特許第6735304号(P6735304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6735304水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極、その製造方法及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735304
(24)【登録日】2020年7月15日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極、その製造方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/10 20060101AFI20200728BHJP
   C25B 11/03 20060101ALI20200728BHJP
   C25B 1/04 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   C25B11/10 A
   C25B11/03
   C25B1/04
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-54450(P2018-54450)
(22)【出願日】2018年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-162515(P2018-162515A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年3月22日
(31)【優先権主張番号】201710183535.0
(32)【優先日】2017年3月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JIAO TONG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】李 新昊
(72)【発明者】
【氏名】張 軍軍
(72)【発明者】
【氏名】陳 接勝
(72)【発明者】
【氏名】野田 克敏
(72)【発明者】
【氏名】原山 貴司
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−518532(JP,A)
【文献】 Libin Yang et al.,An efficient bifunctional electrocatalyst for water splitting based an cobalt phosphide,Nanotechnology,2016年 6月10日,Vol.27, No.23,23LT01
【文献】 Youwen LIU et al.,Low Overpotential in Vacancy-Rich Ultrathin CoSe2 Nanosheets for Water Oxidation,Journal of American Chemical Society,2014年11月 5日,Vol.136, Issue 44,p.15670-15675
【文献】 Jahangir Masud et al.,Cobalt Selenide Nanostructures; An Efficient Bifunctional Catalyst with High Current Density at Low Coverage,ACS Applied Materials & Interfaces ,2016年 7月13日,Vol.8, No.27 ,p.17292-17302
【文献】 Yang Hou et al.,Vertically oriented cobalt selenide/NiFe layered-double-hydroxide nanosheets supported an exfoliated graphene foil; an efficient 3D electrode for overall water splitting,Energy & Environmental Science,2016年 2月,Vol.9,p.478-483
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 11/03−11/10,1/02−1/12,
JSTPlus(JDreamIII),
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解式酸素発生用の電極であって、チタンメッシュと、チタンメッシュワイヤに成長されているセレン化コバルトナノシートとを含み、
前記セレン化コバルトは、Co0.85Se又はCoSeである、セレン化コバルト/チタンメッシュ電極。
【請求項2】
前記チタンメッシュにおける前記セレン化コバルトの成長量は、0.04−0.14mg/cmであり、
前記セレン化コバルトナノシートの厚さは、10nm−40nmであり、
前記セレン化コバルトナノシートは、チタンメッシュにおいてナノシートアレイを形成する、
請求項1に記載のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極。
【請求項3】
前記セレン化コバルトは、Co0.85Seである、
請求項1に記載のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極。
【請求項4】
前記チタンメッシュにおける前記セレン化コバルトの成長量は、0.06−0.10mg/cmである、
請求項1に記載のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極。
【請求項5】
所定のコバルト/セレンモル比を有するコバルト塩とセレン粉末とを用いて、水熱法によりチタンメッシュにおいてセレン化コバルトナノシートを成長させることを含む、セレン化コバルト/チタンメッシュ電極の製造方法。
【請求項6】
前記コバルト塩は、塩化コバルト、臭化コバルト、フッ化コバルト、酢酸コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、及び炭酸コバルトから選ばれるものであり、所定のコバルト/セレンモル比を有するコバルト塩とセレン粉末、アンモニア水及びチタンメッシュを水熱反応釜に入れて、100−180℃の水熱反応温度で1−48時間反応させた後、冷却させることで、セレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られる、請求項5に記載のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極の製造方法。
【請求項7】
前記コバルト/セレンモル比を1:50−50:1に設定し、前記チタンメッシュにおけるセレン化コバルトの成長量が0.04−0.14mg/cmになるように、110−130℃の温度範囲で、10−15時間成長させる、請求項5又は6に記載のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極の製造方法。
【請求項8】
前記コバルト/セレンモル比を5:6に設定し、前記チタンメッシュにおけるセレン化コバルトの成長量が0.06−0.10mg/cmになる、請求項7に記載のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極の製造方法。
【請求項9】
水分解式酸素発生用の陽極としての請求項1〜4のいずれか一項に記載のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極、又は請求項5〜8のいずれか一項に記載の製造方法で得られたセレン化コバルト/チタンメッシュ電極の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属の電気触媒作用によって水を電解する分野に関するもので、より具体的には、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極、その製造方法及びその応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年、石炭や石油などの再生不可能な化石エネルギーの枯渇や、化石エネルギーの使用による環境汚染は、人々の生存と発展にひどい影響を与えている。そして、化石エネルギーの代わりとなる、環境にやさしい再生可能なエネルギーの探し及び開発は、国内外の新しいエネルギー研究解題になっており、特に太陽エネルギーの変換及び貯蔵に係る研究が着目されている。使い切れないエネルギーシステムとして、太陽エネルギーの変換及び利用は、最近数十年の科学研究の重点方向になっている。太陽エネルギーは、グリーンエネルギーとして、太陽光発電やペロブスカイト太陽電池などの技術によって電気エネルギーに変換できる。しかしながら、電気エネルギーの貯蔵は、他の形態のエネルギーに比べて、困難である。電気により水を分解して水素及び酸素を発生することで、電気エネルギーを化学物質に変換して貯蔵する方法は、上記の課題を解決するための新しい手段である。また、水電解にて必要となるエネルギーを触媒剤により低減する必要があるため、安定性及び活性の高い触媒剤が要求される。また、エネルギーに係る他の貯蔵技術、例えば、リチウム・空気電池、亜鉛空気電池、電気化学(スーパー)コンデンサ、燃料電池なども、関連電極材料の開発に係っている。低価且つ有効な電気触媒電極、光触媒電極及び電気化学デバイスにおける電極材料を量産できることは、上記の複数の分野で共通する研究テーマである。
【0003】
電気化学式水分解によってカーボンニュートラルエネルギーキャリアとなる水素及び酸素を発生することは、グリーン的で持続可能なエネルギー変換プロセスである。現時点、水電解プロセスで使用される電極材料は、希少な貴金属(白金)や貴金属酸化物(酸化イリジウムおよび酸化ルテニウム)材料であった。これらの貴金属は、地球の地殻における含有量が非常に低いため、非常に高価になっており、その大規模な生産及び適用が著しく妨げられている。なお、陰極の還元反応(水素発生)に比べて、陽極の酸化反応(酸素発生)のほうが、より高い過電位が必要となる。そのため、水素発生用電極にマッチできるとともに、性能が安定する酸素発生用電極を見出すことは、高効率の水電解を実現するためのキーポイントになっている。そのうち、遷移金属カルコゲン化合物は、化学物理的安定性及び触媒性能が優れるとともに、低価であるため、注目されている。セレン化コバルトは、半金属性を有する遷移金属カルコゲン化合物として、他のセレン化物よりも良い導電性を有するため、よりよい電気化学触媒性能を有する。また、適切な支持材の選択は、高性能電極材料の製造のポイントステップである。従来から、活性物質を高分子導電性接着剤でガラス状炭素電極に接着させる方法が知られているが、当該方法によれば、触媒剤の性能が大幅に低下する。また、カーボンクロス、カーボンペーパー、ニッケルネットに触媒活性剤材料を直接に成長させる手段によれば、触媒性能を大幅に改善することができる。ただし、これらの支持材は、耐酸性及び耐アルカリ性に乏しいため、電極材料が損傷されやすい。なお、上記の材料は、支持材として再利用することが困難であるため、産業上に利用することが難しい。したがって、遷移金属セレン化物の良好な活性および構造安定性を確保できるとともに、支持材の利点を最大に生かす方法は、研究者にとって大きな課題になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の発明者は、上記課題を解決するために研究を行った結果、以下のことを発見した。導電性が優れるとともに再利用できるチタンメッシュを支持材とするとともに、半金属特性を有するセレン化コバルトを活性材料とし、支持材と活性材料との間の接触形態を変えることで、オーミック接触界面を有する水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ複合電極を製造できる。セレン化コバルト/チタンメッシュ界面におけるオーミック接触は、電解における界面抵抗を低減できるため、セレン化コバルト/チタンメッシュ電極を、電気化学式水分解分野や他の光電変換分野、エネルギー蓄蔵分野に応用できる。
【0005】
本発明は、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極、その製造方法及び応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、セレン化コバルト/チタンメッシュ電極は、水電解式酸素発生用の電極であって、チタンメッシュと、メッシュワイヤに成長されているセレン化コバルトナノシートとを含む、セレン化コバルト/チタンメッシュ電極を提供する。
【0007】
前記セレン化コバルト/チタンメッシュ電極において、前記セレン化コバルトは、Co0.85Se、CoSe、CoSe、CoSe、CoSe又はそれらの混合物であることが好ましい。
【0008】
前記チタンメッシュにおける前記セレン化コバルトの成長量は、0.04−0.14mg/cmであり、前記セレン化コバルトナノシートの厚さは、10nm−40nmであり、前記セレン化コバルトナノシートは、チタンメッシュにおいてナノシートアレイを形成する、ことが好ましい。
【0009】
前記セレン化コバルト/チタンメッシュ電極において、前記セレン化コバルトは、Co0.85Seである、ことがさらに好ましい。
前記セレン化コバルト/チタンメッシュ電極において、前記チタンメッシュにおける前記セレン化コバルトの成長量は、0.06−0.10mg/cmである、ことがさらに好ましい。
【0010】
本発明の第2態様は、所定のコバルト/セレンモル比を有するコバルト塩とセレン粉末とを用いて、水熱法によりチタンメッシュにおいてセレン化コバルトナノシートを成長させることを含む、セレン化コバルト/チタンメッシュ電極の製造方法を提供する。
【0011】
前記製造方法にいて、前記コバルト塩は、塩化コバルト、臭化コバルト、フッ化コバルト、酢酸コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、及び炭酸コバルトから選ばれるものであり、所定のコバルト/セレンモル比を有するコバルト塩とセレン粉末、アンモニア水及びチタンメッシュを水熱反応釜に入れて、100−180℃の水熱反応温度で1−48時間反応させた後、冷却させることで、セレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られる、ことが好ましい。
【0012】
前記製造方法にいて、前記コバルト/セレンモル比を1:50−50:1に設定し、好ましくは、コバルト/セレンモル比を5:6に設定して、前記チタンメッシュにおけるセレン化コバルトの成長量が0.04−0.14mg/cmになるように、110−130℃の温度範囲で、10−15時間成長させる、ことが好ましい。
【0013】
本発明の第3態様は、水電解式酸素発生用の陽極としての前記セレン化コバルト/チタンメッシュ電極の応用を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塩化コバルト、セレン粉末、アンモニア水及びチタンメッシュを原料として、成長がコントロール可能な酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ複合電極を製造でき、プロセスが簡単で、コントロールしやすいとともに、連続的な大規模製造を実現でき、得られる電極は、活性及び安定性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】反応釜における水熱反応後に、メッシュワイヤの表面にセレン化コバルトナノシートのアレイが成長されたチタンメッシュを模式的に示す図である。
図2】チタンメッシュと酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極とを示すデジタル写真である。
図3】水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極を示す走査型電子顕微鏡画像である。
図4】水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極を示す透過型電子顕微鏡画像である。
図5】実施例1及び比較例1で得られたセレン化コバルト/チタンメッシュ電極に対するリニアスキャン電圧電流グラフである。
図6】実施例1で得られた電極に対して1回目のサイクル及び1000回目のサイクルで行った電圧電流測定結果を示すリニアスキャン電圧電流グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、セレン化コバルト/チタンメッシュ電極の製造方法は、以下の工程を含む。
塩化コバルトと、セレン粉末と、アンモニア水と、チタンメッシュとを原料として、塩化コバルトと、セレン粉末と、アンモニア水と、溶媒とを所定の比率で混合してから前駆体が得られ、当該前駆体とチタンメッシュとを水熱反応釜に入れて、水熱反応温度範囲を100-180℃に制御して、1−48時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。また、前記塩化コバルトの代わりに、酢酸コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト及び炭酸コバルトなどの他のコバルト塩を使用してもよい。前記チタンメッシュの目数は、特に限定されない。
【0017】
反応温度は、110−150℃が好ましいが、110−130℃がより好ましい。また、反応時間は、6−18時間が好ましいが、10−15時間がより好ましい。
通常、所望のセレン化コバルトにおけるコバルトとセレンとの比率に応じて、所定のコバルト/セレンモル比を有するコバルト塩とセレン粉末、アンモニア水及びチタンメッシュを水熱反応釜に入れる。例えば、チタンメッシュに成長されるセレン化コバルトがCo0.85Seとなるように,所定のコバルト/セレンモル比が5:6であるコバルト塩とセレン粉末とを入れる。ただし、チタンメッシュにセレン化コバルトナノシートが成長できればよく、コバルト/セレンモル比が1:50−50:1である範囲でコバルト塩とセレン粉末とを加入してよい。例えば、他の所望のセレン化コバルトが得られるためには、コバルト塩とセレン粉末とを所定の比率に設定することで、CoSe、CoSe、CoSe或いはCoSeナノシートを成長できる。
【0018】
コバルト塩及びセレン粉末の加入量を調整することによって、チタンメッシュにおけるセレン化コバルト触媒の成長量を調整できる。例えば、チタンメッシュにおけるセレン化コバルトナノシートの成長量を0.04−0.20mg/cm、好ましくは、0.04−0.14mg/cm、より好ましくは、0.06−0.10mg/cmに制御できる。
【0019】
顕微鏡で観察されたセレン化コバルトナノシートは、厚さが10−60nm、好ましくは、10−40nm、より好ましくは、15−25nmである。
図1は、反応釜における水熱反応後に、メッシュワイヤの表面にセレン化コバルトナノシートのアレイが成長されたチタンメッシュを模式的に示す。
【0020】
[電極の製造例]
以下の実施例において、セレン化コバルトが成長されるチタンメッシュは、その面積が1cm×3cmであり、チタンワイヤの直径が100ミクロンであり、目数は、各実施例に示す。ただし、本発明において、これらのパラメータは、実施例に開示されたものに限られず、当業者が必要に応じて選択できるものである。
【0021】
[実施例1]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0022】
[実施例2]
モル比が5:6(0.32mmol:0.384mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0023】
[実施例3]
モル比が5:6(0.08mmol:0.096mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0024】
[実施例4]
モル比が5:6(0.04mmol:0.048mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0025】
[実施例5]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である酢酸コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0026】
[実施例6]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である硫酸コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0027】
[実施例7]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である硝酸コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0028】
[実施例8]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である炭酸コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0029】
[実施例9]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで100Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0030】
[実施例10]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで150Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0031】
[実施例11]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで180Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0032】
[実施例12]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、6時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0033】
[実施例13]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、9時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0034】
[実施例14]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、15時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0035】
[実施例15]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、18時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0036】
[実施例16]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(10目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0037】
[実施例17]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(20目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0038】
[実施例18]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(30目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0039】
[実施例19]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(40目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0040】
[実施例20]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(60目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0041】
[実施例21]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(100目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0042】
[実施例22]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、9mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0043】
[実施例23]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、15mLの水及び6mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0044】
[実施例24]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び4mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0045】
[実施例25]
モル比が5:6(0.16mmol:0.192mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び8mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0046】
[実施例26]
モル比が1:1(0.16mmol:0.16mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び8mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0047】
[実施例27]
モル比が1:2(0.16mmol:0.32mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び8mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0048】
[実施例28]
モル比が7:8(0.16mmol:0.183mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び8mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0049】
[実施例29]
モル比が9:8(0.16mmol:0.142mmol)である塩化コバルト及びセレン粉末と、12mLの水及び8mLのアンモニア水とを混合してなる前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。
【0050】
[比較例1]
ナノ粒子状のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極の製造
製造されたばかりのNaHSe溶液2mLと、塩化コバルト(0.16mmol)とを、38mLの水に混合して、前駆体を調製した。当該前駆体を50mlの反応釜に入れるとともに、表面がきれいなチタンメッシュ(80目)を反応釜に入れてから、当該反応釜をオーブンで120Cまでに加熱して、12時間反応させた後に、自然に冷却させることで、水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極が得られた。上記の各実施例とは異なり、チタンメッシュに成長されたセレン化コバルトは、ナノ粒子であって、セレン化コバルトナノシートではなかった。
【0051】
ここで、NaHSe溶液は、以下のように調製された。
ガラス瓶にNaBH(7.2mg,1.9mmol)を2mLの水に溶解してから、1.5mgのSe粉末を入れて、密封状態で黒色のSe粉末が完全に溶解されるまでガラス瓶を搖動した。
【0052】
モル比が5:6であるコバルト塩/セレン粉末を水熱反応させることにより得られたセレン化コバルトは、Co0.85Seであった。また、モル比は、特に限定されておらず、例えば、1:1、1:2、7:8、9:8などの他のモル比で混合することで、CoSe、CoSe、CoSe、CoSe等が得られてもよい。
【0053】
以下のように、調製例、特に実施例1で得られたセレン化コバルト/チタンメッシュ電極に対して、観察及び評価を行った。
図2は、チタンメッシュ(左側)と、水熱反応後の酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極(右側)とを示すデジタル写真である。図3は、実施例1で得られた水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極を示す走査型電子顕微鏡画像である。図4は、実施例1で得られた水電解式酸素発生用のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極を示す透過型電子顕微鏡画像である。
【0054】
ICP(誘導結合プラズマ)法によって、チタンメッシュに成長されたセレン化コバルトナノシートアレイの担持量を分析した結果、実施例1の電極において、単位面積のチタンメッシュにおけるセレン化コバルトの担持量は、0.067mg/cmであった。
【0055】
図5は、実施例1で得られたナノシート状のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極と、比較例1で得られたナノ粒子状のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極とを、酸素飽和の1.0PBS溶液(pH=7.0)において測定したリニアスキャン電圧電流グラフを示す。図5に示すように、1.8V電位vs.可逆水素電極(RHE)の場合、両者の電流密度は、それぞれ29.6mAと2.4mAとであった。実施例2−3で得られた電極を同じ方法によって測定して得られたリニアスキャン電圧電流グラフを、表1に示す。
【0056】
【表1】
備考:ナノシートの厚さは、走査型電子顕微鏡画像(大量のナノシートを統計)層によって得られる。担持量は、誘導結合プラズマ分光計によって得られる。
【0057】
図6は、実施例1で得られた電極に対して1回目のサイクル及び1000回目のサイクルに行った電圧電流測定結果を示すリニアスキャン電圧電流グラフを示す。
図5及び図6から分かるように、本発明によれば、ナノシート状のセレン化コバルト/チタンメッシュ電極を酸素発生電極として使用する場合、非常に高い電流密度及び優れた安定性が得られた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6