特許第6735276号(P6735276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オッカム バイオラブス,インコーポレイティドの特許一覧

特許6735276核酸サンプルを収集するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735276
(24)【登録日】2020年7月15日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】核酸サンプルを収集するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20200728BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20200728BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20200728BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   G01N1/10 F
   C12M1/00 A
   C12M1/26
   G01N1/10 C
   G01N33/48 B
【請求項の数】30
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-527233(P2017-527233)
(86)(22)【出願日】2015年11月20日
(65)【公表番号】特表2018-503069(P2018-503069A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】US2015061917
(87)【国際公開番号】WO2016081860
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年11月13日
(31)【優先権主張番号】62/082,830
(32)【優先日】2014年11月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515326033
【氏名又は名称】オッカム バイオラブス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】ミーンウエイ チエン
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0101865(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/039320(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0069413(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/111016(WO,A1)
【文献】 特開2006−223250(JP,A)
【文献】 特表2007−532918(JP,A)
【文献】 国際公開第93/001494(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/10
C12M 1/00
C12M 1/26
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子を収集するためのシステムであって、前記システムは:
上部キャップと、抽出器コアと、抽出器コアアダプタと、内部容積を有する抽出器ボディと、下部キャップリングとを含む抽出器アセンブリを備え、
前記上部キャップが、前記下部キャップリングと共に前記抽出器ボディに取り外し可能に固定されるように構成されており、前記上部キャップが、前記抽出器ボディの内部容積に面する内側と、前記抽出器ボディから離れるように向く外側とを有し、前記上部キャップが、前記内側と前記外側との間を連通するサンプル接続ポートを含み、前記キャップが、前記内側と前記外側との間を連通する他の開口部を含まず、前記サンプル接続ポートが、協働する第2のインターロック構成部に解放可能にロックするための第1のインターロック構成部を含み、前記キャップの前記内側が、前記サンプル接続ポートと流体連通する接続インターフェースを含み;
前記抽出器コアが、前記上部キャップの前記接続インターフェースに取り外し可能に構成されており、前記抽出器コアが、開口上流端部と、開口下流端部と、生体分子を収集するための基材を含む前記開口上流端部と前記開口下流端部との間の内部通路とを有し;
前記抽出器ボディが、前記上部キャップと嵌合するように適合された第1の開口端部と、前記抽出器コアアダプタを受けるように適合された開口部を含む第2の端部とを有し;そして
前記抽出器コアアダプタが、前記抽出器コアの下流端部と嵌合する上流開口端部と、前記抽出器ボディの前記開口部を通って突出するよう適合された下流突出部と、下流開口端部と、前記上流開口端部と前記下流開口端部との間の内部通路とを有する、
システム。
【請求項2】
前記上部キャップの前記サンプル収集ポートの前記第1のインターロック構成部に接続するように適合された前記第2のインターロック構成部を含むシリンジをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記抽出器コアを収容するように適合された容積を規定する輸送コンテナをさらに備え、前記輸送コンテナが、前記上部キャップの前記接続インターフェースから取り外すために前記抽出器コアを解放可能に係合するように構成され、前記輸送コンテナが、前記輸送コンテナ内に前記抽出器コアを一時的に密閉するための取り外し可能な蓋をさらに含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記抽出器コアの基材が、フィルターと、前記フィルターの上流のフリットと、前記フィルターの下流の保持リングとを備える、請求項1に記載の収集システム。
【請求項5】
前記サンプル接続ポートが、前記上部キャップの前記外側から突出している、請求項1に記載の収集システム。
【請求項6】
前記サンプル接続ポートの第1のインターロック構成部が、ルアーロック取付具の一端を備える、請求項5に記載の収集システム。
【請求項7】
前記抽出器コアが、ねじ切りされたインターフェースの第1の構成部を含み、前記上部キャップが、前記ねじ切りされたインターフェースの第2の構成部を含む、請求項1に記載の収集システム。
【請求項8】
前記抽出器コアは、輸送コンテナの内面に配置された協働する第2の部材によって解放可能に係合するように適合された、前記抽出器コアの外面上に配置された第1の部材をさらに備え、前記第2の部材は、ねじり力(torsional force)が、上部キャップとのねじ接続から前記抽出器コアをねじって外す方向へ前記抽出器コアに適用される場合に、前記第1の部材に力を伝達するよう適合されている、請求項7に記載の収集システム。
【請求項9】
前記第1及び第2の部材が、それぞれタブを含む、請求項8に記載の収集システム。
【請求項10】
1つ以上のサンプル処理、試薬、又は廃棄物収集コンテナをさらに含み、1つ以上の前記コンテナが、拡張可能な容積を有する可撓性コンテナを含む、請求項1に記載の収集システム。
【請求項11】
前記1つ以上の前記可撓性コンテナが、プラスチックバッグを含む、請求項10に記載の収集システム。
【請求項12】
前記1つ以上の可撓性コンテナが、前記バッグに構造的強度を提供するために前記バッグに一体化された1つ以上の剛性の補強部材を含む、請求項10に記載の収集システム。
【請求項13】
前記剛性の補強部材は、前記1つ以上の可撓性コンテナが、液体で満たされた又は部分的に満たされた場合に直立位置にとどまることを可能にするのに十分な構造を提供する、請求項12に記載の収集システム。
【請求項14】
前記1つ以上の可撓性コンテナが、シーリングキャップと、前記可撓性コンテナの内側と流体連通している前記シーリングキャップを通って挿入されるチューブの長さを受け入れるよう寸法決めされた前記キャップ中に開口部とを有するサンプル処理コンテナを含む、請求項10に記載の収集システム。
【請求項15】
前記上部キャップにおける前記サンプル収集ポートの前記第1のインターロック構成部に接続するように適合された前記第2のインターロック構成部を含むシリンジと、前記可撓性コンテナの内部に配置された第1の端部を有する前記可撓性コンテナの前記シーリングキャップを通して挿入される前記チューブの長さと、前記シリンジの前記第2のインターロック構成部に接続するように適合された第1のインターロック構成部を含む第2の端部とをさらに備えた、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記シーリングキャップの前記開口部が、前記抽出器アダプタの前記下流端部を受け入れるようにさらに寸法決めされている、請求項15に記載の収集システム。
【請求項17】
生体分子のサンプルを収集する方法であって、前記方法が、以下の工程:
(a)請求項15に記載の生体分子を収集するための前記システムを提供する工程;
(b)前記シリンジ内のサンプル含有流体の量を収集する工程;
(c)前記シリンジを前記サンプル収集ポートを介して前記抽出器アセンブリに接続し、前記抽出器アダプタの前記下流端部を前記サンプル処理コンテナの前記シーリングキャップに接続する工程;及び
(d)前記サンプル含有流体の量を前記シリンジから前記抽出器コアに通し、それにより、前記基材上に前記サンプルを収集し、そして前記サンプル処理コンテナ内に残存物(reminder)を収集する工程であ、工程
を含む、方法。
【請求項18】
前記生体分子を収集するための前記システムが、前記抽出器コアを収容するように適合された容積を規定する輸送コンテナをさらに備え、前記輸送コンテナが、前記上部キャップの前記接続インターフェースから取り外すために前記抽出器コアを解放可能に係合するように構成され、前記輸送コンテナが、前記輸送コンテナ内に前記抽出器コアを一時的に密閉するための取外し可能な蓋をさらに含み、前記方法が、さらに以下の工程:
(e)前記抽出器コアの上に前記輸送コンテナの開口端部を置き、前記抽出器コアと前記輸送コンテナを係合させ、そして前記抽出器コアを前記上部キャップから取り外す工程;
(f)前記取り外し可能な蓋で前記輸送コンテナを一時的に密封する工程、
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
周囲の、非気候制御条件下で、前記輸送コンテナを輸送することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基材から前記サンプルを収集することをさらに含み、ここで、前記収集することが、前記基材上の前記サンプルを溶出緩衝液で処理し、忌避剤を前記抽出器コアに注入し、そして得られる溶出緩衝液、忌避剤、及び生体分子の組み合わせを収集することである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記忌避剤が、ポリジメチルシロキサンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
疾患の検出のために前記抽出器コアに収集された前記生体分子を処理することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患が、結核である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記処理することが、潜伏性結核の検出のためのものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記サンプル含有流体が、血漿又は血清を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
サンプル収集ポートに接続されたシリンジを使用して前記疎水性忌避剤を注入ること、を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
心分離することなく、られる組み合わせを収集することを含ここで前記得られる組み合わせが、生体分子を含有する水性溶出緩衝液と疎水性忌避剤との間の明確な境界面を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
疾患の検出のための生体分子を含む水性溶出緩衝液を評価することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
工程(d)を1回以上繰り返すことを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
1回以上の洗浄工程を実施することを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、「生体分子抽出システム」と題され、2014年11月21日に仮出願された米国特許仮出願第62/082,830号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
試験のための生物学的サンプルからの核酸の収集、抽出及び検出のための現在のシステム及び方法は、典型的には複雑であって、技術的に熟練した人員を伴う複数の工程を必要とし、かつ、大容量を有するサンプルの処理、又は出荷のためのサンプルの処理及び安定化において相互汚染を防止するためには最適化されていない。
【0003】
血液、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)、胸水、腹水、尿などの様々な体液は、短鎖核酸(NA)フラグメント、すなわち無細胞核酸(cfNA)、又は循環核酸(cNA)を含む。腫瘍から内因的に(endogenously)、又は体内の胎児若しくは病原体感染から「外因的に(exogenously)」生じる変化した核酸は、非常に低濃度で末梢血中にcfNAとして存在し、検出可能であり得、さらに正常な宿主cfNAとは区別され得る。試験のための血漿又は血清から十分な量のそれらのcfNAを抽出することは、比較的大量の流体を処理することを必要とし、臨床診断設定において避けられない技術的課題を課している。従って、このような課題に対処するための新しい方法の必要性が存在する。
【0004】
例えば、結核を検出するための例示的な方法は、本出願の発明者によって発明され、PCT公開出願:国際公開第2012/135815号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、そのような試験は、サンプルの分析に使用される高価な処理装置への容易なアクセスがない世界の地域において最も有用であり得る。従って、比較的安価な装置を使用してケア施設の場所において核酸を収集し、その後、さらなる処理及びアッセイのために安定した形態で中心部(central location)に輸送することができるように、大量の生物学的サンプルから十分な量の核酸を捕捉し、後の分析を実行し、環境及び操作者からの汚染を防止し、そして核酸を保存して輸送することを可能にする収集システム及び方法論に対する技術が必要である。
【0005】
大量の生体液から循環DNA又はRNAを単離するのに適した種々の抽出方法が知られており、例えばQIAamp(登録商標)Circulating Nucleic Acid Handbook(第2版、02、2011、Qiagen)に記載されているものや、米国特許第5,234,809号明細書(Boom technology)の技術原理に基づく米国特許第8,685,742号明細書に記載の改善されたスピンカラム抽出法が挙げられる。米国特許第5,346,994号明細書には、フェノール−クロロホルムを用いた有機液体抽出法が記載されている。これらの方法はいずれも、例えば、血漿又は血清検体からの、大量抽出に使用することができるが、有機試薬は毒性があり、その使用が制限される。上述の両方の技術は、下流の用途のために抽出されたNAを得るために、溶出又は沈殿中、高速遠心分離機(>10,000G)を必要とする。
【0006】
また、米国特許第7,897,378号明細書及び第8,158,349号明細書には、より大きなサンプル容量から核酸を精製又は単離するための装置及び方法が記載されており、これには、サンプルを収集容器に通して、中空体の1つの結合物質に結合した核酸を有する、一対の協同する中空体を含むシステムを含む。保持されたサンプルを含む中空体は、洗浄するために第1の受容容器に移され、その後、精製又は単離された核酸は溶出され、さらなる分析のために第2の受容容器に収集される。この場合も、固相マトリックスから結合した核酸を溶出させるために高速遠心分離機を必要とする。
【0007】
例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,234,809号(Boom)は、核酸を単離するための方法を開示しており、それは、多様な異なる用途に適している。それは、カオトロピック緩衝液及びDNA結合固相と、出発物質とをインキュベートすることによって、核酸を含有する出発物質から核酸を単離する方法を記載する。カオトロピック緩衝液は、必要に応じて、出発物質と核酸の固相への結合の両方の溶解を行う。
【0008】
新規の生体分子抽出システムは、本出願人により、米国仮特許出願第61/827,244号及びPCT出願番号第US14/39320号(「原出願」)に最初に記載されており、これらの両方は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。原出願は、生物学的サンプルを処理するための方法及びシステム、すなわち生物学的サンプルの生体分子を溶解、結合、洗浄、安定化及び溶出することに関する発明を開示した。一実施形態は、核酸のサンプルを収集するシステムを含み、該システムは、内部容積を規定する容器と、該容器に取外し可能であって、キャップ内のサンプル接続ポートと流体連通する接続インターフェースを有するキャップと、該容器キャップの接続インターフェースに取り外し可能に取り付けられるよう適合されたフィルターカラムと、サンプル収集コンテナと、輸送コンテナとを含んでいる。システムの様々な他の構成部が開示された。原出願はまた、核酸サンプルを収集する方法を開示し、該方法は、以下の工程を含む:(a)本明細書に記載の収集システムを提供する工程;(b)サンプル収集コンテナ内に、サンプル含有流体の量(volume)を収集する工程;(c)サンプル収集コンテナを、サンプル収集ポートを介して容器に接続する工程;(d)サンプル収集コンテナからサンプルを含む流体の量をフィルターカラムに通し、それにより、基材上のサンプルを収集し、容器に残存物(riminder)を収集する工程;(e)フィルターカラム上に輸送コンテナ開口端部を載せ、該フィルターカラムと該輸送コンテナとを係合し、そして容器キャップから該フィルターカラムを取り外す工程、及び(f)該輸送コンテナを取り外し可能な蓋で一時的に密封する工程。開示された方法は、小規模、遠隔及び/又は周辺の診療所などの最低限の設備の医療施設にて、収集された核酸を処理し、例えば潜伏性結核の検出のような疾患の検出のための収集されたサンプルのさらなる分析のために、より設備が整った中央研究所へと収集されたサンプルを輸送するのに有用である。
【0009】
分子技術が急速に進歩するにつれて、血漿、血清及び他の体液中の、無細胞DNA及び無細胞RNA(cfDNA及びcfRNA)それぞれ、又は両方(cfNA又はcNA)を含む循環無細胞核酸(NA)のバイオマーカー検出は、初期の発見から、出生前の遺伝的異常、癌、固形臓器移植拒絶及び結核などの感染症の診断及び予後のために、より侵襲性の低い手段として出現している。しかし、臨床分析物としてのcfNAは体液中の量が極めて少ないため、cfNAのサンプルの品質、量や、結果として最終診断結果に影響を及ぼす様々な技術的問題が依然として立ちはだかる。技術的な問題は:1)検体の採取/輸送、2)検体処理、及び、3)病態モニタリングのためにcfRNAを使用する潜在的機会、を含んでいる。
【0010】
サンプル収集/輸送の課題
cfNAの最もアクセス可能な供給源は末梢血の血漿又は血清(一緒にして、PS)である。正常個体におけるcfNAの血漿濃度は、非常に低く、1.8〜44ng/ml又は約500〜10000ゲノム当量/ml(ge/ml)の範囲である。PS中の腫瘍由来cfNA又は循環腫瘍NA(ctNA)の痕跡量は、存在する場合は、1mlあたり、単に1〜数百コピー、又は約0.005〜0.01%の総cfNA(4)であり得る。十分な標的ctNAを収集するために、大量のPS、すなわち1〜5mlがしばしば必要とされる。さらに、血液由来の細胞DNA又はRNAのわずかな割合の放出も、標的化cfNAの下流分析を困難にする。cfNA分解及び血液細胞からのゲノムNA(gNA)放出を防止するために、血液細胞からのPSの分離は、典型的には、異なるプロトコルに基づいて放血(phlebotomy)後2時間以内、2時間〜4時間又は7時間以内に行われるべきである。分離は、通常、1000〜2000gで10分間、場合により5000〜16000gで1工程又は2工程の遠心分離を必要とする。血液凝固後の単純な遠心分離による血清の分離は、より容易であり得るが、最終分析に重大な影響を及ぼさない凝固による予測可能な程度の細胞溶解を導入し得る。血漿及び血清中の標的化ctDNAの濃度はほぼ同じであるが、血清が、凝固中に血球から放出される可能性のあるより大きなgDNAフラグメントを含有することに気づく。
【0011】
サンプル収集のもう一つの問題は温度である。血液細胞からの分離後のPSは、典型的には、−20℃(短時間)又は−80℃(長時間)で保存する必要がある。放血場所などのサンプル収集場所は、必ずしも分子診断施設に近接しているわけではない。従って、輸送中の凍結PSの凍結保存は、典型的には維持される必要がある。新規血液回収デバイスである、Cell−Free DNA BCT(商標)(BCT)及びCell−Free RNA BCTは、Streck Inc.(NE)が開発した。それらは、細胞DNA及びRNA放出を妨げ、血液中のcfDNA及びcfRNAを周囲の温度で、それぞれ7日間及び2日間まで安定化させる。BCT技術は、分離遅延及び輸送条件の問題を部分的に解決する。しかしながら、それは、以下に記載されるように、分子診断施設において実施されるサンプル処理の障害に依然として直面している。
【0012】
サンプル処理の問題
cfNA試験の臨床応用はまた、サンプル処理、すなわち、大量の同一流体からの微量の脆弱cfNAの効率的抽出、濃縮、及び収集によって妨げられる。生物学的物質からの核酸抽出及び精製は、一般に、有機抽出及び固相吸着の2つのアプローチに基づいている。有機抽出、すなわちチオシアン酸グアニジン−フェノール/クロロホルム法は、PSのような大量の生物学的流体に適用可能であるが、試薬の毒性及び複数の手作業による処理工程のために臨床検査室での使用に適していない。Boom technologyに基づく固相抽出は、カラム(又はスピンカラム)と磁気ビーズ技術の2つの主要なフォーマットへと発展している。基本的な原理は、高濃度のカオトロピック剤が、タンパク質及び脂質複合体の二次及び三次構造を破壊し、DNA及びRNAヌクレアーゼを含む酵素を不活性化し、結合した微細構造から核酸を放出させることである(溶解)。溶解物にアルコールを加えることにより、遊離核酸の吸収性マトリックスへの結合が促進される(結合)。カラム(スピンカラム)フォーマットでは、溶解物結合混合物がマイクロカラムに添加され、遠心分離又は真空によって多孔質マトリックス(すなわちシリカ膜)を流れる。混合物中のDNA又はRNAは、マトリックス上に吸収され、残り(廃棄物)は除去される。次いで、典型的には、1〜2工程の洗浄が行われ、残留汚染物が除去される(洗浄)。最後に、結合した核酸をマトリックスから放出させ、遠心分離によって新しいチューブに集める(溶出)。スピンカラム操作の自動化は容易ではない。しかし、スピンカラム専用の自動化された機器(QIAcube)が最近開発された(Qiagen)。スピンカラムでサンプルを処理するには、高速デスクトップ型遠心分離機を用いるなど、通常、4〜5回遠心処理を行う必要がある。真空装置を用いて、遠心分離を、1工程(溶出)へ減らすことができるが、複数のピペット操作を依然として必要とする。スピンカラムは、通常、少量のサンプル(しばしば<300μL)を処理するように設計されている。QIAamp(登録商標)DNA Blood Miniキット(DBM、Qiagen)は、母性血液からの胎児cfDNA又はctDNA抽出に広く使用されている。スピンカラムの容積容量は、感度が要求される研究のcfNA抽出におけるその使用を制限すると考えられている。
【0013】
cfNA抽出のための別の特別に設計されたキットは、QiagenのQIAamp(登録商標)循環核酸キット(Q−CNAキット)であり、米国特許第8,685,742号明細書に記載されており、拡張チューブ(extension tube)を含み、その内容は、参照され、本明細書に取り込まれる。Q−CNAキットは、以下のいくつかの利点を備える:1)サンプル容量(1〜5ml)のために容量が拡張可能であり、2)真空が可能であり、特に、3)PS中の短いcfNAフラグメントの収集のために考案されている。最近の厳密な比較研究では、Q−CNAキットを用いた短いDNA(115bp及び461bp)の収集率が、QiagenのDBMキットの回収率の3〜4倍であることが判明した(24)。Q−CNAキットは、腫瘍診断や非侵襲性出生前検査(NIPT)における定量PCR(qPCR)、デジタルPCR(dPCR)、次世代シークエンシング(NGS)アプリケーションのためのcfNA抽出の普及とともに採用されているが、臨床現場で広く使用されることを妨げるいくつかの問題が残されている:1)多重反復ピペット操作工程が、誤ったピペット操作及び交差汚染の可能性を高める;2)Q−CNAは、真空ポンプにより駆動される真空マニホールドQIAvac(商標)24 Plus(Qiagen)と共に使用するように構成されているので、実施中、サンプルチューブは空気に暴露され、交互の負圧に供される。従って、環境からの汚染が発生する可能性がある;3)さらに、不均一な流速、及び場合によっては多孔質シリカ膜上で溶解物結合混合物詰まりが、不均一な流れを生じさせ得る、及び/又は、フロースルーを完全にブロックし得る;4)最後に、固相結合CNAを溶出させるためには、高速遠心処理が不可避である。従って、上記の方法はすべて、特定の機器及び電力供給を必要とする。
【0014】
シリカでコーティングされた磁気ビーズ(MB)技術は、同じ原則に基づいており、上記と同様の工程を有する。吸収剤がカラムに固定されているカラムフォーマットとは異なり、磁気ビーズは溶解液に分注され、磁場で収集される。MB処理の操作は、自動化のために比較的容易である。いくつかのメーカーは、特定のニーズに合わせた複数のモデルを提供しているが、それらのほとんどは、サンプル容積容量は1mlに制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、前述の問題の1つ以上に対処し、かつ、原出願に記載されている収集システムを改良し、代替の実施形態を提供するシステム及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の概要
本発明の1つの態様は、生体分子を収集するためのシステムを含む。一実施形態では、システムは、上部キャップと、抽出器コアと、抽出器コアアダプタと、内部容積を有する抽出器ボディと、下部キャップリングとを含む抽出器アセンブリを備える。上部キャップは、下部キャップリングと共に抽出器ボディに取り外し可能に固定されるように適合されており、該上部キャップは、抽出器ボディの内部容積に面する内側と、抽出器ボディから離れるようにして向く外側とを有する。上部キャップは、内側と外側との間を連通するサンプル接続ポートを備え、キャップは、内側と外側との間を連通する他の開口部(orifice)を有しない。サンプル接続ポートは、サンプル接続ポートを、協働する第2のインターロック構成部に解放可能にロックするための第1のインターロック構成部を含む。キャップの内側は、サンプル接続ポートと流体連通する接続インターフェースを含む。抽出器コアは、上部キャップの接続インターフェースに取り外し可能に取り付けられるようになっており、開口上流端部と、開口下流端部と、生体分子を収集するための基材(substrate)を含むそれらの間の内部通路とを有する。抽出器ボディは、上部キャップと嵌合するように適合された第1の開口端部と、抽出器コアアダプタを受けるように適合された開口部を含む第2の端部とを有する。抽出器コアアダプタは、抽出器コアの下流端部と嵌合するための上流開口端部と、抽出器ボディの開口部を通って突出するように適合された下流突出部(downstream protrusion)と、上流開口端部及び下流開口端部との間の内部通路とを有する。
【0017】
システムは、上部キャップのサンプル収集ポートの第1のインターロック構成部に接続するように適合された第2のインターロック構成部を含むシリンジと、抽出器コアを収容するように適合された容量を規定する輸送コンテナとをさらに備え得る。輸送コンテナは、上部キャップの接続インターフェースから取り外すために抽出器コアを開放可能に係合するように構成され、輸送コンテナは、輸送コンテナ内に抽出器コンテナを一時的に密封するための取り外し可能な蓋をさらに備える。
【0018】
収集システムは、溶解緩衝液、結合緩衝液、洗浄緩衝液及び溶出緩衝液などの1つ又は複数のサンプル処理試薬緩衝液、又は廃棄物収集コンテナをさらに含み得、これらのコンテナの1つ又は複数が、拡張可能な容積を有する可撓性コンテナ(flexible container)を含む。例えば、可撓性コンテナは、プラスチックバッグであってもよく、それは、液体で満たされる場合又は部分的に液体で満たされる場合、可撓性コンテナを直立位置(upright position)にとどまることを可能にするのに十分な構造を提供する剛性の補強部材(stiffeners)のような、バッグに構造的強度を与えるためにバッグに一体化された1つ以上の剛性の補強部材をさらに備えてもよい。特に、1つ以上の可撓性コンテナは、シーリングキャップと、可撓性コンテナの内側と流体連通しているシーリングキャップを通って挿入されるチューブの長さ(a lenght of tubing)を受け入れるよう寸法決めされたキャップに開口部とを有するサンプル処理コンテナを含み得る。可撓性コンテナのシーリングキャップを通って挿入されるチューブの長さは、可撓性コンテナの内側に配置された第1の端部と、シリンジの第2のインターロック構成部に接続するように適合された第1のインターロック構成部を含む第2の端部とを有してもよい。シーリングキャップの開口部は、抽出器アダプタの下流端部を受け入れるようにさらに寸法決めされてもよい。
【0019】
収集システムは、さらに、忌避剤(repellent agent)をさらに備えてもよい。多孔質基材から吸収された核酸を溶出するための先行技術の方法では、最初に基材上に少量の溶出緩衝液を添加して、結合した核酸を基材から放出させ、高速遠心分離又は空気パージ(air purging)により溶出液を収集する必要がある。高速遠心分離には高価な遠心分離機と電気供給を必要とする。空気パージは、サンプルの重大な損失を引き起こす可能性がある。最初に基材上に溶出バッファーを加え、その後、疎水性の忌避剤流体(hydrophobic repellent fluid)を抽出器コアに注入することを含む方法が、容易に収集され得るように、多孔質基材から追い出されて放出された核酸を含む水溶性溶出緩衝液の大部分を引き起こす。
【0020】
本発明の別の態様は、生体分子のサンプルを収集する方法を含む。この方法は、本明細書で論じるような生体分子を収集するためのシステムを提供し、次いで、シリンジ内にサンプル含有流体の量を収集し、シリンジをサンプル収集ポートを介して抽出器アセンブリに接続し、及び、サンプル処理コンテナのシーリングキャップへ抽出器アダプタの下流端部を接続する工程;及び、シリンジから抽出器コアを通ってサンプル含有流体の量を通過させ、それによって、サンプルを基材上に収集し、そして、サンプル処理コンテナ内に残存物を収集する工程を含む。シリンジから抽出器コアを通ってサンプル含有流体の量を通過させる工程は、任意に1回以上繰り返すことができ、この方法は、任意に1回以上の洗浄工程を実施することをも含み得る。この方法は、抽出器コアの基材上にサンプルを収集した後、再水和したサンプルを忌避剤で溶出させたる工程;又は抽出器コア上に輸送コンテナ開口端部を載せ、抽出器コアに輸送コンテナを嵌合させ、抽出器コアを上部キャップから取り外し、そして、輸送コンテナを取り外し可能な蓋で一時的に密閉する工程を、さらに含んでもよい。従って、このシステムは、サンプル処理のための特別な装置及び電気の必要性を排除することができ、地方又は遠隔地のポイント・オブ・ケア(POC)設定での使用により適している。次いで、輸送コンテナは、周囲の、非気候制御条件下で輸送されてもよく、その後、本方法は、疾患、又は感染性病原体、例えば深在性感染、例えば、結核、特に潜伏性結核などの検出のための抽出器コアに収集された生体分子を処理すること、をさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、例示的な容器キャップの透視側面図を示す。
図1B図1Bは、図1Aの例示的な容器キャップの断面図を示す。
図2図2は、例示的なフィルターカラムを示す。
図3図3は、図2の例示的なフィルターカラム/抽出器コアの断面を示す。
図4図4は、図3のフィルターカラム及び図1A〜1Bの容器キャップの分解図であり、それらが相互にどのように連結するかを示しており、図9A図9Bの抽出器コアが図8A図8Cの上部キャップといかに接続するかと一致している。
図5図5は、例示的な容器に取り付けられた図1A〜1Bの容器キャップを示す。
図6図6Aは、新規実施形態の例示的な輸送コンテナの底部を示す。図6Bは、図6Aの例示的な輸送コンテナが、例示的なフィルターカラム又は抽出器コアに対し、例示的な容器キャップ又は上部キャップからねじり外すためにいかに適合しているかを図示する。図6Cは、例示的な輸送コンテナ上部の断面図である。図6Dは、図6Cの例示的な輸送コンテナ上部によって密閉された図6Aの例示的な輸送コンテナ底部の断面図である。図6Eは、図6Dの密閉された輸送コンテナの斜視図である。
図7図7Aは、例示的な抽出システムにおいて使用される例示的なシリンジを示す。図7Bは、例示的な抽出システムで使用される例示的な抽出器アセンブリを示す。図7C及び図7Dは、例示的な抽出システムで使用するための例示的なサンプル処理/試薬含有プラスチックバッグの、斜視上面図及び縦断面図をそれぞれ示す。
図8図8A図8Cは、例示的な抽出器アセンブリの例示的な上部キャップの斜視上面図、側面図、及び斜視底面図をそれぞれ示す。
図9図9A〜9Cは、例示的な抽出器コアの斜視上面図、縦断面図、及び斜視下面図をそれぞれ示す。
図10図10A〜10Cは、例示的な抽出器コアアダプタの斜視上面図、側面図及び斜視底面図をそれぞれ示す。
図11図11A〜11Cは、例示的な抽出器ボディの斜視上面図、側面図、及び斜視底面図をそれぞれ示す。
図12図12A図12Cは、例示的な下部キャップリングの斜視上面図、縦断面図、及び斜視底面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
原出願に開示されているシステム
【0023】
原出願に記載された例示的なシステムは、容器、例えば、図5の容器400を備え、それは、内部容積を規定する。例示的な形状で示されているが、本発明は、容器の特定のサイズ及び形状に限定されない。本明細書において後で説明するように、改良された実施形態では、容器は、図7C及び7Dに示すような、可撓性のバッグを備えていてもよい。原出願に記載されている実施形態は、図1A図1Cに示される例示的な実施形態のような、取り外し可能なキャップ101を有するものであり、容器の内部容積に面する内側107と、内部容積から離れて面する外側102とを有する。図1Aは、キャップの外側を示す。キャップは、通路106を介して内側と外側との間を連通する、雄ルアースリップ接続部などの通気ポート105(breather port105)と、通路104を介して内側と外側との間を連通するサンプル接続ポート103とを有する。本明細書において後ほど述べるように、原出願のシステムの改善において、上部キャップ900は、上部キャップ101と本質的に同一であるが、通気ポート105を有さない。サンプル接続ポートは、シリンジのようなサンプル輸送コンテナ(図示せず)の協働する第2のインターロック構成部にサンプル接続ポートを解放可能にロックするために、ルアーロック接続部120などの第1のインターロック構成部を含む。ポート120及び105の両方は、ルアー取付キャップ(Luer−fitting cap)又はプラグ(図示せず)によって容易に開閉することができる。液体の移動を強制するためにポート120に接続されたシリンジのプランジャに下向きの圧力が加えられると、置換空気が容器400から出るようにポート105が開放される。接続源から液体移動させるために真空が使用される場合(シリンジは未だ有し得る)、ポート105は真空源に接続されている。キャップの内側は、サンプル接続ポート103と流体連通する接続インターフェース108を含む。キャップと容器との間の機能的接続を利用することができるが、キャップは、雄ネジ(図示せず)を有する容器にネジ止めするための雌ネジ110でネジ止めされてもよい。本明細書において後述するように、システムの改良は、剛性で拡張不可能な容器400ではなく、拡張可能な容積を有する可撓性コンテナ7C及び7Dを使用するものであり、それは通気ポート105の必要性を排除する。
【0024】
シリカゲル膜、焼結多孔質ガラスフリット、又はガラス繊維濾紙などの内部に固相抽出マトリックスを有するフィルターカラム、例えば図2及び図3に示される例示的なフィルターカラム200は、容器キャップの接続インターフェースに取り外し可能に取り付けられるようになっている。例えば、図1Cに示すように、接続インターフェース108は、フィルターカラム200上の雄ネジ220と噛み合う雌ネジ109を有し得る。フィルターカラムは、開口端部202及び204と、それらの間にある、核酸を収集するための基材212を含む内部通路206(internal passage 206)を有する。フィルターカラムは、流体が器(vessel)又は容器(receptacle)に保持される方法において、流体がそこに保持されることなく流体が通過するように設計されているので、「中空体(hollow body)」と呼ぶこともできる。フィルターカラム基材212は、多孔質フリット214に隣接していてもよく、保持リング210は、フィルターカラムのネックに隣接する位置に基材及びフリットを保持するために、カラムの内側に対して摩擦係合(frictinal engagement)を生成してもよい。本明細書で後でより詳細に説明される、抽出器コア300は、少なくとも、上部キャップの接続インターフェースと係合する雄ねじに関して、並びに、基材、フリット、及び保持リングに関して、フィルターカラム200と本質的に同一であり得る。
【0025】
基材212は、流体がマトリックスを通過することを可能にする固体マトリックスを含むカラム結合マトリックスを含み得る。特定の局面において、マトリックスは、緩衝溶液に曝される表面積を最大にし、それによってマトリックスの結合能力を最大にするように、非常に多孔質である。マトリックスは様々な材料から作製され得る。ある特定の実施形態では、結合マトリックスは、ガラス繊維、シリカビーズ、シリカゲル、焼結多孔質ガラスフリットなどのシリカ材料(主としてSiO2で形成されたもの)であってもよい。シリカマトリックスの多くの商業的供給業者は、例えば、Whatman(NJ)によって製造されたタイプGF/A、GF/B、GF/C、GF/D及びGF/Fガラス繊維フィルターなどが知られている。このようなフィルターは、核酸分子の精製に使用することが特に知られている。他の実施形態では、様々な固体マトリックス、例えば、特定の生体分子の抽出及び分離に適したイオン交換、親和性及び表面修飾マトリックスが適用され得る。結合マトリックスは、核酸結合物質の粒子又は繊維が埋め込まれ得る任意の材料であり得る。マトリックス材料は、一般に液体に対して透過性であり、その結果、サンプルはマトリックスを通過し、核酸は核酸結合物質と接触し、核酸結合物質に結合し、サンプルの他の成分はマトリックスから離れ得る。結合マトリックスは、珪質材料(siliceous materials)、シリカゲル、ガラス、ゼオライト、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、カオリン、ゼラチン状シリカ(gelatinous silica)、磁性粒子、焼結多孔質ガラスフリット、及びセラミック又はポリマー支持物質を含む、当該技術分野で公知の任意の支持物質が含まれ得る。核酸結合物質は、特定の条件下で核酸が結合する(典型的には非共有結合的に)が、サンプル中の他の物質はこれらの条件下で結合しない任意の物質であり得る。核酸結合は、典型的には、条件を変更することによって物質から核酸を引き続き溶出することができるように、可逆的である。
【0026】
一実施形態において、カラム200は、Boca Scientific(FL)から入手可能なMobicolカラムと幾何学的に類似していてもよく、又はその特別に改変された、若しくは特別に製造されたバージョンであってもよい。このような幾何学形態を有する設計は、マイクロ遠心分離機で遠心処理することができ、大量のサンプルをシリンジで容易に処理することができる。多孔質フリット214は、孔径10〜90μmの不活性プラスチックを含み得る。固体抽出マトリックス(基材)は、カラムの内径内に適合するディスクにろ紙を打ち抜くこと(punching)によって作製されたようなGF/Dろ紙(Whatman、NJ)を含んでもよい。フィルターディスクの2つ以上の層をフリットの上に置いても良い。PTFE(例えばテフロン(登録商標))、又はポリエチレン(PE)若しくはポリプロピレン(PP)などのプラスチック製のリングなどのバックアップリング(Ring−Store、WA)が、フィルターディスクの移動を防止するために(図2に示すように)フィルターディスクの上部に置かれてもよい。類似の内部構成部が、抽出器コア300に存在する。
【0027】
図6Eにおいて完全に組み立てられた構成で示された例示的なコンテナ650のような、オープナー及び輸送コンテナは、底部600と、嵌合する上部610とを備える。協働する底部及び上部は、輸送のためにフィルターカラムを収容するように適合された容積を規定する。輸送コンテナの底部600は、頂部開口部(open top)を有しており、容器キャップの接続インターフェースからそれを取り外すためにフィルターカラムを取り外し可能に係合するように適合されている。例えば、フィルターカラムは、図2に示すタブ222又は図6Bに示す362を有してもよいか、又は、抽出器コア300は、図9Cに示すようにタブ360を有してもよく、いずれも、図6Aのノッチ602によって係合されるように構成されている。封入された輸送コンテナは、核酸、特にRNAの分解(加水分解)を加速させる汚染や湿気を防ぐために、環境から密閉されている。封入された輸送コンテナは、図6C及び6Dのコンテナの上方部分に示された乾燥剤612(desiccant 612)などの、例えば粒状又はビーズ状のシリカゲルなどの、乾燥状態(state of dryness)(乾燥(desiccation))をその中に誘導又は維持する、予め包装された乾燥剤をさらに含むことができる。乾燥剤の位置はまた、容器の下方部分に配置され得、特定の場所又は構成に限定されない。乾燥剤は、乾燥を提供及び維持するための当技術分野で公知の任意の適切な物質を含み得、例えば、これらに限定されないが、モンモリロナイト粘土(montmorillonite clay)、塩化リチウム、活性アルミナ、アルカリアルミノシリケート、DQ11ブリケット、シリカゲル、分子ふるい(molecular sieve)、硫酸カルシウム又は酸化カルシウムなどである。乾燥剤は、いくつかのシリカゲルについて知られているように、無水(乾燥)状態から水和(湿潤)状態に移行するときに、その色を徐々に変化させる湿度インジケータを含んでもよい。
【0028】
本発明は、ルアーロック取付具(Luer lock fitting)を有するキャップの外側から突出したサンプル接続ポートで示されているが、いかなる特定のタイプのインターロック接続にも、サンプル接続ポートの特定の構成にも限定されない。サンプル接続ポートとサンプルコンテナとの間の何らかのタイプの係止部(locking engagement)が好ましいが、任意のタイプの可逆的係止部が提供されてもよい。サンプル輸送コンテナは図示されていないが、協働するルアーロック取付具を備えた標準シリンジであってもよい。従って、例示的な方法では、シリンジは容器キャップに連結され、カオトロピック試薬及びアルコールなどの結合試薬の存在下で、核酸を含む溶液が強制的にフィルターカラムを通過するようにシリンジプランジャが押し下げられる。このようにして、核酸はフィルター212上に保持され、一方、濾液は容器400に入る。上述したように、硬い容器400及び通気ポート105を有する実施形態では、シリンジプランジャは、ポート105が開いた状態で手動で押し下げられてもよく、又は溶液がシリンジから空になるように、真空によってシリンジプランジャが押し下げられるように真空源がポート105に取り付けられてもよい。
【0029】
カオトロピック試薬は、タンパク質又は核酸の二次、三次及び/又は四次構造を変化させるが少なくともそれらの一次構造に影響を及ぼさない物質として当該技術分野において周知である。例としては、チオシアン酸グアニジン、塩酸グアニジニウム、NaI、KI、チオシアン酸ナトリウム又はこれらの物質の組み合わせである。カオトロピック試薬は、液体水の規則構造(ordered structure)を乱し、DNA又はRNAをこの水溶液からガラス表面に結合させる。いくつかの条件下では、エタノール又はイソプロピルアルコールのようなアルコールの包含は、表面へのNAの結合を促進する。イオン強度を変更するために、NaCl、KCl又はCaCl2のような物質が溶液中に存在してもよい。カオトロピック条件下でガラス表面に結合するDNA及びRNAの特性は、他の生物学的物質を含有する溶液からそれらを単離するために使用される。結合工程の後、汚染物質を除去するために洗浄緩衝液及びクリーニング緩衝液を適用することができる。ガラス表面への結合は可逆的であり、例えば、カオトロピック試薬の濃度が低下した場合、又はカオトロピック試薬が完全に除去された場合、DNA又はRNAを再び溶出され得る。溶出緩衝液は、純粋なDNase/RNaseフリー水、又はトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン及びEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を典型的には5〜10mM及び50〜100μMの低濃度にてそれぞれを含む緩衝液であり得る。一般に、溶出緩衝液(EB)の容量は50〜200μの範囲内である。
【0030】
先行技術の方法は、典型的には、高速遠心分離を用いてフィルターカラムから溶出する。可能な限り多孔質マトリックスから溶出物を収集するために、高速遠心機、すなわち相対遠心力(RCF)>10,000gを有することが、しばしば必要とされる。あるいは、繰り返される空気パージ(air purging)が採用され得る場合もあるが、水溶液の一部のみが回収される。本発明の1つの収集方法の実施形態では、疎水性忌避剤が、電力及び機器を必要とせずに手動で溶出物を収集するために採用される。適切な疎水性忌避剤は、好ましくは、以下の特徴を有する:高疎水性、低粘度、低比密度(low specific density)(すなわち、<1、水の密度よりも低い)、低表面張力及び高展延性、水相と混和しない、不揮発性、一般的なプラスチック(又は少なくとも本明細書に記載されたシステムで使用されるプラスチック)と互換性がある(compatible with common plastics)、化学的に不活性、無毒。驚くべきことに、ポリジメチルシロキサンの群(PDMS、シリコーン油、又はシリコーン流体)が、これらの要件のすべてを満たすことが判明した。ポリジメチルシロキサンの粘度は、その重合に依存する、すなわち、重合が低いほど粘度が低い。PDMSは優れた忌避剤である。
【0031】
例示的な方法では、図4に示されるように、101及び200の部品を組み立てて接続される場合、又は、抽出器アセンブリ10の部品410、500、900、及び800が図7Bに示されるように組み立てられる場合、サンプル採取後、少量の溶出緩衝液、例えば50〜200μlが多孔質基材上にポート103を介して添加され、水性EBが多孔質マトリックス中に迅速に吸収される。その後、PDMSの容量、例えば0.2〜1mlがポート103に密接に接続されたシリンジによって垂直に注入される。疎水性PDMSは水性EBよりも密度が低い。従って、ゆっくりとした注入の過程で、多孔質マトリックスの表面に付着した微量(trace amount)を含む水性EBは、PDMSによって置換され、重力によって出口204から溶出される。さらに、溶出液がより正確に収集されるように、針を出口204に取り付けることができる。疎水性PDMSは、水性溶出液を、収集チューブの底部の下に単一片を強制的に形成させ、非常に低い表面張力により、PDMSの上層との明確な境界によって分離される。適切な低粘度PDMSには、Clearco Products Co.、Inc.(PA)によって供給されるPSF−5、10及び20 cSt Pure Silicone Fluidsが含まれる。
【0032】
原出願は、真空チャンバ(図示せず)をさらに含む収集システムの実施形態を開示している。本明細書に記載された新しい実施形態の改良は、上部キャップ上の真空チャンバ及び通気ポートの必要性を回避し、それによってサンプルを処理するために必要な装置の全体量を最小化する。
【0033】
新規実施形態追加の詳細
本発明の例示的な生体分子抽出器は、生物学的分子、特に核酸、タンパク質脂質、多糖類などの高分子を含む、大量の流体から生体分子を濃縮及び抽出するために使用される。抽出は、固相抽出(SPE)に基づいている。一般に、SPEは、標的生体分子を有する移動系(液相)と、標的分子に対して高い親和性を有する官能基を含む表面を含む固定相(固相)とを含む。典型的なプロセスでは、正又は負の圧力によって、又は重力によって駆動される液相は、官能基を有する表面を含む多孔質固体マトリックスを通過し、標的生体分子は、しばしば可逆的に官能基に吸収又は結合し、次の工程でマトリックスから溶出される。
【0034】
例示的な抽出器デバイスシステムは、以下の特徴を有する:1)本質的に汚染のない密閉システム;2)機器無し及び無電気操作にて操作される能力を含む、抽出処理の携帯可能及び手動操作用に構成される;3)大量の生物学的流体、例えば1〜5mlが処理され、低存在量分子、例えば、血漿、血清及び他の体液中の、癌の断片化したDNA及びRNAの無細胞循環核酸、TB(結核菌)のような病原体、及び胎児DNAなどを、100倍まで濃縮されるように構成される;4)周囲条件下でサンプル輸送を可能とするように、分子、例えば核酸、特にRNA種を安定化させるよう構成される;5)遠心分離せずに抽出された核酸を溶出するように構成される;6)核酸の場合、下流の用途、例えばPCR、定量的PCR(qPCR)、デジタルPCR(dPCR)、マイクロアレイ及び次世代シーケンシング(NGS)などのためにサンプルを調製するためのデバイスにおいて、サンプルの病原体フリー処理のために構成される。
【0035】
図7A図7Dに示される例示的な抽出器システムは、抽出器アセンブリ10(図7B)、好ましくはプラスチック、複数のサンプル処理/試薬含有バッグのセット(図7C、7D)、好ましくは、プラスチック、及び抽出器コアの取り外し及び輸送のための保護コンテナ(上述の図6A図6F)を含む。このシステムはさらに、その動作のために1つ又は複数のシリンジと共に使用することに適合する、又は1つ又は複数のシリンジを含み得る(図7A)。
【0036】
例示的な抽出器アセンブリ10は、5つの構成部を有する:(1)上部キャップ900(図8A図8C);(2)抽出器コア300(図9A〜9C)(原出願の開示において参照される「フィルターカラム」と本質的に同じ);(3)抽出器コアから延びる抽出器コアアダプタ410(図10A図10C);(4)抽出器ボディ500(図11A図11C);(5)下部キャップリング800(図12A〜12C)。図8A図8Cに示されているような、上部キャップは、外側上部にロックコネクタ902(例えば、雌ルアーロックコネクタ)を有し、それは、プラスチック製の使い捨てシリンジに接続されるように適合されている。上部キャップ900はさらに、上部キャップの内側に配置された抽出器コア受容部材910上に抽出器コア300を着脱可能に受容するように(ねじ結合などにより)構成される。上部キャップ900は通気ポートを有しておらず、サンプルポート902以外のキャップの内側面と外側面との間の連通を提供するキャップに他の開口部を有していないことを除いて、上部キャップ900は、図1A〜1Cにおいて説明される及び原出願に示される取り外し可能なキャップ101と本質的に同一である。従って、上部キャップ900は、通気ポート105を有しないことを除いて、図1Bのキャップ101の縦断面において概ね同一である。
【0037】
図9A図9Cに示されているように、抽出器コアは、以下のような2つのコネクタを有する:抽出器コアが、上部キャップ上の雌型ロックコネクタ902によって規定されるチャネルと流体連通するように、上部キャップ900の受容部材910に接続するための上流コネクタ310、及びアダプタ410に接続するように適合された下流コネクタ320(ルアースリップ雄型コネクタなど)。抽出器コア300は、内部に固定された多孔質固体吸収性マトリックス340を含む。図9Bに示されるように、一実施形態では、バックアップリング330は、吸収性マトリックス340を多孔質フリット350の上に配置する。抽出器コアの外面は、抽出器コア300を回転させて上部キャップ900の受容部材910から取り外すために加えられるトルクを受けるための機構を提供するためのタブ及びスロットの嵌合するセットのためのタブ360と、前記タブの間に挿入されたスロット364などの1つ以上の部材を有する。図6A及び図6Bに示される模式的な実施形態で示されるように、保護コンテナ600は、抽出器コア300上のタブ362を受けるための単一のスロット602を有する。保護コンテナ600及び抽出器コア300のそれぞれは、単一のタブ及び嵌合スロットではなく、図9A及び9Cに示される複数の等間隔のタブ360のような、相互に噛み合うように設計された複数の相互嵌合(intermeshing)タブ及びスロットを有してもよい。
【0038】
図10A〜10Cに示されるように、アダプタ410は、上流コネクタ(ルアースリップ雌型コネクタ420など)が抽出器コアの下流コネクタ320に取り付けられた場合、抽出器コアの延長部として動作するように適合される。アダプタは、抽出器ボディから遠ざかるように延長する拡張ルアーロック雌型コネクタなどの拡張下流コネクタ430をさらに備える。図11A図11Cに示されるように、抽出器ボディ500は、管状のコンテナである。抽出器コア300が、抽出器300の下流コネクタ320に取り付けられたアダプタ410と共に、上部キャップ900の内部910にしっかりと取り付けられる場合、組み立てられた構成部セットは、図7Bに示されるように、コネクタ430が抽出器ボディ500の外側に延在するように、抽出器ボディの底部穴530を通って延在し、アダプタが延在した下流コネクタ430(すなわち、ルアーロックの雌端部)を有する状態で、抽出器ボディ500へ挿入及び嵌合するように構成されている。抽出器ボディの内側底部は、円形隆起部540を特徴とし、それは、アダプタ底部の円形隆起部440と嵌合する。
【0039】
これに代えて、若干の変形例では、ルアーロック雄型コネクタが、アダプタ410のルアーロック雌型端部に取って代わることができる。本発明は、示される位置におけるルアーロックコネクタ又は雄型若しくは雌型コネクタに限定されるものではない。いずれの場合も、他のタイプのコネクタが使用されてもよく、当業者であれば、雄型若しくは雌型コネクタは、軽微な変更を伴い、相互に至るところで交換することができることを理解することができる。いくつかの実施形態では、抽出器ボディの底部の内側円形隆起部及びアダプタ底部の円形隆起部は、嵌合した場合(図10A図10C又は図11A図11Cには示されていない)、抽出器ボディに対してアダプタの回転運動を防止する、互いに向かい合っている、1以上の部材、例えば嵌合フランジ(単数又は複数)、くぼみ(dent)(単数又は複数)及び/又は突起を有し得る。抽出器ボディの外側の壁面には、以下でさらに説明するように、円形の隆起部550が、抽出器ボディと上部キャップ及び下部キャップリングとの係合のための停止部としての役割を果たし得る。図12A図12Cに示すように、下部キャップリングは、内壁に嵌合する雌ネジを備え、底部から抽出器ボディの上に通され、抽出器ボディの外壁上の隆起部550をキャップリング800の内面850に係合させ、上部キャップの雄ネジフライト960をその雌ネジ取付具860と係合させて、本明細書に記載のアセンブリ全体が互いにしっかりと接続されて抽出が進行中の場合に、液体漏れを最小限にするか又は排除するように適合されている。
【0040】
図7C及び7Dに示されるように、サンプル処理/試薬/廃棄物収集コンテナのセットがさらに提供されてもよい。バッグは、異なる試薬、例えば、本明細書にさらに記載されるような、溶解緩衝液(LB)、結合緩衝液(BB)、洗浄緩衝液(WB)、クリーニング緩衝液(CB)、溶出緩衝液(EB)及び撥水液(RF)を含む。容器の容量は、操作に必要な試薬の量に応じて、50mlから2mlまで変化し得る。容器は、典型的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)及び/又はエチルビニルアセテート(EVA)から製造された袋のように可撓性である。代表的な試薬/サンプル処理コンテナは、LBバッグによって例示される(図7C及び7D)。LBバッグは、約50mlの容量を有し、丸い円柱形状を有する。バッグの内壁は、4つの剛性隆起部706を含み、これは、サンプルを処理するときに、可撓性バッグが直立した状態に留まることを可能にするより多くの構造を提供するのに役立つ。例示的なバッグは、チューブ708がバッグの内部と流体連通され得るように、キャップ上にチューブチャネル704を有する丸いシーリングキャップ702を有する。チューブの他端は、ルアーロック雌型コネクタのようなコネクタ(図示せず)を備えていてもよく、それは、シリンジ注射によって血漿、血清、又は他の生物学的液体などの、液体試料を受け入れるために、シリンジ(例えば、ルアーロックシリング)に直接接続され得る。LBバッグは、予め装填された溶解緩衝液を含む。生物学的液体は、バッグ中の溶解緩衝液と混合され、ウォーターバス又はヒートブロック中でインキュベートして、他の生物学的複合体から核酸放出が促進され得る。LBバッグの丸い形状は、一般的に使用される50mlの遠心チューブラック又はヒートブロックに適合される。溶解プロセスが完了すると、BBバッグからシリンジを引いて、LBバッグに注入されるが、結合バッファーはBBバッグからLBバッグに移される。シリンジでLBバッグから繰り返して引き出して、注入することで混合した後、溶解物及び結合緩衝液混合物をシリンジに引き込み、次いで、シリンジを抽出器アセンブリ10の上部キャップ900の上部の(例えば、ルアーロック雌型)コネクタ970に接続し、抽出器アセンブリの底部のルアーロック雌型コネクタ(すなわち、アダプタ410の下流コネクタ470)は、例えばルアーロック雄型アダプタ(図示せず)などのLBバッグに接続される。シリンジプランジャを押すことによって、混合物が抽出器に注入され、固体吸収剤マトリックスを通過し、捕捉されていない液体がLBバッグに逆流する。標的分子、これらの場合、断片化された短いDNA又はRNA、固体マトリックスの表面に吸収される。
【0041】
バッグ又は収集容器のための他の可撓性容積コンテナ(flexible−volume containers)を使用することは、収集システム上の非通気性(non−vented)キャップを使用する能力を含む、いくつかの利点を提供する。バッグは柔軟な容積を有するので、抽出器を通過する液体の各容積を追従するために、シリンジに意図的に導入された少量の空気(例えば1〜5ml)を収容するのに十分な容積をバッグに確保することができる。この少量の空気は、シリンジ内の液体が最初に排出された後に、多孔質マトリックス中の残留液体から空気を動かすのに役立つ。従って、収集バッグ又は他の可撓性容積コンテナは、処理中にバッグに添加される予想される液体の量のみならず、全プロセス中にわたって、予測される数のシリンジ導入工程中において導入される予想される追加の空気の量をも収容するための十分な量の予備容量を有するよう設計され得る。さらに、可撓性容積コンテナは、3つの部分(シリンジ、抽出器、及び可撓性容積コンテナ)が環境と連通することなく密閉接続を形成する、接続されたシリンジ−抽出器−容器システムを可能にする。シリンジが可撓性コンテナ内に液体を押し込む、又は、引いたりする場合、閉鎖システムの外の液体又は空気を分配する必要もなく、又は、閉鎖システムに外気を引き込む必要もなく、可撓性コンテナの容積が変化する。従って、この閉じたシステム配置は、開放システムと比較して、汚染をより少なくする又は防止する。このシステムはまた、液体を双方向に流すことができるので、抽出プロセスを最大限の効率を達成するために複数回繰り返すことができる。
【0042】
流速の制御、及び数回(2〜10回)の繰り返しの吸引及び注入を介して、標的分子は吸収性マトリックスと相互作用する複数の機会を有し、大量の溶解物からの短い核酸の収集を最大化する。抽出プロセスの完了後、LBバッグは抽出器アセンブリから(例えば、オプションのルアーロック雄−雌型アダプタから)取り外される。抽出器アセンブリ上のアダプタは、洗浄緩衝液バッグ及びクリーニング緩衝液バッグに連続的に接続され、より小さな新しいシリンジで吸い込み及び注入を繰り返される(洗浄及びクリーニング緩衝液の容量は、試料(specimen)及び結合溶解緩衝液混合物よりも極小であり、約数mLである)。再び、抽出器を介して洗浄緩衝液及びクリーニング洗浄液を繰り返して吸い取り及び注入することにより、吸収性マトリックスから汚染物質を、より効率的に除去し、著しく下流アプリケーションに影響を与えるそのような様々な汚染物質の可能性を最小限に抑えることに寄与し得る。
【0043】
抽出、洗浄及びクリーニングを達成する場合、抽出器コアは、以下の工程を介して抽出器アセンブリから取り外される準備がある:(1)抽出器アセンブリ10から突出した拡張コネクタ470からルアーロック雄−雄型アダプタを取り外す(2)下部キャップリング800をねじり外す;(3)抽出器ボディ500から上部キャップ900を取り外す;(4a)抽出器コア300を上部キャップ900受容部材910から保護コンテナ600と共に取り外し、蓋610で保護コンテナを密封する(原出願でより詳細に説明されている);(4b)あるいは、ピペッティングで溶出緩衝液を添加し、次いで直ちに溶出するために上部キャップ900の入口ポートを通して忌避液(RF)を注入する。このように、抽出された核酸をその吸収性マトリックス上に有する抽出器コアは、下流のアプリケーションにおける溶出工程の即時の実行のため、又は貯蔵されるため又は周囲の輸送のための準備が整っている。
【0044】
本明細書に記載されているような忌避流体(repellent fluid)を用いた処理を含む方法は、原出願および新実施形態に開示されたシステムを含む、本明細書に記載されているシステムのいずれかと関連した使用に特に有用であり得ると理解されるべきであるが、本明細書に記載のシステムに限定されない、任意のタイプの濾過又は収集システムにおける任意のタイプの基材から生体分子を収集するために使用され得る。
【0045】
抽出器コアは、溶出工程が、ハイスループット処理で達成され得るように、好ましくは、一般的に使用される96ウェルフォーマットに適合するように構成され得る。
【0046】
抽出器コアは、プラスチック多孔質フリット、吸収性マトリックスの層、及びプラスチックバックアップリング、又は別のプラスチック多孔質フリットを含む。プラスチックフリット及びプラスチックバックアップリングは、原出願で開示されるシステムに関してさらに記載されるように、吸収性マトリックスを抽出器コア内のその位置に固定するために使用され、液体が吸収性マトリックスを通って流れることを可能にする。
【0047】
さらに、抽出器コア300は、フィルター構成部に関して、及び、容器キャップ101/上部キャップ900と接触する上部に関して、フィルターカラム200と本質的に同一であるが、抽出器コアは、フィルターカラム200の開口端部204よりも長い下流コネクタ320を有し、全体としての抽出器コア300が、抽出器アセンブリボディ500内に適合し、アダプタ410とインターフェースで連結するようにサイズ化されている。内部フィルター構成部は、フィルターカラム200の下流端部付近に配置されるが、内部フィルター構成部は、抽出器コア300のほぼ中央に長手方向に配置され、アダプタ410とインターフェースで連結するように細長い下流コネクタ及び抽出器ボディ500の開口部530を通って突出するためのアダプタ410の下流端部430に対するスペースを提供する。抽出器コア及び濾過カラムは、しかしながら、特定のサイズ、形状、又は他の幾何学的形状に限定されない。
【0048】
本明細書に記載される全ての構成部に関して、ロック取付具(locking fittings)又はネジ部(threads)などのインターフェース機構は、強調するために特定の図にのみ示されており、簡略化のために他の図には示されていないことを理解されたい。さらに、特定の例示的なタイプのインターフェース機構が、特定の構成部に関して本明細書で説明されているが、本発明は、論議される特定のタイプのインターフェース機構に限定されず、特定の構成部に関するインターフェース機構の存在若しくは非存在に限定されない。従って、図示されている特定のインターフェース機構を有する構成部は、他のタイプのインターフェース機構が備えられ得る、又は全くインターフェース機構を備えなくてもよく、インターフェース機構なしで描かれた他の構成部は、当該技術分野において公知の任意のタイプのインターフェース機構を有していてもよい。
【0049】
追加の特徴
吸収性マトリックス
吸収材料及び細孔サイズ 対 流速を考慮して試験した。シリカ膜、ガラス繊維紙、及び焼結多孔質ガラスフリットを含む、いくつかの吸収性マトリックスが利用可能である。一般に、これらのシリカ材料の広い表面積は、十分な結合(吸収)部位(100μg NAまで)を提供する。少量のcfNA(しばしば100μg未満)は結合表面を飽和させることはないであろう;しかしながら、結合表面はcfNAの吸収速度に影響を及ぼし、不完全な抽出又は耐容されない流速又はさらには高圧を引き起こす可能性がある。吸収性マトリックスの孔径の増加は、表面積と負の相関があり、流量と正の相関がある。10〜50μmの細孔サイズを有する多孔質ガラスフリットは、良好な流体の流れ、並びに短い核酸への強い結合を提供する。その流速が速いため、サンプルを繰り返し通過させることができ、抽出効率が有意に向上させる。さらに、吸収剤の表面の前処理は、cfNAの抽出を促進し得る。
【0050】
サイズ選択抽出
腫瘍由来又は胎児由来のcfDNAは、一般に、正常組織由来及び母体由来のcfDNAよりも断片化されている、すなわち、より短い。試料の収集、保管/輸送中に血液細胞から放出されたゲノムDNA、及び処理は、cfDNA集団に有意に影響を与え、結果として標的cfNAの検出感度に著しく影響する。しかしながら、cfNA抽出前に体液から長いDNAを選択的に除去することが可能である。弱い陰イオン交換磁気ビーズを用いることにより、長いDNA(>1000bp)が尿から首尾よく除去され、これは最終抽出物中の断片化cfDNAの部分を有意に増加させた。他は、陰イオン交換マトリックスで血液からのgDNA抽出を報告している。従って、陰イオン交換マトリックスを含む本明細書に記載されている追加の抽出器は、一定の適合性条件下でcfNA抽出の前に、長いDNAの大部分を除去するために使用され得る。カルボキシル化又はDEAEコンジュゲートビーズ、樹脂、及び/又は濾紙などの機能性アニオン交換マトリックスは、この工程を実施するために市場で入手可能である。
【0051】
従って、追加の抽出器は、異なるマトリックス及び異なる試薬システムで作製され得る。例えば、体液から大きなサイズの細胞DNAを除去するために、陰イオン交換抽出器は、図9A〜9Cに関連して、以下のように構築され得る:プラスチック多孔質フリット350を抽出器コア300に入れた後、緩衝液懸濁液(50%)中の200μlのDEAE Sephadex A−50ビーズ(GE Healthcare Life Science)を、吸収性マトリックス340の代わりに第1のフリット上に載せ、第2のフリットが、リング330の代わりにDEAEセファデックスビーズ層の上部に配置され、それによってビーズを2つのフリットの間に固定する。抽出システムの残りの構成部は、前述したように組み立てられる。pH緩衝液及び塩は、溶解液中の大きなDNAがビーズに強く結合するであろうが、小さいDNAは結合しない所望のpH及び塩条件(当技術分野で知られている)を確立するために、好ましくは、体液溶解液に最初に添加される。従って、上記のように適合された抽出器を通過して収集バッグに収集される流体は、そのような抽出前よりも大きなサイズの細胞DNA分子が、少量となる。収集バッグ内で、流体を追加の結合緩衝液と混合し、上記のようなシリカマトリックスを有する第2の抽出器に通される。結合緩衝液は、現在、小さなDNAに対して条件付けされている(conditionalized)。従って、そのようなプロセスのための適切なキットは、大きい細胞DNAを除去するための第1のマトリックスで構成される第1の抽出器と、輸送及び分析のための生体分子の所望のサンプルを保持するための第2のマトリックスで構成される第2の抽出器とを含んでもよい。
【0052】
サンプル収集
原出願に記載されている溶解容器と一致して、一般に、LBバッグは、製剤化前の溶解試薬を含んでもよく、それは、例えば、少なくとも以下を含んでもよい:トリトンX−100又はBJ58のような非イオン性界面活性剤、又は陰イオン性界面活性剤(例えばラウロイサルコシンナトリウム(sodium lauroyl sarcosinate))と非イオン性界面活性剤の組み合わせ、プロテイナーゼKなどのプロテアーゼ、塩若しくはカオトロピック剤(例えば、塩化リチウム、グアニジン、チオシアン酸グアニジン、尿素など)、ジチオスレイトール(DTT)などの還元剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート剤、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)のような緩衝剤。グアニジン及びチオシアン酸グアニジンはモル濃度で強力なDNase及びRNase阻害活性を有することがよく知られている。溶解試薬は、溶解容器中で、溶液中、又は例えば、凍結乾燥(フリーズドライ)又は噴霧コーティングによって、乾燥形態(脱水)であってもよい。
【0053】
水性流体の形態、例えば、血液、血漿、血清、痰、唾液、尿、脳脊髄液(CSF)、胸水、腹水、滑液などの形態の試料は、直接又は追加の水とともにLBに添加されてもよい。水性流体をLBに添加すると、サンプル流体は溶解溶液と混合され、又は乾燥した溶解試薬を再水和して、完全なサンプル溶解緩衝液混合物を形成する。好ましい検体は、血漿又は血清であり、収集される血漿又は血清の好ましい量は、1〜20mlの範囲、より好ましくは少なくとも2ml、さらにより好ましくは2〜10ml、及び最も好ましくは2〜5mlである。
【0054】
高粘性形態の、又は半固体及び固体形態の他の試料、例えば、膿、細胞懸濁液及び組織は、乾燥された溶解試薬を再水和するのに必要な量の追加の水とともにLBに添加されてもよく、サンプル溶液と溶解溶液との最適な比を維持する。
【0055】
好ましい実施形態では、抽出後、収集されたサンプルは、上述したように、及び原出願において、及び当技術分野で公知の任意の方法で、洗浄及びすすぎによってさらに処理され得る。
【0056】
フィルターカラム上のタブと、輸送コンテナ上の嵌合ノッチ(mating notch)とで示されているが、輸送コンテナ上に配置された協働する第2の部材によって解放可能に係合されるように適合されてフィルターカラム上に配置され、かつ、容器キャップを備えるそのネジ接続からねじって緩めるためのフィルターカラムに十分な力を伝えることができる任意の部材が設けられていてもよい。同様に、フィルターカラムと容器キャップとの間のねじ接続によって示されているが、任意のタイプのインターロック接続が使用されてもよく、そのようなシステムの各要素は、好ましくは滅菌方式にて、キャップからのフィルターカラムを外すように、輸送コンテナとフィルターカラムとの間の任意のタイプの協同作用(cooperation)を利用してもよい。
【0057】
フィルターカラムは、複数のフィルターカラムを受け入れるためのサンプルホルダ(図示せず)内に収まるようなサイズにしてもよく、複数のフィルターカラムを一度に一緒に遠心分離するために、遠心分離機にフィットするように適合されてもよく、例えば限定されないが、半自動又は全自動処理及び取り扱いのために、96ウェルフォーマットに適合するように収容されるサイズである。
【0058】
収集システムは、特定のタイプの試験を実施するために必要とされる物質の1つ以上を含むキットの一部として販売されてもよく、例えば、限定されないが、以下のものである:患者からの流体サンプルを抽出する手段(例えば、血液、血清、血漿又は他の体液を採取するための針及びシリンジ)、本明細書にさらに記載される試薬(例えば、溶解緩衝液(LB)、結合緩衝液(BB)、洗浄緩衝液(WB)及びクリーニング緩衝液(CB)、溶出緩衝液(EB)及び忌避液(RF))を含むコンテナを含む、サンプル処理/試薬/廃棄物収集コンテナ;サンプル移送手段(シリンジなど)、本明細書に記載される抽出器アセンブリ、及び本明細書に記載される輸送コンテナ。
【0059】
他の実施形態では、上記の様々な部品は、別個に販売されてもよい。理想的には、ほとんどのタイプの試験、特に本明細書で言及する結核検出方法では、核酸がフィルターカラムの基材上に蓄積するまで、患者から抽出された時点の流体を含有するサンプル又はサンプルに接触するすべての部分は、滅菌されているか、又は、例えば操作者又は環境からの任意の他の供給源由来の核酸によって汚染されてはならず、かつ、核酸を迅速に分解する普遍的に存在するDNase及びRNaseによって汚染されてはならない。本明細書で論じられる様々なコンテナ、シリンジ、及び容器は、実験室/医療分野において周知の標準的な構成要素であり得る。しかしながら、接続されたフィルターカラムを有する革新的な容器キャップは、この特定の収集システムに特化している。
【0060】
従って、改良の別の態様は、容器に対する無菌の取り外し可能なキャップを備えてもよく、前記キャップは、容器の内部容積に面する内側と、内側に対向する外側とを有し、該キャップは、前記内側と前記外側との間を繋ぐ通気ポートを有さず、前記内側と前記外側との間を繋ぐサンプル接続ポートを有し、前記サンプル接続ポートは、前記サンプル接続ポートを、協働する第2のインターロック構成部に解除可能にロックするための第1のインターロック構成部を備え、前記キャップの前記内側は、前記サンプル接続ポートと流体連通する接続インターフェースとを含んでいる。上述の取り外し可能なキャップは、別個に販売されてもよく、又は別の実施形態では、本明細書で説明されるような、容器キャップの接続インターフェースに取り外し可能に取り付けられた滅菌フィルターカラムを備えてもよい。
【0061】
本明細書に記載のシステムの全ての部品は、熱可塑性射出成形などの当技術分野で公知の任意の方法によって製造されてもよい。好ましい熱可塑性物質(thermoplastic)は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレンテレフタレート(PET)が含まれるが、本発明は特定の材料又は構成方法に限定されない。
【0062】
本明細書で論じられるシステムを使用するための例示的な方法は、以下のように実施されてもよい。
【0063】
(a)サンプル含有流体の量を収集し、それらは、生物学的サンプル中の複合体、細胞又は他の粒子から核酸を放出させるために、LBバッグ中で、溶解緩衝液、並びにカオトロピック剤、塩及び沈殿剤(例えばアルコール)を有する結合緩衝液で処理され、かつ、インキュベートされ得、そして、シリンジを用いてLBバッグから粗溶解物(crude lysate)を抽出する工程;
(b)粗溶解物を含むシリンジを抽出器アセンブリの上流端部に接続し、LBバッグを抽出器アセンブリの下流端部に接続する工程;
(c)前記サンプル含有流体の量を前記シリンジから前記抽出器アセンブリに通し、それにより、前記基質上に前記粗溶解物サンプルから核酸を収集し、そして、前記LBバッグ中に残存物を収集する工程;
(d)カラム内の核酸結合フィルターマトリックスを洗浄緩衝液で洗浄する工程;
(e)好ましくは100%エタノール又はアセトンで、溶媒の量をカラムに通過させることにより、核酸結合マトリックスを脱水させる(そして同時にさらに洗浄し、脱塩する)工程;
(f)輸送コンテナの下部をフィルターカラムの上に置き、フィルターカラムを輸送コンテナに係合させ、そして、フィルターカラムを容器キャップから取り外す工程;
(g)輸送コンテナの上部及び輸送コンテナの下部を合わせることによって輸送コンテナを一時的に密封する工程であって、前記密閉された輸送コンテナは、好ましくは、粒状又はビーズ状のシリカゲルのような吸湿剤(乾燥剤)のポケットを含む;
(h)あるいは、工程(f)及び(g)を実施する代わりに、フィルターカラムを取り外すことなく、EBを直接添加し、次いでシリンジにより上部キャップ200の入口からRFを注入し、別のコンテナに即時に溶出物を収集する工程;
(i)処理するために溶出物のコンテナを輸送する、又は直ちに処理する工程。
【0064】
比較的安定なDNA分子とは異なり、RNA分子は、RNA中のホスホジエステル結合に隣接する2’ヒドロキシル基が、塩基及び酵素触媒加水分解の両方において分子内求核剤として作用するために分解されやすい。
【0065】
洗浄工程(d)は、1つ以上の処理流体の量をフィルターカラムに通すことによって、収集されたサンプルを基材上で処理することを含み得る。例えば、処理は、サンプルを、エタノールを含む流体などの洗浄液で洗浄するなど、輸送のために核酸のサンプルを安定化することを含み得る。サンプル輸送コンテナがシリンジを含んでいる一実施形態において、容量をフィルターカラムに通す方法は、手動でシリンジのプランジャに圧力を加えることを含む。下流の核酸アッセイの準備が整うと、例えば、結合した核酸を放出させるために少量の溶出緩衝液又は純水をフィルター(固体マトリックス)に加え、そして、当技術分野で知られているように空気圧又は遠心処理を適用することによって、又はより好ましくは本明細書に記載のようにカラムに流体圧力(RFの注入)をかけることによって、溶出物を別の小型コンテナに収集することで、フィルターカラム内の基材に結合した核酸がフィルターカラムから放出されて溶出される。本明細書に記載の流体圧技術を使用した後、必要に応じて、追加の収集のために、フィルターカラムをさらに空気パージ又は遠心処理してもよい。
【0066】
特定の用途に限定されるものではないが、前述の収集システムは、以下に概説するように、例えば結核などの感染性病原体の検出方法に関連して特に有用であり得る。しかしながら、このシステム及び方法は、例えば、胎児遺伝病、腫瘍診断、及びLTBIのような深部組織における感染の早期診断の方法などの、診断のためのcfNAの収集を使用する任意の方法に関連して特に有用であり得る。要約すると、システム及び方法は、宿主体と区別できるNA情報中に改変を含むNA材料の評価に基づく任意の方法に関連して特に有用であり得る。本明細書に記載のシステム及び方法は、抽出及び保存が重要な分野で特に有用である。血液中の低濃度のcfNAを検出するには、試薬を添加すると総容積が容易に20〜50mlに達するため、比較的大量のサンプル(2−5−10ml)を必要であり、既存のプロセスを使用して処理又は自動化することが困難な量である。RNAは、その安定性に起因する問題を提示する。従って、この方法及びシステムは、体液中の低濃度のcfNA、具体的にはRNAの検出に依存するプロセスに特によく適している。
【実施例】
【0067】
実施例1−MOEデバイスの構築
図2〜4に示すようなフィルターカラム200のプロトタイプを構築した。適切なサイズの吸収性マトリックスディスク212を、GF/D繊維ガラス濾紙(Whatman、NJ)から打ち抜き、不活性PP多孔質フィルター214の上部に挿入し、PPバックアップリング216を吸収性マトリックスディスク212の上部にしっかりと配置させ、アセンブリを固定した。ルアーロック接続部を上部に有するキャップ101をフィルターカラムにねじ込み、密閉した。次いで、フィルターカラムを組み立てたキャップを、空の50mlプラスチック使い捨て遠心チューブにねじ込み、密封した。上述したデバイス全体は、本明細書ではさらにMOE(Manually Operated Extraction)デバイス400と呼ばれる。以下の実施例で使用される複数のMOEフィルターデバイスが同様の方法で構成され得る。
【0068】
実施例2
ヒトプール血漿の調製:10人の健常ドナーからの新鮮採血を4000Gで20分間遠心分離した。血漿画分を各採血管から取り出し、一緒に50ml遠心分離管にプールした。プールした血漿をボルテックスし、−20℃で凍結させた。
【0069】
実施例3
プールされた血漿からのcfDNAの抽出:この実施例では、以下の緩衝液及びプロトコルでMOEフィルターカラムのみを使用した:
緩衝液:溶解緩衝液(LB):チオシアン酸グアニジン(GITC)、界面活性剤トリトンX−100、プロテイナーゼK及びEDTAを含有する。
結合緩衝液(BB):GITC及びイソプロパノール(IPA)を含み、しっかりと混合する。
洗浄緩衝液(WB):トリス、EDTA、塩、エタノールを含有する(pH7.0)。
溶出緩衝液(EB):トリス及びEDTAを含有する(pH7.5)。
【0070】
プロトコル:
1. 溶解:長い針を付けた10mlシリンジで2mlの解凍したプール血漿を抜き取り、2mlのLBを含む50mlのプラスチック製遠心チューブに加え、ボルテックスでよく混合し、60℃のヒートブロックで30分間インキュベートする。室温で冷却する。
【0071】
2. 結合:BB 16mlを抜き取り、サンプル溶解液チューブに加え、ボルテックスで混合し、室温で10分間放置する。
【0072】
3. 結合及び抽出:50ml溶解物チューブのすべての内容物を吸い取り、長い針を有する30mlルアーロックシリンジに入れ、該シリンジに約5mlまでの空気を吸い取り、組み立てられたMOEデバイス400のキャップの雌型ルアーロックコネクタ上にルアーロックシリンジをねじ込み、それにより、ラックにしっかりと固定される。シリンジ内の全ての液体と空気がフィルターカラムを通過するまで、シリンジプランジャを押し下げる。廃棄物は、MOEデバイスの50mlチューブに収集される。この手順には1〜2分かかる。30mlシリンジのネジを外す。
【0073】
4. 4mlのWBを10mlのルアーロックシリンジに抜き取り、プランジャを押してWBがカラムを通過させる。10mlシリンジのネジを外す。
【0074】
5. 4mlの100%エタノールを10mlのシリンジに吸引し、プランジャを押してエタノールがカラムを通過するようにする。
【0075】
6. MOEデバイスのキャップを50ml遠心チューブから外し、新しい50mlチューブに置く。カラム内のエタノール残渣を完全に空気乾燥させる。
【0076】
実施例4.3つの方法による抽出されたcfDNAの溶出
【0077】
この実験では、3つの溶出法を比較した。プールされた血漿から抽出されたcfDNAを有する12のMOEデバイスを3つのグループ(n=4)に分けた:a)高速遠心分離(HC)による溶出;b)空気パージ(AP)による溶出、及びc)撥水剤(RF)による溶出。
【0078】
回収率を、溶出された量、及びハウスキーピング遺伝子B2Mのフラグメント化されたcfDNAをqPCRアッセイによって溶出液中のcfDNA濃度を用いた比較した。
【0079】
抽出プロトコルHC:MOEデバイスのキャップからフィルターカラムを取り外し、該カラムを1.5mlの収集遠心分離チューブに入れ、マトリックス上に100μlのEBを添加し、上にスクリューキャップでカラムを密閉し、放出するために10分間待つ。次いで、収集チューブを12,000gで3分間遠心分離した。
【0080】
抽出プロトコルAP:100μlのEBを、MOEデバイスのキャップ入口ポートからピペットで加え、10分間待つ。キャップのポートに10mlシリンジを接続し、1.5ml収集チューブ上にキャップ付きフィルターカラムを置き、シリンジプランジャを繰り返して押したり引いたりして、カラムをパージする。収集チューブを遠心分離して、パージされたEBをチューブの底に集めた。
【0081】
抽出プロトコルRF:プロトコルAPに記載されているようにEBを追加する。10分後、0.5mlのRF(PSF−10cSt Pure Silicone Fluid、Clearco Products、PA)を有する5mlシリンジをキャップのポートに接続し、カラムを収集チューブ上に置いた。プランジャをゆっくりと押し、EB及びRFをパージした。EB(底部)層とRF層との間の明確な境界面は、遠心分離することなく、迅速に形成された。
【0082】
溶出液中のcfDNAの定量。10μlの溶出液をqPCRアッセイ(SIBO qPCR mix、Occam Biolabs、Inc.、DE)の鋳型として取り出した。残留物を、収集チューブから注意深く除去し、0.1mgグレードのデジタル天秤によって測った。その結果を表1に示した。
【表1】
【0083】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書に例示及び説明されているが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図していない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲(scope)及び範囲(range)内で、かつ、本発明から逸脱することなく、細部に様々な変更を加えることができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C