【実施例】
【0033】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0034】
<シール部材の原料および製造>
図3,
図4,
図6に示す配合の原料から、実施例1〜12のシール部材の皮膜および比較例4〜8のシール部材の皮膜を製造した。以下に、各原料の詳細を示す。
【0035】
図3,
図4,
図6に示す各「プレポリマー」は、
図7若しくは
図8に示す配合(重量比)の原料を以下の方法に従って反応させることで得られる。
【0036】
まず、1リットル容量のセパラブルフラスコにポリイソシアネートを図に示す量入れて、窒素を流しながらポリオールを攪拌しながら図に示す量添加する。内容物が均一になったことを確認後、触媒(ジブチルチンジラウレート(DBTDL)0.3g)を添加する。そして、1時間かけて80〜90℃になるように、ゆっくりと昇温する。目的の温度に昇温してから2時間後にイソシアネート基含有率をJIS Z1603−1:2007に基づく方法(ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法)に準拠して測定する。そして、プレポリマーA,Cでは、イソシアネート基含有率が、4.0〜5.0%の範囲内になっていることを確認する。また、プレポリマーBでは、イソシアネート基含有率が、2.0〜3.0%の範囲内になっていることを確認する。また、プレポリマーDでは、イソシアネート基含有率が、0.5〜1.0%の範囲内になっていることを確認する。また、プレポリマーEでは、イソシアネート基含有率が、0.3〜0.8%の範囲内になっていることを確認する。また、プレポリマーFでは、イソシアネート基含有率が、6.0〜7.0%の範囲内になっていることを確認する。また、プレポリマーGでは、イソシアネート基含有率が、0.5〜1.0%の範囲内になっていることを確認する。また、プレポリマーHでは、イソシアネート基含有率が、14.0〜15.0%の範囲内になっていることを確認する。そして、イソシアネート基含有率が、各プレポリマーに応じた範囲内になっていない場合には、反応時間を延長する。
【0037】
イソシアネート基含有率が、各プレポリマーに応じた範囲内になっていることを確認後、ビニルエーテル、アクリレート、アリルエーテルの少なくとも1つを図に示す量、ゆっくりと滴下し、2時間反応を行わせる。2時間経過後に、再度、上記方法に従ってイソシアネート基含有率を測定し、イソシアネート基含有率が0.5%以下になっていることを確認する。そして、イソシアネート基含有率が0.5%以下になっていることを条件として、図に示す各「プレポリマー」が得られる。
【0038】
なお、上述のようにして得られた「プレポリマーA」の理論分子量は4129であり、「プレポリマーB」の理論分子量は3992であり、「プレポリマーC」の理論分子量は4101であり、「プレポリマーD」の理論分子量は12609であり、「プレポリマーE」の理論分子量は24783であり、「プレポリマーF」の理論分子量は1609であり、「プレポリマーG」の理論分子量は36783であり、「プレポリマーH」の理論分子量は909である。
【0039】
・ポリオールa;ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:アクトコールD2000(Mw:2000)、三井化学(株)製
・ポリオールb;ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:アクトコールD1000(Mw:1000)、三井化学(株)製
・ポリオールc;ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:サンニックスPP−200(Mw:200)、三洋化成(株)製
・ポリオールd;ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:プレミノールS4013(Mw:12000)、旭硝子(株)製
・ポリオールe;ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:プレミノールS4318(Mw:18000)、旭硝子(株)製
・ポリイソシアネート;TDI、商品名:ルプラネートT−80(Mw:174.2)、BASF製
・ビニルエーテル;ヒドロキシブチルビニルエーテル(Mw:116.2)、日本カーバイド(株)製
・アリルエーテル;ヒドロキシエチルアリルエーテル(Mw:102.1)、日本乳化剤(株)製
・アクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート(Mw:130.1)、日本触媒(株)製
【0040】
また、上述のようにして得られた各「プレポリマー」100重量部に含まれるアリルエーテル基とビニルエーテル基とアクリレート基との少なくとも1つの全当量数を演算する。そして、演算された当量数に、
図3,
図4,
図6に示すエンチオール比(当量比)を乗じることで、原料として必要なチオールに含まれるチオール基の当量数が演算される。なお、
図3,
図4,
図6に示すチオールの配合比は、上記プレポリマー100重量部に対するモル数である。このため、チオール基の当量数が、チオールの配合比に応じた比率とされる。具体的には、例えば、チオール基の当量数Aである場合において、実施例1では、チオールCに対して、モル比100とされているため、チオールCのチオール基の当量数はAとされる。また、実施例5では、チオールAに対して、モル比50とされ、チオールBに対して、モル比50とされているため、チオールAのチオール基の当量数はA/2とされ、チオールBのチオール基の当量数はA/2とされる。そして、各チオールのチオール基の当量数と、各チオールの官能基数とに基づいて、各チオールのモル数が演算される。この演算されたモル数の各チオールと、上記プレポリマー100重量部とを計量し、80℃に加温した後に、混合撹拌する。
【0041】
・チオールA;官能基数2、ブタンジオールビスチオプロピオネート、商品名:BDTP(Mw:266.4)、淀化学(株)製
・チオールB;官能基数3、トリメチロールプロパントリス、商品名:TMMP(Mw:398.5)、SC有機化学(株)製
・チオールC;官能基数4、ペンタエリスリトールテトラキス、商品名:PEMP(Mw:488.6)、SC有機化学(株)製
・チオールD;官能基数6、ジペンタエリスリトールヘキサキス、商品名:DPMP(Mw:783.0)、SC有機化学(株)製
・チオールE;官能基数1、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート、商品名:EHMP(Mw:218.35)、SC有機化学(株)製
【0042】
なお、各ウレタンプレポリマーと反応が行われるチオール基の平均官能基数を、
図3,
図4,
図6の「平均官能基数」の欄に示す。また、各ウレタンプレポリマーのビニルエーテル基とアリルエーテル基とアクリレート基とのうちの1つの全当量数に対する全チオール基の全当量数の比率を、
図3,
図4,
図6の「エン/チオール比」の欄に示す。
【0043】
そして、
図3,
図4,
図6に示す配合比で混合された原料、つまり、混合されたプレポリマーとチオールとを、透過性の良い離型フィルムの上に、所定の膜厚で塗布する。次に、塗布された混合原料の上に、基体としての天然ゴム系の発泡体(イノアック製)、若しくは、EPDM系の発泡体(イノアック製)を圧着する。なお、EPDM系の発泡体の原料への密着面はプライマー処理されている。そして、その発泡体が圧着された混合原料に、離形フィルムの下方から紫外線を照射する。これにより、塗布された混合原料が硬化し、実施例1〜12のシール部材および比較例4〜8のシール部材が形成される。ちなみに、混合原料を硬化させる際の紫外線の照射量は、600mJ/cm
2(365nm積算光量)とされている。
【0044】
なお、比較例1のシール部材として、基体としての天然ゴム系の発泡体(イノアック製)、若しくは、EPDM系の発泡体(イノアック製)の一面に、薄膜状の水添スチレン系熱可塑性エラストマーを両面テープにより貼着したものを採用している。また、比較例2のシール部材として、基体としての天然ゴム系の発泡体(イノアック製)、若しくは、EPDM系の発泡体(イノアック製)の一面に、薄膜状のイソプレンゴム(非加硫ゴム)を両面テープにより貼着したものを採用している。また、比較例3のシール部材として、皮膜の形成されていない天然ゴム系の発泡体(イノアック製)、若しくは、EPDM系の発泡体(イノアック製)を採用している。また、比較例9では、連続気泡軟質ポリウレタン発泡体(イノアック製、密度28kg/m
3、セル数55個/25mm)に被膜を形成したシール部材を採用した。
【0045】
<シール部材及びシール部材の皮膜の物性評価>
実施例1〜12のシール部材、比較例1〜8のシール部材に対して、上述した器具10を用いて、止水性の評価を行なった。この評価において、50KPaの空気が供給された際に水漏れが無かった場合に、「○」と評価し、その評価結果を、
図3〜
図6の「止水評価」の欄に、基体の種類毎に示す。また、50KPa未満の空気が供給された際に水漏れがあった場合には、その際に供給された空気の圧力を、
図3〜
図6の「止水評価」の欄に、基体の種類毎に示す。
【0046】
また、皮膜のみに対して、JIS K 7312:1996に基づく方法に準拠して、圧縮永久歪(%)を測定した。その測定結果を、
図3〜
図6の「圧縮永久歪(%)」の欄に示す。
【0047】
以上の結果から、発泡体(基体)の表面に、アリルエーテル基とビニルエーテル基とアクリレート基との少なくとも1つを末端官能基として有するウレタンプレポリマーと、チオール基を有するポリチオールとを用いた原料でエンチオール反応によって皮膜を形成することで、シール部材の止水性を高くすることが可能であることが解る。
【0048】
具体的には、
図3及び
図4に示すように、実施例1〜12のシール部材では、上記ウレタンプレポリマーと上記ポリチオールとを用いた原料でエンチオール反応によって、発泡体(基体)の表面に皮膜が形成されている。そして、実施例1〜12のシール部材において、止水性の評価は、全て「○」とされており、実施例1〜12のシール部材の皮膜において、圧縮永久歪は、全て、15%以下とされている。一方、比較例1及び2のシール部材では、水添スチレン系熱可塑性エラストマー、若しくはイソプレンゴムが、皮膜として、発泡体(基体)の表面に、両面テープにより貼着されている。また、比較例3のシール部材では、皮膜の形成されていない発泡体(基体)のみとされている。そして、比較例1〜3のシール部材では、止水性の評価は、良好でなく、5KPaに空気が供給されるだけで、水漏れが発生している。また、比較例1のシール部材の皮膜では、圧縮永久歪は86%と、非常に高く、皮膜が圧縮された後に、歪みが大きく残存している。さらに、比較例2のシール部材の皮膜では、圧縮永久歪が測定不能であり、加熱して圧縮することで、皮膜が復元しない。このことから、上記ウレタンプレポリマーと上記ポリチオールとを用いた原料でエンチオール反応によって、発泡体(基体)の表面に皮膜を形成することで、シール部材の止水性を高くすることが可能であることが解る。
【0049】
さらに、実施例1〜12のシール部材では、ウレタンプレポリマーとポリチオールとを混合した混合原料に紫外線を照射するだけで、皮膜を形成することができる。一方、比較例1及び2のシール部材では、発泡体(基体)に皮膜を両面テープにより貼着する必要があり、製造工程が煩雑となる。また、実施例1〜12のシール部材では、製造時に、液状の原料と、発泡体(基体)の表面とが適度になじんだ状態で、原料が硬化するため、基体と皮膜との密着性が向上する。一方、比較例1及び2のシール部材では、両面テープによって発泡体(基体)と皮膜とが貼着されているため、継時的に、発泡体(基体)と皮膜とのズレが生じやすい。このように、発泡体(基体)と皮膜との密着性を考慮した場合においても、ウレタンプレポリマーとポリチオールとを用いた原料で発泡体(基体)の表面に皮膜が形成されたシール部材を採用することが好ましい。
【0050】
また、各ウレタンプレポリマーのビニルエーテル基とアリルエーテル基とアクリレート基との少なくとも1つの全当量数に対する全チオール基の全当量数の比率(エン/チオール比)は、高過ぎても、低過ぎても、止水性の評価が悪くなる。具体的には、実施例1〜12の全てのシール部材では、エン/チオール比は0.7〜2.5であり、止水性の評価は良好である。一方、比較例5のシール部材では、エン/チオール比は0.5であり、止水性の評価の評価は良好でない。また、比較例6のシール部材では、エン/チオール比は3であり、止水性の評価は良好でない。このことから、エン/チオール比は、0.7〜2.5であることが好ましい。
【0051】
また、皮膜の原料として配合されるポリチオールの平均官能基数は、低すぎると、シール部材としての性能が低下する。具体的には、実施例1〜12の全てのシール部材では、ポリチオールの平均官能基数は2以上であり、止水性の評価は良好であり、圧縮永久歪も15%以下となっている。一方、比較例4のシール部材では、ポリチオールの平均官能基数は1.8であり、止水性の評価は良好でなく、圧縮永久歪の測定時に、皮膜が復元しないため、圧縮永久歪を測定することができない。このことから、ポリチオールの平均官能基数は、2以上であることが好ましい。
【0052】
また、皮膜の原料として配合されるウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、高過ぎても、低過ぎても、シール部材としての性能が低下する。具体的には、実施例1〜12の全てのシール部材では、ウレタンプレポリマーの重量平均分子量は1609〜24783であり、止水性の評価は良好であり、圧縮永久歪も15%以下となっている。一方、比較例7のシール部材では、ウレタンプレポリマーの重量平均分子量は36783であり、比較例8のシール部材では、ウレタンプレポリマーの重量平均分子量は909である。そして、比較例7及び比較例8のシール部材で、止水性の評価は良好でない。また、比較例7のシール部材では、圧縮永久歪が25%である。また、比較例9では、止水性の評価が良好ではなく、圧縮量の少ない発泡体の部分から水漏れが確認できた。このことから、ウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、誤差を考慮して、1000〜30000であることが好ましい。