特許第6735777号(P6735777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6735777二次電池用電解液添加剤、これを含む電解液及び二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735777
(24)【登録日】2020年7月16日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】二次電池用電解液添加剤、これを含む電解液及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20200728BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20200728BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/052
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-564835(P2017-564835)
(86)(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公表番号】特表2018-520480(P2018-520480A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】KR2016007652
(87)【国際公開番号】WO2017010820
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年3月8日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0100815
(32)【優先日】2015年7月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】シン ジョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】ハ ジェミン
(72)【発明者】
【氏名】バク デウン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンリャン
(72)【発明者】
【氏名】バン ジミン
(72)【発明者】
【氏名】ゴ ジョングァン
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/054197(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/053644(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/122449(WO,A1)
【文献】 特開平10−189042(JP,A)
【文献】 特開2006−140115(JP,A)
【文献】 特開2004−055502(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/060697(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/13−4/62
H01G 11/64
C07D 497/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式1:
【化1】
で表される化合物を含む、リチウム二次電池用電解液添加剤。
【請求項2】
非水系溶媒と、
リチウム塩と、
以下の化学式1:
【化2】
で表される化合物を含む電解液添加剤と
を含む、二次電池用電解液。
【請求項3】
前記電解液添加剤の含有量が、電解液の総重量の0.05重量%〜20重量%である、請求項2に記載の二次電池用電解液。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の二次電池用電解液を含む、二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用電解液添加剤、これを含む電解液及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発と需要とが増加するにつれて、エネルギー源としての二次電池に対する需要も急激に増加している。二次電池の中でも、高いエネルギー密度と動作電位とを示し、優れたサイクル寿命で自己放電率が低いリチウム二次電池が実用化され、広く使用されている。
【0003】
また、最近では環境問題への関心が大きくなるにつれ、大気汚染の主な原因の1つであるガソリン車、ディーゼル車などの化石燃料を使用する車両を代替できる電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの研究が盛んに進んでいる。このような、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの動力源としては、主に、リチウムイオン系二次電池が使用されており、このようなリチウム二次電池と、当該素材の出力安定性及びエネルギー密度を向上させようとする研究とが活発に進められている。
【0004】
このようなリチウム二次電池は、リチウムイオンを吸着及び放出する炭素材などからなる負極と、リチウム含有酸化物などからなる正極と、混合有機溶媒にリチウム塩が適量溶解した非水系電解液とで構成されている。
【0005】
従来、電池の出力特性又は寿命特性の改善を目的として、特定の添加剤を二次電池用電解液に添加する技術が多数報告されている。例えば、特許文献1は、スルホン酸フェニル化合物を含む電解液を使用することにより、低温サイクル特性が改善されることを開示しており、特許文献2は、エチレンスルファートを電解液に添加することにより、高温及び低温において電池の出力特性が改善されることを開示している。また、特許文献3は、スルフィニル基を含む化合物を電解液に添加することにより、電池のサイクル特性が改善されることを開示しており、特許文献4は、スルトン(Sultone)系化合物を添加剤として使用することにより、電池の高温安定性が改善されることを開示しており、特許文献5は、プロペンスルトンを含む電解液を使用することにより、電池の高温安定性が改善されることを開示している。さらに、特許文献6は、硫酸エステル化合物を含む電解液を使用することにより、電池の高温保存容量が維持されることを開示している。
【0006】
しかし、前記のごとき従来の技術により、電池の出力特性や保存特性はある程度改善されているが、モバイル用、電気自動車用、電動工具用、電動バイク用、ロボット用、又はドローン用の電池に要求される高い出力特性と寿命特性とは、充分には確保されていない。したがって、二次電池の出力特性をより改善するとともに、寿命特性を満足させることができる二次電池用電解液添加剤と、これを含む電解液及び二次電池との開発が、依然として切実である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許第1486618号公報
【特許文献2】大韓民国公開特許第2015−0050493号公報
【特許文献3】大韓民国公開特許第2015−0050082号公報
【特許文献4】大韓民国登録特許第0976958号公報
【特許文献5】日本国特許第4190162号公報
【特許文献6】国際公開第2012−053644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、持続的に研究を行った結果、二次電池の出力特性の向上、保存特性の改善、寿命特性の改善、及び電解液の耐電圧特性の改善を可能にする化合物を発見し、これを二次電池用電解液に適用することにより、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の目的は、リチウム二次電池用電解液に含まれて、電池の出力特性を改善し、電解液の電気化学的分解を低下させ、寿命と保存特性との改善が可能な電解液添加剤を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、耐電圧特性が向上した二次電池用電解液及びこれを含む二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、以下の化学式1:
【化1】
で表される化合物を含む二次電池用電解液添加剤を提供する。
【0012】
また、本発明は、非水系溶媒と、リチウム塩と、前記電解液添加剤とを含む二次電池用電解液を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記二次電池用電解液を含む二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二次電池用電解液添加剤は、電解液に含まれて、出力特性、寿命特性、保存特性、及び耐電圧特性の面において優れた二次電池を提供する。したがって、本発明の二次電池用電解液添加剤は、モバイル用、電気自動車用、電動工具用、電動バイク用、ロボット用、又はドローン用の二次電池などに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の二次電池用電解液添加剤は、以下の化学式1:
【化2】
で表される化合物を含む。
【0017】
本発明に係る二次電池用電解液添加剤は、電解液の界面抵抗を低下させ、電池の出力性能を改善し、保存特性及び寿命特性を向上させ、電池の長時間使用を可能にし、電解液の耐電圧特性を向上させることができる。
【0018】
前記化学式1で表される化合物は、公知の化合物(CAS No.496−45−7)であり、ビシクログリオキサールスルフェート(bicyclo−glyoxal sulfate)、グリオキサールスルフェート(glyoxal sulfate)、又は3a,6a−ジヒドロ−[1,3,2]ジオキサチオロ[4,5−d][1,3,2]ジオキサチオール2,2,5,5−テトラオキシド(3a,6a−dihydro−[1,3,2]dioxathiolo[4,5−d][1,3,2]dioxathiole2,2,5,5−tetraoxide)などと称され、市販のものを購入できる。
【0019】
また、前記化学式1で表される化合物は、公知の合成法で調製することができ、例えば、1,1,2,2−テトラクロロエタンを出発物質として発煙硫酸などと反応させる、公知の合成法を採用することができる(米国特許第1999995号明細書及び米国特許第2415397号明細書を参照)。
【0020】
前記化学式1で表される化合物は、単独で、又は一般的に使用可能な公知の電解液添加剤との組み合わせで、電解液に使用することができる。
【0021】
また、本発明の二次電池用電解液は、非水系溶媒と、リチウム塩と、前記のような二次電池用電解液添加剤とを含む。
【0022】
前記二次電池用電解液には、一般的に使用可能な公知の電解液添加剤がさらに含まれ得る。
【0023】
前記非水系溶媒は、線形又は環状のカーボネート系溶媒か、ラクトン系溶媒であり、リチウム塩及び二次電池用電解液添加剤に対する溶解度が高いものが好ましい。例えば、該非水系溶媒は、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate)、メチルプロピルカーボネート(methyl propyl carbonate)、エチルプロピルカーボネート(ethyl propyl carbonate)などの線形カーボネート系溶媒と、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate)、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate)などの環状カーボネート系溶媒と、γ−ブチロラクトン(gamma−butyrolactone)などのラクトン系溶媒とからなる群より選択される、1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒であり得る。
【0024】
好ましくは、前記非水系溶媒としては、脱水されたものを使用することができ、具体的に、非水系溶媒の水分含有量は150重量ppm以下であり得る。非水系溶媒の水分含有量が150重量ppm以下である場合、電池内のリチウム塩の分解と電解液添加剤の加水分解とを抑制し、電解液の性能をより向上させることができる。
【0025】
前記リチウム塩は、電解液のイオン伝導度を向上させるためのものであり、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiSOCF、LiI、LiCl、LiB(Cなどを、単独で又は混合して使用することができる。
【0026】
電解液において、前記リチウム塩の濃度(含有量)は、0.9M〜3.0M(mol/L)、具体的には1.0M〜2.0Mであり得る。該範囲の含有量のリチウム塩を含むことにより、電解液のイオン伝導度を適切なレベルに確保するのに有利であり、添加したリチウム塩の量に対する電解液のイオン伝導度の向上効率をより高めることができる。
【0027】
本発明の例によれば、本発明に係る電解液添加剤の含有量は、電解液の総重量の0.05〜20重量%、0.05〜15重量%、0.05〜10重量%、0.1〜10重量%、0.1〜8重量%、0.1〜6重量%、0.1〜4重量%、0.1〜3重量%、0.2〜5重量%、0.5〜15重量%、0.5〜10重量%、0.5〜8重量%、0.5〜6重量%、0.5〜4重量%、0.5〜3重量%、1〜10重量%、1〜8重量%、3〜10重量%、3〜8重量%、3〜6重量%、4〜10重量%、4〜8重量%、4〜7重量%、又は5〜7重量%であり得る。前記化学式1で表される化合物を前記含有量の範囲で含む場合、抵抗の増加を抑制して出力特性をより改善することができ、前記電解液を含む二次電池の保存特性の維持と電解液の耐電圧特性の向上との面から、より効果的であり得る。
【0028】
また、前記二次電池用電解液は、その他の公知の添加剤である、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate)、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate)、スクシノニトリル(succinonitrile)、アディポニトリル(adiponitrile)、ビニルエチレンカーボネート(vinylethylene carbonate)、リチウムジフルオロジオキサラトホスフェート(lithium difluorodioxalato phosphate)、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート(lithium tetrafluorooxalato phosphate)、リチウムジフルオロオキサラトボレート(lithium difluorooxalato borate)、リチウムジフルオロホスフェート(lithium difluorophosphate)、プロペンスルトン(propene sultone)、プロパンスルトン(propane sultone)、エチレンスルフェート(ethylene sulfate)、又はエチレンサルファイト(ethylene sulfite)を、単独で又は組み合わせて含むことができる。前記公知の添加剤は、前記化学式1で表される化合物の効能及び電解液の性能に影響を与えない範囲で添加することができ、例えば、それぞれ0.1重量%以上、例えば0.1重量%〜10重量%の含有量となるように添加することができる。
【0029】
本発明の二次電池用電解液は、非水系溶媒、リチウム塩、及び前記二次電池用電解液添加剤を混合し、攪拌して調製することができる。この際、電解液に通常使用される公知の電解液添加剤がさらに混合されてもよい。
【0030】
さらに、本発明の二次電池は、前記のような二次電池用電解液を含む。本発明の二次電池として、前記二次電池用電解液を含むすべての種類の二次電池が可能である。例えば、本発明の二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、これら正極と負極との間に配置される分離膜と、前記二次電池用電解液とを構成要素として含むことができる。
【0031】
前記正極は、リチウムイオンを可逆的に吸着及び脱離することができる正極活物質を含み、このような正極活物質としては、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、及びニッケルからなる群より選択される1種以上、又はリチウム複合金属酸化物を使用することができる。正極活物質に使用される金属配合は多様に行うことができ、これらの金属のほかに、K、Na、Ca、Sn、V、Ge、Ga、B、As、Zr、Cr、Sr、V、及び希土類元素からなる群より選択される成分をさらに含むことができる。
【0032】
前記負極は、リチウムイオンを吸着及び脱離することができる負極活物質を含み、このような負極活物質としては、結晶質又は非晶質の炭素、炭素複合体の炭素系負極活物質(熱的に分解された炭素、コークス、黒鉛)、燃焼された有機ポリマー化合物、炭素繊維、酸化スズ化合物、リチウム金属、あるいはリチウム合金を使用することができる。例えば、前記非晶質炭素としては、ハードカーボン、コークス、1500℃以下で焼成したメソカーボンマイクロビーズ(mesocarbon microbead;MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch−based carbon fiber;MPCF)などが挙げられる。前記結晶質炭素としては黒鉛系材料があり、具体的に、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化コークス、黒鉛化MCMB、黒鉛化MPCFなどが挙げられる。前記リチウム合金のうち、リチウムと合金をなす他の元素として、シリコン、チタン、亜鉛、ビスマス、カドミウム、アンチモン、鉛、錫、ガリウム、又はインジウムを使用することができる。
【0033】
前記分離膜は、正極と負極との間の短絡を防止するためのものであり、ポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン、ポリエチレンなどからなる高分子膜又はこれらの多重膜、微多孔性フィルム、織布、及び不織布などが使用され得る。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明がこれらによって制限されるものではない。
【0035】
実施例で使用される、以下の化学式1:
【化3】
で表されるビシクログリオキサールスルフェートは、公知の化合物(CAS No.496−45−7)であり、ATOMAX(中国)、CHEMOS(ドイツ)、ABICHEM(ドイツ)、PEWAX(中国)などが販売している製品を購入することができる。また、該化学式1で表される化合物は、以下の調製例1のような公知の合成法により調製することができる。
【0036】
<調製例1:ビシクログリオキサールスルフェートの調製>
60℃のオイルバスに1000mL容の三口フラスコとコンデンサとを装着した。前記三口フラスコに1,1,2,2−テトラクロロエタン70gを入れ、温度を安定化させた後、硫酸(60% fuming grade)320gを投入して反応を開始した。反応液は、初期に透明ないし薄い茶色の粘性を示しており、反応開始から4時間経過後に結晶性固体が生成された。オイルバスを常温まで冷却し、さらに3時間低速攪拌した。以後5℃〜7℃の冷水バスに交換し、さらに2時間低速攪拌した。結晶性固体の追加生成がなくなった時点で反応を終了した。収得したスラリー溶液をフィルターで固液分離した後、20Torr下で12時間真空乾燥した。その結果、前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェート72.8gを得た(収率:84.4%)。
【0037】
<実施例1:電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)429g、エチルメチルカーボネート(EMC)589g、及びジエチルカーボネート(DEC)380gを混合して混合液を調製した。該混合液にLiPFを167.1g投入し、1.1MのLiPF溶液を調製した後、添加剤として前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを0.5重量%の含有量で添加し、二次電池用電解液を調製した。
【0038】
<実施例2:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを1.5重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0039】
<実施例3:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを3重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0040】
<実施例4:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを10重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0041】
<実施例5:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを15重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0042】
<実施例6:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを0.01重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0043】
<比較例1:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを添加しなかったことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0044】
<比較例2:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの代わりに、1,3−トリメチレンスルトン(1,3−trimethylene sultone)を3重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0045】
<比較例3:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの代わりに、ビス(カルボキシメチル)ジスルフィド(bis(carboxymethyl)disulfide)を3重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0046】
<比較例4:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの代わりに、エチレンサルファイト(ethylene sulfite)を3重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0047】
<実験例1:二次電池のインピーダンス(mΩ)の測定>
LiNi0.5Co0.2Mn0.3とLiMnOとを1:1(重量比)で混合した正極と、人造黒鉛と天然黒鉛とを1:1(重量比)で混合した負極とを使用して、通常の方法により1.3Ahポーチ電池を組み立て、実施例1〜6及び比較例1〜4で調製した電解液6gを注入して二次電池を完成した。
【0048】
得られた二次電池を、常温における満充電対比60%の充電状態の電圧を維持したまま、3Cで10秒間放電したときに得られるインピーダンスを測定した(使用機器:PNE−0506充放電器)。前記方法で二次電池の常温初期インピーダンスを測定した後、70℃の高温オーブンで保存し、1週間経過後及び2週間経過後、それぞれの放電インピーダンスを測定した。
【0049】
表1は、前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの含有電解液又は未含有電解液を使用した電池のインピーダンスを比較して示したものである。表2は、前記化学式1で表される添加剤又は同一含有量の他の添加剤を含む電解液を使用した電池のインピーダンスを比較して示したものである。
【0050】
【表1】
【表2】
【0051】
表1に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例1〜6)は、該添加剤を添加しなかった場合(比較例1)よりも、電池の放電時のインピーダンスが低くなることが確認できた。また、表2に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例3)は、他の種類の添加剤を同じ含有量で添加した場合(比較例2〜4)と比較して、電池の放電時のインピーダンスが低くなることが確認できた。これは、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加することにより、電池の放電過程において電極と電解液との界面の低い抵抗特性によって、電池の出力特性が向上したことを示す。
【0052】
<実験例2:二次電池の寿命特性の測定>
実施例1〜6及び比較例1〜4で調製した電解液を使用して、前記実験例1と同様の方法で1.3Ahポーチ形状の二次電池を製造した。該二次電池に対して、満充電状態で70℃の高温において、4.2Vで1.3Aの充電速度及び2.7Vで1.3Aの放電速度で充電/放電を行った。該方法で行われた200回の充電/放電時の放電容量をPNE−0506充放電器(メーカー:(株)PNEソリューション)で測定し、初期容量に対する比率(%)を計算した。
【0053】
表3は、前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの含有電解液又は未含有電解液を使用した電池の寿命特性を比較して示したものである。表4は、前記化学式1で表される添加剤又は同一含有量の他の添加剤を含む電解液を使用した電池の寿命特性を比較して示したものである。
【0054】
【表3】
【表4】
【0055】
表3に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例1〜6)は、該添加剤を添加しなかった場合(比較例1)よりも、電池の70℃での寿命特性が顕著に改善された。また、表4に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例3)は、他の種類の添加剤を同じ含有量で添加した場合(比較例2〜4)と比較して、電池の70℃での寿命特性が顕著に改善された。これは、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加することにより、70℃において電池の充電/放電過程で発生する電気化学的電極容量の減少が著しく緩和されたことを示す。
【0056】
<実験例3:二次電池の保存特性(容量回復性)の測定>
実施例1〜6及び比較例1〜4で調製した電解液を使用して、前記実験例1と同様の方法で1.3Ahポーチ形状の二次電池を製造した。該二次電池を満充電状態で70℃のオーブンに保存した後、1週間経過後及び2週間経過後、それぞれの初期充電容量に対比する放電容量を測定した(使用機器:PNE−0506充放電器)。
【0057】
表5は、前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの含有電解液又は未含有電解液を使用した電池の保存特性を比較して示したものである。表6は、前記化学式1で表される添加剤又は同一含有量の他の添加剤を含む電解液を使用した電池の保存特性を比較して示したものである。
【0058】
【表5】
【表6】
【0059】
表5に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例1〜6)は、該添加剤を添加しなかった場合(比較例1)よりも、電池の初期充電容量に対する70℃で保存後の放電容量が著しく安定化したことが確認できた。また、表6に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例3)は、他の種類の添加剤を同じ含有量で添加した場合(比較例2〜4)と比較して、電池の初期充電容量に対する70℃で保存後の放電容量が著しく安定化したことが確認できた。これは、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加することにより、電池の高温保存中に発生する電気化学的電極容量の減少が著しく緩和されたことを示す。このように、前記化学式1で表される添加剤を使用することにより、高温でも、安定した充放電容量が実現されることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の二次電池用電解液添加剤は、電解液に含まれて、出力特性、寿命特性、保存特性、及び耐電圧特性の面において優れた二次電池を提供することができ、モバイル用、電気自動車用、電動工具用、電動バイク用、ロボット用、又はドローン用の二次電池などに有用である。