【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明がこれらによって制限されるものではない。
【0035】
実施例で使用される、以下の化学式1:
【化3】
で表されるビシクログリオキサールスルフェートは、公知の化合物(CAS No.496−45−7)であり、ATOMAX(中国)、CHEMOS(ドイツ)、ABICHEM(ドイツ)、PEWAX(中国)などが販売している製品を購入することができる。また、該化学式1で表される化合物は、以下の調製例1のような公知の合成法により調製することができる。
【0036】
<調製例1:ビシクログリオキサールスルフェートの調製>
60℃のオイルバスに1000mL容の三口フラスコとコンデンサとを装着した。前記三口フラスコに1,1,2,2−テトラクロロエタン70gを入れ、温度を安定化させた後、硫酸(60% fuming grade)320gを投入して反応を開始した。反応液は、初期に透明ないし薄い茶色の粘性を示しており、反応開始から4時間経過後に結晶性固体が生成された。オイルバスを常温まで冷却し、さらに3時間低速攪拌した。以後5℃〜7℃の冷水バスに交換し、さらに2時間低速攪拌した。結晶性固体の追加生成がなくなった時点で反応を終了した。収得したスラリー溶液をフィルターで固液分離した後、20Torr下で12時間真空乾燥した。その結果、前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェート72.8gを得た(収率:84.4%)。
【0037】
<実施例1:電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)429g、エチルメチルカーボネート(EMC)589g、及びジエチルカーボネート(DEC)380gを混合して混合液を調製した。該混合液にLiPF
6を167.1g投入し、1.1MのLiPF
6溶液を調製した後、添加剤として前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを0.5重量%の含有量で添加し、二次電池用電解液を調製した。
【0038】
<実施例2:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを1.5重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0039】
<実施例3:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを3重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0040】
<実施例4:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを10重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0041】
<実施例5:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを15重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0042】
<実施例6:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを0.01重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0043】
<比較例1:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートを添加しなかったことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0044】
<比較例2:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの代わりに、1,3−トリメチレンスルトン(1,3−trimethylene sultone)を3重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0045】
<比較例3:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの代わりに、ビス(カルボキシメチル)ジスルフィド(bis(carboxymethyl)disulfide)を3重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0046】
<比較例4:電解液の調製>
前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの代わりに、エチレンサルファイト(ethylene sulfite)を3重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法で電解液を調製した。
【0047】
<実験例1:二次電池のインピーダンス(mΩ)の測定>
LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3とLiMnO
2とを1:1(重量比)で混合した正極と、人造黒鉛と天然黒鉛とを1:1(重量比)で混合した負極とを使用して、通常の方法により1.3Ahポーチ電池を組み立て、実施例1〜6及び比較例1〜4で調製した電解液6gを注入して二次電池を完成した。
【0048】
得られた二次電池を、常温における満充電対比60%の充電状態の電圧を維持したまま、3Cで10秒間放電したときに得られるインピーダンスを測定した(使用機器:PNE−0506充放電器)。前記方法で二次電池の常温初期インピーダンスを測定した後、70℃の高温オーブンで保存し、1週間経過後及び2週間経過後、それぞれの放電インピーダンスを測定した。
【0049】
表1は、前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの含有電解液又は未含有電解液を使用した電池のインピーダンスを比較して示したものである。表2は、前記化学式1で表される添加剤又は同一含有量の他の添加剤を含む電解液を使用した電池のインピーダンスを比較して示したものである。
【0050】
【表1】
【表2】
【0051】
表1に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例1〜6)は、該添加剤を添加しなかった場合(比較例1)よりも、電池の放電時のインピーダンスが低くなることが確認できた。また、表2に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例3)は、他の種類の添加剤を同じ含有量で添加した場合(比較例2〜4)と比較して、電池の放電時のインピーダンスが低くなることが確認できた。これは、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加することにより、電池の放電過程において電極と電解液との界面の低い抵抗特性によって、電池の出力特性が向上したことを示す。
【0052】
<実験例2:二次電池の寿命特性の測定>
実施例1〜6及び比較例1〜4で調製した電解液を使用して、前記実験例1と同様の方法で1.3Ahポーチ形状の二次電池を製造した。該二次電池に対して、満充電状態で70℃の高温において、4.2Vで1.3Aの充電速度及び2.7Vで1.3Aの放電速度で充電/放電を行った。該方法で行われた200回の充電/放電時の放電容量をPNE−0506充放電器(メーカー:(株)PNEソリューション)で測定し、初期容量に対する比率(%)を計算した。
【0053】
表3は、前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの含有電解液又は未含有電解液を使用した電池の寿命特性を比較して示したものである。表4は、前記化学式1で表される添加剤又は同一含有量の他の添加剤を含む電解液を使用した電池の寿命特性を比較して示したものである。
【0054】
【表3】
【表4】
【0055】
表3に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例1〜6)は、該添加剤を添加しなかった場合(比較例1)よりも、電池の70℃での寿命特性が顕著に改善された。また、表4に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例3)は、他の種類の添加剤を同じ含有量で添加した場合(比較例2〜4)と比較して、電池の70℃での寿命特性が顕著に改善された。これは、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加することにより、70℃において電池の充電/放電過程で発生する電気化学的電極容量の減少が著しく緩和されたことを示す。
【0056】
<実験例3:二次電池の保存特性(容量回復性)の測定>
実施例1〜6及び比較例1〜4で調製した電解液を使用して、前記実験例1と同様の方法で1.3Ahポーチ形状の二次電池を製造した。該二次電池を満充電状態で70℃のオーブンに保存した後、1週間経過後及び2週間経過後、それぞれの初期充電容量に対比する放電容量を測定した(使用機器:PNE−0506充放電器)。
【0057】
表5は、前記化学式1で表されるビシクログリオキサールスルフェートの含有電解液又は未含有電解液を使用した電池の保存特性を比較して示したものである。表6は、前記化学式1で表される添加剤又は同一含有量の他の添加剤を含む電解液を使用した電池の保存特性を比較して示したものである。
【0058】
【表5】
【表6】
【0059】
表5に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例1〜6)は、該添加剤を添加しなかった場合(比較例1)よりも、電池の初期充電容量に対する70℃で保存後の放電容量が著しく安定化したことが確認できた。また、表6に示すように、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加した場合(実施例3)は、他の種類の添加剤を同じ含有量で添加した場合(比較例2〜4)と比較して、電池の初期充電容量に対する70℃で保存後の放電容量が著しく安定化したことが確認できた。これは、前記化学式1で表される添加剤を電解液に添加することにより、電池の高温保存中に発生する電気化学的電極容量の減少が著しく緩和されたことを示す。このように、前記化学式1で表される添加剤を使用することにより、高温でも、安定した充放電容量が実現されることが確認できた。