温T2’を引いた差(T1’-T2’)と前記の(T1-T2)を比較して、これらが所定量異なる場合、例えば(T1’-T2’)の値が(T1-T2)/2未満となる場合は、間詰材3の充填を延期することもできる。
【0033】
こうして間詰材3の充填を行った後、日が経ち、スラブ1の乾燥収縮と温度収縮が進むことで、前記した移動分が徐々に相殺されて
図4に示すように柱20が移動して元の位置に戻り、免震装置10の歪みが解消されて複数の区画が一体化したスラブ1を構築することが可能となる。接合プレート31の長孔33に通したボルト32はこの時点で本締めし、接合プレート31によって隣り合う区画の梁30同士を接合する。なお、間詰材3はスラブ1間の細い隙間に設けられるため、その収縮はスラブ1の収縮に比べて無視できる程度の大きさである。
【0034】
(2.コンクリートスラブ1の施工方法のその他の例)
以上はコンクリートスラブ1の施工方法の概略であり、
図1〜
図4の例では各区画のスラブ1が1つの免震装置10によって支持されている。ただし、実際にスラブ1を分割して施工する場合、各区画のスラブ1が複数の免震装置10によって支持されるようなケースが多い。
【0035】
このようなケースでは、例えば
図5の平面図に示すように、隣り合う区画の免震装置10を同数とすることが望ましい。これは、両区画のスラブ1を支持する免震装置10の数が異なると、ジャッキ2によって前記のようにスラブ1を移動させる際、免震装置10の数が少なく、免震装置10による拘束力の小さい一方の区画のスラブ1が大きく移動し、最終的に免震装置10の歪が残る恐れがあるためである。なお、
図5ではスラブ1から突出する鉄筋11等の図示を省略している。これは後述する
図6、
図11でも同様である。
【0036】
図5では、平面の左右方向に各区画のスラブ1が並ぶように分割を行っており、当該方向の免震装置10の歪を防ぐことができるが、例えば
図6の平面図のようにスラブ1を分割することにより、平面の左右方向とこれに直交する上下方向の免震装置10の歪を同時に防ぐことも可能である。この場合も、上下左右に隣り合う区画の免震装置10の数は同数とする。このように、隣り合う区画の免震装置10の数が全て同数となるようにコンクリートスラブを分割し、
図1〜
図4の手順で施工を行うとよい。
【0037】
また、以上の例では免震装置10の直上階に関してのみ説明したが、それより上の階については、
図7に示すように免震装置10の直上階のスラブ1の移動に追従できるようにしておくことが望ましい。
図7の例では、免震装置10の直上階より上の階では柱20と梁30のみ構築しており、隣り合う区画の梁30は、前記と同様のボルト32と長孔33を用いた機構により梁軸方向に相対移動可能になっている。
【0038】
以上説明したように、本実施形態では複数の区画にコンクリートを打設しスラブ1を形成した後に、隣り合う区画のスラブ1を移動させ、その間隔を広げて間詰材3を充填する。この時免震装置10には歪が生じるが、日を経てコンクリートが収縮することにより免震装置10が元の形状に戻り、免震装置10の歪を抑制して許容範囲内に抑えることができる。これにより、免震装置10が所定の性能を発揮することができる。
【0039】
本実施形態では、前記したように各区画のスラブ1を圧縮するのではなくスラブ1を移動させるので、ジャッキ2による大きな圧力をかけることは必要なく、コストを低減でき圧力管理も容易である。またコンクリートの脱型後に作業を開始できるので、工期の面でも望ましい。またスラブ1の間にエキスパンションジョイントを設ける必要も特に無く、メンテナンスも容易である。
【0040】
本実施形態では、前記のように隣り合う2つの区画のスラブ1の両方を移動させ、その間隔を広げることができる。この時、両区画のスラブ1を支持する免震装置10の数が同じであることで、ジャッキ2を用いてスラブ1間を押し広げる場合にこれらのスラブ1を均等に移動させ、一方の区画のスラブ1が大きく移動するのを防ぐことができる。
【0041】
また本実施形態では、前記したコンクリート打設開始日の日平均気温の平年値より連結日の日平均気温の平年値が低いことで、温度によるコンクリートの収縮が存在する状態で間詰材3の充填を行い、その後のコンクリートの温度収縮の影響を小さくできる。特にコンクリート打設開始日の日平均気温の平年値から連結日の日平均気温の平年値を引いた差が最大となるようなコンクリート打設開始日と連結日に、少なくともいずれかの区画のスラブ1のコンクリートの打設と、間詰材3の充填を開始することにより、その後のコンクリートの温度収縮の影響をより小さくできる。
【0042】
また、スラブ1の移動量の総和を前記した範囲とすることで、コンクリートの乾燥収縮等に伴う変形により、最終的に免震装置10を元の形状に戻すことができる。また、コンクリートの乾燥等による収縮量はその長さに依るので、スラブ1の移動量をスラブ1の長さに応じて定めることで、免震装置10を好適に元の形状に戻すことができる。
【0043】
しかしながら、本発明はこれに限ることはない。例えば本実施形態ではジャッキ2を用いてスラブ1を移動させたが、その他の移動手段によってスラブ1を移動させてもよい。例えばスラブ1の間を押し広げるのではなくスラブ1を引張って移動させるような機構を用いることも可能である。また各区画のスラブ1の平面形状も特に限定されない。
【0044】
さらに、本実施形態では梁30を鉄骨梁としているが、これに限ることはなく、RC(鉄筋コンクリート)梁でも良い。この場合、前記のスラブ1と同様、両区画の梁30を間隔を空けて配置し、両区画の梁30から互いの方向に向けて鉄筋を突出させ、梁30の間で重ね継手を形成することが可能である。この場合も両区画の梁30はスラブ1の移動と収縮に伴って梁軸方向に相対移動可能であり、梁30の間はコンクリート等によって間詰めできる。
【0045】
次に、本発明の別の例について第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と異なる点について主に説明し、同様の点については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また、第2の実施形態で説明する構成は、必要に応じて第1の実施形態で説明した構成と組み合わせることが可能である。
【0046】
[第2の実施形態]
図8〜
図10は、本発明の第2の実施形態に係るコンクリートスラブの施工方法の概略を示す図である。
【0047】
図8に示すように、本実施形態では施工予定領域のコンクリートスラブが3つの区画に分割して施工され、第1の実施形態と同様、各区画のスラブ1が免震装置10を介して支持される。各区画のスラブ1の下面に梁30が設けられるのも第1の実施形態と同様である。
【0048】
本実施形態では、各区画のスラブ1のコンクリートを打設した後、型枠(不図示)を脱型して
図9(a)に示すように中央の区画のスラブ1とその両側の区画のスラブ1の間のそれぞれにジャッキ2を配置する。そして、
図9(b)に示すようにジャッキ2によって隣り合う区画のスラブ1の間隔を広げる。この時、中央の区画のスラブ1は移動しないが、両側の区画のスラブ1は外側に距離xだけ移動する。
【0049】
スラブ1の移動とともに両側の区画の柱20、梁30も移動し、両側の区画の免震装置10は柱20の移動に応じて変形する。
【0050】
こうしてスラブ1を移動させ、中央の区画のスラブ1とその両側の区画のスラブ1の間を押し広げた状態で、
図10(a)に示すように隣り合う区画のスラブ1の間に間詰材3を充填し、隣り合う区画のスラブ1を連結する。
【0051】
前記と同様、本実施形態においても、間詰材3の充填を行った後、日が経ち、スラブ1の乾燥収縮と温度収縮が進むことで、前記した移動分が徐々に相殺されてゆき、
図10(b)に示すように両側の区画の柱20が移動して元の位置に戻り、両側の区画の免震装置10の歪みが解消されて複数の区画が一体化したスラブ1を構築することが可能となる。前記と同様、接合プレート31の長孔33に通したボルト32はこの時点で本締めし、接合プレート31によって隣り合う区画の梁30同士を接合する。
【0052】
ジャッキ2によるスラブ1の移動量は前記と同様であり、スラブ1の移動方向(
図9(b)の左右方向に対応する)に沿って見た時に、ジャッキ2によるスラブ1の移動量の総和(
図9(b)の例では2x)が、2×10
-4×L/2以上且つ12×10
-4×L/2以下となるように定めるのが望ましい。前記と同様、Lは上記した移動方向の全区画のスラブ1の端から端までの長さ(
図9(a)のL参照)である。この他、上記した移動方向に沿ったスラブ1の長さに応じてスラブ1の移動量を定めること、コンクリート打設開始日や連結日についても第1の実施形態と略同様である。
【0053】
また、本実施形態では、各区画のスラブ1が複数の免震装置10によって支持されるような場合、
図11の平面図に示すように、両側の区画の免震装置10が同数となるようにすることが望ましい。前記と同様、両側の区画のスラブ1を支持する免震装置10の数が異なると、ジャッキ2によって前記のようにスラブ1を移動させる際、両側の区画のスラブ1が均等に移動せず、免震装置10の数が少ない方のスラブ1が大きく移動するためである。なお、中央の区画の免震装置10については、両側の区画の免震装置10の数と異なっていても構わない。
【0054】
このように、本実施形態では、中央の区画のスラブ1の両側の区画のスラブ1をそれぞれ移動させ、隣り合う区画のスラブ1の間隔を広げることで、第1の実施形態と同様の効果が得られる。この時は、両側の区画のスラブ1を支持する免震装置10の数が同じであることで、ジャッキ2を用いてスラブ1間を押し広げる場合に両側の区画のスラブ1を均等に移動させることができる。
【0055】
なお、両側の区画のスラブ1の免震装置10の数は上記のように同数が理想であるが、実務上は免震装置10の数が同程度であればよく、若干異なってもよい。ここで、免震装置10の数が同程度とは、一方のスラブ1の免震装置10の数をN1、他方のスラブ1の免震装置10の数をN2とし、その誤差を2×(N1-N2)/(N1+N2)としたときに、誤差が-0.2以上0.2以下の範囲にあることをいうものとする。これは、地震応答時の免震装置10の最大設計水平変形量と免震装置10の限界水平変形量の差(余裕度)が100mm程度であり、その半分の50mm程度を本発明で対象とする躯体の収縮による変形量の限界と考えると、その20%(0.2倍)の10mmは誤差範囲と判断できるためである。これは第1の実施形態の各スラブ1の免震装置10の数についても同様である。
【0056】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。