(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
<レーザーマーキング用インキ組成物>
本発明の一実施形態のレーザーマーキング用インキ組成物(以下、単に「インキ組成物」と記載することがある。)は、レーザーマーキング層の形成に用いられるものである。このインキ組成物は、バインダー樹脂(A)と、レーザー光の照射によりレーザーマーキング層において発色を生じさせる酸化チタン(B)とを含有する。
【0015】
本発明者らは、アンモニウムオクタモリブデートのような特殊な発色顔料を用いずとも視認性の良好な記録を可能とするレーザーマーキング層を形成できるようなインキ組成物について、鋭意検討を重ねた。その結果、特定の表面処理が施された酸化チタンをバインダー樹脂に対して特定の量で含有させたインキ組成物を使用することで、特異的にレーザー発色性が高まり、視認性の良好な記録を可能とするレーザーマーキング層が得られることを見出した。
【0016】
すなわち、第一の態様のインキ組成物は、酸化チタン(B)として、アルミナで表面処理された酸化チタン(b
1)、アルミナ及びシリカで表面処理された酸化チタン(b
2)、並びにアンチモンドープ酸化錫で被覆処理された酸化チタン(b
3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の表面処理酸化チタン(B
I)を含有する。そして、このインキ組成物は、以下の条件1及び2の少なくとも一方を満たす。
条件1:バインダー樹脂(A)の含有量に対する、表面処理酸化チタン(B
I)の含有量の比(B
I/A)が、固形分質量比で、2.5〜6.5である。
条件2:酸化チタン(B)が、少なくとも酸化チタン(b
3)を含み、バインダー樹脂(A)の含有量に対する、酸化チタン(b
3)の含有量の比(b
3/A)が、固形分質量比で、1.0〜6.5である。
【0017】
また、本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の表面処理が施された酸化チタンと特定の吸油量の酸化チタンとの組み合わせをバインダー樹脂に対して特定の量で含有させたインキ組成物を使用することで、特異的にレーザー発色性が高まり、視認性の良好な記録を可能とするレーザーマーキング層が得られることを見出した。
【0018】
すなわち、第二の態様のインキ組成物は、酸化チタン(B)として、アンチモンドープ酸化錫で被覆処理された酸化チタン(b
3)と、その酸化チタン(b
3)以外の吸油量が19g/100g以上である酸化チタン(b
4)とを含有する。そして、このインキ組成物では、バインダー樹脂(A)の含有量に対する、酸化チタン(b
3)と酸化チタン(b
4)の合計の含有量の比[(b
3+b
4)/A]が、固形分質量比で、1.0〜6.5である。
【0019】
本発明の一実施形態のインキ組成物を、レーザーマーキング層を設ける対象となる基材に印刷等することによって、バインダー樹脂と、特定の酸化チタンとを特定の割合で含有するレーザーマーキング層を基材に形成することができる。このレーザーマーキング層にレーザー光を照射することによって、視認性の良好な記録(レーザーマーキング)を行うことが可能となる。また、上記インキ組成物は、アンモニウムオクタモリブデートのような特殊な発色顔料を含有せずとも、視認性の良好な記録を可能とするレーザーマーキング層を形成可能であることから、廉価に調製し得る。次にインキ組成物の各成分について説明する。
【0020】
バインダー樹脂(A)はインキ組成物として用いることが可能な樹脂であれば特に限定されない。好適なバインダー樹脂(A)としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン変性アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、エチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリアミド樹脂、並びにヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びニトロセルロース等のセルロース系樹脂等を挙げることができる。これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、アクリル系樹脂とは、アクリル系樹脂を構成するモノマー由来の全構成単位に対して、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位を50モル%以上(好ましくは60モル%以上)含む樹脂をいう。
【0021】
インキ組成物(レーザーマーキング層)が設けられる対象となる基材の材質や基材が用いられる用途等に応じて、使用するバインダー樹脂を適宜選択することができる。例えば食品用包装容器(食品用トレイ等)に用いられる非晶性PET(A−PET)フィルムが基材として用いられる場合、その基材に設けられるインキ組成物におけるバインダー樹脂(A)としては、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂のうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。なかでも、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂のいずれか一方又は双方を用いることがより好ましく、アクリル系樹脂及びセルロース系樹脂を併用することがさらに好ましい。
【0022】
また、例えばラミネート包装材に用いられるPETフィルム等のプラスチックフィルムが基材として用いられる場合、その基材に設けられるインキ組成物におけるバインダー樹脂(A)としては、ラミネート適性の観点から、ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。バインダー樹脂(A)がポリウレタン樹脂を含むことで、インキ組成物によって形成されるレーザーマーキング層をラミネート包装材に好適に用いることができる。さらに、例えばPETボトル等に利用されるシュリンク包装ラベルに用いられるPET製シュリンクフィルムが基材として用いられる場合、その基材に設けられるインキ組成物におけるバインダー樹脂(A)としては、ポリウレタン樹脂及びセルロース系樹脂のいずれか一方又は双方を用いることが好ましく、ポリウレタン樹脂及びセルロース系樹脂を併用することがより好ましい。
【0023】
上述したポリウレタン樹脂は、例えば、ジイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応によりウレタンプレポリマーを合成し、これに必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤を反応させて得られる。ジイソシアネート化合物、ポリオール化合物、鎖伸長剤、及び反応停止剤は、それぞれ従来から使用されている公知のものを使用することができる。
【0024】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。芳香族ジイソシアネートの具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4−ジイソシアネート、2,2−ジフェニルプロパン−4,4−ジイソシアネート、3,3−ジメチルジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、4,4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、及び3,3−ジメトキシジフェニル−4,4−ジイソシアネート等を挙げることができる。脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等を挙げることができる。脂環族ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化キシレンジイソシアネート、及び水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。これらのジイソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリエーテルポリオール等を挙げることができる。ポリオール化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸類と、多価アルコール類又は第2〜3級アミン類との脱水重縮合反応で得られる、ポリエステルポリオール又はポリエステルアミドポリオールが挙げられる。多価カルボン酸類の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸;並びにトリメリット酸等のポリカルボン酸;並びにそれらの酸エステル;並びにそれらの酸無水物等が挙げられ、これらのうちの1種以上を用いることができる。多価アルコール類の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、及びペンタエリスリトール等の低分子アルコール化合物;並びにモノエタノールアミン及びジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール化合物;等が挙げられ、これらのうちの1種以上を用いることができる。第2〜3級アミン類の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、及びイソホロンジアミン等の低分子アミン化合物等が挙げられ、これらのうちの1種以上を用いることができる。また、ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子アルコール化合物及び低分子アミノアルコール化合物等を開始剤として、ε−カプロラクトン及びγ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーを開環重合して得られるラクトン系ポリエステルポリオールを用いることもできる。
【0026】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子アルコール化合物とホスゲンとの脱塩酸反応で得られるもの、前記低分子アルコール化合物と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
【0027】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子アルコール化合物、低分子アミン化合物、及び低分子アミノアルコール化合物、並びにフェノール類等を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、並びにテトラヒドロフラン等を開環重合させたポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール等が挙げられる。さらに、前述のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤とするポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。
【0028】
鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類;イソホロンジアミン及び4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類;トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類;キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類;N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、及びN,N’−ジ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類;並びにエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、及びトリエチレングリコール等のジオール化合物;等を挙げることができる。さらに、ポリウレタン樹脂がゲル化しない範囲で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類を併用することができる。
【0029】
反応停止剤としては、n−プロピルアミン及びn−ブチルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等のアルカノールアミン類;並びにエタノール等のモノアルコール類等を例示することができる。
【0030】
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜100,000が好ましく、より好ましくは10,000〜60,000である。ポリウレタン樹脂のMwが5,000以上であることにより、レーザーマーキング層の皮膜凝集力を高め易く、基材への密着性や耐ラミネート適性を得られ易い。一方、ポリウレタン樹脂のMwが100,000以下であることにより、溶剤に対して溶解し易く、インキ(インキ組成物)の流動性が良好となり、良好に印刷することが可能となる。この観点から、ポリウレタン樹脂のMwは、80,000以下がより好ましく、さらに好ましくは60,000以下である。なお、それぞれの成分の分子量や化学構造、当量比が異なると、得られるポリウレタン樹脂の硬さも異なることから、これら成分を適宜組み合わせることによって、レーザーマーキング層の基材に対する密着性や耐ブロッキング性を調節することが可能である。本明細書において、ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算値である。
【0031】
前述のラミネート包装材に用いられる基材にインキ組成物を適用する場合におけるラミネート適性がより求められる場合には、バインダー樹脂(A)は、上述したポリウレタン樹脂とともに、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を含んでもよい。また、前述のシュリンク包装ラベルに用いられるPET製シュリンクフィルムにインキ組成物を適用する場合における密着性等の観点からも、バインダー樹脂(A)は、上述したポリウレタン樹脂とともに、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を含んでもよい。これらの場合、バインダー樹脂(A)として、ポリウレタン樹脂と、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂との混合物を用いてもよい。塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル及び酢酸ビニルを含むモノマー成分を共重合することによって得られる。
【0032】
バインダー樹脂(A)の含有量は、レーザーマーキング層の凝集力及び基材への密着性、並びにレーザー光の照射による発色性の観点から、インキ組成物の固形分の全質量を基準として、5〜50質量%であることが好ましい。適度な凝集力及び密着性を有するレーザーマーキング層を得る観点から、インキ組成物の全固形分中のバインダー樹脂(A)の上記含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることがさらに好ましい。一方、レーザー光の照射により良好な発色性を示すレーザーマーキング層を得る観点から、インキ組成物の全固形分中のバインダー樹脂(A)の上記含有量は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
酸化チタン(B)は、レーザーマーキング層をレーザー光により発色させるために必須である。第一の態様のインキ組成物では、酸化チタン(B)は、アルミナで表面処理された酸化チタン(b
1)、アルミナ及びシリカで表面処理された酸化チタン(b
2)、並びにアンチモンドープ酸化錫で被覆処理された酸化チタン(b
3)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。以下、酸化チタン(b
1)をアルミナ処理酸化チタン(b
1)、酸化チタン(b
2)をアルミナ−シリカ複合処理酸化チタン(b
2)、酸化チタン(b
3)をATO処理酸化チタン(b
3)と記載することがある。また、これらの酸化チタン(b
1、b
2、b
3)をまとめて、表面処理酸化チタン(B
I)と記載することがある。
【0034】
第一の態様のインキ組成物では、インキ組成物中、バインダー樹脂(A)の含有量に対する、表面処理酸化チタン(B
I)の含有量の比(B
I/A)を、固形分質量比で、2.5〜6.5の範囲とする(条件1)。インキ組成物中の表面処理酸化チタン(B
I)の含有量は、アルミナ処理酸化チタン(b
1)、アルミナ−シリカ複合処理酸化チタン(b
2)、及びATO処理酸化チタン(b
3)の合計の含有量である。
【0035】
第一の態様のインキ組成物では、上記条件1で表面処理酸化チタン(B
I)を用いることにより、視認性の良好な記録が可能になるレーザーマーキング層を形成することができる。視認性のより良好な記録が可能になる観点から、上記の比(B
I/A)は、固形分質量比で、2.7以上であることが好ましく、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは3.5以上であり、また、6.0以下であることが好ましい。
【0036】
表面処理酸化チタン(B
I)のなかでも、アルミナ処理酸化チタン(b
1)、及びATO処理酸化チタン(b
3)が好ましい。ATO処理酸化チタン(b
3)を用いると、視認性のさらに良好な記録を可能とするレーザーマーキング層が得られやすいことから、さらに好ましい。それゆえ、インキ組成物がATO処理酸化チタン(b
3)を含有する場合、バインダー樹脂(A)の含有量に対する、ATO処理酸化チタン(b
3)の含有量の比(b
3/A)を、固形分質量比で、1.0〜6.5とすること(条件2)によっても、視認性の良好な記録を可能とするレーザーマーキング層を形成することができる。視認性のより良好な記録が可能になる観点から、上記の比(b
3/A)は、固形分質量比で、1.2以上であることが好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上であり、また、6.0以下であることが好ましい。
【0037】
第一の態様のインキ組成物では、上記条件1及び2の少なくとも一方を満たしていればよい。例えば、インキ組成物が、ATO処理酸化チタン(b
3)を含有せず、アルミナ処理酸化チタン(b
1)、及びアルミナ−シリカ複合処理酸化チタン(b
2)のいずれか一方又は双方を含有する場合、上記条件1を満たせばよい。また、インキ組成物が、表面処理酸化チタン(B
I)のうち、ATO処理酸化チタン(b
3)を単独で含有する場合、上記条件1及び2のうち条件2のみを満たしてもよいし、上記条件1を満たせば上記条件2も満たすことから上記条件1及び2の両方を満たしてもよい。
【0038】
さらに、インキ組成物が、ATO処理酸化チタン(b
3)を含有するとともに、アルミナ処理酸化チタン(b
1)及びアルミナ−シリカ複合処理酸化チタン(b
2)のいずれか一方又は双方を含有する場合、上記条件1のみを満たしてもよく、上記条件2のみを満たしてもよく、上記条件1及び2の両方を満たしてもよい。インキ組成物が、ATO処理酸化チタン(b
3)と、それ以外の表面処理酸化チタン(b
1及び/又はb
2)を含有する場合において、条件1のみを満たすようにATO処理酸化チタン(b
3)の使用量を少量に抑えることは、インキ組成物をより廉価にでき、かつ、視認性の良好な記録を可能とするレーザーマーキング層をより廉価に形成し得る点で好ましい。例えば、この場合、バインダー樹脂(A)の含有量に対する、ATO処理酸化チタン(b
3)の含有量の比(b
3/A)を、0.01〜0.5とすることが好ましく、0.01〜0.3とすることがより好ましく、0.02〜0.1とすることがさらに好ましい。
【0039】
アルミナ処理酸化チタン(b
1)及びアルミナ−シリカ複合処理酸化チタン(b
2)の吸油量は、15g/100g以上であることが好ましく、17g/100g以上であることがより好ましく、また、55g/100g以下であることが好ましい。本明細書において、酸化チタンにおける吸油量とは、当該酸化チタンの試料100g当たりの煮あまに油の吸収量(g)を意味する。この吸油量は、JIS K5101−13−2:2004に規定される方法に準じて、測定することができる。
【0040】
また、第二の態様のインキ組成物では、酸化チタン(B)は、アンチモンドープ酸化錫で被覆処理された酸化チタン(b
3)と、酸化チタン(b
3)以外の吸油量が19g/100g以上である酸化チタン(b
4)とを含む。そして、インキ組成物中、バインダー樹脂(A)の含有量に対する、ATO処理酸化チタン(b
3)と吸油量19g/100g以上の酸化チタン(b
4)の合計の含有量の比[(b
3+b
4)/A]を、固形分質量比で、1.0〜6.5の範囲とする(条件3)。この構成(条件3)によっても、視認性の良好な記録が可能になるレーザーマーキング層を形成することができる。視認性のより良好な記録が可能になる観点から、上記の比[(b
3+b
4)/A]は、固形分質量比で、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.0以上であり、また、6.0以下であることが好ましい。
【0041】
第二の態様のインキ組成物では、ATO処理酸化チタン(b
3)と、吸油量が19g/100g以上である酸化チタン(b
4)とを組み合わせて使用することにより、ATO処理酸化チタン(b
3)の使用量を少量に抑えても、視認性の良好な記録を可能とするレーザーマーキング層を形成することができる。そのため、インキ組成物や目的とするレーザーマーキング層をより廉価に得ることが可能となる。この場合、バインダー樹脂(A)の含有量に対する、ATO処理酸化チタン(b
3)の含有量の比(b
3/A)を、0.01〜0.5とすることが好ましく、0.01〜0.3とすることがより好ましく、0.02〜0.1とすることがさらに好ましい。また、酸化チタン(b
4)の含有量に対する、ATO処理酸化チタン(b
3)の含有量の比(b
3/b
4)を、0.01〜0.2とすることが好ましく、0.01〜0.1とすることがより好ましく、0.01〜0.05とすることがさらに好ましい。
【0042】
第二の態様のインキ組成物に用いることが可能な酸化チタン(b
4)としては、吸油量が19g/100g以上であれば、特に限定されず、所定の表面処理が施された酸化チタンのほか、表面処理が施されていない酸化チタン(以下、「非表面処理酸化チタン」と記載することがある。)も用いることができる。酸化チタン(b
4)の吸油量は、20g/100g以上であることが好ましく、また、55g/100g以下であることが好ましい。
【0043】
吸油量が19g/100g以上である酸化チタン(b
4)として用い得る、所定の表面処理が施された酸化チタンとしては、例えば、アルミナ処理、シリカ処理、亜鉛処理、アルミナ−シリカ複合処理、アルミナ−シリカ−亜鉛複合処理、及び有機処理等の表面処理が施された酸化チタンを挙げることができる。酸化チタン(b
4)としては、ATO処理酸化チタン(b
3)との組み合わせでより効果が高まる観点から、吸油量が19g/100g以上である、前述のアルミナ処理酸化チタン(b
1)、並びに前述のアルミナ−シリカ複合処理酸化チタン(b
2)のいずれか一方又は双方を用いることがより好ましい。
【0044】
上述の通り、本発明の一実施形態のインキ組成物では、上記条件1〜3の少なくともいずれかを満たす範囲において特定の酸化チタン(B)を特定の量で使用する。インキ組成物中の酸化チタン(B)の含有量が少なすぎることに起因して、上記条件1〜3のいずれも満たさない場合、レーザー光の照射により発色を生じさせたときの非発色部分とのコントラスト差が得られ難く、視認性の良好な記録が困難となる場合がある。一方、インキ組成物中の酸化チタン(B)の含有量が多すぎることに起因して、上述した条件1〜3のいずれも満たさない場合、インキ組成物の流動性を損ない、インキ組成物を塗布し難くなり、レーザーマーキング層の形成が困難となる場合がある。
【0045】
本発明の一実施形態のインキ組成物に用いる酸化チタン(B)の結晶構造は、ルチル型でもアナターゼ型でもよく、ルチル型がより好ましい。また、酸化チタン(B)には、硫酸法で製造されたものを用いてもよく、塩素法で製造されたものを用いてもよい。酸化チタン(B)の平均粒子径は、0.15〜0.50μmであることが好ましく、0.18〜0.40μmであることがより好ましく、0.20〜0.30μmであることがさらに好ましい。本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定機によって求められる粒度分布における体積基準の積算値50%での粒子径である。
【0046】
上述した各酸化チタン(b
1〜b
4)として、市販品を使用してもよい。アルミナ処理酸化チタン(b
1)としては、例えば、テイカ社製の商品名で「JR−600A」(吸油量19g/100g)、「JR−600E」(吸油量21g/100g)、「JR−301」(吸油量18g/100g)、及び「WP0364」(吸油量19g/100g)等、並びに石原産業社製の商品名で「R−630」(吸油量19g/100g)、及び「R−680」(吸油量19g/100g)等を挙げることができる。
【0047】
アルミナ−シリカ複合処理酸化チタン(b
2)としては、例えば、テイカ社製の商品名で「JR−707」(吸油量22g/100g)、「JR−708D」(吸油量21g/100g)、「JR−800」(吸油量29g/100g)、及び「JR−806」(吸油量21g/100g)等、並びに石原産業社製の商品名で「R−550」(吸油量23g/100g)、「CR−80」(吸油量20g/100g)、「CR−90」(吸油量21g/100g)、及び「CR−93」(吸油量20g/100g)等を挙げることができる。
【0048】
ATO処理酸化チタン(b
3)としては、例えば、メルク社製の商品名「Iriotec8850」(吸油量50g/100g)等を挙げることができる。吸油量が19g/100g以上である酸化チタン(b
4)としては、例えば、上記に挙げた吸油量が19g/100g以上である表面処理酸化チタン(B
I)の商品のほか、テイカ社製の商品名で「JA−1」(吸油量23g/100g)及び「JA−3」(吸油量23g/100g)、並びに石原産業社製の商品名で「A−100」(吸油量22g/100g)等の非表面処理酸化チタンの商品を挙げることができる。
【0049】
酸化チタン(B)の含有量は、レーザーマーキング層の凝集力及び基材への密着性、並びにレーザー光の照射による発色性の観点から、インキ組成物の固形分の全質量を基準として、50〜95質量%であることが好ましい。適度な凝集力及び密着性を有するレーザーマーキング層を得る観点から、インキ組成物の全固形分中の酸化チタン(B)の上記含有量は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。一方、レーザー光の照射により良好な発色性を示すレーザーマーキング層を得る観点から、インキ組成物の全固形分中の酸化チタン(B)の上記含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0050】
本発明の一実施形態のインキ組成物は、通常、溶剤(C)を含有することができる。好適な溶剤としては、例えば、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、及びグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。インキ組成物が設けられる対象となる基材の材質や基材が用いられる用途等に応じて、使用する溶剤を適宜選択することができる。インキ組成物中の溶剤(C)の含有量は特に限定されず、インキ組成物を用いてレーザーマーキング層を形成する際の印刷等の手法に応じて、適当な粘度となるように溶剤の含有量を調節することができる。
【0051】
ケトン系溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、及びジアセトンアルコール等を挙げることができる。炭化水素系溶剤の具体例としては、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、及びエチルシクロペンタン等を挙げることができる。エステル系溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、及び酢酸ブチル等を挙げることができる。アルコール系溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、及びブチルアルコール等を挙げることができる。グリコールエーテル系溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を挙げることができる。上記溶剤の1種を単独で又は2種以上を組み合わせてインキ組成物に含有させることができる。
【0052】
インキ組成物には、種々の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、分散剤、消泡剤、レベリング剤、シリカ、ワックス、ポリイソシアネート系硬化剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、界面活性剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、難燃剤、及び顕色剤等を挙げることができる。
【0053】
基材にインキ組成物を設けてレーザーマーキング層を形成しやすい観点から、インキ組成物は、印刷用インキとして調製されることが好ましい。そのなかでも、品質及び生産性の高さから、グラビア印刷用インキ、オフセット印刷用インキ、フレキソ印刷用インキ、又はスクリーン印刷用インキとして調製されることがより好ましく、グラビア印刷用インキとして調製されることがさらに好ましい。
【0054】
インキ組成物(レーザーマーキング層)が設けられる対象となる基材は、特に限定されず、その材質としては、例えば、プラスチック、ゴム、セラミックス、金属、木材、及び紙等が挙げられる。また、その基材が用いられる用途としては、例えば、食品、飲料品、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、及び化学薬品等を内容物とする各種包装容器、並びにフィルム及び紙等の各種包装資材等の包装材を挙げることができる。基材が用いられる用途として、さらには、電子部品、電気部品、電気製品、自動車部品、各種のシート及びカード、並びに製品に設けられるラベル及びタグ等を挙げることもできる。インキ組成物は、包装材に設けられるレーザーマーキング層の形成に用いられることが好ましい。その用途の好適な基材としては、アート紙、コート紙、上質紙、グラビア用紙、和紙、板紙、及び合成紙等の紙;アルミニウム箔等の金属箔;プラスチックフィルム;並びにこれらのうちの1種又は2種以上の積層体等を挙げることができる。基材としては、プラスチックフィルム等のように、使用するレーザー光が透過する基材を用いることがより好ましい。
【0055】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶性ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリ乳酸等のポリエステルフィルム;低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンフィルム;セロファン等のセルロースフィルム;ポリスチレン(PS)フィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂フィルム;エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂フィルム;ポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリイミドフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム等を挙げることができる。例えば、二軸延伸PPフィルム及び無延伸PPフィルム等のように、延伸及び無延伸のいずれのプラスチックフィルムも用いることができる。また、アルミニウム蒸着等の金属蒸着層が設けられたプラスチックフィルムや、アルミナ及びシリカ等の透明蒸着層が設けられたプラスチックフィルム等を用いることもできる。さらに、プラスチックフィルムの表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、及びコート処理等の各種表面処理、並びに着色インキを用いた印刷等による各種加飾等が施されていてもよい。
【0056】
インキ組成物から形成されるレーザーマーキング層に照射されるレーザー光としては、いわゆるレーザー印字に使用可能なものを用いることができる。好適なレーザー光としては、YAGレーザー(波長:1064nm)、YVO
4レーザー(波長:1064nm)、ファイバーレーザー(波長:1050〜1090nm)、グリーンレーザー(波長:532nm)、及びUVレーザー(波長:355nm)等を挙げることができる。インキ組成物は、これらのうちのいずれかのレーザー光を用いたレーザーマーキング用であることが好ましく、YVO
4レーザー、及びファイバーレーザーのいずれか一方又は双方を用いたレーザーマーキング用であることがより好ましい。
【0057】
<包装材>
本発明の一実施形態の包装材は、基材と、基材に設けられたレーザーマーキング層とを備える。包装材におけるレーザーマーキング層は、前述のレーザーマーキング用インキ組成物から形成されるものである。包装材は、基材及びレーザーマーキング層以外の任意の層を備えていてもよい。任意の層としては、例えば、絵柄層、着色層、保護層、蒸着層、及び接着剤層等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、包装材におけるレーザーマーキング層は、基材の表面に直接設けられていてもよいし、例えば絵柄層や着色層等の任意の層を介して設けられていてもよい。
【0058】
包装材におけるレーザーマーキング層は、前述のレーザーマーキング用インキ組成物から形成されるものである。そのため、レーザーマーキング層は、バインダー樹脂(A)と、特定の酸化チタン(B)とを、前述の条件1〜3の少なくともいずれかを満たす条件で含有するものである。レーザーマーキング層の厚さは、0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることがより好ましく、1〜5μmであることがさらに好ましい。
【0059】
レーザーマーキング層は、酸化チタン(B)を含有することで白色系の色相を有する白地に形成されていることが好ましく、かつ、その白地においてレーザー光の照射により黒色系の色相の発色を生じるものであることが好ましい。このようなレーザーマーキング層にレーザーマーキングを行うことにより、コントラストがより明瞭となり、視認性のより良好な記録を得ることができる。
【0060】
包装材における基材としては、前述の通り、紙、金属箔、及びプラスチックフィルム、並びにこれらのうちの1種又は2種以上の積層体が好ましく、前述した各種プラスチックフィルムがより好ましい。基材の厚さは、5〜500μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましく、10〜60μmであることがさらに好ましい。
【0061】
包装材の具体的な態様としては、例えば、紙箱、包装紙、包装フィルム、包装ラベル、包装袋、並びにプラスチックケース及びプラスチックボトル等のプラスチック容器等を挙げることができる。また、包装材の好適な用途としては、例えば、食品用包装材、飲料用包装材、医薬品用包装材、医薬部外品用包装材、及び化粧品用包装材等を挙げることができ、これらの中でも、食品用包装材及び飲料用包装材がより好適である。より具体的には、食品用包装材に用いられるラミネート包装材及び食品用トレイ等、並びに食品用包装材や飲料用包装材に用いられるシュリンク包装ラベル等がさらに好適である。
【0062】
ラミネート包装材の場合、レーザーマーキング層における基材側とは反対面側に保護層(シーラントフィルム)が設けられることが好ましい。このようなラミネート包装材は、少なくとも、基材、レーザーマーキング層、及び保護層をこの順で備える積層構造を有する。保護層により、包装材にレーザーマーキングを行う際や、包装材の製造時、及び使用時等において、レーザーマーキング層の剥離及び摩耗等を防止することが可能となる。保護層には、例えば、前述のバインダー樹脂の説明で挙げたものと同様の樹脂材料や、前述のプラスチックフィルムの説明で挙げたものと同様の樹脂材料を用いることができ、また、前述の基材自体を用いることもできる。保護層は、レーザーマーキング層に直接設けられていてもよいし、アンカーコート剤や接着剤等を介して設けられていてもよい。保護層の厚さは、1〜300μmであることが好ましく、5〜200μmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。
【0063】
包装材の製造方法は、基材に前述のインキ組成物を設けてレーザーマーキング層を形成する工程を含む。この製造方法は、レーザーマーキング層を形成する工程の前に、インキ組成物を調製する工程を含むことが好ましい。
【0064】
インキ組成物を調製する工程では、バインダー樹脂(A)、酸化チタン(B)、溶剤(C)、及び必要に応じて用いられる添加剤を練り合わせる工程(練肉工程)と、練肉されたインキ組成物を溶剤で希釈し、希釈インキを得る工程とを含むことがより好ましい。インキ組成物を調製する工程では、例えば、ペイントシェーカー、ロールミル(3本ロール)、ボールミル、サンドミル、及びアトライター、並びにその他の撹拌装置及び分散装置等を用いることができる。
【0065】
基材にレーザーマーキング層を形成する工程において、基材にインキ組成物を設ける方法としては、例えば、印刷、浸漬、スピンコーティング等の方法を挙げることができる。基材にインキ組成物を設けてレーザーマーキング層を形成しやすい観点から、基材にインキ組成物を印刷することが好ましい。印刷によるレーザーマーキング層の形成は、品質及び生産性の高さから、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、又はスクリーン印刷で行うことがより好ましく、グラビア印刷で行うことがさらに好ましい。レーザーマーキング層は、基材における全面に設けてもよく、レーザーマーキングを施す所望の位置を含む一部分に設けてもよい。基材にレーザーマーキング層を形成する工程では、基材にインキ組成物を印刷した後、乾燥させる工程や、インキ層中のバインダー樹脂(A)を硬化させる工程等を行うことができる。
【0066】
前述のラミネート包装材を製造する場合、その製造方法では、さらに、レーザーマーキング層における基材側とは反対面側に保護層を設ける工程を含むことが好ましい。保護層を設ける方法としては、レーザーマーキング層における基材側とは反対面側に、例えば、保護層を形成する上述の樹脂材料を含有する液状組成物を塗布し、硬化させて保護層を形成する方法を挙げることができる。液状組成物の硬化形態としては、例えば、乾燥、熱等による硬化、及び紫外線等の活性エネルギー線照射による硬化等を挙げることができる。また、レーザーマーキング層における基材側とは反対面側に、例えば、アンカーコート剤を塗布し、乾燥させた後、上述した樹脂材料(例えばLDPE、HDPE、及びPP等)を溶融押し出しラミネーションにより設けて、保護層を形成することもできる。さらに、レーザーマーキング層における基材側とは反対面側に、例えば、接着剤を塗布し、乾燥させた後に、前述した紙、金属箔、及びプラスチックフィルム等を貼り合わせるドライラミネーションによって、保護層を設けることもできる。
【0067】
包装材におけるレーザーマーキング層にレーザー光を照射することにより、レーザーマーキング層において発色が生じ、レーザーマーキングを行うことができる。好適なレーザー光としては、YAGレーザー、YVO
4レーザー、ファイバーレーザー、グリーンレーザー、及びUVレーザー等を挙げることができる。これらのうちの少なくともいずれかのレーザー光を用いることが好ましく、YVO
4レーザー及びファイバーレーザーのいずれか一方又は双方を組み合わせたレーザー光を用いることがより好ましい。
【0068】
さらには、YVO
4レーザー及びファイバーレーザーのいずれか一方又は双方を組み合わせたレーザー光を用いる場合、その条件としては、スキャンスピードを500〜4000mm/秒(より好ましくは800〜3000mm/秒)、平均出力を1〜30W(より好ましくは1〜10W)、パルス周波数を5〜150kHz(より好ましくは10〜50kHz)とすることがさらに好ましい。
【0069】
レーザーマーキングにより施す記号種としては、例えば、文字、図形、絵柄、バーコード、及び二次元コード等を挙げることができる。また、これらの記号が表わす情報としては、例えば、商品名、製造元名、製造年月日、賞味期限、消費期限、使用期限、品質保証期限、ロット番号、シリアル番号、原材料、成分、商標、及び模様等を挙げることができる。
【0070】
以上詳述した通り、本発明の一実施形態のレーザーマーキング用インキ組成物及び包装材は、次の構成をとることが可能である。
[1]レーザーマーキング層の形成に用いられるインキ組成物であって、バインダー樹脂(A)と、レーザー光の照射により前記レーザーマーキング層において発色を生じさせる酸化チタン(B)とを含有し、前記酸化チタン(B)は、アルミナで表面処理された酸化チタン(b
1)、アルミナ及びシリカで表面処理された酸化チタン(b
2)、並びにアンチモンドープ酸化錫で被覆処理された酸化チタン(b
3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の表面処理酸化チタン(B
I)を含み、以下の条件1及び2の少なくとも一方を満たすレーザーマーキング用インキ組成物。
条件1:前記バインダー樹脂(A)の含有量に対する、前記表面処理酸化チタン(B
I)の含有量の比(B
I/A)が、固形分質量比で、2.5〜6.5である。
条件2:前記酸化チタン(B)が、少なくとも前記酸化チタン(b
3)を含み、前記バインダー樹脂(A)の含有量に対する、前記酸化チタン(b
3)の含有量の比(b
3/A)が、固形分質量比で、1.0〜6.5である。
[2]前記アルミナで表面処理された酸化チタン(b
1)、並びに前記アルミナ及びシリカで表面処理された酸化チタン(b
2)の吸油量が、15〜55g/100gである前記[1]に記載のレーザーマーキング用インキ組成物。
[3]レーザーマーキング層の形成に用いられるインキ組成物であって、バインダー樹脂(A)と、レーザー光の照射により前記レーザーマーキング層において発色を生じさせる酸化チタン(B)とを含有し、前記酸化チタン(B)は、アンチモンドープ酸化錫で被覆処理された酸化チタン(b
3)と、前記酸化チタン(b
3)以外の吸油量が19g/100g以上である酸化チタン(b
4)とを含み、前記バインダー樹脂(A)の含有量に対する、前記酸化チタン(b
3)と前記酸化チタン(b
4)の合計の含有量の比[(b
3+b
4)/A]が、固形分質量比で、1.0〜6.5であるレーザーマーキング用インキ組成物。
[4]前記吸油量が19g/100g以上である酸化チタン(b
4)が、アルミナで表面処理された酸化チタン(b
1)、並びにアルミナ及びシリカで表面処理された酸化チタン(b
2)のいずれか一方又は双方を含む前記[3]に記載のレーザーマーキング用インキ組成物。
[5]前記バインダー樹脂(A)が、ポリウレタン樹脂及びアクリル系樹脂のいずれか一方又は双方を含む前記[1]〜[4]のいずれかに記載のレーザーマーキング用インキ組成物。
[6]基材と、前記基材に設けられたレーザーマーキング層とを備え、前記レーザーマーキング層が、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のレーザーマーキング用インキ組成物で形成されている包装材。
【実施例】
【0071】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の一実施形態のインキ組成物をさらに具体的に説明するが、そのインキ組成物は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の文中において、「部」及び「%」との記載は、特に断らない限り、質量基準(それぞれ「質量部」及び「質量%」)である。
【0072】
<試験例A>
試験例Aでは、ラミネート包装材への適用を想定してインキ組成物を調製し、調製したインキ組成物を用いてラミネート印刷物を作製し、得られたラミネート印刷物について、レーザーマーキングを行ってその視認性の評価を行った。
【0073】
[バインダー樹脂の準備]
インキ組成物に含有させるバインダー樹脂として、固形分が30%であるポリウレタン樹脂溶液(日立化成社製、商品名「TA24−241L」、粘度:1,000mPa・s、含有溶剤:酢酸エチル及びイソプロピルアルコール、ガラス転移点:−51℃、重量平均分子量:40,000)を用いた。
【0074】
[インキ組成物の調製]
(実施例A1)
アルミナ−シリカ複合処理酸化チタン(テイカ社製、商品名「JR−707」、結晶:ルチル型、吸油量:22g/100g;「酸化チタン1」と記載する。)50.0部、上記ポリウレタン樹脂溶液30.0部(固形分として9.0部)、並びに酢酸エチル/イソプロピルアルコールの体積比4/1の混合溶剤20.0部を混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物A1を得た。
【0075】
(実施例A2)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1を、別のアルミナ−シリカ複合処理酸化チタン(テイカ社製、商品名「JR−708D」、結晶:ルチル型、吸油量:21g/100g;「酸化チタン2」と記載する。)に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A2を得た。
【0076】
(実施例A3)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1を、別のアルミナ−シリカ複合処理酸化チタン(テイカ社製、商品名「JR−800」、結晶:ルチル型、吸油量:29g/100g;「酸化チタン3」と記載する。)に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A3を得た。
【0077】
(実施例A4)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1を、別のアルミナ−シリカ複合処理酸化チタン(テイカ社製、商品名「JR−806」、結晶:ルチル型、吸油量:21g/100g;「酸化チタン4」と記載する。)に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A4を得た。
【0078】
(実施例A5)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1を、アルミナ処理酸化チタン(テイカ社製、商品名「JR−600A」、結晶:ルチル型、吸油量:19g/100g;「酸化チタン5」と記載する。)に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A5を得た。
【0079】
(実施例A6)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1を、アルミナ処理酸化チタン(テイカ社製、商品名「JR−600E」、結晶:ルチル型、吸油量:21g/100g;「酸化チタン6」と記載する。)に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A6を得た。
【0080】
(実施例A7)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1を、アルミナ処理酸化チタン(テイカ社製、商品名「WP0364」、結晶:ルチル型、吸油量:19g/100g;「酸化チタン7」と記載する。)に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A7を得た。
【0081】
(実施例A8)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1を、アルミナ処理酸化チタン(テイカ社製、商品名「JR−301」、結晶:ルチル型、吸油量:18g/100g;「酸化チタン8」と記載する。)に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A8を得た。
【0082】
(実施例A9)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1を、ATO処理酸化チタン(メルク社製、商品名「Iriotec8850」、結晶:ルチル型、吸油量:50g/100g;「酸化チタン9」と記載する。)に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A9を得た。
【0083】
(実施例A10)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ50.0部及び20.0部)を、それぞれ、27.0部及び43.0部に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A10を得た。
【0084】
(実施例A11)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ50.0部及び20.0部)を、それぞれ、54.0部及び16.0部に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A11を得た。
【0085】
(実施例A12)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ50.0部及び20.0部)を、それぞれ、35.0部及び35.0部に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A12を得た。
【0086】
(実施例A13)
上記酸化チタン1を35.0部、上記酸化チタン9を0.4部、上記ポリウレタン樹脂溶液を30.0部(固形分として9.0部)、並びに上記混合溶剤34.6部を混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物A13を得た。
【0087】
(
参考例A14)
上記酸化チタン1を15.0部、上記酸化チタン9を0.2部、上記ポリウレタン樹脂溶液を30.0部(固形分として9.0部)、並びに上記混合溶剤54.8部を混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物A14を得た。
【0088】
(実施例A15)
上記酸化チタン9を0.5部、非表面処理酸化チタン(テイカ社製、商品名「JA−1」、結晶:アナターゼ型、吸油量:23g/100g;「酸化チタン10」と記載する。)を50.0部、上記ポリウレタン樹脂溶液を30.0部(固形分として9.0部)、並びに上記混合溶剤19.5部を混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物A15を得た。
【0089】
(実施例A16)
上記酸化チタン9を9.0部、上記ポリウレタン樹脂溶液を30.0部(固形分として9.0部)、及び上記混合溶剤61.0部を混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物A16を得た。
【0090】
(比較例A17)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ50.0部及び20.0部)を、それぞれ、15.0部及び55.0部に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A17を得た。
【0091】
(比較例A18)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ50.0部及び20.0部)を、それぞれ、22.0部及び48.0部に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A18を得た。
【0092】
(比較例A19)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ50.0部及び20.0部)を、それぞれ、60.0部及び10.0部に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A19を得た。
【0093】
(比較例A20)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1を、上記酸化チタン10に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A20を得た。
【0094】
(比較例A21)
インキ組成物A1に使用した酸化チタン1を、非表面処理酸化チタン(テイカ社製、商品名「JR」、結晶:ルチル型、吸油量:18g/100g;「酸化チタン11」と記載する。)に変更したこと以外は、インキ組成物A1の調製と同様にして、インキ組成物A21を得た。
【0095】
(比較例A22)
上記酸化チタン1を60.0部、上記酸化チタン9を0.6部、上記ポリウレタン樹脂溶液を30.0部(固形分として9.0部)、並びに上記混合溶剤9.4部を混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物A22を得た。
【0096】
(比較例A23)
上記酸化チタン11を50.0部、上記酸化チタン9を0.5部、上記ポリウレタン樹脂溶液を30.0部(固形分として9.0部)、並びに上記混合溶剤19.5部を混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物A23を得た。
【0097】
(比較例A24)
上記酸化チタン9を8.0部、上記ポリウレタン樹脂溶液を30.0部(固形分として9.0部)、及び上記混合溶剤61部を混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物A24を得た。
【0098】
<評価>
上記試験例Aで得られたインキ組成物のそれぞれについて、以下に述べるように、希釈インキを調製してから、ラミネート印刷物を作製し、そのラミネート印刷物に対してレーザーマーキングを行って、レーザーマーキングの視認性を評価した。
【0099】
[希釈インキA1〜24の調製]
得られたインキ組成物A1〜24のそれぞれについて、さらに、酢酸エチル(60%)/酢酸プロピル(20%)/イソプロピルアルコール(20%)の希釈溶剤で希釈して、25℃においてザーンカップNo.3(離合社製)で18秒となる粘度に調整し、希釈インキA1〜24を得た。
【0100】
[ラミネート印刷物A1〜24の作製]
得られた希釈インキA1〜24のそれぞれについて、印刷物を作製した後、ラミネート印刷物A1〜24を作製した。具体的には、基材フィルムとしてコロナ放電処理PETフィルム(商品名「エステルE5102」、東洋紡社製、厚さ25μm)の処理面側に、希釈インキを、版深35μmのグラビア版を使用してグラビア印刷した。このようにして、基材フィルム上に希釈インキによるインキ層(100mm×150mmのベタ層、厚さ3μm)が形成された印刷物を得た。その後、その印刷物のインキ層側に、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤(「セイカダイン4100」、大日精化工業社製)を塗布し、乾燥させ、アンカーコート層(厚さ0.03μm)を形成した。そして、そのアンカーコート層に、中間層としてLDPE(商品名「ノバテックLC600A」、日本ポリエチレン社製)を溶融押し出ししてLLDPEフィルム(商品名「T.U.X FC−D」、三井化学東セロ社製)をラミネートした。このようにして、印刷物における基材フィルムに設けられたインキ層にLDPE層(厚さ約30μm)及びLLDPE層(厚さ30μm)の保護層(厚さ計約60μm)が積層されたラミネート印刷物を得た。
【0101】
[レーザーマーキングの実施]
得られたラミネート印刷物A1〜24のそれぞれについて、レーザーマーキングを行い、記録物A1〜24を得た。具体的には、ラミネート印刷物におけるインキ層が設けられた領域に対して、ラミネート印刷物におけるPETフィルム側から、YVO
4/ファイバーハイブリッドレーザーマーカー(キーエンス社製、商品名「MD−X1000」)で波長1060〜1070nmのレーザー光を照射し、記録物を得た。レーザーマーカーの照射パターンは、「2017.09.01」(文字高:5mm)の細字と太字とし、記録した。レーザーマーカーの照射条件は、いずれのパターンも、スキャンスピードを1000mm/秒、及びパルス周波数を20kHzに設定し、また、細字の照射パターンの平均出力を2.6W、太字の照射パターンの平均出力を1.3Wに設定した。得られた記録物A1〜24について、記録した文字(数字)の視認性を以下に述べるように評価した。
【0102】
(視認性)
記録物A1〜24における「2017.09.01」の文字(数字)を目視で確認し、文字のかすれ具合及び濃さを考慮して、以下に示す評価基準(AA〜E)にしたがって、文字の鮮明さを評価した。以下に示す評価基準において、「AA」、「A」、及び「B」を実使用可能なレベルとし、「C」、「D」、及び「E」を実使用不可能なレベルとした。
AA:目立ったかすれはなく、かつ文字が濃く、数字を非常に明瞭に認識できた。
A:目立ったかすれはなく、かつ文字が薄すぎず、数字を明瞭に認識できた。
B:文字がかすれ、かつ薄い部分があったが、文字を認識できた。
C:大部分の文字がかすれ、かつ非常に薄かったため、文字の認識が困難であった。
D:文字がほとんど記録されておらず、文字を認識することができなかった。
E:インキの印刷自体がかすれてしまい、文字の認識ができなかった。
【0103】
表1−1及び表1−2に、試験例Aにおける各例で調製したインキ組成物の固形分の成分の使用量、前述のバインダー樹脂(A)の含有量に対する特定の酸化チタン(B)の含有量の比(B
I/A、b
3/A、及び(b
3+b
4)/A)、酸化チタン(b
4)の含有量に対するATO処理酸化チタン(b
3)の含有量の比(b
3/b
4)、及び視認性の評価結果を示す。なお、以下の表において、上記比(B
I/A、b
3/A)については、インキ組成物が当該比の算出対象となる酸化チタン(それぞれB
I、b
3)を含有しない場合、「−」と表記した。また、以下の表において、上記比((b
3+b
4)/A、b
3/b
4)については、インキ組成物が当該比の算出対象となる酸化チタン(b
3)と(b
4)の組み合わせを含有しない場合、「−」と表記した。さらに、以下の表の上段には、各例で作製及び使用したインキ(インキ組成物及び希釈インキ)、印刷物(ラミネート印刷物を含む)、及び記録物に共通の番号を併せて示した。
【0104】
【0105】
【0106】
実施例A1〜13と比較例A17〜21との対比から、表面処理酸化チタン(B
I)を含有し、かつ、バインダー樹脂(A)の含有量に対する表面処理酸化チタン(B
I)の含有量の比(B
I/A)が固形分質量比で2.5〜6.5の範囲内であるインキ組成物によって、視認性の良好な記録を可能とするレーザーマーキング層を形成可能であることが確認された。
【0107】
また、実施例A9の結果から、表面処理酸化チタン(B
I)として、ATO処理酸化チタン(b
3)を使用すると、視認性のより良好な記録を可能とするレーザーマーキング層を形成可能であることが確認された。この結果に基づき、本発明者らがさらなる確認実験を行った結果、バインダー樹脂(A)の含有量に対するATO処理酸化チタン(b
3)の含有量の比(b
3/A)が固形分質量比で1.0〜6.5の範囲内であるインキ組成物によって、視認性の良好な記録を可能とするレーザーマーキング層を形成可能であることが認められた(実施例A9及びA16、並びに比較例A24参照)。
【0108】
さらに、実施例A13〜15と比較例A22〜23との対比から、ATO処理酸化チタン(b
3)及び吸油量が19g/100g以上の酸化チタン(b
4)を含有し、かつ、バインダー樹脂(A)の含有量に対する、酸化チタン(b
3)と酸化チタン(b
4)の合計の含有量の比[(b
3+b
4)/A]が固形分質量比で1.0〜6.5の範囲内であるインキ組成物によって、視認性の良好な記録を可能とするレーザーマーキング層を形成可能であることが認められた。ATO処理酸化チタン(b
3)と吸油量が19g/100g以上の酸化チタン(b
4)の組み合わせを用いることで、ATO処理酸化チタン(b
3)の使用量を少量に抑えても、良好な効果が得られ、インキ組成物や目的とするレーザーマーキング層がより廉価に得られることが期待できる。
【0109】
<試験例B>
試験例Bでは、PETボトル等に利用されるシュリンク包装ラベルへの適用を想定してインキ組成物を調製し、調製したインキ組成物を基材としてのシュリンクフィルムに印刷し、得られた印刷物について、レーザーマーキングを行ってその視認性の評価を行った。
【0110】
[バインダー樹脂の準備]
インキ組成物に含有させるバインダー樹脂として、上記実施例Aで使用した、固形分が30%であるポリウレタン樹脂溶液、及び固形分が20%であるニトロセルロース樹脂溶液を用いた。ニトロセルロース樹脂溶液には、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを体積基準で等量ずつ混合した溶剤80.0部に、ニトロセルロース樹脂(商品名「DLX30−50」、稲畑産業社製)20.0部を溶解させたものを用いた。
【0111】
[インキ組成物の調製]
(実施例B1)
アルミナ−シリカ複合処理酸化チタンである上記酸化チタン1を50.0部、上記ポリウレタン樹脂溶液を固形分換算で7.5部(溶液で25.0部)、上記ニトロセルロース樹脂溶液を固形分換算で2.5部(溶液で12.5部)、メチルエチルケトン/酢酸エチル/イソプロピルアルコールの体積比5/3/2の混合溶剤を12.5部混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物B1を得た。
【0112】
(実施例B2)
インキ組成物B1に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ50.0部及び12.5部)を、それぞれ、40.0部及び22.5部に変更したこと以外は、インキ組成物B1の調製と同様にして、インキ組成物B2を得た。
【0113】
(実施例B3)
インキ組成物B1に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ50.0部及び12.5部)を、それぞれ、60.0部及び2.5部に変更したこと以外は、インキ組成物B1の調製と同様にして、インキ組成物B3を得た。
【0114】
(実施例B4)
インキ組成物B1に使用した酸化チタン1を、別のアルミナ−シリカ複合処理酸化チタンである上記酸化チタン2に変更したこと以外は、インキ組成物B1の調製と同様にして、インキ組成物B4を得た。
【0115】
(実施例B5)
インキ組成物B1に使用した酸化チタン1を、アルミナ処理酸化チタンである上記酸化チタン5に変更したこと以外は、インキ組成物B1の調製と同様にして、インキ組成物B5を得た。
【0116】
(実施例B6)
インキ組成物B1に使用した酸化チタン1を、アルミナ処理酸化チタンである上記酸化チタン6に変更したこと以外は、インキ組成物B1の調製と同様にして、インキ組成物B6を得た。
【0117】
(実施例B7)
インキ組成物B1に使用した酸化チタン1を、ATO処理酸化チタンである上記酸化チタン9に変更したこと以外は、インキ組成物B1の調製と同様にして、インキ組成物B7を得た。
【0118】
(実施例B8)
上記酸化チタン1を50.0部、上記酸化チタン9を2.5部、上記ポリウレタン樹脂溶液を固形分換算で7.5部(溶液で25.0部)、上記ニトロセルロース樹脂溶液を固形分換算で2.5部(溶液で12.5部)、メチルエチルケトン/酢酸エチル/イソプロピルアルコールの体積比5/3/2の混合溶剤を10.0部混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物B8を得た。
【0119】
(実施例B9)
インキ組成物B8に使用した酸化チタン9及び混合溶剤の使用量(それぞれ2.5部及び10.0部)を、それぞれ、1.0部及び11.5部に変更したこと以外は、インキ組成物B8の調製と同様にして、インキ組成物B9を得た。
【0120】
(実施例B10)
インキ組成物B8に使用した酸化チタン9及び混合溶剤の使用量(それぞれ2.5部及び10.0部)を、それぞれ、0.5部及び12.0部に変更したこと以外は、インキ組成物B8の調製と同様にして、インキ組成物B10を得た。
【0121】
(実施例B11)
インキ組成物B8に使用した酸化チタン9及び混合溶剤の使用量(それぞれ2.5部及び10.0部)を、それぞれ、0.2部及び12.3部に変更したこと以外は、インキ組成物B8の調製と同様にして、インキ組成物B11を得た。
【0122】
(実施例B12)
上記酸化チタン1を40.0部、上記酸化チタン9を0.5部、上記ポリウレタン樹脂溶液を固形分換算で7.5部(溶液で25.0部)、上記ニトロセルロース樹脂溶液を固形分換算で2.5部(溶液で12.5部)、メチルエチルケトン/酢酸エチル/イソプロピルアルコールの体積比5/3/2の混合溶剤を22.0部混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物B12を得た。
【0123】
(実施例B13)
インキ組成物B12に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ40.0部及び22.0部)を、それぞれ、30.0部及び32.0部に変更したこと以外は、インキ組成物B12の調製と同様にして、インキ組成物B13を得た。
【0124】
(
参考例B14)
インキ組成物B12に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ40.0部及び22.0部)を、それぞれ、20.0部及び42.0部に変更したこと以外は、インキ組成物B12の調製と同様にして、インキ組成物B14を得た。
【0125】
(比較例B15)
インキ組成物B1に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ50.0部及び12.5部)を、それぞれ、20.0部及び42.5部に変更したこと以外は、インキ組成物B1の調製と同様にして、インキ組成物B15を得た。
【0126】
(比較例B16)
インキ組成物B1に使用した酸化チタン1を、非表面処理酸化チタンである上記酸化チタン10に変更したこと以外は、インキ組成物B1の調製と同様にして、インキ組成物B16を得た。
【0127】
(比較例B17)
インキ組成物B1に使用した酸化チタン1を、非表面処理酸化チタンである上記酸化チタン11に変更したこと以外は、インキ組成物B1の調製と同様にして、インキ組成物B17を得た。
【0128】
<評価>
上記試験例Bで得られたインキ組成物のそれぞれについて、以下に述べるように、希釈インキを調製してから、印刷物を作製し、その印刷物に対してレーザーマーキングを行って、レーザーマーキングの視認性を評価した。
【0129】
[希釈インキB1〜17の調製]
得られたインキ組成物B1〜17のそれぞれについて、さらに、メチルエチルケトン/酢酸エチル/イソプロピルアルコールの体積比5/3/2の希釈溶剤で希釈して、25℃においてザーンカップNo.3(離合社製)で18秒となる粘度に調整し、希釈インキB1〜17を得た。
【0130】
[印刷物B1〜17の作製]
得られた希釈インキB1〜17のそれぞれについて、印刷物B1〜17を作製した。具体的には、基材フィルムとして厚さ45μmのポリエステル(PET)系シュリンクフィルム(商品名「スペースクリーン S7042」、東洋紡社製)に、希釈インキを、版深40μmのグラビア版を使用してグラビア印刷した。このようにして、基材フィルム上に希釈インキによるインキ層(100mm×150mmのベタ層、厚さ3μm)が形成された印刷物(シュリンクフィルム印刷物)を得た。
【0131】
[レーザーマーキングの実施]
得られた印刷物B1〜17のそれぞれについて、レーザーマーキングを行い、記録物(シュリンク包装ラベル)B1〜17を得た。具体的には、インキ層が設けられた領域に対して、インキ層側から、YVO
4/ファイバーハイブリッドレーザーマーカー(キーエンス社製、商品名「MD−X1000」)で波長1060〜1070nmのレーザー光を照射し、記録物を得た。レーザーマーカーの照射パターンは、「2017.09.01」(文字高:5mm)の細字とした。レーザーマーカーの照射条件は、スキャンスピードを1000mm/秒、及びパルス周波数を20kHzに設定し、照射パターンの平均出力を2.6Wに設定した。得られた記録物B1〜17について、記録した文字(数字)の視認性(鮮明さ)を、実施例Aで述べた評価基準にしたがって評価した。
【0132】
表2−1及び表2−2に、試験例Bにおける各例で調製したインキ組成物の固形分の成分の使用量、前述のバインダー樹脂(A)の含有量に対する特定の酸化チタン(B)の含有量の比(B
I/A、b
3/A、及び(b
3+b
4)/A)、酸化チタン(b
4)の含有量に対するATO処理酸化チタン(b
3)の含有量の比(b
3/b
4)、及び視認性の評価結果等を示す。
【0133】
【0134】
【0135】
<試験例C>
試験例Cでは、食品用トレイへの適用を想定してインキ組成物を調製し、調製したインキ組成物を基材としてのトレイ用プラスチックフィルムに印刷し、得られた印刷物について、レーザーマーキングを行ってその視認性の評価を行った。
【0136】
[バインダー樹脂の準備]
インキ組成物に含有させるバインダー樹脂として、固形分が40%であるアクリル系樹脂溶液(商品名「1LO−449」、大成ファインケミカル社製、含有溶剤:酢酸エチル及びイソプロピルアルコール)、及び固形分が20%であるセルロースアセテートブチレート(CAB)樹脂溶液を用いた。CAB樹脂溶液には、イソプロピルアルコールと酢酸エチルを体積基準で等量ずつ混合した溶剤80.0部に、CAB樹脂(商品名「CAB381−0.5」、イーストマンケミカルジャパン社製)20.0部を溶解させたものを用いた。
【0137】
[インキ組成物の調製]
(実施例C1)
アルミナ−シリカ複合処理酸化チタンである上記酸化チタン1を40.0部、上記アクリル系樹脂溶液を固形分換算で9.0部(溶液で22.5部)、CAB樹脂溶液を固形分換算で1.0部(溶液で5.0部)、酢酸エチル/イソプロピルアルコールの体積比4/6の混合溶剤を32.5部混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物C1を得た。
【0138】
(実施例C2)
上記酸化チタン1を30.0部、ATO処理酸化チタンである上記酸化チタン9を1.0部、上記アクリル系樹脂溶液を固形分換算で9.0部(溶液で22.5部)、上記CAB樹脂溶液を固形分換算で1.0部(溶液で5.0部)、酢酸エチル/イソプロピルアルコールの体積比4/6の混合溶剤を41.5部混合し、その混合物をペイントシェーカーで練肉してインキ組成物C2を得た。
【0139】
(実施例C3)
インキ組成物C2に使用した酸化チタン9及び混合溶剤の使用量(それぞれ1.0部及び41.5部)を、それぞれ、2.0部及び40.5部に変更したこと以外は、インキ組成物C2の調製と同様にして、インキ組成物C3を得た。
【0140】
(実施例C4)
インキ組成物C2に使用した酸化チタン9及び混合溶剤の使用量(それぞれ1.0部及び41.5部)を、それぞれ、3.0部及び39.5部に変更したこと以外は、インキ組成物C2の調製と同様にして、インキ組成物C4を得た。
【0141】
(実施例C5)
インキ組成物C2に使用した酸化チタン9及び混合溶剤の使用量(それぞれ1.0部及び41.5部)を、それぞれ、5.0部及び37.5部に変更したこと以外は、インキ組成物C2の調製と同様にして、インキ組成物C5を得た。
【0142】
(比較例C6)
インキ組成物C1に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ40.0部及び32.5部)を、それぞれ、10.0部及び62.5部に変更したこと以外は、インキ組成物C1の調製と同様にして、インキ組成物C6を得た。
【0143】
(比較例C7)
インキ組成物C1に使用した酸化チタン1及び混合溶剤の使用量(それぞれ40.0部及び32.5部)を、それぞれ、20.0部及び52.5部に変更したこと以外は、インキ組成物C1の調製と同様にして、インキ組成物C7を得た。
【0144】
<評価>
上記試験例Cで得られたインキ組成物のそれぞれについて、以下に述べるように、希釈インキを調製してから、印刷物を作製し、その印刷物に対してレーザーマーキングを行って、レーザーマーキングの視認性を評価した。
【0145】
[希釈インキC1〜7の調製]
得られたインキ組成物C1〜7のそれぞれについて、さらに、酢酸エチル/イソプロピルアルコールの体積比4/6の希釈溶剤で希釈して、25℃においてザーンカップNo.3(離合社製)で18秒となる粘度に調整し、希釈インキC1〜7を得た。
【0146】
[印刷物C1〜7の作製]
得られた希釈インキC1〜7のそれぞれについて、印刷物C1〜7を作製した。具体的には、基材フィルムとして厚さ300μmの非晶性ポリエチレンテレフタレート(A−PET)フィルム(商品名「P 0.30×640」、ミネロン化成工業社製)に、希釈インキを、版深40μmのグラビア版を使用してグラビア印刷した。このようにして、基材フィルム上に希釈インキによるインキ層(100mm×150mmのベタ層、厚さ3μm)が形成された印刷物を得た。
【0147】
[レーザーマーキングの実施]
得られた印刷物C1〜7のそれぞれについて、レーザーマーキングを行い、記録物(トレイ用フィルム)C1〜7を得た。具体的には、インキ層が設けられた領域に対して、インキ層側から、YVO
4/ファイバーハイブリッドレーザーマーカー(キーエンス社製、商品名「MD−X1000」)で波長1060〜1070nmのレーザー光を照射し、記録物を得た。レーザーマーカーの照射パターンは、「2017.09.01」(文字高:5mm)の細字とした。レーザーマーカーの照射条件は、スキャンスピードを1000mm/秒、及びパルス周波数を20kHzに設定し、照射パターンの平均出力を2.6Wに設定した。得られた記録物C1〜7について、記録した文字(数字)の視認性(鮮明さ)を、実施例Aで述べた評価基準にしたがって評価した。
【0148】
表3に、試験例Cにおける各例で調製したインキ組成物の固形分の成分の使用量、前述のバインダー樹脂(A)の含有量に対する特定の酸化チタン(B)の含有量の比(B
I/A、b
3/A、及び(b
3+b
4)/A)、酸化チタン(b
4)の含有量に対するATO処理酸化チタン(b
3)の含有量の比(b
3/b
4)、及び視認性の評価結果等を示す。
【0149】