特許第6735295号(P6735295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6735295多成分ホスト材料及びそれを含む有機電界発光デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735295
(24)【登録日】2020年7月15日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】多成分ホスト材料及びそれを含む有機電界発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20200728BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   C09K11/06 690
   C09K11/06 660
【請求項の数】10
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2017-563341(P2017-563341)
(86)(22)【出願日】2016年5月13日
(65)【公表番号】特表2018-520513(P2018-520513A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】KR2016005098
(87)【国際公開番号】WO2016208873
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年5月7日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0091223
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0002171
(32)【優先日】2016年1月7日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0048912
(32)【優先日】2016年4月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キョン−ジン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ビットナリ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨー−ジン・ドー
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン−ジュ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヤング−ムック・キム
(72)【発明者】
【氏名】スー−ヒュン・リー
(72)【発明者】
【氏名】チ−シク・キム
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0236262(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0197386(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/113726(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/088973(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/038867(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/046916(WO,A1)
【文献】 特開2015−023136(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/084881(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/097813(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/146645(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0318510(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/156587(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/070963(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L27/32;H05B33/00−33/28;
H01L51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードとカソードとの間に少なくとも1つの発光層を備える有機電界発光デバイスであって、前記発光層は、ホスト及びリン光性ドーパントを含み、前記ホストは、複数のホスト化合物を含み、前記複数のホスト化合物のうちの少なくとも第1のホスト化合物は、以下の式1により表され、第2のホスト化合物は、以下の式2により表され、
【化1】
式中、
Zは、NR、CR、O、またはSを表し、
〜Xは、各々独立して、NまたはC(R)を表し、X〜Xのうちの1つ以上がNであり、
〜Yは、各々独立して、NまたはC(R)を表し、Y〜Yのうちの2つ以上がNであり、
〜Rは、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール、置換もしくは非置換3〜30員ヘテロアリール、置換もしくは非置換(C3−C30)シクロアルキル、置換もしくは非置換(C1−C30)アルコキシ、置換もしくは非置換トリ(C1−C30)アルキルシリル、置換もしくは非置換ジ(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールシリル、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキルジ(C6−C30)アリールシリル、置換もしくは非置換トリ(C6−C30)アリールシリル、置換もしくは非置換モノもしくはジ(C1−C30)アルキルアミノ、置換もしくは非置換モノもしくはジ(C6−C30)アリールアミノ、または置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールアミノを表し、あるいは、隣接する置換基に結合して、置換もしくは非置換モノまたは多環(C3−C30)脂環式環または芳香族環を形成することができ、その炭素原子は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得、
a及びbは各々独立して、1〜4の整数を表し、
cは1または2を表し、
a、b、またはcは、2以上の整数であり、Rの各々、Rの各々、またはRの各々は、同一または異なっていてもよく、
前記ヘテロアリールは、B、N、O、S、Si、及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、
【化2】
式中、
及びAは、各々独立して、置換もしくは非置換(C6−C30)アリールを表し、
は、単結合、または置換もしくは非置換(C6−C30)アリーレンを表し、
〜X16は、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル、置換もしくは非置換(C2−C30)アルケニル、置換もしくは非置換(C2−C30)アルキニル、置換もしくは非置換(C3−C30)シクロアルキル、置換もしくは非置換(C6−C60)アリール、置換もしくは非置換3〜30員ヘテロアリール、置換もしくは非置換トリ(C1−C30)アルキルシリル、置換もしくは非置換トリ(C6−C30)アリールシリル、置換もしくは非置換ジ(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールシリル、または置換もしくは非置換モノもしくはジ(C6−C30)アリールアミノを表し、あるいは、隣接する置換基が相互に結合して、置換もしくは非置換モノまたは多環(C3−C30)脂環式環または芳香族環を形成することができ、その炭素原子は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得る、有機電界発光デバイス。
【請求項2】
式1は、以下の式3及び4のうちの1つにより表され、
【化3】
【化4】
式中、
〜R、X〜X、Z、及びa〜cは、請求項1で定義された通りである、請求項1に記載の有機電界発光デバイス。
【請求項3】
式1は、以下の式5〜7のうち1つにより表され、
【化5】
【化6】
【化7】
式中、
〜R、Z、及びa〜cは、請求項1で定義された通りである、請求項1に記載の有機電界発光デバイス。
【請求項4】
式1における
【化8】
の構造は、以下の式8〜13のうちの1つにより表され、
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
式中、
、R、Z、a、及びbは、請求項1で定義された通りである、請求項1に記載の有機電界発光デバイス。
【請求項5】
式2は、以下の式14〜17のうちの1つにより表され、
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
式中、A、A、L、及びX〜X16は、請求項1で定義された通りである、請求項1に記載の有機電界発光デバイス。
【請求項6】
式2において、A及びAは、各々独立して、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、インデニル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニル、クリセニル、及びフルオランテニルからなる群から選択される、請求項1に記載の有機電界発光デバイス。
【請求項7】
式2において、Lは、単結合または以下の式18〜30のうちの1つを表し、
【化19】
式中、
Xi〜Xpは、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル、置換もしくは非置換(C2−C30)アルケニル、置換もしくは非置換(C2−C30)アルキニル、置換もしくは非置換(C3−C30)シクロアルキル、置換もしくは非置換(C6−C60)アリール、置換もしくは非置換3〜30員ヘテロアリール、置換もしくは非置換トリ(C1−C30)アルキルシリル、置換もしくは非置換トリ(C6−C30)アリールシリル、置換もしくは非置換ジ(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールシリル、または置換もしくは非置換モノもしくはジ(C6−C30)アリールアミノを表し、あるいは、隣接する置換基が相互に結合して、置換もしくは非置換、モノまたは多環、(C3−C30)脂環式環または芳香族環を形成することができ、その炭素原子は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得る、請求項1に記載の有機電界発光デバイス。
【請求項8】
式1及び2において、R〜R、A、A、L、及びX〜X16における、前記置換アルキル、前記置換アルケニル、前記置換アルキニル、前記置換アルコキシ、前記置換シクロアルキル、前記置換トリアルキルシリル、前記置換ジアルキルアリールシリル、前記置換アルキルジアリールシリル、前記置換トリアリールシリル、前記置換モノもしくはジアルキルアミノ、前記置換モノもしくはジアリールアミノ、前記置換アルキルアリールアミノ、前記置換アリール(エン)、前記置換ヘテロアリール、及び前記置換モノまたは多環、(C3−C30)脂環式環または芳香族環の置換基は、各々独立して、重水素、ハロゲン、シアノ、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、(C1−C30)アルキル、ハロ(C1−C30)アルキル、(C2−C30)アルケニル、(C2−C30)アルキニル、(C1−C30)アルコキシ、(C1−C30)アルキルチオ、(C3−C30)シクロアルキル、(C3−C30)シクロアルケニル、3〜7員ヘテロシクロアルキル、(C6−C30)アリールオキシ、(C6−C30)アリールチオ、(C6−C30)アリールで非置換もしくは置換された3〜30員ヘテロアリール、3〜30員ヘテロアリールで非置換もしくは置換された(C6−C30)アリール、トリ(C1−C30)アルキルシリル、トリ(C6−C30)アリールシリル、ジ(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールシリル、(C1−C30)アルキルジ(C6−C30)アリールシリル、アミノ、モノまたはジ(C1−C30)アルキルアミノ、モノまたはジ(C6−C30)アリールアミノ、(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールアミノ、(C1−C30)アルキルカルボニル、(C1−C30)アルコキシカルボニル、(C6−C30)アリールカルボニル、ジ(C6−C30)アリールボロニル、ジ(C1−C30)アルキルボロニル、(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールボロニル、(C6−C30)アリール(C1−C30)アルキル、及び(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の有機電界発光デバイス。
【請求項9】
式1により表される前記第1のホスト化合物は、以下の化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の有機電界発光デバイス。
【化20A】
【化20B】
【化20C】
【化20D】
【請求項10】
式2により表される前記第2のホスト化合物は、以下の化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の有機電界発光デバイス。
【化21A】
【化21B】
【化21C】
【化21D】
【化21E】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分ホスト材料及びそれを含む有機電界発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電界発光デバイス(ELデバイス)は、より広い視野角、より高いコントラスト比、及びより速い応答時間を提供するという点において、利点を有する自発光デバイスである。最初の有機ELデバイスは、発光層を形成するための材料として芳香族ジアミン小分子及びアルミニウム錯体を使用することにより、Eastman Kodakによって開発された[Appl.Phys.Lett.51,913,1987]。
【0003】
有機電界発光デバイスは、有機電界発光材料に電気を印加することにより、電気エネルギーを光に変換するデバイスであり、一般にアノード、カソード及びアノードとカソードとの間に有機層を含む構造を有する。有機ELデバイスの有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層(ホスト及びドーパン材料を含む)、電子緩衝層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、などから構成され得て、有機層に使用される材料は、それらの機能によって、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子阻止材料、発光材料、電子緩衝材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料などに分類される。有機ELデバイス内では、電圧の印加により、アノードから発光層に正孔が注入され、カソードから発光層に電子が注入され、高いエネルギーの励起子が、正孔と電子との再結合によって形成される。このエネルギーによって、発光性有機化合物が励起状態に達し、基底状態に戻る発光性有機化合物の励起状態に起因するエネルギーから光を発することによって、発光が生じる。
【0004】
有機ELデバイス内の発光効率を決定する最も重要な要素は、発光材料である。発光材料は、高い量子効率、高い電子及び正孔の移動度を有していなければならず、形成された発光材料層が均一かつ安定していなければならない。発光材料は、発光色により青色発光材料、緑色発光材料、及び赤色発光材料に分類され、さらに黄色発光材料または橙色発光材料に分類される。加えて、発光材料はまた、それらの機能性によりホスト材料及びドーパント材料に分類され得る。近年、高い効率及び長寿命を提供する有機ELデバイスの開発が急務である。特に、OLEDの中型または大型パネルのEL特性要件を考慮すると、従来のものより優れた特性を示す材料が急務に開発されなければならない。固体状態で溶媒として作用し、エネルギーを移動させるホスト材料は、真空蒸着に適した高純度及び分子量が必要である。
【0005】
さらに、ホスト材料は、熱安定性を達成するための高いガラス転移温度及び高い熱分解温度、長寿命のための高い電気化学的安定性、非晶質の薄いフィルムの形成の容易性、隣接する層の材料への良好な接着性、ならびに他の層への非移行を有する必要がある。
【0006】
発光材料は、ホストとドーパントの組み合わせとして、色純度、発光効率、及び安定性を改善するために使用することができる。概して、優れた特性を有するELデバイスは、ドーパントをホストにドーピングして発光層を形成した構造を有する。ドーパント/ホスト材料システムを発光材料として使用する場合、ホスト材料はELデバイスの効率及び寿命に大幅に影響するので、ホスト材料の選択が重要である。
【0007】
韓国特許出願公開第10−2015−0003658号は、多成分ホストを用いた有機光電デバイス及びディスプレイデバイスを開示しており、インドール−カルバゾール残基の各窒素原子にヘテロアリール基が結合した構造の化合物、窒素原子に直接結合した6員環のヘテロアリール環が各メタ位に結合した6員環の置換基を有するものを第1のホスト化合物とし、カルバゾール−カルバゾール誘導体は、ホストの組み合わせの第2のホスト化合物として使用される。加えて、韓国特許第10−1502316号は、本発明の出願人の特許であり、カルバゾール−アリール−カルバゾール誘導体を第1のホスト化合物及び含窒素へテロアリール基がカルバゾールの窒素原子に(アリール基を介して)結合した構造を有する化合物として用いた多成分ホスト、ならびにそれを含む有機電界発光デバイスに関する。
【0008】
本発明者らは、インドール−カルバゾール、インデン−カルバゾール、ベンゾフラン−カルバゾール、またはベンゾチオフェン−カルバゾール残基のカルバゾールの窒素原子に結合した含窒素複素環式リンカーの構造を有する第1のホスト化合物と、カルバゾール−アリール−カルバゾールまたはカルバゾール−カルバゾール誘導体の第2のホスト化合物とを用いることにより、ホスト複合体を含む有機電界発光デバイスが、従来のホスト材料を用いたデバイスと比較して、寿命が向上するという効果が得られることを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、優れた効率及び長寿命を有する有機電界発光デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的が、アノードとカソードとの間に少なくとも1つの発光層を含む有機電界発光デバイスによって達成され得ることを見出し、発光層はホストとリン光ドーパントとを含み、ホストは複数のホスト化合物を含み、複数のホスト化合物のうちの少なくとも第1のホスト化合物は、下記式1により表され、第2のホスト化合物は、以下の式2により表され、
【0011】
【化1】
【0012】
式中、
Zは、NR、CR、O、またはSを表し、
〜Xは、各々独立して、NまたはC(R)を表し、X〜Xのうちの1つ以上は、Nであり、
〜Yは、各々独立して、NまたはC(R)を表し、Y〜Yのうちの2つ以上は、Nであり、
〜Rは、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール、置換もしくは非置換3〜30員ヘテロアリール、置換もしくは非置換(C3−C30)シクロアルキル、置換もしくは非置換(C1−C30)アルコキシ、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキルシリル、置換もしくは非置換ジ(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールシリル、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキルジ(C6−C30)アリールシリル、置換もしくは非置換トリ(C6−C30)アリールシリル、置換もしくは非置換モノもしくはジ(C1−C30)アルキルアミノ、置換もしくは非置換モノもしくはジ(C6−C30)アリールアミノ、または置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールアミノを表し、あるいは、隣接する置換基に結合して、置換もしくは非置換モノまたは多環(C3−C30)脂環式環または芳香族環を形成することができ、その炭素原子は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得、
a及びbは、各々独立して、1〜4の整数を表し、
cは、1または2を表し、
a、b、またはcは、2以上の整数であり、Rの各々、Rの各々、またはRの各々は、同一でも異なっていてもよく、ヘテロアリールは、B、N、O、S、Si、及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
【0013】
【化2】
【0014】
式中、
及びAは、各々独立して、置換もしくは非置換(C6−C30)アリールを表し、
は、単結合または置換もしくは非置換(C6−C30)アリーレンを表し、
〜X16は、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル、置換もしくは非置換(C2−C30)アルケニル、置換もしくは非置換(C2−C30)アルキニル、置換もしくは非置換(C3−C30)シクロアルキル、置換もしくは非置換(C6−C60)アリール、置換もしくは非置換3〜30員ヘテロアリール、置換もしくは非置換トリ(C1−C30)アルキルシリル、置換もしくは非置換トリ(C6−C30)アリールシリル、置換もしくは非置換ジ(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールシリル、または置換もしくは非置換モノもしくはジ(C6−C30)アリールアミノを表し、あるいは、隣接する置換基が相互に結合して、置換もしくは非置換モノまたは多環(C3−C30)脂環式環または芳香族環を形成することができ、その炭素原子は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、高効率及び長寿命を有する有機電界発光デバイスが提供され、本有機電界発光デバイスを使用するディスプレイデバイスまたは照明デバイスが製造され得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以降、本発明が詳細に記載される。しかしながら、以下の記載は本発明の説明を目的とするものであり、決して本発明の範囲の制限を目的とするものではない。
【0017】
式1の化合物は、以下の式3及び4のうちの1つにより表され得、
【0018】
【化3】
【0019】
【化4】
【0020】
式中、
〜R、X〜X、Z、及びa〜cは、式1で定義された通りである。
【0021】
具体的には、式1の化合物は、以下の式5〜7のうちの1つにより表され得、
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
式中、
〜R、Z、及びa〜cは、式1で定義された通りである。
【0026】
加えて、式1における
【0027】
【化8】
【0028】
の構造は、以下の式8〜13のうちの1つにより表され得、
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
【化11】
【0032】
【化12】
【0033】
【化13】
【0034】
【化14】
【0035】
式中、
、R、Z、a、及びbは、式1で定義された通りである。
【0036】
別の実施形態において、本発明の式2は、以下の式14〜17のうちの1つにより表され得、
【0037】
【化15】
【0038】
【化16】
【0039】
【化17】
【0040】
【化18】
【0041】
式中、
、A、L、及びX〜X16は、式2で定義された通りである。
【0042】
上記式1において、R〜Rは、好ましくは各々独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換(C1−C20)アルキル、置換もしくは非置換(C6−C20)アリール、置換もしくは非置換3〜20員ヘテロアリール、置換もしくは非置換(C3−C20)シクロアルキル、置換もしくは非置換(C1−C20)アルコキシ、置換もしくは非置換トリ(C1−C20)アルキルシリル、置換もしくは非置換ジ(C1−C20)アルキル(C6−C20)アリールシリル、置換もしくは非置換(C1−C20)アルキルジ(C6−C20)アリールシリル、置換もしくは非置換トリ(C6−C20)アリールシリル、置換もしくは非置換モノもしくはジ(C1−C20)アルキルアミノ、置換もしくは非置換モノもしくはジ(C6−C20)アリールアミノ、または置換もしくは非置換(C1−C20)アルキル(C6−C20)アリールアミノを表し、あるいは、隣接する置換基に結合して、置換もしくは非置換モノまたは多環(C3−C20)脂環式環または芳香族環を形成することができ、その炭素原子は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得、より好ましくは、各々独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換(C1−C10)アルキル、置換もしくは非置換(C6−C15)アリール、置換もしくは非置換3〜15員ヘテロアリール、置換もしくは非置換(C3−C15)シクロアルキル、置換もしくは非置換(C1−C10)アルコキシ、置換もしくは非置換トリ(C1−C10)アルキルシリル、置換もしくは非置換ジ(C1−C10)アルキル(C6−C15)アリールシリル、置換もしくは非置換(C1−C10)アルキルジ(C6−C15)アリールシリル、置換もしくは非置換トリ(C6−C15)アリールシリル、置換もしくは非置換モノもしくはジ(C1−C10)アルキルアミノ、置換もしくは非置換モノもしくはジ(C6−C15)アリールアミノ、または置換もしくは非置換(C1−C10)アルキル(C6−C15)アリールアミノを表し、あるいは、隣接する置換基に結合して、置換もしくは非置換モノまたは多環(C3−C15)脂環式環または芳香族環を形成することができ、その炭素原子は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得る。
【0043】
上記式2において、A及びAは、好ましくは各々独立して、置換もしくは非置換(C6−C20)アリールを表し、より好ましくは、各々独立して、置換もしくは非置換、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、インデニル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニル、クリセニル、及びフルオランテニルを表す。
【0044】
加えて、上記式2において、Lは、好ましくは、単結合、または置換もしくは非置換(C6−C20)アリーレン、例えば、以下の式18〜30のうちの1つを表す。
【0045】
【化19】
【0046】
式中、
Xi〜Xpは、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル、置換もしくは非置換(C2−C30)アルケニル、置換もしくは非置換(C2−C30)アルキニル、置換もしくは非置換(C3−C30)シクロアルキル、置換もしくは非置換(C6−C60)アリール、置換もしくは非置換3〜30員ヘテロアリール、置換もしくは非置換トリ(C1−C30)アルキルシリル、置換もしくは非置換トリ(C6−C30)アリールシリル、置換もしくは非置換ジ(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールシリル、または置換もしくは非置換モノもしくはジ(C6−C30)アリールアミノを表し、あるいは、隣接する置換基が相互に結合して、置換もしくは非置換モノまたは多環(C3−C30)脂環式環または芳香族環を形成することができ、その炭素原子は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得る。
【0047】
好ましくは、式18〜30において、Xi〜Xpは、好ましくは各々独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換(C1−C20)アルキル、置換もしくは非置換(C2−C20)アルケニル、置換もしくは非置換(C2−C20)アルキニル、置換もしくは非置換(C3−C20)シクロアルキル、置換もしくは非置換(C6−C20)アリール、置換もしくは非置換3〜20員ヘテロアリール、置換もしくは非置換トリ(C1−C20)アルキルシリル、置換もしくは非置換トリ(C6−C20)アリールシリル、置換もしくは非置換ジ(C1−C20)アルキル(C6−C20)アリールシリル、または置換もしくは非置換モノもしくはジ(C6−C20)アリールアミノを表し、あるいは、隣接する置換基が相互に結合して、置換もしくは非置換モノまたは多環(C3−C20)脂環式環または芳香族環を形成することができ、その炭素原子は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子で置換され得る。
【0048】
本明細書において、「(C1−C30)アルキル」は、鎖を構成する1〜30個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル(ここで炭素原子の数は、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個である)であることを意図し、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどを含む。「(C2−C30)アルケニル」は、鎖を構成する2〜30個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルケニル(ここで炭素原子の数は、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個である)であることを意図し、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチルブタ−2−エニルなどを含む。「(C2−C30)アルキニル」は、鎖を構成する2〜30個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキニル(ここで炭素原子の数は、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個である)であることを意図し、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチルペンタ−2−イニルなどを含む。「(C1−C30)アルコキシ」は、鎖を構成する1〜30個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル(ここで炭素原子の数は、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個である)であることを意図し、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、1−エチルプロポキシなどを含む。「(C3−C30)シクロアルキル」は、3〜30個の環骨格炭素原子を有する単環式または多環式の炭化水素(ここで炭素原子の数は、好ましくは3〜20個、より好ましくは3〜7個である)であり、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。「3〜7員のヘテロシクロアルキル」は、B、N、O、S、Si、及びP、好ましくはO、S、及びNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む3〜7個の、好ましくは5〜7の環骨格原子を有するシクロアルキルであり、テトラヒドロフラン、ピロリジン、チオラン、テトラヒドロピランなどを含む。「(C6−C30)アリール(エン)」は、6〜30個の環骨格炭素原子を有する芳香族炭化水素から誘導される単環式環または縮合環(ここで炭素原子の数は、好ましくは6〜20個、より好ましくは6〜15個である)であり、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、インデニル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニルなどを含む。「3〜30員ヘテロアリール(エン)」は、B、N、O、S、Si、及びPからなる群から選択される、少なくとも1個、好ましくは1〜4個のヘテロ原子を含む、3〜30個の環骨格原子、好ましくは3〜20個の環骨格原子、より好ましくは3〜15個の環骨格原子を有するアリールであり、単環または少なくとも1つのベンゼン環と縮合した縮合環であり、部分的に飽和していてもよく、単結合(複数可)を介して少なくとも1つのヘテロアリールまたはアリール基をヘテロアリール基に連結させることによって形成されるものであり得、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニルなどを含む、単環式環型ヘテロアリール、及び、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、フェノキサジニル、フェナントリジニル、ベンゾジオキソリルなどを含む、縮合環型ヘテロアリールを含む。また、「ハロゲン」は、F、Cl、Br、及びIを含む。
【0049】
本明細書において、「置換もしくは非置換」という表現における「置換」とは、ある特定の官能基内の水素原子が、別の原子または基、すなわち置換基で置換されることを意味する。式1及び2において、R〜R、A、A、L、及びX〜X16における、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、置換アルコキシ、置換シクロアルキル、置換トリアルキルシリル、置換ジアルキルアリールシリル、置換アルキルジアリールシリル、置換トリアリールシリル、置換モノまたはジアルキルアミノ、置換モノまたはジアリールアミノ、置換アルキルアリールアミノ、置換アリール(エン)、置換ヘテロアリール、及び置換モノまたは多環(C3−C30)脂環式環または芳香族環の置換基は、各々独立して、重水素、ハロゲン、シアノ、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、(C1−C30)アルキル、ハロ(C1−C30)アルキル、(C2−C30)アルケニル、(C2−C30)アルキニル、(C1−C30)アルコキシ、(C1−C30)アルキルチオ、(C3−C30)シクロアルキル、(C3−C30)シクロアルケニル、3〜7員ヘテロシクロアルキル、(C6−C30)アリールオキシ、(C6−C30)アリールチオ、(C6−C30)アリールで非置換もしくは置換された3〜30員ヘテロアリール、3〜30員ヘテロアリールで非置換もしくは置換された(C6−C30)アリール、トリ(C1−C30)アルキルシリル、トリ(C6−C30)アリールシリル、ジ(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールシリル、(C1−C30)アルキルジ(C6−C30)アリールシリル、アミノ、モノまたはジ(C1−C30)アルキルアミノ、モノまたはジ(C6−C30)アリールアミノ、(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールアミノ、(C1−C30)アルキルカルボニル、(C1−C30)アルコキシカルボニル、(C6−C30)アリールカルボニル、ジ(C6−C30)アリールボロニル、ジ(C1−C30)アルキルボロニル、(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールボロニル、(C6−C30)アリール(C1−C30)アルキル、及び(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0050】
式1により表される第1のホスト化合物は、以下の化合物を含むが、これらに限定されない。
【0051】
【化20A】
【0052】
【化20B】
【0053】
【化20C】
【0054】
【化20D】
【0055】
式2により表される第2のホスト化合物は、以下の化合物を含むが、これらに限定されない。
【0056】
【化21A】
【0057】
【化21B】
【0058】
【化21C】
【0059】
【化21D】
【0060】
本発明による有機電界発光デバイスは、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間の少なくとも1つの発光層を含む。発光層は、ホスト及びリン光性ドーパントを含む。ホスト材料は、複数のホスト化合物を含み、複数のホスト化合物のうち少なくとも第1のホスト化合物は、インドール−カルバゾール、インデン−カルバゾール、ベンゾフラン−カルバゾール、またはベンゾチオフェン−カルバゾール残基のカルバゾールの窒素原子に結合した含窒素複素環式リンカーの構造を有する式1によって表され、第2のホスト化合物は、カルバゾール−アリール−カルバゾールまたはカルバゾール−カルバゾール構造を有する式2によって表される。
【0061】
発光層は、発光する層であり、単層であってもよく、2層以上が積層されている多層であってもよい。発光層において、ホスト化合物に基づくドーパント化合物のドーピング濃度は、20重量%未満であることが好ましい。
【0062】
本発明による有機電界発光デバイスに含まれるリン光ドーパント材料は、特に限定されないが、好ましくは、イリジウム、オスミウム、銅、及び白金の金属錯化合物であり、より好ましくは、イリジウム、オスミウム、銅、及び白金のオルト金属錯化合物、さらにより好ましくはオルト金属イリジウム錯化合物から選択される。
【0063】
リン光ドーパントは、以下の式101〜103により表される化合物から選択されることが好ましい。
【0064】
【化22】
【0065】
【化23】
【0066】
【化24】
【0067】
Lは、以下の構造から選択される。
【0068】
【化25】
【0069】
100は、水素または置換もしくは非置換(C1−C30)アルキルを表し、
101〜R109及びR111〜R123は、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン、ハロゲンで非置換または置換された(C1−C30)アルキル、シアノ、置換もしくは非置換(C1−C30)アルコキシ、置換もしくは非置換(C3−C30)シクロアルキル、または置換もしくは非置換(C6−C30)アリールを表し、R120〜R123は、隣接する置換基に結合して、置換もしくは非置換モノまたは多環(C3−C30)脂環式環または芳香族環、例えば、キノリンを形成することができ、
124〜R127は、各々独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル、または置換もしくは非置換(C6−C30)アリールを表し、R124〜R127は、アリールであり、R124〜R127は、隣接する置換基に結合して、置換もしくは非置換モノまたは多環(C3−C30)脂環式環または(ヘテロ)芳香族環、例えば、フルオレン、ジベンゾチオフェンまたはジベンゾフランを形成することができ、
201〜R211は、各々独立して、水素、重水素、ハロゲンまたはハロゲンで非置換または置換された(C1−C30)アルキルを表し、R208〜R211は、隣接する置換基に結合して、置換もしくは非置換モノまたは多環(C3−C30)脂環式環、芳香族環またはヘテロ芳香環、例えば、フルオレン、ジベンゾチオフェンまたはジベンゾフランを形成することができ、
r及びsは、各々独立して、1〜3の整数を表し、rまたはsは、2以上の整数であり、R100の各々は、同一であっても異なっていてもよく、
eは、1〜3の整数を表す。
【0070】
具体的には、リン光ドーパント材料は、以下を含む。
【0071】
【化26A】
【0072】
【化26B】
【0073】
【化26C】
【0074】
本発明による有機電界発光デバイスは、有機層内のアリールアミン系化合物及びスチリルアリールアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含み得る。
【0075】
加えて、本発明による有機電界発光デバイスにおいて、有機層は、第1族の金属、第2族の金属、第4周期の遷移金属、第5周期の遷移金属、ランタノイド及び周期表のd−遷移元素の有機金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属、または前記金属を含む少なくとも1つの錯化合物をさらに含むことができる。
【0076】
本発明によると、カルコゲナイド層、金属ハロゲン化物層及び金属酸化物層から選択される一方または両方の電極の内面上に、少なくとも1つの層(以下、「表面層」という)を配置することが好ましい。具体的には、電界発光媒体層のアノード表面上にシリコンまたはアルミニウムのカルコゲナイド(酸化物を含む)層を配置し、電界発光媒体層のカソード表面上に金属ハロゲン化物層または金属酸化物層を配置することが好ましい。このような表面層は、有機電界発光デバイスの動作安定性を提供する。好ましくは、前記カルコゲナイドは、SiO(1≦X≦2)、AlO(1≦X≦1.5)、SiON、SiAlONなどを含み、前記金属ハロゲン化物は、LiF、MgF、CaF、希土類金属フッ化物などを含み、前記金属酸化物は、CsO、LiO、MgO、SrO、BaO、CaOなどを含む。
【0077】
アノードと発光層との間には、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、またはこれらの組み合わせを用いることができる。アノードから正孔輸送層または電子阻止層への正孔注入障壁(または正孔注入電圧)を低下させるために、正孔注入層に多層を用いることができる。2つの化合物を各層で同時に使用することができる。正孔輸送層及び電子阻止層は、多層で形成することもできる。
【0078】
発光層とカソードとの間には、電子バッファ層、正孔阻止層、電子輸送層、または電子注入層から選択された層、またはこれらの組み合わせから形成された層を用いることができる。
【0079】
電子の注入を制御し、発光層と電子注入層との間の界面特性を向上させるために、電子バッファ層に多層を使用することができる。2つの化合物を各層で同時に使用することができる。正孔阻止層及び電子輸送層は、多層で形成することもでき、各層は、2つ以上の化合物を含むことができる。
【0080】
本発明による有機電界発光デバイスにおいて、一対の電極の少なくとも一方の面に、電子輸送性化合物と還元性ドーパントとの混合領域、または正孔輸送化合物と酸化的ドーパントとの混合領域を配置することが好ましい。この場合、電子輸送化合物は、アニオンに還元され、これにより、混合領域から電界発光媒体に電子を注入して輸送することがより容易になる。また、正孔輸送化合物が酸化されてカチオンとなり、これにより、正孔を注入して混合領域から電界発光媒体に輸送することがより容易になる。好ましくは、酸化的ドーパントは、様々なルイス酸及び受容体化合物を含み、還元的ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、希土類金属、及びこれらの混合物を含む。電荷発生層として還元性ドーパント層を採用して、2つ以上の電界発光層を有し、白色光を発光する電界発光デバイスを作製することができる。
【0081】
本発明の有機電界発光デバイス各層を形成するために、真空蒸発法、スパッタ法、プラズマ法及びイオンプレーティング法などのドライフィルム成形法、またはスピンコート法、ディップコート法及びフローコーティング法などのウェットフィルム成形法を用いることができる。本発明の第1及び第2のホスト化合物は、共蒸発または混合蒸発することができる。
【0082】
ウェットフィルム成形法を用いる場合、各層を形成する材料をエタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの任意の適当な溶媒に溶解または拡散させることによって、薄膜を形成することができる。溶媒は、各層を形成する材料を溶解または拡散させることができる、かつ成膜性に問題がない、任意の溶媒とすることができる。
【0083】
本発明の有機電界発光デバイスを用いることにより、表示システムまたは照明システムを製造することができる。
【0084】
以下、本発明のホスト化合物を含むデバイスの発光特性について、以下の実施例により詳細に説明する。
【0085】
デバイス実施例1−1:本発明の第1のホスト化合物及び第2のホスト化合物が共蒸発されるOLEDデバイスの製造
OLEDデバイスは、本発明による有機電界発光化合物を用いて製造された。有機発光ダイオード(OLED)デバイス(Geomatec)用のガラス基材上の透明電極酸化インジウムスズ(ITO)の薄いフィルム(10Ω/sq)を、連続してアセトン、エタノール、及び蒸留水での超音波洗浄にかけ、次いでイソプロパノール内に保管した。その後、真空蒸着機器の基材ホルダ上にITO基材を載置した。化合物HI−1を前記真空蒸着機器のセル内に導入し、次いで前記機器のチャンバの圧力を10−6トルに制御した。その後、このセルに電流を印加して、上記導入された材料を蒸発させ、それにより、5nmの厚さを有する正孔注入層をITO基材上に形成した。次に、化合物HT−1を前記真空蒸着機器の別のセル内に導入し、このセルに電流を印加することにより蒸発させ、これにより、95nmの厚さを有する第1の正孔輸送層を正孔注入層上に形成した。次いで、化合物HT−2を前記真空蒸着機器の別のセル内に導入し、このセルに電流を印加することにより蒸発させ、これにより、20nmの厚さを有する第2の正孔輸送層を第1の正孔輸送層上に形成した。表1におけるデバイス実施例1−1の第1のホスト化合物及び第2のホスト化合物を、前記真空蒸着機器の2つのセル内にホストとして導入し、化合物D−74を別のセル内にドーパントとして導入した。これら2つのホスト材料を1:1の同じ割合で蒸発させ、ドーパントをホスト及びドーパントの総重量に基づいて12重量%のドープ量で堆積させるように、ドーパント材料をホスト材料とは異なる割合で蒸発させ、30nmの厚さを有する発光層を蒸発させて、第2の正孔輸送層上に形成した。次に、化合物ET−1を真空蒸着機器の別のセル内に導入し、蒸発させ、35nmの厚さを有する電子輸送層を発光層上に形成した。電子輸送層上に電子注入層として2nmの厚さを有するEI−1を堆積させた後、別の真空蒸着機器により、80nmの厚さを有するAlカソードを堆積させた。その結果、OLEDデバイスが製造された。
【0086】
【化27】
【0087】
デバイス実施例1−2〜1−9:本発明の第1のホスト化合物及び第2のホスト化合物が共蒸発されるOLEDデバイスの製造
表1のデバイス実施例1−2〜1−9の発光層のホスト及びドーパントを使用したことを除き、デバイス実施例1−1と同じ様式でOLEDデバイスを製造した。
【0088】
比較実施例1−1〜1−6:本発明の第2のホスト化合物のみをホストとして含むOLEDデバイスの製造
表1の比較実施例1−1〜1−6の発光層のホストを使用したことを除き、デバイス実施例1−1と同じ様式でOLEDデバイスを製造した。
【0089】
比較実施例1−7:本発明の第1のホスト化合物のみをホストとして含むOLEDデバイスの製造
表1の比較実施例1−7の発光層のホストを使用したことを除き、デバイス実施例1−1と同じ様式でOLEDデバイスを製造した。
【0090】
比較実施例2−1:本発明の第2のホスト化合物及び本発明によらないホスト化合物をホストとして含むOLEDデバイスの製造
表1の比較実施例2−1の発光層のホストを使用したことを除き、デバイス実施例1−1と同じ様式でOLEDデバイスを製造した。
【0091】
デバイス実施例1−1〜1−9、比較実施例1−1〜1−7及び比較実施例2−1で製造された、10mA/cmにおける駆動電圧及びOLEDの10,000nit及び定電流における輝度が100%から97%に低減されるのにかかる時間を下記表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【化28】
【0094】
デバイス実施例2:本発明の亜リン酸ホスト材料及び第2のホスト化合物が共蒸発されるOLEDデバイスの製造
OLEDデバイスは、本発明による有機電界発光化合物を用いて製造された。有機発光ダイオード(OLED)デバイス(Geomatec)用のガラス基材上の透明電極酸化インジウムスズ(ITO)の薄いフィルム(10Ω/sq)を、連続してアセトン、エタノール、及び蒸留水での超音波洗浄にかけ、次いでイソプロパノール内に保管した。その後、真空蒸着機器の基材ホルダ上にITO基材を載置した。化合物HI−2を前記真空蒸着機器のセル内に導入し、次いで前記機器のチャンバの圧力を10−6トルに制御した。その後、このセルに電流を印加して、上記の導入された材料を蒸発させ、それにより、80nmの厚さを有する第1の正孔注入層をITO基材上に形成した。次に、化合物HI−1を前記真空蒸着機器の別のセル内に導入し、このセルに電流を印加することにより蒸発させ、これにより、5nmの厚さを有する第2の成孔注入層を、第1の正孔注入層上に形成した。次いで、化合物HT−3を前記真空蒸着機器内のセル内に導入し、このセルに電流を印加することにより蒸発させ、これにより、10nmの厚さを有する第1の正孔輸送層を、第2の正孔注入層上に形成した。それから、化合物HT−2を前記真空蒸着機器の別のセル内に導入し、このセルに電流を印加することにより蒸発させ、これにより、30nmの厚さを有する第2の正孔輸送層を第1の正孔輸送層上に形成した。化合物H1−71及びH2−141を前記真空蒸着機器の2つのセル内に導入し、化合物D−102を別のセル内にドーパントとして導入した。
【0095】
これら2つのホスト材料を1:1の同じ割合で蒸発させ、ドーパントをホスト及びドーパントの総重量に基づいて10重量%のドープ量で堆積させるように、ドーパント材料をホスト材料とは異なる割合で蒸発させ、40nmの厚さを有する発光層を蒸発させて、第2の正孔輸送層上に形成した。その後、化合物ET−2及び化合物EI−1をそれぞれ真空蒸着機器の2つのセル内に導入し、4:6の割合で蒸発させ、35nmの厚さを有する電子輸送層を発光層上に形成した。電子輸送層上に電子注入層として2nmの厚さを有するEI−1を堆積させた後、別の真空蒸着機器により、80nmの厚さを有するAlカソードを堆積させた。その結果、OLEDデバイスが製造された。OLEDデバイスを製造するために使用された全ての材料は、10−6トルの真空昇華によって精製されたものであった。
【0096】
OLEDの15,000nit及び定電流における輝度が100%〜97%に低減されるのにかかる時間を下記の表2に示す。
【0097】
【化29】
【0098】
比較実施例3:従来の亜リン酸ホスト材料を含むOLEDデバイスの製造
化合物H1−71の代わりに化合物H3−3を発光層のホストに使用したことを除き、デバイス実施例2と同じ様式でOLEDデバイスを製造した。
【0099】
【化30】
【0100】
OLEDの15,000nit及び定電流における輝度が100%から97%に低減されるのにかかる時間を下記の表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
本発明の有機電界発光デバイスは、複数のホスト化合物及びリン光ドーパントを含む発光層を含む。複数のホスト化合物の少なくとも第1のホスト化合物は、インドール−カルバゾール、インデン−カルバゾール、ベンゾフラン−カルバゾール、またはベンゾチオフェン−カルバゾール残基のカルバゾールの窒素原子に結合した含窒素複素環式リンカーの構造を有し、第2のホスト化合物は、カルバゾール−アリール−カルバゾールまたはカルバゾール−カルバゾール構造を有する。本発明の有機電界発光デバイスは、従来のデバイスと比較して著しく改善された寿命の効果を有することが確認された。