特許第6735721号(P6735721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735721
(24)【登録日】2020年7月16日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】鉄道車両用電力変換装置および鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20200728BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-209896(P2017-209896)
(22)【出願日】2017年10月31日
(62)【分割の表示】特願2016-38901(P2016-38901)の分割
【原出願日】2011年10月7日
(65)【公開番号】特開2018-19599(P2018-19599A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2017年10月31日
【審判番号】不服2018-15507(P2018-15507/J1)
【審判請求日】2018年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】森 義郎
(72)【発明者】
【氏名】神田 淳
【合議体】
【審判長】 千葉 輝久
【審判官】 仲間 晃
【審判官】 山澤 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−85357(JP,A)
【文献】 特開2002−262538(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/152686(WO,A1)
【文献】 特開2016−106518(JP,A)
【文献】 特開平08−33336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバータ回路及びインバータ回路の複数の相構成する複数の半導体素子と、
前記複数の半導体素子が相ごとに載置されて構成され、冷却風が流れる方向と直交する方向に隣接配置される複数の相半導体素子載置領域を有する一方面と、前記一方面と対向する面であって複数の放熱フィンが設けられる他方面とを有する冷却体と、
複数の前記冷却体を冷却風が流れる方向と直交する方向に隣接配置して構成される冷却体群と、
前記冷却体群の隣接する冷却体を熱的に結合するための第2のヒートパイプ、前記冷却体群の半部内にある複数の冷却体を熱的に結合するための第3のヒートパイプ、前記冷却体群を構成するすべての冷却体を熱的に結合するための第4のヒートパイプのうちの少なくとも1種類のヒートパイプ
を備えることを特徴とする鉄道車両用電力変換装置。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道車両用電力変換装置を備える鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動機の駆動制御等に使用される電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄道車両用電動機を駆動する電力変換装置は、車両の走行風を冷却に利用するために鉄道車両の床下に取り付け、電力変換装置の冷却体の冷却フィンを外気に露出させ、これに走行風を当てて冷却するようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
この種の鉄道車両用電力変換装置の従来例を図9図12に示す。
【0004】
図9は鉄道車両用電力変換装置1の主回路を示す回路構成図、図10は電力変換装置の構成を示す平面図、図11は、電力変換装置を車両に取り付けた状態を示す正面断面図であり、図12は同側面断面図である。
【0005】
鉄道車両用電力変換装置1は、図9に示すように、スイッチング半導体素子を単相ブリッジ接続して変換器ユニットとして構成されたコンバータ2と、スイッチング半導体素子を3相ブリッジ接続して変換器ユニットとして構成されたインバータ3とを備える。コンバータ2は、単相の交流電源8から供給される交流電力を直流電力に変換してインバータ3に供給する。インバータ3は、コンバータ2から供給される直流電力を3相の交流電力に変換して車両駆動用交流電動機9に供給する。コンバータ2は、出力側にフィルタコンデンサ2FCを、そしてインバータ3は、入力側にフィルタコンデンサ3FCを備える。
【0006】
コンバータ2は、図10に示すように、コンバータ回路のU相およびV相回路を構成する半導体素子群21Uおよび21Vを、それぞれ冷却フィン付冷却体22Uおよび22V上に電気的に絶縁して、熱伝導的に搭載し、コンバータのU相ユニット2UおよびV相ユニット2Vを構成する。そして、このコンバータの各相ユニットの冷却体22Uと22Vを互いに接合して熱的に一体に構成し、コンバータ2を構成する変換器ユニットが構成される。
【0007】
インバータ3も同様に、インバータ回路のU相、V相およびW相の回路を構成する半導体素子群31U、31Vおよび31Wを、それぞれ冷却フィン付冷却体32U、32Vおよび32W上に電気的に絶縁して、熱伝導的に搭載し、インバータのU相ユニット3U、V相ユニット3VおよびW相ユニット3Wを構成する。そして、このインバータの各相ユニットの冷却体32U、32Vおよび32Wを相互に接合して熱的に一体に構成して、インバータ3を構成する変換器ユニットが構成される。
【0008】
コンバータ2の正極出力端子2P、負極出力端子2Nおよびコモン端子2Cとインバータ3の正極入力端子3P,負極入力端子3Nおよびコモン端子3Cとは、それぞれ接続導体4P、4Nおよび4Cにより接続される。
【0009】
これらのコンバータ2およびインバータ3は装置筺体10に収容して、図11および12に示すように鉄道車両100の車体の床下に取り付けられる。
【0010】
電力変換装置1を構成するコンバータ2およびインバータ3の相ユニット2(U、V)および3(U、V、W)の冷却体22(U、V)および32(U、V、W)には、多数の冷却フィン23(U、V)、33(U、V、W)が適宜の間隔をおいて並設されている。
冷却フィン23および33は、電力変換装置1の筺体10の外側へ露出させて配置し、冷却フィン間の通風路を鉄道車両の走行に伴って発生する矢印Rで示す走行風が通流するように構成している。これにより冷却フィン23および33が車両の走行風により強制冷却され、これと一体の冷却体22,32を介して、電力変換装置のコンバータおよびインバータを構成する半導体素子群21(U、V)および31(U、V、W)が良好に冷却される。
【0011】
ところで、このように鉄道車両の走行風を利用して冷却を行うようにした鉄道車両用電力変換装置は、これを構成するコンバータ2とインバータ3が独立したユニットとして構成され、筐体10内に互いに離間して配置されているため、コンバータ2とインバータ3が個別に冷却されることになる。
【0012】
鉄道車両の走行風により冷却を行う場合、当然のことながら、電力変換装置の冷却体の冷却フィンに当たる冷却風速度F(m/sec)は、図13に特性線Aで示すように車両走
行速度S(km/h)に比例し、車両走行速度が高くなるほど高くなり、冷却能力が高くなる。
【0013】
その一方で、電力変換装置のコンバータ2およびインバータ3は、発熱量Pが車両の走行速度Sに対して、それぞれ図13の特性線Cおよび特性線Iで示すような発熱特性を有する。
【0014】
コンバータ2の発熱特性は、特性線Cで示すように、車両走行速度SがS3までは、発熱量が走行速度Sに比例してP4まで増加し、S3以降は一定値のP4となるような特性を示す。
【0015】
一方、インバータ3の発熱特性は、特性線Iで示すように、車両速度SがS1まではP2の発熱量を示し、S2で最大のP3の発熱量となって、S3で急激に減少して、S4からほぼP1の発熱量となるような特性を示す。
【0016】
このように、コンバータ2とインバータ3とは、車両速度に対して異なる発熱特性を示すので、それぞれの各相ユニットを支持する冷却体は、発熱量の最大となる車両速度におおける冷却風速度で半導体素子の温度を規定の許容設定温度以下に維持できる冷却能力となるように冷却体の大きさや冷却フィンの枚数等が決められている。
【0017】
すなわち、コンバータ2の各相ユニットの冷却体2U、2Vは、コンバータの発熱量が最大のP4となる車両速度S3における冷却風速度F3で、その冷却能力が決められる。そして、インバータ3の各相ユニットの冷却体32(U、V、W)は、インバータの発熱量が最大のP3となる車両速度S2における冷却風速度F2でその冷却能力が決められる。
【0018】
これにより、コンバータ2の場合は、車両速度がS2となる条件では冷却風速度が低下するが、発熱量がそれ以上に減少することからコンバータ2の冷却体22の冷却能力は、半導体素子の発熱量に対して余裕を持つことになる。また、インバータの場合は、車両速度S1およびS2で、冷却体32の冷却能力を決めているので、車両速度がS3に増大した条件では、半導体素子の発熱量が車両速度S1およびS2の状態と同じであっても、冷却風速度Fが車両速度S1、S2、の時よりも高くなることから、インバータ3の冷却体32の冷却能力は、半導体素子の発熱量に対して余裕を持つことになる。このため、コンバータ2およびインバータ3を構成する半導体素子は、車両速度の全範囲にわたって良好に冷却され、その温度を規定された許容温度以内に保つことができる。
【0019】
このように、コンバータ2とインバータ3とは互いに車両走行速度に対する発熱量が異なるため、図10に示すように、コンバータ2およびインバータ3の各相ユニットの冷却体22と32が離間され、熱的に絶縁されているため、コンバータ2またはインバータ3の一方の半導体素子の温度が、既定の許容設定温度付近まで上昇している場合でも、他方の半導体素子の温度は、許容設定温度に対して余裕を持つ状態が生じる。
【0020】
その一方で、コンバータ2およびインバータ3のそれぞれにおいては、各ユニットの冷却体が互いに接合して熱的に一体化されているため、ユニット2Uの半導体素子21Uの発熱により冷却体22Uの温度が上昇している時には、他のユニット2Vの半導体素子も同じ発熱量であるため、隣接する冷却体22Vの温度も上昇しているため、冷却体22Uと22Vの接合部付近の温度上昇が高くなるという問題がある。
【0021】
インバータ3においても同様に、各ユニットの半導体素子31U、31V、31Wの発熱量は同じであるので、中間の冷却体32Vの温度が上昇しているときは、両隣の冷却体32U、32Wの温度も上昇しており、中間の冷却体32Vに対して、両隣の冷却体32U、32Wからの熱伝導されるため、この中間の冷却体32Vの温度が他の冷却体より温度が高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2009-096318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
この発明は、電力変換回路の複数の相を構成する複数の半導体素子が搭載される冷却体の全体の温度分布が均一になるようにして、全半導体素子の温度上昇がほぼ均等となる鉄道車両用電力変換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記の課題を解決するためになされた発明は、鉄道車両用電力変換装置が、電力変換回路の相を構成する複数の半導体素子と、この複数の半導体素子が載置される相半導体素子載置領域を有する一方面と、この一方面と対向する面であって複数の放熱フィンが設けられる他方面とを有し、電力変換回路の相ごとに構成される冷却体と、複数の冷却体を冷却風が流れる方向と直交する方向に隣接配置して構成される冷却体群と、この冷却体群の隣接する冷却体を熱的に結合するための第2のヒートパイプ、冷却体群の半部内にある複数の冷却体を熱的に結合するための第3のヒートパイプ、冷却体群を構成するすべての冷却体を熱的に結合するための第4のヒートパイプのうち少なくとも1種類のヒートパイプ備える、ことを特徴とする。


【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、電力変換装置の各相を構成する複数の半導体素子が載置される複数の相半導体素子載置領域がヒートパイプによって熱的に一体化されるので、冷却体における局部的な温度上昇を抑えることができる。そのため、電力変換装置を構成する半導体素子の温度上昇を低減することができ、冷却体全体を小型化することができる。

【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の鉄道車両用電力変換装置の主回路を示す回路構成図である。
図2】この発明の第1の実施例の鉄道車両用電力変換装置の構成を模式的に示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図3】この発明の第1の実施例の変形例の構成を模式的に示すもので、(a)は平面図、(b)は正面構成図である。
図4】この発明の第1の実施例のさらなる変形例の構成を模式的に示す平面図である。
図5】この発明の第2の実施例の鉄道車両用電力変換装置の構成を模式的に示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図6】この発明の第2の実施例の変形例の構成を模式的に示す平面図である。
図7】この発明の第2の実施例のさらなる変形例の構成を模式的に示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図8】この発明の第2の実施例のさらに異なる変形例の構成を模式的に示す平面図である。
図9】従来の鉄道車両用電力変換装置の主回路を示す回路構成図である。
図10】従来の鉄道車両用電力変換装置の構成を示す平面図である。
図11】従来の鉄道車両用電力変換装置を車両に取り付けた状態を示す正面断面図である。
図12】従来の鉄道車両用電力変換装置を車両に取り付けた状態を示す側面断面図である。
図13】鉄道車両用電力変換装置のコンバータおよびインバータの車両走行速度に対する発熱特性を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0028】
図1および図2は、この発明の第1の実施例を示すものである。
【0029】
図1は、この発明の鉄道車両用電力変換装置の主回路を示す回路構成図であり、図9図12に示す従来例と同一要素は、同一符号で示し、説明を省略する。
【0030】
図1のこの発明の実施例1においては、コンバータ2の相回路を構成するスイッチング半導体素子、ダイオード等の半導体素子群21U、21V、およびインバータ3の相回路を構成するスイッチング半導体素子、ダイオード等の半導体素子群31U、31V、31Wのすべてを共通に設けた1つの冷却体5上に、電気的に絶縁して、熱伝導可能に搭載し
ている。これにより、コンバータ2およびインバータ3を構成する半導体素子をこの冷却体5により共通に冷却することができる。
【0031】
コンバータ2およびインバータ3は、図2に示すように共通の冷却体5上に左右の半部5Cおよび5Iに分けて配置されている。コンバータ2とインバータ3との間を接続する導体は、7P,7C,7Nに共通化され、図10に示す従来例における両者間を接続する外部接続導体4P,4C,4Nが不要となる。そして、コンバータ2およびインバータ3にそれぞれ設けていたフィルタコンデンサは、両者に共通にフィルタコンデンサ2FCだけを設ける(図1参照)。
【0032】
冷却体5には、図2(b)に示すように半導体素子搭載面と反対側の面に放熱フィン51が適宜の間隔で多数設けられている。冷却フィン51は、車両の走行風の流れ方向に平行に並置され、冷却フィン51間に通風路となる間隙が形成される。この冷却フィン51間の間隙に矢印Rで示す車両の走行風を通流させるため、冷却体5と一体的に構成したコンバータ2およびインバータ3を装置の筺体に収容する際、従来装置と同様に、冷却フィン51が筐体の外側へ露出されるようにする。
【0033】
さらに、冷却体5上には、左右の半部5Cと5Iの間にまたがってヒートパイプ6を熱伝導的に結合して、冷却体5の左右の半部間に生じる温度差を縮小し、冷却体5全体の温度の分布を均一化するようにしている。
【0034】
このように、コンバータ2とインバータ3を共通の冷却体5上に搭載して一体構成し、これを筺体に納めて構成した鉄道車両用電力変換装置は、従来装置と同様に車両の車体の床下に取り付けて使用する(図11、12参照)。
【0035】
車両の運転中は、電力変換装置のコンバータ2およびインバータ3は、図13に示すように車両走行速度に対す発熱特性を示すことから、コンバータ2の半導体素子群21(U、V)とインバータ3の半導体素子群31(U、V、W)とに温度上昇に差が生じる。
【0036】
しかし、この発明においては、冷却体5がコンバータ2とインバータ3に共通に設けられ熱的に一体的に構成されているので、冷却体5の温度上昇の高い半部の熱は、温度上昇
の低い半部へ伝達されて冷却されるようになるため、冷却体5の全体の温度分布をほぼ均等にすることができる。したがって、コンバータ2およびインバータ3を構成する半導体素子群の全体を平均的に均等に冷却することができるようになるので、冷却体5の冷却効果が高まり、これを小形にすることができる。
【0037】
この実施例におけるヒートパイプ6は、必ずしも設ける必要はないが、これを設けることにより冷却体5の半部間の熱伝導が高まり、冷却体5全体の温度分布をより一層均一化することができ、冷却体5の冷却効果を向上する効果がある。
【0038】
なお、ヒートパイプ6の実装本数と実装位置は、図に示した本数と位置に限られず、半導体素子群21(U、V),31(U、V、W)の発熱条件や冷却風の条件等に基づいて、適宜決定される。また、ヒートパイプ6は、直線形状のものに限られず、冷却体5の全体の温度分布を均一化するためにL字型やコの字型のような形状にしてもよい。
【0039】
図3は、この第1の実施例の変形例を示すものである。
【0040】
この変形例は、インバータ3の各相回路の半導体素子群31U、31V、31Wおよびコンバータ2の各相回路の半導体素子群21U、21Vが、図3(a)、(b)に示すように交互に並ぶようにコンバータと、インバータの各相回路を混合配置して、共通の冷却体5上に搭載したものである。
【0041】
このように、コンバータとインバータの各相の半導体素子群を混合配置することにより、コンバータ2の各相回路の半導体素子群とインバータ3の半導体素子群が冷却体5の全体に比較的均等に分布するようになるので、コンバータ2とインバータ3の発熱特性が相違していても冷却体5の全体における温度分布がより均等化されることにより、冷却体5の冷却効果をさらに高めることができる。
【0042】
図4は、図3に示す実施例にヒートパイプ6aを加えた変形例である。
【0043】
この変形例は、冷却体5上の隣り合うコンバータ2の相回路半導体素子群(21U、21V)の載置された領域とインバータ3の相回路半導体素子群(31U、31V、31W)の載置された領域の間を、それぞれヒートパイプ6aにより熱的に結合するものである。ヒートパイプ6bは、冷却体5の半部内の熱結合を行うものである。
【0044】
このようにすれば、ヒートパイプ6aによって冷却体5における隣接するコンバータ2の相回路半導体素子群(21U、21V)の載置された領域とインバータ3の相回路半導体素子群(31U、31V、31W)の載置された領域間での熱伝導が行われ、これらの領域間の温度差を縮小する。また、冷却体5の半部内に生じる温度差は、それぞれヒートパイプ6bによってこれを平均化され、解消することができる。これにより冷却体5の全体の温度分布がより均一化され、半導体素子群の冷却効果を高めることができる。
【0045】
なお、ヒートパイプ6a,6bの実装本数と実装位置は、図に示した本数と位置に限られず、半導体素子群21(U、V),31(U、V、W)の発熱条件や冷却風の条件等に基づいて、適宜決定される。したがって、必ずしもヒートパイプ6a,6bの両方を実装する必要はなく、1種類のヒートパイプのみを実装しても良い。また、ヒートパイプ6a,6bは、直線形状のものに限られず、冷却体5の全体の温度分布を均一化するためにL字型やコの字型のような形状にしてもよい。
【実施例2】
【0046】
この発明の第2の実施例を図5に示す。
【0047】
この実施例においては、コンバータ2およびインバータ3の各相回路の半導体素子群21U、21V、31U、31V、31Wをそれぞれ相回路単位で構成した冷却体5−2U、5−2V、5−3U、5−3V、5−3W上に熱伝導的に搭載して相ユニット2U、2V、3U、3V、3Wを構成している。各相ユニットの冷却体には、図5(b)示すように多数の放熱フィン51が適宜間隔で並設されている。
【0048】
コンバータ2の各相の半導体素子群の搭載された冷却体5−2Uと5−2Vとを相互に結合して熱的に一体構成するとともに、インバータ3の各相の冷半導体素子群の搭載された冷却体5−3U、5−3Vおよび5−3Wを相互に結合して熱的に一体構成する。そして、一体化されたコンバータ2の冷却体(5−2U、5−2V)と一体化されたインバータ3の冷却体(5−3U、5−3V、5−3W)とを互いに結合して冷却体全体を熱的に一体化する。この一体化されたコンバータ2およびインバータ3は、従来装置と同様に装置の筺体に納めて車両の車体の床下に取り付け、冷却体に設けられた冷却フィンを車両の走行に伴って発生する走行風により冷却する。
【0049】
この実施例2によれば、コンバータ2およびインバータ3のそれぞれの全相ユニットの冷却体が結合されて熱的に一体化されているので、前記実施例1と同様に、コンバータ2とインバータ3の発熱特性の相違により、コンバータ2とインバータ3との間に温度上昇の差が生じても、それぞれに発生する熱が冷却体全体に拡散されて平均化されるので、半導体素子群の冷却効果を向上することができる。
【0050】
さらに、この実施例2によれば、コンバータ2およびインバータ3の各相回路の半導体素子群が各相別の冷却体に搭載された相回路単位でユニット化することができるので、装置の組み立て等が標準化されて製造効率を高めることができる。
【0051】
図6は、冷却体に長さの異なるヒートパイプ6a、6b、6cを結合して、図5に示す実施例2を変形したものである。
【0052】
図6における長さの短いヒートパイプ6aは、両隣の各相冷却体(5−2U、5−2V、5−3U、5−3V、5−3W)間の熱的結合を行うもので、隣接する冷却体間の温度差を低減し、全部の冷却体の温度の平均化を行う。
【0053】
中間の長さのヒートパイプ6bは、コンバータ2およびインバータ3内の各相冷却体間を熱的に結合し、コンバータ2およびインバータ3のそれぞれの中の各相冷却体の温度の平均化作用を行う。
【0054】
長さの長いヒートパイプ6cは、冷却体の全体にまたがって熱的結合を行い、各冷却体に局部的に生じる温度上昇を抑えて冷却体全体の温度を平均化するものである。
【0055】
これら3種類のヒートパイプ6a、6b、6cによって複数の相冷却体で構成された冷却体の全体の温度をより均等化することができるので半導体素子群の冷却効果を高めることができる。
【0056】
なお、ヒートパイプ6a,6b,6cの実装本数と実装位置は、図に示した本数と位置に限られず、半導体素子群21(U、V),31(U、V、W)の発熱条件や冷却風の条件等に基づいて、適宜決定される。したがって、必ずしも3種類のヒートパイプすべてを実装する必要はなく、1種類または2種類のヒートパイプを組み合わせて実装しても良い。また、ヒートパイプ6a,6b,6cは、直線形状のものに限られず、各冷却体間の温度を均等化するためにL字型やコの字型のような形状にしてもよい。
【0057】
図7は、実施例2の他の変形例を示すものである。
【0058】
この変形例は、コンバータ2の相ユニット2U、2Vとインバータ3の相ユニット3U、3V、3Wとが、図7(a)、(b)に示すように交互に並ぶように、コンバータ2およびインバータ3の相ユニットを混合配置して、全部の冷却体(5−2U、5−2V、5−3U、5−3V、5−3W)を相互に接合して、熱的に一体に構成し、各相ユニット間の温度差を低減するものである。
【0059】
このように各相ユニットを配置することにより、コンバータ2の各相回路の半導体素子群とインバータ3の各相回路の半導体素子群が冷却体5の全体に比較的均等に分布するようになるので、コンバータ2とインバータ3の発熱特性が相違していても冷却体5の全体における温度分布を均一化にすることができるので、冷却体5による半導体素子群を効果的に冷却することができる。
【0060】
図8は、図7の変形例に長さの異なる3種類のヒートパイプ6a、6bおよび6cを冷却体の要所に結合してさらなる変形を加えたものである。
【0061】
長さの短いヒートパイプ6aにより隣り合う2個の冷却体間の温度差が縮小される。中間の長さのヒートパイプ6bにより隣り合う3個の冷却体間の温度差が縮小される。そして、長さの長いヒートパイプ6cにより一体に接合された5個すべての冷却体間の温度差が縮小される。これにより、複数の相冷却体で構成された冷却体全体の温度をより均一化することができるので半導体素子群の冷却効果を一層高めることができる。
【0062】
なお、ヒートパイプ6a,6b,6cの実装本数と実装位置は、図に示した本数と位置に限られず、半導体素子群21(U、V),31(U、V、W)の発熱条件や冷却風の条件等に基づいて、適宜決定される。したがって、必ずしも3種類のヒートパイプすべてを実装する必要はなく、1種類または2種類のヒートパイプを組み合わせて実装しても良い。また、ヒートパイプ6a,6b,6cは、直線形状のものに限られず、各冷却体間の温度を均等化するためにL字型やコの字型のような形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1:電力変換装置
10:装置の筐体
2:コンバータ
2U、2V:コンバータの相回路ユニット
21(U,V):コンバータの相回路の半導体素子群
22(U,V):コンバータの相冷却体
23(U,V):冷却フィン
3:インバータ
3U,3V,3W:インバータの相回路ユニット
31(U,V,W):インバータの相回路ユニット
32(U,V,W):インバータの相冷却体
33(U,V,W):冷却フィン
5:共通冷却体
6,6a,6b,6c:ヒートパイプ

図1
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