(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記揺動操作体は、前記ボス部への装着状態で、前記ボス部の開口端部に当接する当接面を備え、前記係止片部分は、前記当接面から前記ボス部の開口端部よりも前記ボス部の基部側へ突出し、かつ前記ボス部の周方向複数箇所に設けられた補強リブ同士の間隔よりも狭い周方向幅に形成されている請求項1記載の組付用治具。
前記操作部は、前記揺動支点を境にして、前記ガイド孔部が存在する側とは反対側に設けられ、前記操作部同士が近接する側への握り操作にともなって前記ガイド孔部が拡径方向へ揺動するように構成されている請求項1〜3のいずれか一項記載の組付用治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構造によれば、動力伝達軸の挿入に際して、組付用治具に備えた筒状部が動力伝達軸の案内を行うことができる。そのため、開口部に対する動力伝達軸の挿入姿勢が適正状態から変化することを抑制し、開口部の内周側に装着されているオイルシールが動力伝達軸に引っかかって損傷する虞を回避し易い状態で挿入し得る点で有用なものである。
しかしながら、この構造のものでは、組付用治具をハウジングの開口部や動力伝達軸から取り外す際に、次のような煩雑な操作を要する点で改善の余地がある。
つまり、この組付用治具は、オイルシールの内周側に挿入した状態で装着される筒状部を備え、この筒状部によって動力伝達軸の挿入を案内している。このため、開口部に対する動力伝達軸の挿入が完了する前に、筒状部をオイルシールの内周面に接触させた挿入位置から抜き出すように、動力伝達軸の軸方向に沿い、ハウジングの開口部端から離れる方向に移動させる必要がある。したがって、組付用治具を取り外す際には、動力伝達軸のうちで筒状部に挿入された軸部分よりも軸径の大きい部分と、ハウジングの開口部端との間に、筒状部の軸線方向長さ以上の間隔が存在する状態で、組付用治具をハウジングの開口部端から離れる側に移動させる。そして、その後に、組付用治具の把手部を引っ張ると、筒状部に形成してあるほぼ90度の開口を有したスリット部を介して、筒状部を動力伝達軸の径方向外側へ外すことができる。
【0005】
このように、組付用治具を取り外す際には、組付用治具を動力伝達軸の径方向外側へ移動させる前に、組付用治具を動力伝達軸の軸線方向に沿ってハウジングの開口部端から離れる側に移動させる操作が必要になる。この動力伝達軸の軸線方向に沿っての組付用治具自体の移動によってオイルシールを損傷することがないように、気を配りながらの操作が必要である。加えて、組付用治具に備えた筒状部がオイルシールの存在位置から外れた状態での、組付用治具を動力伝達軸の径方向外側へ移動させる操作によって、動力伝達軸が挿入位置から外れたり、動力伝達軸が姿勢変化してオイルシールを損傷することがないように気を配りながらの操作が必要である。
【0006】
本発明は、ハウジングの開口部や動力伝達軸に対する脱着操作が容易な組付用治具、及びその組付用治具を用いた軸組付方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、動力伝達軸を挿抜可能な軸装着用開口部に対して、装着及び離脱可能に構成された組付用治具であって、
共通の揺動支点周りで揺動自在に枢支連結された一対の揺動操作体を備え、前記軸装着用開口部のボス部外周面を抱き込み可能な係止片部分と、前記軸装着用開口部に挿入される前記動力伝達軸の外周面を抱き込み状態に仮保持可能なガイド孔部と、前記ガイド孔部を径方向で拡縮操作可能な操作部と、が
前記揺動操作体のそれぞれに振り分けられて備えられたものである。
【0008】
本発明によれば、組付用治具は、軸装着用開口部のボス部外周面を抱き込み可能な係止片部分を備えているので、軸装着用開口部の内周面側ではなく、軸装着用開口部を備えるボス部の外周面側に組付用治具を装着することができる。それでいて、組付用治具には、動力伝達軸の外周面を抱き込み状態に仮保持可能なガイド孔部と、ガイド孔部自体を径方向で拡縮操作可能な操作部とが備えられている。これによって、軸装着用開口部のボス部外周面を抱き込み可能な係止片部分を備えた組付用治具は、動力伝達軸の軸線方向での移動操作を要することなく脱着可能である。また、操作部の操作によって、ガイド孔部自体を径方向で拡縮操作することができる。
したがって、開口部に対する動力伝達軸の挿入が完了する前の組付用治具の取り外しに際して、組付用治具を動力伝達軸の軸線方向に沿って移動させるような煩わしい作業を要することなく、簡便な操作で軸装着用開口部や動力伝達軸に対する組付用治具の脱着操作を行える利点がある。
【0009】
【0010】
また、本発明によれば、係止片部分と、ガイド孔部と、操作部とが、揺動自在な一対の揺動操作体のそれぞれに振り分けられた状態で、備えられているので、揺動操作体の操作に伴って係止片部分による軸装着用開口部のボス部外周面を抱き込む脱着操作や、ガイド孔部による動力伝達軸の外周面を抱き込む脱着操作を、同時的に単一動作で簡単に行うことができる。
【0011】
上記構成において、前記揺動操作体は、前記ボス部への装着状態で、前記ボス部の開口端部に当接する当接面を備え、前記係止片部分は、前記当接面から前記ボス部の開口端部よりも前記ボス部の基部側へ突出し、かつ前記ボス部の周方向複数箇所に設けられた補強リブ同士の間隔よりも狭い周方向幅に形成されていると好適である。
【0012】
本構成によれば、揺動操作体に、ボス部の開口端部に当接する当接面が備えられ、その当接面からボス部の開口端部よりもボス部の基部側へ突出する係止片部分が備えられているので、ボス部に対して組付用治具を所定位置にセッティングし易い。また、係止片部分が補強リブ同士の間隔よりも狭い周方向幅に形成されているので、当接面をボス部の開口端部に当接させた状態におけるボス部外周面に対する係止片部分の係合代を、補強リブの存在によって制限されることなく十分に確保して、ボス部の外周面に安定良く係止させ、セッティングすることができる。
そして組付用治具を装着した後では、係止片部分が軸装着用開口部の内側には残ることなくボス部の外側に位置し、揺動操作体のうちの、当接面を構成する部分だけがボス部の開口端部に残る状態で、動力伝達軸の案内を行うことができる。これによって、動力伝達軸をできるだけ開口部の内奥側へ挿入し得る位置まで案内して、動力伝達軸が挿入完了に近い安定した位置に達してから組付用治具を取り外すことができる。
【0013】
上記構成において、前記ガイド孔部は、前記動力伝達軸を径方向の外方側から挟み込む一対の前記揺動操作体同士の対向辺部分に形成されていると好適である。
【0014】
本構成によれば、ガイド孔部は揺動操作体同士の対向辺部分に形成されているので、揺動操作体自体を利用して簡単な構造でガイド孔部を形成することができる。
【0015】
上記構成において、前記操作部は、前記揺動支点を境にして、前記ガイド孔部が存在する側とは反対側に設けられ、前記操作部同士が近接する側への握り操作にともなって前記ガイド孔部が拡径方向へ揺動するように構成されていると好適である。
【0016】
本構成によれば、操作部は、揺動支点を境にして、ガイド孔部が存在する側とは反対側に設けられているので、操作部同士が近接する側への握り操作による簡単な操作でガイド孔部の拡縮操作を行うことができる。
【0017】
本発明における軸組付方法は、
軸装着用開口部のボス部外周面を抱き込み可能な係止片部分、及び前記軸装着用開口部に挿入される動力伝達軸の外周面を抱き込み状態に仮保持可能なガイド孔部を備えた組付用治具を、前記軸装着用開口部に対して前記動力伝達軸の挿入前に、前記軸装着用開口部のボス部外周に装着する治具装着工程と、前記組付用治具の前記ボス部への装着状態で前記軸装着用開口部の前面に位置する前記ガイド孔部に前記動力伝達軸を挿入する仮保持工程と、前記組付用治具の操作部を操作して前記ガイド孔部を
、前記係止片部分と同時に拡径方向に拡開する治具外し工程と、前記組付用治具が取り外された後に前記動力伝達軸を最終装着位置まで挿入する嵌め込み工程と、を有したものである。
【0018】
本構成によれば、治具装着工程では、組付用治具を装着する対象を軸装着用開口部のボス部外周とし、そのボス部外周に対して組付用治具を装着している。そして仮保持工程では軸装着用開口部の前面に位置するガイド孔部で、軸装着用開口部に挿入される動力伝達軸を案内し、治具外し工程では、ガイド孔部を拡径方向に拡開することで組付用治具の取り外しを可能にしている。嵌め込み工程では、組付用治具が取り外された後の軸装着用開口部へ向けて、最終装着位置まで動力伝達軸を挿入することによって軸組付けが完了する。
したがって、軸装着用開口部に組付用治具の装着、並びに、軸装着用開口部や動力伝達軸に対する組付用治具の取り外しを、組付用治具の軸線方向移動などの操作を要することなく簡便に行うことができ、軸組付け作業の全般を容易に行い易くなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用した多目的車両(車両の一例)の作業走行時における前進側の進行方向(
図1,2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図1,2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2における矢印L参照)が「左」である。
【0021】
〔全体構成〕
図1、
図2に示される多目的車両は、荷物の運搬やレクリエーション等の多目的な用途に用いられるものである。この多目的車両には、走行機体の骨組みを形成する車体フレーム1の前部に操向可能な左右一対の前輪1F,1Fが支持され、車体フレーム1の後部には操向不能な左右一対の後輪1R,1Rが支持されている。これらの前輪1F,1F及び後輪1R,1Rには、後述する走行用出力装置から駆動力が伝達可能に構成されている。これによって、多目的作業車は、四輪走行式の四輪駆動車に構成されている。
【0022】
走行機体の前後方向での中間部には、ステアリングホイール11等の操縦操作具、及び運転座席12を備えた運転部10が設けられている。そして、この運転部10を囲むように、ステアリングホイール11の前方側から運転座席12の後方側にわたって、側面視で運転座席12に搭座する運転者の頭上を覆うように保護フレーム13が備えられている。
【0023】
運転部10の後方には、後端側を揺動支点としてダンプ作動する荷台15が配備されており、運転部10と荷台15との間には、運転部10と荷台15との間を仕切る(運転部10の後壁を構成する)仕切部材14が配設されている。荷台15の下方には、水冷式のガソリンエンジン(以下、「エンジン30」と略称する)等を備える原動部3が設けられている。
【0024】
走行機体の機体前部には、運転部10の前方に位置するボンネット2が設けられている。このボンネット2は、上部に後方側を揺動支点として揺動開閉可能な開閉カバー20を備えている。内部のボンネット内空間には、前記原動部3に配置されているエンジン30を冷却するためのラジエータ21等が配置されている。
【0025】
〔原動部〕
原動部3には、前述したエンジン30、ギヤ式変速機構を内装したハウジングに相当するミッションケース31、及びエンジン30の出力軸30aとミッションケース31の入力軸31aとにわたって巻回されたベルト式無段変速機構32、等が備えられている。これによって、エンジン30から出力される動力が、ベルト式無段変速機構32を介してミッションケース31内のギヤ式変速機構に伝達され、その変速された後に動力が、後輪駆動軸16(動力伝達軸に相当する)を介して、後輪1Rに伝達される。
また、ミッションケース31内で変速された動力は、ミッションケース31の前部から、動力取出軸31b及び前輪伝動軸17を介して前輪駆動軸18にも伝達される。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、ミッションケース31は、長手方向が機体前後方向に沿った状態に配置され、機体前後方向に長く、上下方向での高さ寸法が低い形状に設計されている。
このミッションケース31の後部側における左右両側には、後輪1Rへ駆動力を伝達する後輪駆動軸16を装着するための軸装着用開口部33が設けられている。また、ミッションケース31の前部側における下部前面には、前輪伝動軸17に連結される動力取出軸31bが、前方へ向けて突出されている。
【0027】
軸装着用開口部33は、
図5乃至
図8に示されるように、ミッションケース31内のデフ機構35に対して、後輪駆動軸16を連結するために、ミッションケース31の左右両側に形成されている。
この軸装着用開口部33の内部には、デフ機構35のケース軸部35bを内嵌させて保持する軸受ベアリング34が設けられている。そして、その軸受ベアリング34よりも、ミッションケース31の外側寄りの箇所における軸装着用開口部33の内部にオイルシール36が設けられている。このオイルシール36は、後輪駆動軸16の外周面に接触してミッションケース31の外部からミッションケース31の内部への雨水や泥土の浸入や、ミッションケース31内の作動油が外部へ漏れ出すことを抑制するためのものである。
【0028】
デフ機構35は、デフケース35aの内部にベベルギヤ35cを備えていて、そのベベルギヤ35cのうち、前記軸装着用開口部33に対向する位置のベベルギヤ35cの軸部にスプライン孔35dが形成されている。後輪駆動軸16の外周部で挿入側先端部には、前記ベベルギヤ35cの軸部内周側に形成されたスプライン孔35dに対して係入可能なスプライン溝16aが形成されている。
したがって、後輪駆動軸16を軸装着用開口部33の内部に差し込むと、その先端部のスプライン溝16aがベベルギヤ35cのスプライン孔35dに係入して、デフ機構35から後輪駆動軸16への動力伝達が可能となる。
【0029】
後輪駆動軸16を挿抜可能な軸装着用開口部33は、ミッションケース31の後部側で左右両側に突出したボス部37の内周側に形成されている。ボス部37の外周面には、
図2に示すように、外周面の周方向複数箇所からミッションケース31の左右側面に沿って放射方向に複数本の補強リブ37aが、ボス部37と一体に形成されている。
【0030】
〔組付用治具〕
動力伝達軸としての後輪駆動軸16を軸装着用開口部33に装着する際に用いられる組付用治具4は次のように構成されている。
図3及び
図4に示すように、組付用治具4は、共通の枢支軸40によって枢支連結された一対の揺動操作体4A,4Bを備えている。揺動操作体4A,4Bのそれぞれは、前記枢支軸40の軸心を揺動支点p1として、その揺動支点p1周りで相対揺動自在に構成されている。
【0031】
揺動操作体4A,4Bのそれぞれは、軸装着用開口部33が形成されたボス部37の開口端部に対する板状の当接面41と、当接面41からボス部37の開口端部よりもボス部37の基部側へ突出する係止片部分42とを備えている。
この揺動操作体4A,4Bには、軸装着用開口部33に挿入される後輪駆動軸16の外周面を抱き込み状態に仮保持可能なガイド孔部43と、ガイド孔部43を径方向で拡縮操作可能な操作部44と、が一体に形成されている。
【0032】
係止片部分42は、
図3及び
図4の図中で上方に図示した一方の揺動操作体4Aの上縁近く位置と、同図中で下方に図示した他方の揺動操作体4Bの下縁近く位置とに設けてある。したがって、ボス部37の開口端部よりもボス部37の基部側へ突出する上下一対の係止片部分42がボス部37の外周面を上下から挟み込む状態で、揺動操作体4A,4Bを位置固定することが可能である。これによって、軸装着用開口部33に対向する位置で、軸装着用開口部33に対して、揺動操作体4A,4Bを装着及び離脱可能に構成している。
揺動操作体4A,4Bのそれぞれに形成される係止片部分42は、当接面41からボス部37の開口端部よりもボス部37の基部側へ突出し、かつボス部37の周方向複数箇所に設けられた補強リブ37a同士の間隔よりも狭い周方向幅に形成されている。
【0033】
ガイド孔部43は、
図3及び
図4の図中で上方に図示した一方の揺動操作体4Aの下縁位置に形成した半円状の下向き切り欠き43aと、同図中で下方に図示した他方の揺動操作体4Bの上縁位置に形成した半円状の上向き切り欠き43bとによって形成される。つまり、ガイド孔部43は、後輪駆動軸16の外周面を外方側から挟み込む一対の揺動操作体4A,4B同士の対向辺部分に形成されている。
これによって、ガイド孔部43は、一方の揺動操作体4Aの下縁と、他方の揺動操作体4Bの上縁とを対向させた状態で、半円状の下向き切り欠き43aと半円状の上向き切り欠き43bとによって、後輪駆動軸16の外周面を抱き込み可能な円形の孔となるように形成されている。このときガイド孔部43の円形孔は、後輪駆動軸16の外径と同等、もしくは、やや大きめの内径を有し、この円形状態で後輪駆動軸16に外嵌して、軸線方向でのスライド移動を案内するように構成されている。
【0034】
図3及び
図4に示すように、操作部44は、揺動支点p1を境にして、ガイド孔部43が存在する側とは反対側に設けられている。この操作部44は、ガイド孔部43が存在する側とは反対側で、揺動支点p1から離れる側ほど、互いに離間するように、揺動操作体4A,4B同士の対向辺部分の延長線に対して、斜め上方側と斜め下方側とに向けて延設されている。
そして、枢支軸40に巻回した弾性付勢機構の一例である蔓巻バネ45によって、操作部44同士が互いに離間する方向に向けて、つまり、ガイド孔部43が円形となる側へ向けて、弾性付勢されている。
したがって、操作部44を把持して握れば、蔓巻バネ45の弾性付勢力に抗してガイド孔部43を円形である状態よりも拡径方向に操作することができ、離せば蔓巻バネ45の弾性付勢力で揺動操作体4A,4Bの対向辺部分同士が互いに接近する方向に移動して、ガイド孔部43が円形となる側に付勢される。
【0035】
〔軸組付方法〕
次に、上記の組付用治具4を用いて、動力伝達軸としての後輪駆動軸16を軸装着用開口部33に装着する軸組付方法を、
図5乃至
図8に基づいて説明する。
この軸組付方法は、ボス部37の外周に組付用治具4を装着する治具装着工程と、組付用治具4のガイド孔部43に案内させて後輪駆動軸16を挿入する仮保持工程と、組付用治具4の操作部44を操作してガイド孔部43を拡径方向に拡開する治具外し工程と、組付用治具4が取り外された後に後輪駆動軸16を最終装着位置まで挿入する嵌め込み工程と、を備えている。
【0036】
図5は、動力伝達軸としての後輪駆動軸16が、軸装着用開口部33に装着される前の状態を示している。この状態では、組付用治具4もまだ軸装着用開口部33のボス部37には係止されていない。
【0037】
図6は、ボス部37の外周に組付用治具4を装着する治具装着工程を示している。
この治具装着工程では、組付用治具4の一対の揺動操作体4A,4Bにおける当接面41が、ボス部37の開口端部に当接し、かつ、係止片部分42が、ボス部37の外周面を上下方向から挟み込むことにより、組付用治具4がボス部37に装着される。
このとき、係止片部分42は、ボス部37の外周面からミッションケース31の左右側面にわたって放射方向に延設された補強リブ37aとの干渉を避けながら、ボス部37の外側に装着される。つまり、係止片部分42は、ボス部37の周方向での複数箇所に設けられた補強リブ37a同士の間に相当する箇所で、ボス部37の外周面に当接している。
【0038】
図7は、組付用治具4のガイド孔部43に案内させて後輪駆動軸16を軸装着用開口部33に挿入する過程である仮保持工程を示している。
組付用治具4は、ボス部37の外周に装着された状態では、
図6に示すように、ガイド孔部43が軸装着用開口部33と同心状に対向している。
したがって、後輪駆動軸16の軸端をガイド孔部43に挿入することで、後輪駆動軸16が軸装着用開口部33の入口に到達する前段階から、ガイド孔部43によって後輪駆動軸16の軸装着用開口部33に対する相対位置の変化を規制するように案内しながら軸装着用開口部33へ後輪駆動軸16を挿入することができる。
このように、軸装着用開口部33自体によってではなく、後輪駆動軸16の挿入方向の上手側に位置させた組付用治具4のガイド孔部43によって、後輪駆動軸16を仮保持した状態で後輪駆動軸16を軸装着用開口部33に挿入することができる。
【0039】
図8は、組付用治具4の操作部44を操作してガイド孔部43を拡径方向に拡開する治具外し工程と、組付用治具4が取り外された後に後輪駆動軸16を最終装着位置まで挿入する嵌め込み工程と、を示している。
すなわち、後輪駆動軸16が軸装着用開口部33に挿入され、後輪駆動軸16の先端部に形成されているスプライン溝16aが、ベベルギヤ35cの軸部内周側に形成されたスプライン孔35dに係合し始める(
図7参照)と、ガイド孔部43による案内作用がなくとも、後輪駆動軸16が軸装着用開口部33に対して径方向で位置ずれする虞は少なくなる。
その時点で組付用治具4の操作部44を操作してガイド孔部43を拡径方向に拡開操作すると、組付用治具4のガイド孔部43が後輪駆動軸16の外周面から径方向の外方へ外れ、係止片部分42がボス部37の外周面から径方向の外方へ外れる。その後、後輪駆動軸16の径方向外方へ組付用治具4を移動させることで、組付用治具4を後輪駆動軸16、及びボス部37から取り外すことができる。これが治具外し工程である。
【0040】
そして、組付用治具4を、後輪駆動軸16及びボス部37から取り外すことにより、後輪駆動軸16を軸装着用開口部33の最終装着位置(
図8参照)にまで挿入することができる。これが嵌め込み工程である。
このように、後輪駆動軸16を軸装着用開口部33の内部における最終装着位置にまで差し込むと、先端部のスプライン溝16aがベベルギヤ35cのスプライン孔35dに係入して、デフ機構35から後輪駆動軸16への動力伝達が可能となる。
〔別実施形態の1〕
【0041】
上記実施形態では、軸装着用開口部33のボス部37外周面を抱き込み可能な係止片部分42として、ボス部37の周方向での複数箇所に設けられた補強リブ37a同士の間に相当する箇所で、ボス部37の外周面に当接する構造のものを示した。つまり、ボス部37の周方向で隣接する補強リブ37a同士の間隔よりも狭い周方向長さを有した構造のものを示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、図示はしないが、補強リブ37aをボス部37の軸端にまで到達しない範囲に形成して、係止片部分42をボス部37のほぼ全周に相当する範囲に形成してもよい。あるいは、係止片部分42側に補強リブ37aが嵌り込む切り欠き部分を設けて、係止片部分42がボス部37の周方向で補強リブ37aの存在箇所を越えてボス部37の周方向の広範囲にわたって設けられるようにしてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0042】
〔別実施形態の2〕
上記実施形態では、操作部44が、揺動支点p1を境にして、ガイド孔部43が存在する側とは反対側に設けられた構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば
図9に示すように、操作部44が揺動支点p1に対してガイド孔部43が存在する側と同じ側に形成された構造のものであってもよい。この場合、弾性付勢機構の一例である蔓巻バネ45は、揺動操作体4A,4B同士が近接してガイド孔部43を円形に保つ側に弾性付勢されている。したがって、操作部44は蔓巻バネ45の付勢方向に抗してガイド孔部43を拡径する方向に操作して、ボス部37に対する脱着操作を行うことになる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0043】
〔別実施形態の3〕
上記実施形態では、ガイド孔部43として、後輪駆動軸16を案内する際に円形になる構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、
図10に示すように、揺動操作体4A,4Bに形成されるガイド孔部43として、一方の揺動操作体4Aの下縁位置に形成した三角形状の下向き切り欠き43aと、他方の揺動操作体4Bの上縁位置に形成した三角形状の上向き切り欠き43bとによって、矩形、もしくは菱形に形成されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0044】
〔別実施形態の4〕
上記実施形態では、
上記実施形態では、ガイド孔部43として、後輪駆動軸16を案内する際に円形又は矩形になる構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、
図11に示すように、揺動操作体4A,4Bに形成されるガイド孔部43として、一方の揺動操作体4Aの下縁位置に形成した楕円状、もしくは径の大きい弧状の下向き切り欠き43aと、他方の揺動操作体4Bの上縁位置に形成した楕円状、もしくは径の大きい弧状の上向き切り欠き43bとによって、楕円状、もしくは長円状に形成されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0045】
〔別実施形態の5〕
上記実施形態では、ガイド孔部43として、後輪駆動軸16を案内する際に、互いに相対向する揺動操作体4A,4Bに形成されるガイド孔部43が、上下でほぼ対称であるように形成された構造のものを例示したが、この構造に限定されるものはない。
例えば、
図12に示すように、揺動操作体4A,4Bに形成されるガイド孔部43として、一方の揺動操作体4Aの下縁位置に形成した楕円状、もしくは径の大きい弧状の下向き切り欠き43aと、他方の揺動操作体4Bの上縁位置に形成した三角形状の上向き切り欠き43bとによって、上下で非対称の形状に形成されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。