【文献】
Clinical Cancer Research, 2009, Vol.15, No.17, pp.5323-5337
【文献】
Journal of Molecular Signaling, 2011, Vol.6, No.7, pp.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記CSCを含むがんは、がん幹細胞の少なくとも10%がO−アセチル化−GD2ガングリオシドを発現する、がん幹細胞の亜集団を特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
CSCを含むがんの転移を治療するため、並びに/又はCSCを含むがんの再発若しくは再発生を防止するためのものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
CSCを含むがんの治療において別々で、同時に又は連続的に使用するための併用製剤として、少なくとも1種の他の抗がん化合物をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
CSCがんの治療において別々で、同時に又は連続的に使用するための、外科的手術、化学療法、ホルモン療法、標的療法及び/又は放射線療法と組み合わせた請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の治療ストラテジー
本発明の第1の目的は、がん幹細胞(CSC)がんを治療するための、O−アセチル化−GD2ガングリオシドを認識する抗体又はその機能的断片に関し、この抗体は、
(a)免疫グロブリン由来の少なくとも1つの軽鎖可変領域フレームワークと、CDR−L1について配列番号1、CDR−L2について配列番号2、CDR−L3について配列番号3の配列により定義される3つの相補性決定領域(CDR)とを含む軽鎖、及び/又は
(b)免疫グロブリン由来の少なくとも1つの重鎖可変領域フレームワークと、CDR−H1について配列番号4、CDR−H2について配列番号5、CDR−H3について配列番号6の配列により定義される3つの相補性決定領域(CDR)とを含む重鎖を含む。
【0020】
CDRは当該分野で周知のIMGT命名法に準拠して定義される(The International Immunogenetics Information System(登録商標)、LEFRANC et al,Nucleic Acids Research,vol.27,p:209−212,1999)。
【0021】
用語「抗体」は、当該分野におけるその一般的な意味として、ジスルフィド結合により相互接続された2本の同一重鎖(H)(完全長の場合、約50〜70kDa)及び2本の同一軽鎖(L)(完全長の場合、約25kDa)である4本のポリペプチド鎖から構成される四量体に対応する免疫グロブリン分子のことである。軽鎖はκ及びλに分類される。重鎖はγ、μ、α、δ又はεに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEとして定義する。各重鎖はN末端重鎖可変領域(本明細書においてはHCVRと省略)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、IgG、IgD及びIgAに関しては3つのドメイン(CH1、CH2、CH3)及びヒンジ領域から構成され、IgM及びIgEに関しては4つのドメイン(CH1、CH2、CH3、CH4)から構成される。各軽鎖はN末端軽鎖可変領域(本明細書においてはLCVRと省略)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1つのドメインCLから構成される。HCVR及びLCVR領域はさらに超可変領域に細分化することができ、相補性決定領域(CDR)と称され、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存されている領域が散在している。各HCVR及びLCVRは3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては周知のやり方に従う。特定の抗原に結合する抗体の機能的な能力は各軽鎖/重鎖対の可変領域に左右され、また大部分はCDRにより決定される。
【0022】
ある具体的な実施形態において、本発明の抗体は、
(a)免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワークと、CDR−L1について配列番号1、CDR−L2について配列番号2、CDR−L3について配列番号3の配列により定義される3つの相補性決定領域(CDR)とを含む軽鎖、及び/又は
(b)免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワークと、CDR−H1について配列番号4、CDR−H2について配列番号5、CDR−H3について配列番号6の配列により定義される3つの相補性決定領域(CDR)とを含む重鎖を含む。
【0023】
より具体的な実施形態において、本発明の抗体は、アミノ酸配列の配列番号7を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、アミノ酸配列の配列番号8を含む重鎖可変領域(HCVR)とを含む。この抗体は8B6抗体である。
【0025】
本明細書で使用の用語「抗体」とは本質的にモノクローナル抗体のことである。モノクローナル抗体はヒト抗体、キメラ抗体及び/又はヒト化抗体であってもよい。
【0026】
本明細書で使用の用語「機能的断片」とは、O−アセチル化−GD2ガングリオシドを認識可能な抗体断片のことである。そのような断片は当業者により簡単に特定又は作製可能であり、例えばF
ab断片(パパイン消化により作製可能)、F
ab’断片(ペプシン消化及び部分還元により作製可能)、F(
ab’)
2断片(ペプシン消化により作製可能)、F
acb(プラスミン消化により作製可能)、F
d(ペプシン消化、部分還元及び再集合により作製可能)、またscF
v(分子生物学的技法で作製される短鎖Fv)断片、ダイアボディ(diabody)及びモノボディ(monobody)を含む。
【0027】
用語「ダイアボディ」とは2つの抗原結合部位を備えた小さな抗体断片のことであり、断片は、軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を同じポリペプチド鎖(VH−VL)に含む。好ましくは、同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成を起こすには短すぎるリンカーを使用することで、ドメインは別の鎖の相補性ドメインと対を形成せざるを得なくなり、2つの抗原結合部位が形成される。
【0028】
本明細書で使用の用語「モノボディ」とは、重鎖可変ドメインを有し、軽鎖可変ドメインを有さない抗原結合分子のことである。モノボディは軽鎖不在下で抗原に結合することができ、典型的にはCDRH1、CDRH2及びCDRH3と称される3つのCDR領域を有する。モノボディには「ラクダ科動物モノボディ」が含まれ、例えば供給源となるラクダ科の動物から得られるVHH断片であり、ラクダ科の動物には、2つの指及び皮革様の足底を有する足を持つ動物が含まれる。ラクダ科の動物には、ラクダ、ラマ及びアルパカが含まれる。ラクダ(Camelus dromedaries及びCamelus bactrianus)は、血清から得た材料を分析すると、可変軽鎖ドメインを欠いていることが多いと報告されており、これは抗体の十分な特異性及び親和性がVHドメイン(3つのCDRループ)だけから得られることを示唆している。モノボディは様々な動物供給源、特には哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ又はヒト)由来の修飾VHも含み、VLの不在下で抗原に結合することができる。好ましくは、VHをVL界面にある位置で修飾することによりVL不在下でVHを抗原に結合させる。当業者ならば、天然で軽鎖パートナーを欠くラクダ科動物抗体重鎖を模倣する幾つかの重要な残基の置換によりヒトVHを最適化することができる(ラクダ化(camelization))。これにより安定性のある抗体機能的断片及びラクダ科動物VHHに似た発現レベルが得られ、それでいて高親和性及び高特異性を含む抗体断片の認識特性は維持され、また免疫原性は低下する。
【0029】
そのような断片は、当該分野で公知のように及び/又は本明細書で説明するように、酵素的切断、合成又は組み換え技法により作製することができる。抗体は、1つ以上の終止コドンを本来の終止部位の上流に導入した抗体遺伝子を使用し、多種多様なトランケート型に作製することもできる。例えば、F(
ab’)
2重鎖部をコードしている組み合わせ遺伝子を、重鎖のCH
1ドメイン及び/又はヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計することができる。抗体の様々な部位を慣用の技法で化学的に連結することができ、あるいは遺伝子工学的技法を用いて近接タンパク質(contiguous protein)として作製することができる。
【0030】
具体的な一実施形態において、本発明は本発明の抗体の機能的断片に関し、この断片は、VHH断片およびヒトVH断片を含むFab、Fab’、F(
ab’)
2、Facb、Fd、scFv、ダイアボディ、およびモノボディを含む又はこれらから成る群から選択される。
【0031】
本発明において、機能的断片はO−アセチル化−GD2ガングリオシドを認識可能である。
【0032】
好ましくは、本発明の抗体の機能的断片は、本発明の抗体と同等の活性、特には同等の細胞障害活性を保持する。
【0033】
「O−アセチル化−GD2ガングリオシドを認識」という表現は、本発明の抗体がO−アセチル化−GD2ガングリオシドに、10
−7M未満、好ましくは5×10
−8M未満、より好ましくは10
−8M未満の親和性で結合可能であることを意味する。
【0034】
好ましくは、ただし必ずしもではないが、本発明で有用な抗体は遺伝子組み換えにより作製され、これは適当な特異性を有する、典型的にはマウス又は他の非ヒト抗体に手を加えてヒト型に変換する必要があるからである。抗体はグリコシル化してもしなくてもよいが、グリコシル化抗体が好ましい。周知のように、抗体はジスルフィド結合により適切に架橋される。
【0035】
当該分野で十分に理解されているように、モノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を産生する哺乳動物の標準的な免疫化技法により適当な特異性でもって簡単に産生させることができる。次に、これらのヌクレオチド配列を操作することでヒト型にすることができる。
【0036】
「キメラ抗体」とは、マウス免疫グロブリンの可変領域及びヒト免疫グロブリンの定常領域から構成される抗体のことである。この変更は単純に、マウス定常領域をヒト抗体の定常領域で置き換えることで成り立ち、医薬品使用に許容可能な十分に低い免疫原性を有し得るヒト/マウスキメラが得られる。
【0037】
そのようなキメラ抗体を作製するための数多くの方法が今なお報告されており、当業者の一般的な知識の一部を成している(例えば、米国特許第5225539号明細書を参照のこと)。
【0038】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト相補性決定領域(CDR)を有する抗体の配列を変更することでヒト抗体生殖系列由来のアミノ酸配列から部分的又は完全に構成される抗体のことである。抗体の可変領域、結局はCDRのこのヒト化は、既に当該分野で周知の技法により行われる。
【0039】
例として、英国特許出願公開第2188638(A)号明細書及び米国特許第5585089号明細書には、置き換えるのが抗体の相補性決定領域又はCDRだけである組み換え抗体作製方法が開示されている。CDRグラフト技法を用いてマウスCDR並びにヒト可変領域フレームワーク及び定常領域から成る抗体が作製されている(例えば、RIECHMANN et al,Nature,vol.332,p:323−327,1988を参照のこと)。これらの抗体はFc依存性のエフェクタ機能に必要なヒト定常領域を保持しているが、抗体に対する免疫応答を惹起する可能性はずっと低い。
【0040】
例えば、可変領域のフレームワーク領域を対応するヒトフレームワーク領域で置き換えることで非ヒトCDRを実質的にインタクトにする、あるいはCDRをヒトゲノム由来の配列で置き換えさえする(例えば、米国特許出願公開第2006/0258852号明細書を参照のこと)。完全ヒト抗体は、ヒト免疫系に対応するように免疫系を変化させた遺伝子改変マウスで産生される。上述したように、本発明の方法における使用では、単鎖型の断片を含め、免疫学的に特異的な抗体断片の使用で十分である。
【0041】
ヒト化抗体は、ヒトフレームワーク、非ヒト抗体由来の少なくとも1つのCDRを含み、存在している定常領域が実質的にヒト免疫グロブリン定常領域と同じである(すなわち、少なくとも約85又は90%、好ましくは少なくとも95%が同じ)抗体のことでもある。したがって、ヒト化抗体の全ての部分(ことによるとCDRを除く)が実質的に1つ以上の本来のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と同じである。例えば、ヒト化免疫グロブリンは典型的には、キメラマウス可変領域/ヒト定常領域抗体をその範囲に含まない。
【0042】
ヒト化抗体は、ヒトの治療での使用に関し、少なくとも3つの点で非ヒト及びキメラ抗体より潜在的に有利である。
(1)エフェクタ部がヒトであることから、ヒト免疫系のその他の部分とより良好に相互作用し得る(例えば、補体依存性細胞障害性(CDC)又は抗体依存性細胞障害性(ADCC)により標的細胞をより効率的に破壊する)。
(2)ヒト免疫系がヒト化抗体のフレームワーク又はC領域を異物として認識しないため、注入したそのような抗体に対する抗体応答は完全な異物である非ヒト抗体又は部分的に異物であるキメラ抗体に対するものより弱くなる。
(3)注入した非ヒト抗体の半減期は、ヒト体内循環において、ヒト抗体の半減期よりずっと短いと報告されている。注入したヒト化抗体は天然のヒト抗体と本質的に同じ半減期を有するため、投与量及び投与頻度を下げることができる。
【0043】
例えば、ヒト化免疫グロブリンの設計は以下のようにして行い得る。アミノ酸が以下のカテゴリにある場合、使用するヒト免疫グロブリン(アクセプタ免疫グロブリン)のフレームワークアミノ酸をCDR提供非ヒト免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリン)のフレームワークアミノ酸で置き換える。(a)アクセプタ免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域中のアミノ酸はその位置ではヒト免疫グロブリンには珍しく、ドナー免疫グロブリン中の対応するアミノ酸はその位置ではヒト免疫グロブリンに典型的である。(b)アミノ酸の位置はCDRの1つのすぐ隣である、あるいは(c)フレームワークアミノ酸の側鎖原子は三次元免疫グロブリンモデルにおいてCDRアミノ酸の任意の原子の約5〜6Å内にある(中心点間距離)(QUEEN et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.88,p:2869,1991)。アクセプタ免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域中のアミノ酸及びドナー免疫グロブリン中の対応するアミノ酸のそれぞれがその位置ではヒト免疫グロブリンには珍しい場合、そのようなアミノ酸をその位置でヒト免疫グロブリンにとって典型的なアミノ酸で置き換える。
【0044】
ある具体的な実施形態において、本発明の抗体はキメラ抗体である。
【0045】
好ましい実施形態において、抗体はキメラ抗体であり、軽鎖及び重鎖フレームワーク配列はそれぞれマウス免疫グロブリン軽鎖及び重鎖由来である。
【0046】
好ましくは、キメラ抗体は、ヒト軽鎖及び重鎖由来の定常領域をさらに含む。
【0047】
本発明において、本発明のキメラ抗体は、O−アセチル化−GD2ガングリオシドを認識可能である。
【0048】
好ましくは、本発明のキメラ抗体は、本発明の抗体と同等の活性、特には同等の細胞障害活性を保持する。
【0049】
有利には、抗体は、アミノ酸配列の配列番号9を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0050】
また有利には、抗体は、アミノ酸配列の配列番号10を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0051】
より好ましい実施形態において、抗体は、アミノ酸配列の配列番号9を含む軽鎖可変領域及びアミノ酸配列の配列番号10を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0053】
別の具体的な実施形態において、本発明の抗体はヒト化抗体である。
【0054】
別の好ましい実施形態において、抗体はヒト化抗体であり、軽鎖及び重鎖フレームワーク配列はそれぞれヒト化免疫グロブリン軽鎖及び重鎖由来である。
【0055】
好ましくは、本発明のヒト化抗体は、ヒト軽鎖及び重鎖由来の定常領域をさらに含む。
【0056】
本発明において、本発明のヒト化抗体はO−アセチル化−GD2ガングリオシドを認識可能である。
【0057】
好ましくは、本発明のヒト化抗体は、本発明の抗体と同等の活性、特には同等の細胞障害活性を保持する。
【0058】
本発明のヒト化抗体のための軽鎖及び重鎖には他の配列も可能である。免疫グロブリンは2対の軽鎖/重鎖複合体を有し得て、少なくとも1本の鎖は、ヒトフレームワーク領域セグメントに機能性接合された1つ以上のマウス相補性決定領域を含む。
【0059】
本発明の抗体はイムノコンジュゲートを含む。
【0060】
本明細書で使用の用語「イムノコンジュゲート」とは、第2の分子、好ましくは細胞障害性物質又は放射性同位体に結合した少なくとも1つの抗体又はその機能的断片を含むコンジュゲート分子のことである。好ましくは、抗体又はその機能的断片は共有結合により第2分子に結合される。
【0061】
一実施形態において、本発明の抗体はイムノコンジュゲートである。
【0062】
ある具体的な実施形態において、本発明の抗体はイムノコンジュゲートであり、このイムノコンジュゲートは本発明の抗体又はその機能的断片及び細胞障害性物質を含む。
【0063】
別の具体的な実施形態において、本発明の抗体はイムノコンジュゲートであり、このイムノコンジュゲートは本発明の抗体又はその機能的断片及び放射性同位体を含む。
【0064】
用語「がん幹細胞がん」又は「CSCがん」とは、がん幹細胞として知られる特定の細胞を含むがんのことである。
【0065】
一実施形態において、CSCがんは少なくとも0.1%のがん幹細胞を含み、好ましくはCSCがんは1〜95%のがん幹細胞を含み、最も好ましくはCSCがんは1〜50%のがん幹細胞を含む。
【0066】
用語「がん幹細胞」は当該分野におけるその一般的な意味を有し、正常な幹細胞に関連した特徴、具体的には特定のがん試料でみられる全ての細胞タイプを生じさせる能力を有するがん細胞の亜集団(固形腫瘍及び血液がんにみられる)のことである。がん幹細胞は自己複製、多数のがん細胞系列への分化及び広範な増殖の能力を有する。がん幹細胞は、少量のがん幹細胞だけで新しい腫瘍を惹起することができ、また化学療法及び放射線療法含む従来の療法に耐性を示す傾向がある。
【0067】
したがって、CSCを標的とすることで、抗OAcGD2抗体は、これらのCSCを原因とする転移の防止及び/又は治療を可能にする。
【0068】
これらのがん幹細胞は、表面マーカー、例えばCD133、CD44、CD34、CD24、ALDH1により腫瘍から単離することができ、これらのマーカーによりがん幹細胞をがん細胞の塊から区別することができる。現在、当該分野においては、インビトロでがん幹細胞を特異的に単離するための幾つかの方法が知られており、広く用いられているアプローチ、特異的マーカー、ヘキスト染色による単離に限らず、化学療法抵抗性を利用した単離、侵襲性の不均一性を利用した選別、また転移性乳がん細胞における、低酸素に繰り返し曝露した後の再酸素負荷による選別が含まれる。
【0069】
がん幹細胞は極めて多種多様ながんにおいて確認されており、以下に限定するものではないが、急性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病を含む白血病、乳がん、グリオブラストーマを含むグリオーマ、結腸直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、肺がん、肝臓がん、膀胱がん又は胃がんが含まれる。
【0070】
したがって、本発明の一実施形態において、本発明のCSCがんは、急性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病を含む白血病、乳がん、グリオブラストーマを含むグリオーマ、結腸直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、肺がん、肝臓がん、膀胱がん、または胃がんを含む又はこれらから成る群から選択される。
【0071】
好ましい実施形態において、CSCがんは、グリオーマ、乳がん、急性リンパ性白血病又は急性骨髄性白血病である。
【0072】
がん細胞の塊からがん幹細胞を特定するとして様々なマーカーが観察されているが、そのようなマーカーはがんのタイプに応じて様々である。
【0073】
CSCがんの特定に使用可能なマーカーの例には、以下に限定するものではないが、CD34、CD38、CD19、インターロイキン−3−受容体α(CD123)、CD33、CD44、CD44v6、CD47、CD24、EpCAM(ESA)、Lin、CD133、A2B5、SSEA−1、CD166、CD26、CD200、α2β1、Sca、CD45、Pecam、ALDH、ALDH1、Oct4、ABCG2、CXCR4、AFP、EMA、IGF−IRが含まれる。
【0074】
ただし、公知のがん幹細胞マーカーを使用してCSCがんを特定し得るものの、CSCがんを治療するための標的抗原には適していないことに留意しなくてはならない。これは公知のがん幹細胞マーカーは大半が健康な組織で発現するからである。
【0075】
がん幹細胞表現型の幾つかの例は表1に挙げた表現型を含む。
【0077】
したがって、一実施形態において、CSCがんは、CD34
+/CD38
−、CD34
+/CD19
−、CD34
+/CD19
+、CD34
+/CD38
+/CD19
+、CD34
+/CD38
−/CD19
+、CD133
+/CD38
−、CD133
+/CD19
−、インターロイキン−3−受容体α
+、CD33
+、CD44
+/CD24
−/low、CD44
+/CD24
−/ESA
+、CD44
+/CD24
low/−lin
−/ALDH
+、CD133
+、A2B5
+、SSEA−1
+、CD133
+/ESA
high/CD44
+、CD166
+、CD26
+、CD44
+/CD133
+/α2β1
+、CD44
+、Sca
+/CD45
−/Pecam
−/CD34
+、ALDH1
+/Oct4
+/CD133
+/ABCG2
+/CXCR4
+、CD133
+/CD44
+、EpCAM
+/AFP
+、EMA
−/CD44v6
+、CD133
+/CD44
+/ALDH1
+を含む又はこれらから成る群から選択される少なくとも1種の表現型を有する細胞を含む。
【0078】
本発明の一実施形態において、本発明のCSCがんはCD133
+細胞を含む。
【0079】
別の実施形態において、本発明のCSCがんはCD44
+細胞を含む。より具体的な実施形態において、本発明のCSCがんはCD44
+/CD24
−/low細胞を含む。
【0080】
さらに別の実施形態において、本発明のCSCがんはCD34
+を含む。
【0081】
より具体的な実施形態において、本発明のCSCがんはCD34
+/CD38
−細胞を含む。
【0082】
別のより具体的な実施形態において、本発明のCSCがんはCD34
+/CD19
+細胞、好ましくはCD34
+/CD38
+/CD19
+又はCD34
+/CD38
−/CD19
+細胞を含む。
【0083】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のCSCがんは、がん幹細胞の少なくとも10%がその表面でO−アセチル化−GD2ガングリオシドを提示している、好ましくはがん幹細胞の少なくとも30%、最も好ましくはがん幹細胞の少なくとも50%がその表面でO−アセチル化−GD2ガングリオシドを提示しているがん幹細胞の亜集団を特徴とする。
【0084】
本発明のある具体的な実施形態において、CSCがんは乳がんである。
【0085】
より具体的な実施形態において、CSCがんは、がん幹細胞がCD44
+/CD24
−/low表現型を特徴とする乳がんである。
【0086】
本発明の別の具体的な実施形態において、CSCがんはグリオーマである。
【0087】
より具体的な実施形態において、CSCがんは、がん幹細胞がCD133
+表現型を特徴とするグリオーマである。
【0088】
本発明の別の具体的な実施形態において、CSCがんは白血病、より具体的には急性骨髄性白血病又は急性リンパ性白血病である。
【0089】
より具体的な実施形態において、CSCがんはがん幹細胞がCD34
+表現型を特徴とする白血病であり、より具体的にはCSCがんはがん幹細胞がCD34
+/CD38
−表現型を特徴とする急性骨髄性白血病である又はがん幹細胞がCD34
+/CD19
+表現型、好ましくはCD34
+/CD19
+/CD38
−若しくはCD34
+/CD19
+/CD38
+表現型を特徴とする急性リンパ性白血病である。
【0090】
本発明の文脈において、「CSCがんを治療する」という表現は、CSCがん及び/又は転移の進行又は増殖を逆戻りさせる、軽減する、阻害することを意味する。この表現はまた、CSCがん、転移又はCSCがん再発生の防止を含む。好ましくは、そのような治療は腫瘍成長の退縮、すなわち測定可能な腫瘍のサイズ減少にもつながる。典型的には、そのような治療は、CSCがんを進行、再発生させることなく患者の生存期間を延ばし、あるいはその全体的な生存期間を延ばす。
【0091】
一実施形態において、本発明は、CSCがんの転移を治療するための本発明の抗体に関する。
【0092】
本発明の文脈において、「転移を治療」するという表現は、CSCがんの転移を防止することを含む。
【0093】
別の実施形態において、本発明は、CSCがんの再発又は再発生を防止するための本発明の抗体に関する。
【0094】
CSCがんを治療するための本発明の抗体を使用することで、CSCがんに罹患した患者の生存期間(より具体的には5年生存率)を改善する。
【0095】
したがって、具体的な一実施形態において、本発明はCSCがんを治療するための本発明の抗体に関し、CSCがんは予後不良ながんである。
【0096】
本明細書において、予後不良ながんは5年未満、好ましくは2年未満、より好ましくは1年未満の予後中央値に関連したがんに対応する。
【0097】
この文脈において、本発明の抗体は好ましくは、CSCがんを治療するための少なくとも1種の他の抗がん化合物又は1つの他の抗がん療法と組み合わせて使用される。この組み合わせが抗がん療法の効果を高め、CSCがんの増殖、再発又は再発生のリスクを低下させ得る。
【0098】
抗がん化合物及び療法は様々であり、当該分野で周知である。これらは従来型及びゼネラリストな抗がんストラテジー、例えば化学療法、放射線療法、外科的手術に限らずホルモン療法も含む。また、標的療法を含むより特異性の高い療法も含み、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、チロシンキナーゼ、CDK阻害剤、血管新生抑制剤が含まれる。
【0099】
一実施形態において、本発明は、CSCがんの治療において別々で、同時に又は連続的に使用するための併用製剤としての本発明の抗体及び少なくとも1種の他の抗がん化合物に関する。
【0100】
別の実施形態において、本発明は、CSCがんの治療において別々で、同時に又は連続的に使用するための、外科的手術、化学療法、ホルモン療法、標的療法及び/又は放射線療法と組み合わせた本発明の抗体に関する。
【0101】
本発明の抗体と別のがん治療との組み合わせは、腫瘍の完全な退縮につながり得る。
【0102】
本発明の第2の目的は、CSCがんを治療するための医薬組成物に関し、この医薬組成物は本発明の抗体又はその機能的断片を含む。
【0104】
本発明において、抗体は、
(a)免疫グロブリン由来の少なくとも1つの軽鎖可変領域フレームワークと、CDR−L1について配列番号1、CDR−L2について配列番号2、CDR−L3について配列番号3の配列により定義される3つの相補性決定領域(CDR)とを含む軽鎖、及び/又は
(b)免疫グロブリン由来の少なくとも1つの重鎖可変領域フレームワークと、CDR−H1について配列番号4、CDR−H2について配列番号5、CDR−H3について配列番号6の配列により定義される3つの相補性決定領域(CDR)とを含む重鎖を含む。
【0105】
ある具体的な実施形態において、本発明の抗体は、
(a)免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワークと、CDR−L1について配列番号1、CDR−L2について配列番号2、CDR−L3について配列番号3の配列により定義される3つの相補性決定領域(CDR)とを含む軽鎖、及び/又は
(b)免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワークと、CDR−H1について配列番号4、CDR−H2について配列番号5、CDR−H3について配列番号6の配列により定義される3つの相補性決定領域(CDR)とを含む重鎖を含む。
【0106】
別の実施形態において、組成物は本発明の抗体の機能的断片を含み、この断片は、VHH断片、ヒトVH断片を含むFab、Fab’、F(
ab’)
2、Facb、Fd、scFv、ダイアボディ、モノボディを含む又はこれらから成る群から選択される。
【0107】
本発明において、断片は本発明の抗体のCDRを含み、またO−アセチル化−GD2ガングリオシドを認識可能である。
【0108】
別の実施形態において、組成物は本発明の抗体を含み、この抗体はキメラ抗体である。
【0109】
好ましい実施形態において、抗体は、アミノ酸配列の配列番号7を含む軽鎖可変領域と、アミノ酸配列の配列番号8を含む重鎖可変領域とを含む。
【0110】
別の実施形態において、組成物は本発明の抗体を含み、この抗体はヒト化抗体である。
【0111】
別の実施形態において、本発明の抗体はイムノコンジュゲートである。
【0112】
ある具体的な実施形態において、本発明の抗体はイムノコンジュゲートであり、このイムノコンジュゲートは本発明の抗体又はその機能的断片及び細胞障害性物質を含む。
【0113】
別の具体的な実施形態において、本発明の抗体はイムノコンジュゲートであり、このイムノコンジュゲートは本発明の抗体又はその機能的断片及び放射性同位体を含む。
【0114】
本発明のCSCがんについても上述した。
【0115】
一実施形態において、本発明の組成物は、急性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病を含む白血病、乳がん、グリオブラストーマを含むグリオーマ、結腸直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、肺がん、肝臓がん、膀胱がん、または胃がんを含む又はこれらから成る群から選択されるCSCがんを治療するためのものである。
【0116】
好ましい実施形態において、CSCがんは、グリオーマ、乳がん、急性リンパ性白血病又は急性骨髄性白血病である。
【0117】
別の実施形態において、CSCがんは、CD34
+/CD38
−、CD34
+/CD19
−、CD34
+/CD19
+、CD34
+/CD38
+/CD19
+、CD34
+/CD38
−/CD19
+、CD133
+/CD38
−、CD133
+/CD19
−、インターロイキン−3−受容体α
+、CD33
+、CD44
+/CD24
−/low、CD44
+/CD24
−/ESA
+、CD44
+/CD24
low/−lin
−/ALDH
+、CD133
+、A2B5
+、SSEA−1
+、CD133
+/ESA
high/CD44
+、CD166
+、CD26
+、CD44
+/CD133
+/α2β1
+、CD44
+、Sca
+/CD45
−/Pecam
−/CD34
+、ALDH1
+/Oct4
+/CD133
+/ABCG2
+/CXCR4
+、CD133
+/CD44
+、EpCAM
+/AFP
+、EMA
−/CD44v6
+、CD133
+/CD44
+/ALDH1
+を含む又はこれらから成る群から選択される少なくとも1種の表現型を有する細胞を含む。
【0118】
本発明のより具体的な実施形態において、本発明のCSCがんはCD133
+細胞、CD44
+細胞、より具体的にはCD44
+/CD24
−/low細胞又はCD34
+細胞、より具体的にはCD34
+/CD38
−又はCD34
+/CD19
+細胞、より一層具体的にはCD34
+/CD19
+/CD38
−又はCD34
+/CD19
+/CD38
+細胞を含む。
【0119】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のCSCがんは、がん幹細胞の少なくとも10%がO−アセチル化−GD2ガングリオシドを提示している、好ましくはがん幹細胞の少なくとも30%、最も好ましくはがん幹細胞の少なくとも50%がO−アセチル化−GD2ガングリオシドを提示しているがん幹細胞の亜集団を特徴とする。
【0120】
本発明のある具体的な実施形態において、CSCがんは乳がんである。より具体的な実施形態において、CSCがんは、がん幹細胞がCD44
+/CD24
−/low表現型を特徴とする乳がんである。
【0121】
本発明の別の具体的な実施形態において、CSCがんはグリオーマである。より具体的な実施形態において、CSCがんは、がん幹細胞がCD133
+表現型を特徴とするグリオーマである。
【0122】
本発明の別の具体的な実施形態において、CSCがんはがん幹細胞がCD34
+表現型を特徴とする白血病であり、より具体的にはCSCがんはがん幹細胞がCD34
+/CD38
−表現型を特徴とする急性骨髄性白血病又はがん幹細胞がCD34
+/CD19
+表現型、好ましくはCD34
+/CD19
+/CD38
−若しくはCD34
+/CD19
+/CD38
+表現型を特徴とする急性リンパ性白血病である。
【0123】
一実施形態において、本発明は、CSCがんの転移を治療するための本発明の組成物に関する。
【0124】
別の実施形態において、本発明は、CSCがんの再発又は再発生を防止するための本発明の組成物に関する。
【0125】
したがって、具体的な一実施形態において、本発明はCSCがんを治療するための本発明の組成物に関し、CSCがんは予後不良ながんである。
【0126】
一実施形態において、本発明は、CSCがんの治療において別々で、同時に又は連続的に使用するための併用製剤としての本発明の組成物及び少なくとも1種の他の抗がん化合物に関する。
【0127】
別の実施形態において、本発明は、CSCがんの治療において別々で、同時に又は連続的に使用するための、外科的手術、化学療法、ホルモン療法、標的療法及び/又は放射線療法と組み合わせた本発明の組成物に関する。
【0128】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体をさらに含む。
【0129】
「医薬的に許容可能な(pharmaceutically acceptable)」という表現は、生理学的に耐え得て、またヒトに投与した際にアレルギー又は同様の望ましくない反応(例えば、胃の不調、眩暈等)を典型的に引き起こすことがない分子実体及び組成物のことである。好ましくは、本明細書で使用の「医薬的に許容可能な」という表現は、連邦政府若しくは州政府の規制当局により承認可能であること又は動物、より具体的にはヒトにおける使用に関して米国薬局方若しくは他の一般的に認められている薬局方に記載されていることを意味する。
【0130】
用語「担体」とは、化合物と共に投与される溶媒、アジュバント、賦形剤又はビヒクルのことである。そのような医薬担体は、無菌の液体(例えば、水、油、石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等が含まれる)であってもよい。
【0131】
本発明の組成物の投与経路は好ましくは非経口であり、本明細書で使用の用語「非経口」には、腫瘍内、静脈内、筋肉内、皮下、直腸内、膣内、または腹腔内投与が含まれる。したがって、医薬組成物は、注入するつもりの製剤に関して医薬的に許容可能なビヒクルを含有する。これらは特には等張性溶液、無菌溶液、生理食塩水(モノナトリウム若しくはジナトリウムホスフェート、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウム等又はそのような塩の混合物)又は場合によっては滅菌水若しくは生理食塩水を添加することで注射可能な溶液を構築することができる乾燥、特には凍結乾燥させた組成物であってもよい。適切な医薬担体はE.W.MartinのRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。これらの中でも、静脈内又は腫瘍内投与が最も好ましい。
【0132】
抗体はバッファ若しくは水中で可溶化し得る又はエマルション、マイクロエマルション、ハイドロゲル(例えば、PLGA−PEG−PLGAトリブロックコポリマー系ハイドロゲル)、マイクロスフィア、ナノスフィア、ミクロ粒子、ナノ粒子(例えば、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)ミクロ粒子(例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコール酸)(PLGA))、ポリグルタメートマイクロスフィア、ナノスフィア、ミクロ粒子又はナノ粒子)、リポソーム又は他のガレヌス製剤に組み入れ得る。全ての場合において、製剤は無菌でなくてはならず、またシリンジでの投与が容易な程度に流動性でなくてはならない。製剤は製造及び保存条件下で安定でなくてはならず、また細菌、真菌等の微生物の汚染作用から保護されなくてはならない。
【0133】
分散液も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、これらの混合物、また油中で調製し得る。通常の保存及び使用条件下で、これらの製剤は、微生物の増殖を予防するための保存料を含有する。
【0134】
抗体は中性又は塩の形態の組成物に調製することができる。医薬的に許容可能な塩には酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成)が含まれ、無機酸、例えば塩酸若しくはリン酸又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸から形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩は無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄、またイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基由来であってもよい。
【0135】
担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、これらの適切な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒にもなり得る。本発明のコンジュゲートを、例えばペグ化により修飾することでそのバイオディスポニビリティ(biodisponibility)を上昇させてもよい。
【0136】
適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用、分散液の場合は必要とされる粒径の維持及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等により防止することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含めることが好ましい。
【0137】
吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、ポリオール、半減期強化(half−life enhancing)共有及び非共有結合製剤を組成物において使用することで、注射用組成物の吸収を長引かせることができる。
【0138】
ペプチドの不安定性さ又は分解には数多くの原因があり、加水分解及び変性が含まれる。疎水性相互作用は分子の凝集(すなわち、集合)を引き起こし得る。安定剤を添加することでそのような問題を軽減又は防止し得る。
【0139】
安定剤には、シクロデキストリン及びその誘導体が含まれる(米国特許第5730969号明細書を参照のこと)。適切な保存料、例えばスクロース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、デキストラン及びグリセリンも最終的な製剤を安定化させるために添加することができる。イオン性及び非イオン性界面活性剤、D−グルコース、D−ガラクトース、D−キシロース、D−ガラクツロン酸、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ及びこれらの混合物から選択した安定剤を製剤に添加し得る。アルカリ金属塩又は塩化マグネシウムの添加はペプチドを安定化し得る。ペプチドは、デキストラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、グリコーゲン、デキストリン及びアルギン酸塩から成る群から選択されるサッカライドとの接触によっても安定化させ得る。添加可能な他の糖には、単糖、二糖、糖アルコール及びこれらの混合物が含まれる(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、キシリトール)。ポリオールはペプチドを安定化し得て、水混和性又は水溶性である。適切なポリオールはポリヒドロキシアルコール、単糖及び二糖であってもよく、マンニトール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン、グルコース、フルクトース、アラビノース、マンノース、マルトース、スクロース及びこれらのポリマーが含まれる。様々な賦形剤もペプチドを安定化し得て、血清アルブミン、アミノ酸、ヘパリン、脂肪酸、リン脂質、界面活性剤、金属、ポリオール、還元剤、金属キレート剤、ポリビニルピロリドン、加水分解ゼラチン及び硫酸アンモニウムが含まれる。
【0140】
本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、別々に、同時に又は連続的に使用又は投与するための、別の剤形又は単位剤形の追加の活性化合物をさらに含む。
【0141】
本発明の第3の目的は、被験体においてCSCがんを治療するための方法に関し、この方法は治療を必要とする被験体に有効量の本発明の抗体又は組成物を投与することを含む。
【0142】
本明細書で使用の用語「被験体」とは哺乳動物、例えば齧歯類動物、ネコ科の動物、イヌ科の動物又は霊長類、最も好ましくはヒトのことである。
【0143】
本発明の組成物及び抗体は上で詳述している。
【0144】
一実施形態において、本発明は、急性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病を含む白血病、乳がん、グリオブラストーマを含むグリオーマ、結腸直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、肺がん、肝臓がん、膀胱がん、または胃がんを含む又はこれらから成る群から選択されるCSCがんを治療するための方法に関する。
【0145】
好ましい実施形態において、CSCがんは、グリオーマ、乳がん、急性リンパ性白血病又は急性骨髄性白血病である。
【0146】
別の実施形態において、CSCがんは、CD34
+/CD38
−、CD34
+/CD19
−、CD34
+/CD19
+、CD34
+/CD38
+/CD19
+、CD34
+/CD38
−/CD19
+、CD133
+/CD38
−、CD133
+/CD19
−、インターロイキン−3−受容体α
+、CD33
+、CD44
+/CD24
−/low、CD44
+/CD24
−/ESA
+、CD44
+/CD24
low/−lin
−/ALDH
+、CD133
+、A2B5
+、SSEA−1
+、CD133
+/ESA
high/CD44
+、CD166
+、CD26
+、CD44
+/CD133
+/α2β1
+、CD44
+、Sca
+/CD45
−/Pecam
−/CD34
+、ALDH1
+/Oct4
+/CD133
+/ABCG2
+/CXCR4
+、CD133
+/CD44
+、EpCAM
+/AFP
+、EMA
−/CD44v6
+、CD133
+/CD44
+/ALDH1
+を含む又はこれらから成る群から選択される少なくとも1種の表現型を有する細胞を含む。
【0147】
本発明のより具体的な実施形態において、本発明のCSCがんは、CD133
+細胞、CD44
+細胞、より具体的にはCD44
+/CD24
−/low細胞、またはCD34
+細胞、より具体的にはCD34
+/CD38
−、またはCD34
+/CD19
+細胞、より一層具体的にはCD34
+/CD19
+/CD38
−又はCD34
+/CD19
+/CD38
−細胞を含む。
【0148】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のCSCがんは、がん幹細胞の少なくとも10%がその表面でO−アセチル化−GD2ガングリオシドを提示している、好ましくはがん幹細胞の少なくとも30%、最も好ましくはがん幹細胞の少なくとも50%がその表面でO−アセチル化−GD2ガングリオシドを提示しているがん幹細胞の亜集団を特徴とする。
【0149】
本発明のある具体的な実施形態において、CSCがんは乳がんである。より具体的な実施形態において、CSCがんは、がん幹細胞がCD44
+/CD24
−/low表現型を特徴とする乳がんである。
【0150】
本発明の別の具体的な実施形態において、CSCがんはグリオーマである。より具体的な実施形態において、CSCがんは、がん幹細胞がCD133
+表現型を特徴とするグリオーマである。
【0151】
本発明の別の具体的な実施形態において、CSCがんはがん幹細胞がCD34
+表現型を特徴とする白血病であり、より具体的にはCSCがんはがん幹細胞がCD34
+/CD38
−表現型を特徴とする急性骨髄性白血病又はがん幹細胞がCD34
+/CD19
+表現型、好ましくはCD34
+/CD19
+/CD38
−若しくはCD34
+/CD19
+/CD38
+表現型を特徴とする急性リンパ性白血病である。
【0152】
一実施形態において、本発明は、CSCがんの転移を治療するための方法に関する。
【0153】
別の実施形態において、本発明は、CSCがんの再発又は再発生を防止するための方法に関する。
【0154】
ある具体的な実施形態において、本発明は本発明のCSCがんを治療するための方法に関し、CSCがんは予後不良ながんである。
【0155】
一実施形態において、本発明は被験体においてCSCがんを治療するための方法に関し、この方法は治療を必要とする被験体に有効量の本発明の抗体又は組成物及び少なくとも1種の他の抗がん化合物を、CSCがんの治療において別々で、同時に又は連続的に使用するための併用製剤として投与することを含む。
【0156】
別の実施形態において、本発明は、CSCがんの治療において別々で、同時に又は連続的に使用するための、外科的手術、化学療法、ホルモン療法、標的療法及び/又は放射線療法と組み合わせた本発明のCSCがんを治療するための方法に関する。
【0157】
組成物の「有効量」とは、腫瘍成長の退縮を引き起こすのに十分な量のことである。投与する用量は関係する病態の様々なパラメータ、特には用いる投与様式、あるいは所望の治療期間に応じて適合させることができる。当然のことながら、医薬組成物の形態、投与経路、用量及びレジメンは自然と、治療対象である病態、疾患の重症度、被験体の年齢、体重及び性別等に左右される。以下で挙げる有効用量の範囲は本発明を限定しようとするものではなく、好ましい用量の範囲を表す。しかしながら、この好ましい用量を各被験体に合わせることもでき、当業者ならば理解し、難なく求め得るものである。
【0158】
例として、少なくとも1種のコンジュゲートの有効量は約50〜約1000mg/m
2、より好ましくは約100〜約750mg/m
2、最も好ましくは約250〜約500mg/m
2である。他の用量も実行可能であり、これはそのコンジュゲートの分子量が影響し得るからである。当業者ならばこれらの範囲に入る(あるいは必要に応じてこれらの範囲外の)適切な用量を簡単に見つけ出すことができるものと考えられる。
【0159】
本発明の診断ストラテジー
本発明の第4の目的は、被験体においてCSCがんを診断するための方法に関し、この方法はO−アセチル化−GD2ガングリオシドの発現を決定することを含み、O−アセチル化−GD2ガングリオシドの発現はCSCがんを示す。
【0160】
本発明はインビボ及びインビトロでの方法を含む。
【0161】
一実施形態において、本発明は被験体においてCSCがんを診断するためのインビトロでの方法に関し、この方法は被験体から得られた生体試料を(i)O−アセチル化−GD2ガングリオシドの発現を決定することで分析するステップを含み、生体試料におけるO−アセチル化−GD2ガングリオシドの発現はCSCがんを示す。
【0162】
有利には、決定ステップ(i)を、上で開示したような抗体又はその機能的断片により評価する。抗体若しくはその断片は標識(例えば、放射性同位体標識、発色団標識、フルオロフォア標識又は酵素標識した抗体)され得る又は誘導され得る(例えば、基質又はタンパク質若しくはタンパク質/リガンド対のタンパク質のリガンドとの抗体コンジュゲート(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン))。
【0163】
分析は当業者に周知の多種多様な技法で評価することができ、以下に限定するものではないが、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫アッセイ(RIA)、ウェスタンブロット解析、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、イムノ薄層クロマトグラフィ(Immuno Thing Layer Chromatography:ITLC)、撮像技術、特にはPETスキャン(ポジトロン放出断層撮影)法が含まれる。
【0164】
本発明のインビボでの方法は、インビボ投与に適した本発明の抗体又はその機能的断片により評価される。好ましくは、このインビボでの方法をインビボでの撮像法、例えばPETスキャン法により評価する。そのような方法は当該分野で周知である。
【0165】
本明細書で使用の用語「生体試料」とは患者由来の任意の生体試料を意味し、好ましくは生体試料とは、本発明の方法を実行する前に被験体の身体から採取した生検試料である。
【0166】
一実施形態において、CSCがんは、急性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病を含む白血病、乳がん、グリオブラストーマを含むグリオーマ、結腸直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、肺がん、肝臓がん、膀胱がん、または胃がんを含む又はこれらから成る群から選択される。
【0167】
好ましい実施形態において、CSCがんは、グリオーマ、乳がん、急性リンパ性白血病又は急性骨髄性白血病である。
【0168】
本発明の第5の目的は、CSCがんのバイオマーカーとしてのO−アセチル化−GD2ガングリオシドの使用に関する。
【0169】
用語「O−アセチル化−GD2ガングリオシド」とは、GD2ガングリオシドに由来し且つ9(7)−O−アセチル−GD2に対応するガングリオシドのことである。
【0170】
本発明の第6の目的は、CSCがんに罹患した被験体の本発明の抗体又は組成物での治療に対する応答を予測するための方法に関し、この方法は被験体の生体試料におけるO−アセチル化−GD2ガングリオシドを発現している細胞の存在の検出を含む。
【0171】
一実施形態において、本発明は、CSCがんに罹患した被験体の本発明の抗体又は組成物での治療に対する応答を予測するための方法に関し、被験体の生体試料におけるO−アセチル化−GD2ガングリオシドを発現している細胞の存在は、被験体がこの治療に応答する良好な確率と相関している。
【0172】
より具体的な実施形態において、本発明は上記の方法に関し、被験体の生体試料における、全てのがん幹細胞の中でのO−アセチル化−GD2ガングリオシド発現がん幹細胞のレベルを検出することを含む。
【0173】
好ましい実施形態において、被験体の生体試料における、全てのがん幹細胞の中でのその表面でO−アセチル化−GD2ガングリオシドを提示している少なくとも10%、特には少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%のがん幹細胞のレベルは、被験体がこの治療に応答する高い確率と相関している。
【0174】
一実施形態において、生体試料はがん試料、好ましくはCSCがん試料である。
【0175】
一実施形態において、CSCがんは、急性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病を含む白血病、乳がん、グリオブラストーマを含むグリオーマ、結腸直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、肺がん、肝臓がん、膀胱がん、または胃がんを含む又はこれらから成る群から選択される。
【0176】
好ましい実施形態において、CSCがんは、グリオーマ、乳がん、急性リンパ性白血病又は急性骨髄性白血病である。
【0177】
本発明の一実施形態において、本方法は、患者におけるO−アセチル化−GD2ガングリオシドを発現している細胞の存在を非侵襲性の方法、例えばインビボ撮像剤を使用した撮像により検出することを含む。そのような方法は当該分野で周知である。
【実施例】
【0178】
以下において、本発明をアミノ酸配列、核酸配列及び実施例を参照しながらより詳細に説明する。しかしながら、実施例の細部は本発明の限定を意図としたものではない。むしろ、本発明は本明細書に記載の実施例で明確には触れられていないものの当業者ならば難なく突き止められる細部を含む全ての実施形態に関わる。
【0179】
グリオーマ
グリオーマにおけるOAcGD2ガングリオシド発現の評価
グリオブラストーマ生検試料におけるOAcGD2の発現
本発明者は、免疫組織化学的検査(IHC)を用いて22個のグリオブラストーマ試料におけるO−アセチル化−GD2ガングリオシド(OAcGD2)の発現を評価した。診断のための免疫組織化学染色の例を
図1に示す。組織をOAcGD2抗原について染色している。
【0180】
腫瘍(グリオブラストーマ)の試料を外科的な切除により得た。組織試料(体積≦0.5cm
3)を取り出し、液体窒素の温度まで冷却したイソペンタン中で凍結した。60秒後、試料を取り出し、移動させ、−70℃で維持した。クリオスタットを使用して10μmの切片を作成した。切片をガラススライドSUPERFROST GOLD+(VWR)上に集め、3分間にわたって空気乾燥させた。次に、アセトン(−20℃)で10分間にわたって固定し、再度空気乾燥させた。次に、切片を−20℃で使用時まで保管した。
【0181】
抗体8B6免疫反応性を、ビオチン化ヤギ抗マウス抗体とそれに続くストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体及びDAB基質との段階的なインキュベーションにより検出した。検体を病理学者が光学顕微鏡機器を使用して分析し、陽性コントロールとしてのヒトニューロブラストーマ凍結切片、陰性コントロールとしての無関係な抗IgG3抗体とインキュベートした組織と比較して、陰性、1+、2+又は3+に分類した。結果を表2に要約する。
【0182】
【表5】
【0183】
本発明者は、全ての試料が抗OAcGD2モノクローナル抗体(mAb)8B6で陽性に染色されたことを発見し、IHCスコアは1+〜3+であった。22個のうち16個の試料に関し、100%の腫瘍細胞が腫瘍内で陽性であった。
【0184】
グリオーマ細胞株及び初代細胞におけるOAcGD2発現
U87MGヒトグリオブラストーマ細胞におけるCD133及びOAcGD2の発現プロファイルをフローサイトメトリ分析により決定した。細胞をOAcGD2に特異的な親マウスmAb 8B6及びCD133−FITC抗体で染色した。細胞を3回、氷冷PBSで洗浄し、mAb 8B6(PBS−BSA1%中10μg/ml)と30分間にわたって4℃でインキュベートした。氷冷PBS中での3回の洗浄後、最初に結合した抗体を、FITCと30分間にわたってコンジュゲートさせたヤギ抗マウス二次抗体のF(ab)’
2断片で検出した。洗浄後、次に、細胞を、CD133−APCコンジュゲート抗体と30分間にわたって4℃でインキュベートした。細胞を氷冷PBSで3回洗浄した後、細胞を、FACSCalibur血球計算器(BD)でCell Quest Proソフトウェア(BD)を使用して分析した。アイソタイプマッチ抗体を陰性コントロールとして使用した。少なくとも1x10
4の事象が細胞株において測定された。
【0185】
フローサイトメトリを用いて、本発明者は、ヒトグリオーマ細胞株(3/3)及びヒト初代グリオーマ細胞(12/12)の細胞表面にあるOAcGD2抗原も検出した。ヒトグリオーマ細胞株に関し、OAcGD2陽性細胞の割合は61〜85%であった(
図2、表3)。
【0186】
本発明者は、これらのグリオーマ細胞株及びCD133陽性細胞におけるCD133
+OAcGD2
+CSCの存在も認め、OAcGD2陽性細胞の割合は約85〜98%であった。
【0187】
ヒト初代グリオーマ細胞に関し、OAcGD2陽性細胞の割合は32〜94%であった。本発明者は、これらの初代グリオーマ細胞及びCD133陽性細胞におけるCD133
+OAcGD2
+CSCの存在も認め、OAcGD2陽性細胞の割合は約62〜100%であった(表3)。
【0188】
【表6】
【0189】
結果から、グリオーマ初代細胞及びグリオーマ細胞株における強いOAcGD2発現がグリオブラストーマ生検試料にみられることがわかる。さらに、これらのグリオーマ初代細胞及びグリオーマ細胞株中にCSC(CD133+)を探すことで、様々な割合のそのようなCSC(CD133+)の特定が可能となった。ここで、驚くべきことに、これらの結果は、OAcGD2発現が、非CSCと比較してこれらのCSCにおいて高濃度であることを示している。例えば、陽性OAcGD2細胞の割合は、CSCに関して、非CSCより2倍を超えて高い(データ示さず)。
【0190】
最後に、結果は、OAcGD2がグリオーマのCSCにおいて高濃度であり且つこれらの細胞のターゲティングの促進に使用できることを立証した。
【0191】
8B6 mAbがOAcGD2発現グリオーマ細胞に及ぼす影響。
U87−MG腫瘍細胞(5x10
5細胞)を平底12ウェルプレートに播種し、mAb 8B6又はコントロール−IgG3抗体と24時間にわたって37℃、5%CO
2でインキュベートした。細胞培養物を、LEICA 164顕微鏡に接続したLEICA DFC295デジタルカメラで撮像した。
【0192】
24時間にわたるインキュベーション後、形態学的な変化により評価したアポトーシス細胞を位相差顕微鏡(同じ200倍の倍率)で観察した。矢印はアポトーシス細胞を示す。
【0193】
mAb 8B6での処理によりU87MG細胞の形態に変化が生じた。mAb 8B6とインキュベートした細胞は球形であり、ブレブを形成し、培養容器の底にゆるく付着しした又は培地中を浮遊した。細胞は幾つかの断片に分かれ、これはアポトーシスの特徴である(
図3)。U87−MG細胞中、最高率でOAcGD2を発現した細胞であるCSCがアポトーシスに続いて死んだと推測することができる。
【0194】
インビボモデルにおける8B6 mAbがグリオブラストーマに及ぼす影響
メスのヌード(nu/nu)胸腺欠損マウス(Harlan Laboratories)を、適用される欧州動物福祉規則に準拠し、施設での動物の飼育及び使用に関する承認されたプロトコルの下、仏国農務省により認可されたナント大の動物施設で飼育管理した。
【0195】
U251細胞懸濁液(3x10
6細胞/100μl、同体積のRPMI及びマトリゲルを含有)のアリコートをマウスの左側腹部に皮下移植した。1週間後、最初に注入したマウスの全てに腫瘍の塊が認められ、次にこれらのマウスを3つの同じ数のグループにランダムに分け、抗体による治療を開始した。抗OAcGD2 mAb 8B6をリン酸緩衝食塩水として調製し、静脈内に注入した。1つのグループを500μgのmAb 8B6の1回の注入で治療し、コントロールグループをビヒクルとしての同体積のPBSだけで治療した。第3グループを陰性コントロールとしてアイソタイプマッチmAbで治療した。腫瘍をカリパスで測定した。腫瘍体積を、長さ×幅
2×π/6の式にしたがって計算した。
【0196】
本発明者は、抗OAcGD2 mAbがマウスにおいてヒトグリオブラストーマ腫瘍の成長を阻害することも発見した(
図4)。腫瘍体積が100mm
3に達したら、マウスに500μgのmAb 8B6又はコントロールIgG3 mAbを注入し、腫瘍の成長を観察した。抗体8B6は、ビヒクル−及びコントロールIgG3治療マウスと比較すると、ヒトU251グリオブラストーマ腫瘍の成長を阻害した。抗体注入から68日後、腫瘍体積はビヒクル−及びコントロールIgG3治療グループのそれぞれにおいて平均423±236mm
3、405±176mm
3であった。対照的に、mAb 8B6での治療はU251腫瘍の成長を阻害し、平均腫瘍体積は254±142mm
3であった。同等量の非特異的IgG3抗体での治療が無効であり続けたことから、治療の特異性が実証された。最後に、IgG3で治療したマウスと比較して、8B6で治療したマウスにおいてCSCは特定できないことが実証された(データ示さず)。
【0197】
まとめると、これらの結果は、抗OAcGD2抗体がCSC細胞のインビボでの排除を可能にし、この排除が腫瘍成長のはっきりとした強い阻害に関係していることを立証した。
【0198】
乳がん
乳がんにおけるOAcGD2ガングリオシド発現の評価
乳がん組織におけるOAcGD2発現
本発明者は予備的な免疫組織化学的検査を行うことで、固定ホルマリンパラフィン包埋がん組織中のOAc−GD2の発現を8B6モノクローナル抗体で評価した。
【0199】
ここで、本発明者は、25個の染色乳がん生検試料中、18個の試料が陽性に染色され、1つの試料がわずかな染色を見せ(スコア+1)、9個の試料が中程度の染色(スコア2+)を示し、8個の試料が強い染色(スコア3)を示すことを明らかにした。
【0200】
乳がん組織とOAcGD2との間でのこの強い相関関係を、他の乳がん組織の28個の凍結切片に対して行った他の免疫化学的検査により確認した。この一連の実験に関し、全ての試料をOAcGD2に関して陽性に染色した。
【0201】
結果として、OAcGD2を乳がんのマーカーとして求めることができると考えられる。
【0202】
乳がん細胞株におけるOAcGD2発現
OAcGD2発現を乳がん細胞株SUM159において評価した。ヒト乳がん幹細胞におけるOAcGD2の発現プロファイルを、3重の蛍光染色後にフローサイトメトリ分析により決定した。細胞を一次抗体8B6、14G2a及び7H2(10μg/ml)と45分間にわたって氷上、PBS−BSA1%中でインキュベートした。氷冷PBSでの3回の洗浄後、最初に結合した抗体をAlexa Fluor(登録商標)568ヤギ抗マウスIgG(H+L)(Life Technologies)で45分間にわたって氷上で検出した。次に、細胞をPFA4%に10分間にわたって固定し、次に25分間にわたってFITCとの抗CD24コンジュゲート及びAPC(BD)とコンジュゲートさせた抗CD44とインキュベートした。洗浄後、細胞をLSRIIフローサイトメータ(BD)でFlowJoソフトウェア(BD)を使用して分析した。少なくとも1x10
4の事象を細胞株で測定した。
【0203】
約35%の細胞がOAcGD2(8B6抗体)を発現し、一方、約15%しかGD2ガングリオシドを発現しなかったことが判明した(14G2a抗体)。そのような異なる発現を別の乳がん細胞株において確認した(HMLE、データ示さず)。次に、本発明者はSUM159細胞株内でのCD44
+CD24
−/low細胞の割合を評価し、94%の細胞がCSC表現型を示すことを明らかにした。非CSCと比較して、CSCにおけるOAcGD2陽性細胞の割合をSUM159で求めなかったならば、そのような割合は別の乳がん細胞株において5倍高いと示した(HMLE、データ示さず)。このため、グリオーマにおいて得た結果に関し、OAcGD2は乳がんのCSCにおいて高濃度であり且つこれらの細胞のターゲティングの促進に使用できると思われる。さらに、これらの結果は極めて興味深い。なぜなら、GD2を標的とした治療とは対照的に、OAcGD2を標的とした治療の治療効果を予想することを可能にするからである。実際、数パーセントのGD2発現細胞を標的としても、関連するがんの増殖を確実に抑制することはできない。
【0204】
8B6抗体での乳がん細胞の生存能阻害
本発明者は、乳がんSUM159細胞株について抗OAcGD2及び抗GD2抗体による細胞増殖アッセイを行った。
【0205】
10
4個のSUM159細胞(100μL)を96ウェルマイクロプレートにおいて24時間にわたって37℃でインキュベートした。50μLの培地中の80〜1.25μg/mLの抗体を添加し、24時間にわたって37℃でインキュベートした。50μgのMTTを各ウェルに添加し、少なくとも4時間にわたって37℃でインキュベートしてから、細胞を10%SDSで可溶化することでMTT色素の細胞内変換を停止させ、一晩、37℃でインキュベートした。次に、吸光度を570及び650nmで測定した。650nmでの生成物の吸光度を570nmでの吸光度から減算(吸光度
570−吸光度
650)することで色素の総変換率を計算した。20μgのエトポシドで処理した細胞の入った4つのコントロールウェルを、生存率0%の吸光度となるブランクとした。生存率(%)を無処理の細胞に対する割合として表し、各値を平均±SEM(四重)で表した。
【0206】
8B6抗体はこの細胞株に対して直接的な細胞障害性を引き起こし、30%の生存能阻害に近かった(
図5)。
【0207】
肺がん
小細胞肺がんにおけるOAcGD2ガングリオシドの発現の評価
肺がん細胞株におけるOAcGD2発現
OAcGD2発現を肺がん細胞株H196で評価した。ヒト肺がん幹細胞におけるOAcGD2の発現プロファイルを、二重蛍光染色後、フローサイトメトリ分析により求めた。細胞を一次抗体8B6、10B8及び7H2(10μg/ml)と45分間にわたって氷上、PBS−BSA1%中でインキュベートした。氷冷PBS中での3回の洗浄後、最初に結合した抗体を、FITCコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(H+L)(JacksonResearch)で45分間にわたって氷上で検出した。次に、細胞をPFA4%に10分間にわたって固定し、次に25分間にわたってAPC(Miltenyi Biotec)との抗CD133コンジュゲートとインキュベートした。洗浄後、細胞をFACScaliburフローサイトメータ(BD)でCellQuestソフトウェア(BD)を使用して分析した。少なくとも1x10
4の事象を細胞株で測定した。
【0208】
結果を
図6に示す。
【0209】
ここでもまた、結果はOAcGD2及びCD133の発現が、50%を超えるOAcGD2発現CSC細胞と相関していたことを示す。これらの細胞におけるGD2の発現は陰性コントロールより若干高かった(すなわち、7%)。
【0210】
ここでもまた、OAcGD2が小細胞肺がんのCSCにおいて高濃度である、またこれらの細胞のターゲティングの促進に使用できると思われる。
【0211】
白血病
本発明者は予備的な間接的免疫蛍光アッセイを行うことで急性リンパ性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)におけるOAc−GD2の発現を8B6モノクローナル抗体で評価した。
【0212】
試験したALL細胞株の2つは陽性であった。患者から得た1つのAML試料もまた陽性であった。