特許第6735981号(P6735981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6735981無電解銅メッキ方法及び当該方法を用いたプリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735981
(24)【登録日】2020年7月17日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】無電解銅メッキ方法及び当該方法を用いたプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/28 20060101AFI20200728BHJP
   C23C 18/40 20060101ALI20200728BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   C23C18/28
   C23C18/40
   H05K3/18 B
   H05K3/18 A
   H05K3/18 H
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-78487(P2016-78487)
(22)【出願日】2016年4月8日
(65)【公開番号】特開2017-186635(P2017-186635A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092439
【弁理士】
【氏名又は名称】豊永 博隆
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 章央
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄也
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】田中 薫
(72)【発明者】
【氏名】内田 衛
【審査官】 菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−147987(JP,A)
【文献】 特開2013−237881(JP,A)
【文献】 特開2008−214706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−20/08
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれた吸着促進剤の少なくとも一種の含有液を非導電性基板に接触させる吸着促進工程(前処理工程)と、
(S2)(a)可溶性銅塩と、(b)還元剤と、(c)モノカルボン酸類、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、ポリカルボン酸類、糖質よりなる群から選ばれたコロイド安定剤の少なくとも一種とを含有する銅コロイド触媒液に非導電性基板を浸漬して、表面上に銅コロイド粒子を吸着させる触媒付与工程と、
(S23)触媒付与された非導電性基板を酸の含有液に接触させる再活性工程と、
(S3)触媒付与された上記非導電性基板上に無電解銅メッキ液を用いて銅皮膜を形成する無電解メッキ工程
とからなる無電解銅メッキ方法において、
上記工程S2での非導電性基板に対する銅コロイド粒子からなる触媒の付着量が0.0045〜0.0100mg/cm2であり、
触媒の平均粒子径は1〜20nmであることを特徴とする無電解銅メッキ方法。
【請求項2】
非導電性基板がガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネイト樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の無電解銅メッキ方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無電解銅メッキ方法により銅皮膜を形成し、当該無電解銅皮膜をシード層として電気銅メッキを行い、エッチング処理をして配線パターンを形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非導電性基板への無電解銅メッキに際し、予め基板に銅コロイド触媒液による触媒付与を施す無電解銅メッキ方法、並びに当該方法を用いたプリント配線板の製造方法に関して、上記触媒付与の付着形態を適正化し、或はさらに触媒活性を補助強化することで、銅触媒液の経時安定性と電着銅の皮膜外観を共に向上できるとともに、触媒付与工程で用いた触媒核をエッチングにより円滑に除去できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
銅、又は銅合金製の基板を始め、特に、ガラス・エポキシ樹脂、ガラス・ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、PET樹脂などの樹脂基板を初め、ガラス基板、セラミックス基板などの非導電性基板上に無電解銅メッキを施すには、先ず、基板上にパラジウム、銀、白金などの貴金属を吸着させてこれを触媒核とした後、この触媒核を介して無電解銅メッキ液により銅皮膜を基板上に析出させる方式が一般的である。
【0003】
一方、貴金属の触媒を使用せず、安価な銅、ニッケル、コバルトなどの特定金属を使用した触媒付与方式もあり、当該特定金属の触媒液では、可溶性金属塩を還元剤で処理して金属のコロイド粒子を生成させて、これを触媒核とすることが基本原理となっている。
このうち、銅コロイド触媒液を用いる従来技術を挙げると、次の通りである。
【0004】
(1)特許文献1
不導体表面上に無電解メッキ用触媒を付与した後、無電解メッキ(銅メッキ、ニッケルメッキ;段落42)、次いで電気銅メッキを行うプリント配線板の製造方法に関し、上記触媒液には銅塩と、還元剤と、アニオン系界面活性剤を含有する(請求項1〜3)。この場合、上記アニオン系界面活性剤は被メッキ物に対する銅などの触媒金属の吸着性を良好にするために添加する(段落30)。
上記銅コロイド触媒液(触媒2)の具体例である製造例2(段落52)では、硫酸銅及びアンモニア水(銅アンミン錯体)と、ステアリル硫酸ナトリウム(アニオン性界面活性剤)と、水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)を含有する。
また、当該銅コロイド触媒液のビルドアップ用樹脂に対する吸着量は0.498mg/dm2(=0.00498mg/cm2)である(表2(段落59)の触媒2の欄参照)。
尚、銅コロイド粒子の粒径の記載はない。
【0005】
(2)特許文献2
銀、パラジウムからなる金属触媒粒子を無電解メッキすべき被メッキ物に2000核/μm2以上の核密度で付着させる。
好ましくは2000〜5000核/μm2、特に2500〜3500核/μm2であり、核密度を適正化することで、初期析出で緻密で高密度な欠陥のない無電解メッキ皮膜を形成する(段落26、30)。
また、触媒付与後の無電解メッキとしては、無電解銅メッキ、無電解ニッケル−リンメッキ、無電解ニッケル−ホウ素メッキ、無電解パラジウムメッキ、無電解銀メッキなどが例示される(段落22)。
【0006】
(3)特許文献3
金属材料部と非金属材料部が混在する被メッキ物に対する無電解銅メッキに関して、金属材料部に置換触媒液で触媒金属を付与する第1触媒工程と、次いで、非金属材料部でも同様の触媒金属を付与する第2触媒工程と、触媒付与後に無電解銅メッキをする工程とからなる(請求項1と6、段落42)。
第1触媒工程の触媒金属としては、銅が例示される(段落24)。第2触媒工程の触媒金属はパラジウム、銀、ニッケルなどであり、銅の例示はない(段落31〜34)。
触媒金属の付着量は10〜120μg/dm2(=0.0001〜0.0012mg/cm2)である(請求項15)。
【0007】
(4)特許文献4
第一銅塩と次亜リン酸塩と塩素イオンを含み(請求項1)、或いはさらに有機又は無機還元剤(アミンボラン類、水素化ホウ素化合物、ギ酸など)を含む触媒溶液を調製する方法(請求項1〜3)、並びに、被メッキ物を界面活性剤(カチオン性、アニオン性、両性、ノニオン性;段落56)を含むコンディショニング剤で前処理し、上記触媒溶液で触媒処理した後、無電解メッキをする方法(請求項8〜9)である。
上記無電解メッキの種類は銅、ニッケル、金などであり、無電解銅メッキが好ましい(段落70)。
また、上記コンディショニング剤において、特に、カチオン性界面活性剤を用いると、被メッキ物に吸着した界面活性剤の親水基がマイナスに帯電し、上記第一銅イオンが吸着し易く、均一に銅イオンが吸着した触媒化被メッキ物が得られることが記載される(段落58)。
実施例1は銅コロイド触媒液の例であり、樹脂への触媒銅の付着量は543μg/dm2(=0.00534mg/cm2)である(段落79)。
【0008】
(5)特許文献5
可溶性銅塩と、分散剤と、錯化剤を添加し、還元剤により還元処理した後に安定剤を添加して無電解銅メッキ用の微細な銅触媒液を製造する。
上記分散剤はゼラチン、ノニオン性界面活性剤であり、錯化剤はジカルボン酸、オキシカルボン酸などであり、還元剤は水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランなどである。安定剤は次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボランなどである。
また、実施例4(第4頁左上欄)では、硫酸銅とゼラチンと水素化ホウ素ナトリウムと次亜リン酸塩を含有する触媒液に被メッキ物を浸漬した後、無電解銅メッキを施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−229280号公報
【特許文献2】特開2000−336486号公報
【特許文献3】特開2005−008936号公報
【特許文献4】特開2011−225929号公報
【特許文献5】特開平02−093076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の通り、無電解銅メッキに際して、予め金属コロイド粒子を基板などに触媒付与することは公知である。
無電解メッキの前工程として触媒付与する場合、付着量に下限があるのは当然であるが、例えば、最も一般的なパラジウム触媒では活性が高いので付着量は微量で良いが、銅コロイド触媒を用いた場合、パラジウムの下限付近の付着量をそのまま転用しても、無電解銅メッキで良好な銅皮膜を形成することはできない。
これは、触媒付与に際して金属コロイド粒子の付着形態を適正に制御しないと、無電解メッキ工程の析出初期に緻密な皮膜形成を担保できないことに一因があるとも考えられる。
また、同じ付着量でもコロイド粒子径が小さくなると表面積が増大して活性が増し、逆に、粒子径が大きくなると活性が劣るため、無電解銅皮膜を円滑に形成するには、コロイド粒子の付着量だけでなく、コロイド粒子径との複合において付着形態を制御する必要がある。
【0011】
本発明は非導電性基板に銅コロイド粒子を触媒付与した後に無電解銅メッキを施すに際して、触媒付与の付着形態を適正化することで、或は、さらに触媒活性を補助強化することで、銅触媒液の経時安定性と無電解銅の皮膜外観を共に向上することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、非導電性基板に対する銅コロイド触媒の付着量について、パラジウム付着量とは異なる付着領域であって、メッキ欠けやムラなどが生じない銅皮膜が得られる下限値を探り当てるとともに、触媒付与後にコロイド粒子の活性を有効に保持する工程を付加することで、触媒液の経時安定性と無電解銅の皮膜外観を共に向上できることを見い出して、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明1は、(S1)カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれた吸着促進剤の少なくとも一種の含有液を非導電性基板に接触させる吸着促進工程と、
(S2)(a)可溶性銅塩と、(b)還元剤と、(c)モノカルボン酸類、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、ポリカルボン酸類、糖質よりなる群から選ばれたコロイド安定剤の少なくとも一種とを含有する銅コロイド触媒液に非導電性基板を浸漬して、表面上に銅コロイド粒子を吸着させる触媒付与工程と、
(S3)触媒付与された上記非導電性基板上に無電解銅メッキ液を用いて銅皮膜を形成する無電解メッキ工程
とからなる無電解銅メッキ方法において、
上記工程S2での非導電性基板に対する銅コロイド粒子からなる触媒の付着量が0.0045〜0.0100mg/cm2であり、
触媒の平均粒子径は1〜20nmであることを特徴とする無電解銅メッキ方法である。
【0016】
本発明2は、上記本発明1において、非導電性基板がガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネイト樹脂であることを特徴とする無電解銅メッキ方法である。
【0017】
本発明3は、上記本発明1又は2の無電解銅メッキ方法により銅皮膜を形成し、当該無電解銅皮膜をシード層として電気銅メッキを行い、エッチング処理をして配線パターンを形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
パラジウムとは活性度が異なる銅コロイド粒子について、0.0045mg/cm2以上の付着量で非導電性基板に触媒付与すると、続く再活性工程を経た無電解銅メッキに際して、メッキ欠けやムラなどを円滑に防止して、均一性に優れた銅皮膜を形成できる。その一方で、銅コロイド粒子の付着量を適正範囲に抑制するため、非導電性基板に対する過剰付着に起因したメッキ皮膜の膨れなどを抑制し、皮膜の密着性が低下することはない。
この場合、付着量が同じでもコロイド粒子径の変化に伴い表面積が増減すると活性が異なるが、銅コロイドの平均粒子径を20nm以下に調整しながら、付着量を0.0045mg/cm2以上の上記適正範囲に制御するため、銅コロイド触媒液の経時安定性を増しながら、無電解銅の皮膜外観を良好に担保できる。また、銅コロイド粒子径を20nm以下で、付着量を0.0050mg/cm2以上に制御すると、皮膜の均一性を高めて無電解銅の皮膜外観をさらに向上できる。
【0019】
尚、上記特許文献1の表2には、銅コロイド触媒液のビルドアップ用樹脂に対する吸着量として0.498mg/dm2(=0.00498mg/cm2)が記載されるが、当該触媒液は銅塩と、還元剤と、アニオン系界面活性剤からなり(請求項1〜3)、コロイド安定剤(c)を必須成分とする本発明のコロイド触媒液とは異なる。
また、上記特許文献4の触媒化処理の項目(段落79)では、触媒液にCOP試片を浸漬することで銅の付着量を543μg/dm2(=0.00534mg/cm2)に設計しているが、当該触媒液には本発明のコロイド安定剤の開示はない。
【0020】
一方、触媒付与工程S2の後で無電解メッキ工程S3の前に再活性工程S23を加入すると、銅コロイド粒子の酸化を抑制して、銅コロイド粒子の活性を事後的に補助強化できる。
このため、吸着促進工程S1→触媒付与工程S2→無電解メッキ工程S3を順次行う本発明の無電解銅メッキ方法において、上記再活性工程S23を触媒付与後に組み込むことで、無電解銅の皮膜外観(特に皮膜の均一性)をさらに向上できる。
即ち、適正な工程を加重的に配しながら触媒付与を経た無電解銅メッキを行うことで、銅コロイド触媒の活性を円滑に保持でき、無電解銅メッキの確実性が増す。
【0021】
本発明の無電解メッキ方法で形成した銅皮膜をシード層とすることで、以後、このシード層に電気銅メッキをし、エッチング処理をして配線パターンを形成すればプリント配線板を製造することができる。
即ち、形成した電気銅皮膜の全体から不必要な部位を除去して所定のパターン部位だけ残すことにより(即ち、サブトラクティブ法)、或は、シード層にメッキレジストを張って電気銅メッキで所定のパターン部位にだけ銅皮膜を析出させ、メッキレジストを剥離してシード層をエッチング処理することより(即ち、アディティブ法;SAP(セミアディティブ法)がある)、パターン配線を形成することになるが、従来の無電解銅メッキ方法では触媒核に耐食性の高いパラジウムを使用していたため、上記エッチング処理でもパラジウム核の除去は困難であり、短絡などのリスクを排除できず、プリント配線板の信頼性が低下する恐れがあった。
これに対して、本発明の無電解銅メッキ方法では銅触媒核を付与するため、パラジウム核とは異なり、エッチング工程で触媒核を円滑に除去してプリント基板の信頼性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、第一に、吸着促進工程S1、触媒付与工程S2、再活性工程S23及び無電解メッキ工程S3を順次行う非導電性基板に対する無電解銅メッキ方法において、触媒付与工程S2の触媒液に可溶性銅塩と、還元剤と、特定のコロイド安定剤とを含有するとともに、銅コロイド触媒の平均粒子径を適正以下に微小化しながら、触媒液の付着量をパラジウム触媒とは異なる適正域に制御するメッキ方法であり、第二に、第一の無電解メッキ方法で形成した銅皮膜をシード層として電気銅メッキを行い、エッチング処理をして配線パターンを形成するプリント配線板の製造方法である。
上記非導電性基板は、ガラス・エポキシ樹脂、ガラス・ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、PET樹脂などの樹脂基板を初め、ガラス基板、セラミックス基板などをいう。
また、上記再活性工程S23は、触媒付与工程S2の後に酸洗浄を中核とする工程である。
【0023】
銅コロイド触媒液を用いた本発明の無電解銅メッキ方法は、次の3つの工程を順次組み合わせることを基本とする。
(S1)吸着促進工程
(S2)触媒付与工程
(S3)無電解銅メッキ工程
上記吸着促進工程(S1)はいわば触媒付与(S2)の前処理(予備処理)工程であり、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれた吸着促進剤の少なくとも一種の含有液を非導電性基板に接触させることを特徴とし、特定の界面活性剤の含有液を基板に接触させることで基板表面の濡れ性を高めて触媒活性を増強し、次工程での銅コロイド粒子の吸着を促進するものである。
吸着促進工程(S1)では、吸着を促進する見地から、正電荷を帯びたカチオン系や両性界面活性剤を用いるが、特にカチオン系界面活性剤が好ましい。また、カチオン系界面活性剤に少量のノニオン系界面活性剤を併用すると、吸着促進効果がさらに増す。
本発明の触媒液において、可溶性銅塩に還元剤を作用させて生じる銅コロイド粒子はゼータ電位がマイナスであるため、例えば、非導電性基板をカチオン性界面活性剤で接触処理すると、基板がプラス電荷を帯び易く、次工程における銅コロイド粒子の基板への吸着効率が増す。
【0024】
上記カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、或いはピリジニウム塩などが挙げられ、具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
上記ノニオン系界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、(ポリ)C1〜C25アルキルフェノール、(ポリ)アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
界面活性剤の含有量は0.05〜100g/Lであり、好ましくは0.5〜50g/Lである。界面活性剤の含有液の温度は15〜70℃程度、浸漬時間は0.5〜20分間程度が好ましい。
この吸着促進工程では、非導電性基板を界面活性剤の含有液を接触させることが必要であるため、液に浸漬させることが基本であるが、含有液を基板に噴霧したり、刷毛で塗布するなどしても差し支えない。
【0025】
上記吸着促進工程(S1)を終えた非導電性基板は純水で洗浄した後、乾燥し、或いは乾燥することなく、次の触媒付与工程(S2)に移行する。
触媒付与工程では、銅コロイド触媒液に非導電性基板を浸漬して、基板表面上に銅コロイドを吸着させる。
当該触媒液の液温は5〜70℃、好ましくは15〜60℃、浸漬時間は0.1〜20分、好ましくは0.2〜10分であり、浸漬処理に際しては、基板を触媒液に静置状態で浸漬すれば充分であるが、撹拌や揺動を行っても良い。
【0026】
この触媒付与工程(S2)で用いる上記銅コロイド触媒液の必須成分は、(a)可溶性銅塩と、(b)還元剤と、(c)コロイド安定剤である。
上記可溶性銅塩(a)は、水溶液中で第一又は第二銅イオンを発生させる可溶性の塩であれば任意のものが使用でき、特段の制限はなく、難溶性塩をも排除しない。具体的には、硫酸銅、酸化銅、塩化銅、ピロリン酸銅、炭酸銅、或いは酢酸銅、シュウ酸銅及びクエン酸銅等のカルボン酸銅塩、又はメタンスルホン酸銅及びヒドロキシエタンスルホン酸銅等の有機スルホン酸銅塩などが挙げられ、硫酸銅、クエン酸銅、メタンスルホン酸銅が好ましい。
【0027】
上記還元剤(b)としては、水素化ホウ素化合物、アミンボラン類、次亜リン酸類、アルデヒド類、アスコルビン酸類、ヒドラジン類、多価フェノール類、多価ナフトール類、フェノールスルホン酸類、ナフトールスルホン酸類、スルフィン酸類などが挙げられる。アルデヒド類はホルムアルデヒド、グリオキシル酸又はその塩などであり、多価フェノール類はカテコール、ヒドロキノン、レゾルシン、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸などであり、フェノールスルホン酸類はフェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸又はその塩などである。
【0028】
上記コロイド安定剤(c)はメッキ浴中で銅錯体を形成する化合物であり、触媒液の経時安定性を担保する機能を担うものである。
当該コロイド安定剤(c)は、モノカルボン酸類、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、ポリカルボン酸類、糖質よりなる群から選ばれる。
上記モノカルボン酸類としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0029】
上記オキシカルボン酸類としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、ゴルコヘプトン酸、グリコール酸、乳酸、トリオキシ酪酸、アスコルビン酸、イソクエン酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ロイシン酸、シトラマル酸、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0030】
上記アミノカルボン酸類としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、メタフェニレンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−四酢酸、ジアミノプロピオン酸、グルタミン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、オルニチン、システイン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、(S、S)−エチレンジアミンコハク酸及びこれらの塩などが挙げられる。
【0031】
上記ポリカルボン酸類としては、コハク酸、グルタル酸、マロン酸、アジピン酸、シュウ酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、メサコン酸及びこれらの塩などが挙げられる。
【0032】
上記糖質としては、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、イソマルツロース(パラチノース)、キシロース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、還元水飴、ラクチトール、還元イソマルツロース、グルコノラクトンなどが挙げられる。
上記グルコース、フルクトース、キシロースなどは単糖類、グルコノラクトンは単糖類の誘導体、ラクトース、マルトースなどは二糖類、ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどは糖アルコールに属するが、本発明の糖質は上記糖類及びその誘導体、糖アルコールを包含する概念である。
上記還元水飴は、ブドウ糖、マルトースなどの特定の上記糖類のアルデヒド基を水酸基に還元したものをいう。また、上記糖質としては、グルコース、フルクトース、キシロースなどの特定の単糖類が3以上のグリコシド結合で重合したオリゴマーも同じく有効である。
但し、上記糖質は特定の成分から選択されるので、澱粉、デキストリンなどは排除される。
好ましい糖質には、 グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、グルコノラクトン が挙げられ、 ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどの 糖アルコールが概ね好ましい。
【0033】
銅コロイド触媒液において、上記可溶性銅塩(a)は単用又は併用でき、その含有量は0.005〜3モル/L、好ましくは0.05〜2モル/L、より好ましくは0.04〜1.2モル/Lである。
上記還元剤(b)は単用又は併用でき、その含有量は0.005〜4モル/L、好ましくは0.02〜3モル/L、より好ましくは0.03〜2.2モル/Lである。還元剤の含有量が適正量より少ないと銅塩の還元作用が低下し、逆に、多過ぎると無電解メッキで析出する銅皮膜の均質性が低下する恐れがある。
上記コロイド安定剤(c)は単用又は併用でき、その含有量は0.001〜4モル/L、好ましくは0.01〜3モル/L、より好ましくは0.05〜2.2モル/Lである。
【0034】
銅コロイド触媒液において、上記(a)と(c)の含有モル比率はa:c=1:0.01〜1:40が好ましく、より好ましくはa:c=1:0.1〜1:25である。コロイド安定剤(c)の相対含有率が少な過ぎると触媒液の経時安定性が低下し、ひいては無電解メッキにより得られる銅皮膜に析出不良を生じる要因ともなる。逆に、コロイド安定剤(c)の含有率が多過ぎても、触媒液の経時安定性を損ない、得られる銅皮膜の質を低下させる恐れがある。
銅コロイド触媒液において、上記(a)と(b)の含有モル比率はa:b=1:0.01〜1:6が好ましく、より好ましくはa:b=1:0.05〜1:4である。
【0035】
本発明では、触媒液中の還元剤の作用により可溶性銅塩から銅コロイド粒子を生成するが、非導電性基板に対する当該コロイド粒子の付着量については、活性が高いパラジウム触媒は微量で触媒核付与の作用をするが、銅コロイド触媒を使用する本発明では、銅コロイド粒子の付着量は0.0045mg/cm2〜0.0100mg/cm2の範囲に調整する必要があり、好ましくは0.0050mg/cm2〜0.0080mg/cm2である。
付着量の下限を0.0045mg/cm2とするのは、下限値より低くなると次工程の無電解銅メッキで全面析出を達成できずメッキ欠け(未析出部分あり)が生じたり、析出不良になる弊害を排除するためであり、逆に、付着量が上記上限値を越えても効果の向上にあまり寄与しないうえ、付着量が過剰に多くなるとメッキ皮膜に膨れなどが生じて基板への密着性が損なわれる恐れがある。
【0036】
本発明では、銅コロイド触媒の平均粒子径(=平均粒径)は20nm以下に制御する必要がある。
具体的には、銅コロイド粒子に適した平均粒径は1〜20nmである。
銅コロイド粒子の平均粒径が20nm以下になると、触媒液に非導電性基板を浸漬した場合、コロイド粒子が基板の微細な凹凸面の窪みに入り込み、緻密に吸着し、或いは引っ掛かるなどのアンカー効果により基板表面に銅コロイド核の付与が促進されるものと推定できる。逆に、平均粒径が適正範囲より大きくなると、凝集、沈殿或いは分離などにより、安定な銅コロイドが得られにくいうえ、アンカー効果も期待できないため、銅コロイド粒子が基板表面に部分的にしか付与できなかったり、付与不良になる恐れがある。
この場合、付着量が同じでもコロイド粒子径の変化に伴い表面積が増減すると活性が異なるが、銅コロイド粒子の平均粒子径を20nm以下に制御しながら、付着量を0.0045mg/cm2以上の適正範囲に保持すると、銅触媒液の経時安定性に優れ、メッキ欠けを防止して無電解銅の皮膜外観を良好に向上できる。
特に、銅コロイド触媒の平均粒子径を20nm以下、基板に対する付着量を0.0050mg/cm2以上に調整すると、メッキ欠けを防止できるとともに、ムラをなくして皮膜の均一性を良好に担保できる。
【0037】
本発明の銅コロイド触媒液には界面活性剤を含有できるが、触媒活性を良好に保持するには、例えば、950mg/L以下の少量に抑制することが好ましい。
上記界面活性剤としては、ノニオン系、両性、カチオン系、或いはアニオン系の各種界面活性剤を使用できる。
上記界面活性剤のうち、カチオン系、両性、ノニオン系の各種界面活性剤は前記吸着促進工程(S1)で説明した通りである。
また、アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。
【0038】
本発明の銅コロイド触媒液には、コロイド粒子の分散性を向上し、無電解銅メッキに際して均一でムラのない皮膜を得るために、合成系の水溶性ポリマーを含有することができる。
当該合成系水溶性ポリマーを触媒液に含有するとコロイド粒子の分散性が向上し、もって無電解銅メッキに際して、優れた均一性とムラのない銅皮膜の析出に寄与する。
上記合成系水溶性ポリマーとは、ゼラチン、澱粉などの天然由来の水溶性ポリマーを排除する意味であり、半合成系のカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)などのセルロース誘導体は排除しない。
上記合成系の水溶性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリル酸塩などが挙げられ、特に、高分子量のPEG、PVP、PVAなどが好ましい。
合成系の水溶性ポリマーは単用又は併用でき、その触媒液に対する含有量は0.05〜100g/Lであり、好ましくは0.5〜50g/L、さらに好ましくは1.0〜30g/Lである。
【0039】
本発明の銅コロイド触媒液は水系が好ましく、触媒液の溶媒には水及び/又は親水性アルコールが適している。
また、当該触媒液について、中性付近では触媒活性が低下し易いため、液のpHは中性域(pH6〜8)を除く酸性側又はアルカリ側が好ましく、具体的にはpH1〜6及び8〜12が適しており、好ましくはpH2〜5及び8〜11に調整すると銅コロイド粒子は安定化し易い。
【0040】
当該触媒液の調製に際しては、還元剤から銅イオンに電子を円滑に供与するため、還元剤の溶液を可溶性銅塩(及びコロイド安定剤)の含有溶液に時間をかけて緩やかに滴下して製造することが好ましい。例えば、5〜50℃(好ましくは10〜40℃)の還元剤溶液を銅塩溶液に滴下して5〜1200分間(好ましくは10〜300分間)撹拌し、触媒液を調製する。
尚、触媒液の調製では、可溶性銅塩の溶液を還元剤の液に滴下することを排除するものではない。
【0041】
上記触媒付与工程(S2)において、触媒液に浸漬した非導電性基板は純水で洗浄した後、乾燥し、或いは乾燥することなく、無電解銅メッキ工程(S3)に移行する。
無電解銅メッキは、従来と同様に処理すれば良く、特段の制約はない。無電解銅メッキ液の液温は一般に15〜70℃、好ましくは20〜60℃である。
銅メッキ液の撹拌では、空気撹拌、急速液流撹拌、撹拌羽根等による機械撹拌等を使用することができる。
本発明の無電解銅メッキ方法で銅皮膜を形成する非導電性基板は、前述した通り、ガラス・エポキシ樹脂、ガラス・ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの樹脂基板、或いはガラス基板やセラミックス基板などをいう。
【0042】
無電解銅メッキ液の組成に特段の制限はなく、公知の銅メッキ液を使用できる。
無電解銅メッキ液は、基本的に可溶性銅塩と、還元剤と、錯化剤を含有し、或いは、さらに界面活性剤やpH調整剤などの各種添加剤、又は酸を含有できる。
可溶性銅塩については、前記銅コロイド触媒液で述べた通りである。
【0043】
無電解銅メッキ液に含有される還元剤についても、前記銅コロイド触媒液で述べた通りであり、ホルムアルデヒド(ホルマリン水)を初め、次亜リン酸類、亜リン酸類、アミンボラン類、水素化ホウ素類、グリオキシル酸などであり、ホルマリン水が好ましい。
【0044】
無電解銅メッキ液に含有される錯化剤については、前記銅コロイド触媒液で述べたコロイド安定剤と共通する部分もあり、具体的には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)などのアミノカルボン酸類、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸などのオキシカルボン酸類、チオグリコール酸、グリシンなどである。
【0045】
無電解銅メッキ液には、液のベース成分として有機酸及び無機酸、或いはその塩を含有しても良い。
上記無機酸には、硫酸、ピロリン酸、ホウフッ酸などが挙げられる。また、有機酸には、グリコール酸や酒石酸等のオキシカルボン酸、メタンスルホン酸や2―ヒドロキシエタンスルホン酸等の有機スルホン酸などが挙げられる。
【0046】
本発明の無電解銅メッキ方法では、触媒付与工程(S2)と無電解メッキ工程(S3)の間に、再活性工程(S23)を組み込む。
再活性工程S23は、触媒付与された非導電性基板を酸の含有液に接触させることを特徴とする。基板を酸に接触させることで、コロイド粒子が部分的に酸化されて酸化銅になるのを、硫酸などで溶解して酸化膜を除去して再生し、コロイド粒子の活性を充分に保持することができる。
これにより、再活性工程S23なしの場合に比べて当該触媒付与による活性度を事後的に補助強化することができ、ビアやスルホールのある複雑な形状の基板に対してもめっきムラや断線の弊害を確実に防止し、銅皮膜の密着性をより向上できる。
再活性工程にあっては、酸の濃度は10〜200g/L、好ましくは20〜100g/Lであり、酸には硫酸、塩酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、スルファミン酸などの無機酸、有機スルホン酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、グリオキシル酸等のカルボン酸などの有機酸を使用できる。
再活性の処理温度は5〜70℃、好ましくは15〜60℃であり、処理時間は0.1〜20分、好ましくは0.2〜10分である。
【0047】
また、本発明の無電解銅メッキ方法では、吸着促進工程(S1)の後であって触媒付与工程(S2)の前に予備浸漬工程(S12)を加入することもできる。
上記予備浸漬工程S12は、吸着促進処理された非導電性基板を上記銅コロイド触媒液のうちの還元剤(b)及びコロイド安定剤(c)の少なくとも一種を含有する液に浸漬することを特徴とする。この予備浸漬処理により、吸着促進工程S1で用いた界面活性剤が次工程の触媒液に混入して汚染し、失活することを防止できる。即ち、触媒活性の補強において、上記再活性工程S23が事後的な補助強化であるのに対して、予備浸漬工程S12は事前の補強強化である。
具体的には、還元剤(b)又はコロイド安定剤(c)を単用しても良いし、還元剤(b)とコロイド安定剤(c)の混合物、例えば、還元剤とオキシカルボン酸類、還元剤とアミノカルボン酸類の各混合物なども有効である。
当該予備浸漬工程S12での還元剤(b)とコロイド安定剤(c)の濃度は、前記触媒付与工程S2での触媒液の濃度に準じる。また、当該工程S12での浸漬時間は1〜3分程度、浸漬温度は常温で良い。
【0048】
次いで、本発明の無電解銅メッキ方法を適用してプリント配線板を製造する方法を説明する。
前述したように、プリント配線板の製造方式は、
(1)全面に形成した電気銅皮膜から不必要な部位を除去して、所定のパターン部位だけ残すサブトラクティブ法と、
(2)基板にメッキレジストを張って所定のパターン部位にだけ銅皮膜を析出させるアディティブ法に大別される。
上記サブトラクティブ法では、本発明の無電解メッキ方法で形成した銅皮膜をシード層として全面に電気銅メッキを行い、メッキレジストを張り、エッチング処理をして配線パターンを形成する。従来では、触媒付与に耐食性の高いパラジウムを使用していたので、エッチング処理でもパラジウム核の除去が困難であったが、本発明では、触媒付与に銅を使用するため、パラジウム触媒核とは異なり、触媒核の除去が容易になり、プリント配線板の信頼性を向上できるという利点がある。
一方のアディティブ法を代表的なSAPで説明すると、本発明の無電解メッキ方法で形成した銅皮膜をシード層として、非回路部位に予めメッキレジストを張り、電気銅メッキを行い、レジストを剥離し、シード層をエッチング処理することで配線パターンを形成する。この場合でも、本発明では触媒付与に銅を使用しているため、従来のパラジウム触媒核とは異なり、触媒核の除去が容易になり、プリント配線板の信頼性を向上できる(後述の試験例参照)。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の吸着促進剤の含有液、銅コロイド触媒液、並びに無電解銅メッキ液の調製を含む無電解銅メッキ方法の実施例を述べるとともに、銅コロイド触媒液の経時安定性と上記実施例で得られた銅皮膜の外観についての評価試験例を順次説明する。
また、上記無電解銅メッキ方法を適用してSAPでプリント配線板を製造するに際し、エッチング処理をした非導電性基板からシード層が除去される度合についての評価試験例を併せて説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0050】
《無電解銅メッキ方法の実施例》
下記の実施例1〜3のうち、実施例1は吸着促進工程(S1)→触媒付与工程(S2)→再活性工程(S23)→無電解銅メッキ工程(S3)からなる無電解銅メッキの例であり、他の実施例2〜3は当該実施例1を基本としたものである。
即ち、実施例2は実施例1を基本として銅コロイド触媒液の付着量を減じた例、同じく実施例3は銅コロイド触媒液の粒子径を微細化した例である。
また、参考例1は実施例1を基本として再活性工程(S23)を省略した例、参考例2は銅コロイド触媒液の平均粒子径を適正範囲より増した例、参考例3は銅コロイド触媒液の付着量を適正範囲より減じた例である。
【0051】
一方、下記の比較例1〜4のうち、比較例1は上記実施例1を基本として銅コロイド触媒液の付着量を本発明の適正範囲より減じた例、比較例2は上記実施例1を基本として銅コロイド触媒液の粒子径を本発明の適正範囲より大きくした例、比較例3は実施例1を基本として銅コロイド触媒液から本発明のコロイド安定剤を省略した例である。比較例4は冒述の特許文献1に準拠した例であり、本発明のコロイド安定剤に代えてアニオン性界面活性剤を含有した銅コロイド触媒液を使用した例である。
【0052】
(1)実施例1
[無電解銅メッキの処理手順]
先ず、非導電性基板であるガラス・エポキシ樹脂基板(パナソニック電工(株)製のFR−4、板厚:1.0mm)を準備し、下記の前工程(S0)(脱脂 / デスミア/ 中和処理)を施したものを試料基板とした。
そして、この前工程を経た試料基板を吸着促進工程(S1)→触媒付与工程(S2)→再活性工程(S23)→無電解銅メッキ工程(S3)に順番に移行させて無電解銅メッキを行った。
【0053】
(S0)前工程
脱脂液、デスミア処理液及び中和処理液の各組成は以下の通りである。
[脱脂液]
ポリオキシアルキレントリデシルエーテル 2g/L
[デスミア処理液]
過マンガン酸カリウム 50g/L
水酸化ナトリウム 20g/L
[中和処理液]
硫酸 50g/L
しゅう酸 10g/L
上記試料基板を脱脂液に40℃、2分の条件で浸漬し、純水で洗浄した後、デスミア処理液に80℃、10分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。その後、中和処理液に40℃、10分の条件で浸漬し、純水で洗浄、乾燥することで、試料基板に吸着したマンガンを溶解除去した。
【0054】
(S1)吸着促進工程
下記の組成で吸着促進剤の含有液を調製し、当該含有液に前記試料基板を50℃、2分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。
[吸着促進剤の含有液]
ジアリルアミンポリマーの4級アンモニウム塩 5g/L
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル 1g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 12.0
(S2)触媒付与工程
先ず、銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液を下記に示す。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.25モル/L
キシリトール 0.30モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
次いで、上記銅コロイド触媒液に吸着促進処理を施した試料基板を上記触媒液に25℃、10分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は15nm、触媒液の付着量は0.0060mg/cm2であった。
(S23)再活性工程
下記の組成で再活性液を調製し、当該再活性液に前記試料基板を30℃、1分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。
[再活性液]
硫酸 0.15モル/L
(S3)無電解銅メッキ工程
下記の組成で無電解銅メッキ液を建浴し、上記再活性処理を施した試料基板を当該無電解銅メッキ液中に浸漬して、50℃、10分の条件で無電解メッキを施して、試料基板上に銅皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
[無電解銅メッキ液]
硫酸銅五水和物(Cu2+として) 2.0g/L
ホルムアルデヒド 5.0g/L
EDTA 30.0g/L
水酸化ナトリウム 9.6g/L
残余 純水
pH(20℃、水酸化ナトリウムで調整) 12.8
【0055】
(2)実施例2(実施例1の付着量を低減した例)
前工程(S0)、吸着促進剤工程(S1)、触媒付与工程(S2)、再活性工程(S23)、無電解銅メッキ工程(S3)の各工程における処理液の組成はすべて実施例1と同じに設定した。
一方、触媒付与工程(S2)の処理条件は25℃、5分に変更し、その他の工程の処理条件は実施例1と同じに設定した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は15nm、触媒液の付着量は0.0050mg/cm2であった。
【0056】
(3)実施例3(実施例1の粒子径を下げた例)
処理工程及び処理条件は実施例1と同じに設定したが、各工程の処理液のうち、触媒付与工程(S2)の銅コロイド触媒液については下記の組成に変更した。
(S2)触媒付与工程
銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液は次の通りである。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.35モル/L
キシリトール 0.30モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は10nm、触媒液の付着量は0.0060mg/cm2であった。
【0057】
(4)参考例1(再活性工程(S23)省略:S1→S2→S3)
実施例1を基本として再活性工程(S23)を省略した例であり、各工程の処理液及び処理条件はすべて実施例1と同じに設定した。
即ち、前工程(S0)を施した前記試料基板を50℃、2分の条件で浸漬し(S1)、純水で洗浄した後、銅コロイド触媒液に25℃、10分の条件で浸漬し(S2)、純水で洗浄した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は15nm、触媒液の付着量は0.0060mg/cm2であった。
さらに、無電解銅メッキ液中に50℃、10分の条件で無電解メッキ(S3)を施して、試料基板上に銅皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
【0058】
(5)参考例2(粒子径を25nmとした例)
処理工程及び処理条件は実施例1と同じに設定したが、各工程の処理液のうち、触媒付与工程(S2)の銅コロイド触媒液については下記の組成に変更した。
(S2)触媒付与工程
銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液は次の通りである。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.20モル/L
キシリトール 0.30モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は25nm、触媒液の付着量は0.0060mg/cm2であった。
【0059】
(6)参考例3(付着量を0.0040mg/cm2とした例
前工程(S0)、吸着促進剤工程(S1)、触媒付与工程(S2)、再活性工程(S23)、無電解銅メッキ工程(S3)の各工程における処理液の組成はすべて実施例1と同じに設定した。
一方、触媒付与工程(S2)の処理条件を25℃、2分に変更し、その他の工程の処理条件は実施例1と同じに設定した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は15nm、触媒液の付着量は0.0040mg/cm2であった。
【0060】
(7)比較例1(付着量が下限値より少ない)
前工程(S0)、吸着促進剤工程(S1)、触媒付与工程(S2)、再活性工程(S23)、無電解銅メッキ工程(S3)の各工程における処理液の組成はすべて実施例1と同じに設定した。
一方、触媒付与工程(S2)の処理条件を25℃、30秒に変更し、その他の工程の処理条件は実施例1と同じに設定した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は15nm、触媒液の付着量は0.0020mg/cm2であった。
【0061】
(8)比較例2(粒子径が70nmより大きい)
処理工程及び処理条件は実施例1と同じに設定したが、各工程の処理液のうち、触媒付与工程(S2)の銅コロイド触媒液については下記の組成に変更した。
(S2)触媒付与工程
銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液は次の通りである。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.10モル/L
キシリトール 0.10モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は75nm、付着量は0.0050mg/cm2であった。
【0062】
(9)比較例3(銅コロイド触媒液からコロイド安定剤を抜いた)
処理工程及び処理条件は実施例1と同じに設定したが、触媒付与工程(S2)の銅コロイド触媒液を下記の組成に変更した。銅コロイド触媒液以外の処理液は実施例1と同じに設定した。
(S2)触媒付与工程
銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液は次の通りである。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌した。
その結果、銅触媒粒子はすべて塊状となって凝集し、沈殿が発生した。従って、次の無電解銅メッキ工程(S3)には移行しなかった。
【0063】
(10)比較例4(銅コロイド触媒液のコロイド安定剤をアニオン性界面活性剤に変更)
処理工程及び処理条件は実施例1と同じに設定したが、触媒付与工程(S2)の銅コロイド触媒液を下記の組成に変更した。銅コロイド触媒液以外の処理液は実施例1と同じに設定した。
(S2)触媒付与工程
銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液は次の通りである。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
ステアリル硫酸ナトリウム 1g/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は35nm、付着量は0.0040mg/cm2であった。
【0064】
《銅コロイド触媒液の経時安定性試験例》
そこで、上記実施例1〜3、参考例1〜3、比較例1〜4で建浴した各銅コロイド触媒液について、下記の基準でコロイド安定性の優劣を評価した。
○:建浴後2カ月以上経過しても沈殿、或いは分解が起こらなかった。
△:建浴後1週間以内に沈殿が生じ、或いは分解した。
×:コロイド粒子が生成しないか、建浴後すぐに沈殿、或いは分解した。
【0065】
《無電解銅メッキにより析出した銅皮膜の外観評価試験例》
皮膜外観は皮膜の析出性(a)と、皮膜の均一性(b)を総合的に判断して評価した。
即ち、「皮膜の析出性」は無電解メッキで銅皮膜が円滑に析出するか否かを主眼とする基本的な評価であり、「皮膜の均一性」は析出した皮膜がムラなく均一性を保持できているか否かを主眼とする評価である。
(a)皮膜の析出性
上記実施例1〜3、参考例1〜3、比較例1〜4で建浴した各銅コロイド触媒液を用いた場合、得られた銅メッキ皮膜の析出性を目視により下記の基準で評価した。
○:銅メッキ皮膜が基板に全面析出した。
△:基板の一部に未析出部分(メッキ欠け)が認められた。
×:銅皮膜が析出しなかった。
(b)皮膜の均一性
上記(a)と同様に、得られた銅メッキ皮膜の析出性を目視により下記の基準で評価した。
この場合、上記評価(a)と当該評価(b)の関係を示すと、いわば、上記(a)の評価○をさらに展開して区分けしたものが当該(b)の評価◎〜○であり、上記(a)の評価△は当該(b)では×に相当する。
◎:銅メッキ皮膜は均一でムラがなかった。
○:皮膜の一部にムラが認められた。
×:未析出部分が認められた。
尚、析出皮膜の「ムラ」は、皮膜の緻密性や平滑性などに周囲と異なる部分があると認められる現象で、厳密には皮膜の「均一性」とは異なる概念であるが、本発明では特段、厳密な区別評価はしなかった。
【0066】
《銅コロイド触媒液の経時安定性と皮膜外観についての試験結果》
下表において、実施例、比較例のかっこ内の数値のうち、左側は触媒液の付着量(単位はmg/cm2)、右側はコロイド触媒の粒子径(単位はnm)を表す。
また、下表において、比較例1の皮膜の均一性での「−−」は、皮膜が析出しなかったため、均一性の評価外であることを意味する。比較例3の皮膜の析出性と均一性での「−−」は、触媒付与工程(S2)で沈殿が生じたので、次の無電解銅メッキ工程(S3)には移行せず、従って、皮膜の評価は行わなかったことを意味する。
経時安定性 皮膜の析出性 皮膜の均一性
実施例1(0.006、15) ○ ○ ◎
実施例2(0.005、15) ○ ○ ◎
実施例3(0.006、10) ○ ○ ◎
参考例1(S23を省略) ○ ○ ○
参考例2(0.006、25) ○ ○ ○
参考例3(0.004、15) ○ ○ ○

比較例1(0.002、15) ○ × −−
比較例2(0.005、75) ○ △ ×
比較例3(安定剤なし) × −− −−
比較例4(安定剤→アニオン) △ △ ×
【0067】
《銅コロイド触媒液の経時安定性とメッキ皮膜外観の総合評価》
上表において、銅コロイド触媒液の付着量が本発明の適正範囲より大幅に少ない比較例1では、当然ながら非導電性基板に皮膜は析出しなかった。また、付着量を本発明の適正範囲の下限より若干少なく設定した参考例3では皮膜が円滑に析出するが、この参考例3より付着量を増して適正範囲に設定した実施例1では当該参考例3より皮膜の均一性に優れていた。パラジウム触媒の場合、比較例1程度、或はこれより微量の付着量でも触媒付与に有効性を示すが、活性度を異にする銅コロイド触媒液では、付着量をパラジウム触媒とは異なる適正域に制御することが重要であると判断できる。
また、銅コロイド触媒液の付着量は実施例1と同じであるが、平均粒子径が本発明の適正範囲より大きい比較例2では、触媒液の経時安定性に問題はなかったが、非導電性基板への析出においてメッキ欠けが発生した。付着量は実施例1と同じで、平均粒子径を適正範囲の上限より少し大きく設定した参考例2では皮膜の一部にムラが生じたが、平均粒子径を当該参考例2より微細にした実施例1、さらに微細にした実施例3では皮膜の均一性に優れていた。
以上のことから、非導電性基板に銅コロイド触媒に付与したのち、無電解メッキで銅皮膜を円滑に析出させるには、銅コロイド触媒液の付着量を適正値以上に、また、その粒子径を適正値以下に制御する必要があることが分かる。さらに、触媒液の付着量と粒子径を適正範囲に制御すると、皮膜の均一性を向上してムラをなくし、美麗な皮膜外観を得られることが判断できる。
【0068】
銅コロイド触媒液の付着量と粒子径は本発明の適正範囲を満たすが、触媒液に本発明のコロイド安定剤を含まない比較例3では、コロイド粒子が凝集して沈殿してしまうため、無電解メッキでの銅の析出は望めなかった。従って、この比較例3を実施例1〜3に対比すると、無電解メッキで銅皮膜を円滑に析出させるためには、触媒液の付着量と粒子径(即ち、付着形態)を適正化するだけでは足りず、触媒液へのコロイド安定剤の含有が必須であることが分かる。
一方、比較例4は冒述の特許文献1に準拠した例で、銅コロイド触媒液の付着量と粒子径は本発明の適正範囲を満たす一方で、触媒液に本発明のコロイド安定剤に代えてアニオン性界面活性剤を含むものであり、析出皮膜にメッキ欠けが発生したため、析出性の評価は△であり、均一性の評価は×であった。また、銅コロイド触媒液について、経時安定性の評価も△であった。
【0069】
次いで、実施例1〜3、参考例1〜3について詳細に検討する。
先ず、参考例2と実施例1と実施例3に着目すると、触媒液の付着量は一定であり(0.0060mg/cm2)、コロイド触媒の粒子径は夫々25nm、15nm、10nmに順次微細になっている。参考例2(25nm)では析出皮膜にムラが見られたが、これより粒子径を微細にした実施例1(15mn)、実施例3(10mn)ではムラは見られず、皮膜の均一性に優れていた。従って、同じ付着量でも粒子径が微細になると活性が増して皮膜の均一性の向上に寄与し、粒子径が大きくなると活性が減少することが分かる。
また、参考例3、実施例2、実施例1に着目すると、触媒液のコロイド触媒の粒子径は一定であり(15nm)、触媒液の付着量は夫々0.0040mg/cm2、0.0050mg/cm2、0.0060mg/cm2に順次増している。参考例3(0.0040mg/cm2)では析出皮膜にムラが見られたが、付着量をこれより増した実施例2(0.0050mg/cm2)、実施例1(0.0060mg/cm2)ではムラは見られず、皮膜の均一性に優れていた。
以上を総合すると、皮膜析出を円滑にするためには、触媒液の付着量とコロイド触媒の粒子径を共に適正化することが重要であり、適正域においては付着量を増すほど、また、粒子径を微細化するほど析出皮膜の均一性の向上に有効である。
【0070】
一方、実施例1と参考例1に着目すると、触媒液の付着量とコロイド触媒の粒子径は同じである一方で、実施例1は吸着促進工程(S1)→触媒付与工程(S2)→再活性工程(S23)→無電解銅メッキ工程(S3)を順次施した例であり、参考例1は実施例1の再活性工程(S23)を省略した例である。参考例1では析出皮膜にムラが見られたが、再活性工程(S23)を組み込んだ実施例1ではムラは見られず、皮膜の均一性に優れていた。
従って、吸着促進工程(S1)、触媒付与工程(S2)及び無電解銅メッキ工程(S3)を順次施すことで、無電解銅皮膜を円滑に析出できるが、触媒付与工程(S2)と無電解銅メッキ工程(S3)の間に再活性工程(S23)を組み込むと、触媒液の活性を事後的に補助強化できるものと推定でき、析出皮膜の均一性の向上に有効である。
尚、吸着促進工程(S1)と触媒付与工程(S2)の間に前記予備浸漬工程(S12)を組み込むことによっても、触媒液の分解を円滑に抑制できるため、無電解メッキ工程で析出する皮膜の均一性の向上に資する。

【0071】
《エッチング処理によるシード層除去の評価試験例》
前述の通り、SAPでは、本発明の無電解メッキ方法で銅皮膜を形成した非導電性基板に、レジスト形成、電気銅メッキ、レジスト剥離の各処理をした後、エッチング処理をして配線パターンを形成し、プリント配線板を製造する。
この場合、触媒付与後に形成した無電解銅皮膜をシード層とし、この上に電気メッキにより銅配線パターンが形成されるが、プリント配線板の信頼性を増すためには、このシード層をエッチング処理により確実に除去する必要がある。
そこで、以下では、SAPによるレジスト形成、電気銅メッキ、レジスト剥離の各処理を省略して、非導電性基板に触媒付与し、無電解銅メッキにより銅皮膜(これがシード層に相当する)を形成した非導電性基板、つまり本発明の無電解銅メッキ方法で形成した非導電性基板について、直接、エッチング処理により基板からシード層が確実に除去できるのか否かを目視により試験評価した。
【0072】
以下、試験例1は触媒付与に銅触媒を用いた本発明の例、比較試験例1は触媒付与に従来のパラジウム触媒を用いた例である。
(1)試験例1
上記実施例1で無電解銅皮膜を形成したガラス・エポキシ樹脂基板を、硫酸・過酸化水素のエッチング液に25℃、30秒の条件で浸漬して、非導電性基板の表面を目視観察した。
上記エッチング液の組成は次の通りである。
硫酸 0.5モル/L
過酸化水素 0.5モル/L
【0073】
(2)比較試験例1
上記実施例1を基本として、無電解銅皮膜を形成したガラス・エポキシ樹脂基板にエッチング処理をして、非導電性基板の表面を目視観察した。
上記試験例1は銅触媒付与であり、基礎とした実施例1では、吸着促進工程S1→触媒付与工程S2→再活性工程S23→無電解銅メッキ工程S3の各工程を経たが、本比較試験例1はパラジウム触媒付与であるため、吸着促進工程S1と触媒付与工程S2の間に予備浸漬工程S12を組み込み、全体の工程を吸着促進工程S1→予備浸漬工程S12→触媒付与工程S2→再活性工程S23→無電解銅メッキ工程S3とした。
この場合、吸着促進工程S1、予備浸漬工程S12、触媒付与工程S2、再活性工程S23(但し、処理液の組成は下記に示す)、無電解銅メッキ工程S3の各処理の条件、並びにエッチング処理の条件は実施例1と同じに設定した。
【0074】
但し、触媒付与工程S2では次の組成のスズ・パラジウム触媒を用いた。
塩化第一スズ 20g/L
塩化パラジウム 0.5g/L
36%塩酸 10g/L
98%硫酸 10g/L
塩化アンモニウム 2g/L
予備浸漬工程S12での処理液の組成は次の通りであり、吸着促進処理をした基板を25℃、120秒の条件で浸漬した。
36%塩酸 150mL/L
再活性工程S23での処理液の組成は次の通りである。
98%硫酸 50mL/L
【0075】
《シード層除去の評価試験結果》
図4は比較試験例1(パラジウム触媒付与)でのエッチング処理後のガラス・エポキシ樹脂基板の写真、図5は初期の同基板の写真である。
触媒付与にパラジウム触媒を用いた場合、図4(エッチング処理済み)と図5(初期基板)の対比から分かるように、図4では、図5より濃いグレー(実際は黄土色)を呈し、初期基板のような薄いグレー(実際は薄い黄桃色)に復してはおらず、エッチング処理をしてもパラジウム触媒核の除去は困難であることが判断できる。
一方、図1は試験例1(銅触媒付与)でのエッチング処理後のガラス・エポキシ樹脂基板の写真、図2は銅触媒付与を施した同基板の写真である。また、図3は無電解銅メッキを施した同基板の写真である。
触媒付与に銅触媒を用いた場合には、図1(エッチング処理済み)と図2(銅触媒付与済み)の対比から分かるように、図1では、図2のやや濃いグレー(実際はやや薄い黄土色)から薄いグレー(実際は薄い黄桃色)に復しており、図1(エッチング処理済み)と図5(初期基板)との対比でも、ほぼ同じ明度を呈することから、エッチング処理をすれば銅触媒核を確実に除去できることが判断できる。
従って、本発明では、無電解銅メッキの前処理としての触媒付与に従来のパラジウム触媒とは異なる銅触媒を用いるので、レジスト剥離後のエッチング処理に際して確実にシード層を除去できるため、プリント配線板の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1図1は試験例1(銅触媒付与)でのエッチング処理後のガラス・エポキシ樹脂基板の写真である。
図2図2は銅触媒付与を施した同基板の写真である。
図3図3は無電解銅メッキを施した同基板の写真である。
図4図4は比較試験例1(パラジウム触媒付与)でのエッチング処理後の同基板の写真である。
図5図5は初期の同基板の写真である。
図1
図2
図3
図4
図5