(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、ポリ(乳酸)、ポリ(ブチレンサクシネート)、セルローストリアセテート、リグニン、及びワックスのうちの1種以上の様々な組み合わせを含む肥料用コーティングを開発した。肥料用コーティングは生分解性であり、土壌中に有害残留物を残さない。このようなコーティングで被覆された肥料は、ほとんどの植物の養分取り込み速度と一致するか近い、持続的な養分放出速度を更に有しており、その結果、収量を向上させる。加えて、本明細書に記載の顆粒被覆方法によって、均一な薄いコーティングを有する被覆肥料を製造することができ、それにより被覆肥料に高い窒素含量を含ませることが可能になる。
【0015】
コーティングは幅広い種類の肥料顆粒に適合する。肥料顆粒は、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸硝酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸カルシウムアンモニウム、尿素、尿素−ホルムアルデヒド、リン酸一アンモニウム(「MAP」)、リン酸二アンモニウム、ポリリン酸化合物、リン鉱石、過リン酸石灰(「SSP」)、重過リン酸石灰、硝酸カリウム、塩化カリウム、または硫酸カリウム(「SOP」またはカリ)などの窒素源、リン源、またはカリウム源を含んでいてもよい。前述のものを含む組み合わせも使用することができる。ある実施形態では、肥料顆粒は尿素を含む。最終的な肥料顆粒中に含まれる窒素源、リン源、またはカリウム源の量は意図される最終用途次第であり、各成分について、肥料顆粒の総重量基準で0〜60重量%とすることができる。
【0016】
追加的に、硫酸マグネシウム、及び1種以上の微量元素源すなわち微量要素が含まれていてもよく、例えば、ホウ素、カルシウム、塩素、コバルト、銅、鉄、マンガン、モリブデン、ニッケル、ナトリウム、亜鉛または前述の少なくとも1種を含む組み合わせが存在してもよい。これらの養分は元素の形態で供給されてもよいし、例えば硫酸塩、硝酸塩、またはハロゲン化物などの塩の形態で供給されてもよい。植物微量要素の量は意図される最終用途次第であり、例えば肥料顆粒の総重量基準で0.1〜5重量%とすることができる。
【0017】
更に、賦形剤を顆粒中に存在させることができ、例えばベントナイト、方解石、酸化カルシウム、硫酸カルシウム(無水または半水化物)、ドロマイト、タルク、砂、または前述の賦形剤の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0018】
粒状肥料の他の成分としては、例えば界面活性剤(以下に記載するように液体が存在する場合)、造核剤、または作用剤の供給源として機能し得るリサイクルされた肥料粒子、炭酸カルシウムなどの造核土壌改良剤、活性炭、単体硫黄、殺虫剤や除草剤や殺菌剤などの殺生物剤、ウィッキング剤、湿潤剤、熱安定剤、セルロースやポリビニルアルコールや脂肪やオイルやアラビアゴムなどの粘着剤、ビニリデン紫外線安定剤、酸化防止剤、還元剤、着色剤、バインダー(すなわち有機塩化物、ゼイン、ゼラチン、キトサン、ポリエチレンオキシドポリマー、並びにアクリルアミドポリマー及びコポリマー)などを挙げることができる。
【0019】
肥料顆粒は、これらの意図される用途に適した任意の形状または大きさとすることができる。ある実施形態では、肥料顆粒は実質的に球状である。肥料顆粒は、1.0〜4.0ミリメートル(mm)の平均粒径を有する。この範囲内で平均粒径は1.5mm以上、または2.0mm以上であってもよい。同様に、この範囲内で平均粒径は3.5mm以下、または3.0mm以下であってもよい。ある実施形態では、少なくとも90重量%の肥料顆粒が2.0〜4.0mmの粒径を有する。粒径は、肥料粒径を決定するために最も一般的で国際的に認められている方法である、国際肥料開発センター(IFDC)によって発表された「Size Analysis−Sieve Method」IFDC S−107に従って決定される。
【0020】
ある実施形態では、肥料顆粒上のコーティングは少なくとも3つの成分、すなわちポリ(乳酸)と、ポリ(ブチレンサクシネート)、セルローストリアセテート、またはこれらの組み合わせである第2のポリマーと、シーラントとを含む。例えば、コーティングは、ポリ(乳酸)と、ポリ(ブチレンサクシネート)と、シーラントとを含む。あるいは、コーティングは、ポリ(乳酸)と、セルローストリアセテートと、シーラントとを含む。これらの実施形態では、コーティング中にリグニンは存在しない。
【0021】
ポリ(乳酸)は、50,000〜250,000g/molの重量平均分子量(M
w)を有していてもよい。本明細書において、PLA(高)とは、150000〜210000g/mol、特には175000〜190000g/molのM
wを有するポリ(乳酸)のことをいう場合がある。PLA(低)は、30000〜70000g/mol、特には40000〜65000g/molのM
wを有するポリ(乳酸)のことをいう。
【0022】
リサイクルされたポリ(乳酸)は、30,000〜250,000g/mol、より詳しくは100,000〜200,000g/molの重量平均分子量(M
w)を有し得る。
【0023】
ポリ(ブチレンアジペート−co−テレフタレート)(Ecoflex)は、30,000〜120,000g/mol、より詳しくは50,000〜100000g/molの重量平均分子量(M
w)を有し得る。
【0024】
セルロースアセテートは、25,000〜120,000g/mol、より詳しくは35000〜70000g/molの重量平均分子量(M
w)を有し得る。
【0025】
ポリ(ブチレンサクシネート)は、70,000〜160,000g/molのM
wを有し得る。本明細書において、PBS(高)とは、100,000〜150000g/mol、特には120000〜140000g/molのM
wを有するポリ(ブチレンサクシネート)のことをいう場合がある。PBS(中)は、75000〜125000g/mol、特には90000〜110000g/molのM
wを有するポリ(ブチレンサクシネート)のことをいう。
【0026】
セルローストリアセテートは、100,000〜350,000g/mol、特には12,5000〜300,000g/mol、より詳しくは200,000〜275,000g/molのM
wを有し得る。ポリ(乳酸)対第2のポリマーの重量比は、10:1〜1:10、例えば5:1〜1:5、3:1〜1:3、または2:1〜1:2とすることができる。
【0027】
シーラントは、輸送時及び貯蔵時に顆粒を摩耗や湿気から更に保護するものであり、これにはワックスが含まれる。ワックスは110〜200°F(43〜95℃)で液体である。ワックスの例としては、パラフィンワックス(主に非分岐のアルカンからなり、典型的には118〜158°F(48〜70℃)の融点を有する、固い、結晶性の、脆いワックス、及びマイクロクリスタリンワックス(主に分岐のアルカンからなり、典型的には129〜203°F(54〜95℃)の融点を有する、柔らかい、アモルファス状の、展性があるワックス、及び高精製パラフィンワックス)などの天然石油ワックスを含むワックスが挙げられる。例えば10〜18個の炭素原子の重合度を有するポリエチレンワックスなどの合成ワックスを使用することもできる。市販の典型的なワックスとしては、石油ワックスであるChevron Phillips Chemical (CP−Chem)からのC30+、International Group, Incからの7089A、R−4408、及びR−3053Aが挙げられる。ワックスは、被覆肥料の総重量基準で0.1〜3重量%、0.2〜2重量%、または0.5〜1.8重量%のワックスとするのに有効な量でコーティング中に存在させることができる。
【0028】
したがって、コーティングは例えば0.1〜5.7重量%などの0より多いポリ(乳酸)と、0.1〜5.7重量%の第2のポリマーと、0.1〜3重量%のシーラントとを含んでいてもよい。別の実施形態では、コーティングは、0.5〜4.8重量%のポリ(乳酸)と、0.5〜4.8重量%の第2のポリマーと、0.2〜2重量%のシーラントとを含んでいてもよい。
【0029】
肥料顆粒上に被覆する場合、コーティング(ポリ(乳酸)と第2のポリマーとシーラントとを含む)の量は、被覆肥料の総重量基準で6重量%以下、例えば0.1〜6重量%、0.5〜5重量%、2〜5重量%、または3〜5重量%である。
【0030】
コーティングの成分は1層より多い層に存在する。例えば、ある実施形態では、被覆肥料は、肥料顆粒の上に配置された第1の層であってポリ(乳酸)及び第2のポリマーを含む第1の層と、第1の層の上に配置された第2の層であってシーラントを含む第2の層とを含む。別の実施形態では、被覆肥料は3つの層を含み、第1の層は肥料顆粒の上に配置され、第2の層は第1の層の上に配置され、第3の層は第2の層の上に配置される。第1の層はポリ(乳酸)または第2のポリマーを含んでいてもよい。第1の層中の材料が第2の層中の材料と同じでないことを条件として、第2の層もポリ(乳酸)または第2のポリマーを含んでいてもよい。第3の層はシーラントを含んでいてもよい。
【0031】
別の実施形態では、コーティングは、リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせを含む第1のポリマーと;ポリ(乳酸)、ポリ(ブチレンサクシネート)、セルローストリアセテート、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレートアジペート)、セルロースアセテート、または前述の少なくとも1種を含む組み合わせであり得る第2のポリマーと;を含む。
【0032】
リグニンは、最も一般的には木材由来である芳香族アルコールのポリマーである。リグニンはクラフト法によって得ることができる。典型的なリグニンとしては、Indulin
* ATまたはProtobind
* 1000の名称で販売されているクラフトリグニンが挙げられる。
【0033】
酢酸デンプンは、20〜70%のアセチル価を有する、1〜3の置換度(DS)までアセチル化されたデンプンである。本明細書において、「アセチル価」とは、酢酸デンプンの単位基準当たりの酢酸の重量パーセント(重量%)のことをいう。例えば、約62.5のアセチル価は3.0のDSに相当する。
【0034】
第2のポリマーとしては、前述したようなポリ(乳酸)、ポリ(ブチレンサクシネート)、及びセルローストリアセテートだけでなく、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレートアジペート)、及びセルロースアセテートも挙げられる。前述のポリマーは8,000〜500,000g/molの範囲でMwを有していてもよい。
【0035】
リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせ対第2のポリマーの重量比は、1:10〜10:1、5:1〜1:5、3:1〜1:3、または2:1〜1:2とすることができる。リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせは、被覆肥料の総重量基準で0.1重量%〜6重量%、0.1重量%〜5重量%、0.1重量%〜3.5重量%、0.2重量%〜3重量%、または0.5重量%〜3重量%の量で存在する。
【0036】
任意選択的には、リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせと第2のポリマーとを含むコーティングは、上述したようなシーラントも更に含む。シーラントは、被覆肥料の総重量基準で0重量%〜5重量%、0重量%〜3重量%、0.1重量%〜3重量%、0.2重量%〜2重量%、0.1重量%〜1重量%、または0.5重量%〜1.8重量%の量で存在してもよい。
【0037】
したがって、コーティングは、例えば0.1〜5重量%などの0より多いリグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせと、0.1〜6重量%の第2のポリマーと、0〜5重量%のシーラントとを含む。別の実施形態では、コーティングは0.1〜6重量%のリグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせと、0.1〜5重量%の第2のポリマーと、0〜3重量%のシーラントとを含んでいてもよい。好ましくは、コーティングは0.2〜3重量%のリグニンまたは酢酸デンプンと、0.2〜3重量%の第2のポリマーと、0〜1重量%のシーラントとを含む。
【0038】
肥料顆粒上に被覆する場合、コーティング(リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせと、第2のポリマーと、任意選択的なシーラント)の量は、被覆肥料の総重量基準で0.5重量%〜10重量%、1重量%〜9重量%、2重量%〜8重量%、2重量%〜7重量%、2重量%〜6重量%、または2重量%〜5重量%である。
【0039】
コーティングの成分は1層より多い層の中に存在していてもよい。例えば、ある実施形態では、被覆肥料は、肥料顆粒の上に配置された第1の層であってリグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせを含む第1の層と、第1の層の上に配置された第2の層であって第2のポリマーを含む第2の層とを含む。任意選択的には、第2の層の上に配置された第3の層の中にシーラントを存在させてもよい。
【0040】
上述の実施形態のいずれにおいても、コーティングは、被覆肥料の望ましい特性に大きく悪影響を及ぼさない補助剤であることを条件として、例えば着色剤、接着促進剤、または界面活性剤などの当該技術分野で公知の補助剤を更に含むことができる。例えば、界面活性剤としては、1級または2級の(C
16~30)アルキルアミン、1級(C
16~30)アルキルアミンの(C
16~30)脂肪酸アミド、または(C
16~30)アルカノールの(C
16~30)脂肪酸エステルを挙げることができる。上述の界面活性剤の例としては、セチルアミン、ステアリルアミン、アラキジルアミン、ベヘニルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、ジアラキジルアミン、ジベヘニルアミン、ジ(水素化牛脂)アミン、セチルステアリン酸アミド、ステアリルステアリン酸アミド、ステアリルエルカ酸アミド、エルシルエルカ酸アミド、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、及びモンタンワックスが挙げられる。
【0041】
更に、上述の実施形態のいずれにおいても、コーティングまたは個々の層は、顆粒または他の層の上に直に配置される。すなわち、記載されているもの以外に介在する層は存在しない。コーティング及び層は、連続であっても不連続であってもよい。被覆肥料の持続的に放出する特徴を最大限に利用するために、コーティングは肥料顆粒の表面積の90〜100%を被覆する。1層より多い層を有するコーティングについては、各層は肥料顆粒または下層の表面積の90〜100%を被覆する。
【0042】
コーティングの厚さは、望ましい徐放性及び保護特性が得られるように調整される。ある実施形態では、コーティングの総厚みは20〜70μmである。この範囲内において、厚さは25μm以上、または30μm以上であってもよい。同様に、この範囲内において、厚さは65μm以下、または60μm以下であってもよい。
【0043】
被覆肥料は様々な方法によって製造することができる。肥料顆粒はスプレーコーティング(例えばトップ、ボトム、またはサイドスプレーコーティング)、ドラムコーティング、パンコーティング、流動層コーティング、連続注入コーティング、または当業者に公知の任意の他の方法によって被覆することができる。この被覆は、バッチ処理で行ってもよいし、連続処理で行ってもよい。顆粒は、1回のコーティング塗布で単一の層で被覆してもよいし、2、3、4、5、またはそれ以上の層などの、同じコーティング材料の複数の層で被覆してもよい。芯材を被覆する際、例えばシーラントなどのコーティング組成物は、コーティング材料が芯材に塗布される際に液体状態であるように、その融点温度より高い温度まで加熱されてもよい。芯材への液体コーティング材料の塗布の後、被覆された芯材は、コーティング材料が固化して芯材を取り囲む固体層を形成するように冷却されてもよい。この工程を1回以上繰り返して、芯材を取り囲む同じまたは異なるコーティング材料の複数の層を得てもよい。あるいは、コーティング材料を溶媒に溶解または懸濁させ、顆粒に塗布し、溶媒を蒸発させてもよい。この工程を1回以上繰り返して、芯材を取り囲む同じまたは異なるコーティング材料の複数の層を得てもよい。
【0044】
ある特定の実施形態では、被覆肥料の製造方法は、ポリ(乳酸)と、ポリ(ブチレンサクシネート)、セルローストリアセテート、またはこれらの組み合わせから選択される第2のポリマーとを溶媒に溶解させてポリマー溶液を得ること;複数の肥料顆粒の上にポリマー溶液を噴霧して第1の層を形成すること;及び第1の層上をシーラントで被覆して第1の層の上に付着した第2の層を得ることを含む。シーラントは、例えば溶融コーティング法によって被覆することができる。ポリ(乳酸)及び第2のポリマーを溶解させるために使用する溶媒はジクロロメタンであってもよい。ポリマー溶液を形成し易くするために、溶液の固体含量が組成物の5〜15重量%となり得る高温でポリマーと溶媒とを混合してもよい。
【0045】
コーティングがリグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせを含む場合、被覆肥料を形成するために、逐次コーティング法または同時コーティング法を使用することができる。逐次コーティング法の例としては、第1の溶媒にリグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせを溶解させて第1の溶液を得ることと、複数の肥料顆粒上に第1の溶液を例えば噴霧するなどで付着させて第1のリグニンまたは酢酸デンプンの層を形成することと、第2の溶媒に第2のポリマーを溶解させてポリマー溶液を得ることと、第1のリグニンまたは酢酸デンプンの層の上に第2のポリマー溶液を例えば噴霧するなどで付着させて第1の層の上に付着した第2のポリマー層を形成することとを含む。任意選択的には、少なくとも2種の異なる第2のポリマーを第2の溶液に存在させることができる。別の実施形態では、追加的な第2のポリマー(第2の層の第2のポリマー(類)とは異なる)を第3の溶媒に溶解させ、第2の層の上に例えば噴霧するなどで付着させて第2の層の上に付着した第3の層を形成することができる。第2の層または第3の層は、存在する場合、任意選択的にはシーラントで更に被覆して、第2の層または第3の層の上に付着したシーラント層を設けてもよい。
【0046】
リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせを溶解するために使用される溶媒は、70:30〜90:10、例えば80:20〜90:10の体積比で、アセトンと水とを含有していてもよい。第2のポリマーがセルローストリアセテート、ポリ(カプロラクトン)、またはこれらの組み合わせを含む場合、ポリマーを溶解するために使用される溶媒は、アセトン、または70:30〜90:10の体積比のアセトンと水との組み合わせを含有していてもよい。第2のポリマーがポリ(乳酸)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンテレフタレートアジペート)、セルロースアセテート、またはこれらの組み合わせを含む場合、ポリマーを溶解するために使用される溶媒は、ジクロロメタンを含有していてもよい。リグニン/酢酸デンプンの第1の溶液またはポリマー溶液を形成し易くするために、ポリマーと溶媒とを高温で混合してもよい。リグニン/酢酸デンプン溶液とポリマー溶液の固体含量は組成物の5〜15重量%であってもよい。
【0047】
同時コーティング法は、リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせと、第2のポリマーとを溶媒に溶解させてコーティング組成物を得ることを含む。したがって、第2のポリマーは、リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせと同じ溶媒に可溶であるように選択され、例えばセルローストリアセテート、ポリ(カプロラクトン)、またはこれらの組み合わせである。複数の肥料顆粒の上にコーティング組成物を例えば噴霧することによりコーティング組成物が付着し、第1の層が得られる。方法は、任意選択的にはシーラントで被覆することで第2の層を得ることを更に含んでいてもよい。シーラントは、溶融コーティング法によって被覆することができる。
【0048】
使用においては、被覆肥料は、植物または種子の場所、特には施肥されるべき植物または種子の土壌に撒かれる。
【0049】
肥料コーティングは生分解性であり、土壌中に有害残留物を残さない。このようなコーティングで被覆された肥料は、更には持続的な養分放出速度を有する。加えて、本明細書に記載の顆粒の被覆方法によって、均一な薄いコーティングを有する被覆肥料を製造することができ、それによって被覆肥料が高い窒素含量を含むことが可能になる。例えば、肥料が尿素の場合、被覆肥料の窒素含量は42重量%〜45重量%である。リグニンを含む肥料コーティングはNOxの生成を抑制することができる。
【0050】
徐放特性を有する被覆肥料は、以降の非限定的な実施例によって詳しく説明される。
【0051】
本明細書に開示の方法は、いくつかの態様では工業スケールで行うことができる。
【0052】
態様
本明細書に開示されるのは、少なくとも次の態様である:
【0053】
態様1:肥料顆粒と、前記肥料顆粒の表面上に配置されたコーティングとを含む被覆肥料であって、前記コーティングが、
ポリ(乳酸);
ポリ(ブチレンサクシネート)、セルローストリアセテート、または前述の少なくとも1種を含む組み合わせを含む第2のポリマー;及び
シーラント;
を含む、被覆肥料。
【0054】
態様2:前記シーラントがワックスを含む、請求項1に記載の被覆肥料。
【0055】
態様3:前記第2のポリマーがポリ(ブチレンサクシネート)を含む、請求項1または2に記載の被覆肥料。
【0056】
態様4:前記第2のポリマーがセルローストリアセテートを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0057】
態様5:前記ポリ(乳酸)対前記第2のポリマーの重量比が10:1〜1:10である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0058】
態様6:前記コーティングの量が、前記被覆肥料の総重量基準で0.5重量%〜6重量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0059】
態様7:前記被覆肥料の窒素含量が、前記被覆肥料の総重量基準で42重量%〜45重量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0060】
態様8:前記コーティングが、前記ポリ(乳酸)と、前記第2のポリマーと、前記シーラントとの組み合わせを単一の層の中に含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0061】
態様9:前記コーティングが、
前記肥料顆粒の上に配置された第1の層であって、前記ポリ(乳酸)と前記第2のポリマーとを含む第1の層;及び
前記第1の層の上に配置された第2の層であって、前記シーラントを含む第2の層;
を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0062】
態様10:前記コーティングが、
前記肥料顆粒の上に配置された第1の層であって、前記ポリ(乳酸)または前記第2のポリマーを含む第1の層;
前記第1の層の上に配置された第2の層であって、前記第1の層が第2の層と同じでないことを条件として前記第2のポリマーまたは前記ポリ(乳酸)を含む第2の層;及び
前記第2の層の上に配置された第3の層であって、前記シーラントを含む第3の層;
を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0063】
態様11:前記コーティングが20〜70μmの総厚みを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0064】
態様12:前記ポリ(乳酸)と、前記第2のポリマーと、前記シーラントとを混ぜ合わせてコーティング組成物を得ること;及び
複数の肥料顆粒上の層として前記コーティング組成物を付着させて前記被覆肥料を得ること;
を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の被覆肥料の製造方法。
【0065】
態様13:前記付着させることが前記コーティング組成物を噴霧することを含む、請求項12に記載の方法。
【0066】
態様14:前記ポリ(乳酸)と前記第2のポリマーとを溶媒に溶解させて溶液を得ること;
前記溶液を肥料顆粒上に付着させて第1の層を形成すること;及び
前記第1の層で被覆された肥料顆粒の上にシーラントを付着させて第2の層を形成すること;
を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の被覆肥料の製造方法。
【0067】
態様15:肥料顆粒と、前記肥料顆粒の上に配置されたコーティングとを含む被覆肥料であって、前記コーティングが、リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせ;及び、
ポリ(乳酸)、ポリ(ブチレンサクシネート)、セルローストリアセテート、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレートアジペート)、セルロースアセテート、または前述の少なくとも1種を含む組み合わせを含む第2のポリマー;
を含む被覆肥料。
【0068】
態様16:前記コーティングがシーラントを更に含む、請求項15に記載の被覆肥料。
【0069】
態様17:前記シーラントがワックスを含む、請求項16に記載の被覆肥料。
【0070】
態様18:前記コーティングの量が、前記被覆肥料の総重量基準で0.5重量%〜10重量%である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0071】
態様19:前記リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせ対前記第2のポリマーの重量比が1:10〜10:1である、請求項15〜18のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0072】
態様20:前記第2のポリマーが、ポリ(乳酸)とポリ(ブチレンサクシネート)との組み合わせを含む、請求項15〜19のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0073】
態様21:前記コーティングが、
前記肥料顆粒の上に配置された第1の層であって前記リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせを含む第1の層;
前記第1の層の上に配置された第2の層であって、1種以上の第2のポリマーを含む第2の層;を含み、
任意選択的には第3の層であって、追加的な第2のポリマーを含む第3の層;を含む、
請求項15〜20のいずれか1項に記載の被覆肥料。
【0074】
態様22:前記コーティングが、前記第2の層または第3の層の上に配置されたシーラント層であって、シーラントを含むシーラント層を更に含む、請求項21に記載の被覆肥料。
【0075】
態様23:前記第2の層がポリ(ブチレンサクシネート)を含み、前記第3の層が存在してポリ(乳酸)を含む、請求項21に記載の被覆肥料。
【0076】
態様24:前記リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせを第1の溶媒に溶解させて第1の溶液を得ること;複数の肥料顆粒上に前記第1の溶液を付着させて第1の層を形成すること;前記1種以上の第2のポリマーを第2の溶媒に溶解させてポリマー溶液を得ること;前記第1の層で被覆された肥料顆粒上に前記ポリマー溶液を付着させて第2の層を得ること;任意選択的に追加的な第2のポリマーを第3の溶媒に溶解させて追加的なポリマー溶液を得ること;及び前記第2の層で被覆された肥料顆粒上に前記追加的なポリマー溶液を付着させて第3の層を得ること;を含む、請求項21に記載の被覆肥料の製造方法。
【0077】
態様25:前記第2の層で被覆された肥料顆粒または第3の層で被覆された肥料顆粒の上にシーラントを付着させることを更に含む、請求項24に記載の方法。
【0078】
態様26:前記付着させることが、前記コーティング組成物を噴霧することを含む、請求項24に記載の方法。
【0079】
態様27:前記第2のポリマーがポリ(乳酸)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンテレフタレートアジペート)、セルロースアセテート、またはこれらの組み合わせを含み、前記第2の溶媒がジクロロメタンを含む、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【0080】
態様28:前記リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせを第1の溶媒に溶解させて第1の溶液を得ること;複数の肥料顆粒上に前記第1の溶液を付着させて第1の層を形成すること;少なくとも2種類の第2のポリマーを溶媒に溶解させて第2の溶液を得ること;及び前記第1の層で被覆された肥料顆粒上に前記第2の溶液を付着させて前記被覆肥料を得ること;を含む、請求項21に記載の被覆肥料の製造方法。
【0081】
態様29:前記被覆肥料の上にシーラントを付着させることを更に含む、請求項28に記載の方法。
【0082】
態様30:前記少なくとも2種類の第2のポリマーが、ポリ(乳酸)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンテレフタレートアジペート)、セルロースアセテートのうちの2種を含み、前記第2の溶媒がジクロロメタンを含む、請求項28または29に記載の方法。
【0083】
態様31:前記方法が、前記リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせと、セルローストリアセテート、ポリ(カプロラクトン)、またはこれらの組み合わせとを溶媒中で接触させてコーティング組成物を得ること;複数の肥料顆粒に前記コーティング組成物を付着させて前記被覆肥料を得ること;を含む、請求項21に記載の被覆肥料の製造方法。
【0084】
態様32:前記被覆肥料の上にシーラントを付着させることを更に含む、請求項31に記載の方法。
【0085】
実施例
実施例で使用された材料は表1に記載されている。
表1.
【0086】
一般的手順
コーティング配合物の調製。リグニン溶液は、80:20〜90:10の比率のアセトン−水溶媒混合物を使用して、室温で12時間撹拌して製造した。CA溶液は、アセトン溶媒を使用して、完全な溶解が認められるまで60℃で、100RPMで60分間、穏やかに撹拌することで製造した。PBS(40℃で)、PLA(室温で)、CTA(40℃で)、PBAT(40℃で)、及びこれらそれぞれのブレンド溶液(40℃で)は、ジクロロメタン溶媒を使用して、完全な溶解が認められるまで100回転毎分(rpm)で60分間、穏やかに撹拌することで製造した。
【0087】
コーティング手順。CAについてのドリップコーティングの実験の場合を除き、空気で微粒化した噴霧液を用いて、回転ドラムの中に入れられた尿素顆粒上をポリマーとリグニンの溶液の両方で被覆した。リグニン、ポリマー、及びワックスがすべて使用される実験では、連続コーティング処理に関しては最初にリグニンで被覆し、次いでポリマーまたはポリマーブレンド物で被覆し、最後にワックスの溶融コーティングを行った。同時処理に関しては、リグニンと、ポリマーもしくはポリマーブレンド物とのブレンド物で最初に被覆し、次いでワックスの溶融コーティングを行った。
【0088】
加速養分放出試験。この試験は、所定の時間間隔での養分の放出プロファイルを再現するために用いられた。試料を取り出して分析する時間の間隔は2時間、4時間、及び24時間であった。5%の希釈クエン酸水溶液を製品顆粒の層を横切るように再循環させ、濾液を窒素含量について分析した。クエン酸は、製品が通常の散布時に曝されるであろう土壌の条件を模擬的に再現する。
【0089】
3日間、7日間、及び14日間オーブン試験。容器に100gの試料と500mLの水とを入れた。その後容器を密閉し、100°F(38℃)のオーブンの中に置いた。窒素放出量を3日後、7日後、または14日後の一定期間毎に測定した。
【0090】
比較例A。ドリップコーティング
コーティング配合物を回転ドラム中で尿素顆粒に滴下した。ドラム中で送風機を使用して溶媒蒸気を取り除いた。CAとリグニンの両方を含むコーティングについては、最初に尿素をリグニンで被覆し、次いでCAで被覆した。ワックスを溶融し、溶融したワックスをポリマー(及び/またはリグニン)で被覆された尿素が入った回転ドラムの中に流し込むことによって、最終コーティングとしてワックスシーラントの付加も行った。これらの実験では、リグニンの割合は0%から3%まで変更され、CAは0〜6%の間で変更され、シーラントは0〜1.5%の間で変更された。
【0091】
ドリップ法で被覆された試料はいずれも均一なコーティングにならなかった。追加的な測定は行わなかった。
図1は、ドリップコーティングで2%のリグニンと2%のCAと0.5%のIGI−7089Aで被覆した試料の代表的な例を示している。明暗のコントラストなどのコーティング欠陥が観察された。これらの欠陥は、コーティングのむらを示唆している。顆粒の凝集も観察された。
【0092】
比較例1〜25及び実施例26。リグニンあり/なしのセルロースアセテート
コーティング配合物を尿素顆粒上に噴霧した。総コーティング量は5.5〜7.5重量%の間で変更された。ワックスは0.5〜1.5重量%の間で変更された。リグニンは0〜3重量%の間で変更され、CAは3〜6重量%で変更された。コーティング処方及び加速養分放出試験の結果は表2に示されている。実施例1の被覆試料は
図2にも示されている。大きなコーティング欠陥は観察されなかった。
表2.
***水の中に入れると、光学顕微鏡で試料の流出が観察された。そのため、試料の試験は行わなかった。
【0093】
表2中のデータから分かるように、窒素放出を遅らせるには、リグニン、セルロースアセテート、及びワックスシーラントの組み合わせ(実施例26)が最も効果的であった。
【0094】
比較例27〜36。リグニンあり/なしのセルローストリアセテート
粒状尿素を様々なセルローストリアセテートコーティング系で被覆した。これらの実験では、リグニンの割合は0〜3重量%の間で変更され、CTAまたはCTA−PBSまたはCTA−PLAは3重量%で一定とされ、シーラントは1.5重量%で一定とされた。存在させる場合にはリグニン−1を使用した。コーティング処方及び窒素放出試験の結果は表3に示されている。7日間の放出の結果は
図3及び
図4にもグラフで示されている。
表3.
* 「L」はリグニンを指し、「W」はワックスを指す。
【0095】
図3は、7.5重量%のコーティング量では、7日間のオーブン試験に基づいた尿素の保持において、リグニン/CTA/ワックスコーティングの性能がリグニン/PBS/CTA/ワックスに対して劣っていたことを示している。
図4は、4.5重量%のコーティング量では、7日間のオーブン試験に基づいた尿素の保持において、PLA/CTAブレンド物の性能がPBS/CTAブレンド物よりも優れていたことを示している。データは、放出能がリグニンプレコートの付加で向上したことも示唆している。
【0096】
比較例37〜40。リグニンあり/なしのPBAT
粒状尿素を、リグニンありまたはなしで、様々なPBAT系で被覆した。存在させる場合にはリグニン−1を使用した。これらの実施例では、リグニンの割合は0〜3重量%の間で変更され、PBATは3〜5重量%の間で変更され、シーラントは1.5重量%で一定に保たれた。総コーティング量は6.5〜7.5重量%の間で変更された。コーティング処方及び窒素放出試験の結果は表4に示されている。
表4.
* 「L」はリグニンを指し、「P」はポリマーを指し、「W」はワックスを指す。
【0097】
リグニン及びPBATのスプレーコーティングとそれに続くワックスコーティングは、4時間の加速試験データに基づいて良好な結果を示した。しかし、100°F(38℃)での3日目と7日目の放出試験は望ましい性能に満たなかった。
【0098】
実施例41〜81。リグニンあり/なしのPBS
これらの実施例では、総コーティング量は2.2〜7.5重量%の間で変更された。リグニン(リグニン−1、L)は0〜3重量%の間で変更され、PBS(P)は1.2〜4重量%の間で変更され、シーラント(W)は0.5〜1.5重量%の間で変更された。コーティング処方及び窒素放出試験の結果は表5に示されている。
表5.
* 「L」はリグニンを指し、「P」は「ポリマー」を指し、「W」はワックスを指す。
【0099】
試料は、オーブン試験結果の3日目の放出に基づいて次の3つの区分、すなわち、実施例41〜50(30%未満の放出)、実施例51〜57(30%〜50%の放出)、及び実施例58〜62(50%超の放出)に分けることができる。結果は
図5にもグラフで示されている。24時間加速放出試験と7日間オーブン試験の両方でいくつかの良好な結果が存在した。
【0100】
実施例82〜99。リグニンあり/なしのPLA
これらの実施例では、総コーティング量は6.5〜8重量%の間で変更された。リグニン(リグニン−1、L)は0〜3重量%の間で変更され、PLA(P)は2〜5重量%の間で変更され、シーラント(W)は1.5〜2重量%の間で変更された。コーティング処方及び窒素放出試験の結果は6に示されている。結果は
図6にもグラフで示されている。
表6.
* 「L」はリグニンを指し、「P」は「ポリマー」を指し、「W」はワックスを指す。
【0101】
24時間加速放出試験の4時間目の測定及びオーブン試験の3日目の測定では、いくつかの良好な結果(約50%の放出)が得られた。3日目の放出試験結果に基づいて、データは次の3つの区分、すなわち、実施例82〜84(55%未満の放出)、実施例85〜90(55%〜70%の放出)、及び実施例91〜99(70%超の放出)に分けることができる。データは、100°F(38℃)での7日放出試験の結果が望ましい速度よりも早いことを示している。
【0102】
実施例100〜113。リグニンあり/なしのPBS−PLAブレンド物
これらの実施例では、総コーティング量は3.5〜7.5重量%の間で変更された。リグニン(リグニン−1、L)は0〜3重量%の間で変更され、PLAは1〜4重量%の間で変更され、PBSは1〜2重量%の間で変更され、シーラント(W)は1.5〜2重量%の間で変更された。コーティング処方及び窒素放出試験の結果は表7に示されている。結果は
図7及び8にもグラフで示されている。
表7.
* 「L」はリグニンであり、「W」はワックスである。
7日目のオーブン試験測定に基づいて、試料は次のように5つの区分、すなわち、実施例100〜104(10%未満の放出)、実施例1−5〜113 2(10%〜20%の放出)、実施例114〜124(20%〜40%の放出)、実施例125〜131(40%〜60%の放出)、及び実施例132〜137(60%超の放出)に分けることができる。
【0103】
実施例138〜150。PLA/PBSブレンド物
追加的なPLA/PBSブレンド物を試験した。ポリマーは同時にコーティングした。処方及び結果は表8に示されている。7日目のオーブン試験の結果も
図9〜11にグラフで示されている。
表8.
** 「L」はリグニンを指し、「W」はワックスを指す。
【0104】
データは、PBS(高)とPLA(低)の組み合わせだけでなく、PBS(高)とPLA(高)のブレンド物も、肥料の養分放出に相乗効果を有していることを示唆している。例えば、3重量%の添加量では、PBS(高)単独は37.98%の7日目放出率を(実施例147)、PLA(低)単独は77.12%の7日目放出率を(実施例150)有していた。対照的に、PBS(高)とPLA(低)の1:1ブレンド物またはPBS(高)とPLA(低)の1:2ブレンド物を3重量%の添加量で使用した場合、7日目放出率はそれぞれ4.93%と11.63%に減少した(実施例148及び149)。
【0105】
実施例151〜155。ワックスあり/なしのリグニン
粒状尿素を、ワックスありまたはなしで、リグニンで被覆した。コーティング処方及び結果は表9に示されている。
表9.
* 比較例
表9に示されるように、ワックスありまたはなしでのリグニンは、4時間の加速養分放出試験で92.75%〜98.70%の放出を示した。対照的に、コーティングがリグニンに加えてPBSまたはPLAを含む場合には、4時間の加速結果はそれぞれ1.48%及び10.34%であった。この結果は、これらのコーティング量でリグニン単独では持続的な養分放出が得られないことを示唆している。
【0106】
実施例156〜175。逐次コーティングとブレンド(同時)コーティングの比較
これらの実施例では、総コーティング量は3.5〜7.5重量%の間で変更された。リグニン(リグニン−1)は、3重量%で一定に保たれる(実施例171〜175)か、コーティング中に存在しなかった(実施例156〜170)。PLAは1〜2重量%の間で変更され、PBSは1〜2重量%の間で変更され、シーラントは1.5重量%で一定に保たれた。粒状尿素はスプレーコーティングによって同時にまたは逐次的に被覆された。
【0107】
コーティング処方及び窒素放出試験の結果は表10に示されている。結果は
図12及び13にもグラフで示されている。この結果は、7日目の放出データに基づくと、ほとんどの場合で、ブレンド物で被覆した尿素が逐次的に被覆した尿素よりも良い性能を示すことを示唆している。14日目の放出データでは大きな差は見られなかった。
表10.
【0108】
実施例176〜193。リグニンありまたはなしでのリサイクルPLA/PBSブレンド物
これらの実施例では、Natureworksからの様々なリサイクルPLAのグレード、PLA Repro pkg、PLA Repro−box、PLA Repro−label、PLA 2500HP、及びPLA 3100HPを使用した。処方及び結果は表11に示されている。結果は
図14及び15にもグラフで示されている。
表11.
*「W」はワックスである
【0109】
結果は、リサイクルされたPLAも尿素用のコーティングに使用できることを示唆している。しかしながら、性能は新品のPLAを使用した系(表8参照)ほどには有利ではなかった。
【0110】
実施例194〜197。リサイクルPLA−CTA
粒状尿素を様々なリサイクルPLA−CTAのコーティング系で被覆した。コーティング処方及び窒素放出試験の結果は表12に示されている。7日目と14日目の放出結果は
図16及び17にもグラフで示されている。
表12.
【0111】
結果は、リサイクルPLA/CTAのブレンド物も尿素用のコーティングに使用できることを示唆している。しかしながら、4.5重量%だけでなく7.5重量%のコーティング量でも、7日目のオーブン試験に基づいた尿素の保持において、PLA/CTA(表3参照)ブレンド物のほうがリサイクルPLA/CTAのブレンド物よりも優れた性能を示した。
【0112】
文脈において別段の明確な指示がない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」には複数の指示対照が含まれる。「または」は「及び/または」を意味する。同じ要素または特性に関する全ての範囲の端点は包含され、独立して組み合わせることが可能である。本明細書において使用される語尾の「(s)」は、それが修飾する用語の単数形と複数形の両方を含めることが意図されており、それによりその用語の少なくとも1種が含められる(例えば「着色剤(類)(colorant(s))」には、少なくとも1種の着色剤が含まれる)。「任意選択的な」または「任意選択的には」は、引き続いて述べられる事象または状況が生じ得ることまたは生じ得ないこと、及びその記述に事象が生じる場合と生じない場合が含まれることを意味する。別段の規定がない限り、本明細書で使用されている技術的な用語及び化学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者に通常理解される意味と同じ意味を有する。
【0113】
本明細書において、「組み合わせ」には、ブレンド物、混合物、合金、反応生成物等が含まれる。化合物は、標準的な命名法を使用して記述される。例えば、任意の示されている基によって置換されていない任意の位置は、示されている結合または水素原子によってその価数が満たされていると理解される。2つの文字または記号の間にないダッシュ(「−」)は、置換基の結合位置を示すために使用される。例えば、−CHOはカルボニル基の炭素を介して結合する。
【0114】
本明細書で引用されているあらゆる参照文献は、それらの全体が参照により援用される。例示を目的として典型的な実施形態について説明してきたが、上述の記載は本明細書の範囲を限定するものとして見なすべきではない。したがって、当業者は、本明細書の趣旨及び範囲から逸脱することなしに、様々な修正、改変、及び選択肢を想到し得る。
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕肥料顆粒と、前記肥料顆粒の表面上に配置されたコーティングとを含む被覆肥料であって、前記コーティングが、
ポリ(乳酸);
ポリ(ブチレンサクシネート)、セルローストリアセテート、または前述の少なくとも1種を含む組み合わせを含む第2のポリマー;及び
シーラント;
を含む、被覆肥料。
〔2〕前記シーラントがワックスを含む、前記〔1〕に記載の被覆肥料。
〔3〕前記第2のポリマーがポリ(ブチレンサクシネート)を含む、前記〔1〕または〔2〕に記載の被覆肥料。
〔4〕前記第2のポリマーがセルローストリアセテートを含む、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔5〕前記ポリ(乳酸)対前記第2のポリマーの重量比が10:1〜1:10である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔6〕前記コーティングの量が、前記被覆肥料の総重量基準で0.5重量%〜6重量%である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔7〕前記被覆肥料の窒素含量が、前記被覆肥料の総重量基準で42重量%〜45重量%である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔8〕前記コーティングが、前記ポリ(乳酸)と、前記第2のポリマーと、前記シーラントとの組み合わせを単一の層の中に含む、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔9〕前記コーティングが、
前記肥料顆粒の上に配置された第1の層であって、前記ポリ(乳酸)と前記第2のポリマーとを含む第1の層;及び
前記第1の層の上に配置された第2の層であって、前記シーラントを含む第2の層;
を含む、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔10〕前記コーティングが、
前記肥料顆粒の上に配置された第1の層であって、前記ポリ(乳酸)または前記第2のポリマーを含む第1の層;
前記第1の層の上に配置された第2の層であって、前記第1の層が第2の層と同じでないことを条件として、前記第2のポリマーまたは前記ポリ(乳酸)を含む第2の層;及び 前記第2の層の上に配置された第3の層であって、前記シーラントを含む第3の層;
を含む、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔11〕前記コーティングが20〜70μmの総厚みを有する、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔12〕前記ポリ(乳酸)と、前記第2のポリマーと、前記シーラントとを混ぜ合わせてコーティング組成物を得ること;及び
複数の肥料顆粒上の層として前記コーティング組成物を付着させて前記被覆肥料を得ること;
を含む、前記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の被覆肥料の製造方法。
〔13〕前記付着させることが前記コーティング組成物を噴霧することを含む、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕前記ポリ(乳酸)と前記第2のポリマーとを溶媒に溶解させて溶液を得ること;
前記溶液を肥料顆粒上に付着させて第1の層を形成すること;及び
前記第1の層で被覆された肥料顆粒の上にシーラントを付着させて第2の層を形成すること;
を含む、前記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の被覆肥料の製造方法。
〔15〕肥料顆粒と、前記肥料顆粒の上に配置されたコーティングとを含む被覆肥料であって、前記コーティングが、
リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせ;及び、
ポリ(乳酸)、ポリ(ブチレンサクシネート)、セルローストリアセテート、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ブチレンテレフタレートアジペート)、セルロースアセテート、または前述の少なくとも1種を含む組み合わせを含む第2のポリマー;
を含む被覆肥料。
〔16〕前記コーティングがシーラントを更に含む、前記〔15〕に記載の被覆肥料。
〔17〕前記シーラントがワックスを含む、前記〔16〕に記載の被覆肥料。
〔18〕前記コーティングの量が、前記被覆肥料の総重量基準で0.5重量%〜10重量%である、前記〔15〕〜〔17〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔19〕前記リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせ対前記第2のポリマーの重量比が1:10〜10:1である、前記〔15〕〜〔18〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔20〕前記第2のポリマーが、ポリ(乳酸)とポリ(ブチレンサクシネート)との組み合わせを含む、前記〔15〕〜〔19〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔21〕前記コーティングが、
前記肥料顆粒の上に配置された第1の層であって前記リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせを含む第1の層;
前記第1の層の上に配置された第2の層であって、1種以上の第2のポリマーを含む第2の層;を含み、
任意選択的に第3の層であって、追加的な第2のポリマーを含む第3の層;を含む、
前記〔15〕〜〔20〕のいずれか1項に記載の被覆肥料。
〔22〕前記コーティングが、前記第2の層または第3の層の上に配置されたシーラント層であって、シーラントを含むシーラント層を更に含む、前記〔21〕に記載の被覆肥料。
〔23〕前記第2の層がポリ(ブチレンサクシネート)を含み、前記第3の層が存在してポリ(乳酸)を含む、前記〔21〕に記載の被覆肥料。
〔24〕前記リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせを第1の溶媒に溶解させて第1の溶液を得ること;
複数の肥料顆粒上に前記第1の溶液を付着させて第1の層を形成すること;
前記1種以上の第2のポリマーを第2の溶媒に溶解させてポリマー溶液を得ること;
前記第1の層で被覆された肥料顆粒上に前記ポリマー溶液を付着させて第2の層を得ること;を含み、任意選択的に、
追加的な第2のポリマーを第3の溶媒に溶解させて追加的なポリマー溶液を得ること;及び
前記第2の層で被覆された肥料顆粒上に前記追加的なポリマー溶液を付着させて第3の層を得ること;
を含む、前記〔21〕に記載の被覆肥料の製造方法。
〔25〕前記第2の層で被覆された肥料顆粒または前記第3の層で被覆された肥料顆粒の上にシーラントを付着させることを更に含む、前記〔24〕に記載の方法。
〔26〕前記付着させることが、前記コーティング組成物を噴霧することを含む、前記〔24〕に記載の方法。
〔27〕前記第2のポリマーがポリ(乳酸)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンテレフタレートアジペート)、セルロースアセテート、またはこれらの組み合わせを含み、前記第2の溶媒がジクロロメタンを含む、前記〔24〕〜〔26〕のいずれか1項に記載の方法。
〔28〕前記リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせを第1の溶媒に溶解させて第1の溶液を得ること;
複数の肥料顆粒上に前記第1の溶液を付着させて第1の層を形成すること;
少なくとも2種類の第2のポリマーを溶媒に溶解させて第2の溶液を得ること;及び
前記第1の層で被覆された肥料顆粒上に前記第2の溶液を付着させて前記被覆肥料を得ること;
を含む、前記〔21〕に記載の被覆肥料の製造方法。
〔29〕前記被覆肥料の上にシーラントを付着させることを更に含む、前記〔28〕に記載の方法。
〔30〕前記少なくとも2種類の第2のポリマーが、ポリ(乳酸)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンテレフタレートアジペート)、セルロースアセテートのうちの2種を含み、前記第2の溶媒がジクロロメタンを含む、前記〔28〕または〔29〕に記載の方法。
〔31〕前記リグニン、酢酸デンプン、またはこれらの組み合わせと、セルローストリアセテート、ポリ(カプロラクトン)、またはこれらの組み合わせとを溶媒中で接触させてコーティング組成物を得ること;
複数の肥料顆粒上に前記コーティング組成物を付着させて前記被覆肥料を得ること;
を含む、前記〔21〕に記載の被覆肥料の製造方法。
〔32〕前記被覆肥料の上にシーラントを付着させることを更に含む、前記〔31〕に記載の方法。