特許第6736013号(P6736013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6736013
(24)【登録日】2020年7月17日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】トラクタに連結する長いも収穫装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 25/04 20060101AFI20200728BHJP
   A01D 33/12 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   A01D25/04
   A01D33/12
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-148003(P2018-148003)
(22)【出願日】2018年7月18日
(65)【公開番号】特開2020-10676(P2020-10676A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2018年9月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596016937
【氏名又は名称】株式会社苫米地技研工業
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】苫米地 力
【審査官】 大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−029230(JP,A)
【文献】 実開昭56−111724(JP,U)
【文献】 実開昭54−183453(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0008674(US,A1)
【文献】 実開平06−084805(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00−33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後部に連結して掘り取り刃体を生育した長いもの下端部へ鋤きこみ、長いもの周囲の栽培土とともにブロック状に抱持して、後方に向けて浮上させながら、長いもを掘り取る収穫装置において、掘り取り刃体を支持する両側部の支持バーの前縁には着脱手段を介して細溝掘削排土体を配設し、前記細溝掘削排土体の先端は前記掘り取り刃体の刃先と側面視で略一致して配置され、前記細溝掘削排土体は刃先より連続した円弧状の曲面が立ち上がるとともにその上端は前記支持バーの前縁上方に延設して掘削土を地表に排出し、
前記円弧状の曲面は、前記細溝掘削排土体の先端では前記掘り取り刃体の刃部と平行に設けられ、前記細溝掘削排土体の前記上端の側では外方にひねられて掘削土が前記細溝掘削排土体の外側に放出されるように構成され、
前記着脱手段は、前記支持バーに設けられた取り付け板により、前記細溝掘削排土体を構成する金属面体の裏面に固着された裏板を挟み込むものである、
こと特徴としたトラクタに連結する長いも収穫装置。
【請求項2】
トラクタのPTO軸によって直接駆動する油圧ポンプを配置し、この油圧ポンプはクリーナーを駆動する油圧モーターを伝動するとともに掘り取り刃体の後端の落下補助板を振動させる油圧モーターを伝動させることを特徴とした請求項1に記載のトラクタに連結する長いも収穫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの後部に連結して、掘り取り刃体を生育した長いもの下端部へ鋤きこみ、長いもの周囲の栽培土とともにブロック状に抱持して、後方に向けて浮上させながら、長いもに擦り傷をつけないで優しく掘り取るトラクタに連結する長いも収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長いもの収穫装置は、従来から種々提案されている。生育した長芋は地下に向けて略1メートルの深さに成長して、収穫作業は重労働であり、同時に長いもは折れやすく且つ表面の肌は擦り傷が付きやすい特性がある。そして掘り取り刃体を長いもの生育した下端部へ鋤きこみ、長いもの周囲の栽培土とともにブロック状に抱持して、後方に向けて浮上させながら、長いもを掘り取ろうとした装置としては同一出願による特開2006−25601公報並びに特開2014−212786号公報が提案されている。
前者は『トラクタの後部に連結され、長いもの両側部の栽培土をトラクタの前進に従って掘り起こす1対の鋤部材と、前記1対の鋤部材の中央下部に回動自在に連結され、前部が刃部を形成し後部が上方に傾斜して配設された掘取り刃体とを有する長いも堀取り装置において、前記掘取り刃体と鋤部材との連結が1対の連結バーによって支持されものであり、前記連結バーの一端が前記鋤部材の下端に固着され、かつ、前記連結バーの他端が前記掘取り刃体の裏面に設けられた支軸に回動自在に装着されるとともに、前記連結バーが前記掘り取り刃体の裏面に完全に隠れるように配設されることを特徴とする長いも堀取り装置』の構成が開示される。その効果は、トラクタが長いも掘取り装置を牽引する際に受ける掘削土からの抵抗が軽減されるので、比較的小さなパワーのトラクタでも牽引が可能となるものである。
また後者は前記した掘り取り構成の鋤部材の前方に、掘削チェンを配置して深耕溝を形成して、トラクタの牽引抵抗を減少させることを目的としたもので「掘取り刃体によって長いもを順次栽培土と共に浮上させて後方へ移動させる長いもの掘取り方法において、前記掘取り刃体の両側部上方を掘削する掘削チェンを近接させて配置したことを特徴としたトラクタに連結する長いも収穫装置であり、掘り取り刃体の刃部の幅は両サイド掘削チェンの内幅に形成し、掘り取り刃体部の後半部は掘削チェンの溝幅に重なるように広幅に構成した、長いも収穫装置」である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−25601公報
【特許文献2】特開2014−212786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した後者の特開2014−212786号公報の実施態様の構成に寄れば、掘取り刃体の刃部の上方部の両側部を掘削する掘削チェンを配置したので、左右の鋤き込み部材の推進抵抗は軽減されるが、一方、圃場に岩石や石が包含した場合に掘削刃が石を噛みこんで破損をしたり、掘削チェンが岩石に衝突して破損することがあり、その対応に長い時間を要し、特に大規模圃場における仕事の中断は経済的なロスも大きかった。また、掘削チェンの深耕溝は縦長断面の平板状の支持バーの側面に摩擦力を与えてトラクタの牽引負荷を高めていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した岩石等よる掘削チェンの破損問題を解決する為に、トラクタの後部に連結して掘り取り刃体を生育した長いもの下端部へ鋤きこみ、長いもの周囲の栽培土とともにブロック状に抱持して、後方に向けて浮上させながら、長いもを掘り取る収穫装置において、掘り取り刃体を支持する両側部の支持バーの前縁には着脱手段を介して細溝掘削排土体を配設し、前記細溝掘削排土体の先端は前記掘り取り刃体の刃先と側面視で略一致して配置され、前記細溝掘削排土体は刃先より連続した円弧状の曲面が立ち上がるとともにその上端は前記支持バーの前縁上方に延設して掘削土を地表に排出し、前記円弧状の曲面は、前記細溝掘削排土体の先端では前記掘り取り刃体の刃部と平行に設けられ、前記細溝掘削排土体の前記上端の側では外方にひねられて掘削土が前記細溝掘削排土体の外側に放出されるように構成され、前記着脱手段は、前記支持バーに設けられた取り付け板により、前記細溝掘削排土体を構成する金属面体の裏面に固着された裏板を挟み込むものである、こと特徴としたトラクタに連結する長いも収穫装置を提供する。
また、トラクタのPTO軸によって直接駆動する油圧ポンプを配置し、この油圧ポンプはクリーナーを駆動する油圧モーターを伝動するとともに掘り取り刃体の後端の落下補助板を振動させる油圧モーターを伝動させる前記に記載のトラクタに連結する長いも収穫装置である。
【発明の効果】
【0006】
以上のような刃先より連続した円弧の曲面を有した細溝掘削排土体は、掘り取り刃体両サイドの細溝掘削土を地表に排出して開口溝を形成し、同時に掘取り刃体の刃部が長いもの下端への刺さり込み断面U字状の栽培土ブロックを形成しながら後方へ浮上させて収穫される。従って細溝掘削排土体は石や岩石があってもなだらかに交わすので破損がない。また細溝の開口溝によって支持バーの側面に対する摩擦反力が減少される。また、細溝掘削排土体の先端は掘り取り刃体の刃先と略一致して設け支持バーに対して両側面から抱持して着脱自在に構成したので、丈の短い子芋の掘り取り時には簡単に高さを調整可能である。また、既販の長いも収穫装置にも取り付けができるので経済的である。
また掘、トラクタPTO出力軸に直結した油圧ポンプより伝動される油圧モーターによって振動する落下補助板とクリーナーを設けたので三点リンクによって装着される長芋掘り取り装置側が軽量でシンプルになり、クランク機構が排除されて栽培土をスムーズに落とし込むので長いも収穫が容易になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】は本発明を実施した作業状態を示す側面図
図2】は一部を省略した平面図
図3】は栽培土ブロックの浮上成形モデル図
図4】は栽培土ブロックの形成正面図
図5】は細溝掘削排土体の説明図
図6】落下補助版の駆動説明図
図7】クリーナーの駆動説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態は、トラクタの後部に連結して掘り取り刃体を生育した長いもの下端部へ鋤きこみ、長いもの周囲の栽培土とともにブロック状に抱持して、後方に向けて浮上させながら、長いもを掘り取る収穫装置において、
掘り取り刃体を支持する両側部の支持バーの前縁に細溝掘削排土体を設けて、この細溝掘削排土体は刃先より連続した円弧上の曲面が立ち上がるとともにその上端は前記支持バーの前縁上方に延設して掘削土を地表に排出することを特徴としたトラクタに連結する長いも収穫装置であって、
前記の細溝掘削排土体先端は前記掘り取り刃体の刃先と略一致して配置され、かつ支持バーに対して両側面から抱持して着脱する固着手段を設けてなるトラクタに連結する長いも収穫装置である。
【実施例】
【0009】
図1において、1は乗用4輪トラクタの後部を示す。このトラクタの後部に3点リンク2によって長いも掘り取り装置23を支承する機枠体3の前部を連結してなる。4はトップブラケットで、機枠体3の前方に横架した支軸6を支点として回動自在に支持される。トップブラケット4の前方にはトラクタに対して公地のトップリンクが連結されている。8は断面縦長の支持バーを示して機枠体3の左右に下方に向けて取り付けられている。一対の支持バー8の下端部には後方に向けて傾斜した掘り取り刃体9が設置されている。掘り取り刃体9の先端は刃部10を設けて後端を形成する落下補助板11は第2油圧モーター29によって微振動される。
19はクリーナーを示し、掘り取り刃体9が後方にせり上げた栽培土ブロックの上面部を左右に排除して長いもの首を突出させるものである。クリーナー19は第1モーター18によって進行方向に直行して左右に搖動する。
24は油圧シリンダで支軸6を支点として、その伸縮によってトップブラケット4に対して機枠体3に支持された掘り取り刃体9の姿勢を昇降するものである。特に地中内の掘り取り刃体の地上高を確保するためのものである。
7は細溝掘削排土体を示し、前記した支持バー8の前縁に配置される。この細溝掘削排土体7の先端を構成するチゼル12は前記掘り取り刃体9の刃先と略一致して配置され、連続した円弧上の曲面が立ち上がるとともにその上端は前記支持バー8の前縁上方に延設して掘削土を地表に排出する。31は長芋を示して、掘り取り刃体の両側部を7の細溝掘削排土体によって掘削切断された栽培土ブロック状とともに上方に移動する。
図2は本発明の一部を省略した平面図であり、25はロアリンクで、機枠体3の前方両側に連結される。5はトラクタの後部に設けているPTO軸を示し、油圧ポンプ18を直接に駆動するもので、17のホースを設けて油圧モーターに伝動される。油圧ポンプ18は第1モーター18と第2モーター29を駆動する。第1モーター18は19のクリーナを左右に揺動する手段に連結される。第2の油圧モーター29は掘り取り刃体9の後半部の落下補助体11を振動させる。
9は掘り取り刃体を示す。7は前記掘り取り刃部10の両側部に配置された細溝掘削排土体を示す。12は細溝掘削排土体の先端を形成するチゼルを示し、前記した掘り取り刃体の刃部10と側面視で略一致して構成される。掘り取り刃体9の傾斜した後半部は細溝掘削排土体7が掘削した溝幅に重なるように広幅に構成される。20は横軸で、前記の機枠体3に横設される。21はパイプ軸で横軸20に対して摺動可能に構成されている。
【0010】
図3は栽培土ブロック30の浮上成形モデル図を示す。掘り取り刃体9の両側部には縦長断面の支持バー8の下端部が固着されている。掘り取り刃体9は先端に刃部10が設けられ、後部が上方にむけて傾斜され、さらに後端は微振動される落下補助板11が連結される。左右の支持バー8の前縁には7の細溝掘削排土体が固着されている。この細溝掘削排土体7の先端のチゼル12は前記掘り取り刃体9の刃先と側面視で略一致して配置されて、水平のチゼル12より後方に向けて連続した円弧上の曲面が立ち上がり、Aの掘削面、Bの活動面、Cの排出面とから形成される。排出面Cの上端は前記支持バー8の前縁上方に延設して掘削土を地表に排出する。本実施例において排出面Cは外方にひねられて掘削土が細溝の外側に放出されるので開口溝が形成される。32は細溝掘削排土体の通過した跡の細溝開口部を示し、30は長いも31と共に上昇する栽培土ブロックを示す。15は細溝掘削体の7の取り付け板で支持バー8の両側面を挟み込んでボルトナットによって固着するもので、所望によって支持バー8に対して高さを調整できる。また、この固着手段によれば既販の同種収穫機械にも取り付けが容易である。
図4は栽培土ブロックの形成正面図を示す。地中に掘削した両側部の細溝掘削排土体7は推進と共に細溝開口部32を形成するとともに、掘り取り刃体の刃部10が生育いもの下端に鋤きこまれて中央の長いも31を抱持した栽培土ブロックが断面U字状に一体的に形成される。この時、縦長平板断面の支持バー8は細溝開口(空間)部を推進するので掘削土の押圧摩擦力を受けることがない。
図5は細溝掘削排土体7の説明図を示す。12は刺さり込み用のチゼルで略水平に位置する。14の裏板は先端より後方に円弧状なして平面上の金属面体13を固着する。側面視において連続した円弧上の曲面を有した金属面体13の上面には39の樹脂面板をビス止めしてなる。裏板14には取り付け版15を左右から挟むように固着する。取り付け板15は前記した支持バー8をボルナットに挟持する固着手段である。
図6落下補助版の駆動説明図を示したもので、11は落下補助板の後面である。22は第2油圧モーターを示し、前記した油圧ポンプ18より伝導される17のホースによって連結される。前記した油圧モーターは27のステイに固着されて、偏心軸26の回転により連結棒28を介して落下補助板11を上下に振動させる。
図7はクリーナー19の駆動説明図を示す。前記した第1油圧モーター18の出力軸に取り付けた駆動スプロケット29は適宜減速された従動スプロケット34を回転する。クリーナー19の掻き棒38は支点軸37のボス軸36に回転自在に支持される。38掻き棒は従動スプロケット34に繋いだ連結ロッド35によって左右に搖動される。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明によるトラクタに連結する長いもの掘り取り装置は、石や岩石が混入した圃場においても掘削部の破損等が少なく、連続した長時間の収穫作業ができる。また、機体全体がシンプルで軽量になり、掘り取り所要馬力も比較的小さくて良く、大規模プロ農家の圃場においても、消耗品も少なくてよいので経済的である。
【0012】
【符号の説明】
【0012】
1 トラクタの後部
2 3点リンク
3 機枠体
4 トップブラケット
5 PTO出力軸
6 支軸
7 細溝掘削排土体
8 支持バー
9 掘り取り刃体
10 刃部
11 落下補助板
12 チゼル
13 金属面板
14 裏板
15 取り付け版
16 油圧ポンプ
17 ホース
18 第1モーター
19 クリーナー
20 横軸
21 パイプ軸
22 第2モーター
23 長いも掘り取り装置
24 油圧シリンダ
25 ロアリンク
26 偏心軸
27 ステイ
28 連結材
29 駆動スプロケット
30 栽培土ブロック
31 長いも
32 細溝開口部
33 回動支軸
34 従動スプロケット
35 連結ロッド
36 ボス軸
37 支点軸
38 掻き棒
39 樹脂面板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7