特許第6735277号(P6735277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メディベイション プロステイト セラピューティクス, インコーポレイテッドの特許一覧

特許6735277乳癌療法剤に対する反応を予測するための方法および乳癌の処置の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735277
(24)【登録日】2020年7月15日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】乳癌療法剤に対する反応を予測するための方法および乳癌の処置の方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20200728BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20200728BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20200728BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200728BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200728BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20200728BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALN20200728BHJP
【FI】
   C12Q1/68ZNA
   A61K31/4166
   A61K31/337
   A61P43/00 105
   A61P35/00
   G01N33/50 P
   !C12Q1/6886 Z
【請求項の数】21
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2017-531209(P2017-531209)
(86)(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公表番号】特表2018-504892(P2018-504892A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】US2015064500
(87)【国際公開番号】WO2016094408
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年12月10日
(31)【優先権主張番号】62/142,504
(32)【優先日】2015年4月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/091,195
(32)【優先日】2014年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/167,110
(32)【優先日】2015年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511205611
【氏名又は名称】メディベイション プロステイト セラピューティクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,エイミー・クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アパル,ヒルデシュ
【審査官】 坂井田 京
(56)【参考文献】
【文献】 Tiffany A Traina et al.,37th Annual SABCS(San Antonio Breast Cancer Symposium),2014年,P5-19-09
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリプルネガティブ乳癌に関する処置を評価する方法であって、
該処置はアンドロゲン受容体阻害剤の使用を含み、ここにおいて、該アンドロゲン受容体阻害剤が、エンザルタミドであり
該方法は、対象から得られた生物学的試料をアッセイし、該対象から得られた該生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは他の亜型として分類されるかを、
(a)表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現を検出し;
(b)該試料の基底重心分類器スコアを表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から決定し;
(c)該試料のルミナルA重心分類器スコアを表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から決定し;そして
(d)加重された基底およびルミナルA分類器スコアを、該基底重心分類器スコアおよび該ルミナルA重心分類器スコアから、次の方程式に従って計算する
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=
−0.25(基底重心分類器スコア)+0.27(ルミナルA重心分類器スコア)、
ことによって決定する。ことを含む、
ここにおいて、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.3より大きい場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む該乳癌処置は、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.3以下である場合よりも該対象において有効である可能性がより高く、そして、
該生物学的試料が、細胞、組織および体液からなる群から選択され、そして、該生物学的試料が、乳房組織または細胞を含む、
前記方法。
【請求項2】
該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.25より大きい場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む該乳癌処置は、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.25以下である場合よりも該対象において有効である可能性がより高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.2より大きい場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む該乳癌処置は、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.2以下である場合よりも該対象において有効である可能性がより高い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該対象の乳癌が、アンドロゲン受容体陽性腫瘍細胞の存在により特性付けられる、請求項1−3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該組織が、生検から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該体液が、血液、リンパ液、尿、唾液、乳管洗浄細胞診からの流体および乳頭吸引液からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アンドロゲン受容体阻害剤を含む、対象におけるトリプルネガティブ乳癌を処置するための療法剤であって、ここにおいて、該アンドロゲン受容体阻害剤が、エンザルタミドであり、
該対象が、基底様亜型以外として分類された乳癌細胞を含む乳癌を有し、そして、
ここにおいて、該対象の乳癌細胞は、次の式:
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=
−0.25(基底重心分類器スコア)+0.27(ルミナルA重心分類器スコア)、
に従って、−0.3より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアによって特性付けられる、ここにおいて、該基底重分類器スコア及び該ルミナルA重心分類器スコアは、該対象の乳癌細胞に関して、表1において列挙されている内在性遺伝子セットの該細胞による発現から決定される、
前記療法剤。
【請求項8】
対象の乳癌細胞が、−0.2より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアによって特性付けられる、請求項7に記載の療法剤。
【請求項9】
対象の乳癌細胞が、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアによって特性付けられる、請求項7に記載の療法剤。
【請求項10】
該対象の乳癌が、アンドロゲン受容体陽性腫瘍細胞の存在により特性付けられる、請求項7−9のいずれか1項に記載の療法剤。
【請求項11】
該エンザルタミドが、1日1回160mgの用量で経口投与される、請求項7−10のいずれか1項に記載の療法剤。
【請求項12】
該エンザルタミドが、160mgのエンザルタミドを含む単一のカプセルとして投与される、請求項11に記載の療法剤。
【請求項13】
該エンザルタミドが、4個のカプセルとして投与され、それぞれのカプセルが、40mgのエンザルタミドを含む、請求項11に記載の療法剤。
【請求項14】
アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置が、さらにアンドロゲン受容体阻害剤ではない1種類以上の他の抗癌剤を含む、請求項7−13のいずれか1項に記載の療法剤。
【請求項15】
アンドロゲン受容体阻害剤ではない該他の抗癌剤が、シクロホスファミド、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、チオテパ、カルボプラチン、シスプラチン、タキサン類、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾロミド(temozolmide)、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン(mutamycin)、カペシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ロイプロリド、アバレリクス、ブセレリン(buserelin)、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブまたはベバシズマブ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の療法剤。
【請求項16】
アンドロゲン受容体阻害剤ではない該他の抗癌剤が、パクリタキセルである、請求項15に記載の療法剤。
【請求項17】
該処置が、さらに、該対象を試験して該対象の乳癌細胞の加重された基底およびルミナルA分類器スコアを決定する工程を含む、請求項7−9のいずれか1項に記載の療法剤。
【請求項18】
該対象が、トリプルネガティブ乳癌の処置のためのアンドロゲン受容体阻害剤以外の抗癌剤を用いた0または1ラウンドの先行する処置を受けている、請求項7−9のいずれか1項に記載の療法剤。
【請求項19】
該対象の乳癌細胞が生物学的試料に由来し、該生物学的試料が、細胞、組織および体液からなる群から選択される、請求項17に記載の療法剤。
【請求項20】
該生物学的試料が体液であり、体液が、血液、リンパ液、尿、唾液、乳管洗浄細胞診からの流体および乳頭吸引液からなる群から選択される、請求項19に記載の療法剤。
【請求項21】
該生物学的試料が組織であり、組織が生検から得られる、請求項19も記載の療法剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001] 本出願は、以下の米国仮出願の利益を主張し、その全開示が、参照により本明細書に援用される:2014年12月12日に出願された第62/091,195号;2015年4月3日に出願された第62/142,504号;および2015年5月27日に出願された第62/167,110号。
【0002】
配列リスト
[0002] 本出願は、ASCIIフォーマットでEFS−Webにより提出された配列リストを含有し、それは、参照によりそのまま本明細書に援用される。12/04/2015に作成された前記のASCIIコピーは、212181_0001_00_WO_SeqListing_ST25と名付けられており、262,467バイトの大きさである。
【0003】
発明の分野
[0003] 分野は、乳癌療法に関する。
【背景技術】
【0004】
[0004] 乳癌は、遺伝的に不均質であり生物学的に多様な疾患であると考えられている。長く認識されている臨床的および表現型的な違いは、遺伝子発現における違いと相関することが示されている。以前の乳房腫瘍の研究は、異なる臨床転帰と関係する乳癌の5種類の異なる亜型を同定している:ルミナルA(エストロゲン受容体(ER)+);ルミナルB(ER+);HER2過剰発現;正常乳房様;および基底様。Perou et al. Nature, 406(6797):747-52 (2000); Sorlie et al. PNAS, 98(19):10869-74 (2001)を参照。
【0005】
[0005] 乳癌生検および手術標本の分析は、典型的には核および細胞表面受容体(ER、PgR、およびHER2)、HER2の遺伝子増幅(免疫組織化学(IHC)によるHER2分析が決定的でない場合)、ならびに他の予後試験、例えば微小血管浸潤および増殖マーカーの評価を含む。ER+疾患に関するERシグナル伝達経路を標的とする内分泌療法およびHER2+疾患に関するHER2標的化療法は、乳癌を有するほとんどの患者の処置において重要な役割を果たす。しかし、疾患がこれらの受容体を欠いている、すなわち、いわゆる“トリプルネガティブ”乳癌または“TNBC”の患者に関しては、有効な標的化療法の同定においてほとんど進歩がなされておらず、非選択的細胞毒性化学療法が、主な療法選択肢のままである。
【0006】
[0006] アンドロゲン受容体(AR)は、乳癌における最も一般的に発現されている核ホルモン受容体であるが、悪性病変の開始または駆動におけるその機能的な役割は、まだ十分に理解されていない。3093の乳癌の研究において、ARの発現(IHCによる10%以上の核の染色)が、浸潤性乳房腫瘍の77%において、そして全ての分子表現型にわたって観察された(Collins et al., Mod Pathol 2011; 24(7):924-931)。しかし、アンドロゲン受容体のレベルは、それらが現在用いられている療法に対する反応を予測することが示されていないため、ルーチン的には評価されていない。
【0007】
[0007] AR阻害剤の使用は、乳癌の処置のための療法計画の一部として提案されてきた。例えば、Garay and Park, Am. J. Cancer Res. 2012; 2(4):434-445を参照。最近、TNBCの処置において関心が生じている。エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体およびHER2の3種類全ての発現の欠如は、利用可能な内分泌標的化療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤)および抗HER2標的化療法(トラスツズマブ)に対する無反応を予測する。そのようなTNBC腫瘍の10〜35%は、アンドロゲン受容体を発現している(Ogawa et al., Int J. Clin, Oncol. 2008;13:431435)。AR標的化療法は、トリプルネガティブ乳癌を含む乳癌の大きな割合に関する価値のある処置であることが、判明し得る。
【0008】
[0008] 乳癌の処置に関する、そして特にTNBCの処置における治療法(modality)としてのアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害における関心にもかかわらず、療法に先立って個々の患者が反応性であろうかどうかを予測する必要性が残っている。個々の患者(特にTNBC患者)がアンドロゲン受容体シグナル伝達を阻害する療法に反応するであろうか否かの可能性を予測するための試験は、患者の処置の計画において価値のある手段であろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Perou et al. Nature, 406(6797):747-52 (2000)
【非特許文献2】Sorlie et al. PNAS, 98(19):10869-74 (2001)
【非特許文献3】Collins et al., Mod Pathol 2011; 24(7):924-931
【非特許文献4】Garay and Park, Am. J. Cancer Res. 2012; 2(4):434-445
【非特許文献5】Ogawa et al., Int J. Clin, Oncol. 2008;13:431435
【発明の概要】
【0010】
[0009] 一態様において、アンドロゲン受容体阻害剤の使用を含むトリプルネガティブ乳癌に関する処置をスクリーニングする方法が提供され、その方法は、対象から得られた生物学的試料をアッセイしてその対象から得られた生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは他の亜型として分類されるかを決定することを含む。その生物学的試料が基底様亜型以外として分類される場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、その試料が基底様亜型として分類された場合よりも、有効である可能性がより高い。
【0011】
[0010] アンドロゲン受容体阻害剤を含むトリプルネガティブ乳癌に関する処置のそのような処置を必要とする対象における有効性の可能性に関するスクリーニングの方法も、提供される。その方法は、以下の工程を含む:
対象から得られた生物学的試料をアッセイして、その生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは別の亜型として分類されるかを決定する;そして
ここにおいて、その生物学的試料が基底様亜型以外として分類された場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、その試料が基底様亜型として分類された場合よりも、有効である可能性がより高い。
【0012】
[0011] 対象からの生物学的試料をトリプルネガティブ乳癌に関するその患者の処置の有効性の可能性の指標として分類する方法も、提供され、前記の処置は、アンドロゲン受容体阻害剤を含み、その方法は、以下の工程を含む:
対象から得られた生物学的試料をアッセイして、その生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは別の亜型として分類されるかを決定する;そして
ここにおいて、基底様亜型以外として分類された生物学的試料は、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置が、その試料が基底様亜型として分類された場合よりも有効である可能性がより高いことを示す。
【0013】
[0012] スクリーニングおよび分類法(まとめて“前記の方法”)の特定の態様において、生物学的試料をアッセイしてその生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは別の亜型として分類されるかを決定することは、表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現を検出することにより実施される。
【0014】
[0013] 前記の方法の特定の態様において、試料の基底重心分類器スコア(Basal Centroid classifier score)は、表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から決定される。
【0015】
[0014] 前記の方法の一態様において、基底重心分類器スコアが0.9以下である場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、基底重心分類器スコアが0.9より大きい場合よりも、その対象の処置において有効である可能性がより高いことが決定される。別の態様において、基底重心分類器スコアが0.6以下である場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、基底重心分類器スコアが0.6より大きい場合よりも、その対象の処置において有効である可能性がより高いことが決定される。別の態様において、基底重心分類器スコアが0.2〜0.8の範囲にある場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、その対象の処置において有効である可能性が高い。別の態様において、基底重心分類器スコアが0.4〜0.7の範囲にある場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、その対象の処置において有効である可能性が高い。
【0016】
[0015] 前記の方法の特定の態様において、試料の基底重心分類器スコアおよびルミナルA重心分類器スコアは、表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から決定される。その方法は、さらに、次の方程式に従って基底重心分類器スコアおよびルミナルA重心分類器スコアから加重された(Weighted)基底およびルミナルA分類器スコアを計算することを含む:
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=
−0.25(基底重心分類器スコア)+0.27(ルミナルA重心分類器スコア)
ここにおいて、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.3より大きい場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.3以下である場合よりも、その対象において有効である可能性がより高い。別の態様において、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.2より大きい場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.2以下である場合よりも、その対象において有効である可能性がより高い。別の態様において、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.25より大きい場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.25以下である場合よりも、その対象において有効である可能性がより高い。
【0017】
[0016] ある態様において、加重された基底およびルミナルA分類器スコアを決定するための方程式は、次の形をとる:
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=−0.2468275(基底重心分類器スコア)+0.2667110(ルミナルA重心分類器スコア)
[0017] 前記の方法の特定の態様において、乳癌は、アンドロゲン受容体陽性腫瘍細胞の存在により特性付けられる。
【0018】
[0018] 前記の方法の特定の態様において、生物学的試料は、細胞、組織および体液からなる群から選択される。特定の態様において、体液は、血液、リンパ液、尿、唾液、乳管洗浄細胞診からの流体および乳頭吸引液からなる群から選択される。ある態様において、組織は、生検から得られる。
【0019】
[0019] 前記の方法の全てにおいて、試料の細胞のアンドロゲン受容体の状態、すなわちAR陽性対AR陰性を決定するためのアッセイが、実施されることができる。
[0020] 対象においてトリプルネガティブ乳癌を処置する方法も提供され、前記の対象は、基底様亜型以外として分類されている乳癌細胞を含む乳癌を有し、前記の方法は、対象にアンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置を施し、それにより対象においてトリプルネガティブ乳癌を処置することを含む。
【0020】
[0021] 処置法の一態様において、対象の乳癌細胞は、表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの前記の細胞による発現から決定された0.9以下の基底重心分類器スコアにより特性付けられる。処置法の別の態様において、対象の乳癌細胞は、0.6以下の基底重心分類器スコアにより特性付けられる。処置法の別の態様において、対象の乳癌細胞は、0.2〜0.8の範囲の基底重心分類器スコアにより特性付けられる。処置法の別の態様において、対象の乳癌細胞は、0.4〜0.7の範囲の基底重心分類器スコアにより特性付けられる。
【0021】
[0022] 処置法の別の態様において、対象の乳癌細胞は、−0.3より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアにより特性付けられる。処置法の別の態様において、対象の乳癌細胞は、−0.2より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアにより特性付けられる。処置法の別の態様において、対象の乳癌細胞は、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアにより特性付けられる。
【0022】
[0023] それを必要とする対象におけるトリプルネガティブ乳癌の処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤を含むトリプルネガティブ乳癌処置も提供され、ここで、前記の処置の方法は、以下の工程を含む:(a)対象からの生物学的試料をアッセイしてその生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは別の亜型として分類されるかを決定し;そして(b)生物学的試料が基底様亜型以外として分類された場合、前記のトリプルネガティブ乳癌処置を対象に施す。
【0023】
[0024] それを必要とする対象における使用のためのトリプルネガティブ乳癌療法または処置のための療法剤も提供され、ここで、前記の薬剤は、アンドロゲン受容体阻害剤であり、前記の療法または処置は、以下の工程を含む:(a)対象からの生物学的試料をアッセイしてその生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは別の亜型として分類されるかを決定し;そして(b)生物学的試料が基底様亜型以外として分類された場合、前記の薬剤を対象に投与する。
【0024】
[0025] 対象におけるトリプルネガティブ乳癌の処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤も提供され、ここで、対象からの生物学的試料は、試料が基底様亜型以外として分類されるかまたは別の亜型として分類されるかを決定するためにアッセイされている。
【0025】
[0026] そのような処置を必要とする対象においてトリプルネガティブ乳癌を処置する方法であって、以下の工程を含む方法も、提供される:(a)生物学的試料をアッセイして、生物学的試料が基底様亜型以外として分類されるかまたは別の亜型として分類されるかを決定し;そして(b)生物学的試料が基底様亜型以外として分類された場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置を対象に施し、それにより対象における乳癌を処置する。
【0026】
[0027] 前記の処置の方法、処置、および処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤の特定の態様において、生物学的試料が基底様亜型以外として分類されるかまたは別の亜型として分類されるかを決定するための生物学的試料のアッセイは、表1において列挙されている内在性遺伝子の発現を検出することにより実施される。
【0027】
[0028] 前記の処置の方法、処置、および処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤の特定の態様において、生物学的試料のアッセイは、表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から試料の基底重心分類器スコアを決定することを含む、ここにおいて、乳癌処置は、基底重心分類器スコアが0.9以下である場合に施される。一態様において、乳癌処置は、基底重心分類器スコアが0.6以下である場合に施される。一態様において、乳癌処置は、基底重心分類器スコアが0.2〜0.8の範囲である場合に施される。別の態様において、乳癌処置は、基底重心分類器スコアが0.4〜0.7の範囲である場合に施される。
【0028】
[0029] 前記の処置の方法、処置、および処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤の特定の態様において、生物学的試料のアッセイは、表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から試料の基底重心分類器スコアおよびルミナルA重心分類器スコアを決定し、加重された基底およびルミナルA分類器スコアを計算することを含む、ここにおいて、乳癌処置は、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.3より大きい場合に施される。一態様において、乳癌処置は、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.2より大きい場合に施される。別の態様において、乳癌処置は、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.25より大きい場合に施される。
【0029】
[0030] 前記の処置の方法、処置、および処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤の特定の態様において、対象の乳癌は、さらに、アンドロゲン受容体陽性腫瘍細胞の存在により特性付けられる。
【0030】
[0031] 前記の処置の方法、処置、および処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤の態様において、アンドロゲン受容体阻害剤は、エンザルタミド、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、ARN509、ケトコナゾール、酢酸アビラテロン、VN/124−1(TOK−001)、オルテロネル(orteronel)(TAK−700)、フィナステリド、ガレテロン(galeterone)、酢酸シプロテロン、アンダリン(andarine)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。アンドロゲン受容体阻害剤のリストは、典型的なものであり、限定的であることは意味されていない。
【0031】
[0032] 特定の態様において、アンドロゲン受容体阻害剤は、エンザルタミドである。あるそのような態様において、エンザルタミドは、1日1回160mgの用量で経口投与される。ある態様において、エンザルタミドは、160mgのエンザルタミドを含む単一のカプセルとして投与される。他の態様において、エンザルタミドは、4個のカプセルとして投与され、それぞれのカプセルが、40mgのエンザルタミドを含む。
【0032】
[0033] 前記の処置の方法、処置、および処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤の態様において、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、さらに、アンドロゲン受容体阻害剤ではない1種類以上の他の抗癌剤を含む。アンドロゲン受容体阻害剤ではないそのような他の抗癌剤は、シクロホスファミド、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、チオテパ、カルボプラチン、シスプラチン、タキサン類、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾロミド(temozolmide)、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン(mutamycin)、カペシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ロイプロリド、アバレリクス、ブセレリン(buserlin)、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブまたはベバシズマブ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることができる。他の抗癌剤のリストは、典型的なものであり、限定的であることは意味されていない。
【0033】
[0034] 一態様において、非AR阻害剤抗癌剤は、パクリタキセルである。別の態様において、AR阻害剤は、エンザルタミドであり、非AR阻害剤抗癌剤は、パクリタキセルである。
【0034】
[0035] 特定の態様において、処置法は、対象を試験してその対象が基底様亜型以外である乳癌細胞を含む乳癌を有するかどうかを決定する工程を含む。
[0036] 特定の態様において、処置法は、対象を試験してその対象の乳癌細胞の基底重心分類器スコアを決定する工程を含む。
【0035】
[0037] 特定の態様において、処置法は、対象を試験してその対象の乳癌細胞の加重された基底およびルミナルA分類器スコアを決定する工程を含む。
[0038] 前記の処置の方法、処置、および処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤のある態様において、対象は、トリプルネガティブ乳癌の処置のためのアンドロゲン受容体阻害剤以外の抗癌剤を用いたゼロまたは1ラウンドの先行する処置を受けている。
【0036】
[0039] 前記のスクリーニング法、分類法、処置法、処置、および処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤の態様において、生物学的試料は、細胞、組織および体液からなる群から選択されることができる。特定の態様において、体液は、血液、リンパ液、尿、唾液、乳管洗浄細胞診からの流体および乳頭吸引液からなる群から選択される。ある態様において、組織は、生検から得られる。
【0037】
[0040] 前記のスクリーニング法、分類法、処置法、処置、および処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤の全てにおいて、試料の細胞のアンドロゲン受容体の状態、すなわちAR陽性対AR陰性を決定するためのアッセイが、実施されることができる。
【0038】
[0041] 開示された組成物および方法に関して本明細書において思い描かれているように、一側面において、本発明の態様は、本明細書で開示される構成要素および/または工程を含む。別の側面において、本発明の態様は、本質的に本明細書で開示される構成要素および/または工程からなる。さらに別の側面において、本発明の態様は、本明細書で開示される構成要素および/または工程からなる。
【0039】
定義
[0042] 冠詞“a”および“an”は、本明細書において、その冠詞の文法上の目的語の1つを、または1つ以上を(すなわち少なくとも1つを)指すために用いられている。例として、“要素(an element)”は、1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0040】
[0043] “約”は、当業者により理解されていると考えられ、それが用いられる文脈に応じてある程度変動するであろう。本明細書で用いられる際、“約”は、±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにもっと好ましくは±1%、そしてさらにもっと好ましくは±0.1%の変動を包含することが意味されている。
【0041】
[0044] “アンドロゲン受容体阻害剤”は、アンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達経路を直接または間接的に阻害する化合物または分子を意味する。一態様において、AR受容体の直接的な阻害剤は、エンザルタミド、ビカルタミド(Casodex)、フルタミド、ニルタミド、ARN509等を含む。別の態様において、ARの間接的な阻害剤は、Cyp17阻害剤、例えばケトコナゾール、酢酸アビラテロン、VN/124−1(TOK−001)、オルテロネル(orteronel)(TAK−700)等を含む。別の態様において、AR阻害剤は、フィナステリド、ガレテロン、酢酸シプロテロンおよびアンダリン等を含む。
【0042】
[0045] “発現を検出すること”により、内在性遺伝子のRNA転写産物またはその発現産物の量または存在を決定することが、意図されている。
[0046] “阻害する”または阻害するの他の形態により、特定の特徴を妨げる、または抑制することが意味される。これは、典型的にはある標準値または期待値に関し、換言すれば、それは、相対的であるが、それは、標準値または相対値は常に必要であるわけではないということは、理解されている。
【0043】
[0047] 全体を通して用いられているように、“対象”により、個体、典型的には哺乳類または家禽が意味される。哺乳類は、例えば、飼い慣らされた動物(例えばネコまたはイヌ)、家畜(例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)、実験動物(例えばマウス、ウサギ、ラット、モルモット等)および霊長類を含むことができる。好ましくは、哺乳類は、ヒトである。
【0044】
[0048] “トリプルネガティブ乳癌”または“TNBC”は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)およびHer2/neuに関する遺伝子を発現していないあらゆる乳癌を指す。その用語は、原発性上皮性TNBC、ならびに他の腫瘍と関わっているTNBCを含む。その癌は、乳房のトリプルネガティブ癌、乳房の腺管癌、乳房の小葉癌、乳房の未分化癌、乳房の葉状嚢胞肉腫、乳房の血管肉腫、乳房の原発性リンパ腫を含み得る。TNBCは、トリプルネガティブ乳癌のあらゆる病期を含むこともでき、組織学的および超微細構造的(ultrastructual)不均一性(例えば混合された細胞型)を有する乳房新生物を含むことができる。
【0045】
[0049] “アンドロゲン受容体阻害剤を含むTNBC処置”は、アンドロゲン受容体阻害剤の投与を含むTNBC処置である。その処置は、他の抗癌剤または化学療法剤を含むことができる。
【0046】
[0050] TNBCに関する処置“を必要とする”対象は、TNBCを有する、もしくはTNBCの1以上の症状を示している対象、または一般集団と比較してTNBCを発現する増大したリスクを有する対象である。好ましくは、TNBCに関する処置を“必要とする”対象は、TNBCで苦しんでいる対象である。
【0047】
[0051] 本明細書で用いられる際、“療法上有効量”または“療法上有効用量”は、少なくとも療法的作用をもたらすために十分である薬剤、化合物、物質、または化合物を含有する組成物を指す。有効量は、疾患または障害の症状を予防する、治療する、改善する、停止させる、または部分的に停止させるために必要な療法剤の量である。
【0048】
[0052] “処置すること”または“処置”は、完全な治癒を意味しない。それは、基礎となる疾患の症状が低減していること、および/または症状を引き起こしている基礎となる細胞性の、生理学的な、もしくは生化学的な原因もしくは機序の1以上が低減していることを意味する。この文脈において用いられる場合の“低減している”は、疾患の生理学的状態に限らず、疾患の分子状態も含め、疾患の状態に関する低減を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】[0053] 図1は、TNBCがARも発現していた患者においてエンザルタミドを評価する臨床試験のプレスクリーニングまたはスクリーニング期間のどちらかに登録された患者の一部からの結果のグラフである。“診断−”は、PAM50遺伝子乳癌亜型分類により決定される基底様亜型を有する患者を表す。“診断+”は、Her2、LumA、LumBまたは正常亜型を有する患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図2】[0054] 図2Aおよび2Bは、同じTNBC臨床試験の結果のグラフであり、ここで、基底様亜型に関する患者の遺伝子発現分類器スコアは、患者の反応と相関していた。患者の基底重心分類器スコアに関する0.2の閾値カットオフが、適用された。“診断+”は、試料が示された(indicted)閾値カットオフを含む示された予後サイン(prognostic signature)を満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図3】[0055] 図3Aおよび3Bは、同じTNBC臨床試験の結果のグラフであり、ここで、基底様亜型に関する患者の遺伝子発現分類器スコアは、患者の反応と相関していた。患者の基底重心分類器スコアに関する0.3の閾値カットオフが、適用された。“診断+”は、試料が示された(indicted)閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図4】[0056] 図4Aおよび4Bは、同じTNBC臨床試験の結果のグラフであり、ここで、基底様亜型に関する患者の遺伝子発現分類器スコアは、患者の反応と相関していた。患者の基底重心分類器スコアに関する0.4の閾値カットオフが、適用された。“診断+”は、試料が示された(indicted)閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図5】[0057] 図5Aおよび5Bは、同じTNBC臨床試験の結果のグラフであり、ここで、基底様亜型に関する患者の遺伝子発現分類器スコアは、患者の反応と相関していた。患者の基底重心分類器スコアに関する0.5の閾値カットオフが、適用された。“診断+”は、試料が示された(indicted)閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図6】[0058] 図6Aおよび6Bは、同じTNBC臨床試験の結果のグラフであり、ここで、基底様亜型に関する患者の遺伝子発現分類器スコアは、患者の反応と相関していた。患者の基底重心分類器スコアに関する0.6の閾値カットオフが、適用された。“診断+”は、試料が示された(indicted)閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図7】[0059] 図7Aおよび7Bは、同じTNBC臨床試験の結果のグラフであり、ここで、基底様亜型に関する患者の遺伝子発現分類器スコアは、患者の反応と相関していた。患者の基底重心分類器スコアに関する0.65の閾値カットオフが、適用された。“診断+”は、試料が示された(indicted)閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図8】[0060] 図8Aおよび8Bは、同じTNBC臨床試験の結果のグラフであり、ここで、基底様亜型に関する患者の遺伝子発現分類器スコアは、患者の反応と相関していた。患者の基底重心分類器スコアに関する0.7の閾値カットオフが、適用された。“診断+”は、試料が示された(indicted)閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図9】[0061] 図9Aおよび9Bは、同じTNBC臨床試験の結果のグラフであり、ここで、基底様亜型に関する患者の遺伝子発現分類器スコアは、患者の反応と相関していた。患者の基底重心分類器スコアに関する0.8の閾値カットオフが、適用された。“診断+”は、試料が示された(indicted)閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図10】[0062] 図10Aおよび10Bは、同じTNBC臨床試験の結果のグラフであり、ここで、基底様亜型に関する患者の遺伝子発現分類器スコアは、患者の反応と相関していた。患者の基底重心分類器スコアに関する0.9の閾値カットオフが、適用された。“診断+”は、試料が示された(indicted)閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図11】[0063] 図11は、臨床試験においてエンザルタミドで処置された様々な患者の部分群のエンザルタミドへの反応の図示を含む。反応は、24週間以上の時点での臨床的有用率(Clinical Benefit Rate)(CBR24)に関して示されている。部分群は、治療企図(ITT)患者;評価可能な患者;AR染色10%以上であった乳房腫瘍組織を有する患者(IHC AR>=10%);乳房腫瘍組織がPAM50亜型分類器により非基底様亜型として分類された患者(PAM50 非基底);腫瘍が基底様亜型として分類された患者(PAM50 基底);ならびに患者の基底重心分類器スコアから<0.6、≧0.6、<0.7、≧0.7、<0.75および≧0.75の示されたカットオフを適用することにより分析された患者試料を含む。“DX−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を示す。“DX+”は、試料が示された閾値カットオフを満たした患者を示す。図11において、IHC AR>=10%およびDX+<0.6の組み合わせた基準に関するデータも示されている。
図12】[0064] 図12は、臨床試験においてエンザルタミドで処置された様々な患者の部分群のエンザルタミドに対する反応のさらなる図示である。反応は、24週間以上の時点での臨床的有用率(CBR24)に関して示されている。部分群は、治療企図(ITT)患者;評価可能な患者;10%以上のAR染色であった乳房腫瘍組織を有する患者(IHC AR>=10%);およびエンザルタミド療法が療法の最初(第1選択)または2番目(第2選択)として施されている患者を含む。部分群は、さらに、基底重心分類器スコアに対して0.6未満のカットオフを適用することにより分析された患者試料の部分群(“新規DX+”)、ならびに基底重心分類器スコアに対して0.6未満のカットオフを適用した第1および第2選択療法からの試料を含む部分群を含む。
図13】[0065] 図13は、エンザルタミドで処置された患者の無増悪生存中央値(MPS)を時間の関数として示すカプラン・マイヤープロットである。曲線は、0.6未満の基底重心分類器スコアの新規予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“新規DX Pos”)対その定義を満たさなかった患者(“新規DX Neg”)に対応する。
図14-1】[0066] 図14A〜14Dは、TNBCの処置に関する薬物エンザルタミドの臨床試験における患者の反応の結果を含む。遺伝子発現分析が、表1のPAM50内在性遺伝子セットを用いて患者の乳房腫瘍試料に対して実施された。基底様遺伝子発現重心に対するスピアマンの順位相関が、それぞれの試料に関して評価され、“基底重心分類器スコア”として割り当てられた。ルミナルA遺伝子発現重心に対するスピアマンの順位相関が、それぞれの試料に関して評価され、“ルミナルA分類器スコア”として割り当てられた。患者試料の加重された基底およびルミナルA分類器スコアが、次の式から決定された: 加重された基底およびルミナルA分類器スコア=−0.2468275(基底重心分類器スコア)+0.2667110(ルミナルA重心分類器スコア)。
【0050】
エンザルタミド反応/無反応データは、以下の加重された基底およびルミナルA分類器スコアカットオフを用いて分析された:>−0.2(図14A)、>−0.25(図14B)、>−0.3(図14C)および>−0.35(図14D)。そのデータは、図14A〜14Dにおいて示されている。それぞれの図において、“診断+”は、試料が示された(indicted)閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図14-2】[0066] 図14A〜14Dは、TNBCの処置に関する薬物エンザルタミドの臨床試験における患者の反応の結果を含む。遺伝子発現分析が、表1のPAM50内在性遺伝子セットを用いて患者の乳房腫瘍試料に対して実施された。基底様遺伝子発現重心に対するスピアマンの順位相関が、それぞれの試料に関して評価され、“基底重心分類器スコア”として割り当てられた。ルミナルA遺伝子発現重心に対するスピアマンの順位相関が、それぞれの試料に関して評価され、“ルミナルA分類器スコア”として割り当てられた。患者試料の加重された基底およびルミナルA分類器スコアが、次の式から決定された: 加重された基底およびルミナルA分類器スコア=−0.2468275(基底重心分類器スコア)+0.2667110(ルミナルA重心分類器スコア)。
【0051】
エンザルタミド反応/無反応データは、以下の加重された基底およびルミナルA分類器スコアカットオフを用いて分析された:>−0.2(図14A)、>−0.25(図14B)、>−0.3(図14C)および>−0.35(図14D)。そのデータは、図14A〜14Dにおいて示されている。それぞれの図において、“診断+”は、試料が示された(indicted)閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。患者は、実施例1において述べられた基準に従ってエンザルタミド療法に対する“反応者”または“非反応者”として採点された。
図15】[0067] 図15は、臨床試験においてエンザルタミドで処置された様々な患者の部分群のエンザルタミドへの反応の図示を含む。反応は、24週間以上の時点での臨床的有用率(CBR24)に関して示されている。部分群は、治療企図(ITT)患者;評価可能な患者;乳房腫瘍組織がPAM50亜型分類器により非基底様亜型として分類された患者(PAM50 非基底);腫瘍が基底様亜型として分類された患者(PAM50 基底);ならびに乳房腫瘍組織試料が加重された基底およびルミナルA分類器スコアに対して>−0.2、>−0.25、>−0.3、および>−0.35の示されたカットオフを適用することにより分析された患者を含む。“PR−AR DX−”は、試料が試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を示す。“PR−AR DX+”は、試料が示された閾値カットオフを満たした患者を示す。アンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物によるTNBCの処置のための0〜1回の先行する療法を受けた後(“および0〜1回の先行する療法”)またはアンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物によるTNBCの処置のための2回以上の先行する療法を受けた後(“および2回以上の先行する療法”)にエンザルタミド療法を受ける試験における患者からの試料に関する反応データ(>−0.25の加重された基底およびルミナルA分類器スコアカットオフを適用)も、示されている。
図16】[0068] 図16は、エンザルタミドで処置された患者の無増悪生存を56週間までの時間の関数として示すカプラン・マイヤープロットである。曲線は、−0.2より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.2”、上の曲線)対−0.2以下の分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.2”、下の曲線)に対応する。
図17】[0069] 図17は、エンザルタミドで処置された患者の無増悪生存を56週間までの時間の関数として示すカプラン・マイヤープロットである。曲線は、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.25”、上の曲線)対−0.25以下の分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.25”、下の曲線)に対応する。
図18】[0070] 図18は、エンザルタミドで処置された患者の無増悪生存を56週間までの時間の関数として示すカプラン・マイヤープロットである。曲線は、−0.3より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.3”、上の曲線)対−0.3以下の分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.3”、下の曲線)に対応する。
図19】[0071] 図19は、エンザルタミドで処置された患者の無増悪生存を56週間までの時間の関数として示すカプラン・マイヤープロットである。曲線は、−0.35より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.35”、上の曲線)対−0.35以下の分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.35”、下の曲線)に対応する。
図20】[0072] 図20は、アンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物によるTNBCの処置のための0〜1回の先行する療法を受けた後にエンザルタミドで処置された患者の無増悪生存を示すカプラン・マイヤープロットである。曲線は、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.25”、上の曲線)対−0.25以下の分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.25”、下の曲線)に対応する。
図21】[0073] 図21Aおよび21Bは、アンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物によるTNBCの処置のための0〜1回(0〜1先行ライン(Prior Lines))または2回以上(2+先行ライン)の先行する療法を受けている患者におけるAR阻害剤療法に対する反応の予測因子としての>−0.25の加重された基底およびルミナルA分類器スコアのカットオフを利用する新規の予後サインの作用のグラフを含む。図21Bの56人の患者は、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された。−0.25以下の分類器スコアにより同定された62人の試験患者が、図21Aにおいて同定されている。図中のそれぞれの棒は、1人の患者を表す。三角形(“有効”)で印を付けられた患者の棒は、試験において有効である。星で印を付けられた患者の棒は、完全な反応(CR)または部分的な反応(PR)を示す。
図22】[0074] 図22Aおよび22Bは、それぞれエンザルタミドで処置された患者の無増悪生存中央値(図22A)(mPFS)および全生存中央値(mOS)を時間の関数として示すカプラン・マイヤープロットを含む。曲線は、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+”、上の曲線)対−0.25以下の分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−”、下の曲線)に対応する。図22A:サイン条件を満たしている患者に関してmPFS=16.1週間;サイン条件を満たしていない患者に関してmPFS=8.1週間。図22B:サイン条件を満たしている患者に関してmOS=84週目の時点でNYR(まだ達していない);サイン条件を満たしていない患者に関してmOS=32.1週間。
図23】[0075] 図23は、アンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物によるTNBCの処置のための0〜1回の先行する療法を受けた後にエンザルタミドで処置された患者の無増悪生存を示すカプラン・マイヤープロットである。曲線は、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.25”、上の曲線)対−0.25以下の分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.25”、下の曲線)に対応する。データは、図20の試験の継続に相当し、図23では図20の56週間の期間を超えて64週間まで取られた。図23において、サイン条件を満たしている患者に関してmPFS=40.4週間;サイン条件を満たしていない患者に関してmPFS=8.9週間。“NYR”は、図23におけるサイン条件を満たしている患者により表されるデータに関する95%信頼区間(CI)の記載において、“まだ達していない”を意味する。
図24-1】[0076] 図24A、24Bおよび24Cは、それぞれ示された濃度のエンザルタミド(Enza)、パクリタキセル(PTX)またはそれらの組み合わせで処置された際のTNBC細胞株BP549、MDA−MB−436およびMDA−MB−453の生存可能性を示す。平均値が、それぞれの株(n=5)に関して示されている。
図24-2】[0076] 図24A、24Bおよび24Cは、それぞれ示された濃度のエンザルタミド(Enza)、パクリタキセル(PTX)またはそれらの組み合わせで処置された際のTNBC細胞株BP549、MDA−MB−436およびMDA−MB−453の生存可能性を示す。平均値が、それぞれの株(n=5)に関して示されている。
図24-3】[0076] 図24A、24Bおよび24Cは、それぞれ示された濃度のエンザルタミド(Enza)、パクリタキセル(PTX)またはそれらの組み合わせで処置された際のTNBC細胞株BP549、MDA−MB−436およびMDA−MB−453の生存可能性を示す。平均値が、それぞれの株(n=5)に関して示されている。
図25-1】[0077] 図25Aおよび25Bは、(i)3mg/kg/日のエンザルタミド(Enza)の経口強制摂取(PO)(n=10)、(ii)6mg/kg QMWF(IP)のパクリタキセル(PTX)(n=7)、または(iii)(i)および(ii)の組み合わせ(n=10)の後TNBC細胞株MDA−MB−453の細胞を移植されたNOD−SCIDマウスにおいて誘導された腫瘍の成長を示す。腫瘍体積は、図25Aにおいて示された日に測定された。図25Aにおけるデータの点は、それぞれの群に関する平均腫瘍体積を表し、エラーバーは、データのSEMを反映している。図25Bにおける腫瘍重量は、35日目に決定された。
図25-2】[0077] 図25Aおよび25Bは、(i)3mg/kg/日のエンザルタミド(Enza)の経口強制摂取(PO)(n=10)、(ii)6mg/kg QMWF(IP)のパクリタキセル(PTX)(n=7)、または(iii)(i)および(ii)の組み合わせ(n=10)の後TNBC細胞株MDA−MB−453の細胞を移植されたNOD−SCIDマウスにおいて誘導された腫瘍の成長を示す。腫瘍体積は、図25Aにおいて示された日に測定された。図25Aにおけるデータの点は、それぞれの群に関する平均腫瘍体積を表し、エラーバーは、データのSEMを反映している。図25Bにおける腫瘍重量は、35日目に決定された。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[0078] 本発明は、TNBCで苦しんでいる対象においてTNBCを処置する方法を提供し、ここで、TNBCで苦しんでいる対象の乳癌細胞は、下記でより詳細に記載される内在性遺伝子の特定のセットのそれらの細胞による発現に由来する点数により特性付けられる。本発明は、TNBCで苦しんでいる患者に関する療法の過程としての投与に関してAR阻害剤を含むTNBC処置が推奨される(有効である可能性が高いと考えられる)かどうかを評価する方法も提供する。従って、本発明は、一態様において、アンドロゲン受容体阻害剤の使用を含むトリプルネガティブ乳癌に関する処置を評価する方法を提供し、その方法は、対象から得られた生物学的試料をアッセイしてその対象から得られた生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは他の亜型として分類されるかを決定することを含む。生物学的試料が基底様亜型以外として分類される場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、その試料が基底様亜型として分類された場合よりも、有効である可能性がより高い。従って、本発明は、一態様において、以前に基底様亜型以外として分類された乳癌細胞を含む癌を有する対象においてトリプルネガティブ乳癌を処置する方法を提供する。その方法は、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置を対象に施し、それにより対象においてトリプルネガティブ乳癌を処置することを含む。
【0053】
[0079] 本発明は、さらに、TNBC患者がAR阻害剤療法を含む処置を受けるべきかどうかを決定し、次いでその決定に基づいて最適なAR阻害剤処置をその患者に施すことによりTNBCを処置する方法を提供する。本明細書で参照される試験は、免疫組織化学(IHC)によりAR受容体に関して陽性である腫瘍組織染色を含む患者試料に対して実施されたが、本発明の範囲は、AR(+)TNBCの処置および予後に限定されない。
【0054】
[0080] 内在性遺伝子分析に基づく乳房腫瘍の研究は、乳癌の5種類の異なる亜型を同定している:ルミナルA(LumA)、ルミナルB(LumB)、HER2富化(Her−2−E)、基底様、および正常様(Perou et al. Nature, 406(6797):747-52 (2000); Sorlie et al. PNAS, 98(19):10869-74 (2001))。HER2富化亜型は、本明細書において“HER2”により言及される可能性があり、後者は、HER2富化亜型も意味することは、理解されている。基底様亜型は、本明細書において“基底”と呼ばれる可能性もあり、後者は、基底様亜型も意味することは、理解されている。従って、乳癌試料または細胞は、細胞または試料を前記の亜型に割り当てることにより“分類される”。乳癌試料または細胞は、否定的な用語で“分類される”と考えられることもでき、すなわち、細胞または試料は、その細胞または試料がLumA、LumB、HER2、または正常様亜型のものであると決定されたら、“非基底”または“基底以外”と分類されることができる。
【0055】
[0081] 我々は、意外にも、基底様亜型の存在がTNBCにおけるAR阻害剤を用いた処置に対する臨床的無反応の可能性を示していることを見出している。我々は、0.9以下の基底重心分類器スコアはAR阻害剤に対する臨床的反応の可能性を示していることを見出している。我々は、意外にも、TNBC患者からの生物学的試料に対して実施された基底様およびルミナルA亜型分析に基づく実験的に決定された加重されたスコアは、AR阻害剤を用いた処置に対する臨床的反応の可能性を示していることも、見出している。従って、一態様において、アッセイが、乳癌亜型を決定するために、TNBCを患っている患者からの生物学的試料に対してそのように実施される。別の態様において、アッセイが、基底重心分類器スコア、または基底重心分類器スコアおよびルミナルA分類器スコアの両方を決定するために、TNBCを患っている患者からの生物学的試料に対して実施される。
【0056】
[0082] 生物学的試料が基底様亜型以外の亜型として分類されるかどうかを決定するためのアッセイは、基底様亜型の存在を決定するためのアッセイを含むことができ;否定的な結果は、非基底亜型を示す。基底様亜型の存在を同定することができるあらゆるアッセイが、この目的のために利用されることができる。トリプルネガティブ癌のおおよそ70〜90%が、基底様乳癌であることが明らかになり(Bertucci et al., Int. J. Cancer 2008, 123, 236-240; Wang et al,. Eur. J. Clin. Invest. 2008, 38, 438-446)、トリプルネガティブ表現型は、基底様亜型に関する代用として用いられてきた。しかし、研究は、トリプルネガティブおよび基底様乳房腫瘍は同義ではないことを示している。例えば、Choo and Nielsen, Cancers 2010, 2, 1040-1065を参照。従って、基底様亜型を同定するためのアッセイの選択において注意が払われなければならない。
【0057】
[0083] 最近、基底様亜型に特徴的であることが分かっている以下のプロフィールに頼る基底様亜型に関するアッセイが、発表された:ER陰性、HER2陰性、ならびにサイトケラチン5/6および/またはHER1陽性。従って、4種類の抗体のパネル(ER、HER1、HER2、およびサイトケラチン5/6)が、乳房基底様腫瘍を同定するための免疫組織化学的プロフィールとして提案されている(Nielsen et al., Clinical Cancer Research 2014; 10:5367-5374)。
【0058】
[0084] 基底様およびルミナルA亜型分析は、内在性遺伝子の発現を乳癌分類のための分類器遺伝子として利用する遺伝子発現アッセイの手段により実施される。Perou et al. (2000) Nature 406:747-752において記載されているような内在性遺伝子が、同じ個人からの生物学的試料の複製の間での発現における低い変動および異なる個人からの試料にわたる発現における高い変動を有するように、統計学的に選択される。本発明は、PAM50遺伝子発現アッセイ(Parker et al. J Clin Oncol., 27(8):1160-7 (2009)および米国特許出願公開第2011/0145176号、両方とも参照によりそのまま本明細書に援用される)を利用する。PAM50遺伝子発現アッセイは、乳癌の内在性亜型(ルミナルA、ルミナルB、HER2富化、基底様、および正常様)を標準的な生物学的試料、例えばホルマリン固定されパラフィン包理された腫瘍組織から同定するために用いられることができる。PAM50遺伝子発現分類器は、乳癌を50遺伝子の内在性遺伝子サインを用いて5種類の前記の分子亜型の1つに分類するための、監督された重心ベースの予測法である。
【0059】
[0085] Parker et al.において、そして米国特許出願公開第2011/0145176号において、ならびに米国特許出願公開第2013/0004482号において記載されているように、PAM50遺伝子発現アッセイ法は、監督されたアルゴリズムを利用して対象の試料を乳癌の内因性亜型に従って分類する。本明細書において“PAM50分類モデル”または“PAM50分類器”と呼ばれるこのアルゴリズムは、乳癌の内因性亜型を分類するために同定された50の内在性遺伝子の定められた部分集合の遺伝子発現プロフィールに基づく。遺伝子の部分集合は、それらの検出に特異的なプライマーと共に、米国特許出願公開第2013/0004482号の表1において提供されており、下記で本開示の表1として再現されている。同じ50の内在性遺伝子の選択配列が、下記の表2において示されている。公開第2013/0004482号の全開示が、参照により本明細書に援用される。
【0060】
[0086] 表1の50種類の亜型予測遺伝子のセットの発現の検出および推定は、あらゆる適切な手段により実施される。
[0087] PAM50遺伝子発現分類器は、アルゴリズムを“訓練する”ための客観的に選択された原型試料のプロフィールに基づいて開発された監督された予測アルゴリズムを用いることにより作動する。試料は、拡張された内在性遺伝子のセットを米国特許公開第2009/0299640号において開示されている方法に従って用いて選択および亜型分類され、その全開示は、参照により本明細書に援用される。訓練試料を亜型に従って階層化した後、重心ベースの予測アルゴリズムが、表1において記載されている内在性遺伝子のセットの発現プロフィールに基づいてそれぞれの分子亜型に関する重心を構築するために用いられる。重心は、それぞれの亜型(または“クラス”)におけるそれぞれの遺伝子に関する平均遺伝子発現をその遺伝子に関するクラス内での標準偏差で割ったものである。最も近い重心分類は、新規の試料の遺伝子発現プロフィールを受け取り、それをこれらのクラスの重心のそれぞれに対して比較する。亜型予測は、それぞれの試験事例のPAM50亜型の5つの重心に対するスピアマンの順位相関を計算し、試料を最も近い重心に基づいて亜型に割り当てることにより行われる。
【0061】
[0088] 患者試料をPAM50亜型に割り当てることを必ずしも含まない一態様によれば、基底様遺伝子発現重心に対するスピアマンの順位相関が、決定される。試料および基底様重心の間のスピアマンの順位相関は、“基底重心分類器スコア”として割り当てられる。ルミナルA遺伝子発現重心に対するスピアマンの順位相関が、決定される。試料およびルミナルA重心の間のスピアマンの順位相関は、“ルミナルA重心分類器スコア”として割り当てられる。PAM50ベースのサインを利用して基底重心分類器スコアおよびルミナルA重心分類器スコアを提供するための方法は、当業者に既知である。例えば、米国特許出願公開第2009/0299640号;Parker et al., J Clin. Oncol., 27(8):1160-7 (2009);米国特許出願公開第2011/0145176号を参照。例えば、参照により本明細書に援用されるPrat et al., British Journal of Cancer, (2014) 111, 1532-1541も参照。
【0062】
[0089] 我々は、AR阻害剤エンザルタミドにより処置されたTNBC患者の臨床試験により実証されたように、0.9以下の基底重心分類器スコアはAR阻害剤への臨床的反応の可能性を示していることを見出している。ある態様において、0.9以下、0.2〜0.8、0.4〜0.7の基底重心分類器スコアが、AR阻害剤に対する臨床的反応の可能性を予測するために用いられる。一態様において、0.6以下の基底重心分類器スコアが、AR阻害剤に対する臨床的反応の可能性を予測するために用いられる。
【0063】
[0090] 我々は、さらに、基底重心分類器スコアおよびルミナルA重心分類器スコアは、特定の実験的に定められた重み係数に対して組み合わせた際に、個々のTNBC患者におけるアンドロゲン受容体阻害剤療法に対する反応性をさらに予測するために用いられることができるスコア(“加重された基底およびルミナルA分類器スコア”)を提供することを、見出している。加重された基底およびルミナルA分類器スコアは、次の方程式から決定される:
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=
−0.25(基底重心分類器スコア)+0.27(ルミナルA重心分類器スコア)。
【0064】
[0091] ある態様において、加重された基底およびルミナルA分類器スコアを決定するための方程式は、次の形をとる:
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=−0.2468275(基底重心分類器スコア)+0.2667110(ルミナルA重心分類器スコア)。
【0065】
[0092] AR阻害剤エンザルタミドで処置されたTNBC患者の臨床試験により実証されたように、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.3より大きい場合、患者は、AR阻害剤療法に反応する可能性が高い患者として同定される。あるいは、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.2より大きい場合、患者は、やはりAR阻害剤療法に反応する可能性が高い患者として同定されることができる。−0.25をAR阻害剤療法に対する反応性を予測するためのカットオフとして選択することにより、増大した正確さが得られる。従って、好ましい態様において、加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.25より大きい場合、患者は、AR阻害剤療法に反応する可能性が高い患者として同定される。TNBC患者が、加重された基底およびルミナルA分類器スコアの決定により、TNBCに関するAR阻害剤療法に反応する可能性が高い患者として同定された場合、適切なAR阻害剤療法が、その患者におけるTNBCの状態を処置するために施されることができる。
【0066】
[0093] AR阻害剤療法に対する患者の反応を予測するための加重された基底およびルミナルA分類器スコアの有用性が、図14A〜14Dおよび図15において図説されている。その図は、臨床試験においてエンザルタミドで処置された様々なTNBC患者の部分群のエンザルタミドに対する反応の図示を含む。エンザルタミド療法に対する患者の反応性は、加重された基底およびルミナルA分類器スコアと相関していた(加重された基底およびルミナルA分類器スコアに>−0.2(図14A)、>−0.25(図14B)、>−0.3(図14C)、および>−0.35(図14D)の一連のカットオフを適用)。図14A〜Dにおける“診断−”および図15における“PR−AR DX−”は、試料が示された加重された基底およびルミナルA分類器スコア閾値カットオフを満たさなかった患者を示す。図14A〜Dにおける“診断+”および図15における“PR−AR DX+”は、試料が示された閾値カットオフを満たした患者を示す。データの考察から明らかであるように、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアは、TNBC患者のエンザルタミド療法に対する反応性の予測において最高レベルの正確さを提供し、−0.2より大きい、または−0.3より大きい、の基準も、許容可能な結果を提供した。
【0067】
[0094] 患者の反応ならびに加重された基底およびルミナルA分類器スコアの間の相関は、さらに、エンザルタミドで処置されたTNBC患者の無増悪生存を56週間までの時間の関数として示す図16〜19のカプラン・マイヤープロットにおいて図説されている。図16における曲線は、−0.2より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.2”、上の曲線)対−0.2以下の分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.2”、下の曲線)に対応する。図17、18および19は、図16に類似しており、ここで、−0.25より大きい(図17)、−0.3より大きい(図18)、および−0.35より大きい(図19)のサイン条件が課せられた。それぞれの個々のプロット上のそれぞれの曲線の間の垂直方向分離の大きさは、患者の加重された基底およびルミナルA分類器スコアならびに無増悪生存の間の相関の正確さの尺度であることが、理解されることができる。これに基づいて、さらに、図16〜19の比較から、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの基準の適用(図17)は、加重された基底およびルミナルA分類器スコアのTNBC患者のエンザルタミド療法への反応性に対する相関における最高の正確さを提供し、−0.2より大きい(図16)または−0.3より大きい(図18)の基準も、許容可能な結果をもたらしたことが、理解されることができる。
【0068】
[0095] TNBCに関するAR阻害剤療法への反応性の予測因子としての新規の加重された基底およびルミナルA分類器スコアは、先行するTNBC療法を受けなかった患者または1ラウンドより多くない先行するTNBC療法を受けている患者のどちらにおいてもさらに大きい正確さを達成することも分かった。図20および図17の比較から理解されることができるように、0〜1回の先行する療法の患者群(図20)対全ての試験患者のより大きい群(図17)において−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの基準を課すことは、図17における曲線の間の垂直方向分離に対する図20における曲線の間のより大きい垂直方向分離により明らかであるように、結果としてエンザルタミド療法に反応する患者の同定において増大した正確さをもたらした。その傾向は、さらに図23においても観察され、ここで、図20の試験対象における無増悪生存時間は、図20における56週間を超えて、図23では64週間までであることが、示されている。
【0069】
[0096] この結果は、図21Aおよび21Bにおいても図説されており、それは、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された56人の患者(図21B)対−0.25以下の分類器スコアにより同定された62人の患者(図21A)に関する疾患の進行のない処置における時間の長さ(無増悪生存)を示している。それぞれの棒は、患者を表す。患者は、エンザルタミド処置の前にアンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物による0または1回の先行するTNBC療法を受けた(0〜1先行ライン)か、またはアンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物による2回以上の先行する療法を受けた(2+先行ライン)かのどちらかであった。三角形(“有効”)で印を付けられている患者の棒は、試験において有効である。星で印を付けられている患者の棒は、完全な反応(CR)または部分的な反応(PR)を示す。疾患の進行のない処置における時間の最高値(best time)は、1回の療法の先行ラインを受けたかまたは療法の先行ラインを受けていない反応者の患者において明らかである(図21B)。
【0070】
[0097] 患者の反応および加重された基底およびルミナルA分類器スコアの間の相関は、図22Aおよび22Bのカプラン・マイヤープロットにおいてさらに図説されており、それは、試験患者の無増悪生存中央値(mPFS)(図22A)および全生存中央値(mOS)(図22B)のエンドポイントを比較している。図22Aおよび22Bにおける曲線は、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+”、上の曲線)対−0.25以下の分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−”、下の曲線)に対応する。従って、結果は、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器のスコアは無増悪生存に加えて全生存と相関していることを、示している。予後サイン条件を満たさない患者は、8.1週間の無増悪生存中央値および32.1週間の全生存中央値により特性付けられた。対照的に、予後サイン条件を満たしている患者は、16.1週間の無増悪生存中央値および84週目の時点でまだ達していない全生存中央値(mOS NYR)により特性付けられた。
【0071】
遺伝子発現検出
[0098] TNBC患者の基底重心分類器スコアまたは加重された基底およびルミナルA分類器スコアの決定における第1工程として、表1の内在性遺伝子セットの遺伝子の遺伝子発現検出が、患者の試料に対して、内在性遺伝子のRNA転写産物またはその発現産物の量または存在を検出するためのあらゆる方法により実施される。そのような方法は、本明細書に参照により援用される米国特許出願公開第2009/0299640号および第2013/0004482号において記載されている。それらは、例えば、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づく手段、方法、ポリヌクレオチドの配列決定に基づく方法、免疫組織化学の方法、およびプロテオミクスベースの方法を含む。その方法は、一般に、表1において列挙されている内在性遺伝子の発現産物(例えばmRNA)を検出する。
【0072】
[0099] 遺伝子発現をアッセイするための方法としてのRNA配列決定が、一態様において利用されることができる。内在性遺伝子セットの遺伝子発現に関するアッセイは、リアルタイムPCR、マイクロアレイ、マイクロ流体遺伝子発現、および標的化遺伝子配列決定を含むがそれらに限定されない遺伝子発現/定量化を評価するために用いられる他の技術により実施されることもできる。そのような方法は、例えば、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析、ポリヌクレオチドの配列決定に基づく方法、免疫組織化学的方法、およびプロテオミクスベースの方法を含む。PCRベースの方法、例えば逆転写PCR(RT−PCR)(Weis et al., TIG 8:263-64, 1992)、およびアレイベースの方法、例えばマイクロアレイ(Schena et al., Science 270:467-70, 1995)が、用いられることができる。
【0073】
[00100] RNA抽出のための一般的な方法は、当該技術で周知であり、Ausubel et al.編集, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York 1987-1999を含む分子生物学の標準的な教本において開示されている。パラフィン包埋された組織からのRNA抽出のための方法は、例えば、Rupp and Locker, Lab Invest. 56:A67, (1987);およびDe Andres et al., Biotechniques 18:42-44, (1995)において開示されている。単離されたRNAは、PCR分析およびプローブアレイを含むがそれらに限定されないハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにおいて用いられることができる。試料における内在性遺伝子の発現産物のレベルの決定は、例えばRT−PCR(米国特許第4,683,202号)、リガーゼ連鎖反応、自家持続配列複製法、転写増幅、ローリングサークル複製、および核酸増幅法を利用する他の方法による核酸増幅、続いて当業者に周知の技法を用いる増幅された分子の検出も含むことができる。
【0074】
[00101] マイクロアレイは、発現プロファイリングのために用いられることができる。それぞれのアレイは、固体支持体に結合した捕捉プローブの再現性のあるパターンを含む。標識されたRNAまたはDNAが、アレイ上の相補的プローブにハイブリダイズし、次いでレーザー走査により検出される。アレイ上のそれぞれのプローブに関するハイブリダイゼーション強度が検出され、相対的遺伝子発現レベルを表す定量値に変換される。例えば、米国特許第6,040,138号、第5,800,992号および第6,020,135号、第6,033,860号、および第6,344,316号を参照。高密度オリゴヌクレオチドアレイは、試料中の多数のRNAに関する遺伝子発現プロフィールを決定するために特に有用である。
【0075】
[00102] 内在性遺伝子セットの分析のための総RNAは、生物学的試料、例えば腫瘍から単離されることができる。RNAの源が原発腫瘍である場合、RNA(例えばmRNA)は、例えば凍結された、または保管されたパラフィン包理および固定された(例えばホルマリン固定された)組織試料(例えば病理学者に手引きされた組織コア試料)から抽出されることができる。
【0076】
遺伝子分析およびデータ処理
[00103] 内在性遺伝子セットからの患者試料の遺伝子発現データは、例えば配列データのアラインメント、データの正規化およびデータの平均センタリングを達成するために、既知の技法により前処理されることができる。正規化の方法は、例えば以下の方法を含む:(i)アレイ上の全ての遺伝子を用いる包括的正規化;(ii)一定して発現されているハウスキーピング/インバリアント遺伝子を用いるハウスクリーニング遺伝子正規化;および(iii)ハイブリダイゼーションの間に添加された既知の量の外来性の対照遺伝子を用いる内部対照正規化(Quackenbush Nat. Genet. 32 (補遺), 496-501 (2002))。遺伝子計数の推定値は、一定の四分位値、例えば一定の上位四分位値に対して正規化されることもできる。結果として得られる正規化された遺伝子発現の推定値は、次いで、それぞれの遺伝子の発現値の中央値が既知の部分集合、例えばTNBC患者からの遺伝子の部分集合の中央値と同等であるように調節されることができる。
【0077】
[00104] 一態様によれば、PAM50分類器による処理のための患者試料の発現データは、まずアラインメントおよびデータセンタリング技法により前処理される。RNA配列データは、まずヒト(ホモ・サピエンス)ゲノム配列hg19(https://genome.ucsc.edu/cgi-bin/hgGateway?db=hg19) (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/assembly/GCF_000001405.25/)に対して例えばMapSplice(Nucleic Acids Res. 2010 Oct;38(18):e178. doi: 10.1093/nar/gkq622)を用いてアラインメントされる。遺伝子およびイソ型のレベル計数は、例えば期待値最大化によるRNA−Seq(RSEM)(http://deweylab.biostat.wisc.edu/rsem/)を用いて推定されることができる。遺伝子計数の推定値は、一定の上位四分位値に対して正規化される。次いで、結果として得られた正規化された遺伝子発現の推定値は、それぞれの遺伝子の発現値の中央値が“Comprehensive Molecular Portraits of Human Breast Tumors”The Cancer Genome Atlas Network, Nature 490, 61-70 (October 4, 2012) (http://www.nature.com/nature/journal/v490/n7418/full/nature11412.html)において報告されたTCGA RNA−Seqデータのトリプルネガティブ部分集合の中央値と同等であるように調節されることができる。
【0078】
[00105] 前処理後、PAM50遺伝子アレイからの患者試料の発現データは、内在性遺伝子セットデータを処理するための既知の技法に従って処理される。PAM50内在性遺伝子セットからの患者試料の遺伝子発現データの処理に関する完全な指示が、少なくとも以下において詳細に記載されており、本明細書では要約としてを除いて詳述されないであろう:Parker et al. J Clin Oncol., 27(8):1160-7 (2009);米国特許出願公開第2011/0145176号;および米国特許出願公開第2013/0004482号。(米国特許出願公開第2013/0004482号は、特にPAM50分類器による患者の腫瘍のHER2亜型への分類に頼って乳癌の対象のアントラサイクリン療法への可能性のある反応性をスクリーニングするためのPAM50分類器の適用を記載している。)基底様遺伝子発現重心に対するスピアマンの順位相関が、決定される。試料および基底様重心の間のスピアマンの順位相関が、基底重心分類器スコアとして割り当てられる。ルミナルA遺伝子発現重心に対するスピアマンの順位相関が、決定される。試料およびルミナルA重心の間のスピアマンの順位相関が、ルミナルA重心分類器スコアとして割り当てられる。次いで、そのように決定された基底重心分類器スコアおよびルミナルA重心分類器スコアが、次の方程式:
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=
−0.25(基底重心分類器スコア)+0.27(ルミナルA重心分類器スコア)
中に挿入されて、患者の試料に関する加重された基底およびルミナルA分類器スコアを提供する。
【0079】
試料
[00106] 内在性亜型分類の分析のための試料は、癌細胞または組織、例えば乳房組織試料または原発性乳房腫瘍組織試料を含む生物学的試料を含むことができる。ある態様において、生物学的試料は、乳房組織または細胞を含む。“生物学的試料”により、内在性遺伝子の発現が検出されることができる細胞、組織、または体液のあらゆる採取試料(sampling)が意図されている。そのような生物学的試料の例は、生検およびスメアを含むが、それらに限定されない。本開示において有用な体液は、血液、リンパ液、尿、唾液、乳頭吸引液、乳管洗浄細胞診からの流体、婦人科学的流体、もしくはあらゆる他の体分泌物またはそれらの派生物を含む。血液は、全血、血漿、血清、または血液のあらゆる派生物を含むことができる。ある態様において、生物学的試料は、乳房細胞を含み、特に、生検からの乳房組織、例えば乳房腫瘍組織試料を含むことができる。生物学的試料は、対象から、例えば領域を擦り取る、もしくは綿棒で拭くことによる技法、針を用いて細胞もしくは体液を吸引することによる技法、または組織試料を取り出すことによる技法(すなわち生検)を含む様々な技法により得られることができる。様々な生物学的試料を収集するための方法は、当該技術で周知である。ある態様において、乳房組織試料は、例えば微細針吸引生検、コア針生検、または摘出生検により得られる。別の態様において、流体は、乳管洗浄細胞診により得られる。細いカテーテルが、乳管の自然な開口部中に挿入される。次いで、生理食塩水溶液が、管をすすぐためにカテーテルを通して注入され、それは管の内張り(lining)から細胞を解す。解れた細胞を含有する溶液は、カテーテルを通して引き出され、生検を受ける。固定および染色溶液が、標本を保存するために、そして試験を促進するために、細胞または組織に適用されることができる。一態様において、生物学的試料は、ホルマリン固定され、パラフィン包理された乳房組織試料、特に原発乳房腫瘍試料である。様々な態様において、組織試料は、病理学者に手引きされた組織コア試料から得られる。
【0080】
療法剤
[00107] アンドロゲン受容体阻害剤は、アンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達経路を直接または間接的に阻害する。一態様において、AR受容体の直接的な阻害剤は、エンザルタミド、ビカルタミド(Casodex)、フルタミド、ニルタミド、ARN509等を含む。別の態様において、AR受容体の間接的な阻害剤は、Cyp17阻害剤、例えばケトコナゾール、酢酸アビラテロン、VN/124−1(TOK−001)、オルテロネル(orteronel)(TAK−700)等を含む。別の態様において、AR阻害剤は、フィナステリド、ガレテロン、酢酸シプロテロン、およびアンダリン等を含む。アンドロゲン受容体阻害剤は、結果としてアンドロゲン受容体の生物学的活性の完全または部分的な阻害をもたらし得る。
【0081】
[00108] 好ましい態様において、AR阻害剤は、エンザルタミド(Xtandi(登録商標))であり、それは、系統(IUPAC)名4−(3−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5,5−ジメチル−4−オキソ−2−チオキソイミダゾリジン−1−イル)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミドを有し、アンドロゲン受容体(AR)に直接結合し、3つの活性部位を有する。それは、アンドロゲン類のARへの結合を阻害し、ARの核移行を阻害し、そしてARに媒介されるDNA結合を阻害する。
【0082】
[00109] 特定の態様において、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置は、さらに、アンドロゲン受容体阻害剤ではない1種類以上の他の抗癌剤を含む。AR阻害剤療法と合わせて患者に投与されることもできるそのような非AR阻害剤抗癌剤は、例えば、シクロホスファミド、フルオロウラシル(または5−フルオロウラシルもしくは5−FU)、メトトレキサート、チオテパ、カルボプラチン、シスプラチン、タキサン類、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾロミド(temozolmide)、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン(mutamycin)、カペシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ロイプロリド、アバレリクス、ブセレリン(buserelin)、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブもしくはベバシズマブ、またはそれらの組み合わせを含む。
【0083】
[00110] 一態様において、非AR阻害剤抗癌剤は、パクリタキセルである。一態様において、AR阻害剤は、エンザルタミドであり、かつ非AR阻害剤抗癌剤は、パクリタキセルである。本明細書において以下で記載されるように、エンザルタミドおよびパクリタキセルの組み合わせは、結果として、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアからなる予後マーカーに関して陽性である腫瘍細胞におて高められた細胞毒性をもたらすことが分かっている。
【0084】
[00111] 1種類以上のAR阻害剤の療法上有効量が、AR阻害剤を癌の処置において投与する際に典型的に用いられる投与および処置計画を利用して、TNBCを処置するために、本発明に従って対象に投与される。AR阻害剤は、本明細書で記載される乳癌処置において、そのような薬剤が典型的に投与される経路により投与されることができる。1つのそのようなAR阻害剤であるエンザルタミドに関する代表的な計画は、1日1回経口で160mg/日である。剤形は、例えばカプセルを含むことができる。1日量は、例えば160mgのエンザルタミドを含むカプセルの形態で投与されることができる。別の態様において、それぞれが40mgのエンザルタミドを含む4個のカプセルが、投与される。より低い、またはより高い用量が、利用されることができる。非AR阻害剤である薬剤は、乳癌の処置において用いられるような薬剤に関する周知の投与量および処置計画に従って投与される。
【0085】
【表1-1】
【0086】
【表1-2】
【0087】
【表1-3】
【0088】
【表1-4】
【0089】
【表2-1】
【0090】
【表2-2】
【0091】
[00112] 本発明の実施は、以下の限定的でない実施例により説明される。
【実施例】
【0092】
実施例1
臨床試験プロトコル
[00113] 腫瘍がアンドロゲン受容体陽性(AR+)かつトリプルネガティブである患者におけるエンザルタミド処置の臨床的有用性を決定するために、臨床試験が実施された。この試験では、AR+は、免疫組織化学(IHC)によるあらゆる核AR染色として定義されており、TNBCは、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PgR)に関するIHCによる1%未満の染色、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)に関するIHCによる0もしくは1+、または2+IHC疾患に関するインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)によるHER2増幅に関する陰性として定義されている。AR染色は、それぞれが個々に乳癌組織に対して最適化された2種類の異なる抗体を用いるIHCにより実施された。エンザルタミド(160mg/日)は、4個の40mg軟ゼラチンカプセルとして、1日1回、食物と共に、または食物を伴わずに経口投与された。患者は、処置が試験プロトコルにおいて明記されている他の理由により中止されない限り、固形腫瘍における反応評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)バージョン1.1(RECIST 1.1)に従う疾患進行が実証されるまで、エンザルタミドを与えられた。試験期間は、プレスクリーニング(患者は、彼らの疾患の過程におけるあらゆる時点においてAR発現に関する試験のために組織を提出するという同意に署名することができた);スクリーニング(試験薬物の最初の用量の前の28日間);処置(1日目〜中止まで);安全性の追跡(試験薬物の最後の用量後または新規の抗腫瘍処置の開始前(いずれか早い方)のおおよそ30日間);および長期の追跡(処置の中止後3〜6ヵ月ごとの、その後の乳癌療法および生存状態の評価)を含んでいた。客観的反応−完全な反応(CR)または部分的な反応(PR)が、研究者によりRECIST 1.1に従って決定された。
【0093】
[00114] 試験は、サイモンの2ステージ試験であり、ここで、試験をより大きい規模へと拡張する前に、最低限の有用性が、予め定められた患者集団において要求された。ステージ1において、42人の患者が、予め定められた26人の評価可能な患者を得るために試験に登録された。ステージ2に進むための必要な臨床的有用性が、ステージ1において観察され、追加の76人の患者が、全体で合計118人の患者に関して登録された。アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤を用いた先行する処置を受けており、中枢神経系(CNS)転移を有していた患者は、除外された;先行する療法の数に対する制限は存在せず、患者が測定可能な疾患または骨のみの測定不能な疾患を有する患者は、適格であった。16週間における臨床的有用率(CBR16)は、完全緩解(CR)の最高の反応、部分的反応(PR)または安定疾患(SD)≧16週間(CBR16)を有する評価可能な患者の割合として定義された。24週間以上の臨床的有用率(CBR16)も、評価された。
【0094】
[00115] ステージ1において、42人の患者が、26人の評価可能な患者(n=26)を得るために登録された。評価可能な患者は、腫瘍の10%以上におけるAR染色および少なくとも1回のポストベースライン腫瘍評価の両方を有する患者であった。治療企図(ITT)集団(ステージ1におけるn=42)は、中心的に評価されたAR+ TNBCを有し、少なくとも1用量の試験薬物を与えられた全ての登録された患者として定義された。42人のITT患者の内の26人(62%)は、評価可能であり、一方で42人の内の16人は、評価可能ではなかった。評価可能に関する基準を満たさなかった16人の内で、10人は、10%未満のAR発現を有し;6人は、10%以上のAR発現を有していたがポストベースライン評価を有していなかった(2人は、試験登録の直後にCNS転移を有することが発見され、ポストベースライン腫瘍評価を有する前に処置から撤退した)。患者の50%より多くは、エンザルタミドを彼らの療法の第1または第2選択として与えられ、一方で30%より多くは、エンザルタミドを与えられる前に3回以上の先行する計画を有していた。
【0095】
内在性遺伝子発現分析
[00116] TNBC患者からのヒト乳房腫瘍は、AR拮抗薬であるエンザルタミドの前記の臨床試験から得られた。患者の乳癌組織は、AR発現に関して染色された。患者の染色は、病理学者により、標準的な操作手順において与えられるように染色された腫瘍細胞の染色強度(3+、2+および1+)ならびに百分率の両方において等級を付けられた。AR染色は、核および細胞質の両方において評価された。
【0096】
[00117] この試験において利用されたRNA−seqデータは、以下のように前処理された。RNA−seqデータは、UC Santa Cruzのゲノム生物情報学グループにより作成されたヒトゲノムブラウザー(Human Genome Browser)−hg19アセンブリー(https://genome.ucsc.edu/cgi-bin/hgGateway?db=hg19)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/assembly/GCF_000001405.25/)からのヒト(ホモ・サピエンス)ゲノム配列hg19に対して、MapSplice(Nucleic Acids Res. 2010 Oct;38(18):e178. doi: 10.1093/nar/gkq622)を用いてアラインメントされた。遺伝子およびイソ型のレベル計数は、期待値最大化によるRNA−seq(RSEM)(http://deweylab.biostat.wisc.edu/rsem/)を用いて推定された。遺伝子計数の推定値は、一定の上位四分位値に対して正規化された。結果として得られた正規化された遺伝子発現の推定値は、それぞれの遺伝子の発現値の中央値が“Comprehensive Molecular Portraits of Human Breast Tumors”The Cancer Genome Atlas Network, Nature 490, 61-70 (October 4, 2012) (http://www.nature.com/nature/journal/v490/n7418/full/nature11412.html)において報告されたTCGA RNA−Seqデータのトリプルネガティブ部分集合の中央値と同等であるように調節された。
【0097】
[00118] 内在性亜型分類が、LumA、LumB、基底、HER2および正常群に入るように、Parker et al. J Clin Oncol., 27(8):1160-7 (2009)において記載されているようなPAM50分類モデルを用いて実施された。内在性亜型分類は、ホルマリン固定されパラフィン包理された患者の乳房腫瘍から収集された組織から得られたRNAのRNA配列決定から得られた。そのデータは、上記で示されたように前処理された。亜型分類は、“訓練および試験”セットおよびさらなる“検証”セットに対して実施された。訓練および試験セットは、122人の患者の試料からなり、その内の42人の患者は、プレスクリーニングされた集団由来であるが試験に登録されず、80人の患者の試料は、臨床試験における登録された集団由来であった。検証セットは、55人の患者の試料からなり、それは、プレスクリーニングされた集団由来であり試験に登録されなかった15人の患者および登録された集団由来の40の試料を有していた。
【0098】
[00119] データは、Parker et al.(上記)により記載されたようなPAM50内在性遺伝子セットデータを分析するための既知の方法に従って分析された。本質的には、患者の腫瘍試料からの表1の50の亜型予測因子遺伝子のセットの発現の検出および推定が、実施された。基底様、HER2、LumA、LumBおよび正常亜型分類を提供する記載された方法による50の亜型予測因子遺伝子のセットの発現プロフィールが、分析された。スピアマン相関が、それぞれの試料およびPAM50重心に関して計算された。これらの値は、試料のそれぞれの重心に対する距離または類似性の連続的な推定値として用いられた。それぞれの試料の亜型は、最も近い(最も大きい正の相関)重心として割り当てられた。それぞれの亜型に対する相関の基礎となる尺度が、試料を4種類の腫瘍亜型(基底様、HER2、LumAおよびLumB)または正常様の1つとして分類するために用いられた。
【0099】
[00120] さらに、基底様遺伝子発現重心に対するスピアマンの順位相関が、評価された。試料および基底様重心の間のスピアマンの順位相関は、“基底重心分類器スコア”として割り当てられた。ルミナルA遺伝子発現重心に対するスピアマンの順位相関が、評価された。試料およびルミナルA重心の間のスピアマンの順位相関は、“ルミナルA分類器スコア”として割り当てられた。
【0100】
[00121] 登録された患者(治療企図(ITT)集団)において、基底様亜型は、一般にエンザルタミド療法に対する無反応と相関しており、一方で、他の亜型の1つの存在は、一般にエンザルタミド療法への反応と相関していた。図1を参照、ここで、“診断−”は、基底様亜型の患者を表し、“診断+”は、Her2、LumA、LumBまたは正常亜型を有する患者を表す。従って、非基底様腫瘍型を示すPAM50遺伝子発現分類器の結果は、TNBCにおけるエンザルタミド療法への反応性を予測するためのマーカーである。
【0101】
実施例2
実施例1の臨床試験の結果は、患者の基底重心分類器スコアを利用してさらに分析された。療法反応データは、一連の閾値カットオフを基底重心分類器スコアに課して評価された。エンザルタミド反応/無反応データは、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.65、0.7、0.8および0.9の基底重心分類器スコアカットオフを用いて分析された。そのデータは、図2A/B〜10A/Bにおいて示されている。それぞれの図において、“診断+”は、試料が示された閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。
【0102】
【表3】
【0103】
[00122] 図2A/B〜10A/Bにおいて示されているように、Dx+およびDx−患者の定義に関する0.6以下の標的基底重心分類器スコアは、エンザルタミド療法に対する反応と最もよく相関し、一方で0.2〜0.9のスコアに基づくDx+およびDx−の定義は、いくらか低く予測値を富化した。従って、反応者および非反応者の集団を0.2〜0.9の範囲である基底重心分類器カットオフスコアに基づいて定義することは、TNBCにおけるエンザルタミド療法への反応性を予測するためのさらなる基礎であり、0.6以下の試料の基底重心分類器スコアは、反応性を予測するためのマーカーに関する好ましい態様である。図6Aにおいて示されているように、Dx+およびDx−を0.6の相対的基底重心分類器スコアに従って定めることは、結果として診断+集団中のほとんどの反応者および診断−集団中の高い無反応者を有する大きい診断+集団を生じる予測をもたらした。
【0104】
実施例3
[00123] 実施例1の臨床試験の結果は、図11においてさらに分析および要約されており、それは、様々な患者の部分群のエンザルタミド療法への反応を、24週間以上の時点での臨床的有用率(CBR24)に関して示している。部分群は、全ての治療企図(ITT)患者;評価可能な患者;AR染色10%以上であった乳房腫瘍組織を有する患者(IHC AR>=10%);乳房腫瘍組織がPAM50亜型分類器により非基底様亜型として分類された患者(PAM50 非基底);腫瘍が基底様亜型として分類された患者(PAM50 基底);ならびに基底重心分類器スコアに対して<0.6、≧0.6、<0.7、≧0.7、<0.75、≧0.75の示されたカットオフを適用することにより分析された患者試料を含む。“DX−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を示す。“DX+”は、試料が示された閾値カットオフを満たした患者を示す。図11において、IHC AR>=10%およびDX+<0.6の組み合わせた基準を満たす試料、すなわち(i)10%より多くのARに関する染色および(ii)0.6以下のPAM50遺伝子発現基底重心分類器スコアの基準を満たした試料に関するデータも示されている。
【0105】
実施例4
[00124] 実施例1の臨床試験の結果は、図12においてさらに分析および要約されており、それは、様々な患者の部分群のエンザルタミド療法に対する反応を、24週間以上の時点での臨床的有用率(CBR24)に関して示している。部分群は、治療企図(ITT)患者;評価可能な患者;10%以上のAR染色であった乳房腫瘍組織を有する患者(IHC AR>=10%);およびエンザルタミド療法が唯一(第1選択)または2番目(第2選択)の療法である患者を含む。部分群は、さらに、0.6未満の基底重心分類器スコアカットオフを適用することにより分析された患者試料の部分群(“新規DX+”)および0.6未満のカットオフを適用した第1および第2選択療法からの試料を含む部分群を含む。0.6未満の予後的基底重心分類器スコアを用いる42%(ならびに第1選択および第2選択の患者の両方を含む群において用いられた場合は60%)のCBRは、TNBCにおける療法への反応性を予測するための典型的な基準を超えており、ER+/PgR+乳癌におけるホルモン性薬剤療法への反応を予測するために用いられるモデルの予測能力と同等である。
【0106】
実施例5
[00125] AR阻害剤療法に対する反応の予測因子としての0.6未満の基底重心分類器スコアを利用する新規の予後サインの作用が、56週間までの患者の無増悪生存時間に関する図13においてさらに図説されている。その結果は、0.6以上の距離のスコアを有する患者(“新規DX Neg”)に対する0.6未満の基底重心分類器スコアの新規予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“新規DX Pos”)における延長された無増悪生存を実証している。
【0107】
実施例6
[00126] 実施例1の臨床試験の結果は、さらに、患者の基底重心分類器およびルミナルA分類器スコアを利用して分析された。分類器スコアおよび反応データが、分析された。分析の結果として、臨床試験におけるアンドロゲン受容体阻害剤療法に対する反応性を予測する加重された基底およびルミナルA分類器スコアが、実験的に考案された。患者試料の加重された基底およびルミナルA分類器スコアは、次の式から決定された:
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=−0.2468275(基底重心分類器スコア)+0.2667110(ルミナルA重心分類器スコア)。
【0108】
[00127] 次いで、療法反応データは、一連の閾値カットオフを加重された基底およびルミナルA分類器スコアに課して評価された。具体的には、エンザルタミド反応/無反応データは、以下の加重された基底およびルミナルA分類器スコアのカットオフを用いて分析された:−0.2より大きい、−0.25より大きい、−0.3より大きい、および−0.35より大きい。データは、図14A(>−0.2)、14B(>−0.25)、14C(>−0.3)、および14D(>−0.35)において示されている。それぞれの図において、“診断+”は、試料が示された閾値カットオフを含む示された予後サインを満たした患者を表す。“診断−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を表す。
【0109】
[00128] 図14A〜14Dにおいて示されているように、xより大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの基準(xは−0.2〜−0.3の範囲)が、エンザルタミド療法への反応と最もよく相関し、−0.25より大きいスコアの基準が最適であった。従って、反応者および無反応者の集団を、−0.2より大きい、または−0.3より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアに基づいて定めることは、TNBCにおけるエンザルタミド療法への反応性を予測するための基礎であり、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアは、反応性を予測するための基準の好ましい態様である。
【0110】
実施例7
[00129] 実施例1の臨床試験の結果は、図15においてさらに分析および要約されており、それは、様々な患者の部分群のエンザルタミド療法に対する反応を、24週間以上の時点での臨床的有用率(CBR24)に関して示している。部分群は、治療企図(ITT)患者;評価可能な患者;乳房腫瘍組織試料が加重された基底およびルミナルA分類器スコアに対して>−0.2、>−0.25、>−0.3、および>−0.35の示されたカットオフを適用することにより分析された患者を含む。“PR−AR DX−”は、試料が示された閾値カットオフを満たさなかった患者を示す。“PR−AR DX+”は、試料が示された閾値カットオフを満たした患者を示す。従って、例えば、“PR−AR DX+>−0.25”は、試料が−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの基準を満たした患者を示す。
【0111】
[00130] (i)アンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物によるTNBCの処置のための0〜1回の先行する療法を受けた後(“および0〜1回の先行する療法”)または(ii)アンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物によるTNBCの処置のための2回以上の先行する療法を受けた後(“および2回以上の先行する療法”)にエンザルタミド療法を受ける試験における患者からの試料に関するデータも、図15において示されている。>−0.25の加重された基底およびルミナルA分類器スコアのカットオフが、これらの患者試料に適用された。
【0112】
実施例8
[00131] >−0.2の加重された基底およびルミナルA分類器スコアのカットオフをAR阻害剤療法への反応の予測因子として利用する新規の予後サインの作用が、図16において、56週間までの患者の無増悪生存時間に関してさらに図説されている。その結果は、−0.2以下の分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.2”、下の曲線)に対する−0.2より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.2”、上の曲線)における延長された無増悪生存を実証している。
【0113】
実施例9
[00132] >−0.25の加重された基底およびルミナルA分類器スコアのカットオフをAR阻害剤療法への反応の予測因子として利用する新規の予後サインの作用が、図17において、56週間までの患者の無増悪生存時間に関してさらに図説されている。その結果は、−0.25以下の加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.25”、下の曲線)に対する−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.25”、上の曲線)における延長された無増悪生存を実証している。
【0114】
実施例10
[00133] >−0.3の加重された基底およびルミナルA分類器スコアのカットオフをAR阻害剤療法への反応の予測因子として利用する新規の予後サインの作用が、図18において、56週間までの患者の無増悪生存時間に関してさらに図説されている。その結果は、−0.3以下の分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.3”、下の曲線)に対する−0.3より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.3”、上の曲線)における延長された無増悪生存を実証している。
【0115】
実施例11
[00134] >−0.35の加重された基底およびルミナルA分類器スコアのカットオフをAR阻害剤療法への反応の予測因子として利用する新規の予後サインの作用が、図19において、56週間までの患者の無増悪生存時間に関してさらに図説されている。その結果は、−0.35以下の加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.35”、下の曲線)に対する−0.35より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.35”、上の曲線)における延長された無増悪生存を実証している。
【0116】
実施例12
[00135] −0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアカットオフをAR阻害剤療法への反応の予測因子として利用する新規の予後サインの作用が、図20において、アンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物によるTNBCの処置のための0〜1回の先行する療法を受けている患者における56週間までの患者の無増悪生存時間に関して、さらに図説されている。その結果は、−0.25以下の加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.25”、下の曲線)に対する−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.25”、上の曲線)における延長された無増悪生存を実証している。図17および20の比較から、−0.25のカットオフは、全試験患者の集団を特性づける無増悪生存のより短い期間(図17)に対する0〜1回の先行する療法の群を特性づける無増悪生存のより長い期間(図20)を同定することができたことが、理解されることができる。
【0117】
[00136] −0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアカットオフをアンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物によるTNBCの処置のための0〜1回の先行する療法を受けた患者におけるAR阻害剤療法への反応の予測因子として利用する新規の予後サインの作用が、図23においてさらに示されている。図23は、試験における無増悪生存時間が図23では図20における56週間を超えて64週間まで決定されていることを除いて、図20と類似している。
【0118】
実施例13
[00137] −0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアカットオフをAR阻害剤療法への反応の予測因子として利用する新規の予後サインの作用が、図21Aおよび21Bにおいて、アンドロゲン受容体阻害剤以外の薬物によるTNBCの処置のための0〜1回(0〜1先行ライン)または2回以上(2+先行ライン)の先行する療法を受けている患者の進行のない処置における時間に関してさらに図説されている。−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアのサイン条件を満たすものとして同定された56人の患者が、図21Bにおいて表わされている。−0.25以下の分類器スコアにより同定された62人の試験患者が、図21Aにおいて同定されている。図中のそれぞれの棒は、1人の患者を表す。疾患の進行のない処置における時間の最高値は、1回の療法の先行ラインを受けたかまたは療法の先行ラインを受けていない反応者の患者において明らかである(図21B)。三角形(“有効”)で印を付けられた患者の棒は、試験において有効である。星で印を付けられた患者の棒は、完全な反応(CR)または部分的な反応(PR)を示す。
【0119】
実施例14
[00138] −0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアカットオフをAR阻害剤療法への反応の予測因子として利用する新規の予後サインの作用が、さらに図22Aおよび22Bにおいて、64週間までの患者の無増悪生存時間(図22A)および84週間までの全生存(図22B)に関して図説されている。図22Aの結果は、−0.25以下の加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.25”、下の曲線)に対する−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.25”、上の曲線)における延長された無増悪生存を実証している。図22Bの結果は、−0.25以下の加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX−:<=−0.25”、下の曲線)に対する−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後サイン条件を満たすものとして同定された患者(“PR−AR DX+:>−0.25”、上の曲線)における延長された全生存を実証している。予後サイン条件を満たさない患者は、8.1週間の無増悪生存中央値および32.1週間の全生存中央値により特性付けられた。対照的に、予後サイン条件を満たしている患者は、16.1週間の無増悪生存中央値および84週目の時点でまだ達していない全生存中央値により特性付けられた。
【0120】
実施例15
[00139] アンドロゲン受容体拮抗薬ビカルタミドの第II相臨床試験が、報告されている。Ayca et al., “Phase II Trial of Bicalutamide in Patients with Androgen Receptor Positive, Hormone Receptor Negative Metastatic Breast Cancer”, Clin Cancer Res 19: 5505-5512 (October 1, 2013)。その試験は、AR陽性、エストロゲン受容体(ER)陰性、およびプロゲステロン受容体(PgR)陰性である転移性乳癌の処置におけるビカルタミドの作用を試験するように設計された。
【0121】
[00140] 簡潔には、Aycaらにより記載されたように、ER陰性/PgR陰性進行乳癌を有する452人の患者からの腫瘍が、ARに関して免疫組織化学(IHC)により中心的に試験された(10%より多い核染色が陽性と考えられた)。追加の適格基準に関してAyca et al., p. 5506を参照。原発部位または転移部位のどちらかが陽性であった場合、患者は、AR拮抗薬ビカルタミドを1日150mgの用量で与えられるために適格であった。28人の患者が、試験において処置された。ビカルタミド150mgが、連続する毎日のスケジュールにおいて経口投与された。患者は、疾患の進行または許容できない有害事象まで処置された。患者は、疾患進行または許容できない有害事象まで処置された。グレード3以上の毒性に関する最大2用量の低減が、許容された(100および50mg)。最大2週間が、毒性による処置の遅延に関して許容された。ビカルタミドを開始した2人の患者が、試験から外され、AR(+) ER/PgR(−)転移性乳癌を有する26人の試験候補者が残った。5人の患者は、6ヶ月間より長い安定疾患(完了したサイクルの数:6、8、10+、13、57+)を彼らの処置に対する最高の反応として有していた。標的集団(n=26)において19%(95%CI、7〜39%)の臨床的有用率をもたらす確証された完全または部分的反応は存在しなかった。治療企図分析において、18%(95%CI、6%〜37%)のCBRが観察された。Ayca et al., p. 5507を参照。
【0122】
[00141] 26人のビカルタミドで処置された試験患者は、HER−2陰性でもあることが決定され、すなわち、21人の患者は、トリプルネガティブ(Her−2(−)、ER(−)およびPgR(−))である乳癌を有していた。試験後に、ビカルタミド療法を受けた21人のTNBC患者からの患者の腫瘍試料が、PAM50分類モデルを用いたルミナルA、ルミナルB、基底様、HER2富化および正常様群への内在性亜型分類を施された。それぞれの試料に関するそれぞれの亜型スコアが、表3において列挙されている。表3において、それぞれの試料の加重された基底およびルミナルA分類器スコアも示されている。実施例6においてAR受容体拮抗薬エンザルタミドの臨床試験から得られた結果に基づいて、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコア(“PR−AR DX+>−0.25”)は、そのような患者が−0.25以下の加重された基底およびルミナルA分類器スコアを有する患者よりもビカルタミド処置に応答する可能性がより高いことを示している。8人の患者が、この基準を満たし、表3においてビカルタミド処置における有望である可能性の高い(“POS”)予後を有するものとして示されている。21人の患者の試料のそれぞれは、0.99の信頼水準を有していた試料番号16を除いて、1の信頼水準を示した。
【0123】
【表4-1】
【0124】
【表4-2】
【0125】
実施例16
[00142] 以下の試験は、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアの予後マーカーに関して陽性の細胞におけるエンザルタミド+パクリタキセルの組み合わせの高められた抗腫瘍作用を実証している。
【0126】
[00143] トリプルネガティブ乳癌細胞株BT549、MDA−MB−436、MDA−MB−453が、試験のために選択された。その細胞株に関するメッセンジャーRNAデータセットは、Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)のデータベースからダウンロードされた。それぞれの細胞株に関する加重された基底およびルミナルA分類器スコアは、そのダウンロードされたデータセットから決定された。−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアをAR阻害剤療法への反応性に関する予後マーカーとして適用して、MDA−MB−453はこの基準を満たすが、BT549およびMDA−MB−436は満たさないことが決定された。
【0127】
[00144] 細胞は、10%FBSを補った成長培地中で維持された。生存度アッセイは、10%FBS中で実施され、CellTiter−Glo試薬により製造業者のプロトコル(Promega)に従って測定された。エンザルタミドの単独またはパクリタキセルとの組み合わせでのアンドロゲン受容体シグナル伝達に対する分子作用を決定するため、細胞(BT549、MDA−MB−436またはMDA−MB−453)を、1日目に10%FBS中でまいた。細胞は、エンザルタミドまたはパクリタキセルまたは組み合わせにより2%木炭除去処理済み血清(charcoal−stripped serum)中で処理され、10nM DHTで4時間刺激された。細胞の分画は、細胞質および核画分に関して分離された。タンパク質発現レベルが、ウェスタンブロッティング法を用いて決定された。それぞれの細胞株に関するエンザルタミドまたはパクリタキセルに関するIC50が、表4において示されている。平均値が、それぞれの細胞株に関して示されている(n=3)。予後マーカー陽性のMDA−MB−453細胞は、予後マーカー陰性のBT549およびMDA−MB−463細胞と比較してエンザルタミドに対するより大きい感受性を示した。
【0128】
【表5】
【0129】
[00145] 細胞の生存度が、図24A〜Cにおける濃度のエンザルタミド(Enza)およびパクリタキセル(PTX)の存在下で測定された。平均値が、それぞれの細胞株に関して示されている(n=5)。予後マーカー陽性のMDA−MB−453細胞株において、エンザルタミド+パクリタキセルの組み合わせは、結果として高められた細胞毒性をもたらした。図24C参照。
【0130】
実施例17
[00146] マウス異種移植モデルを生成するため、5〜6週齢のメスのNOD−SCIDマウスが、乳腺中に6.0×10個のMDA−MB−453細胞を同所的に注入された。DHT(60日放出植込錠中10.5mg)または対照の植込錠が、動物中に移植された。腫瘍サイズが約100mmに達した際に、マウスは、(i)3mg/kg/日のエンザルタミド(“Enza”)の経口強制摂取(PO)(n=10)、(ii)6mg/kg QMWF(IP)のパクリタキセル(“PTX”)(n=7)、または(iii)(i)および(ii)の組み合わせ(n=10)により処置された。対照群のマウス(n=8)は、ビヒクル(0.5%Methocel溶液)で処理された。腫瘍の大きさが、カリパスにより測定された。腫瘍の重量が、35日目に決定された。結果が、図25A(腫瘍体積対時間)および図25B(腫瘍重量)において示されている。図25Aにおけるデータの点は、それぞれの群に関する平均腫瘍体積を表し、エラーバーは、データのSEMを反映している。スチューデントのT検定が、p値を計算するために用いられた:図25A:対照対エンザルタミド、0.007;対照対パクリタキセル、0.0007;エンザルタミド対エンザルタミド+パクリタキセル、0.074;パクリタキセル対エンザルタミド+パクリタキセル、0.013;図25B:対照対エンザルタミド、0.001;対照対パクリタキセル、0.0001;エンザルタミド対エンザルタミド+パクリタキセル、0.08;パクリタキセル対エンザルタミド+パクリタキセル、0.017。そのデータは、エンザルタミド+パクリタキセルの組み合わせは、結果としてどちらかの薬物単独と比較して高められた抗腫瘍作用をもたらすことを実証している。
【0131】
[00147] それぞれの処置群からの代表的な腫瘍が、AR、Ki67またはp−AKTに対する免疫組織化学を実施するために選択された。Ki67またはAKTのリン酸化に関する免疫組織化学染色は、エンザルタミド+パクリタキセルの腫瘍において、エンザルタミドまたはパクリタキセル単独で処置された群と比較して有意に低減した(データは示されていない)。
【0132】
[00148] 本明細書で引用されたそれぞれの、および全ての特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照により本明細書にそのまま援用される。当業者は、本発明が、対象を実施し、言及された目的および利点ならびにそれに本来備わる目的および利点を得るために十分に適合していることを、容易に理解するであろう。本発明は、特定の態様を参照して開示されたが、本発明の他の態様およびバリエーションが本発明の実施において用いられる真の精神および範囲から逸脱することなく当業者により考案されることができることは、明らかである。添付された特許請求の範囲は、全てのそのような態様および均等なバリエーションを含むように解釈されることが、意図されている。
非限定的に、本発明は、以下の態様を含む。
[態様1] アンドロゲン受容体阻害剤の使用を含むトリプルネガティブ乳癌に関する処置をスクリーニングする方法であって、対象から得られた生物学的試料をアッセイして該対象から得られた該生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは他の亜型として分類されるかを決定することを含む、前記方法。
[態様2] 態様1に記載の方法であって、該生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは他の亜型として分類されるかを決定するための該生物学的試料のアッセイが、表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現を検出することにより実施される、前記方法。
[態様3] 態様2に記載の方法であって、以下の工程:
(a)該試料の基底重心分類器スコアを表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から決定し;
(b)該試料のルミナルA重心分類器スコアを表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から決定し;そして
(c)加重された基底およびルミナルA分類器スコアを、該基底重心分類器スコアおよび該ルミナルA重心分類器スコアから、次の方程式に従って計算する
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=
−0.25(基底重心分類器スコア)+0.27(ルミナルA重心分類器スコア);
を含む、ここにおいて、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.3より大きい場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む該乳癌処置は、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.3以下である場合よりも該対象において有効である可能性がより高い、前記方法。
[態様4] 態様3に記載の方法であって、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.2より大きい場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む該乳癌処置は、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.2以下である場合よりも該対象において有効である可能性がより高い、前記方法。
[態様5] 態様4に記載の方法であって、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.25より大きい場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む該乳癌処置は、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.25以下である場合よりも該対象において有効である可能性がより高い、前記方法。
[態様6] 態様2に記載の方法であって、該試料の基底重心分類器スコアを表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から決定することを含む、ここにおいて、該基底重心分類器スコアが0.9以下である場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む該乳癌処置は、該基底重心分類器スコアが0.9より大きい場合よりも該対象の処置において有効である可能性がより高い、前記方法。
[態様7] 態様6に記載の方法であって、該基底重心分類器スコアが0.6以下である場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む該乳癌処置は、該対象の処置において有効である可能性が高い、前記方法。
[態様8] 態様6に記載の方法であって、該基底重心分類器スコアが0.2〜0.8の範囲である場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む該乳癌処置は、該対象の処置において有効である可能性が高い、前記方法。
[態様9] 態様8に記載の方法であって、該基底重心分類器スコアが0.4〜0.7の範囲である場合、アンドロゲン受容体阻害剤を含む該乳癌処置は、該対象の処置において有効である可能性が高い、前記方法。
[態様10] 態様1〜9のいずれかに記載の方法であって、該対象の乳癌が、アンドロゲン受容体陽性腫瘍細胞の存在により特性付けられる、前記方法。
[態様11] 態様1〜10のいずれかに記載の方法であって、該生物学的試料が、細胞、組織および体液からなる群から選択される、前記方法。
[態様12] 態様11に記載の方法であって、該生物学的試料が、乳房組織または細胞を含む、前記方法。
[態様13] 態様11に記載の方法であって、該組織が、生検から得られる、前記方法。
[態様14] 態様11に記載の方法であって、該体液が、血液、リンパ液、尿、唾液、乳管洗浄細胞診からの流体および乳頭吸引液からなる群から選択される、前記方法。
[態様15] 対象におけるトリプルネガティブ乳癌の処置における使用のためのアンドロゲン受容体阻害剤であって、該対象からの生物学的試料が、該試料が基底様亜型として分類されるかまたは別の亜型として分類されるかを決定するためにアッセイされているアンドロゲン受容体阻害剤。
[態様16] 態様15に記載の阻害剤の使用であって、該生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは別の亜型として分類されるかを決定するための該生物学的試料のアッセイが、表1において列挙されている内在性遺伝子の発現を検出することにより実施される、前記阻害剤の使用。
[態様17] 態様16に記載の阻害剤の使用であって、該試料の基底重心分類器スコアおよびルミナルA重心分類器スコアを表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から決定することならびに加重された基底およびルミナルA分類器スコアを該基底重心分類器スコアおよび該ルミナルA重心分類器スコアから次の方程式:
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=
−0.25(基底重心分類器スコア)+0.27(ルミナルA重心分類器スコア)
に従って計算することを含む、ここにおいて、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.3より大きい場合、該乳癌処置が該対象に施される、前記阻害剤の使用。
[態様18] 態様17に記載の阻害剤の使用であって、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.2より大きい場合、該乳癌処置が施される、前記阻害剤の使用。
[態様19] 態様18に記載の阻害剤の使用であって、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.25より大きい場合、該乳癌処置が施される、前記阻害剤の使用。
[態様20] 態様16に記載の阻害剤の使用であって、該試料の基底重心分類器スコアを表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から決定することを含む、ここにおいて、該基底重心分類器スコアが0.9以下である場合、該乳癌処置が施される、前記阻害剤の使用。
[態様21] 態様20に記載の阻害剤の使用であって、該基底重心分類器スコアが0.6以下である場合、該乳癌処置が施される、前記阻害剤の使用。
[態様22] 態様20に記載の阻害剤の使用であって、該基底重心分類器スコアが0.2〜0.8の範囲である場合、該乳癌処置が施される、前記阻害剤の使用。
[態様23] 態様22に記載の阻害剤の使用であって、該基底重心分類器スコアが0.4〜0.7の範囲である場合、該乳癌処置が施される、前記阻害剤の使用。
[態様24] 態様15〜23のいずれかに記載の阻害剤の使用であって、該対象の乳癌が、アンドロゲン受容体陽性腫瘍細胞の存在により特性付けられる、前記阻害剤の使用。
[態様25] 態様15〜24のいずれかに記載の阻害剤の使用であって、該アンドロゲン受容体阻害剤が、エンザルタミド、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、ARN509、ケトコナゾール、酢酸アビラテロン、VN/124−1(TOK−001)、オルテロネル(orteronel)(TAK−700)、フィナステリド、ガレテロン(galeterone)、酢酸シプロテロン、アンダリン(andarine)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記阻害剤の使用。
[態様26] 態様25に記載の阻害剤の使用であって、該アンドロゲン受容体阻害剤が、エンザルタミドである、前記阻害剤の使用。
[態様27] 態様26に記載の阻害剤の使用であって、該エンザルタミドが、1日1回160mgの用量で経口投与される、前記阻害剤の使用。
[態様28] 態様27に記載の阻害剤の使用であって、該エンザルタミドが、160mgのエンザルタミドを含む単一のカプセルとして投与される、前記阻害剤の使用。
[態様29] 態様27に記載の阻害剤の使用であって、該エンザルタミドが、4個のカプセルとして投与され、それぞれのカプセルが、40mgのエンザルタミドを含む、前記阻害剤の使用。
[態様30] 態様15〜29のいずれかに記載の阻害剤の使用であって、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置が、さらにアンドロゲン受容体阻害剤ではない1種類以上の他の抗癌剤を含む、前記阻害剤の使用。
[態様31] 態様30に記載の阻害剤の使用であって、アンドロゲン受容体阻害剤ではない該1種類以上の他の抗癌剤が、シクロホスファミド、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、チオテパ、カルボプラチン、シスプラチン、タキサン類、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾロミド(temozolmide)、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン(mutamycin)、カペシタビン、カペシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ロイプロリド、アバレリクス、ブセレリン(buserlin)、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブまたはベバシズマブ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記阻害剤の使用。
[態様32] 態様31に記載の使用であって、アンドロゲン受容体阻害剤ではない該他の抗癌剤が、パクリタキセルである前記使用。
[態様33] 態様15〜32のいずれかに記載の阻害剤の使用であって、該生物学的試料が、細胞、組織および体液からなる群から選択される、前記阻害剤の使用。
[態様34] 態様33に記載の阻害剤の使用であって、該生物学的試料が、乳房組織または細胞を含む、前記阻害剤の使用。
[態様35] 態様33に記載の阻害剤の使用であって、該組織が、生検から得られる、前記阻害剤の使用。
[態様36] 態様33に記載の阻害剤の使用であって、該体液が、血液、リンパ液、尿、唾液、乳管洗浄細胞診からの流体および乳頭吸引液からなる群から選択される、前記阻害剤の使用。
[態様37] 対象においてトリプルネガティブ乳癌を処置する方法であって、前記の対象が、基底様亜型以外として分類されている乳癌細胞を含む乳癌を有し、前記の方法が、該対象にアンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置を施し、それにより該対象におけるトリプルネガティブ乳癌を処置することを含む、前記方法。
[態様38] 態様37に記載の方法であって、該対象の乳癌細胞が、次の式:
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=
−0.25(基底重心分類器スコア)+0.27(ルミナルA重心分類器スコア)
に従う−0.3より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアにより特性付けられる、ここにおいて、前記の基底重心分類器スコアおよび前記のルミナルA重心分類器スコアが、該対象の乳癌細胞に関して、表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの前記の細胞による発現から決定される、前記方法。
[態様39] 態様38に記載の方法であって、該対象の乳癌細胞が、−0.2より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアにより特性付けられる、前記方法。
[態様40] 態様39に記載の方法であって、該対象の乳癌細胞が、−0.25より大きい加重された基底およびルミナルA分類器スコアにより特性付けられる、前記方法。
[態様41] 態様37に記載の方法であって、該対象の乳癌細胞が、表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの前記の細胞による発現から決定される0.9以下の基底重心分類器スコアにより特性付けられる、前記方法。
[態様42] 態様41に記載の方法であって、該対象の乳癌細胞が、0.6以下の基底重心分類器スコアにより特性付けられる、前記方法。
[態様43] 態様41に記載の方法であって、該対象の乳癌細胞が、0.2〜0.8の範囲である基底重心分類器スコアにより特性付けられる、前記方法。
[態様44] 態様43に記載の方法であって、該対象の乳癌細胞が、0.4〜0.7の範囲である基底重心分類器スコアにより特性付けられる、前記方法。
[態様45] 態様37〜44のいずれかに記載の方法であって、該対象の乳癌が、アンドロゲン受容体陽性腫瘍細胞の存在により特性付けられる、前記方法。
[態様46] 態様37〜45のいずれかに記載の方法であって、該アンドロゲン受容体阻害剤が、エンザルタミド、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、ARN509、ケトコナゾール、酢酸アビラテロン、VN/124−1(TOK−001)、オルテロネル(orteronel)(TAK−700)、フィナステリド、ガレテロン(galeterone)、酢酸シプロテロン、アンダリン(andarine)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記方法。
[態様47] 態様46に記載の方法であって、該アンドロゲン受容体阻害剤が、エンザルタミドである、前記方法。
[態様48] 態様47に記載の方法であって、該エンザルタミドが、1日1回160mgの用量で経口投与される、前記方法。
[態様49] 態様48に記載の方法であって、該エンザルタミドが、160mgのエンザルタミドを含む単一のカプセルとして投与される、前記方法。
[態様50] 態様48に記載の方法であって、該エンザルタミドが、4個のカプセルとして投与され、それぞれのカプセルが、40mgのエンザルタミドを含む、前記方法。
[態様51] 態様37〜50のいずれかに記載の方法であって、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置が、さらにアンドロゲン受容体阻害剤ではない1種類以上の他の抗癌剤を含む、前記方法。
[態様52] 態様51に記載の方法であって、アンドロゲン受容体阻害剤ではない該他の抗癌剤が、シクロホスファミド、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、チオテパ、カルボプラチン、シスプラチン、タキサン類、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾロミド(temozolmide)、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン(mutamycin)、カペシタビン、カペシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ロイプロリド、アバレリクス、ブセレリン(buserlin)、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブまたはベバシズマブ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記方法。
[態様53] 態様52に記載の方法であって、アンドロゲン受容体阻害剤ではない該他の抗癌剤が、パクリタキセルである、前記方法。
[態様54] 態様37に記載の方法であって、さらに、該対象が基底様亜型以外である乳癌細胞を含む乳癌を有するかどうかを決定するために該対象を試験する工程を含む、前記方法。
[態様55] 態様38〜40のいずれかに記載の方法であって、さらに、該対象を試験して該対象の乳癌細胞の加重された基底およびルミナルA分類器スコアを決定する工程を含む、前記方法。
[態様56] 態様41〜44のいずれかに記載の方法であって、さらに、該対象を試験して該対象の乳癌細胞の基底重心分類器スコアを決定する工程を含む、前記方法。
[態様57] 態様40に記載の方法であって、該対象が、トリプルネガティブ乳癌の処置のためのアンドロゲン受容体阻害剤以外の抗癌剤を用いた0または1ラウンドの先行する処置を受けている、前記方法。
[態様58] そのような処置を必要とする対象においてトリプルネガティブ乳癌を処置する方法であって、以下の工程:
(a)該対象からの生物学的試料を提供し;
(b)該生物学的試料をアッセイして該生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは別の亜型として分類されるかを決定し;そして
(c)該生物学的試料が基底様亜型以外として分類された場合、該対象にアンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置を施し、それにより該対象において該乳癌を処置する;
ことを含む、前記方法。
[態様59] 態様58に記載の方法であって、該生物学的試料が基底様亜型として分類されるかまたは他の亜型として分類されるかを決定するための該生物学的試料のアッセイが、表1において列挙されている内在性遺伝子の発現を検出することにより実施される、前記方法。
[態様60] 態様59に記載の方法であって、以下の工程:
(a)該試料の基底重心分類器スコアおよびルミナルA重心分類器スコアを表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から決定し;そして
(b)加重された基底およびルミナルA分類器スコアを、該基底重心分類器スコアおよび該ルミナルA重心分類器スコアから、次の方程式に従って計算する:
加重された基底およびルミナルA分類器スコア=
−0.25(基底重心分類器スコア)+0.27(ルミナルA重心分類器スコア);
を含む、ここにおいて該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.3より大きい場合、該乳癌処置が該対象に施される、前記方法。
[態様61] 態様60に記載の方法であって、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.2より大きい場合、該乳癌処置が施される、前記方法。
[態様62] 態様61に記載の方法であって、該加重された基底およびルミナルA分類器スコアが−0.25より大きい場合、該乳癌処置が施される、前記方法。
[態様63] 態様59に記載の方法であって、該試料の基底重心分類器スコアを表1において列挙されている内在性遺伝子のセットの発現から決定することを含む、ここにおいて、該基底重心分類器スコアが0.9以下である場合、該乳癌処置が施される、前記方法。
[態様64] 態様63に記載の方法であって、該基底重心分類器スコアが0.6以下である場合、該乳癌処置が施される、前記方法。
[態様65] 態様63に記載の方法であって、該基底重心分類器スコアが0.2〜0.8の範囲である場合、乳癌処置が該対象に施される、前記方法。
[態様66] 態様65に記載の方法であって、該基底重心分類器スコアが0.4〜0.7の範囲である場合、乳癌処置が該対象に施される、前記方法。
[態様67] 態様58〜66のいずれかに記載の方法であって、該対象の乳癌が、アンドロゲン受容体陽性腫瘍細胞の存在により特性付けられる、前記方法。
[態様68] 態様58〜67のいずれかに記載の方法であって、該アンドロゲン受容体阻害剤が、エンザルタミド、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、ARN509、ケトコナゾール、酢酸アビラテロン、VN/124−1(TOK−001)、オルテロネル(orteronel)(TAK−700)、フィナステリド、ガレテロン(galeterone)、酢酸シプロテロン、アンダリン(andarine)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記方法。
[態様69] 態様68に記載の方法であって、該アンドロゲン受容体阻害剤が、エンザルタミドである、前記方法。
[態様70] 態様69に記載の方法であって、該エンザルタミドが、1日1回160mgの用量で経口投与される、前記方法。
[態様71] 態様70に記載の方法であって、該エンザルタミドが、160mgのエンザルタミドを含む単一のカプセルとして投与される、前記方法。
[態様72] 態様70に記載の方法であって、該エンザルタミドが、4個のカプセルとして投与され、それぞれのカプセルが、40mgのエンザルタミドを含む方法。
[態様73] 態様58〜72のいずれかに記載の方法であって、アンドロゲン受容体阻害剤を含む乳癌処置が、さらにアンドロゲン受容体阻害剤ではない1種類以上の他の抗癌剤を含む、前記方法。
[態様74] 態様73に記載の方法であって、アンドロゲン受容体阻害剤ではない該他の抗癌剤が、シクロホスファミド、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、チオテパ、カルボプラチン、シスプラチン、タキサン類、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾロミド(temozolmide)、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン(mutamycin)、カペシタビン、カペシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ロイプロリド、アバレリクス、ブセレリン(buserlin)、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブまたはベバシズマブ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記方法。
[態様75] 態様74に記載の方法であって、アンドロゲン受容体阻害剤ではない該他の抗癌剤が、パクリタキセルである、前記方法。
[態様76] 態様58〜75のいずれかに記載の方法であって、該生物学的試料が、細胞、組織および体液からなる群から選択される、前記方法。
[態様77] 態様76に記載の方法であって、該生物学的試料が、乳房組織または細胞を含む、前記方法。
[態様78] 態様77に記載の方法であって、該組織が、生検から得られる、前記方法。
[態様79] 態様77に記載の方法であって、該体液が、血液、リンパ液、尿、唾液、乳管洗浄細胞診からの流体および乳頭吸引液からなる群から選択される、前記方法。
[態様80] 態様62に記載の方法であって、該対象が、トリプルネガティブ乳癌の処置のためのアンドロゲン受容体阻害剤以外の抗癌剤を用いた0または1ラウンドの先行する処置を受けている、前記方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24-1】
図24-2】
図24-3】
図25-1】
図25-2】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]