特許第6735562号(P6735562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6735562ブローボトル包装体およびブローボトル包装体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735562
(24)【登録日】2020年7月16日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】ブローボトル包装体およびブローボトル包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/08 20060101AFI20200728BHJP
   B65D 25/28 20060101ALI20200728BHJP
   B65D 75/62 20060101ALI20200728BHJP
   B65D 75/64 20060101ALI20200728BHJP
   B65D 75/12 20060101ALI20200728BHJP
   B65B 53/00 20060101ALI20200728BHJP
   B65D 41/62 20060101ALI20200728BHJP
   B65D 25/20 20060101ALN20200728BHJP
【FI】
   B65D23/08 B
   B65D25/28 103A
   B65D75/62 B
   B65D75/64
   B65D75/12
   B65B53/00 K
   B65B53/00 B
   B65B53/00 Z
   B65D41/62
   !B65D25/20 Q
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-372(P2016-372)
(22)【出願日】2016年1月5日
(65)【公開番号】特開2017-121939(P2017-121939A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武元 広居
(72)【発明者】
【氏名】溝淵 義輝
(72)【発明者】
【氏名】矢野 智也
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−123190(JP,A)
【文献】 実開昭57−037865(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0177268(US,A1)
【文献】 特開2003−280527(JP,A)
【文献】 実開昭63−180505(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3025920(JP,U)
【文献】 実開平06−067331(JP,U)
【文献】 特開2008−064871(JP,A)
【文献】 特開2002−370768(JP,A)
【文献】 特開平08−143009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 23/08
B65B 53/00
B65D 25/28
B65D 41/62
B65D 75/12
B65D 75/62
B65D 75/64
B65D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷の施されたフィルムによってキャップ付きブローボトルがオーバーラップ包装された包装体であって、
前記フィルムが前記ブローボトルの全面を覆っており、
前記ブローボトルのボトル本体とキャップの境界に位置する前記フィルムが、開封手段を備えることを特徴とするブローボトル包装体の製造方法であって、
印刷が施された熱収縮性フィルムに開封手段を設ける開封加工工程、熱収縮性フィルムを円筒状に成形する第1成形工程、熱収縮性フィルムによってキャップ付きブローボトル全体を包むオーバーラップ工程、熱収縮性フィルムを熱収縮させる熱収縮工程、を備え、
前記熱収縮工程に先立ち、円筒状に成形された熱収縮性フィルムの一部をブローボトルの形状に合わせて取り除く第2成形工程を備え、
前記第2成形工程において熱収縮性フィルムを取り除く際に形成される溶断シールから、ブローボトルの平面視における注出部から胴部までの曲線までの距離が、ブローボトルの胴部側よりもブローボトルのキャップ側において狭くなっており、
前記ブローボトルが、ボトル本体がキャップに向けて先細りの形状のスクイズボトルであることを特徴とするブローボトル包装体の製造方法。
【請求項2】
印刷の施されたフィルムによってキャップ付きブローボトルがオーバーラップ包装された包装体であって、
前記フィルムが前記ブローボトルの全面を覆っており、
前記ブローボトルのボトル本体とキャップの境界に位置する前記フィルムが、開封手段を備えることを特徴とするブローボトル包装体の製造方法であって、
印刷が施された熱収縮性フィルムに開封手段を設ける開封加工工程、熱収縮性フィルムを円筒状に成形する第1成形工程、熱収縮性フィルムによってキャップ付きブローボトル全体を包むオーバーラップ工程、熱収縮性フィルムを熱収縮させる熱収縮工程、を備え、
前記熱収縮工程に先立ち、円筒状に成形された熱収縮性フィルムの一部をブローボトルの形状に合わせて取り除く第2成形工程を備え、
前記第2成形工程において熱収縮性フィルムを取り除く際に形成される溶断シールが、L字状になっており、
前記ブローボトルが、ボトル本体がキャップに向けて先細りの形状のスクイズボトルであることを特徴とするブローボトル包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブロー成形によるボトル(以下、単にブローボトルと略称する)がフィルムで包装されたブローボトル包装体および該ブローボトル包装体の製造方法に関する。
詳しくは、キャップ付きブローボトルの包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ブローボトルは、射出成型法により成形したプリフォームと呼ばれる有底パリソンを、直ちに、または後加熱して延伸ブロー成形する「射出ブロー成形法」によるものと、押出機からチューブ状に押出されたパリソンを冷却せずにそのまま金型で挟んでブロー成形する「押出ブロー成形法」によるものとに大別される。押出ブロー成形法によるボトル(以下、単に押出ブローボトルと略称する)として生産量の多いものは、ポリエチレンやポリプロピレンの単層ボトルで、シャンプー、リンス、洗剤用ボトル等の非食品用途に使用されている。一方、食品用途として使用される押出ブローボトルは、ポリオレフィン層の間にエチレン−ビニルアルコール共重合体層が酸素バリア材として配置された多層構造のものが多い。
食品の中でも比較的粘度が低い食油やドレッシング等の包装に用いられる多層の押出ブローボトルでは、前述したポリオレフィン層として主に高密度ポリエチレンやポリプロピレンが用いられている。またマヨネーズ、ケチャップ、各種ソース等の比較的粘度が高い、粘稠性の食品(以下、粘稠食品と略称する)を包装する多層押出ブローボトルには、前述したポリオレフィン層として主に低密度ポリエチレンが用いられている。低密度ポリエチレンを用いた多層押出ブローボトルは柔らかくスクイズ性に優れるため、粘稠食品をボトルから絞り出しやすいのである。
【0003】
ブローボトル表面に、商品名、原材料名、内容量、保存方法、販売者、栄養成分表といった情報を付す場合、直接インクジェット方式等で印刷することは生産性が悪いため、(1)ホットスタンプによる方法、(2)ラベルをシールする方法、(3)シュリンクラベルを用いる方法、(4)シュリンク袋を用いる方法等が採用されている。しかしながら(1)ホットスタンプによる方法や(2)ラベルをシールする方法は、転写箔やラベルの面積に限りがある為、多くの情報をブローボトルに付すことが困難である。
【0004】
(3)シュリンクラベルを用いる方法は、各種情報が印刷された熱収縮性フィルムを円筒状に成形したシュリンクラベルを、ブローボトルの胴部に被せ、加熱して収縮させる方法である。該方法によると、胴部に熱収縮性フィルムが巻き付けられたブローボトルを得ることができる。シュリンクラベルを用いる方法は、効率よく多くの情報をボトル表面に付すことができるため、射出ブロー成形によるブローボトルや、食油やドレッシングが収納されたスクイズ性を備えないブローボトル等においてはすでに採用されている。
【0005】
しかしながらシュリンクラベルは、ボトルを凹ませて内容物を取り出すボトル、いわゆるスクイズボトル(以下、単にスクイズボトルと称する)においては採用されていない。スクイズボトルは内容物を取り出す際に大きく変形させられる為、シュリンクラベルを採用しても該ラベルが脱落し易いのである。
従来、スクイズボトルは、図6に示すように、プラスチックフィルムからなる外袋5等に入れて販売されている。商品名、原材料名、内容量、保存方法、販売者、栄養成分表といった各種情報は該外袋5に印刷されているが、通常、該外袋5はスクイズボトル3を取り出す際に廃棄される為、消費者は粘稠食品を消費している間、これらの情報を目にすることができない。
【0006】
(4)シュリンク袋を用いる方法は、各種情報が印刷された熱収縮性フィルムを袋状に成形して、シュリンク袋を製造し、これをブローボトルに被せ、加熱して収縮させる方法である。該方法によると、熱収縮性フィルムが、底部を除く表面に略密着したブローボトル包装体を得ることができる。
しかしながら、シュリンク袋をブローボトルに被せる工程は自動化することが難しく、通常、手作業で行われている為、生産効率が悪い。またシュリンク袋を加熱して収縮させる際、初めにボトルの底部周縁においてシュリンク袋とボトルが接触し、該部分においてシュリンク袋の収縮が抑制されるため、熱収縮性フィルムに施された印刷が歪みやすいという問題があった。
【0007】
シュリンク袋を用いる方法は、はちみつを収納した比較的硬質のスクイズボトルの包装において採用されているが、マヨネーズやケチャック、各種ソースをといった軟質のスクイズボトルにおいては採用されていない。これは前述した生産効率の悪さ、印刷の歪み易さが原因であるが、該シュリンク袋はボトルの底部において開口している為、軟質のスクイズボトルの包装に用いた場合、ラベルシュリンク同様、内容物を取り出す際にシュリンク袋が脱落する恐れがある。
【0008】
また近年、見た目、味、共にマヨネーズに酷似した「サラダクリーミードレッシング」と呼ばれる調味料が多く出回っている。該調味料は、外袋にカロリーが低いことを表す文言が印刷されており、該印刷によりマヨネーズと識別されているが、外袋を廃棄した後は、その調味料がマヨネーズであるか、サラダクリーミードレッシングであるか、消費者が識別することは困難である。食品メーカーによってはスクイズボトルのキャップの色を変えることで、消費者に識別を促しているが、色の基準がメーカーによって異なる為、正確に識別できない消費者も少なくはない。
このような問題を背景とし、粘稠食品を消費する間も該食品に関する情報を見ることができるスクイズボトルの出現が望まれているが、未だ満足できるものは提供されていない。
【0009】
特許文献1は、粘稠食品等の内容物を収納したスクイズボトル等の容器を、熱収縮性フィルムからなる外袋で包装した包装体に関する発明である。該包装に用いられる外袋は、ボトルと胴部外周において密着し、注出部外周において離間しており、密着部と離間部との境界線よりも密着部側寄りに開封手段を有する。消費者が粘稠食品を消費する際は、該開封手段から外袋を開封し、離間部を取り除く。この際、外袋の密着部はボトルから取り外されず、ボトルに密着したまま残る為、当該密着部に記載された情報は、粘稠食品を消費する間も消費者の目に留まることとなる。
【0010】
しかしながら特許文献1に記載された包装体は、部分的に収縮率の異なる熱収縮性フィルムを使用する為、該フィルムの製造が困難である。また該包装体は、初めに筒状の熱収縮性フィルムを製造し、これをスクイズボトルに被せた後、底部、胴部、境界部と順に加熱して、熱収縮性フィルムを収縮させて製造する為、製造工程が非常に煩雑である。
また特許文献1の包装体の密着部は、粘稠食品を消費する初期においてはスクイズボトルから脱落し難いが、消費末期においては脱落する恐れがある。これは密着部上端の径とスクイズボトル胴部の径が大きく相違しない為で、粘稠食品を絞り出す際にスクイズボトルを強く絞る消費末期においては、密着部がボトルから脱落し易い。また該包装体における熱収縮性フィルムは底部が閉じられていない為、密着部が該底部側から脱落する恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−154916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来、スクイズボトルの外袋に記載されている情報とほぼ同程度の情報を、消費者が粘稠食品を消費する際にも目にすることのできる包装形態であって、ボトルを絞っても該情報(が付されたフィルム)が脱落することのない、新たな包装形態の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、上記課題を解決するための手段として、
印刷の施されたフィルムによってキャップ付きブローボトルがオーバーラップ包装された包装体であって、前記フィルムが前記ブローボトルの全面を覆っており、前記ブローボトルのボトル本体とキャップの境界に位置する前記フィルムが、開封手段を備えることを特徴とするブローボトル包装体が提供される。
また前記ブローボトルの外周長が短い部分に位置するフィルムが、二つの線状融着部を有し、該線状融着部がブローボトルの長さ方向中心線に対して線対称な位置にあることを特徴とする前記ブローボトル包装体が提供される。
また前記線状融着部に、開封時に持ち手となる挟持部が形成されていることを特徴とする前記ブローボトル包装体が提供される。
また前記ブローボトルが、粘稠物が収納されたスクイズボトルであることを特徴とする前記ブローボトル包装体が提供される。
【0014】
更に本発明によると、
印刷が施された熱収縮性フィルムに開封手段を設ける開封加工工程、熱収縮性フィルムを円筒状に成形する第1成形工程、熱収縮性フィルムによってキャップ付きブローボトル全体を包むオーバーラップ工程、熱収縮性フィルムを熱収縮させる熱収縮工程、を備えることを特徴とする前記ブローボトル包装体の製造方法が提供される。
また前記開封加工工程を、熱収縮工程の後に備えることを特徴とする前記ブローボトル包装体の製造方法が提供される。
また前記熱収縮工程に先立ち、円筒状に成形された熱収縮性フィルムの一部をブローボトルの形状に合わせて取り除く第2成形工程を備えることを特徴とする前記ブローボトル包装体の製造方法が提供される。
また前記第2成形工程において、円筒状に成形された熱収縮性フィルムの一部をブローボトルの形状に合わせて取り除く際に、熱収縮性フィルムを開封する際に持ち手となる挟持部を成形することを特徴とする前記ブローボトル包装体の製造方法が提供される。
更に前記ブローボトルが、粘稠物が収納されたスクイズボトルであることを特徴とする前記ブローボトル包装体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のブローボトル包装体は、ボトル全面が印刷の施されたフィルムによって覆われているため、ボトル表面に多くの情報を付すことができる。またブローボトルのボトル本体とキャップの境界(以下、境界部と略称する)に開封手段を備えているため、ブローボトルに収納された内容物を取り出す際は、該開封手段からフィルムを開封し、キャップ側のフィルムのみを取り除けばよい。消費者が内容物を消費している間、フィルムに印刷された情報の大部分は、ボトル本体上に残される。
ボトル本体上に残されたフィルムは、底部が閉じられており、上部がボトルの外周長が短い境界部まで至るため、ブローボトルが大きく変形される軟質のスクイズボトルであっても、該フィルムが脱落する恐れはない。
更に本発明による包装体は、ブローボトルとほぼ同程度の容積である為、従来の外袋に入れられたスクイズボトルよりも、運搬や陳列に多くの空間を必要としない。
【0016】
本発明のブローボトル包装体を製造するに際に、熱収縮性フィルムでブローボトルをオーバーラップ包装し、更に該熱収縮性フィルムを加熱収縮させた後に、開封手段を設けると、該開封手段が歪むことがない。
また、熱収縮性フィルムを円筒状に成形した後、該円筒状のフィルムの一部をブローボトルの形状に合わせて取り除けば、熱収縮性フィルムがブローボトル全面に良好に密着する為、得られる包装体は意匠性に優れたものとなる。更に、熱収縮性フィルムの一部を取り除く際に、熱収縮性フィルムを開封する際に持ち手となる挟持部を成形すると、フィルムの開封が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明によるスクイズボトル包装体の一実施例を表す概略正面図である。
図2】本発明によるスクイズボトル包装体の別の実施例を表す概略正面図である。
図3】本発明によるスクイズボトル包装体の別の実施例を表す概略正面図である。
図4】本発明によるスクイズボトル包装体の製造方法を表す説明図である。
図5】円筒状の熱収縮性フィルムを切断する溶断シールの一例を表す説明図である。
図6】従来のスクイズボトル包装体を表す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、キャップ付きブローボトルが、粘稠物が収納されたスクイズボトル1である場合を例にとり説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明によるスクイズボトル包装体の一実施例を表す概略正面図である。該包装体1は、フィルム2とスクイズボトル3とから成る。
【0019】
[フィルム]
本発明のフィルム2は、粘稠物に関する情報(商品名、原材料名、内容量、保存方法、販売者、栄養成分表)や、粘稠物をイメージさせる図柄、キャッチコピー等が印刷されている。
また該フィルムはスクイズボトル3全面を覆っている。尚、本発明における「フィルムがボトルの全面を覆う」という状態は、図6に示すような、フィルムがボトルから離れた位置にあるものは含まない。図1乃至3に示すように、フィルムがボトル全面において略密着した状態(フィルムとボトルの距離が数ミリ以内)であることを意味する。
フィルムがスクイズボトル全面を覆うためには、該フィルムとして熱収縮性フィルムを採用すればよい。熱収縮性フィルムは、従来公知のものを適宜使用することができる。例えばポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系等の熱可塑性樹脂から選択される1種または2種以上の樹脂を混合物して製膜したものを用いることができる。また熱収縮性フィルムは単層構造のフィルムでも、多層構造のフィルムでもよい。
【0020】
通常、オーバーラップ包装に用いられる一般的な熱収縮性フィルムは、主軸方向と、該主軸と垂直な方向(以下、副軸方向と略称する)の二方向にほぼ等倍率延伸された二軸延伸フィルムであるが、本発明の包装体の場合は、主軸方向のみに延伸された一軸延伸フィルム、或いは主軸方向に大きく、副軸方向に小さく延伸されたフィルムを用いることが好ましい。詳しくは主軸方向の延伸倍率をa、副軸方向の延伸倍率をbとしたとき、0≦b≦3a/4であることが望ましい(b=0とは延伸前後における副軸方向の長さが変化しないことを表す)。延伸倍率がアンバランスなフィルムを用い、主軸方向(大きく延伸された方向)がボトルの周方向となるように、熱収縮性フィルムでスクイズボトルを収縮包装すると得られるスクイズボトル包装体1の外観がよい。
【0021】
[スクイズボトル]
スクイズボトル3は、ブローボトルの一種で、ボトルを凹ませることにより内容物を取り出す容器である。はちみつ等が収納されたスクイズボトルは、比較的硬質のスクイズボトルで、ボトルを凹ますことはできても折り畳むことはできない。マヨネーズやケチャップ、各種ソース等が収納されたスクイズボトルは、比較的軟質のスクイズボトルで、内容物を取り出す際に、しばしば折り畳まれたり、丸められたりする。
本発明のスクイズボトル3は、キャップ31とボトル本体32とからなる。キャップ31は、例えば硬質のポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等のプラスチック材料を用いて、従来公知の成形方法にて製造することができる。ボトル本体32は、低密度ポリエチレンやエチレン−ビニルアルコール共重合体等のプラスチック材料を、例えば押出ブロー成形することにより製造することができる。
また本発明は、図1に記すような、ボトル本体32がキャップ31に向けて先細りの形状のスクイズボトルの特に好適に適用できる。先細りであると、ボトル本体32の胴部の外周長に対する、フィルム2の開封手段21の外周長が極めて小さくなるため、開封後にフィルム2がボトル3から脱落する恐れがない。
【0022】
[包装体]
本発明によるスクイズボトル包装体1は、前述したフィルム2によってスクイズボトル3がオーバーラップ包装されている。オーバーラップ包装とは、スクイズボトル全面がフィルム2によって包まれる包装形態であり、スリーブ包装やシュリンクラベルを用いた包装、シュリンク袋を用いた包装等とは異なり、キャップ31の天面31Tやボトル本体底部32Bにおいても、フィルム2は閉じられている。
【0023】
また本発明による包装体1は、境界部33に位置するフィルム2に開封手段21を備える。尚、本明細書における「境界部」とは、ボトル本体32とキャップ31との境界線のみではなく、該線から多少ずれた位置、詳しくは0mm乃至30mm程度、好ましくは0乃至10mmずれている位置も含むものとする。多少ずれる場合は、キャップの天面31T側ではなく、底部32B側にずれていることが望ましい。キャップの天面31T側にずれていると、キャップ31を開封する際に、フィルム2が邪魔になる恐れがある。
開封手段を設ける方法は特に限定されず、例えば、ミシン目加工や、フィルムを厚さ方向に略半分カットする(いわゆるハーフカット)加工等により行うことができる。ミシン目加工によると、後述する熱収縮工程にて熱収縮性フィルム内のエアーを効率よく排出することができる。
【0024】
図2は、本発明によるスクイズボトル包装体1の別の実施例を表す概略正面図である。尚、図1乃至図6では、同じ要素は別の実施例によるものであっても同一の符号を付す。
図1における包装体1は、スクイズボトルの外周長が短い部分Xにおいて、フィルムがボトルに略密着しているが、完全に密着してはいない。一般的な熱収縮性フィルムの最大収縮率は50〜60%程度である為、外周長の最大値が最小値の二倍以上であるスクイズボトルでは、外周長が最小である部分において、熱収縮性フィルムが完全に収縮しても、ボトル表面に完全に密着することはできないのである。
そこで、図2のスクイズボトル包装体1では、外周長が短い部分Xに位置するフィルム2をスクイズボトルの形状に合わせて溶断シールしている。該溶断シール部には線状融着部22が形成されている。該線状融着部22は、スクイズボトルの長さ方向中心線N(長さ方向に垂直な断面の中心を貫く直線)に対し線対称な位置に、出現することが望ましい。線状融着部22が線対称な位置にあると、フィルム2の印刷が歪みにくい。
【0025】
図3も、本発明によるスクイズボトル包装体1の別の実施例を表す概略正面図である。図3に示すスクイズボトル包装体1は、一方の線状融着部22に挟持部23が形成されている。
挟持部23は、フィルム2を開封する際に持ち手となる部分で、その大きさ、形状等は特に限定されないが、大きすぎると包装体1の外観を損ねる恐れがあり、小さすぎると開封し難くなる恐れがある。該挟持部は、例えは一辺が0.5〜5cmの矩形であればよい。
挟持部23を設ける位置は、線状融着部22上であれば特に限定されないが、開封性を考えると開封手段21に隣接する位置が望ましく、また粘稠物消費時には不要である為、開封手段21よりもキャップ天面31T側にあることが望ましい。開封手段21よりもキャップ天面31T側にあれば、フィルム2を開封する際に、キャップ31を覆うフィルムと共に廃棄することができる。
【0026】
次に、本発明によるスクイズボトル包装体の製造方法について説明する。図4は、本発明の包装体の製造方法を説明するための図面である。本発明の製造方法は、印刷が施された熱収縮性フィルム2(図面においては、印刷を省略する)に開封手段21を設ける開封加工工程(a)、熱収縮性フィルム2を円筒状に成形する第1成形工程(b)、熱収縮性フィルム2でスクイズボトル3全体を包むオーバーラップ工程(c)、熱収縮性フィルム2を熱収縮させる熱収縮工程(d)を備える。
【0027】
[開封加工工程]
開封加工工程は、熱収縮性フィルム2に開封する契機となる開封手段21を設ける工程である。包装体から粘稠物を取り出す際、まず熱収縮性フィルムを開封し、次いでスクイズボトルのキャップを取り外すこととなる。この際、消費者が熱収縮性フィルムを適切な場所から開封しないと、その後、粘稠物を消費している間に熱収縮性フィルムがはがれる恐れがある。消費者に所定の位置から開封してもらうためには、開封手段を設けることが効果的である。開封手段を形成する位置は、熱収縮工程後の包装体(図4d))において境界部33に位置する部分が好ましい。開封手段21は、前述したように、ミシン目、ハーフカット等によるとよい。
尚、従来のオーバーラップ包装に用いられている熱収縮性フィルムは、包装体が開封されると同時に廃棄されるため、本発明の熱収縮性フィルムのように、特定の位置に開封手段を備える必要はない。
【0028】
図4(a)における開封手段21は、フィルム幅方向に平行な直線状をしているが、スクイズボトルをオーバーラップ包装する際に、熱収縮性フィルムは幅方向全域にわたって同率収縮するわけではない。ボトルに沿って収縮する為、大きく収縮する部分と小さく収縮する部分ができる。よって、該開封手段21が直線状であると、熱収縮後の包装体(図4d))において、開封手段21が曲線状となる恐れがある。開封手段21は、実際にフィルムがどのように収縮するか確認したうえで、熱収縮後に直線となるような形状とすることが望ましい。
【0029】
[第1成形工程]
第1成形工程は、熱収縮性フィルムを円筒状に成形する工程である。図4b)では、熱収縮性フィルム2の一端側の内面と他端側の内面とを重ね合わせ、該重ね合わせ部分を外周面にローレットが形成された一対のシールローラー4によって挟み込んでヒートシールし、即ち、合掌貼りして、熱収縮性フィルムを円筒状に成形している。熱収縮性フィルムの印刷部分はヒートシール性に劣る為、第一成形工程は、印刷が施されていない面同士を合掌貼りによりヒートシールすることが望ましい。また合掌貼りされたヒートシール部24は、包装体の美観を損ねないよう、包装体の背面とすることが望ましい。
【0030】
また熱収縮性フィルムの一端内面と他端外面とを重ね合わせ、静電シール法にてフィルムを円筒状に成形することもできる。更に、熱収縮性フィルムを2枚用意し、該フィルムを内面同士が接するように重ねわせ、対向する2辺を溶断シールすることにより円筒状の熱収縮性フィルムを得ることもできる。更には、フィルムを半折し、開口端縁(半折されていない端縁)を溶断シールすることにより円筒状に成形することもできる。
【0031】
[オーバーラップ工程]
オーバーラップ工程は、熱収縮性フィルム1によってスクイズボトル3全体を包む工程である。図4c)に示すオーバーラップ工程では、第1成形工程にて円筒状に成形された熱収縮性フィルム2内に、粘稠物が収納されたスクイズボトル3を挿入し、該スクイズボトル3の前後で熱収縮性フィルムを溶断シール25している。
本発明の包装体を連続生産する場合は、図4b)に示すように、第1成形工程にて熱収縮性フィルムを円筒状に成形しながら、該熱収縮性フィルム2内にスクイズボトル3を挿入することが望ましい。
【0032】
また前述した溶断シール25に代えて、シールバーによるヒートシール(熱圧シール)を行ってもよい。しかしながら、包装体の仕上がりを考慮すると、溶断シールが望ましい。シールバーによるヒートシールでは、ボトルの天面と底面に幅を持ったシール部が形成される為、包装体1の外観がスマートでない。
【0033】
[熱収縮工程]
熱収縮工程は、熱収縮性フィルム2に熱をかけ、フィルムを収縮させる工程である。本発明の包装体の製造方法を用いると、図4d)に示すように、スクイズボトル3の全面が熱収縮性フィルム2によって覆われる。熱収縮性フィルムに熱をかける方法は特に限定されないが、シュリンクトンネルと呼ばれる包装機を用いる方法が一般的である。
【0034】
以上、本発明の基本的な実施形態(開封加工工程→第1成形工程→オーバーラップ工程→熱収縮工程)について説明したが、開封加工工程を熱収縮工程後に設けること(第一成形工程→オーバーラップ工程→熱収縮工程→開封加工工程)もできる。
前述したように、熱収縮工程後の開封手段が直線状となるように、熱収縮前の熱収縮性フィルムに開封手段を設けることは、正確なフィルムの収縮挙動を把握する必要があり困難である。よって開封手段は熱収縮工程後のスクイズボトル包装体に設けることが望ましい。
熱収縮工程後のスクイズボトル包装体に開封手段を設けるには、例えば円状の冶具であって、円内面に数ミリのカッター刃が出る冶具を、スクイズボトル包装体に被せ、カッターを出してミシン目加工すればよい。またミシン目形成用冶具と抑え具の間を、スクイズボトル包装体を回転させながら通しても良い。
【0035】
[第2成形工程]
第2成形工程は、円筒状の熱収縮性フィルム2の一部を、スクイズボトルの形状に合わせて取り除く工程である。第2成形工程を設けることにより、熱収縮性フィルム2がスクイズボトル3全面において、ボトルに良好に密着することとなる。
第2成形工程後の熱収縮性フィルム2で形成される包装体の容積をVw、スクイズボトルの容積をVsとしたとき、1.05Vw≦Vs≦2.00Vwであることが望ましい。熱収縮性フィルムの容積Vwが前記範囲よりも小さいと、熱収縮性フィルムでスクイズボトルを包装する際に、熱収縮性フィルムがボトルに融着する等した不良品が発生し易くなり、また搬送不良の恐れも高まる。前記範囲よりも大きいと、熱収縮性フィルムがスクイズボトルにフィットしない恐れが生ずる。
【0036】
図5は、円筒状のフィルムの一部が溶断シール26により取り除かれた熱収縮性フィルムの一例である。図5(a)では、スクイズボトルを平面視した際に、キャップ天面の端縁となる点αと、スクイズボトルの外周長が最も長くなる胴部の端縁となる点βを結んだ直線Lと略平行に、溶断シール26されている。
図5(b)は溶断シール26が、スクイズボトルの平面視における注出部から胴部まで曲線Mと略相似形をしている。溶断シール26から曲線Mまでの距離γは特に限定されないが、スクイズボトルの平面視における胴部幅δの1/10以上、1/3以下であることが望ましい。γが前記範囲よりも小さいと、熱収縮性フィルムでスクイズボトルを包装する際に、熱収縮性フィルムがボトルに融着する等した不良品が発生し易くなり、また搬送不良の恐れも高まる。前記範囲よりも大きいと、熱収縮性フィルムがスクイズボトルにフィットしない恐れが生ずる。
【0037】
図5(c)は溶断シール26から曲線Mまでの距離γが、スクイズボトルのキャップ31付近において狭くなっている。図5(c)に示すように、溶断シール26が注出部付近において幅狭になっていると、熱収縮性フィルム2がボトル3全面において均一に収縮し易い為、フィルム2に施した印刷が歪みにくい。
図5(d)に示す熱収縮性フィルム2は、外周長が極めて短い注出部付近Yのみを略L字状に溶断シール26している。外周長が極めて短い部分の熱収縮性フィルム2を取り除けば、包装体1において熱収縮性フィルム2が良好に密着しないという問題は、はある程度改善される。
【0038】
第2成形工程は、第1成形工程と同時に、或いは第1成形工程後から熱収縮工程前までの段階であれば、いずれの段階に設けてもよいが、連続生産することを考慮すると、オーバーラップ工程と同時、或いはオーバーラップ工程直後に行うことが望ましい。
【0039】
第2成形工程では、熱収縮性フィルムの一部を取り除くが、この際、スクイズボトル包装体を開封する際に持ち手となる挟持部を成形しても良い。挟持部の成形は、例えば前述した溶断シール26を行う金型を変形することにより行うことができる。溶断シール26の金型を一方は線状に、他方は凸状にすれば、溶断シール26を行うと同時に挟持部を成形することができる。
【0040】
以上、ブローボトルが粘稠物が収納されたスクイズボトルである場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、外周長が大きく変化するブローボトル、使用時に形状が大きく変化するブローボトルの包装に好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、マヨネーズやケチャップ、各種ソースといった粘稠物が収納されたスクイズボトルの包装に用いることができる。更に従来シュリンクラベルが採用されている食油やドレッシング等が収納された押出ブローボトルや射出成型によるブローボトルの包装に用いることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 スクイズボトル包装体
2 (熱収縮性)フィルム
21 開封手段
22 線状融着部
23 挟持部
24 ヒートシール部
25 (オーバーラップ工程における)溶断シール
26 (第2成形工程における)溶断シール
3 スクイズボトル
31 キャップ
31T キャップの天面
32 スクイズボトル本体
32B スクイズボトル本体の底部
33 境界部
4 ヒートシールローラー
5 外袋

図1
図2
図3
図4
図5
図6