特許第6735646号(P6735646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735646
(24)【登録日】2020年7月16日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】粘着テープロール
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/03 20060101AFI20200728BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20200728BHJP
【FI】
   G09F3/03 E
   C09J7/22
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-189910(P2016-189910)
(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公開番号】特開2018-54824(P2018-54824A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142034
【氏名又は名称】株式会社共和
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】尾植 秀和
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 健史
(72)【発明者】
【氏名】宮田 昌亮
【審査官】 金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−086444(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3077351(JP,U)
【文献】 特開2002−192634(JP,A)
【文献】 特開平08−146881(JP,A)
【文献】 特開2007−155885(JP,A)
【文献】 実開平05−061778(JP,U)
【文献】 特開平11−038880(JP,A)
【文献】 特開2004−177927(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0300346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/00 −3/20
C09J 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透明の基材と、前記基材の前記一方面の一部に積層され、第一の着色材料と熱可塑性エラストマーとを含む第一着色層と、前記基材の前記一方面に前記第一着色層を覆うように積層され、第二の着色材料を含む第二着色層と、前記第二着色層に積層され、樹脂を含む粘着層とを備え、前記粘着層側が被着体に接着された状態で、前記基材及び前記第一着色層を有する上層と、前記第二着色層及び前記粘着層を有する下層との界面で剥離可能である改ざん防止用粘着テープを巻回してなる粘着テープロールであって、
前記基材の少なくとも前記一方面には、マット加工が施され、
前記下層から剥離した前記上層の端部を引っ張って、剥離を継続するのに要する力である剥離力が、300mm/minの引っ張り速度で前記改ざん防止用テープを巻き戻した際の低速巻戻し力よりも小さく、且つ、前記下層から剥離していない前記上層を破断して前記下層からの剥離のきっかけを作るのに要する力である破断力が、前記低速巻戻し力よりも大きいことを特徴とする、粘着テープロール。
【請求項2】
前記基材のマット加工が施された面の表面粗さRaが0.2μm以上1.2μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の粘着テープロール。
【請求項3】
前記改ざん防止用粘着テープが、シリコーン樹脂を含有しないことを特徴とする、請求項1または2に記載の粘着テープロール。
【請求項4】
前記第一着色層が、前記第一着色層全体を100重量部としたときに、前記第一の着色材料を10重量部以上50重量部以下の割合で含有し、且つ、前記熱可塑性エラストマーを50重量部以上90重量部以下の割合で含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着テープロール。
【請求項5】
前記第二着色層の前記第二の着色材料が、ウレタン/塩化ビニル系インキを含有し、かつ、前記第一着色層の前記第一の着色材料と同色であって、
前記第二着色層が、前記第二着色層全体を100重量部としたときに、前記第二の着色材料を80重量部以上99重量部以下の割合で含有し、硬化剤を1重量部以上20重量部以下の割合で含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着テープロール。
【請求項6】
前記上層と前記下層との間の剥離力が0.01N/10mm以上0.4N/10mm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着テープロール。
【請求項7】
前記粘着層において、前記改ざん防止用粘着テープの巻き戻し方向と直交する方向の両端部に非粘着部分が設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着テープロール。
【請求項8】
前記下層から前記上層の剥離後に、前記上層と前記下層との間において粘着力を有しないことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着テープロール。
【請求項9】
前記第二着色層が、前記第一着色層と対向する部分に、さらに第三着色層を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着テープロール。
【請求項10】
前記第二着色層が、360nm以上390nm以下の波長の紫外線により蛍光を発する蛍光材料を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着テープロール。
【請求項11】
前記第三着色層が、360nm以上390nm以下の波長の紫外線により蛍光を発する蛍光材料を含むことを特徴とする、請求項9に記載の粘着テープロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着テープロールに関するものである。更に詳しくは、箱や袋などの開封口を閉塞するために貼着する粘着テープであって、テープ基材への文字浮きにより、被着体からテープを剥がそうとしたことが容易に判断できる改ざん防止用粘着テープを巻回してなる粘着テープロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
改ざん防止用粘着テープとして、剥離の際に、被着体に対して痕跡を残すものや、脆い基材のため破れてしまうものや、テープの層間剥離を生じるものなどが知られている。
【0003】
中でも、層間剥離を生じる改ざん防止用粘着テープは、多層積層の粘着テープにおいて層間剥離が可能であり、様々な改ざん防止機能のバリエーションを有する。粘着テープロールとして提供される場合は、原則として、テープを巻き戻した際に、改ざん防止機能である層間剥離が発現しないように、テープ巻き戻しの際の巻戻し力を弱める必要があると考えられている。例えば特許文献1には、粘着テープが筒状に巻かれる際に粘着層に接触する基材面にシリコーンを含有して巻き戻し力を低減する剥離層を設けることが記載されている。
【0004】
また、剥離可能な層間の剥離力の設定について、粘着テープを巻回して提供されたものではないラベルのようなものであれば、例えば特許文献2に記載されたように、剥離紙と粘着層との粘着強度を、改ざん防止機能を発現する層間の粘着強度よりも小さく設定し、被着体と粘着層との粘着強度を、改ざん防止機能を発現する層間の粘着強度よりも大きく設定することが出来る。しかし、粘着テープが管体に巻かれて提供される状態では、剥離可能な層間の剥離力の設定が難しく、従来は検討されていなかった。
【0005】
市販の改ざん防止用粘着テープロールは、上述したシリコーンを使用したものが殆どであり、ラベルでなく管体に巻かれたテープロールの形態では、シリコーンを使用しなければ巻き戻し時の改ざん防止機能の発現の防止は技術的に難しいとされてきた。しかしながら、シリコーンを粘着テープに使用する際には、熱処理などの過酷な過程を経る必要があり、テープに用いる材料は耐熱性があるものに限られる。それ故、改ざん防止用粘着テープは熱に強い紙や、ポリエチレンテレフタレート(PET)などにシリコーンを組合せることが主流となっており、シリコーンを用いないものを目にすることはなかった。また、シリコーンや熱処理にはコストがかかるため、一般的に通常のテープと比較し改ざん防止用粘着テープは高価にならざるを得ないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−56339号公報
【特許文献2】特開平7−234634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑み、シリコーンを用いないことで製造コストを抑えることができ、かつ、粘着テープを巻き戻す際の層間剥離を抑制することができる改ざん防止用粘着テープを巻回した粘着テープロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、粘着テープロールであって、半透明の基材と、基材の一方面の一部に積層され、第一の着色材料と熱可塑性エラストマーとを含む第一着色層と、基材の一方面に第一着色層を覆うように積層され、第二の着色材料を含む第二着色層と、第二着色層に積層され、樹脂を含む粘着層とを備え、粘着層側が被着体に接着された状態で、基材及び第一着色層を有する上層と、第二着色層及び粘着層を有する下層との界面で剥離可能である改ざん防止用粘着テープを巻回してなる粘着テープロールであって、基材の少なくとも一方面には、マット加工が施され、下層から剥離した上層の端部を引っ張って、剥離を継続するのに要する力である剥離力が、300mm/minの引っ張り速度でテープを巻き戻した際の低速巻戻し力よりも小さく、且つ、下層から剥離していない上層を破断して下層からの剥離のきっかけを作るのに要する力である破断力が、低速巻戻し力よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリコーンを用いないことで製造コストを抑えることができ、かつ、粘着テープを巻き戻す際の層間剥離を抑制することができる改ざん防止用粘着テープを巻回した粘着テープロールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る改ざん防止用粘着テープの一例を示す幅方向の断面図である。
図2図2は、実施形態に係る改ざん防止機能を発現した後の改ざん防止用粘着テープの一例を示す平面図である。
図3図3は、改ざん防止用粘着テープの変形例を示す幅方向の断面図である。
図4図4は、図1に示す改ざん防止用粘着テープであって、上層と下層との間で剥離している状態を示す幅方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の改ざん防止用粘着テープを巻回してなる粘着テープロールの一例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る改ざん防止用粘着テープの一例を示す幅方向の断面図である。ここで、幅方向とは改ざん防止用粘着テープの巻き戻し方向と直交する方向をいう。図1に示す改ざん防止用粘着テープ1は、改ざん防止用テープを巻回してなる粘着テープロールから巻き戻された粘着テープの一部分である。改ざん防止用粘着テープ1は、基材2と、基材2の一方面の一部に積層される第一着色層3と、基材2の一方面に第一着色層を覆うように積層される第二着色層4と、第二着色層4に積層される粘着層5を備える。また、改ざん防止用粘着テープ1は、基材2及び第一着色層3を有する上層6と、第二着色層4及び粘着層5を有する下層7とにより構成される。改ざん防止用粘着テープ1は、粘着層5側が被着体に接着された状態で、上層6と下層7との界面で剥離可能となる。
【0013】
基材2は、半透明であって、少なくとも第一着色層及び第二着色層側の面にマット加工が施されている。基材2としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂などから構成される。この中でも特に二軸延伸により引張り強度が強く透明性に優れている2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムが基材として好ましい。また、基材2の厚さは、20μm以上80μm以下であり、好ましくは30μm以上50μm以下である。
【0014】
基材2の少なくとも一方面には、例えばサンドマット処理、エッチング処理、またはエンボス処理により、マット加工が施されている。基材2のマット加工が施された面の表面粗さRaは、0.2μm以上1.2μm以下であることが好ましい。詳細は後述するが、マット加工を施すことで、基材2と第二着色層4との物理的結合(分子間力)を大きくすることが可能となる。
【0015】
また、被着体に貼付した改ざん防止用粘着テープ1を剥がそうとすると、上層6が下層7から剥離される。つまり、第一着色層3は基材2に随伴して下層7から剥離される。このとき、基材2は半透明なので剥離された基材2を透かして第一着色層3を視認することができる。上層6と下層7とが剥離された後では、再び上層6と下層7とを重ねても、基材2が半透明であることで、第一着色層3と第二着色層4との色調が異なって見える。その結果、第一着色層3の視認性が維持される。基材2が透明であると、第一着色層3と第二着色層4との色調の差が出難い場合があるため、半透明の基材を用いることが好ましい。また、第一着色層3は基材2を介して透けて見える必要があるため、基材2は無色または微かに色調がある程度の色であることが好ましい。
【0016】
第一着色層3は、第一の着色材料と熱可塑性エラストマーとを含む。第一着色層3は、第一着色層3全体を100重量部としたときに、第一の着色材料が10重量部以上50重量部以下であり、熱可塑性エラストマーが50重量部以上90重量部以下であり、好ましくは第一の着色材料が25重量部以上35重量部以下であり、熱可塑性エラストマーが65重量部以上75重量部以下である。第一の着色材料としては、特に限定されず、例えば従来公知の顔料等が挙げられるが、開封確認の際に生じる表示をより鮮明に見える様にするため、彩度の高いものを使用することが好ましい。第一着色層3の厚みは1μm以上5μm以下であることが好ましく、1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
【0017】
第二着色層4は、第二の着色材料と硬化剤とを含む。第二着色層4は、第二着色層4全体を100重量部としたときに、第二の着色材料が80重量部以上99重量部以下であり、硬化剤が1重量部以上20重量部以下である。第二の着色材料は、ウレタン/塩化ビニル系インキなどが挙げられる。第二着色層4は第一着色層3と同色である。それゆえ、上層6と下層7との間の剥離前は、第一着色層3と第二着色層4との境界が認識することが困難であり、基材2側から改ざん防止用粘着テープ1を見ても第一着色層3に由来する文字などの表示が隠蔽されている。また、下層7から上層6が剥離される際には、上層6と下層7との間に薄い空気層が生じることで、マット加工による光の乱反射で薄灰色に曇って見える基材2上に第一着色層3に由来する文字などの表示が初めて透けて見えることとなる。
【0018】
硬化剤としては、イソシアネート系・キレート系・エポキシ系硬化剤などが挙げられ、好ましくはイソシアネート系架橋剤が挙げられる。第二着色層4の厚みは2μm以上10μm以下であることが好ましく、4μm以上7μm以下であることがより好ましい。
【0019】
粘着層5は、樹脂100重量部に対して架橋剤0.5重量部以上10重量部以下を添加して架橋させた組成物により構成される。好ましくは粘着樹脂100重量部に対して架橋剤1重量部以上3重量部を添加する。粘着層5は、アクリル系やゴム系、ウレタン系、シリコーン系のいずれの樹脂も使用することができるが、耐候性・耐久性を有し、低価格という点からアクリル系が好ましい。
【0020】
改ざん防止用粘着テープ1は、汎用性が高い粘着テープとするために、粘着層5の粘着力が大きい方が好ましい。また、粘着層5の粘着力は、改ざん防止用粘着テープ1の巻戻し力に寄与する。また、上層6と下層7との間の剥離に対して過度に大きな力を必要としないようにするため、上層6と下層7との間の剥離力は小さい方が好ましい。そこで、改ざん防止用テープ1は、好適な設計の一例として、下層7から剥離した上層6の端部を引っ張って、下層7からの剥離を継続するのに要する力である剥離力が、300mm/minの速度で改ざん防止用粘着テープを巻き戻した際の低速巻戻し力よりも小さくなる。上層6と下層7との間の剥離力は、0.01N/10mm以上0.4N/10mm未満が好ましい。また、低速巻戻し力は、0.4N/10mm以上3.0N/10mm未満が好ましく、0.5N/10mm以上1.5N/10mm以下がより好ましい。
【0021】
改ざん防止用粘着テープ1は、改ざん防止用粘着テープ1の巻戻し時に上層6と下層7との間で剥離してはならない。そこで、改ざん防止用テープ1は、好適な設計の一例として、下層7から剥離していない上層6を破断して下層7からの剥離のきっかけを作るのに要する力である破断力が、低速巻戻し力よりも大きくなる。これは、基材2と第二着色層4との物理的結合(分子間力)に由来し、基材2のマット加工の凹凸面に第二着色層4が濡れ、基材2の表面自由エネルギーが低下し、安定化すると同時に、接触面積が増大することで分子間力も増大することによると考えられる。上記破断力は、実際に被着体に貼付されたテープが人の手で剥がされるときに必要な力と略同等であり、3.0N/10mm以上20.0N/10mm以下が好ましく、6.0N/10mm以上14.0N/10mm以下がより好ましい。
【0022】
図2は、実施形態に係る改ざん防止機能を発現した後の改ざん防止用粘着テープの一例を示す平面図である。上述したように、改ざん防止用粘着テープ1は、粘着層5側が被着体に接着された状態で、上層6と下層7との界面で剥離可能となる。図2に示すように、上層6において第一着色層3は基材2に随伴し、第一着色層3に由来する「VOID」の文字が透けることで、「VOID」の文字を視認することが可能となる。なお、改ざん防止機能の発現により視認することが可能となる文字は「VOID」に限られず、例えば「OPEN」や「開封済み」でもよく、また、文字ではなく簡単な記号でもよい。一方、下層7には、図示していないが、第二着色層4が第一着色層3の痕跡を残して残留している。
【0023】
ここで、上層6と下層7との界面で剥離した状態においては、上層6の下層7側は粘着力を有しておらず、また、下層7の上層6側も粘着力を有していない。そのため、上層6と下層7との界面で剥離した後に、上層6と下層7とを再度接触させて上層6と下層7とを剥離する前の状態に戻すことはできない。このことによっても、改ざん防止用粘着テープ1は、改ざんを防止する機能を有している。
【0024】
さらに、被着体に残った下層7は基材がないため強度が弱い。そのため、開封権限を有する者が開封しようとする場合には、被着体から上層6を剥離した後に、カッターやハサミなどの道具を使わなくても下層7を破断または剥離することができ、その結果、手で簡単に開封することが可能となる。
【0025】
(変形例)
図3は、改ざん防止用粘着テープの変形例を示す幅方向の断面図である。改ざん防止用粘着テープ1における第二着色層4が、第一着色層3と対向する部分に、さらに第三着色層8を有している点のみが、第1の実施形態に係る改ざん防止用粘着テープとは異なる。変形例に係る改ざん防止用粘着テープ1は、基材2及び第一着色層3を有する上層6と、第二着色層4、第三着色層8及び粘着層5を有する下層7とにより構成される。改ざん防止用粘着テープ1は、粘着層5側が被着体に接着された状態で、上層6と下層7との界面で剥離可能となる。
【0026】
第三着色層8は、360nm以上390nm以下の波長の紫外線により蛍光を発する蛍光材料を含む。蛍光材料は特に限定されず、例えば従来公知の有機系蛍光顔料を使用できる。第三着色層8が360nm以上390nm以下の波長の紫外線により蛍光を発する蛍光材料を含むことにより、上層6と下層7との間での剥離後に被着体に残存する下層7に例えばブラックライトを照射した場合に、下層7の第三着色層8が発光する。このため、改ざん防止の効果を確認することが可能となる。
【0027】
尚、第1の実施形態の更なる変形例として、基材2として有色の基材を使用し、第二着色層4が、さらに360nm以上390nm以下の波長の紫外線により蛍光を発する蛍光材料を含む構成としてもよい。
【0028】
また、改ざん防止用粘着テープ1は、基材2の第一着色層3及び第二着色層4側と反対側の面に、表面層を備えていてもよい。また、改ざん防止用粘着テープ1は、基材2の第一着色層3及び第二着色層4側と反対側の面に、例えばレリーズ処理(離形処理)などの表面処理を施してもよい。
【0029】
また、改ざん防止用粘着テープ1は、粘着層5において、改ざん防止用粘着テープの幅方向の両端部の一定の領域に、改ざん防止用粘着テープ1を引き出す際に改ざん防止用粘着テープ1を把持し易くするため、非粘着部分を設ける構成としてもよい。
【0030】
また、改ざん防止用粘着テープ1は、最表面にコロナ放電、易接着コート、感熱インキコート等で処理を施すことで、インクジェット印刷、熱転写印刷、感熱印刷を行うことも可能である。また、改ざん防止用粘着テープ1にミシン目加工等で切れ目を入れることも可能である。
【0031】
次に、上述の改ざん防止用粘着テープ1を巻回した粘着テープロールの使用方法について述べる。まず、改ざん防止用粘着テープ1の端部を把持し、粘着テープロールから必要量引き出して、被着体に改ざん防止用粘着テープ1の粘着面側が全て覆われるように貼着する。被着体に改ざん防止用粘着テープ1が貼付された状態で改ざん防止用粘着テープ1の端部を把持し、被着体から把持した改ざん防止用粘着テープ1の端部を剥離させる。このとき、図4に示すように、改ざん防止用粘着テープ1は、上層6と下層7との界面で剥離する。つまり、第一着色層3のみが基材2に随伴し、第二着色層4は被着体に第一着色層3の痕跡を残して残留する。ここで、図4においては、改ざん防止用粘着テープ1の幅方向の一方端から他方端に向かって上層6と下層7との間で剥離しているが、剥離の方向は改ざん防止用粘着テープ1の幅方向の一方端から他方端への方向に限られず、改ざん防止用粘着テープ1の巻き戻し方向の一方端から他方端への方向であってもよく、どの方向であってもよい。これにより、基材2から第一着色層3に由来する文字などが透けて見える。基材2が半透明であるため、基材をどの方向から見ても容易に文字浮きを視認することができ、その結果、開封権限のない第三者がテープを剥がそうとした場合に、基材2に明瞭に文字浮きが生じることで、その第三者に対し改ざん防止用粘着テープ1をこれ以上剥がすことを躊躇させる効果がある。
【0032】
本発明の改ざん防止用粘着テープを巻回した粘着テープロールは、製造コストの高いシリコーンを用いていないため、低コストで生産することが可能となる。そのため、コスト的に改ざん防止用粘着テープの使用が断念されていた分野での使用も可能となる。
【0033】
また、従来のシリコーンを用いた改ざん防止用粘着テープは、シリコーンの潤滑作用によってテープ巻き戻しの際の剥離力を弱めることが比較的容易に達成されている。それ故、基材に随伴する層と被着体に残留する層との間の剥離力も十分に大きくない場合があり、日常に起こりうる高温下や高湿度下の環境や、微振動がかかる環境では、意図された改ざん防止機能発現の前段階においても、基材に随伴する層と被着体に残留する層との間で剥離を生じ、改ざん防止機能が発現してしまう場合があった。それに対し、本発明の改ざん防止用粘着テープを巻回した粘着テープロールは、シリコーン潤滑剤を用いず、上層と下層との間の剥離力をマット加工が施された基材と第二着色層との物理的結合(分子間力)で大きくしているため、日常起こりうる環境下で、意図された改ざん防止機能発現の前段階における上層と下層との剥離による改ざん防止機能の発現を抑制することが可能となる。
【0034】
また、本発明の改ざん防止用粘着テープを巻回した粘着テープロールは、上層と下層との間の剥離力をマット加工が施された基材と第二着色層との分子間力により大きくしているため、相対的に粘着層の粘着力が高いテープの選択も可能である。そのため、本発明の改ざん防止用粘着テープは、比較的にテープが貼り付け難い極性が低い袋などの被着体に対しても貼り付けることができるため、汎用性が高いテープを提供することが可能となる。
【0035】
また、本発明の改ざん防止用粘着テープを巻回した粘着テープロールは、改ざん防止用粘着テープにシリコーンを用いていないため、熱処理などに耐えうる基材を選択する必要がない。そのため、基材の選択の幅を広げることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
<実施例>
両面にマット加工が施された半透明のOPPフィルムからなる基材2の一方の面に長鎖アルキルペンダント型によるレリーズ処理を施した。次に、基材2のレリーズ処理面とは反対側の面の所定の部分に顔料25重量部と熱可塑性エラストマー75重量部とからなる第一着色層3を1μm厚さで塗布した。次に、第一着色層3を覆うように基材2上にウレタン/塩化ビニル系インキと硬化剤とからなる第二着色層4を5μm厚さで塗布した。次に、アクリル樹脂を架橋剤により架橋させた粘着剤を30μm厚さで塗布し、改ざん防止用粘着テープを得た。この改ざん防止用粘着テープからなるシートを幅長18mmでスリットし紙管に巻きつけ筒状の粘着テープロールを作製した。
【0038】
<比較例1>
マット加工が施されていない基材を用いた以外は実施例と同じ手順で粘着テープロールを作製した。
【0039】
<比較例2>
粘着テープにシリコーンを用いた市販のテープロールを準備した。
【0040】
<剥離力試験>
JIS−Z−0237の10.3に準じて、粘着テープの粘着層側を下向きにしてSUS板に固定した。粘着テープから上層に相当する部分のみを引き剥がし、引き剥がした上層に相当する部分と下層に相当する部分との角度が90°になるように引張試験機(島津製作所製AGS−X)にセットし、所定速度(300mm/min)で引き剥がすのに要する力の測定を行った。
【0041】
上記試験の結果、上層と下層との間の剥離に要する剥離力は、実施例:0.23N/10mmであった。なお、比較例2については、粘着テープロールからの巻き戻し時に上層と下層との間で剥離が生じたため、上記試験による測定が出来なかった。
【0042】
<低速巻戻し力試験>
JIS−Z−0237の11(低速巻き戻し力)に準じて、引張試験機(島津製作所製AGS−X)にテープをセットし、所定速度(300mm/min)で測定を行った。
【0043】
上記試験の結果、低速巻戻し力は、実施例:0.87N/10mm、比較例2:0.048N/10mmであった。
【0044】
<破断力試験>
JIS−Z−0237の10.3に準じて、粘着テープの粘着層側を上向きにし、基材側を下向きにしてSUS板に固定した。粘着テープの粘着層側に、標準テープ(株式会社寺岡製作所製アセテートクロス粘着テープ:布基材テープ)をつかみしろを残した状態で、2kgローラーで1往復圧着し、標準テープのつかみしろと粘着テープとの角度が90°になるように引張試験機(島津製作所製AGS−X)にセットし、所定速度(300mm/min)で引き剥がすのに要する力の測定を行った。
【0045】
上記試験の結果、下層が破断するとともに上層から下層が剥がれるのに要する破断力は、実施例において9.31N/10mmであった。
【0046】
<改ざん防止機能発現試験>
実施例、比較例1及び2の粘着テープロールについて、それぞれ3個ずつ、粘着テープロールから粘着テープを巻出した直後及び上記剥離力試験前後の粘着テープの状態を確認し、次の基準に基づき評価を行った。
+++:全ての粘着テープではっきりと層間剥離由来の文字が認識された。
++:全ての粘着テープでうっすら層間剥離由来の文字が確認された。
+:1以上の粘着テープでうっすら層間剥離由来の文字が確認された。
−:全く層間剥離由来の文字が確認されなかった。
【0047】
粘着テープロールから粘着テープを巻出した直後及び剥離力試験前後における改ざん防止機能の発現についての測定結果を以下の表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
上記試験及び表1の結果から分かるように、実施例は、基材にマット加工が施されているため、上層と下層との間の剥離に要する剥離力が比較例1における剥離力と比べて大きい。そのため、実施例に係る、例えば粘着テープロールの保管時などのように粘着テープロールから粘着テープを巻戻す前の粘着テープ及び粘着テープの巻戻し時における巻戻された部分の粘着テープでは、層間剥離由来の文字は確認されなかった。また、破断力試験において、上層と下層との間で剥離可能であることを確認できた。また、低速巻戻し力が大きくないため、ユーザーが巻戻し時に負担を感じることなく粘着テープを巻き戻せることを確認できた。
【0050】
上記剥離力試験及び表1の結果から、比較例1は、基材にマット加工が施されていないため、上層と下層との間の剥離に要する剥離力が実施例における剥離力と比べて小さい。そのため、粘着テープの巻戻し時における巻戻された部分の粘着テープでは、全ての粘着テープで層間剥離由来の文字がはっきりと確認された。
【0051】
表1の結果から、比較例2は、粘着テープロールから粘着テープを巻戻す前の一部の粘着テープで層間剥離由来の文字が確認できた。これにより、比較例2に係る粘着テープには、基材に随伴する層と被着体に残留する層との間の剥離力が弱い場合があり、意図された改ざん防止機能発現の前段階においても、基材に随伴する層と被着体に残留する層との間で剥離を生じ、改ざん防止機能が発現してしまう場合があることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の改ざん防止用接着テープを巻回した粘着テープロールは、被着体からテープを剥がしたことを確認可能な改ざん防止用粘着テープとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 改ざん防止用接着テープ
2 基材
3 第一着色層
4 第二着色層
5 粘着層
6 上層
7 下層
8 第三着色層
図1
図2
図3
図4