特許第6735698号(P6735698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735698
(24)【登録日】2020年7月16日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20200728BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20200728BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20200728BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20200728BHJP
   B60K 6/543 20071001ALI20200728BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20200728BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20200728BHJP
【FI】
   B60L15/20 JZHV
   B60K6/48
   B60K6/52
   B60K6/547
   B60K6/543
   B60W10/08 900
   B60W20/10
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-51664(P2017-51664)
(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公開番号】特開2018-157665(P2018-157665A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−046426(JP,A)
【文献】 特開2015−089700(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/068553(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
B60K 6/48
B60K 6/52
B60K 6/543
B60K 6/547
B60W 10/08
B60W 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル操作具の操作量を検出するアクセルセンサと、車両速度を検出する車速センサと、走行用の動力を出力する電動モータと、前記電動モータの回転速度を検出する回転センサと、前記電動モータの作動を制御する制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、前記電動モータの回転速度と出力トルクとの関係を示すデータが記憶された記憶部と、前記データと前記アクセルセンサの検出と前記回転センサの検出とに基づいてトルク指令値を設定するトルク設定部と、前記出力トルクが前記トルク指令値に達するように前記電動モータの作動を制御するトルク制御部とを備え、
前記記憶部には、車両の速度制限値に基づいて設定されたトルク制限値が記憶され、
前記制御ユニットには、前記車両速度が前記速度制限値に達していないときに前記トルク指令値が前記トルク制限値に達した場合は、前記車両速度が前記速度制限値に向けて上昇するように前記トルク制限値を低下させる制限値低下処理を行い、かつ、前記車両速度が前記速度制限値を超えた場合は、前記車両速度が前記速度制限値に向けて低下するように前記トルク制限値を上昇させる制限値上昇処理を行う制限値適正化処理部が備えられている作業車。
【請求項2】
前記制限値適正化処理部は、目標値を前記速度制限値とし、制御量を前記車両速度とする積分制御で前記制限値上昇処理を行う請求項1に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセル操作具の操作量を検出するアクセルセンサと、車両速度を検出する車速センサと、走行用の動力を出力する電動モータと、前記電動モータの回転速度を検出する回転センサと、前記電動モータの作動を制御する制御ユニットとを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車としては、例えば、制御ユニット(制御装置)に、車速に対する目標駆動トルクの特性を示すテーブル(トルクカーブ)が記憶された記憶部(記憶装置)と、テーブルとアクセルセンサ(ペダル操作量センサ)の検出と車速センサの検出(車速演算部で演算された車速)とに基づいてトルク指令値(目標駆動トルク)を設定するトルク設定部(トルク演算部)と、電動モータ(走行電動機)の出力トルクがトルク指令値に達するように電動モータの作動を制御するトルク制御部(走行用インバータ)とを備えたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−217797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、上記のような作業車においては、記憶部に、車両の速度制限値(最高車両速度)に基づいて設定されたトルク制限値が記憶されており、トルク設定部は、テーブルとアクセルセンサの検出と車速センサの検出とに基づいて設定するトルク指令値がトルク制限値を超える場合は、トルク指令値がトルク制限値を超えないようにトルク指令値をトルク制限値に固定することが考えられている。
トルク制限値は、平地での走行抵抗を基準にした速度制限値に基づいて設定されている。
これにより、作業車が平地で走行しているときに、トルク設定部によって設定されるトルク指令値がトルク制限値に達すると、このときのトルク制御部の制御作動によって得られる車両速度が速度制限値に一致又は略一致する。その結果、車両速度を速度制限値に保つことができる。
しかしながら、作業車が平地よりも走行抵抗が大きい上り坂などで走行しているときは、車両速度が速度制限値に達していなくても、トルク設定部によって設定されるトルク指令値がトルク制限値に達することがある。このような場合、走行抵抗が大きいほど、このときのトルク制御部の制御作動によって得られる車両速度が速度制限値よりも遅くなる。
逆に、作業車が平地よりも走行抵抗が小さい下り坂などで走行しているときは、トルク設定部によって設定されるトルク指令値がトルク制限値に達していなくても、車両速度が速度制限値を超えることがある。このような場合、走行抵抗が小さいほど、このときのトルク制御部の制御作動によって得られる車両速度が速度制限値よりも速くなる。
【0005】
つまり、走行抵抗の変化にかかわらず、車両速度を速度制限値に簡単に保てるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、
本発明に係る作業車は、アクセル操作具の操作量を検出するアクセルセンサと、車両速度を検出する車速センサと、走行用の動力を出力する電動モータと、前記電動モータの回転速度を検出する回転センサと、前記電動モータの作動を制御する制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、前記電動モータの回転速度と出力トルクとの関係を示すデータが記憶された記憶部と、前記データと前記アクセルセンサの検出と前記回転センサの検出とに基づいてトルク指令値を設定するトルク設定部と、前記出力トルクが前記トルク指令値に達するように前記電動モータの作動を制御するトルク制御部とを備え、
前記記憶部には、車両の速度制限値に基づいて設定されたトルク制限値が記憶され、
前記制御ユニットには、前記車両速度が前記速度制限値に達していないときに前記トルク指令値が前記トルク制限値に達した場合は、前記車両速度が前記速度制限値に向けて上昇するように前記トルク制限値を低下させる制限値低下処理を行い、かつ、前記車両速度が前記速度制限値を超えた場合は、前記車両速度が前記速度制限値に向けて低下するように前記トルク制限値を上昇させる制限値上昇処理を行う制限値適正化処理部が備えられている。
【0007】
この手段によると、例えば、作業車が走行抵抗の大きい上り坂などで走行している場合において、車両速度が速度制限値(最高車両速度)に達する前に、トルク設定部によって設定されるトルク指令値がトルク制限値に達したときは、制限値適正化処理部が制限値低下処理を行うことでトルク制限値とともにトルク指令値が低下する。これにより、走行抵抗が大きい場合であっても、トルク制御部の制御作動によって車両速度を速度制限値に向けて上昇させることができる。そして、車両速度が速度制限値に達すると、制限値適正化処理部が制限値低下処理を終了し、この終了時点でのトルク指令値に基づくトルク制御部の制御作動によって車両速度が速度制限値に維持される。
逆に、作業車が走行抵抗の小さい下り坂などで走行している場合において、車両速度が速度制限値を超えたときは、制限値適正化処理部が制限値上昇処理を行うことでトルク制限値とともにトルク指令値が上昇する。これにより、走行抵抗が小さい場合は、トルク制御部の制御作動によって車両速度を速度制限値に向けて低下させることができる。そして、車両速度が速度制限値に達すると、制限値適正化処理部が制限値上昇処理を終了し、この終了時点でのトルク指令値に基づくトルク制御部の制御作動によって車両速度が速度制限値に維持される。
つまり、制限値適正化処理部の制御作動により、走行抵抗の変化に応じてトルク制限値を適正に調整することができ、この調整により、走行抵抗の変化にかかわらず、車両速度を速度制限値に簡単に保つことができる。
【0008】
本発明をより好適にするための手段の一つとして、
前記制限値適正化処理部は、目標値を前記速度制限値とし、制御量を前記車両速度とする積分制御で前記制限値上昇処理を行う。
【0009】
この手段によると、制限値上昇処理において生じる残留偏差を無くすことができる。
その結果、作業車が走行抵抗の小さい下り坂などで走行しているときに、車両速度をより精度良く速度制限値に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】多目的作業車の左側面図である。
図2】多目的作業車の平面図である。
図3】メインスイッチ及び選択スイッチなどの配置を示すステアリングホイール付近の背面図である。
図4】多目的作業車における制御構成の一部を示すブロック図である。
図5】多目的作業車における電動モータの回転速度と出力トルクと速度制限値に基づくトルク制限値との関係を示すトルクマップである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を、作業車の一例であるパラレルハイブリッド仕様の多目的作業車に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、図1に記載した符号Fの矢印が指し示す方向が多目的作業車の前側であり、符号Uの矢印が指し示す方向が多目的作業車の上側である。
又、図2に記載した符号Fの矢印が指し示す方向が多目的作業車の前側であり、符号Rの矢印が指し示す方向が多目的作業車の右側である。
【0012】
図1〜2に示すように、本実施形態で例示する多目的作業車は、車体の骨組みを形成する車体フレーム1、走行用の動力を出力する動力源として車体の前後中央側に配置されたガソリンエンジン(以下、エンジンと称する)2とモータジェネレータ(電動モータの一例)3、車体の前後中央側に配置された二人乗り用の搭乗部4、車体の右側部に配置された燃料タンク5、左右の前輪6Aと左右の後輪6Bとを有するホイール式の走行装置6、車体の後部に昇降揺動可能に取り付けられた荷台7、及び、揺動開閉式のボンネット8、などを備えている。エンジン2とモータジェネレータ3とは、電磁クラッチ(図示せず)などを介して断続可能に連動連結されている。
【0013】
動力源からの動力は、遠心クラッチ9とベルト式無段変速装置10とを介してギア式変速装置11に伝達される。そして、ギア式変速装置11から取り出された前輪駆動用の動力が、第1伝動軸12、前輪用差動装置13、及び、左右の第2伝動軸14、などを介して左右の前輪6Aに伝達される。又、ギア式変速装置11から取り出された後輪駆動用の動力が、左右の第3伝動軸15などを介して左右の後輪6Bに伝達される。
【0014】
図示は省略するが、ギア式変速装置11は、そのケーシング内に、変速機構、後輪用差動機構、及び、左右のブレーキ、などを備えている。変速機構は、動力源からの動力を前進動力と後進動力とに切り替え、かつ、前進動力を高低2段に切り替える。
【0015】
図1〜4に示すように、搭乗部4は、左側に配置された運転席16、右側に配置された助手席17、運転席側の足元部に配置されたアクセルペダル(アクセル操作具の一例)18、運転席16の前方に配置された前輪操舵用のステアリングホイール19、ステアリングホイール19の右側に隣接して配置された前後揺動式の変速レバー20、各種の情報を表示する表示装置21、左右のドア22、及び、保護フレーム23、などを備えている。変速レバー20は、中立位置N、中立位置Nよりも車体前側の低速前進位置L、低速前進位置Lよりも車体前側の高速前進位置H、及び、中立位置Nよりも車体後側の後進位置R、に切り替え保持可能に構成されている。変速レバー20は、コントロールケーブル(図示せず)などを介して変速機構に操作連係されている。変速機構は、変速レバー20の操作に基づいて、変速レバー20の操作位置に応じた作動状態に切り替わる。
【0016】
図2及び図4に示すように、多目的作業車は、アクセルペダル18の操作量を検出するアクセルセンサ24、車両速度を検出する車速センサ25、モータジェネレータ3の回転速度を検出する回転センサ26、モータジェネレータ3などの作動を制御する制御ユニット27、及び、モータジェネレータ3からの電力で充電されるバッテリ28、を備えている。
【0017】
制御ユニット27は、モータジェネレータ3及び表示装置21などの各電装品に、CAN(Controller Area Network)などの車内通信網及び電力線などを介して通信可能又は送電可能に接続されている。バッテリ28は、モータジェネレータ3及び制御ユニット27などの各電装品に変換ユニット29など介して接続されるリチウムイオン電池である。
【0018】
図示は省略するが、バッテリ28は、その電圧、電流、温度、などを監視し、異常を検知した場合に充放電の制限や停止によるバッテリ28の保護などを行う管理システムなどを備えている。モータジェネレータ3は、バッテリ28から供給される電力で走行モータとして機能し、エンジン2からの動力で発電機として機能する。変換ユニット29は、インバータ、AC−DCコンバータ、及び、DC−DCコンバータ、などを備えている。
【0019】
図3〜4に示すように、多目的作業車は、制御ユニット27などの各電装品への通電を断続するキー操作式のメインスイッチ30を備えている。メインスイッチ30は、「OFF」位置と「ON」位置と「START」位置とに操作可能で、かつ、「OFF」位置と「ON」位置とに位置保持可能で、「START」位置から「ON」位置に復帰付勢されている。メインスイッチ30は、「OFF」位置に人為操作されると、バッテリ28から各電装品への通電を遮断する遮断状態に切り替わる。メインスイッチ30は、「ON」位置に人為操作されると、バッテリ28から各電装品に通電する接続状態に切り替わる。メインスイッチ30は、「START」位置に人為操作されると、接続状態を維持しながら制御ユニット27にエンジン2の始動を指令する。
【0020】
図示は省略するが、制御ユニット27は、メインスイッチ30からのエンジン始動指令を、エンジン用の電子制御ユニット(以下、エンジンECUと称する)に送信する。エンジンECUは、エンジン始動指令に基づいて、スタータモータなどを作動させてエンジン2を始動させる。
【0021】
図3〜4に示すように、制御ユニット27は、モータジェネレータ3及び電磁クラッチなどの作動を制御する作動制御部27A、メインスイッチ30の操作位置を判別する判別部27B、及び、走行用の駆動モードを切り替える駆動切替部27C、などを備えている。制御ユニット27は、走行用の駆動モードとして、モータジェネレータ3からの動力のみで走行装置6を駆動する電動モード、エンジン2からの動力のみで走行装置6を駆動するエンジン駆動モード、及び、モータジェネレータ3からの動力とエンジン2からの動力とを併用して走行装置6を駆動するハイブリッド駆動モード、を備えている。
【0022】
駆動切替部27Cは、判別部27Bからの情報に基づいて、メインスイッチ30の「OFF」位置から「ON」位置への切り替えを検知すると、走行用の駆動モードを電動モードに切り替える。駆動切替部27Cは、判別部27Bからの情報に基づいて、メインスイッチ30の「ON」位置から「START」位置への切り替えを検知すると、搭乗部4に備えた選択スイッチ31の人為操作で選択された駆動モードに切り替える。選択スイッチ31は、エンジン駆動モードを選択する第1状態と、ハイブリッド駆動モードを選択する第2状態とに切り替えられる。駆動切替部27Cは、選択スイッチ31が第1状態であると走行用の駆動モードをエンジン駆動モードに切り替える。駆動切替部27Cは、選択スイッチ31が第2状態であると走行用の駆動モードをハイブリッド駆動モードに切り替える。
これにより、運転者は、メインスイッチ30を「OFF」位置から「ON」位置に操作することで、走行用の駆動モードとして電動モードを選択することができ、エンジン2を稼働させることなく車体を走行させることができる。そして、運転者は、メインスイッチ30を「ON」位置から「START」位置に操作してエンジン2を稼働させた状態では、選択スイッチ31の操作によって、走行用の駆動モードをエンジン駆動モードとハイブリッド駆動モードとに切り替えることができる。
【0023】
作動制御部27Aは、電動モードが選択された場合、電磁クラッチを遮断状態に切り替えてエンジン2とモータジェネレータ3との連動を遮断することでモータジェネレータ3を走行モータとして使用する。そして、作動制御部27Aは、アクセルセンサ24の出力及び電動用の制御プログラムなどに基づいて変換ユニット29のインバータの作動を制御する。インバータは、作動制御部27Aの制御作動に基づいて、アクセルペダル18の操作量などに応じた駆動制御電流(例えばPWM信号)をモータジェネレータ3に出力する。
【0024】
作動制御部27Aは、エンジン駆動モードが選択された場合、電磁クラッチを接続状態に切り替えて、モータジェネレータ3をエンジン2からの動力で発電する発電機として使用する。そして、作動制御部27Aは、アクセルセンサ24の出力をエンジンECUに送信する。エンジンECUは、アクセルセンサ24の出力及びエンジン駆動用の制御プログラムなどに基づいてエンジン2の出力回転数を制御する。
【0025】
作動制御部27Aは、ハイブリッド駆動モードが選択された場合、アクセルセンサ24の出力をエンジンECUに送信し、かつ、アクセルセンサ24の出力及びハイブリッド駆動用の制御プログラムなどに基づいて、電磁クラッチ及び変換ユニット29のインバータなどの作動を制御する。エンジンECUは、アクセルセンサ24の出力及びエンジン駆動用の制御プログラムなどに基づいてエンジン2の出力回転数を制御する。インバータは、アクセルセンサ24の出力及びハイブリッド駆動用の制御プログラムなどに基づいて、要求されるアシスト力などに応じた駆動制御電流(例えばPWM信号)をモータジェネレータ3に出力する。
【0026】
つまり、上記の構成により、運転者は、選択した走行用の駆動モードにかかわらず、アクセルペダル18の踏み込み操作によって車速を調節することができる。
【0027】
アクセルセンサ24には、回転式のポテンショメータなどを採用することができる。車速センサ25及び回転センサ26には、電磁ピックアップ式などを採用することができる。
【0028】
図4〜5に示すように、制御ユニット27は、モータジェネレータ3の回転速度と出力トルクとの関係を示すトルクマップ(データの一例)が記憶された記憶部27D、電動モードにおいてトルクマップとアクセルセンサ24の検出と回転センサ26の検出とに基づいてトルク指令値を設定するトルク設定部27E、及び、電動モードにおいて出力トルクがトルク指令値に達するようにモータジェネレータ3の作動を制御するトルク制御部27F、を備えている。記憶部27Dには、車両の速度制限値(最高車両速度)に基づいて設定されたトルク制限値(後述する第2トルク制限値Te)が記憶されている。記憶部27Dには、EEPROMなどの不揮発性メモリが採用されている。
【0029】
図5に示すトルクマップにおいて、横軸Xはモータジェネレータ3の回転速度を示し、縦軸Yはモータジェネレータ3の出力トルクを示している。トルクマップにおける横軸Xから上側の領域は力行領域であり、横軸Xから下側の領域は回生領域である。トルクマップにおける上側の横線部分は、採用するモータジェネレータ3で決まるトルク上限値Taを示している。トルクマップにおける下側の横線部分は、採用するモータジェネレータ3で決まるトルク下限値Tbを示している。トルクマップにおける低速側の斜線部分は、低速時の走行安定性を確保するためのトルク下限値Tcを示している。トルクマップにおける上側の曲線部分は、電流制限値に基づく第1トルク制限値Tdを示している。トルクマップにおける高速側の斜線部分は、速度制限値に基づく第2トルク制限値Teを示している。第2トルク制限値Teは、基本的に、多目的作業車が電動モードで平地を走行している場合において、運転者がアクセルペダル18の操作量を最大にしたときに、車両速度が速度制限値に維持されるように設定されている。
【0030】
図4〜5に示すように、制御ユニット27は、車速センサ25の検出などに基づいて第2トルク制限値Teを適正に調整する制限値適正化処理部27Gを備えている。制限値適正化処理部27Gは、電動モードにおいて、車両速度が速度制限値に達していないときにトルク指令値が第2トルク制限値Teに達した場合は、車両速度が速度制限値に向けて上昇するように第2トルク制限値Teを低下させる制限値低下処理を行い、かつ、車両速度が速度制限値を超えた場合は、車両速度が速度制限値に向けて低下するように第2トルク制限値Teを上昇させる制限値上昇処理を行う。
この構成により、例えば、多目的作業車が電動モードで走行抵抗の大きい上り坂などを走行している場合において、車両速度が速度制限値に達する前に、トルク設定部27Eによって設定されるトルク指令値が第2トルク制限値Teに達したときは、制限値適正化処理部27Gが制限値低下処理を行うことで第2トルク制限値Teとともにトルク指令値が低下する(図5のトルクマップにおいて第2トルク制限値Teを示す斜線部分の横軸Xとの交点Pが右側にずれる)。これにより、走行抵抗が大きい場合であっても、トルク制御部27Fの制御作動によって車両速度を速度制限値に向けて上昇させることができる。そして、車両速度が速度制限値に達すると、制限値適正化処理部27Gが制限値低下処理を終了し、この終了時点でのトルク指令値に基づくトルク制御部27Fの制御作動によって車両速度が速度制限値に維持される。
逆に、多目的作業車が電動モードで走行抵抗の小さい下り坂などを走行している場合において、車両速度が速度制限値を超えたときは、制限値適正化処理部27Gが制限値上昇処理を行うことで第2トルク制限値Teとともにトルク指令値が上昇する(図5のトルクマップにおいて第2トルク制限値Teを示す斜線部分の横軸Xとの交点Pが左側にずれる)。これにより、走行抵抗が小さい場合は、トルク制御部27Fの制御作動によって車両速度を速度制限値に向けて低下させることができる。そして、車両速度が速度制限値に達すると、制限値適正化処理部27Gが制限値上昇処理を終了し、この終了時点でのトルク指令値に基づくトルク制御部27Fの制御作動によって車両速度が速度制限値に維持される。
つまり、制限値適正化処理部27Gの制御作動により、走行抵抗の変化に応じて第2トルク制限値Teを適正に調整することができ、この調整により、走行抵抗の変化にかかわらず、車両速度を速度制限値に簡単に保つことができる。
【0031】
制限値適正化処理部27Gは、目標値を速度制限値とし、制御量を車両速度とする積分制御(I制御)で制限値上昇処理を行う。
これにより、制限値上昇処理において生じる残留偏差を無くすことができる。
その結果、多目的作業車が走行抵抗の小さい下り坂などで走行しているときに、車両速度をより精度良く速度制限値に保つことができる。
【0032】
〔別実施形態〕
本発明は、上記の実施形態で例示した構成に限定されるものではなく、以下、本発明に関する代表的な別実施形態を例示する。
【0033】
〔1〕作業車の構成は種々の変更が可能である。
作業車は、例えば、左右の後輪6Bに代えて左右のクローラを有するセミクローラ式の走行装置6を備えていてもよい。
作業車は、例えば、左右の前輪6A及び左右の後輪6Bに代えて左右のクローラを有するフルクローラ式の走行装置6を備えていてもよい。
作業車は、例えば、ガソリンエンジン2に代えてコモンレールシステムを有するディーゼルエンジンを備えたハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
作業車は、例えば、エンジン2を備えずに電動モータ(モータジェネレータを含む)3のみを備える電動仕様に構成されていてもよい。
作業車は、例えば、アクセル操作具18としてアクセルペダルに代えて定速設定用のアクセルレバーを備えていてもよい。
作業車は、例えば、アクセル操作具18としてアクセルペダルと定速設定用のアクセルレバーとを備えていてもよい。
【0034】
〔2〕電動モータ3は、発電機としての機能を備えていない走行専用のモータであってもよい。又、電動モータ3はインホイール式であってもよい。
【0035】
〔3〕記憶部27Dには、電動モータ3の回転速度と出力トルクとの関係を示すデータとしてトルクマップの代わりに関係式が記憶されていてもよい。
【0036】
〔4〕制限値適正化処理部27Gは、積分制御(I制御)で前述した制限値低下処理と制限値上昇処理とを行うように構成されていてもよい。
【0037】
〔5〕制限値適正化処理部27Gは、比例制御(P制御)と積分制御(I制御)とで少なくとも前述した制限値低下処理と制限値上昇処理とのいずれか一方を行うように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、アクセル操作具の操作量を検出するアクセルセンサと、車両速度を検出する車速センサと、走行用の動力を出力する電動モータと、前記電動モータの回転速度を検出する回転センサと、前記電動モータの作動を制御する制御ユニットとを備えた多目的作業車、トラクタ、及び、乗用草刈機、などの作業車に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
3 電動モータ
18 アクセル操作具
24 アクセルセンサ
25 車速センサ
26 回転センサ
27 制御ユニット
27D 記憶部
27E トルク設定部
27F トルク制御部
27G 制限値適正化処理部
Te トルク制限値
図1
図2
図3
図4
図5