(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記当接部は、前記スルーホールへの圧入前の前記幅方向における前記プレスフィット部の寸法から前記スルーホールの孔径を差し引いた差分が、前記スルーホールへの圧入による前記プレスフィット部の前記スリット側への前記幅方向における最大変形量となる形状で形成されている請求項1記載のプレスフィット端子。
前記プレスフィット部は、前記スリットまでの最短距離が該スリットの前記長手方向における両端において最小となる輪郭で形成されている請求項1又は2記載のプレスフィット端子。
【背景技術】
【0002】
プレスフィット端子は、回路基板のスルーホールに圧入されて接触圧によりスルーホールとの電気的接続を果たす。即ち、プレスフィット端子と回路基板との電気接続には半田付けを必要としない。
【0003】
このため、プレスフィット端子は、端子を有するコネクタ等の部品を回路基板に実装する際の工程の簡素化や鉛フリー化、あるいは、端子間距離の短縮による回路基板上での端子配列の細密化に貢献するものとして、従来から注目されている。
【0004】
このような事情から、プレスフィット端子には、基板のスルーホールとの確実な電気的接続の実現と、スルーホールに圧入した際の回路基板による保持安定性とが重要視される。
【0005】
スルーホールに圧入したプレスフィット端子の保持安定性を改善する提案は、スルーホール内でのプレスフィット端子の変形を容易にするスリットをプレスフィット部に貫設したニードルアイ形状のプレスフィット端子にも存在する。
【0006】
この提案に係るニードルアイ形状のプレスフィット端子では、スルーホールに対するプレスフィット端子の圧入方向におけるスリットの中間位置を、スルーホールの孔径よりも幅広としたプレスフィット部の最も幅が広い位置よりも、プレスフィット端子の先端側にずらしたものがある。
【0007】
このプレスフィット端子では、プレスフィット部のスリットをプレスフィット端子の先端側にずらすことで、プレスフィット部の輪郭とスリットとの間の幅を、プレスフィット端子の先端側では狭くし基端側では広くしている。
【0008】
このため、プレスフィット部の輪郭とスリットとの間の幅を狭くしたプレスフィット端子の先端側では、プレスフィット部の剛性を弱めてスリット側への変形を容易にし、スルーホールに圧入する際のプレスフィット端子の低挿入力化を実現することができる。
【0009】
一方、プレスフィット部の輪郭とスリットとの間の幅が広いプレスフィット端子の基端側では、プレスフィット部の剛性を高めてスリット側に変形しにくくし、スルーホールに圧入する際にプレスフィット端子が座屈しにくいようにして、スルーホールに圧入したプレスフィット端子を安定して回路基板に保持させることができる(以上、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した提案のプレスフィット端子では、スリット側に変形しにくいプレスフィット端子の基端側の方が、スリット側に変形しやすいプレスフィット端子の先端側よりも、スルーホールに圧入された際のスルーホール内壁に対する接触圧が高い。このため、プレスフィット端子をスルーホールに圧入する際には、プレスフィット端子をスルーホールに基端側まで奥深く圧入するのが、両者の電気的接続を確実にする上で有利である。
【0012】
言い換えると、上述した提案のプレスフィット端子をスルーホールに圧入して両者の電気的接続が確実となる安定した保持状態を得るには、プレスフィット端子の基端側がスルーホール内壁に接触する十分な深さまで、プレスフィット端子をスルーホールに圧入する必要がある。
【0013】
したがって、上述した提案のプレスフィット端子では、スルーホールに対する圧入深さが足りないと、プレスフィット端子の基端側がスルーホール内壁に接触してプレスフィット端子がスルーホール内に安定して保持される状態に至らない可能性がある。プレスフィット端子がスルーホール内で安定して保持されないと、プレスフィット端子とスルーホールとの確実な電気的接続の実現が危うくなる。
【0014】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、回路基板のスルーホールに対する圧入深さがばらついても安定した保持状態を得てスルーホールとの確実な電気的接続を実現することができるプレスフィット端子及び回路基板のプレスフィット端子接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様によるプレスフィット端子は、
回路基板のスルーホールに圧入されて、該スルーホールへの圧入方向と直交する幅方向に変形するプレスフィット部と、
前記プレスフィット部に形成され、前記スルーホールへの圧入方向を長手方向
とするスリットと、
前記プレスフィット部のうち、前記長手方向における前記スリットの中心を通り前記幅方向に延在する仮想線上の部分に形成さ
れ、前記プレスフィット部の輪郭から前記スリットまでの最短距離が最大となり、前記プレスフィット部の前記スルーホールへの圧入により該スルーホールの内壁に当接する当接部
と、
を備える。
【0016】
本発明の第1の態様によるプレスフィット端子によれば、プレスフィット部のスリットが形成された部分は、スリットの存在によりスリットの幅方向中心側に変形可能となる。このため、回路基板のスルーホールにプレスフィット部を圧入する際には、プレスフィット部のスリットが形成されて変形可能となった部分がスルーホール内に位置する程度の深さまで、プレスフィット部がスルーホールに圧入されることになる。
【0017】
ところで、回路基板のスルーホールにプレスフィット部を圧入すると、圧入によりスルーホールの内壁からプレスフィット部に、圧入方向と直交する幅方向への応力が加わる。すると、スルーホールの内壁からプレスフィット部に加わる応力によって、プレスフィット部のスリットが形成された部分がスリットの幅方向中心側に変形する。
【0018】
このとき、回路基板のスルーホールに圧入したプレスフィット部にスルーホールの内壁から加わる応力は、プレスフィット部の剛性が最も低い部分に集中して作用する。
【0019】
ここで、プレスフィット部の剛性は、プレスフィット部の輪郭からスリットまでの最短距離が最大となる当接部において最も高くなる。したがって、スルーホールに圧入されたプレスフィット部は、スルーホールの内壁に当接する当接部の付近において、スリットの内側向きへの変形が最も起こりにくくなる。
【0020】
このため、スルーホールに圧入されたプレスフィット部は、幅方向に変形しても、当接部が幅方向において最も外側に張り出した形状を維持し易い構造となる。よって、スルーホールへの圧入によりプレスフィット部が変形しても、プレスフィット部の当接部はスルーホールの内壁に確実に当接する。
【0021】
そして、プレスフィット部のスリットが形成された部分がスルーホール内に位置する程度の深さでスルーホールにプレスフィット部を圧入すると、スリットの長手方向における中心を通る幅方向の仮想線上に位置するプレスフィット部の当接部は、圧入方向におけるスルーホールの中心の辺りで、スルーホールの内壁に当接することになる。
【0022】
このため、回路基板のスルーホールに対するプレスフィット部の圧入深さがばらついても、スルーホールの内壁に当接するプレスフィット部の当接部の位置は、圧入方向におけるスルーホールの中心を挟んだ浅めの位置か深めの位置に多少ずれる程度であり、スルーホールから外れた位置までプレスフィット部の当接部の位置がずれることはない。
【0023】
よって、回路基板のスルーホールに対するプレスフィット部の圧入深さがばらついても、スルーホールの内壁に対するプレスフィット部の当接が損なわれないようにし、プレスフィット部がスルーホール内で安定して保持される状態を得て、プレスフィット部とスルーホールとの確実な電気的接続を実現することができる。
【0024】
また、本発明の第2の態様によるプレスフィット端子は、本発明の第1の態様によるプレスフィット端子において、前記当接部は、前記スルーホールへの圧入前の前記幅方向における前記プレスフィット部の寸法から前記スルーホールの孔径を差し引いた差分が、前記スルーホールへの圧入による前記プレスフィット部の前記スリット側への前記幅方向における最大変形量となる形状で形成されている。
【0025】
本発明の第2の態様によるプレスフィット端子によれば、本発明の第1の態様によるプレスフィット端子において、プレスフィット部の当接部は、プレスフィット部のスルーホールへの圧入に伴いプレスフィット部がスリット側に変形するときの最大変形量となる寸法を、スルーホールの孔径に加えた寸法を、幅方向に有している。
【0026】
このため、スルーホールへの圧入によりプレスフィット部が変形しても、プレスフィット部の他の部分よりも幅方向において外側に張り出したプレスフィット部の当接部を、スルーホールの内壁に確実に当接させることができる。
【0027】
さらに、本発明の第3の態様によるプレスフィット端子は、本発明の第1又は第2の態様によるプレスフィット端子において、前記プレスフィット部は、前記スリットまでの最短距離が該スリットの前記長手方向における両端において最小となる輪郭で形成されている。
【0028】
本発明の第3の態様によるプレスフィット端子によれば、本発明の第1又は第2の態様によるプレスフィット端子において、回路基板のスルーホールに圧入したプレスフィット部の当接部にスルーホールの内壁から加わる応力は、プレスフィット部の剛性が最も低い部分に集中して作用する。
【0029】
ここで、プレスフィット部の剛性が最も低いのは、プレスフィット部の輪郭からスリットまでの最短距離が最小となるスリットの長手方向における両端の部分である。したがって、スルーホールに圧入されたプレスフィット部は、スルーホールの内壁に当接する当接部から圧入方向において最も離れた、スリットの長手方向における両端付近から、スリットの内側向きに変形し始める。
【0030】
このため、スルーホールに圧入されたプレスフィット部を、当接部が幅方向において最も外側に張り出した形状に変形し易い構造として、スルーホール内で変形したプレスフィット部の当接部をスルーホールの内壁に確実に当接させることができる。
【0031】
また、本発明の第4の態様によるプレスフィット端子は、本発明の第1、第2又は第3の態様によるプレスフィット端子において、前記プレスフィット部は、前記幅方向における寸法が前記当接部において最大となる輪郭で形成されている。
【0032】
本発明の第4の態様によるプレスフィット端子によれば、本発明の第1、第2又は第3の態様によるプレスフィット端子において、プレスフィット部が、幅方向における寸法が当接部において最大となる輪郭で形成されていることから、回路基板のスルーホールに圧入したプレスフィット部は、当接部において最も確実にスルーホールの内壁に当接することになる。
【0033】
このため、回路基板のスルーホールに対するプレスフィット部の圧入深さがばらついても、プレスフィット部がスルーホール内で安定して保持されて両者が電気的接続される構成を、確実に実現することができる。
【0034】
なお、本発明の
第1の態様によるプレスフィット端子
は、前記プレスフィット部の前記圧入方向において前記当接部に連なる部分に形成され、前記圧入方向において前記仮想線から遠ざかるにつれて前記幅方向における寸法が線形に減少す
る直線部をさらに備えており、前記当接部は、前記スリットから遠ざかる側に凸状の円弧の輪郭で形成されている。
【0035】
本発明の
第1の態様によるプレスフィット端子によれ
ば、圧入時にスルーホールの内壁に当接した状態で摺動するプレスフィット部の当接部は、円弧の輪郭で形成することでスルーホールの内壁との摺動抵抗が少ない構造とすることができる。
【0036】
一方、プレスフィット部の当接部に連な
る直線部は、当接部から圧入方向において遠ざかるほど剛性が低下する構造として、スルーホールに圧入されたときに当接部が幅方向において最も外側に張り出した形状に変形し易い構造のプレスフィット部を、容易に実現することができる。
【0037】
また、上記目的を達成するため、本発明の
第5の態様による回路基板のプレスフィット端子接続構造は、
スルーホールが形成された回路基板と、
前記スルーホールに圧入されたプレスフィット端子とを備え、
前記プレスフィット端子は、
前記スルーホールに圧入されて、該スルーホールへの圧入方向と直交する幅方向に変形したプレスフィット部と、
前記プレスフィット部に形成され、前記スルーホールへの圧入方向を長手方向
とするスリットと、
前記プレスフィット部のうち、前記長手方向における前記スリットの中心を通り前記幅方向に延在する仮想線上の部分に形成さ
れ、前記プレスフィット部の輪郭から前記スリットまでの最短距離が最大となり、前記スルーホールの内壁に当接した当接部
と、
前記プレスフィット部の前記圧入方向において前記当接部に連なる部分に形成され、前記圧入方向において前記仮想線から遠ざかるにつれて前記幅方向における寸法が線形に減少する直線部と、
を有しており、
前記当接部は、前記スリットから遠ざかる側に凸状の円弧の輪郭で形成されている。
【0038】
本発明の
第5の態様による回路基板のプレスフィット端子接続構造によれば、プレスフィット部のスリットが形成された部分は、スリットの存在によりスリットの幅方向中心側に変形可能となっている。このため、回路基板のスルーホールに圧入されたプレスフィット部の、プレスフィット部のスリットが形成されて変形した部分は、スルーホール内に位置している。
【0039】
ところで、回路基板のスルーホールに圧入したプレスフィット部には、スルーホールの内壁から圧入方向と直交する幅方向への応力が加わり、この応力により、プレスフィット部のスリットが形成された部分がスリットの幅方向中心側に変形している。このとき、プレスフィット部に加わる応力は、プレスフィット部の剛性が最も低い部分に集中して作用する。
【0040】
ここで、プレスフィット部の剛性は、プレスフィット部の輪郭からスリットまでの最短距離が最大となる当接部において最も高くなる。したがって、スルーホールに圧入されたプレスフィット部は、スルーホールの内壁に当接する当接部の付近において、スリットの内側向きへの変形が最も起こりにくくなる。
【0041】
このため、スルーホールに圧入されたプレスフィット部は、幅方向に変形しても、当接部が幅方向において最も外側に張り出した形状を維持し易い構造となる。よって、スルーホールに圧入して変形したプレスフィット部の当接部はスルーホールの内壁に確実に当接している。
【0042】
そして、プレスフィット部のスリットが形成された部分がスルーホール内に位置する程度の深さでスルーホールに圧入されたプレスフィット部の当接部は、スリットの長手方向における中心を通る幅方向の仮想線上に位置していることから、圧入方向におけるスルーホールの中心の辺りで、スルーホールの内壁に当接する。
【0043】
このため、回路基板のスルーホールに対するプレスフィット部の圧入深さがばらついても、スルーホールの内壁に当接しているプレスフィット部の当接部の位置は、圧入方向におけるスルーホールの中心を挟んだ浅めの位置か深めの位置に多少ずれる程度であり、スルーホールから外れた位置までプレスフィット部の当接部の位置がずれることはない。
【0044】
よって、回路基板のスルーホールに対するプレスフィット部の圧入深さがばらついても、スルーホールの内壁に対するプレスフィット部の当接が損なわれないようにし、プレスフィット部がスルーホール内で安定して保持される状態を得て、プレスフィット部とスルーホールとの確実な電気的接続を実現することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、回路基板のスルーホールに対する圧入深さがばらついても安定した保持状態を得てスルーホールとの確実な電気的接続を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【
図2】
図1のプレスフィット端子の使用状態例を示す斜視図である。
【
図3】(a)は比較例に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図、(b)は回路基板のスルーホールに圧入した(a)のプレスフィット端子のスルーホールに対する当接状態を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る回路基板のプレスフィット端子接続構造によりプレスフィット端子を回路基板のスルーホールに圧入したときのスルーホールに対する当接状態を概念的に示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る回路基板のプレスフィット端子接続構造により
図1のプレスフィット端子を回路基板のスルーホールに圧入したときのスルーホールに対するプレスフィット部の当接状態の例を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る回路基板のプレスフィット端子接続構造により
図1のプレスフィット端子を回路基板のスルーホールに圧入したときのスルーホールに対するプレスフィット部の当接状態の例を示す説明図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【
図11】本発明の他の実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【
図12】本発明の他の実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【
図13】本発明の他の実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る回路基板のプレスフィット端子接続構造によりプレスフィット端子のプレスフィット部を回路基板のスルーホールに圧入したしたときの圧入方向におけるスリットの両端とスルーホールとの位置関係の例を示す説明図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る回路基板のプレスフィット端子接続構造によりプレスフィット端子のプレスフィット部を回路基板のスルーホールに圧入したしたときの圧入方向におけるスリットの両端とスルーホールとの位置関係の例を示す説明図である。
【
図16】本発明の他の実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【
図17】本発明の他の実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【
図18】本発明の他の実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【
図19】本発明の実施形態に係るプレスフィット端子のプレスフィット部を回路基板のスルーホールに圧入する状態の例を示す説明図である。
【
図20】本発明の実施形態に係るプレスフィット端子のプレスフィット部を回路基板のスルーホールに圧入する状態の例を示す説明図である。
【
図21】参考例に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す説明図、
図2は
図1のプレスフィット端子の使用状態例を示す斜視図である。
【0048】
図1に示す本実施形態のプレスフィット端子1は、例えば
図2の説明図に示すように、コネクタ3のハウジング5の外側に導出された端子ピン7の先端部分に適用される。そして、プレスフィット端子1は、コネクタ3が実装される回路基板9のスルーホール11に圧入される。
【0049】
図1に示す本実施形態のプレスフィット端子1は、端子ピン7の先端付近に設けられており、回路基板9のスルーホール11に圧入されるプレスフィット部13を有している。プレスフィット部13は、
図1の紙面方向に沿って扁平な薄板状を呈している。プレスフィット部13のスルーホール11への圧入方向Xと直交する幅方向Yの中心には、圧入方向Xを長手方向とするスリット15が形成されている。
【0050】
スリット15は、幅方向Yに間隔をおいて平行に延在する2つの直線部17,17と、長手方向(圧入方向X)の両端において両直線部17,17を連絡する2つの半円部19,19(請求項中のスリットの長手方向における両端に相当)とにより、長孔状に形成されている。スリット15は、回路基板9のスルーホール11に圧入されたプレスフィット部13の幅方向Yへの変形を可能とするスペースを提供する。
【0051】
プレスフィット部13は、端子ピン7の各輪郭から幅方向Yの外方にそれぞれ張り出した膨出部21,21を有している。各膨出部21の輪郭は、2つの直線部23,23(請求項中の直線部に相当)と両直線部23,23間の当接部25とで構成されている。
【0052】
各直線部23,23は、スリット15の長手方向(圧入方向X)における中心を通り幅方向Yに延在する仮想線Z(請求項中の仮想線に相当)から圧入方向Xに遠ざかるにつれて、スリット15の直線部17から幅方向Yに遠ざかるように、スリット15に対して傾斜している。各当接部25は、スリット15の各直線部17から幅方向Yに遠ざかる側に凸状の円弧によって形成されている。各当接部25の曲率中心は、仮想線Z上に位置している。
【0053】
したがって、プレスフィット部13は、膨出部21の直線部23の部分において、仮想線Zから圧入方向Xに遠ざかるにつれて幅方向Yにおける寸法が線形に減少する形状を有している。かつ、プレスフィット部13は、圧入方向Xにおけるスリット15の両端側に位置する直線部23の部分において、スリット15までの最短距離B,Cが最小寸法(B=C)となる輪郭で形成されている。
【0054】
また、プレスフィット部13は、膨出部21の当接部25の部分において、幅方向Yにおける寸法が最大となる輪郭で形成されている。かつ、プレスフィット部13は、当接部25の部分において、スリット15までの最短距離Aが、回路基板9のスルーホール11の孔径(直径)よりも大きい最大寸法となる輪郭で形成されている。
【0055】
なお、プレスフィット部13の当接部25は、スルーホール11への圧入前の幅方向Yにおけるプレスフィット部13の寸法からスルーホール11の孔径を差し引いた差分が、スルーホール11への圧入によるプレスフィット部13のスリット15側への幅方向Yにおける最大変形量となる形状で形成されている。
【0056】
このように構成された本実施形態のプレスフィット端子1は、プレスフィット部13の幅方向Yにおける寸法が最大となる当接部25が、スルーホール11の孔径よりも大きいことから、プレスフィット部13を回路基板9のスルーホール11に挿入すると、プレスフィット部13がスリット15側に変形し、プレスフィット部13がスルーホール11に圧入された状態となる。
【0057】
ここで、
図3(a)の説明図に示す比較例のプレスフィット端子31のように、幅方向Yにおけるプレスフィット部33及びスリット35の寸法が圧入方向Xにおいて一定の形状であると、スルーホール11に圧入したプレスフィット部33は、
図3(b)の説明図に示すように、圧入方向Xにおける中心の部分が最もスリット35側に変形する。
【0058】
即ち、スルーホール11に圧入したプレスフィット部33は、スルーホール11の内壁から加わる応力によってスリット35側に変形する。このとき、プレスフィット部33は、プレスフィット部33の輪郭からスリット15までの最短距離が圧入方向Xにおけるスリット35の中心の部分よりも小さく剛性の低い両端付近の部分において、最もスリット35側に変形する。
【0059】
すると、プレスフィット部33が圧入方向Xにおいて直線状の輪郭を有していることから、圧入方向Xにおけるスリット35の両端付近の部分においてプレスフィット部33がスリット15側に変形すると、プレスフィット部33の圧入方向Xにおけるスリット35の中心の部分が、最もスリット35側に変形する。
【0060】
このため、比較例のプレスフィット端子31では、プレスフィット部33をスルーホール11に圧入すると、プレスフィット部33の圧入方向Xにおけるスリット35の両端付近の部分が、スルーホール11の内壁に当接し、プレスフィット部33の圧入方向Xにおけるスリット35の中心の部分が、スルーホール11の内壁から幅方向Yに離間する。
【0061】
したがって、比較例のプレスフィット端子31では、プレスフィット部33の圧入方向Xにおけるスリット35の両端付近の部分において、プレスフィット部33がスルーホール11内に保持されて、両者が電気的に接続されることになる。
【0062】
よって、比較例のプレスフィット端子31では、スルーホール11に対するプレスフィット部33の圧入深さに過不足が生じると、プレスフィット部33の圧入方向Xにおけるスリット35の両端付近の部分がスルーホール11の圧入方向Xにおける外側に配置されて、スルーホール11の内壁に当接しなくなる。
【0063】
すると、スルーホール11内でのプレスフィット部33の保持状態が不安定となり、プレスフィット部33とスルーホール11との電気的接続の確実性が低下してしまう。
【0064】
このため、本発明では、スルーホール11に圧入して変形する前のプレスフィット部を、圧入方向Xにおけるスリットの中心の部分において幅方向Yの寸法が最大となるように、幅方向Yの外側に膨出させる。
【0065】
そうすれば、
図4の説明図に概念的に示す本発明の実施形態に係るプレスフィット端子41の回路基板9のスルーホール11への接続構造のように、スルーホール11に圧入したプレスフィット部43の圧入方向Xにおけるスリット45の中心の部分が、圧入により最もスリット45側に変形してもなお、スルーホール11の内壁に当接するようになる。
【0066】
そして、プレスフィット部43の外縁が、圧入方向Xに連続する一定の長さ部分において、スルーホール11の内壁に当接するようになる。スルーホール11の内壁に当接するプレスフィット部43の外縁部分は、圧入方向Xにおけるスリット45の中心を通る仮想線Z上の当接部47と、この当接部47を挟んで圧入方向Xにおけるスリット45の両端側にそれぞれ連なる部分とを含んでいる。
【0067】
なお、
図4のプレスフィット端子41において、スルーホール11の内壁に当接するプレスフィット部43の外縁部分に当接部47が含まれるのは、スルーホール11への挿入前におけるプレスフィット部43の幅方向Yにおける当接部47の寸法を、幅方向Yにおける当接部47の最大変形量と、スルーホール11の孔径とを加えた寸法としているからである。
【0068】
即ち、スルーホール11への挿入前におけるプレスフィット部43の幅方向Yにおける当接部47の寸法を、上述した寸法とすることで、スルーホール11への圧入によりプレスフィット部43が幅方向Yに変形しても、当接部47がスルーホール11の内壁に必ず当接させることができる。
【0069】
そこで、
図1の実施形態に係るプレスフィット端子1では、プレスフィット部13が幅方向Yの両側に膨出部21,21を有する構成とした。そして、プレスフィット部13を、回路基板9のスルーホール11の孔径(直径)よりも大きく、かつ、圧入方向Xにおけるスリット15の中心を通る仮想線Z上の当接部25において、プレスフィット部13の幅方向Yにおける寸法が最大となる輪郭の形状とした。
【0070】
また、圧入方向Xにおけるスリット15の両端に位置する膨出部21の直線部23の部分において、スリット15までの最短距離B,Cが最小寸法となり、圧入方向Xにおけるスリット15の中心に位置する膨出部21の当接部25の部分において、スリット15までの最短距離Aが、回路基板9のスルーホール11の孔径(直径)よりも大きい最大寸法となる輪郭で、プレスフィット部13を形成した。
【0071】
このため、プレスフィット部13の剛性を、プレスフィット部13の輪郭からスリット15までの最短距離Aが最大となる当接部25において最も高くして、プレスフィット端子1を、スルーホール11に圧入されたプレスフィット部13の当接部25の付近において、スリット15の内側向きへの変形が最も起こりにくい構造とすることができる。
【0072】
しかも、
図1の実施形態に係るプレスフィット端子1では、プレスフィット部13が幅方向Yにおいて、スルーホール11に圧入したときの両当接部25のスリット15側への幅方向Yにおける最大変形量の合計(=プレスフィット部13の幅方向Yにおける変形量)の寸法分、スルーホール11の孔径を上回る寸法で形成されている。
【0073】
よって、スルーホール11への圧入によりプレスフィット部13が変形しても、プレスフィット部13の他の部分よりも幅方向において外側に張り出したプレスフィット部13の当接部25を、スルーホール11の内壁に確実に当接させることができる。
【0074】
即ち、プレスフィット部13のスリット15が形成された部分がスルーホール11内に位置する程度の深さでスルーホール11にプレスフィット部13を圧入すると、スリット15の長手方向における中心を通る幅方向Yの仮想線Z上に位置するプレスフィット部13の当接部25は、圧入方向Xにおけるスルーホール11の中心の辺りで、スルーホール11の内壁に当接することになる。
【0075】
このため、回路基板9のスルーホール11に対するプレスフィット部13の圧入深さがばらついても、スルーホール11の内壁に当接するプレスフィット部13の当接部25の位置を、圧入方向Xにおけるスルーホール11の中心を挟んだ浅めの位置か深めの位置に多少ずれる程度に済ませ、スルーホール11から外れた位置までプレスフィット部13の当接部25の位置がずれないようにすることができる。
【0076】
よって、回路基板9のスルーホール11に対するプレスフィット部13の圧入深さがばらついても、スルーホール11の内壁に対するプレスフィット部13の当接が損なわれないようにし、プレスフィット部13がスルーホール11内で安定して保持される状態を得て、プレスフィット部13とスルーホール11との確実な電気的接続を実現することができる。
【0077】
また、本実施形態のプレスフィット端子1では、プレスフィット部13の膨出部21における幅方向Yの寸法が最大となる、仮想線Z上の当接部25の部分が、
図5の説明図に示すプレスフィット端子の回路基板接続構造のように、スルーホール11に圧入した際に最も幅方向Yに変形する。したがって、プレスフィット部13の外縁のうち当接部25を挟んだ圧入方向Xの両側の部分が、スルーホール11の内壁に当接するようになる。
【0078】
このため、スルーホール11の内壁にプレスフィット部13の外縁を、圧入方向Xにおける一定の長さに亘って連続して当接させて、プレスフィット端子1とスルーホール11とが一定以上の面積で接触し、両者の接触抵抗が小さくなるようにして、プレスフィット端子1とスルーホール11との電気的接続を確実なものとすることができる。
【0079】
なお、プレスフィット端子1のプレスフィット部13は、プレスフィット部13をスルーホール11に圧入した状態で、
図6の説明図に示すプレスフィット端子の回路基板接続構造のように、スリット15の両直線部17が仮想線Z上で直接接触する形状であってもよい。
【0080】
また、
図7や
図8の説明図に示すプレスフィット端子1A,1Bのように、スリット15の仮想線Z上に位置する直線部17,17に、スリット15の内側に向けて突起29を形成し、プレスフィット部13をスルーホール11に圧入した状態で、両直線部17,17の突起29同士が接触する形状としてもよい。
【0081】
このように構成すると、プレスフィット部13をスルーホール11に圧入した状態で仮想線Z上で接触したスリット15の各直線部17や各突起29が、接触相手の直線部17側から反力を受ける。すると、この反力が応力となって、プレスフィット部13の当接部25やその圧入方向Xにおける両側の部分に伝わり、これらの部分のスルーホール11の内壁に対する当接圧が高くなる。
【0082】
したがって、スルーホール11に圧入されたプレスフィット部13を安定してスルーホール11に保持させることができる。
【0083】
さらに、プレスフィット部13の各膨出部21の輪郭は、例えば、
図9の説明図に示すプレスフィット端子1Cのように、一つの円弧部27によって構成してもよい。その場合、各膨出部21の当接部25は、円弧部27の仮想線Z上に位置する幅方向Yの最も外側に膨出した部分で構成することができる。
【0084】
但し、
図1のプレスフィット端子1のように、各膨出部21を2つの直線部23,23とその間の当接部25とで構成した方が、プレスフィット部13を、圧入方向Xにおいて当接部25から遠ざかるほど剛性が低下する構造として、スルーホール11に圧入したときに当接部25が幅方向Yの最も外側に張り出した形状に変形し易いプレスフィット部13を、容易に実現することができる。
【0085】
また、プレスフィット部13の各膨出部21の輪郭は、例えば、
図10の説明図に示すプレスフィット端子1Dのように、当接部25よりも端子ピン7の先端側のみ直線部23で構成して、当接部25から端子ピン7の基端側にかけての部分を1つの円弧部27によって構成してもよい。
【0086】
あるいは、反対に、プレスフィット部13の各膨出部21の輪郭を、例えば、
図11の説明図に示すプレスフィット端子1Eのように、当接部25よりも端子ピン7の基端側のみ直線部23で構成して、当接部25から端子ピン7の先端側にかけての部分を1つの円弧部27によって構成してもよい。
【0087】
図10のプレスフィット端子1Dでは、膨出部21の輪郭を直線部23で構成した、圧入方向Xにおける端子ピン7の先端側のスリット15の端部において、プレスフィット部13の輪郭からスリット15までの最短距離Cが最小寸法(B>C)となる。
【0088】
一方、
図11のプレスフィット端子1Eでは、膨出部21の輪郭を直線部23で構成した、圧入方向Xにおける端子ピン7の基端側のスリット15の端部において、プレスフィット部13の輪郭からスリット15までの最短距離Bが最小寸法(B<C)となる。
【0089】
そして、
図10及び
図11のプレスフィット端子1D,1Eでは、スルーホール11に圧入したときに、プレスフィット部13の輪郭からスリット15までの最短距離B,Cが最小寸法となる部分において、スルーホール11の内壁からの応力でプレスフィット部13が最もスリット15側に変形する。
【0090】
このため、
図10のプレスフィット端子1Dでは、スルーホール11の内壁に対するプレスフィット部13の当接部25の当接圧を高めて、スルーホール11内でプレスフィット部13を安定して保持させ、アンカー効果を高めることができる。一方、
図11のプレスフィット端子1Eでは、プレスフィット部13のスルーホール11への圧入時に必要とする挿入力を低くすることができる。
【0091】
さらに、プレスフィット部13のスリット15は、例えば、
図12の説明図に示すプレスフィット端子1Fのように、
図9のプレスフィット端子1Cのスリット15よりも、圧入方向Xにおいて短い寸法としてもよい。
【0092】
反対に、プレスフィット部13のスリット15を、例えば、
図13の説明図に示すプレスフィット端子1Gのように、
図1のプレスフィット端子1のスリット15よりも、圧入方向Xにおいて長い寸法としてもよい。勿論、
図9のプレスフィット端子1Aのスリット15を、圧入方向Xにおいて短い寸法に変えてもよい。
【0093】
但し、いずれの場合も、当接部25の部分におけるプレスフィット部13の輪郭からスリット15までの最短距離Aが、直線部23の部分におけるプレスフィット部13の輪郭からスリット15までの最短距離B,C以下とならないように、それを実現できるだけの寸法をスリット15の圧入方向Xに持たせる必要がある。
【0094】
また、
図1、
図7、
図8、
図10及び
図11のプレスフィット端子1,1A,1B,1D,1Eについても、
図12のプレスフィット端子1Fのように、スリット15の圧入方向Xにおける寸法を短くしてもよい。
【0095】
同様に、
図7乃至
図11のプレスフィット端子1A〜1Eについても、
図13のプレスフィット端子1Gのように、スリット15の圧入方向Xにおける寸法を長くしてもよい。
【0096】
なお、プレスフィット端子1のプレスフィット部13をスルーホール11に圧入すると、圧入方向Xにおいてスリット15の各直線部17,17と重なる部分において、プレスフィット部13が幅方向Yにおけるスリット15の内側に変形する。一方、圧入方向Xにおいてスリット15の各半円部19,19と重なる部分においては、プレスフィット部13は幅方向Yにおけるスリット15の内側にほぼ変形しない。
【0097】
このため、プレスフィット端子1のプレスフィット部13をスルーホール11に圧入したときに、スリット15の各半円部19,19の部分が、圧入方向Xにおいて、
図14に示す説明図のように、プレスフィット部13のスルーホール11の内壁に当接する部分に重なっていると、プレスフィット部13から回路基板9に大きな反力が加わる。
【0098】
即ち、プレスフィット部13の幅方向Yにほぼ変形しない部分がスルーホール11の内壁に当接し、スルーホール11の内壁から加わる応力に対する反力が、プレスフィット部13の幅方向Yにおける変形により殆ど減衰されずに、スルーホール11の内壁を介して回路基板9に加わる。
【0099】
そこで、プレスフィット端子1のプレスフィット部13をスルーホール11に圧入したときに、プレスフィット部13のスルーホール11の内壁に当接する部分に圧入方向Xにおいて重ならないように、
図15に示す説明図のように、各半円部19,19の部分が回路基板9のスルーホール11の外側に位置するようにスリット15を形成してもよい。
【0100】
これにより、プレスフィット部13の幅方向Yにほぼ変形しない部分がスルーホール11の内壁に当接せず、スルーホール11の内壁から加わる応力に対する反力が、プレスフィット部13の幅方向Yにおける変形により殆ど減衰されずに回路基板9に加わらないようにして、スルーホール11のプレスフィット端子1から回路基板9が受けるダメージを少なくすることができる。
【0101】
さらに、スルーホール11に圧入したときの変形を容易にするために、
図1のプレスフィット端子1のプレスフィット部13における、スリット15の仮想線Z上に位置する直線部17,17に、
図16や
図17の説明図に示すように、当接部25に向けて切欠部30を形成してもよい。
【0102】
また、プレスフィット部13のスリット15は、例えば、
図18の説明図に示すプレスフィット端子1Hのように、圧入方向Xを長軸方向とする楕円形状としてもよい。
【0103】
但し、この場合も、当接部25の部分におけるプレスフィット部13の輪郭からスリット15までの最短距離Aが、直線部23の部分におけるプレスフィット部13の輪郭からスリット15までの最短距離B,C以下とならないように、それを実現できるだけの寸法をスリット15の圧入方向Xに持たせる必要がある。
【0104】
ところで、
図1に示すプレスフィット端子1のプレスフィット部13をスルーホール11に圧入する際には、
図19の説明図に示すように、回路基板9の表面とプレスフィット部13の直線部23とのなす角度θが大きいほど、プレスフィット部13がスルーホール11から受ける応力(プレスフィット部13の挿入に必要な力)が大きくなる。
【0105】
そこで、
図20の説明図に示すように、回路基板9の表面とプレスフィット部13の直線部23とのなす角度θが小さくなるように、端子ピン7の幅方向Yにおける寸法を
図1に示すプレスフィット端子1よりも大きくするようにしてもよい。
【0106】
また、
図7乃至
図11のプレスフィット端子1A〜1Eについても、
図20のプレスフィット端子1のように、端子ピン7の幅方向Yにおける寸法を大きくして、プレスフィット部13をスルーホール11に圧入する際の回路基板9の表面とプレスフィット部13の膨出部21とのなす角度θが小さくなるようにしてもよい。
【0107】
なお、
図21の説明図に示す参考例のプレスフィット端子1Jでは、プレスフィット部13の当接部25の位置を、スリット15の圧入方向Xにおける中心を通る幅方向Yの仮想線Zから圧入方向Xにおいて端子ピン7の基端側にずらしている。また、スリット15を、圧入方向Xを長軸方向とする楕円形にしている。
【0108】
このプレスフィット端子1Jでは、当接部25の部分におけるプレスフィット部13の輪郭からスリット15までの最短距離Aを、直線部23の部分におけるプレスフィット部13の輪郭からスリット15までの最短距離B,Cよりも大きい寸法としている。
【0109】
このように構成されたプレスフィット端子1Jでは、プレスフィット部13の輪郭が、当接部25よりも端子ピン7の先端側では、圧入方向Xに対して緩い傾斜を有しており、当接部25よりも端子ピン7の基端側では、圧入方向Xに対してきつい傾斜を有している。
【0110】
このため、スルーホール11への圧入によりプレスフィット部13が変形しても、プレスフィット部13の当接部25がスリット15側に幅方向Yへ変形しにくい構造として、当接部25をスルーホール11の内壁に確実に当接させることができる。
【0111】
また、圧入方向Xに対するプレスフィット部13の輪郭の傾斜を、当接部25よりも端子ピン7の先端側では緩くしたので、プレスフィット部13のスルーホール11への圧入時に必要とする挿入力を低くすることができる。
【0112】
さらに、圧入方向Xに対するプレスフィット部13の輪郭の傾斜を、当接部25よりも端子ピン7の基端側ではきつくしたので、スルーホール11に圧入したプレスフィット部13を安定して保持させ、アンカー効果を高めることができる。
【0113】
なお、
図1乃至
図20(但し、
図3を除く)を参照して説明した本発明の実施形態に係るプレスフィット端子1〜1H、41では、プレスフィット部13,43の幅方向Yにおける寸法が、圧入方向Xにおけるスリット15の中心を通る仮想線Z上の当接部25,47において最大となるものとした。
【0114】
しかし、プレスフィット部13,43の幅方向Yにおける寸法が最大となる箇所を、当接部25,47の位置よりも圧入方向Xにずれた箇所としてもよい。
【0115】
また、本発明の実施形態に係るプレスフィット端子1〜1H、41では、スルーホール11への挿入前におけるプレスフィット部13,43の幅方向Yにおける当接部25,47の寸法を、幅方向Yにおける当接部25,47の最大変形量と、スルーホール11の孔径とを加えた寸法とした。
【0116】
しかし、スルーホール11への挿入前におけるプレスフィット部13,43の幅方向Yにおける当接部25,47の寸法を、スルーホール11の孔径に、幅方向Yにおける当接部25,47の最大未満の変形量を加えた寸法としてもよい。