特許第6735804号(P6735804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6735804挿入深さリミッタ及び圧縮補償器を有する隔壁アクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735804
(24)【登録日】2020年7月16日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】挿入深さリミッタ及び圧縮補償器を有する隔壁アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20200728BHJP
   A61M 39/26 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   A61M39/10
   A61M39/26
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-219625(P2018-219625)
(22)【出願日】2018年11月22日
(62)【分割の表示】特願2015-558065(P2015-558065)の分割
【原出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2019-55227(P2019-55227A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】13/766,543
(32)【優先日】2013年2月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イーピン マー
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/009029(WO,A1)
【文献】 米国特許第03831629(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0204648(US,A1)
【文献】 特開平04−244169(JP,A)
【文献】 特開2002−263197(JP,A)
【文献】 米国特許第05269771(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
A61M 39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端部と、遠位端部と、前記近位端部から前記遠位端部に延在する第一管腔とを有するカテーテルアダプタと、
前記第一管腔内に配置される隔壁と、
前記隔壁に近位の前記第一管腔内に滑動可能に配置される隔壁アクチュエータと
を備え、
前記隔壁アクチュエータは、セパレートデバイスが前記カテーテルアダプタの前記近位端部に挿入されるとき、前記隔壁のスリットに挿入するように構成され、
前記隔壁アクチュエータは、前記隔壁アクチュエータの遠位端に設置される先端部と、前記隔壁アクチュエータの近位端に設置される基部と、前記先端部および前記基部異なる圧縮可能な弾性材料で形成される圧縮補償器とを有し、
前記圧縮補償器は、前記先端部および前記基部の間に配置され、
前記隔壁アクチュエータは、前記基部、前記圧縮補償器、および前記先端部を通って延びる第二管腔を含め、
前記圧縮補償器は、前記第二管腔を流れる流体が前記圧縮補償器の内面と接触するように前記第二管腔の一部を画定し、
前記セパレートデバイスが前記カテーテルアダプタの前記近位端部に挿入されるとき、前記圧縮補償器は、圧縮され、それによって、前記隔壁アクチュエータの先端部の挿入深さのばらつきを吸収して、血液制御隔壁のスリットを通しての前記先端部の一定量の挿入深さを実現することを特徴とするカテーテルアセンブリ。
【請求項2】
前記隔壁アクチュエータは、前記隔壁アクチュエータの挿入深さを制限するように前記カテーテルアダプタまたは前記隔壁の表面と接触する挿入深さリミッタを更に備える、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項3】
前記挿入深さリミッタは、前記先端部が臨界挿入深さを越えて挿入されるのを防止するために前記先端部からの距離に配置される、請求項2に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項4】
前記カテーテルアダプタは、前記隔壁に隣接する前記カテーテルアダプタの表面に設置される停止機能部を備える、請求項2に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項5】
前記先端部は、面取りされている、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項6】
前記圧縮補償器および前記隔壁は、それぞれ実質的に等しい軸方向のバネ定数を有する、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項7】
前記圧縮補償器は、前記隔壁の軸方向のバネ定数より少ない軸方向のバネ定数を有する、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項8】
前記圧縮補償器は、前記隔壁の軸方向のバネ定数より約50%少ない軸方向のバネ定数を有する、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
静脈内注入システムは、一般に、輸液治療手順の一部として、患者の血管系にアクセスするために使用される。静脈内注入システムは、一般に、静脈内カテーテルを介して患者に接続されたIVバッグの流体リザーバを含む。カテーテルは、一般的に、注射器、静脈内チューブの部分、又はいくつかの他の外部ルアーデバイスにカテーテルアダプタを結合するための、ルアーロックコネクタ、又は他のタイプのコネクタを有するカテーテルアダプタに接続される。IVバッグからの流体は、カテーテルアダプタ及び静脈カテーテルを介して患者に流入する。
【0002】
いくつかの例では、カテーテルアダプタは、更に、カテーテルアダプタを通り抜ける流体経路内に配置されている血液制御隔壁を含む。血液制御隔壁は、流体経路を通る流体の流れを選択的に可能にするために設けられる。例えば、血液制御隔壁は、外部ルアーデバイスがカテーテルアダプタに結合され、直接的に隔壁と係合したとき、バイパスされ得るスリットを含むことができる。外部ルアーデバイスを取り外す際に、スリットは、血液がカテーテルアダプタから漏出するのを防止するために閉鎖される。
【0003】
いくつかの例では、カテーテルアダプタは、更に、外部ルアーデバイスによって接触されかつ隔壁のスリットを通して前進される隔壁アクチュエータを含む。隔壁アクチュエータは、一般的に、隔壁を介しての永続的なバイパス又は経路を提供するために隔壁を通して進められる。したがって、外部ルアーデバイスを除去すると、血液は、自由にカテーテルアダプタの外に流れ得る。したがって、隔壁アクチュエータを組み込んだ多くの静脈内注入システムは、単一の使用のために意図されている。例えば、患者のカテーテル挿入に続いて、隔壁は閉じられ、血液はカテーテルアダプタの流出が防止される。しかし、臨床医がカテーテルアダプタに外部ルアーデバイスを一旦取り付けると、隔壁アクチュエータは、隔壁のスリットを通して前進され、流体連通は、患者の血管系と外部ルアーデバイスとの間で確立される。臨床医が外部ルアーデバイスを取り外したい場合、臨床医は、患者から静脈内注入システムを丸ごと取り外すか、外部ルアーデバイスが新しい外部ルアーデバイス又はキャップに置き換えられる間、一時的に患者の静脈におけるカテーテルを閉塞しなければならない。血液制御カテーテルの幾つかにおけるこの制限は、既存の外部ルアーデバイスにおける挿入深さの大きなばらつきに起因する。アクチュエータが進む距離は、外部ルアーデバイスの挿入深さに依存する。挿入深さが少なすぎると、アクチュエータは、適切な流れを提供するために、隔壁のスリットを全く開けない場合がある。いくつかの最小必要挿入深さでは、アクチュエータは、十分な流量を提供するためにちょうど十分に、隔壁のスリットを開くだろう。外部ルアーデバイスがこの挿入深さで取り外された場合、隔壁は、アクチュエータを後退させて押し出し、独りでに閉じることになる。挿入深さの更なる増加は、隔壁のスリットの中に更にアクチュエータを押すこと以外は全く流量のためにならないだろう。臨海挿入深さが存在し、それを越えると、隔壁は外部ルアーデバイスの取り外し時に自動的に閉じないであろう。臨界挿入深さと最小必要挿入深さとの違いは、自動閉鎖設計の作動距離と呼ばれ、アクチュエータの隔壁、スリット、及び先端部の設計に依存する。多くの血液制御カテーテルの作動距離よりも大きい、外部ルアーデバイスの挿入深さの非常に大きなばらつきがある。挿入深さにおけるこのような大きなばらつきは、主に、様々なルアーデバイスの物理的設計のばらつきに起因し、部分的には、臨床医によって行われるルアー接続の強固さの程度におけるばらつきに起因する。血液制御弁と隔壁アクチュエータを有する典型的なカテーテルでは、最小必要挿入深さは、すべての既存の外部ルアーデバイスの最小挿入深さ以下になるように設定される。しかし、外部ルアーデバイスの挿入深さがすべての既存の外部ルアーデバイスの最大値であるとき、アクチュエータは、信頼性のある多用途血液制御カテーテルに達成が困難である臨界挿入深さを越えて押し込まれるだろう。
【発明の概要】
【0004】
したがって、現在、システム及び方法は注入手順の一部としての血液制御隔壁をバイパスするために存在していて、課題はまだ残っている。したがって、ここで説明したシステム及び方法で現在の技術を増大する又は取って代わるべく、当該技術において改善があるだろう。
【0005】
本発明は、まだ完全には現在利用可能なシステム及び方法によって解決されていない当該技術分野における問題及びニーズに応えて開発されてきた。したがって、これらのシステム及び方法は、血液制御隔壁のスリットを通しての隔壁アクチュエータの過挿入を防止するために、様々な特徴を有する隔壁アクチュエータを提供するために開発されている。したがって、本発明のシステム及び方法は、挿入深さを制御し、それによって、アセンブリからの外部ルアーデバイスの取り外しに続いて血液制御隔壁が一貫して自動閉鎖することを確保する、隔壁アクチュエータを組み込んだ静脈内注入アセンブリを提供する。
【0006】
いくつかの実装形態では、隔壁アクチュエータは、先端部、基部、及びそれらの間に延在する管腔を含む本体を有して提供される。隔壁アクチュエータは、更に、圧縮可能な弾性材料を含む圧縮補償器を含む。圧縮補償器は、隔壁アクチュエータの基部と先端部との間に配置される。隔壁アクチュエータが血液制御隔壁のスリットを通して押されたときに、圧縮補償器は圧縮される。圧縮補償器のバネ定数は、圧縮補償器の圧縮が外部ルアーデバイスの挿入深さのばらつきに起因する隔壁のスリットを通しての先端部の挿入深さのばらつきを吸収するように選択される。したがって、圧縮補償器は、血液制御隔壁のスリットを通しての先端部の一貫性のある挿入深さを実現する。
【0007】
隔壁アクチュエータは、更に、血液制御隔壁のスリットを通しての先端部の過挿入を防止するために、挿入深さリミッタを含むことができる。挿入深さリミッタは、一般に、隔壁アクチュエータの本体の外面に物理的特徴を備え、挿入深さリミッタは、スリットを通しての先端部のさらなる移動を阻止するために、血液制御隔壁の表面又は静脈内注入アセンブリの別の表面に接触する。このように、先端部の過挿入は防止され、スリットは自動閉鎖することができ、血液制御隔壁の外に先端部を押すことができる。
【0008】
いくつかの例において、本発明の様々な特徴は、アセンブリの血液制御隔壁を通しての隔壁アクチュエータの過挿入を防止する静脈内注入アセンブリを提供する。更に、隔壁アクチュエータは、血液制御隔壁のスリットを通しての隔壁アクチュエータの先端部の一貫した最小挿入深さと最大挿入深さとを達成するためのさまざまな特徴を備える。したがって、本発明の特徴の種々の組み合わせは、血液及び他の注入流体に臨床医を曝すことなく、患者の血管系にアクセスするために繰り返し使用することができる静脈内注入システムを提供する。
【0009】
本発明のこれらの及び他の特徴及び利点は、本発明の特定の実施形態に組み込むことができ、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう、又は以下に記載される本発明の実施によって知ることができる。本発明は、ここに記載されているすべての有利な特徴及びすべての利点が本発明の全ての実施形態に組み込まれることを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の上記及び他の特徴及び利点を得られる方法が容易に理解されるようにするために、上記で簡単に説明した本発明のより具体的な説明は、添付図面に示されているその具体的な実施形態を参照することによって提供されるだろう。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示し、したがって本発明の範囲を限定すると考えられるべきではない。
図1図1は、本発明の代表的な実施形態による挿入深さリミッタ及び圧縮補償器を有する隔壁アクチュエータの斜視図である。
図2A図2Aは、本発明の代表的な実施形態によるインアクティベート構成における血液制御隔壁と隔壁アクチュエータを有するカテーテルアセンブリの断面側面図である。
図2B図2Bは、アクティベート構成における血液制御隔壁と隔壁アクチュエータを有するカテーテルアセンブリの断面側面図であり、本発明の代表的な実施形態にしたがって隔壁アクチュエータの圧縮補償器が圧縮されているところの図である。
図3A図3Aは、最小挿入深さに、血液制御隔壁のスリットを通して挿入された隔壁アクチュエータを有するカテーテルアセンブリの断面側面図であり、本発明の代表的な実施形態にしたがって隔壁アクチュエータの圧縮補償器がわずかに圧縮されているところの図である。
図3B図3Bは、最大挿入深さに、血液制御隔壁のスリットを通して挿入された隔壁アクチュエータを有するカテーテルアセンブリの断面側面図であり、本発明の代表的な実施形態にしたがって隔壁アクチュエータの圧縮補償器が更に圧縮されている図である。
図4図4は、本発明の代表的な実施形態にしたがって、血液制御隔壁のスリットを通しての隔壁アクチュエータの先端部の遠位移動を最大挿入深さまでに制限する停止機能部を含むカテーテルアダプタを有するカテーテルアセンブリの断面側面図である。
図5図5は、外部ルアーデバイスの除去後のカテーテルアセンブリの断面側面図であり、本発明の代表的な実施形態にしたがって、スリットはその閉位置を取り戻し、それにより、スリットの外に隔壁アクチュエータを押し、圧縮補償器は弛緩構成を取り戻している図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
参照番号が同一又は機能的に類似の要素を示す、図面を参照することによって、本発明の現在好ましい実施形態が理解されることができる。一般的にここで説明されかつ図面に示された本発明の構成要素は、異なる幅広い多種多様な構成で配置されかつ設計され得ることが容易に理解されるであろう。したがって、図面に示されたような、以下のより詳細な説明は、請求されたような本発明の範囲を限定することを意図せず、単に本発明の現在好ましい実施形態を代表するものである。
【0012】
また、図は簡略化された又は部分的な図を示し得、図中の要素の寸法は明確性のために誇張され得、さもなければ比例していない可能性がある。加えて、単数形「1つ」や「該」は、文脈が特に明確に指示しない限り、複数の対象を含む。したがって、例えば、末端への参照は、一つ以上の端末への言及を含む。加えて、要素のリストに言及される場合(例えば、要素a、b、c)、そのような参照は、単独で列挙された要素のいずれか、列挙された要素の全て未満の任意の組み合わせ、及び/又は列挙された要素のすべての組み合わせを含むことが意図される。
【0013】
用語「実質的に」は、記載の特徴、パラメータ、又は値が正確に達成される必要がないことを意味するが、例えば、許容誤差、測定誤り、測定精度限界及び当業者に既知の他の因子を含む、ずれ又はばらつきは、特性を提供することを意図された効果を妨げない量で生じ得る。
【0014】
ここで使用する場合、用語「近位」、「上部」、「上」又は「上方」は、通常の動作でデバイスを用いるとき、デバイスを使用する臨床医に最も近くかつデバイスが用いられる患者から最も離れたデバイスの位置を指す。逆に、用語「遠位」、「底部」、「下」又は「下方」は、通常の動作でデバイスを用いるとき、デバイスを使用する臨床医から最も遠くかつデバイスが用いられる患者に最も近いデバイスの位置を指す。
【0015】
ここで使用する場合、用語「内」又は「内側」とは、通常の使用時に、デバイスの内側に向かっている、装置に対する位置を指す。逆に、ここで使用される場合、用語「外」又は「外側」は、通常の使用時に、デバイスの外側に向かっている、デバイスに対する位置を指す。
【0016】
図1を参照すると、隔壁アクチュエータ10が示されている。隔壁アクチュエータ10は、一般に、血液制御隔壁を通過する経路を提供することを支援するように静脈内注入アセンブリの構成要素として含まれる。例えば、いくつかの例では、(図示しない)静脈内カテーテルは、図2Aから図5に示されているように、血液制御隔壁30が位置する流体経路22を有するカテーテルアダプタ20に接続されている。いくつかの例において、血液制御隔壁30は前方チャンバ24及び後方チャンバ26に流体経路22を分割し、それにより、前方チャンバ24及び後方チャンバ26の間の流体の制御されない流れを防ぐ。これは、一般的にカテーテル挿入手順の間に臨床医が血液に曝されるのを防ぐために望まれる。患者の血管系へアクセスするとき、血液は、カテーテルを通って前方チャンバ24内に流れる。血液制御隔壁30がないと、血液は、後方チャンバ26へ流入し、カテーテルアダプタ20の近位開口部28から流出する。したがって、血液制御隔壁30は、流体経路22を通る流体流れを制御するための手段として設けられる。
【0017】
隔壁アクチュエータ10は、血液制御隔壁30を通る流体流れを容易にするためのさまざまな機能を備え得る。例えば、隔壁アクチュエータ10は、流体経路22を通って流れる流体の停滞を防止するために、様々なベントと分流器を含むことができる。隔膜アクチュエータ10は、流体経路22内に隔壁アクチュエータ10をセンタリングする機能を更に含むことができる。更に、隔壁アクチュエータ10は、流体経路22内の病原体の増殖及びコロニー形成を防止するために抗菌コーティングを含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、隔壁アクチュエータ10は、血液制御隔壁30のスリット32を開放付勢するのを助けるために面取り面を有する先端部11を含む。いくつかの実施形態では、先端部11の面取り面は、先端部11とスリット32との間の角度摩擦を、先端部11がそこに挿入されたときに低減する。したがって、隔壁アクチュエータ10は、スリット32を通って前進されることから解放されたとき、スリット32は自動閉鎖し、それにより、隔壁アクチュエータ10が再び後方チャンバ26内に配置されるように近位方向23に隔壁アクチュエータ10を移動させるべく面取り面を押圧する。先端部11の面取り面は、スリットが自動閉鎖するとき、隔壁アクチュエータ10を移動させるために必要な力を低減することが望ましい場合がある。
【0019】
隔膜アクチュエータ10は、カテーテルアダプタ20の近位開口部28の近くに配置されるように構成された基部12を更に含む。基部12は、一般に、近位開口部28に挿入される外部デバイスによって接触されるように構成された硬質ポリマー材料を含む。外部デバイスによって接触されたとき、隔壁アクチュエータ10は、後方チャンバ26を通過して遠位方向21に進められる。外部デバイスが、更に、近位開口部28に挿入されるとき、先端部11は、血液制御隔壁30のスリット32を通って押し出され、それらを通る経路を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、隔壁アクチュエータ10は、先端部11と基部12との間に配置された圧縮補償器40を更に備える。圧縮補償器40は、圧縮に続く弾力性のある圧縮性材料を含む。例えば、いくつかの実施形態では、圧縮補償器40は、合成ゴム材料、ヒドロゲル、エラストマーポリマー、並びに、粘弾性ポリマー及び発泡ポリウレタンのような他のポリマー材料を含む。圧縮補償器は、本明細書に記載の用途や機能に応じて任意の密度及び圧縮特性を含むことができる。
【0021】
いくつかの例では、圧縮補償器40は、血液制御隔壁30のスリット32を通しての先端部11の過挿入を防止する。例えば、いくつかの実施形態では、外部ルアーデバイスは、隔壁30のスリット32を介して先端部11を前進させるために、近位開口部28に挿入される。隔壁は、隔壁設計の軸方向バネ定数に応じて軸方向の動きに抵抗するだろう。いくつかの実施形態では、圧縮補償器のバネ定数は、隔壁の軸方向のバネ定数と同じになるように設計される。このような場合には、外部ルアーデバイスの挿入深さの半分が圧縮補償器の変形によって吸収される。アクチュエータの先端部のみ、挿入深さの距離の半分を進む。したがって、アクチュエータは、効果的に、50%分、既存の外部ルアーデバイスの挿入深さのばらつきを低減する。最小挿入深さで、圧縮補償器はわずかに圧縮され、血液制御隔壁は、十分な流量を有するのに十分なだけ開かれる。最大挿入深さで、圧縮補償器は、挿入深さの約50%圧縮され、アクチュエータの先端部は臨界挿入深さ未満進められる。両方の場合において、隔壁は、外部ルアーデバイスの取り外し時にアクチュエータを押し出すであろう。
【0022】
他の実施形態では、圧縮補償器のバネ定数は、隔壁の軸方向のバネ定数より50%少なくなるように設計されている。このような場合には、外部ルアーデバイスの挿入深さの3分の2は、圧縮補償器の変形によって吸収される。アクチュエータの先端部は、挿入深さの距離の3分の1だけ進む。したがって、アクチュエータは、効果的に、67%、既存の外部ルアーデバイスの挿入深さのばらつきを低減する。理想的には、圧縮補償器のバネ定数は、既存の外部ルアーデバイスの挿入深さばらつきに対する隔壁の自動閉鎖設計の作動距離の比が、圧縮補償器のバネ定数と隔壁の軸方向のバネ定数の合計に対する圧縮補償器のバネ定数の比よりも大きくなるように選択される。
【0023】
いくつかの例では、隔壁の自動閉鎖設計の作動距離は非常に小さく、圧縮補償器の対象のバネ定数は実用的であるにはあまりにも低い。したがって、いくつかの実施形態では、隔壁アクチュエータ10は、先端部11と基部12との間の位置で隔壁アクチュエータ10の本体に結合される挿入深さリミッタ50を更に備える。挿入深さリミッタ50は、スリット32を通しての先端部11の過挿入を防ぐように設けられる。
【0024】
挿入深さリミッタ50は、一般に、先端部11からの決定された距離52に隔膜アクチュエータ10に固定して結合される剛性部材を備える。いくつかの例では、挿入深さリミッタは、隔壁アクチュエータ10の成形面を含む。他の実施形態では、挿入深さリミッタ50は、隔壁アクチュエータの本体に取り付けられ、既知の方法により固定される剛性リング部材を備える。例えば、挿入深さリミッタ50は、接着剤、プラスチック溶接、又は摩擦嵌めを介して隔壁アクチュエータに固定され得る。
【0025】
距離52は、主に、血液制御隔壁30のスリット32を通しての先端部11の臨界挿入深さに基づいて決定される。先端部11の臨界挿入深さは、スリット32が自動閉鎖することを可能にし、それによりスリット32から先端部11を押し出す、スリット32の先端部11の最大深さとして理解される。先端部11の最小挿入深さは、所望の流量でスリット32を通して流体が流れることを許容する、隔壁30のスリット32を通しての先端部11の最小深さであると理解される。臨界挿入深さと同様に、最小挿入深さも、スリット32が自動閉鎖することを可能にし、それによりスリット32から先端部11を押し出す。スリット32が自動閉鎖するとき、隔壁アクチュエータ10は近位方向23に移動される。例えば、外部ルアーデバイスを取り外すとき、隔壁アクチュエータ10は、スリット32の自動閉鎖行為によって近位方向23に押される。図2に示すように、スリット32の自動閉鎖の結果、血液制御隔壁30と隔壁アクチュエータ10の構成を提供する。
【0026】
図2A及び図2Bを参照すると、いくつかの実施形態において、血液制御隔壁30のスリット32を介しての先端部11の臨界挿入深さは、挿入深さリミッタ50により制御される。いくつかの例では、挿入深さリミッタ50は、後方チャンバ26の内径にほぼ等しい又はそれ未満である外径80を含む。いくつかの実施形態では、前方チャンバ24は、更に、外径80が内径70よりも大きくなるように、縮小内径70を更に含む。このように、内径70は、遠位方向21における隔膜アクチュエータ10の移動を防ぐ又は制限する物理的障壁を提供する。図2Bに示すように、挿入深さリミッタ50と内径70との間の相互作用は、血液制御隔壁30を介しての隔壁アクチュエータ10の過挿入を防止する。いくつかの実施形態では、隔膜アクチュエータ10が最大挿入深さまで隔壁30を通って前進されるとき、隔壁30は、挿入深さリミッタ50と内径70との間に挟まれる。
【0027】
近位開口部28の中への外部ルアーデバイス16の挿入時に、基部12は接触され、隔壁アクチュエータ10は遠位方向21に進ませられる。いくつかの実施形態では、先端部11が隔壁30の隔膜34に接触するとき、圧縮補償器40が圧縮される。図3Aに示すように、先端部11はまた、最小必要挿入深さにまでスリット32を介して挿入され得る。先端部11の最小必要挿入深さは、スリット32を通しての流体の適切な流量を可能にするスリット32の中への先端部11の最小深さとして理解される。臨界挿入深さと同じように、最小必要挿入深さは、スリット32に自動閉鎖を可能にし、それによって外部ルアーデバイスを取り外す際に、スリット32から先端部11を押し出す。いくつかの例では、最小挿入深さは、短いルアー付きの外部ルアーデバイス16が部分的にカテーテルアダプタ20の近位開口部28に挿入されたときに達成される。短いルアー及び非強固接続は、圧縮補償器40をわずかに圧縮するだろう。そして、図示するように、先端部11は、最小挿入深さにスリット32を通して進められる。
【0028】
カテーテルアダプタ20の近位開口部28への外部ルアーデバイス16のさらなる挿入時、隔壁アクチュエータ10は、隔壁30を介して更に進められる。図3Bに示すように、非常に長いプローブ17付きの外部ルアーデバイスがカテーテルアダプタ20の近位開口部28に完全に挿入されたとき、いくつかの例では、スリット32を介しての隔壁アクチュエータ10の臨界挿入深さが達成される。図示するように、長いプローブ17及び、カテーテルアダプタ20と外部ルアーデバイス16との間の強固な接続は、圧縮補償器40を最大限圧縮し、臨界挿入深さにまで先端部11はスリット32を介して進められる。いくつかの実施形態では、近位開口部28の中への外部ルアーデバイス16の過挿入は、挿入深さリミッタ50の使用による血液制御隔壁30を介しての隔壁アクチュエータ10の付加的な挿入というよりむしろ、圧縮補償器40の付加的な圧縮をもたらす。
【0029】
図4を参照して、いくつかの実施形態では、隔膜アクチュエータ10及び挿入深さリミッタ50は、血液制御隔壁30を介しての隔壁アクチュエータ10の過挿入を防止するように構成されている。いくつかの実施形態では、カテーテルアダプタ20の内面は、遠位方向21への隔膜アクチュエータ10の移動を制限するべく挿入深さリミッタ50に接触するように構成された停止部25を備える。いくつかの例では、ストッパ25は、隔壁膜34から距離52において近位チャンバ26に配置される。したがって、先端部11がスリット32を介して進められるとき、挿入深さリミッタ50は環状隆起部120に接触し、それにより遠位方向21における先端部11のさらなる移動を制限する。距離52は、また、先端部11の臨界挿入深さを備え、該臨界挿入深さは先端部11のための挿入の深さを含み、よって、外部ルアーデバイス16が近位開口部28から取り外されたときに、スリット32はなお自動閉鎖が可能である。外部ルアーデバイス16を除去すると、隔膜アクチュエータ10は、スリット32が自動閉鎖するときに近位方向23に滑らかに動かされる。
【0030】
外部ルアーデバイス16の近位開口部28の中へのさらなる挿入の際に、圧縮補償器40は、スリット32を介しての先端部11のさらなる挿入をもたらすことなく、更に圧縮され得る。あるいは、圧縮補償器40のバネ定数は、隔壁の軸方向のバネ定数よりも大きくてもよい。このような場合には、圧縮補償器は、隔壁の中へのアクチュエータの先端部の前進未満、圧縮されるであろう。圧縮補償器40のバネ定数が隔壁の軸方向のバネ定数よりも十分に大きい場合、アクチュエータの挿入深さリミッタが停止機能部と係合するまで、圧縮補償器は、実質的に圧縮されていない可能性がある。圧縮補償器は、外部ルアーデバイスのさらなる挿入時に圧縮されるだけである。
【0031】
停止部25は、挿入深さリミッタ50に接触し、隔壁アクチュエータ10の遠位への移動を阻止する特徴の組み合わせのいずれかの機能を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、停止部25は、挿入深さリミッタの外径よりも小さい内径を有する環状リングを備える。隔壁アクチュエータ50が遠位方向21において前進されるとき、挿入深さリミッタ50は、スリット32を介しての先端部11の過挿入を防止するために、停止部25に接触する。したがって、いくつかの例において、距離52は、挿入深さリミッタ50が停止部25に接触するときに先端部11の臨界挿入が達成される距離を含む。
【0032】
近位開口部28から外部ルアーデバイス16を除去すると、図5に示すように、隔壁30は自己閉鎖を経験し、それによって、スリット32から後方チャンバ26内に先端部11を押し出す。いくつかの実施形態では、隔壁30は、弾性特性を有する弾性高分子材料を備える。例えば、いくつかの実施形態では、隔壁30は、シリコンを含む。他の実施形態では、隔壁30は、ポリテトラフルオロエチレンを含む。更に、外部ルアーデバイス16を除去すると、圧縮補償器40は解放され、それに非圧縮状態と非圧縮構成を取り戻す。スリット32の密封構成は、前方チャンバ24と後方チャンバ26との間の流体の漏れを防ぐ。上述のように、患者の血管系には、外部ルアーデバイス16を再接続することによって、再びアクセスすることができる。
【0033】
本発明は、広く、ここで記載され、以下に請求されるような、構造、方法、又は他の本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で実施することができる。記載された実施形態は、例示であり、限定的ではないとして、あらゆる点で考慮されるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示されている。特許請求の範囲の均等の意味及び範囲内に入るすべての変更は、その範囲内に包含される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5