【実施例】
【0049】
以下、本発明の吸着促進剤の含有液、銅コロイド触媒液、並びに無電解銅メッキ液の調製を含む無電解銅メッキ方法の実施例を述べるとともに、銅コロイド触媒液の経時安定性と上記実施例で得られた銅皮膜の外観についての評価試験例を順次説明する。
また、上記無電解銅メッキ方法を適用してSAPでプリント配線板を製造するに際し、エッチング処理をした非導電性基板からシード層が除去される度合についての評価試験例を併せて説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0050】
《無電解銅メッキ方法の実施例》
下記の
実施例1〜3のうち、実施例1は吸着促進工程(S1)→触媒付与工程(S2)→再活性工程(S23)→無電解銅メッキ工程(S3)からなる無電解銅メッキの例であり、他の
実施例2〜3は当該実施例1を基本としたものである。
即ち、実施例2は実施例1を基本として銅コロイド触媒液の付着量を減じた例、同じく実施例3は銅コロイド触媒液の粒子径を微細化した例である。
また、参考例1は実施例1を基本として再活性工程(S23)を省略した例、参考例2は銅コロイド触媒液の平均粒子径を適正範囲より増した例、参考例3は銅コロイド触媒液の付着量を適正範囲より減じた例である。
【0051】
一方、下記の比較例1〜4のうち、比較例1は上記実施例1を基本として銅コロイド触媒液の付着量を本発明の適正範囲より減じた例、比較例2は上記実施例1を基本として銅コロイド触媒液の粒子径を本発明の適正範囲より大きくした例、比較例3は実施例1を基本として銅コロイド触媒液から本発明のコロイド安定剤を省略した例である。比較例4は冒述の特許文献1に準拠した例であり、本発明のコロイド安定剤に代えてアニオン性界面活性剤を含有した銅コロイド触媒液を使用した例である。
【0052】
(1)実施例1
[無電解銅メッキの処理手順]
先ず、非導電性基板であるガラス・エポキシ樹脂基板(パナソニック電工(株)製のFR−4、板厚:1.0mm)を準備し、下記の前工程(S0)(脱脂 / デスミア/ 中和処理)を施したものを試料基板とした。
そして、この前工程を経た試料基板を吸着促進工程(S1)→触媒付与工程(S2)→再活性工程(S23)→無電解銅メッキ工程(S3)に順番に移行させて無電解銅メッキを行った。
【0053】
(S0)前工程
脱脂液、デスミア処理液及び中和処理液の各組成は以下の通りである。
[脱脂液]
ポリオキシアルキレントリデシルエーテル 2g/L
[デスミア処理液]
過マンガン酸カリウム 50g/L
水酸化ナトリウム 20g/L
[中和処理液]
硫酸 50g/L
しゅう酸 10g/L
上記試料基板を脱脂液に40℃、2分の条件で浸漬し、純水で洗浄した後、デスミア処理液に80℃、10分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。その後、中和処理液に40℃、10分の条件で浸漬し、純水で洗浄、乾燥することで、試料基板に吸着したマンガンを溶解除去した。
【0054】
(S1)吸着促進工程
下記の組成で吸着促進剤の含有液を調製し、当該含有液に前記試料基板を50℃、2分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。
[吸着促進剤の含有液]
ジアリルアミンポリマーの4級アンモニウム塩 5g/L
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル 1g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 12.0
(S2)触媒付与工程
先ず、銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液を下記に示す。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.25モル/L
キシリトール 0.30モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
次いで、上記銅コロイド触媒液に吸着促進処理を施した試料基板を上記触媒液に25℃、10分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は15nm、触媒液の付着量は0.0060mg/cm2であった。
(S23)再活性工程
下記の組成で再活性液を調製し、当該再活性液に前記試料基板を30℃、1分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。
[再活性液]
硫酸 0.15モル/L
(S3)無電解銅メッキ工程
下記の組成で無電解銅メッキ液を建浴し、上記再活性処理を施した試料基板を当該無電解銅メッキ液中に浸漬して、50℃、10分の条件で無電解メッキを施して、試料基板上に銅皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
[無電解銅メッキ液]
硫酸銅五水和物(Cu2+として) 2.0g/L
ホルムアルデヒド 5.0g/L
EDTA 30.0g/L
水酸化ナトリウム 9.6g/L
残余 純水
pH(20℃、水酸化ナトリウムで調整) 12.8
【0055】
(2)実施例2(実施例1の付着量を低減した例)
前工程(S0)、吸着促進剤工程(S1)、触媒付与工程(S2)、再活性工程(S23)、無電解銅メッキ工程(S3)の各工程における処理液の組成はすべて実施例1と同じに設定した。
一方、触媒付与工程(S2)の処理条件は25℃、5分に変更し、その他の工程の処理条件は実施例1と同じに設定した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は15nm、触媒液の付着量は0.0050mg/cm2であった。
【0056】
(3)実施例3(実施例1の粒子径を下げた例)
処理工程及び処理条件は実施例1と同じに設定したが、各工程の処理液のうち、触媒付与工程(S2)の銅コロイド触媒液については下記の組成に変更した。
(S2)触媒付与工程
銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液は次の通りである。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.35モル/L
キシリトール 0.30モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は10nm、触媒液の付着量は0.0060mg/cm2であった。
【0057】
(4)
参考例1(再活性工程(S23)省略:S1→S2→S3)
実施例1を基本として再活性工程(S23)を省略した例であり、各工程の処理液及び処理条件はすべて実施例1と同じに設定した。
即ち、前工程(S0)を施した前記試料基板を50℃、2分の条件で浸漬し(S1)、純水で洗浄した後、銅コロイド触媒液に25℃、10分の条件で浸漬し(S2)、純水で洗浄した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は15nm、触媒液の付着量は0.0060mg/cm2であった。
さらに、無電解銅メッキ液中に50℃、10分の条件で無電解メッキ(S3)を施して、試料基板上に銅皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
【0058】
(5)
参考例2(粒子径を25nmとした例)
処理工程及び処理条件は実施例1と同じに設定したが、各工程の処理液のうち、触媒付与工程(S2)の銅コロイド触媒液については下記の組成に変更した。
(S2)触媒付与工程
銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液は次の通りである。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.20モル/L
キシリトール 0.30モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は25nm、触媒液の付着量は0.0060mg/cm2であった。
【0059】
(6)
参考例3(付着量を0.0040mg/cm2
とした例)
前工程(S0)、吸着促進剤工程(S1)、触媒付与工程(S2)、再活性工程(S23)、無電解銅メッキ工程(S3)の各工程における処理液の組成はすべて実施例1と同じに設定した。
一方、触媒付与工程(S2)の処理条件を25℃、2分に変更し、その他の工程の処理条件は実施例1と同じに設定した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は15nm、触媒液の付着量は0.0040mg/cm2であった。
【0060】
(7)比較例1(付着量が下限値より少ない)
前工程(S0)、吸着促進剤工程(S1)、触媒付与工程(S2)、再活性工程(S23)、無電解銅メッキ工程(S3)の各工程における処理液の組成はすべて実施例1と同じに設定した。
一方、触媒付与工程(S2)の処理条件を25℃、30秒に変更し、その他の工程の処理条件は実施例1と同じに設定した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は15nm、触媒液の付着量は0.0020mg/cm2であった。
【0061】
(8)比較例2(粒子径が70nmより大きい)
処理工程及び処理条件は実施例1と同じに設定したが、各工程の処理液のうち、触媒付与工程(S2)の銅コロイド触媒液については下記の組成に変更した。
(S2)触媒付与工程
銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液は次の通りである。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.10モル/L
キシリトール 0.10モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は75nm、付着量は0.0050mg/cm2であった。
【0062】
(9)比較例3(銅コロイド触媒液からコロイド安定剤を抜いた)
処理工程及び処理条件は実施例1と同じに設定したが、触媒付与工程(S2)の銅コロイド触媒液を下記の組成に変更した。銅コロイド触媒液以外の処理液は実施例1と同じに設定した。
(S2)触媒付与工程
銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液は次の通りである。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌した。
その結果、銅触媒粒子はすべて塊状となって凝集し、沈殿が発生した。従って、次の無電解銅メッキ工程(S3)には移行しなかった。
【0063】
(10)比較例4(銅コロイド触媒液のコロイド安定剤をアニオン性界面活性剤に変更)
処理工程及び処理条件は実施例1と同じに設定したが、触媒付与工程(S2)の銅コロイド触媒液を下記の組成に変更した。銅コロイド触媒液以外の処理液は実施例1と同じに設定した。
(S2)触媒付与工程
銅コロイド触媒液を調製するための銅溶液と、還元剤溶液は次の通りである。
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
ステアリル硫酸ナトリウム 1g/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.015モル/L
pH5.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌した。
生成した銅コロイド触媒の粒子径は35nm、付着量は0.0040mg/cm2であった。
【0064】
《銅コロイド触媒液の経時安定性試験例》
そこで、上記実施例1〜3、
参考例1〜3、比較例1〜4で建浴した各銅コロイド触媒液について、下記の基準でコロイド安定性の優劣を評価した。
○:建浴後2カ月以上経過しても沈殿、或いは分解が起こらなかった。
△:建浴後1週間以内に沈殿が生じ、或いは分解した。
×:コロイド粒子が生成しないか、建浴後すぐに沈殿、或いは分解した。
【0065】
《無電解銅メッキにより析出した銅皮膜の外観評価試験例》
皮膜外観は皮膜の析出性(a)と、皮膜の均一性(b)を総合的に判断して評価した。
即ち、「皮膜の析出性」は無電解メッキで銅皮膜が円滑に析出するか否かを主眼とする基本的な評価であり、「皮膜の均一性」は析出した皮膜がムラなく均一性を保持できているか否かを主眼とする評価である。
(a)皮膜の析出性
上記実施例1〜3、
参考例1〜3、比較例1〜4で建浴した各銅コロイド触媒液を用いた場合、得られた銅メッキ皮膜の析出性を目視により下記の基準で評価した。
○:銅メッキ皮膜が基板に全面析出した。
△:基板の一部に未析出部分(メッキ欠け)が認められた。
×:銅皮膜が析出しなかった。
(b)皮膜の均一性
上記(a)と同様に、得られた銅メッキ皮膜の析出性を目視により下記の基準で評価した。
この場合、上記評価(a)と当該評価(b)の関係を示すと、いわば、上記(a)の評価○をさらに展開して区分けしたものが当該(b)の評価◎〜○であり、上記(a)の評価△は当該(b)では×に相当する。
◎:銅メッキ皮膜は均一でムラがなかった。
○:皮膜の一部にムラが認められた。
×:未析出部分が認められた。
尚、析出皮膜の「ムラ」は、皮膜の緻密性や平滑性などに周囲と異なる部分があると認められる現象で、厳密には皮膜の「均一性」とは異なる概念であるが、本発明では特段、厳密な区別評価はしなかった。
【0066】
《銅コロイド触媒液の経時安定性と皮膜外観についての試験結果》
下表において、実施例、比較例のかっこ内の数値のうち、左側は触媒液の付着量(単位はmg/cm2)、右側はコロイド触媒の粒子径(単位はnm)を表す。
また、下表において、比較例1の皮膜の均一性での「−−」は、皮膜が析出しなかったため、均一性の評価外であることを意味する。比較例3の皮膜の析出性と均一性での「−−」は、触媒付与工程(S2)で沈殿が生じたので、次の無電解銅メッキ工程(S3)には移行せず、従って、皮膜の評価は行わなかったことを意味する。
経時安定性 皮膜の析出性 皮膜の均一性
実施例1(0.006、15) ○ ○ ◎
実施例2(0.005、15) ○ ○ ◎
実施例3(0.006、10) ○ ○ ◎
参考例1(S23を省略) ○ ○ ○
参考例2(0.006、25) ○ ○ ○
参考例3(0.004、15) ○ ○ ○
比較例1(0.002、15) ○ × −−
比較例2(0.005、
75) ○ △ ×
比較例3(安定剤なし) × −− −−
比較例4(安定剤→アニオン) △ △ ×
【0067】
《銅コロイド触媒液の経時安定性とメッキ皮膜外観の総合評価》
上表において、銅コロイド触媒液の付着量が本発明の適正範囲より
大幅に少ない比較例1では、当然ながら非導電性基板に皮膜は析出しなかった。また、付着量を本発明の適正範囲の下限より
若干少なく設定した
参考例3では皮膜が円滑に析出するが、
この参考例3より付着量を
増して適正範囲に設定した実施例1では当該
参考例3より皮膜の均一性に優れていた。パラジウム触媒の場合、比較例1程度、或はこれより微量の付着量でも触媒付与に有効性を示すが、活性度を異にする銅コロイド触媒液では、付着量をパラジウム触媒とは異なる適正域に制御することが重要であると判断できる。
また、銅コロイド触媒液の付着量は実施例1と同じであるが、
平均粒子径が本発明の適正範囲より大きい比較例2では、触媒液の経時安定性に問題はなかったが、非導電性基板への析出においてメッキ欠けが発生した。付着量は実施例1と同じで、
平均粒子径を
適正範囲の上限より少し大きく設定した参考例2では皮膜の一部にムラが生じたが、
平均粒子径を当該
参考例2より微細にした実施例1、さらに微細にした実施例3では皮膜の均一性に優れていた。
以上のことから、非導電性基板に銅コロイド触媒に付与したのち、無電解メッキで銅皮膜を円滑に析出させるには、銅コロイド触媒液の付着量を適正値以上に、また、その粒子径を適正値以下に制御する必要があることが分かる。さらに、触媒液の付着量と粒子径を適正範囲に制御すると、皮膜の均一性を向上してムラをなくし、美麗な皮膜外観を得られることが判断できる。
【0068】
銅コロイド触媒液の付着量と粒子径は本発明の適正範囲を満たすが、触媒液に本発明のコロイド安定剤を含まない比較例3では、コロイド粒子が凝集して沈殿してしまうため、無電解メッキでの銅の析出は望めなかった。従って、この比較例3を
実施例1〜3に対比すると、無電解メッキで銅皮膜を円滑に析出させるためには、触媒液の付着量と粒子径(即ち、付着形態)を適正化するだけでは足りず、触媒液へのコロイド安定剤の含有が必須であることが分かる。
一方、比較例4は冒述の特許文献1に準拠した例で、銅コロイド触媒液の付着量と粒子径は本発明の適正範囲を満たす一方で、触媒液に本発明のコロイド安定剤に代えてアニオン性界面活性剤を含むものであり、析出皮膜にメッキ欠けが発生したため、析出性の評価は△であり、均一性の評価は×であった。また、銅コロイド触媒液について、経時安定性の評価も△であった。
【0069】
次いで、実施例1〜3
、参考例1〜3について詳細に検討する。
先ず、
参考例2と実施例1と実施例3に着目すると、触媒液の付着量は一定であり(0.0060mg/cm2)、コロイド触媒の粒子径は夫々25nm、15nm、10nmに順次微細になっている。
参考例2(25nm)では析出皮膜にムラが見られたが、これより粒子径を微細にした実施例1(15mn)、実施例3(10mn)ではムラは見られず、皮膜の均一性に優れていた。従って、同じ付着量でも粒子径が微細になると活性が増して皮膜の均一性の向上に寄与し、粒子径が大きくなると活性が減少することが分かる。
また、
参考例3、実施例2、実施例1に着目すると、触媒液のコロイド触媒の粒子径は一定であり(15nm)、触媒液の付着量は夫々0.0040mg/cm2、0.0050mg/cm2、0.0060mg/cm2に順次増している。
参考例3(0.0040mg/cm2)では析出皮膜にムラが見られたが、付着量をこれより増した実施例2(0.0050mg/cm2)、実施例1(0.0060mg/cm2)ではムラは見られず、皮膜の均一性に優れていた。
以上を総合すると、皮膜析出を円滑にするためには、触媒液の付着量とコロイド触媒の粒子径を共に適正化することが重要であり、適正域においては付着量を増すほど、また、粒子径を微細化するほど析出皮膜の均一性の向上に
有効である。
【0070】
一方、実施例1と
参考例1に着目すると、触媒液の付着量とコロイド触媒の粒子径は同じである一方で、実施例1は吸着促進工程(S1)→触媒付与工程(S2)→再活性工程(S23)→無電解銅メッキ工程(S3)を順次施した例であり、
参考例1は実施例1の再活性工程(S23)を省略した例である。
参考例1では析出皮膜にムラが見られたが、再活性工程(S23)を組み込んだ実施例1ではムラは見られず、皮膜の均一性に優れていた。
従って、吸着促進工程(S1)、触媒付与工程(S2)及び無電解銅メッキ工程(S3)を順次施すことで、無電解銅皮膜を円滑に析出できるが、触媒付与工程(S2)と無電解銅メッキ工程(S3)の間に再活性工程(S23)を組み込むと、触媒液の活性を事後的に補助強化できるものと推定でき、析出皮膜の均一性の向上に有効である。
尚、吸着促進工程(S1)と触媒付与工程(S2)の間に前記予備浸漬工程(S12)を組み込むことによっても、触媒液の分解を円滑に抑制できるため、無電解メッキ工程で析出する皮膜の均一性の向上に資する。
【0071】
《エッチング処理によるシード層除去の評価試験例》
前述の通り、SAPでは、本発明の無電解メッキ方法で銅皮膜を形成した非導電性基板に、レジスト形成、電気銅メッキ、レジスト剥離の各処理をした後、エッチング処理をして配線パターンを形成し、プリント配線板を製造する。
この場合、触媒付与後に形成した無電解銅皮膜をシード層とし、この上に電気メッキにより銅配線パターンが形成されるが、プリント配線板の信頼性を増すためには、このシード層をエッチング処理により確実に除去する必要がある。
そこで、以下では、SAPによるレジスト形成、電気銅メッキ、レジスト剥離の各処理を省略して、非導電性基板に触媒付与し、無電解銅メッキにより銅皮膜(これがシード層に相当する)を形成した非導電性基板、つまり本発明の無電解銅メッキ方法で形成した非導電性基板について、直接、エッチング処理により基板からシード層が確実に除去できるのか否かを目視により試験評価した。
【0072】
以下、試験例1は触媒付与に銅触媒を用いた本発明の例、比較試験例1は触媒付与に従来のパラジウム触媒を用いた例である。
(1)試験例1
上記実施例1で無電解銅皮膜を形成したガラス・エポキシ樹脂基板を、硫酸・過酸化水素のエッチング液に25℃、30秒の条件で浸漬して、非導電性基板の表面を目視観察した。
上記エッチング液の組成は次の通りである。
硫酸 0.5モル/L
過酸化水素 0.5モル/L
【0073】
(2)比較試験例1
上記実施例1を基本として、無電解銅皮膜を形成したガラス・エポキシ樹脂基板にエッチング処理をして、非導電性基板の表面を目視観察した。
上記試験例1は銅触媒付与であり、基礎とした実施例1では、吸着促進工程S1→触媒付与工程S2→再活性工程S23→無電解銅メッキ工程S3の各工程を経たが、本比較試験例1はパラジウム触媒付与であるため、吸着促進工程S1と触媒付与工程S2の間に予備浸漬工程S12を組み込み、全体の工程を吸着促進工程S1→予備浸漬工程S12→触媒付与工程S2→再活性工程S23→無電解銅メッキ工程S3とした。
この場合、吸着促進工程S1、予備浸漬工程S12、触媒付与工程S2、再活性工程S23(但し、処理液の組成は下記に示す)、無電解銅メッキ工程S3の各処理の条件、並びにエッチング処理の条件は実施例1と同じに設定した。
【0074】
但し、触媒付与工程S2では次の組成のスズ・パラジウム触媒を用いた。
塩化第一スズ 20g/L
塩化パラジウム 0.5g/L
36%塩酸 10g/L
98%硫酸 10g/L
塩化アンモニウム 2g/L
予備浸漬工程S12での処理液の組成は次の通りであり、吸着促進処理をした基板を25℃、120秒の条件で浸漬した。
36%塩酸 150mL/L
再活性工程S23での処理液の組成は次の通りである。
98%硫酸 50mL/L
【0075】
《シード層除去の評価試験結果》
図4は比較試験例1(パラジウム触媒付与)でのエッチング処理後のガラス・エポキシ樹脂基板の写真、
図5は初期の同基板の写真である。
触媒付与にパラジウム触媒を用いた場合、
図4(エッチング処理済み)と
図5(初期基板)の対比から分かるように、
図4では、
図5より濃いグレー(実際は黄土色)を呈し、初期基板のような薄いグレー(実際は薄い黄桃色)に復してはおらず、エッチング処理をしてもパラジウム触媒核の除去は困難であることが判断できる。
一方、
図1は試験例1(銅触媒付与)でのエッチング処理後のガラス・エポキシ樹脂基板の写真、
図2は銅触媒付与を施した同基板の写真である。また、
図3は無電解銅メッキを施した同基板の写真である。
触媒付与に銅触媒を用いた場合には、
図1(エッチング処理済み)と
図2(銅触媒付与済み)の対比から分かるように、
図1では、
図2のやや濃いグレー(実際はやや薄い黄土色)から薄いグレー(実際は薄い黄桃色)に復しており、
図1(エッチング処理済み)と
図5(初期基板)との対比でも、ほぼ同じ明度を呈することから、エッチング処理をすれば銅触媒核を確実に除去できることが判断できる。
従って、本発明では、無電解銅メッキの前処理としての触媒付与に従来のパラジウム触媒とは異なる銅触媒を用いるので、レジスト剥離後のエッチング処理に際して確実にシード層を除去できるため、プリント配線板の信頼性を向上できる。