【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の概要
現状では、信頼性が高く経済的な放電制御機能を有し、かつ種々の電池型の電池に対して好適に使用できる制御装置の提供が望まれている。
【0012】
したがって、本開示の実施形態は、蓄電池の放電を制御するための制御装置を提供する。制御装置は、
ダミー蓄電池と、
電池およびダミー電池を放電するよう構成される第1の回路と、
ダミー電池の開路電圧を計測するよう構成される第2の回路とを含む。
【0013】
制御装置は、
第2の回路を使用してダミー電池の開路電圧を測定し、
ダミー電池の上記測定された開路電圧に基づいて電池の容量減少量最大値を求めるよう構成される。
【0014】
このような構成を提供することにより、電池容量の監視に基づいて放電を制御することが可能となる。この目的のためにダミー電池が使用される。ダミー電池は、電池の容量減少量最大値を求めることを可能とするよう構成される。電池の容量減少量最大値とは、好ましくは、放電により実現できる最大の容量減少量である。より具体的には、容量減少量最大値は、好ましくは、電池が完全放電状態となるまでに、有利には電池の充電レベル(SOC)使用範囲の下限に達するまでに放電されるべき容量の大きさである。
【0015】
したがって、「完全放電状態である」という記載は、電池が物理的に完全に放電された状態(すなわち0%SOC)であることを意味するものではない。電池が物理的に完全に放電された状態は、電池を損なう可能性があるため、回避すべきである。SOCの許容範囲の下限は、電池の危険な放電や危険な低電圧が生じるリスクを冒すことなく電池が最大限に放電され得るように選択されてもよい。
【0016】
ダミー電池を使用することにより、電池で計測するよりも正確に開路電圧を計測できる。したがって、電池の容量減少量最大値についてもより正確に求めることができる。ダミー電池は、1種の単独の二次電池(すなわち蓄電池)からなるものであってもよい。ダミー電池は、(特に電池が複数の単電池を含む組電池の形態である場合に)電池に含まれていてもよい。基本的に、ダミー電池と電池は同じ設計変数(たとえば電池容量、劣化率、電池型など)を有していてもよい。特に、電池が複数の単電池を含む組電池の形態である場合に、ダミー電池は、この電池の単電池と同じ型のものであってもよい。ダミー電池の使用目的は、特にダミー電池の貯蔵電力の使用目的は、蓄電池の充放電制御を補助するためのみであってよく、車両を駆動するためでなくてよい。ただ、ダミー電池は、電池の充放電に対応して充放電されてもよい。
【0017】
電池の容量とは、電池が定格電圧において有し得る電荷の量である。容量は、アンペア時(A・h)などの単位で計測される。本開示に係る電池の容量減少量最大値は、放電開始時における、放電され得る電荷の量を表す。したがって、充電開始時に充電レベルSOCがたとえば70%であって、放電が10%で停止される必要がある場合には、電池の容量減少量最大値は60%に対応する。電池の容量減少量最大値は電池の放電深度(DOD)とも称される。DODはSOCとの対で用いられ、一方が大きくなると他方が小さくなる。DODはAhで表されてもよい。
【0018】
開路電圧とは、あらゆる回路との接続が切断された、特に本開示に係る第1の回路との接続が切断された、ある装置の2つの端子の間の、すなわちダミー電池の2つの端子の間の電位差である。よって外部電源には接続されていないため、2つの端子の間には外部電流は流れていない。
【0019】
制御装置および制御装置により実施される上記プロシージャは、あらゆる型のバイポーラ固体電池に適している。また、制御装置は、他の型の電池、たとえばリチウムイオン電池などの液体電池にも適用できる。
【0020】
制御装置は、
第1の回路を使用して電池およびダミー電池を放電し、
放電された電池の現時点での容量減少量を監視し、
電池の現時点での容量減少量が上記求めた容量減少量最大値を超える場合に放電を停止するようさらに構成されてもよい。
【0021】
したがって、制御装置は、上記求めた容量減少量最大値に基づいて、電池が完全放電状態になるまで電池の放電を確実に実施できる。
【0022】
代替的にまたは追加的に、制御装置は、
電池の放電中における電池の電圧を監視し、
電圧が所定の下限電圧より低い場合に放電を停止するよう構成されてもよい。
【0023】
したがって、所定の下限電圧は、電池の危険な放電や危険な低電圧が生じるリスクを冒すことなく電池が最大限に放電され得るように選択されてもよい。この所定の下限電圧は、電池の劣化度に基づいて決定されてもよい。所定の下限電圧は、第2の所定の下限電圧に対応していてもよく、第1の所定の下限電圧より小さくてもよい。第1の所定の下限電圧は、従来技術から知られる従来の所定の下限電圧に対応していてもよく、新しい電池のSOC使用範囲下限に対応していて、劣化は考慮に入れていないものである。
【0024】
制御装置は、電池が放電中に充電されているか否かを判定するようさらに構成されてもよい。放電中に充電されている場合には、制御装置は、好ましくは、第2の回路を使用してダミー電池の開路電圧を再測定するよう、そして再測定された開路電圧に基づいて電池の容量減少量最大値を再度求めるようさらに構成される。
【0025】
このように、制御装置は、電池の放電と同時に生じ得る電池の充電を考慮するよう構成されてもよい。たとえば、車両が内燃機関により駆動されている際には、電池が放電されてもよい。車両がハイブリッド車である場合には、電池は放電されると同時に、内燃機関により生成される電力によって充電されてもよい。制御装置は、こうした電池の充放電を制御するよう構成されてもよい。
【0026】
制御装置は、電池の放電電流および放電時間に基づいてかつ/またはダミー電池の開路電圧に基づいて、電池の現時点での容量減少量を求めるようさらに構成されてもよい。
【0027】
言い換えると、時間経過に伴う電流値の積分によって電池の容量が計算されてもよい。代替的または追加的に、容量は、ダミー電池の開路電圧に基づいて測定されてもよい。現時点での容量減少量の計測は、電池の放電電流および放電時間に基づいて、電池の放電中にされてもよい。ダミー電池の電圧の計測を使用する系においては、現時点での容量減少量を計測する際に放電が短時間停止されてもよい。
【0028】
制御装置は、ダミー電池の上記測定された開路電圧に基づいて、特に所定のSOC‐OCVマッピングに基づいて、ダミー電池の充電レベルを判定するよう構成されてもよい。したがって、制御装置はSOC‐OCV曲線などの所定のSOC‐OCVマッピングを備えていてもよく、制御装置はこのSOC‐OCVマッピング内において、OCVの計測値に対応するSOC値を検索してもよい。
【0029】
制御装置は、上記判定されたダミー電池の充電レベルに基づいて容量減少量最大値を求めるよう構成されてもよい。言い換えると、電池の容量減少量最大値は、上記判定されたダミー電池の充電レベルに基づいて求められてもよい。この充電レベルは、ダミー電池の上記測定された開路電圧に基づいて判定されたものである。
【0030】
所定のSOC‐OCVマッピングは、ダミー電池の判定された劣化度に基づいて更新されてもよい。したがって、このSOC‐OCVマッピングは、ダミー電池の初回充電より前にあらかじめ作成されてもよい。そして、SOC‐OCVマッピングは放電プロシージャの実施中に更新されてもよい。その結果、電池の容量減少量最大値が、ダミー電池の上記測定された開路電圧およびダミー電池の劣化度に基づいて求められてもよい。
【0031】
ダミー電池の劣化度は、ダミー電池の温度/頻度分布およびダミー電池の所定の劣化率に基づいて判定されてもよい。
【0032】
ダミー電池の劣化度の判定は、アレニウスの式に基づいてなされてもよい。
ダミー電池の温度/頻度分布は、ダミー電池の各温度について、寿命終了までの間にダミー電池がその温度であった時間の長さを記録することによって求められてもよい。
【0033】
言い換えると、ダミー電池の温度データは、ダミー電池の寿命終了までの間、すなわち使用期間中および使用期間と使用期間との間の休止期間中に取得されてもよい。温度/頻度分布は、ダミー電池の各温度について、現時点までの間にダミー電池がその温度であった時間の長さを累積することによって確立されてもよい。この理由から、ダミー電池と電池とが同じ有効期間、すなわち同じ寿命期間を有することが有利である。言い換えると、電池の交換時にダミー電池も交換することが有利である。
【0034】
制御装置は、上記判定されたダミー電池の充電レベルに基づいて、特に、電池の充電レベルとダミー電池の充電レベルとを対応づけた所定のマッピングに基づいて電池の充電レベルを判定するようさらに構成されてもよい。たとえば制御装置は、所定のルックアップテーブル内、すなわち所定のマッピング内で、上記判定されたダミー電池の充電レベルと一致する電池の充電レベルを検索してもよい。言い換えると、電池の充電レベルと上記判定されたダミー電池の充電レベルとの関係は、あらかじめ決められていてもよく、したがって、制御装置にとって既知であってもよい。一例として、ダミー電池の充電レベルは、電池の充電レベルに常に対応していてもよい。
【0035】
制御装置は、電池の充電レベルに基づいて容量減少量最大値を求めるようさらに構成されてもよい。したがって、容量減少量最大値と上記判定された電池の充電レベルとの関係は、制御装置によって計算されてもよい。言い換えると、電池の容量減少量最大値は、上記判定された電池の充電レベルに基づいて求められてもよい。この電池の充電レベルは、上記判定されたダミー電池の充電レベルに基づいて判定されたものであり、このダミー電池の充電レベルは、ダミー電池の上記測定された開路電圧およびダミー電池の判定された劣化度に基づいて判定されたものである。
【0036】
制御装置は、所定の劣化率を有する特定の電池型の電池についてその放電を制御するよう構成されてもよい。ダミー電池は劣化率を有してよく、ダミー電池の劣化率は電池の劣化率と相関関係にあり、特には電池の劣化率と同一であってもよい。したがって、ダミー電池は蓄電池であってもよい。好ましくは、ダミー電池は、ダミー電池の特徴についての計測値に基づいて電池の特徴が決められ得るように選択される。特に、ダミー電池は、ダミー電池について判定された劣化率に基づいて、電池の劣化率と、したがって電池についての適切な容量減少量最大値とが決められ得るように選択される。
【0037】
また、特定の電池型の電池は、好ましくは所定の容量を有し、ダミー電池の容量は電池の容量と相関関係にあってもよい。たとえば、電池が複数の単電池を含む組電池である場合には、ダミー電池の容量は単電池の容量と同じであってもよい。さらに、ダミー電池の型は
単電池の型と同じであってもよい。したがって、ダミー電池は、ダミー電池の充電レベルに基づいて、電池の充電レベルと、したがって電池の好適な容量減少量最大値とが決められ得るように選択される。たとえば、車両が使用している電池がSOC20%〜SOC80%のものである場合、ダミー電池の容量はこの範囲と同等であってもよい、すなわちSOC20%〜SOC80%の範囲であってよい。
【0038】
好ましくは、制御装置は、ダミー電池の開路電圧を検出するための電圧センサを含んでもよい。制御装置は、電池の電圧および/または充電レベルを検出するためのさらなる電圧センサを含んでもよい。
【0039】
制御装置は、ダミー電池および/または電池の温度を検出するための温度センサを含んでもよい。
【0040】
本開示は組電池にも関する。組電池は、少なくとも1つの電池、特にバイポーラ固体電池と、上述の制御装置とを含んでもよい。
【0041】
本開示は電池充電システムにも関する。電池充電システムは、少なくとも1つの電池、特にバイポーラ固体電池と、電池の放電装置と、上述の制御装置とを含んでもよい。
【0042】
さらなる態様によれば、本開示は、上述したような、電動モータおよび組電池を含む車両に関する。
【0043】
代替的には、車両は、上述したように、電動モータと、少なくとも1つの電池、特にバイポーラ固体電池と、さらに制御装置とを含んでもよい。
【0044】
また本開示は、蓄電池の放電を制御する方法にも関する。電池およびダミー蓄電池を放電するために第1の回路が使用され、かつダミー電池の開路電圧を計測するために第2の回路が使用される。上記方法は、
第2の回路を使用してダミー電池の開路電圧を測定する工程と、
ダミー電池の上記測定された開路電圧に基づいて電池の容量減少量最大値を求める工程とを含む。
【0045】
上記方法は、
第1の回路を使用して電池およびダミー電池を放電する工程と、
放電された電池の現時点での容量減少量を監視する工程と、
電池の現時点での容量減少量が上記求めた容量減少量最大値を超える場合に放電を停止する工程とをさらに含んでもよい。
【0046】
代替的に、または追加的に、上記方法は、
電池の放電中における電池の電圧を監視する工程と、
電圧が所定の下限電圧より低い場合に放電を停止する工程とを含んでもよい。
【0047】
上記方法は、電池が放電中に充電されているか否かを判定し、放電中に充電されていれば、ダミー電池の開路電圧および電池の容量減少量最大値を再度求める工程をさらに含んでもよい。
【0048】
電池の現時点での容量減少量は、電池の放電電流および放電時間に基づいてかつ/またはダミー電池の開路電圧に基づいて求められてもよい。
【0049】
ダミー電池の充電レベルは、ダミー電池の上記測定された開路電圧に基づいて、特に所定のSOC‐OCVマッピングに基づいて判定されてもよい。
【0050】
容量減少量最大値は、上記判定されたダミー電池の充電レベルに基づいて求められてもよい。
【0051】
所定のSOC‐OCVマッピングは、好ましくは、ダミー電池の判定された劣化度に基づいて更新される。
【0052】
電池の劣化度は、ダミー電池の温度/頻度分布およびダミー電池の所定の劣化率に基づいて判定されてもよい。
【0053】
ダミー電池の劣化度の判定は、アレニウスの式に基づいてなされてもよい。
ダミー電池の温度/頻度分布は、ダミー電池の各温度について、寿命終了までの間にダミー電池がその温度であった時間の長さを記録することによって求められてもよい。
【0054】
電池の充電レベルは、上記判定されたダミー電池の充電レベルに基づいて、特に、電池の充電レベルとダミー電池の充電レベルとを対応づけた所定のマッピングに基づいて判定されてもよい。容量減少量最大値は、電池の充電レベルに基づいて求められてもよい。
【0055】
添付の図面は、本明細書に援用され、本明細書の一部を構成している。本開示の実施形態を例示するものであり、かつ、本明細書の記載とともに本明細書の基本的な思想を説明するものである。