【実施例1】
【0012】
図1を用い、本実施例における巻上機の構成の一例について説明する。
図1は、本実施例における巻上機の構成の一例を示す。
【0013】
巻上機は、フック106に取付けられた荷物を、操作入力装置102からの動作指令を取込んだ制御装置101により電動機104を制御する。また、電動機104は、減速機109を介してロープ巻取ドラム105を回転させることにより、ワイヤーロープ108を巻上、巻下させる。これにより、フック106に取り付けられた荷物は、Z方向(+Z方向、−Z方向の矢印で示す。)に移動する。即ち、上下方向に荷物を移動する。
【0014】
図2を用い、本実施例における巻上機の制御構成について説明する。
図2は、本実施例における制御装置201の構成の一例を示す。
【0015】
制御装置101は、電動機104を駆動するインバータ201、インバータ201を制御するインバータ御部202、インバータ制御部202において保持・保存されている情報を送信する通信装置203を有する。
【0016】
電動機104は、制御装置101に設けられたインバータ制御部202により制御される。即ち、操作入力装置102から所定の動作指令を受けると、インバータ制御部202は動作指令に基いたインバータ制御信号を生成し、インバータ制御信号によってインバータ201を制御し、インバータ201から電動機104の駆動に必要な周波数、電圧、電流を電動機104に与える。さらに、電磁ブレーキ103を開放制御することで、フック106に取付けられた吊荷107が落下することなくZ方向に移動させる。
【0017】
次に、インバータ制御部202の構成の一例について、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施例におけるインバータ制御部202の構成の一例を示す。
【0018】
インバータ制御部202は、制御部301、情報記憶部302、出力部303を有する。制御部301は、操作入力装置102からの動作指令に基づきインバータ201を制御して電動機104を駆動する。
【0019】
制御部301は、インバータ201から取得した周波数、電流値や電圧、それらに基づき算出した吊荷重や出力トルク、エンコーダ110(回転検出部)から取得した電動機104の回転状況(パルス信号)などから負荷状態を判定し、インバータ201を制御する。電動機104の回転状況を検出するには電動機104の回転軸に取り付けられたエンコーダ110から発せられる回転数に対応するパルス信号を用いることができる。
【0020】
制御部301は、必要に応じて電磁ブレーキ103の開放およびロックを制御する。制御部301は、エンコーダ110(回転検出部)から取得した電動機104の回転状況(パルス信号)に基づき、計算処理等を行って現在のフック106の位置を取得する。
なお、フック位置の取得手段は、エンコーダ110(回転検出部)より算出される値に限定されずフック位置が検出できるものであれば良い。
【0021】
また、制御部301は、過負荷検出状態において、所定位置と現在のフック位置を比較し、過負荷検出状態を解除可能か判定する。
【0022】
情報記憶部302は、制御装置101が搭載される巻上機の過負荷検出の所定の閾値を保存している。ここで過負荷状態の検出とは、ホイストが吊上げられる重さよりも重い吊荷を吊り上げた状態、巻上げ動作の際に電動機104またはインバータ201に所定の電流よりも多くの電流が流れていることを検出した状態、モータのすべり周波数が所定の値よりも大きな場合または小さな場合である状態等である。
【0023】
この過負荷検出方法は上記に限られず所定の閾値との比較によって検出することができ、例えばホイスト定格負荷、定格電流、モータのすべり周波数など、過負荷状態を判定することが可能な情報であれば良い。
【0024】
また、情報記憶部302は、制御部301において巻上機の過負荷状態を検出した際に、巻上機が過負荷検出状態であること記憶する。
【0025】
情報記憶部302は制御部301にて算出したフック位置を取得し、保存する。情報記憶部302は、過負荷検出状態解除位置となるフック位置を保存している。過負荷検出状態解除位置となるフック位置は、例えばフック106の動作開始位置を用いるとよい。
【0026】
動作開始位置とは、巻上機が動作した際のフックの高さを示すものであり、吊荷が地切りした高さ、吊荷をフックに取り付けた高さを動作開始位置とすることができる。これを第一の所定の高さと呼ぶ。
【0027】
また、吊荷が地切した高さとは、フックに吊荷を取り付けた後に、電動機104が吊荷を吊上げる際に、インバータの負荷が上昇した高さである。つまり、吊荷が地切りする際には、インバータ201に流れる電流または電動機104に流れる電流が、吊荷が地面または接地面に接触した状態に比べて大きくなるため、地切りした高さを特定することが可能となる。
【0028】
また、動作開始位置として地切りした高さを用いる場合には、地切した高さよりも高い位置でフック106を停止させることが望ましい。これを第二の所定の高さと呼ぶ。つまり、第二の所定の高さでフックを停止させると、安全性を向上させることができる。
【0029】
動作開始位置をフックに吊荷を取り付けた高さとする場合には、吊荷が地切りされていない場合があるため、過負荷状態であることを検出した場合には、フックに吊荷を取り付けた高さよりも高い位置で停止すると、吊荷が地面または接地面に接触しないため有効である。
【0030】
すなわち、巻上げ動作中に過負荷状態であると検出した場合には、過負荷状態であることを検出したフックの高さから吊荷を取り付けた高さの間の所定の高さでフックが停止するということである。 なお、過負荷検出状態解除の閾値となるフック位置は予め設定することが可能である。また、過負荷検出状態解除の閾値となるフック位置は一か所に限定されず、複数か所設定することができる。
【0031】
例えば、過負荷状態を検出した場合に巻上げ動作を禁止することができ、この際には、巻下げ動作を認め、巻下げボタンを押した場合には、第ニの所定の高さまでフックが巻下げられ、一度目の停止動作をする。一度目の停止動作まで巻下げボタンを継続した場合であっても、第ニの所定の高さでフックが停止するとよい。
【0032】
一度目の停止後に、巻下げボタンを一度解除し、その後押下することによって、第一の所定の高さまでフックが巻き下げられることができる。
【0033】
これによって、巻上機が過負荷状態を検出した際に、ユーザが巻下げボタンを巻下げボタンを押下し続けた場合であっても、フックが所定の高さで停止されるため、吊荷が地面または接地面に触れることを防止できる。第二の所定の高さの方が、第一の所定の高さよりも高いと吊荷が地面に直接接地することを防止でき安全性が向上する。
【0034】
また、ユーザは第二の所定の高さで停止することを確認し巻下げボタンを離した後に、再度巻下げボタンを押下することで、明確に第一の所定の高さまでフックを下げることを認識することができる。ひいては、作業の安全性を向上させることができる。
【0035】
変形例として、動作開始位置を一度の巻上げ動作の開始位置とすることもできる。つまり、巻上げ動作で押下し続けた際に、過負荷状態を検出しフック位置が停止すると、その際に巻下げ動作を行うことができるが、巻上げ動作の開始位置までフックを巻き下げることができる。
【0036】
言い換えると、フックの高さが地面から1mの高さで巻上げボタンを押し続け、フック2m過負荷状態を検出した場合には、巻上げボタンを押し始めた1mの高さまでフックを巻き下げることができる。
【0037】
先に説明したように、フックが1mの高さを第一の所定の高さとして設定し、第一の所定の高さから過負荷状態を検出したフック高さの半分の高さを第二の所定の高さとすることもできる。
【0038】
この場合は、1.5mを第二の所定の高さとして設定することができる。なお、半分の高さを第二の所定の高さとしたが、これに限られず1.25mや1.75m等の1/4ごとであってもよく、吊荷との関係で適宜選択変更が可能である。また、第三の所定の高さや第四の所定の高さを設けることもできる。
【0039】
次に
図4を用い、本実施例の過負荷状態解除方法の制御フローの一例を説明する。
図4は実施例1における巻上機の過負荷検出状態解除の制御フローの一例である。
【0040】
操作装置102より出力された動作指令が制御部301へ入力された際、巻上動作開始かを判定する(S401)。次に過負荷検出解除の閾値となるフック位置として、エンコーダ110が取得した回転位置や回転確度を用いて算出された現在のフック位置を情報記憶部302に記憶する(S402)。
【0041】
次に、情報記憶部302に記憶された情報から、過負荷状態か否かの判定を行う(S404)。操作装置102より制御部301へ入力された動作指令に従い、インバータ201によって動作する電動機104は停止指令があるまで動作を継続し、停止指令を受けた場合には動作を停止する(S402,S404)。停止指令とはユーザが押下した巻上げボタンを離した場合や、過負荷状態を検出した場合に送信される指令である。
【0042】
次に、制御部301にてインバータ201から取得した電流値や電圧、それらに基づき算出した吊荷重や出力トルクなどと、情報記憶部302に保存されている過負荷状態を判定する閾値とを比較し、過負荷状態を判定する閾値を超えていた場合に過負荷状態を検出する(S404)。
【0043】
過負荷状態を検出した場合、巻上動作を禁止し、巻下動作のみが可能となるようにする。(S405)。巻下げ動作は上述の通りである。
【0044】
巻下動作を行った際、現在のフック位置と動作開始時のフック位置の比較を行う(S407)。現在のフック位置が過負荷検出状態解除位置以下となった場合、過負荷検出状態の解除と巻上動作禁止の解除を行う(S408)。
【0045】
以上説明したように本発明によれば、過負荷状態で巻上げ動作をし続けることによる巻上機の破損を防止し、安全な操作が可能となる巻上機を提供することができる。