(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735552
(24)【登録日】2020年7月16日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】表示装置を静電吸着により固定する部材及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20200728BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20200728BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
G09F9/00 351
G02F1/1333
H04N5/64 581A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-239059(P2015-239059)
(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公開番号】特開2017-106993(P2017-106993A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晴美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 治
(72)【発明者】
【氏名】玉井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】趙 動旭
【審査官】
小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第09130484(US,B2)
【文献】
実開平01−143295(JP,U)
【文献】
特表2009−540785(JP,A)
【文献】
特開2001−352004(JP,A)
【文献】
特開2011−009071(JP,A)
【文献】
国際公開第99/025157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00−46
G02F 1/13−1/1335
1/13363−1/141
H01L 27/32
29/786
51/50
H05B 33/00−33/28
H04N 5/64−5/655
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置を静電吸着により支持体に固定するための部材であって、
フレキシブル基材と、
前記フレキシブル基材中又は前記フレキシブル基材上に設けられ且つ外部電源と電気的に接続可能である電極と、
前記表示装置と接する前記フレキシブル基材の第1面上に設けられた接着層と、
前記フレキシブル基材の前記第1面と前記接着層との間に設けられた静電シールド層と
を備え、
前記静電シールド層はCu,Al,カーボンのいずれか1つ以上からなり、5μmから200μmまでの範囲の厚さを有する単層であり、
前記電極に電圧が印加されたときに前記フレキシブル基材の第2面は前記支持体と接触しており、前記表示装置が静電吸着により該支持体に固定される
ことを特徴とする部材。
【請求項2】
前記フレキシブル基材と前記静電シールド層との間に接着層がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の部材。
【請求項3】
前記電極が、ITO、Cu及びAlからなる群から選択される導電性材料から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の部材。
【請求項4】
前記フレキシブル基材が、誘電体から形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の部材。
【請求項5】
前記フレキシブル基材の厚さが200μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の部材。
【請求項6】
前記フレキシブル基材が、有機樹脂に無機物の微細粉末を添加した複合材料から形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の部材。
【請求項7】
前記有機樹脂は、エポキシアクリレート系樹脂であり、前記無機物の微細粉末は、酸化ジルコニアである、請求項6に記載の部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置を静電吸着により固定する部材、及び当該部材を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネル、有機ELパネルなどを用いた表示装置の薄型化及び軽量化に伴い、壁などの支持体に表示装置を取付けて使用することが検討されている。例えば、特許文献1及び2には、ネジ、接着剤などを用いて壁にフックのような連結用部材を取付け、この連結用部材に、表示装置の背面に設けられた取付け用部材を連結する方法が提案されている。
【0003】
また、表示装置の中でもフレキシブルな表示装置(以下、「フレキシブルディスプレイ」と言うことがある)は、ペーパー状の薄い表示デバイスであり、紙のように丸めたり、曲げたりすることができる。したがって、フレキシブルディスプレイは、平面状の支持体だけでなく曲面状の支持体にも取付けることが可能であると共に、運搬や収納する際にも便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−273086号公報
【特許文献2】特開2014−35507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、壁などの支持体に表示装置を取付ける従来の方法は、ネジ、接着剤などを用いて支持体に連結用部材を取付ける必要がある。そのため、表示装置の設置位置を変更する場合などのように支持体から連結用部材を除去する際に支持体に傷や汚れなどをつけてしまうという問題がある。
また、表示装置がフレキシブルディスプレイである場合、丸めた状態で運搬及び収納されていたフレキシブルディスプレイを広げて支持体に取付けると、フレキシブルディスプレイに湾曲やうねりが生じ易いという問題もある。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、壁などの支持体に傷や汚れをつけずに表示装置を取付けることができると共に、取付けた際に表示装置の湾曲やうねりを防止することができる部材、及び当該部材を有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、表示装置を静電吸着により固定することができれば上記の問題を解決し得るであろうという想定の下、表示装置を静電吸着により固定するのに適した部材について鋭意研究を続けた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、フレキシブル基材と、前記フレキシブル基材中又は前記フレキシブル基材上に設けられ且つ外部電源と電気的に接続可能である電極とを備え、表示装置を静電吸着により固定することを特徴とする部材である。
また、本発明は、前記部材を有することを特徴とする表示装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、壁などの支持体に傷や汚れをつけずに表示装置を取付けることができると共に、取付けた際に表示装置の湾曲やうねりを防止することができる部材、及び当該部材を有する表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1つの実施形態の部材を介して表示装置を静電吸着によって支持体に固定した状態の断面図である。
【
図2】
図1における本発明の1つの実施形態の部材をa−a’線で切断したときの断面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態の部材を介して表示装置を静電吸着によって支持体に固定した状態の断面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態の部材を介して表示装置を静電吸着によって支持体に固定した状態の断面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態の部材を介して表示装置を静電吸着によって支持体に固定した状態の断面図である。
【
図6】本発明の別の実施形態の部材を介して表示装置を静電吸着によって支持体に固定した状態の断面図である。
【
図7】本発明の別の実施形態の部材を介して表示装置を静電吸着によって支持体に固定した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
表示装置を静電吸着により固定する本発明の部材は、フレキシブル基材と、フレキシブル基材中又はフレキシブル基材上に設けられ且つ外部電源と電気的に接続可能である電極とを備える。
以下、本発明の部材の好適な実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の部材を介して表示装置を静電吸着によって支持体に固定した状態の断面図である。また、
図2は、
図1における本発明の部材1をa−a’線で切断したときの断面図である。
図1において、本発明の部材1は、フレキシブル基材2と、フレキシブル基材2中に設けられた電極3とを有する。このような構成を有する本発明の部材1は、静電吸着によって表示装置10を支持体20に固定することができる。
【0011】
フレキシブル基材2は、絶縁性を有し且つ内部に電荷を保持することが可能なものであれば特に限定されず、一般に誘電体から形成される。誘電体は、有機材料、無機材料、又は有機物と無機物との複合材料のいずれであってもよい。誘電体の具体例としては、酸化アルミニウムなどのセラミックス;ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、フッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))などの樹脂;シリコンゴムなどのゴムなどが挙げられる。これらの材料は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でも、シリコンゴム、フッ素樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレンは、絶縁性に優れており、内部に電荷を保持し易いため好ましい。
【0012】
有機物と無機物との複合材料としては、上記の樹脂に無機物の微細粉末を添加したものを用いることができる。無機物としては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、珪藻土、白土、タルク、酸化チタン、酸化ジルコニア、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、ガラスファイバーなどが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、無機物の微細粉末の粒径は、特に限定されないが、レーザー回折による粒度分布計で測定した平均粒径が一般に0.01μm〜15μmである。様々な複合材料の中でも、その中でも、エポキシアクリレート系樹脂に酸化ジルコニアを添加した複合材料は、絶縁性に優れており、内部に電荷を保持し易いため好ましい。
【0013】
フレキシブル基材2の厚さは、特に限定されないが、好ましくは200μm以下、より好ましくは20μm〜200μmである。フレキシブル基材2の厚さが200μm超過であると、部材1のフレキシブル性が損なわれることがある。また、フレキシブル基材2の厚さが20μm未満であると、絶縁性が不足し、内部に電荷を保持することができないことがある。
【0014】
電極3としては、導電性を有することが可能なものであれば特に限定されず、当該技術分野において公知の材料から形成される。電極3を構成する材料の具体例としては、Cu、ITO、Alなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
電極3のパターン形状は、外部電源と電気的に接続可能な部分を有していれば特に限定されず、静電吸着方式の種類に応じて各種パターンを採用すればよい。例えば、電極3のパターン形状として、
図2に示すような櫛歯状パターンを用いることができる。また、静電吸着方式の種類としては、クーロン力型、ジョンソン・ラベック力型、グラジエント力型などを用いることができる。
【0015】
電極3の厚さは、導電性が確保され得る範囲であれば特に限定されないが、好ましくは150μm以下、より好ましくは50nm〜50μmである。電極3の厚さが150μm超過であると、部材1のフレキシブル性が損なわれることがある。また、電極3の厚さが50nm未満であると、導電性が十分に確保されないことがある。
【0016】
電極3は、一般に、その端部が外部電源と電気的に接続される。ここで、外部電源としては、特に限定されず、電源コードなどの接続手段を介して外部電源に直接的に接続されるか、又は外部電源に接続された表示装置10から電源コードなどの接続手段を介して間接的に接続される。また、外部電源と電極3の端部との間に、蓄電可能な補助電源を設けてもよい。このような補助電源を設けることにより、停電などが生じた場合にも、表示装置10を支持体20に固定することが可能となる。
【0017】
電極3は、フレキシブル基材2中に設けることができるが、フレキシブル基材2上に設けてもよい。フレキシブル基材2上に電極3を設ける場合、
図3に示すように表示装置10側のフレキシブル基材2上に電極3を設ければよい。ただし、フレキシブル基材2上に電極3を設ける場合、フレキシブル基材2中に電極3を設ける場合に比べて製造が容易であるものの、電極3の間にゴミなどが入り込み易くなり、部材1の静電吸着能力が低下することがある。そのため、部材1の静電吸着能力を長期に渡って保持する観点から、電極3はフレキシブル基材2中に設けることが好ましい。
【0018】
電極3をフレキシブル基材2中に設ける方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。
例えば、フレキシブル基材2を2層構造とする場合、一方のフレキシブル基材2の表面に電極3を蒸着、貼着、塗布などによって形成した後、他方のフレキシブル基材2をその上に貼付ければよい。或いは、電極3をモールドの所定の位置に配置した後、フレキシブル基材2の材料をモールドに流し込むことによって形成してもよい。
また、フレキシブル基材2上に電極3を設ける場合、フレキシブル基材2の表面に電極3を蒸着、貼着、塗布などによって形成すればよい。
【0019】
本発明の部材1は、フレキシブル基材2及び電極3のみから構成されていてもよいが、表示装置10に対する部材1の接着性を確保する観点から、
図4に示すように表示装置10側と接するフレキシブル基材2の表面に接着層4をさらに設けてもよい。
接着層4としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。接着層4の例としては、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、ポリ(ビニルエーテル)系接着剤、シリコン系接着剤などを用いて形成することができる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その中でも、アクリル系接着剤は優れた接着特性を示すため好ましい。また、接着層4の形成に用いられる接着剤は、常温で圧力を加えるだけで接着させることが可能な感圧接着剤(PSA)であることが好ましい。
【0020】
接着層4の厚さは、表示装置10に対する部材1の接着性が確保される範囲であれば特に限定されないが、一般に100μm以下、好ましくは1μm〜50μmである。
接着層4は、液状の接着剤を部材1に塗布することによって形成してもよいし、シート状の接着剤を部材1に貼り付けることによって形成してもよい。その中でも、シート状の接着剤は、液状の接着剤に比べて接着剤のはみ出しや気泡の混入などの問題が少ないため好ましい。
【0021】
本発明の部材1は、表示装置10に静電気が流入することを防止する観点から、
図5に示すようにフレキシブル基材2と接着層4との間に静電シールド層5をさらに設けてもよい。
静電シールド層5としては、静電気を防止することができるものであれば特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。静電シールド層5を構成する材料の例としては、Cu、Alなどの金属の他、カーボンなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
静電シールド層5の厚さは、静電気を防止することができる範囲であれば特に限定されないが、一般に200μm以下、好ましくは5μm〜200μmである。静電シールド層5の厚さが200μm超過であると、部材1のフレキシブル性が損なわれることがある。また、静電シールド層5の厚さが5μm未満であると、静電シールド層5としての機能が十分に得られないことがある。
静電シールド層5の形成方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、静電シールド層5は、蒸着、貼着、塗布などの方法によって形成することができる。
【0023】
また、フレキシブル基材2と静電シールド層5との間の接着性が十分に確保されない場合、
図6に示すようにフレキシブル基材2と静電シールド層5との間に接着層4をさらに設けてもよい。また、接着層4は、
図7に示すように、フレキシブル基材2と静電シールド層5との間及び静電シールド層5と表示装置10との間の両方に設けてもよい。
【0024】
本発明の部材1の大きさは、特に限定されず、表示装置10の大きさに応じて適宜設定することができる。特に、表示装置10がフレキシブルディスプレイである場合、丸めた状態で運搬及び収納されていたフレキシブルディスプレイを広げて支持体20に取付けると、フレキシブルディスプレイに湾曲やうねりが生じ易いが、本発明の部材1の大きさを表示装置10の大きさと同じにすることより、フレキシブルディスプレイの湾曲やうねりを防止することが可能になる。
【0025】
本発明の部材1を用いることが可能な表示装置10としては、特に限定されず、液晶表示装置、有機EL表示装置などが挙げられる。
また、本発明の部材1により固定可能な支持体20としては、特に限定されず、壁、柱、窓などが挙げられる。
【0026】
上記のような構成を有する本発明の部材1は、外部電源から電圧(一般に100V以下)を印加することにより、静電吸着力が生じるため、表示装置10を静電吸着により支持体20に固定することができる。実際、本発明の部材1は、50V〜100Vの電圧の印加により、10g/cm
2〜200g/cm
2の荷重に耐えることができる。そのため、例えば、重さが2kgの55インチの表示装置10は0.25g/cm
2程度の荷重に相当するところ、本発明の部材1を用いることにより、この表示装置10を支持体20に安定して固定することができる。
また、本発明の部材1は、外部電源からの電圧を遮断することにより、静電吸着力が低下するため、支持体20から表示装置10を容易に取り外すことができる。
【0027】
以上のように、本発明によれば、壁などの支持体20に傷や汚れをつけずに表示装置10を取付けることができると共に、取付けた際に表示装置10の湾曲やうねりを防止することができる部材1、及び当該部材1を有する表示装置10を提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 部材、2 フレキシブル基材、3 電極、4 接着層、5 静電シールド層、10 表示装置、20 支持体。