(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
人間のコミュニケーションには、人間の持つ感覚に応じた様々なモードがある。これらの中で最もよく使用されているのは、視覚及び聴覚を用いたコミュニケーションである。これに対し、嗅覚は人間の生活では身近な存在であるにもかかわらず、これをコミュニケーションに使用している例は極めて少ない。しかし、コミュニケーションで視覚及び聴覚に加えて嗅覚まで利用できるようになれば、コミュニケーションはより効率的になり、様々な人がより深く体験を共有できるようになると考えられる。
【0003】
こうした点に着目して、最近では、テレビジョン受像機、パーソナルコンピュータ、ゲーム機など、映像と音声とを再生できる装置と協働して動作し、場面にあわせて香りを発生する装置が提案されている。この明細書では、そのように場面にあわせて香りを発生する装置を香りディスプレイという。
【0004】
こうした香りディスプレイでは、複数の香りを自由に選択する機能を持たなければ十分に香りを活かすことができない。そこで、それぞれ予め選択された香りの発生源(これを香源という)を封入した複数のカートリッジ(香りカートリッジという)を用いることが考えられる。これらを香りディスプレイに装填し、所望のカートリッジから香りを発散させることが考えられる。そうした香りディスプレイが後掲の特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1の開示によれば、香りカートリッジに内部の香源からの香りを外部に放出する香り通路を設け、所望のタイミングでカートリッジ内部に空気を送り込む機構を香りディスプレイ側に設ける。こうした機構で香り通路を通して香りカートリッジから香りディスプレイ内部に香りが放出される。この香りは、さらに香りディスプレイの筐体とトップパネルとの間の空間を通じ、トップパネルの中央に設けられた開口部又はその近傍の開口に導かれ、その開口部又は開口を通して香りディスプレイから噴出される。さらに、これらカートリッジからの香り放出の機構とは別に、トップパネルの開口部に通ずる空気の通路を設け、その底部に香り成分を含まない空気の放出機構を設ける。この空気の放出機構からの空気は、香りディスプレイの香り通路の出口近くを通じて、前記した開口部に流れる。ある香りを放出した後、次の香りを選択するときには、この空気の放出機構から空気を放出して周囲の香りを含んだ空気を吹き払い、その後に次の香りを放出する。このとき、空気の放出機構からも空気を放出すると、香りディスプレイからの香りが空気の流れに乗ってトップパネルの開口部又は開口から外部に噴出する。こうすることで任意のタイミングで香りが混ざることなく香りを切替えることができ、遠いところまで香りを届けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したような構成を持つ香りディスプレイによれば、どの風力源を動作させるかによって香りを自由に選択することができる。またその際に空気の放出機構を動作させれば香りが混ざることを防止できる。どの風力源をどのタイミングで動作させるかについては、外部から香りディスプレイにコマンドを送ることで制御できる。そのため、例えば映画、アニメーションなどで所望のタイミングで所望の風力源を動作させることで、場面に適した香りを放出できるという優れた効果がある。
【0008】
ただし、特許文献1に開示された香りディスプレイでは、香りカートリッジから放出された香りが筐体及びトップパネルの内部に付着する可能性がある。香りの成分が筐体内部などに付着すると、別の香りと混ざり合って本来の香りが得られないことになる。したがって、筐体内部に付着する香りの量をできるだけ少なくしながら、所望の香りカートリッジから効率よく香りを噴出できるようにすることが望ましい。
【0009】
それ故にこの発明の目的は、筐体内に香り成分が付着することを防止しながら、香りカートリッジからの香りを効率的に外部に噴出できるような香りディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1の局面に係る香りディスプレイは、内部に封入された香源を持つ香りカートリッジから、香りを含む空気を外部に噴出させる香りディスプレイであって、香りカートリッジは、香りを含む空気を噴出させる開口を持ち、香りカートリッジを収容するカートリッジ収容部を持つ筐体と、カートリッジ収容部に収容された香りカートリッジの開口から香りを含む空気を噴出させる噴出機構と、香りカートリッジから噴出される香りを含む空気を、香りカートリッジの開口から筐体に形成された香りの噴出のための開口領域まで導くためのチューブと、チューブを筐体に固定するためのチューブ固定手段とを含む。
【0011】
好ましくは、チューブは樹脂性であり、チューブの内壁にはフッ素樹脂がコーティングされている。
【0012】
チューブはフッ素樹脂を混合した樹脂からなっていてもよい。
【0013】
より好ましくは、カートリッジ収容部は、複数の香りカートリッジを収容可能であり、香りディスプレイは、複数の香りカートリッジの各々について、噴出機構と、当該香りカートリッジから噴出される香りを含む空気を、開口領域まで導くように筐体に取付けられたチューブとを含む。
【0014】
さらに好ましくは、カートリッジ収容部は、複数の香りカートリッジの開口が同じ方向を向くように複数のカートリッジを収容し、筐体は、複数の香りカートリッジの開口が向いている方向を覆うキャップを持ち、チューブ固定手段は、複数の香りディスプレイに対するチューブが、それぞれ一端が対応する香りディスプレイの開口に当接し、他端が、キャップの、カートリッジ収納部とは逆の面に規定された所定の領域に開口するようにチューブををそれぞれキャップに固定するための、キャップに対して着脱可能に取り付けられる複数のチューブ固定具を含む。
【0015】
好ましくは、複数のチューブ固定具の各々は、互いに分離及び結合が可能な2つの部材を持ち、2つの部材の互いに対向する面の少なくとも一方には、相互が結合したときにチューブを所定の姿勢で支持するように予め形成された溝が形成されている。
【0016】
より好ましくは、チューブ固定手段はさらに、2つの部材を互いに分離可能に結合する結合部材を含む。
【0017】
好ましくは、香りディスプレイは、さらに、香りを含まない空気の流れを生成する空気流生成装置と、空気流生成装置により生成された空気の流れをキャップの所定の領域に導くダクトとを含み、当該ダクトは所定の領域に開口し、チューブの他端は、所定の領域の中の、ダクトの開口の周囲に配置される。
【0018】
より好ましくは、香りディスプレイは、さらに、香りを含まない空気の流れを生成する空気流生成装置と、空気流生成装置により生成された空気の流れをキャップの開口領域に導くダクトとを含み、ダクトは開口領域に開口し、複数の香りディスプレイに対するチューブの各々は、対応する香りディスプレイの開口に当接した一端と、キャップの、ダクトの内壁部分に開口した他端とを持つ。
【0019】
この発明の目的、構成、及び効果は、この明細書と添付の図面とにより明らかとなるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明及び図面では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。また、以下に述べる実施の形態の全ての部分がこの発明の実施に必須というわけではない。この発明の実施に必須の構成要素は特許請求の範囲の記載によって定められるべきである。
【0022】
[第1の実施の形態]
<構成>
図1に、この発明の第1の実施の形態に係る香りディスプレイ50の外観図を示す。
図1を参照して。香りディスプレイ50は、ほぼ12角柱形状の筐体60を含む。筐体60は、ベース筐体70と、ベース筐体70の上に順に組付けられた中間筐体72、上部筐体74、及びキャップ76とを含む。キャップ76は上部筐体74に対して着脱可能で、後述するように香りカートリッジを香りディスプレイ50に装填したり、香りディスプレイ50から取外したりするときにはこのキャップ76を上部筐体74から取外してから行う。
【0023】
キャップ76の上面は中央に向かってなだらかに高くなっている。キャップ76の上面の中央には、香りカートリッジからの香気の出口である開口が集まった開口領域80が形成されている。
【0024】
図2及び
図3を参照して、この実施の形態では、上部筐体74の断面は正12角形状をしており、上部筐体74の内部には複数個の香りカートリッジを収容可能なカートリッジ収容部が形成されている。特に、
図2及び
図3に示すとおり、上部筐体74の内部には、12個の香りカートリッジ群110が装填されている。
【0025】
特に
図3を参照して、ベース筐体70の下面には、後述するように空気の取入口となる複数の開口78が設けられる。ベース筐体70の上には中間筐体72が組付けられ、中間筐体72には底板90が取付けられる。底板90の上面には、外部から電力を受取るためのUSB基板92が設けられる。底板90の上面にはさらに、香りを含まない空気からなる空気流を生成し、キャップ76に設けた開口領域80に向けて送り出すためのシロッコファン100、及び、香りディスプレイ50の中の風力源を制御するための制御回路を搭載した、無線通信により外部と通信可能な制御回路基板94が、取付部材102、並びに取付部材96及び98により取付けられる。底板90の上面にはさらに、制御回路基板94の電源となる図示しないバッテリーが搭載されている。
【0026】
上部筐体74の内部には、シロッコファン100からの空気の流通路を形成するダクト部材112が固定されている。ダクト部材112の下部には、中央に開口部108を持つ中継基板106が取付けられる。中継基板106の下面には、香りカートリッジの底面に貼り付けられたNFCタグ(図示せず)と近距離通信することにより、各香りカートリッジ又はその香りの識別子を読取るためのNFCチップ120が、各香りカートリッジの位置に対応して設けられる。シロッコファン100の吐出口には、吐出口を覆うように形成された吸入口を持つノズル104が設けられている。ノズル104の先端はその基部より小径の、丸みを帯びた正方形状となっており、開口部108を介してダクト部材112の空気の流通路に挿入されている。
【0027】
図4及び
図5を参照して、例えば香りカートリッジ190は、断面がほぼ正三角形の三角柱状である。すなわち香りカートリッジ190は、互いに平行で合同な正三角形である上面232及び底面234、並びにこれらの周囲をつなぐように形成された側面236とからなる筐体230を持つ。筐体230は、香源が封入される中空部を持つ。香りカートリッジ190の上面232の1つの頂点の近傍には、筐体230の中空部に通じ、筐体230内に封入された香源からの香りを含む空気が放出される開口238が形成されている。側面236の、開口238と反対側の部分には、筐体230の中空部に外部のマイクロブロアが空気を送り込むための給気口240が形成されている。
図5に示すように、開口238が形成された頂点の両脇の側面236には溝242及び244が形成されている。これら溝242及び244は、香りカートリッジ190をキャップ76のカートリッジ収容部に装填する際の位置決めに用いられる。
【0028】
図4及び
図5には示していないが、香りカートリッジ190の底面には、前述したようにNFCチップ120と近距離通信するためのNFCタグが貼り付けられている。NFCタグには、香りカートリッジ190に封入されている香りの識別コードが記憶されており、この識別コードを香りカートリッジ190のNFCタグからNFCチップ120へ、NFCチップ120からさらに制御回路基板94に送信し、制御回路基板94から外部の制御装置に送信する。外部の制御装置は、この識別子を使用して、どの香りカートリッジから香りを噴射させるかを決定し、制御回路基板94にそのための制御信号を送信する。
【0029】
図6は、キャップ76の上面を拡大して示したものである。
図6を参照して、開口領域80の中央には、
図2及び
図3に示すダクト部材112の上部と係合し、シロッコファン100からの空気が排出される開口150が形成される。さらにその周囲には、各香りカートリッジから香りを含んだ空気をガイドするようにキャップ76に取付けられたチューブ160などの端部が突き出すように、開口150よりも小さな複数の小開口が形成されている。これら小開口は、開口150の中央を中心とする円周上に、回転対称に配置されている。
【0030】
図7は、
図1の7−7方向における香りディスプレイ50の断面図である。
図7を参照して、上部筐体74の内周の、各香りカートリッジが装填される箇所の背後には、圧電素子により動作して空気の流れを作り出すマイクロブロアが設けられている。例えば香りカートリッジ190の背後には、香りカートリッジ190の給気口240に空気を送り込むためのマイクロブロア320が設けられる。香りカートリッジ190と反対側に装填される香りカートリッジ202についても同様で、その給気口に空気を送り込むマイクロブロア342が香りカートリッジ202の背後に設けられる。
【0031】
例えば香りカートリッジ190の開口238にはチューブ160の一端が当接するように取付けられる。チューブ160はチューブ固定具290によりキャップ76の表面に取付けられている。チューブ固定具290は、チューブ160の他端がキャップ76に形成された開口から開口150の方に向くようにチューブ160をキャップ76に固定する。香りカートリッジ202についても同様で、その開口にはチューブ172の一端が当接して取付けられる。チューブ172は、チューブ固定具302により他端がキャップ76の開口から開口150の方を向くようにキャップ76に取付けられる。こうした配置により、香りカートリッジ190及び202から噴出される香りを含む空気は、それぞれチューブ160及び172を経てキャップ76の上に導かれ、開口150の方に噴出される。シロッコファン100が生成した空気が開口150から噴出されていると、これらの香りを含んだ空気は開口150から噴出される空気の流れにより搬送される。その結果、香りを含んだ空気を香りディスプレイ50からかなり離れた位置まで届けることができる。シロッコファン100を止めると、香りを含んだ空気は開口領域80付近にとどまる。その結果、香りディスプレイ50の近傍のみに限定して香りを漂わせることができる。
【0032】
図7に示すチューブ162、164、166、168及び170なども同様に、対応する香りカートリッジの開口部から噴出される香りを含んだ空気を開口150に向けて導くためのものである。
【0033】
図8及び
図9は、それぞれキャップ76を開放したときの上部筐体74を示す斜視図及び平面図である。
図10は、
図9の10−10方向の断面図である。
図8、
図9及び
図10を参照して、この実施の形態では、上部筐体74の内部のカートリッジ収容部に12個の香りカートリッジが収容される。これらは、カートリッジ収容部の中央を中心として回転対称な位置に配置される。
図9では、香りカートリッジ190から始まって逆時計周りに香りカートリッジ192、194、196、198、200、202、204、206、208、210及び212がカートリッジ収容部に装填可能である。このために、上部筐体74の内部には、12個のカートリッジ収容室を形成するための、V字型の仕切り部材360が12個設けられている。各仕切り部材360のV字型の下端に相当する部分は上部筐体74の外壁の内周に固定される。V字型の上端の各々は、隣接する仕切り部材360の上端と合流して固定部材362によりダクト部材112の外周に固定される。
図9に示すように、上部筐体74の外壁の内周には、香りカートリッジ190―212の位置に合わせてマイクロブロア320―342が固定されている。
【0034】
なお、マイクロブロア320―342は、交番電圧を受けることにより風を生成する。そのための交番電圧は、制御回路基板94に搭載された制御回路が生成し出力する。この制御回路は、無線通信を介して外部から与えられた情報にしたがってマイクロブロア320―342とシロッコファン100とを駆動する。
【0035】
図11に、キャップ76の裏面の斜視図を示す。
図11を参照して、キャップ76の裏面には、12個の香りカートリッジ190―212に対応する位置にそれぞれ設けられた12個のチューブ固定具290―312が固定されている。
図11ではその1つであるチューブ固定具304をキャップ76から外した状態で示す。これらチューブ固定具290―312は、それぞれ香りカートリッジ190―212から噴出される香りを含んだ空気を開口150に向けて導くためのチューブ160―182を所定位置に固定するためのものである。
図11に示すように、チューブ固定具290―312は、キャップ76の中央、すなわち開口150(
図6)の中央を中心として回転対称に配置されている。
【0036】
図12を参照して、例えばチューブ固定具304は、溝460及びネジ溝462が形成された部材400と、溝464及びネジ溝466が形成された部材402とを含む。部材400と部材402とにはさらに、互いに対応する位置に形成されたネジ穴470及びネジ穴474、並びにネジ穴472及びネジ穴476が形成されている。部材400の、部材402に対向する面には2つの突起480及び482が形成されており、部材402の、部材400に対抗する面のこれらがはまり込む位置には凹部(図示せず)が形成されている。溝460と溝464との間にチューブ174を挟むように部材400及び402を組合せる。この例では部材400に形成された突起480及び482を部材402に形成された凹部にはめ込むことで部材400と部材402とを結合する。さらに、ネジ穴470及びネジ穴474とネジ穴472及びネジ穴476とにそれぞれ小さなネジ(図示せず)をねじ込んで部材400と部材402とを互いに固定し、チューブ固定具304を得る。つまりこれらネジは、部材400と部材402とを互いに分離可能に結合するためのものである。このように結合して得られたチューブ固定具304は、ネジ溝462とネジ溝466とにより形成されたネジ穴を持つ。このネジ穴にネジ404を通し、ネジ404をキャップ76の裏面に形成されたネジ穴(図示せず)にねじ込むことでチューブ固定具304をキャップ76の裏面に固定する。すなわちネジ404は、チューブ固定具304をキャップ76の裏面に着脱可能に固定する。ネジ404を逆に回せばチューブ固定具304をチューブ174とともにキャップ76から取外すことができる。
【0037】
例えばチューブ174は一般的な樹脂からできたものでよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリ塩化ビニール、ポリカーボネート、アクリルなどからなる。この実施の形態ではさらに、チューブ174などの内壁には、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマーなど)をコーティングしてある。フッ素樹脂の典型的なものはテフロン(登録商標)である。フッ素樹脂は公知のように滑りやすく物質がつきにくいという特長がある。このようなチューブで香りを含む空気を外部に放出する際に、チューブの内部に香り物質がつきにくい。そのため、香りカートリッジを交換しても、チューブの内部には残存香り物質が殆ど存在しないので、カートリッジからの本来の香りが、他の香りと混ざり合うことが防止できるという効果がある。
【0038】
しかし、たとえフッ素樹脂であっても、長期に亘る使用後には僅かではあるが香りがチューブの内部に残る場合がある。そのような場合は、チューブ固定具680―702をキャップ76から取り外し分解してチューブを新品に交換することによって、香り残存による弊害は完全に排除でききる。
【0039】
なお、樹脂性のチューブの内壁にフッ素樹脂をコーティングすることだけではなく、フッ素樹脂を混合した一般樹脂でチューブを成形しても効果がある。
【0040】
<動作>
上記した香りディスプレイ50は以下のように動作する。香りディスプレイ50を使用するために、最初に香りカートリッジ190など、必要な香りカートリッジを上部筐体74開口78の内部に装填する。香りカートリッジを装填すると、香りカートリッジに付されたタグから香りディスプレイ50の内部のNFCチップ120が近接通信により香りカートリッジに付された又は香りの識別子を読取る。その識別子が制御回路基板94を介して外部の制御装置(例えばコンピュータ)に送信される。外部の制御装置は、この情報と予め準備されていたシナリオとに基づき、どのようなタイミングで、どの香りカートリッジから香りを噴出させるか、シロッコファン100をいつ動作させるか、などに関する制御信号を生成し、制御回路基板94に送信する。制御回路基板94はこの制御信号により指定されたタイミングで、指定された香りカートリッジに対応するマイクロブロア及びシロッコファン100に駆動信号を送信する。この駆動信号を受信したマイクロブロア又はシロッコファン100は、駆動信号にしたがって動作し、香りカートリッジから香りを含んだ空気を噴出させる。
【0041】
より詳細には、
図7及び
図13を参照して、例えば香りカートリッジ190から香りを噴出させるときには、制御回路基板94はマイクロブロア320に対して交番信号からなる駆動制御信号を送信する。マイクロブロア320はこの交番信号に応答して内部に設けられた圧電素子を持つ薄板を振動させ、空気の流れを起こして給気口240を介して香りカートリッジ190の内部に空気を吹き込む。この結果、香りカートリッジ190の内部の圧力が一時的に高まり、香りカートリッジ190は内部に封入された香源からの香りを含んだ空気を開口238から外部に噴出する。
【0042】
特に
図13を参照して、このとき、空気はベース筐体70の下面に設けられた開口78から筐体60の中に入り、さらに空気の流通路522及び524を経てマイクロブロア320及び332の位置に至る。例えばマイクロブロア320が動作しているときには、空気はマイクロブロア320に引き込まれ、マイクロブロア320のノズル及び香りカートリッジ190の給気口240からなる空気の流通路526を経て香りカートリッジ190の内部に吹き込まれる。香りカートリッジ190からの香りを含む空気530はチューブ160の内部に入り、チューブ160の他端から香りを含む空気534として噴出する。
【0043】
マイクロブロア332の場合も同様で、空気はマイクロブロア332に引き込まれ、マイクロブロア332のノズルと香りカートリッジ202の給気口からなる空気の流通路528を経て香りカートリッジ202の内部に吹き込まれる。香りを含む空気532はチューブ172の内部に入り、他端から香りを含む空気536として噴出する。
【0044】
このときシロッコファン100が動作しているものとする。開口78から筐体60内に入った空気の一部はシロッコファン100によりその吐出口から噴出され、空気の流れ538として空気の通路280の内部に導入され、さらに開口150から空気の流れ540として噴出される。チューブ160及び172からそれぞれ噴出された香りを含む空気534及び536は、この空気の流れ540にのって比較的遠いところまで搬送される。香りカートリッジ190からの香りの噴出を停止するタイミングになると、マイクロブロア320は動作を停止し、香りカートリッジ190の内部に空気が吹き込まれなくなる。香りカートリッジ190の内部の圧力は外部と等しくなり、香りカートリッジ190から香りを含んだ空気の放出が止まる。他の香りカートリッジからの香りの噴出も同様に行われる。
【0045】
チューブ160の内壁がフッ素樹脂によりコーティングされているため、香りカートリッジ190から噴出される香りを含んだ空気は効率よく開口150側に導かれ噴出される。香りカートリッジ190からの香りの噴出が止まった後にもチューブ160の内壁には香り成分がほとんど付着しない。そのため、香りカートリッジ190を別の香りカートリッジと交換し、その後に香りを噴射させたときに、香りが混合してしまうという可能性がほとんどなくなるという効果がある。仮にチューブ160の内部に香り成分が残存していても、次にシロッコファン100が動作したときにその香りは速やかにチューブ160から排出される。そのため、香りカートリッジ190を停止させ、他の香りカートリッジから香りを噴出させているときにも、残存した香り成分が悪影響を及ぼすことはほとんどない。
【0046】
また、香りカートリッジ190などから噴出された香りを含む空気は、チューブ160などにより開口150側に導かれ、筐体60の外部でチューブ160などから排出される。その結果、筐体60の内部に香り成分が残存するおそれは極めて小さく、香りディスプレイ50が噴出する香りに悪影響を及ぼすおそれがほとんどない。
【0047】
[第2の実施の形態]
<構成>
図14に、この発明の第2の実施の形態に係る香りディスプレイ600の外観を示し、
図15に香りディスプレイ600を斜め上方から見た分解斜視図を、
図16に香りディスプレイ600を斜め下から見た分解斜視図を、それぞれ示す。香りディスプレイ600は、筐体610を含む。筐体610は、ベース筐体70と、ベース筐体70の上に順に組付けられた中間筐体72、上部筐体74、及びキャップ620とを含む。香りディスプレイ600が第1の実施の形態の香りディスプレイ50と異なるのは、キャップ76の代わりにキャップ620に関連するところを含む点のみである。ベース筐体70、中間筐体72、及び上部筐体74は第1の実施の形態のものと同一である。
【0048】
図17を参照して、キャップ620は、キャップ76と同様、周辺から中央に向かって緩やかに湾曲した上面を持ち、その中心に香りを含む空気を噴出する開口が集まった開口領域630を持つ。
【0049】
開口領域630には開口632が形成されている。開口632の内部側面には、後述すように香りカートリッジから噴出される香りを含む空気を開口632の内部に導くための複数のチューブの端部が開口している。これら開口は、開口632の中央を中心とする円上に、回転対称に配置される。
【0050】
図19を参照して、キャップ620の裏面には、各香りカートリッジに対応する位置に設けられ、各香りカートリッジから噴出される香りを含んだ空気を開口632の内部に導くよう、チューブ640―662をキャップ620に固定するためのチューブ固定具680―702が取付けられている。
図19にはチューブ固定具694のみを取外した状態で示す。
【0051】
図20を参照して、チューブ固定具694は、部材720及び722と、部材720と、チューブ固定具694をキャップ620に固定するためのネジ724とを含む。
【0052】
部材720の、部材722と対向する面にはチューブ654を所定位置に保持するための溝740と、ネジ溝742とが形成されている。部材722の、部材720と対向する面にも、チューブ654を所定位置に保持するための溝744と、ネジ溝746とが形成されている。溝740と溝744とでチューブ654を保持するように両者を組合せる。部材720の部材722と対向する面には突起780及び782が、部材722の部材720と対向する面には凹部(図示せず)が、それぞれ形成されており、これら突起780及び782と凹部とを組合せることで部材720及び722が互いに結合される。さらに、部材720には3つのネジ穴790、792及び794が、部材722のそれらに対応する位置にはネジ穴796、798及び800が、それぞれ形成されている。これらネジ穴に図示しない小さなネジをねじ込むことで部材720及び部材722が互いにしっかり固定される。その状態でネジ溝742とネジ溝746とにより形成されるネジ穴にネジ724を通し、キャップ620の裏面に形成されたネジ穴(図示せず)にチューブ固定具694を固定する。チューブ固定具694は、チューブ654の一端が対応する香りカートリッジの香りの通路の開口部に当接し、他端が開口632の内部の所定位置に開口するようキャップ620に取付けられる。
【0053】
この状態の香りディスプレイ600の断面図を
図18に示す。
図18は、
図14の18−18方向の断面図である。この実施の形態では、チューブ640は香りカートリッジ190の香りの通路の開口部に当接した一端と、開口632の内部の側壁に開口した他端とを持つ。チューブ652も同様に、香りカートリッジ202の香りの通路の開口部に当接した一端と、開口632の内部の、チューブ640と対向する位置に開口した他端とを持つ。ほかのチューブ654―662、及び
図18には図示していないチューブ642―650についても同様である。
【0054】
これらチューブ640―662はいずれも、第1の実施の形態と同様、樹脂製で内部にフッ素樹脂のコーティングを施してある。その結果、この実施の形態でも第1の実施の形態の香りディスプレイ50と同様の効果を得ることができる。
【0055】
図21に、この第2の実施の形態に係る香りディスプレイ600における空気の流れを示す。
図21を参照して、
図21を参照して、空気はベース筐体70の下面に設けられた開口78から筐体610の中に入り、さらに空気の流通路522及び524を経てマイクロブロア320及び332の位置に至る。マイクロブロア320が動作しているときには、空気はマイクロブロア320に引き込まれ、マイクロブロア320及び香りカートリッジ190の給気口240からなる空気の流通路526を経て香りカートリッジ190の内部に吹き込まれる。香りカートリッジ190からの香りを含む空気750はチューブ640の一端からその内部に入り、チューブ640の他端から香りを含む空気760として開口632の内部に噴出する。
【0056】
マイクロブロア332の場合も同様で、空気はマイクロブロア332に引き込まれ、マイクロブロア332と香りカートリッジ202の給気口からなる空気の流通路528を経て香りカートリッジ202の内部に吹き込まれる。香りを含む空気752はチューブ652の一端からその内部に入り、他端から香りを含む空気762として開口632の内部に噴出する。
【0057】
以下、香りディスプレイ600の動作及び効果は第1の実施の形態の香りディスプレイ50の動作と同様であるのでここでは繰返さない。
【0058】
以上のとおり、この発明の各実施の形態に係る香りディスプレイによれば、筐体内に香り成分が付着することを防止しながら、香りカートリッジからの香りを外部に噴出するための経路に効率的に案内できる。その結果、筐体内に残存する香り成分による悪影響を抑え、香りを有効に利用できるという効果がある。長期間にわたり香りディスプレイを使用したことによりチューブ内に香りが残存する状態となったときには、チューブ固定具をキャップの裏面から取り外し、さらにチューブ固定具680を分解することでチューブを新しいものに交換し、残存した香りによる弊害を完全に排除できる。
【0059】
また、各チューブが対応するチューブ固定具によりキャップ裏面にしっかり固定されているため、香りディスプレイをどのような姿勢で動作させてもチューブが移動してしまう危険性が非常に小さく、香りディスプレイを安定に動作させることができるという効果がある。
【0060】
上記した実施の形態に係る香りディスプレイは、いずれも最大で12個の香りカートリッジを利用できる。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば11個以下、又は13個以上の香りカートリッジを使用できるものでもよい。また、上記実施の形態では各香りカートリッジからの香りを含む成分の噴出に圧電素子を採用したマイクロブロアを用いている。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されない。例えばマイクロブロアに代えて、小型のファンを用いるようにしてもよい。さらに、上記実施の形態では、香りを含まない空気の流れを生成するためにシロッコファンを用いている。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されず、他の形式のファンを用いてもよい。例えばプロペラを用いたもの、又はターボファンなどを用いることもできる。
【0061】
さらに、上記実施の形態では、各チューブはキャップのほぼ同じ条件の位置に開口している。こうすることでいずれの香りカートリッジについても同じ条件で香りを噴出できるので好ましい。しかし、この発明はそうした実施の形態に限定されるわけではなく、例えば一部のチューブは第1の実施の形態のようにキャップ中央の開口部の周辺から香りを噴出し、他のチューブは第2の実施の形態のように開口部の側壁に香りを噴出するようにしてもよい。また
図12及び
図20に示すチューブ固定具では、互いに組合された2つの部材の互いに対向する面の双方にチューブを収容するための溝が形成されている。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されず、一方の部材のみに溝が形成されていてもよく、一方の溝が大きく、他方の溝が小さくなっていてもよい。
【0062】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、この発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。この発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【解決手段】香りディスプレイ50は、内部に香源を持つ香りカートリッジ190から、香りを含む空気を外部に噴出させるものであって、香りカートリッジ190は、香りを含む空気を噴出させる開口238を持ち、香りカートリッジ190を収容するカートリッジ収容部を持つ筐体60と、カートリッジ収容部に収容された香りカートリッジ190の開口から香りを含む空気を噴出させる噴出機構320と、香りカートリッジ190から噴出される香りを含む空気を、香りカートリッジ190の開口238から筐体60に形成された香りの噴出のための開口領域80まで導くためのチューブ160、172と、チューブ160をキャップ76に着脱可能に固定するチューブ固定具290、302とを含む。