(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、水素を燃料として走行する車両は、水素充填所において、充填ホース先端に設けた充填ノズルと車両側充填口とを接続して、燃料流体である水素ガスを充填している。
この充填中に、充填ノズルに配設された受光器は、車両から送られてくるデータ(例えば、タンク内圧力、タンク内温度等のデータ)を示す信号を受信し、信号線を介してハウジング内(水素充填装置内)の制御装置に送信して、適正な充填制御を行っている。
【0003】
ここで、例えば充填中に車両が移動する等の事象により充填ホースが引っ張られてしまうと、充填ノズル及び充填ホース等の機器が破損し、水素ガスが噴射して危険な状態になる。
そのため本出願人は、以前に、一定以上の引張荷重が付加されると分離する緊急離脱管継手を提案している。
【0004】
係る緊急離脱管継手は有効であるが、充填ノズルの先端に配設された受光器からハウジング本体内の制御装置まで、1本の信号線で接続されているため、一定以上の引張荷重が付加されて分離すると、信号線の導通部が露出した状態で切断されてしまい、前記導通部が他の金属と接触してショートし、或いは、ショートして発生した火花が水素ガスに接触して大きな事故が生じる可能性がある。そして、水素ガスは浮力が大きく、拡散が速いので、前記ショートの際に生じる火花と接触する可能性は低くない。
さらに、信号線が切断する度毎に切断箇所が異なり、予測することが困難であるため、切断した信号線の再利用も困難である。そして、信号線が切断すると、その復旧に長時間が費やされるという問題も存在する。
それに加えて、信号線が切断しない場合には、充填装置が引っ張られて転倒し、破損してしまう恐れもある。
【0005】
その他にも、従来技術において、緊急離脱用の管継手が存在する(例えば、特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)においても、信号線の切断に関する上述の問題の解決策は開示していない。また、緊急離脱カップリング11と充填装置1とはホース4Aを介して接続されているので、ホース4Aの両端が接続部となってしまうので、接続部が増加し、漏洩リスクが高くなるという問題を有している。さらに、離脱時に、流出側の継手部材29内の移動ピン35がシールリング30Bに対して相対移動するため、シールリング30Bが損傷し或いは噛み込んでしまうので、シールリング30Bからの水素ガスの漏洩リスクが高くなるという不都合が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、緊急離脱管継手により充填ホースが分離した際に、信号線が切断されてしまうことによる不都合を防止することが出来る供給装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の供給装置(100:水素ガスやガソリン等の流体を供給する供給装置)は、
ハウジング本体内に流量(例えば水素ガス、ガソリンの流量)を計測しながら搬送する供給系統と、
当該供給系統を制御する制御機構とを備え、
前記供給系統から導出され先端にノズル(1:例えば、水素であれば充填ノズル、ガソリンであれば給油ノズル)を備えたホース(2:例えば、水素であれば充填ホース、ガソリンであれば給油ホース)と、
当該ホース(2)に沿って配設された信号線(3)とを有する供給装置(100)において、
前記信号線(3)は着脱自在に配設されており、
前記信号線(3)は分離可能部分としての着脱部(10、20:信号線分離機構)を備えており、当該着脱部(10、20)にロック機構(11、21)が設けられており、
当該ロック機構(11、21)は信号線保持部材(13、23)を有し、
当該信号線保持部材(13、23)には
前記ロック機構(11、21)の係合を解除する第1の凸部(13A、23A)が設けられ、
前記ロック機構(11、21)はロック解除部材(14、24)を有し、
当該ロック解除部材(14、24)には前記第1の凸部(13A、23A)に当接して
前記ロック機構(11、21)の係合を解除する第2の凸部(14A、24A)が設けられていることを特徴としている。
本発明において、前記ロック機構(11、21)には、当該ロック機構(11、21)を解除する緊急離脱機構(12、22)が設けられているのが好ましい。
【0010】
本発明において、前記(信号線保持部材13における)第1の凸部(13A)の周方向両側には廻り止め用突起(13B)が形成されており、前記(ロック解除部材14における)第2の凸部(14A)の円周方向寸法は前記廻り止め用突起(13B)間の間隔よりも小さいことが好ましい。
或いは、前記(信号線保持部材23における)第1の凸部(23A)の周方向両側には廻り止め用突起は形成されておらず、前記(ロック解除部材24における)第2の凸部(24A)は
前記ロック解除部材(24)の円周方向全域に亘って形成されているのが好ましい。
【0011】
本発明の実施に際して、信号線(3)は弛んだ状態で配設され、ホース(2:流体ホース)分離後に前記信号線(3)が着脱部(10、20)において離脱するのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上述の構成を具備する本発明によれば、前記信号線(3)は着脱自在に配設されており、例えば前記信号線(3)の途中に分離可能部分としての着脱部(10、20)を備えているので、同一箇所(当該着脱部10、20)で前記信号線(3)は離脱する。そのため、離脱した信号線(3)を着脱部(10、20)で再び接続することにより、容易且つ確実に再利用することが出来る。そして、信号線(3)が離脱しても、容易に離脱以前の状態に復旧させることが出来る。
また、一定の引張荷重以上の引張力が作用した場合に、前記信号線(3)は着脱部(10、20)で離脱し、不特定箇所で切断してしまうことがない。そして離脱した前記信号線(3)は、その導通部が大幅には露出していない状態に保たれるので、切断した信号線の導通部が露出することによる火花の発生や、浮力が大きく拡散速度が速い水素ガスと接触する恐れも防止することが出来る。
さらに、一定の引張荷重以上の引張力が作用した場合に前記信号線(3)が着脱部(10、20)で離脱するため、充填装置(40)が引っ張られて転倒し、破損してしまうことが防止される。
【0013】
本発明において、信号線(3)は分離可能部分としての着脱部(10、20)を備えており、当該着脱部(10、20)にロック機構(11、21)が設けられていれば、当該ロック機構(11、21)により、分離可能な信号線同士は着脱部(10、20)において接続した状態で保持される。
そのため、車両(50)から送られてくるデータ(例えば、タンク内圧力、タンク内温度等のデータ)を示す信号は、前記信号線(3)を介してハウジング本体内の制御装置に送信され、適正な充填制御が行なわれる。
【0014】
前記着脱部(10、20)にロック機構(11、21)が設けられている場合、当該ロック機構(11、21)を解除する緊急離脱機構(12、22)が設けられていれば、緊急時(例えば車両の予期せぬ発進等により、所定値以上の引張力が作用した場合)には前記信号線(3)を離脱することにより、前記信号線(3)の切断及びそれに伴う不都合(火花の発生、水素ガスと火花の接触)を防止することが出来る。
また、前記信号線(3)を離脱することにより、信号線(3)に作用する引張力により充填装置本体(40)が引っ張られて転倒、破損する事態が防止される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態では、車両に水素ガスを充填する水素ガス充填装置を例示して説明する。
最初に
図1〜
図6を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1において、供給装置100は、水素ディスペンサー40のハウジング本体内において、流量(例えば水素ガスの流量)を計測しながら搬送する供給系統(図示しない)と、当該供給系統を制御する制御機構(図示しない)とを備えている。そして、前記供給系統には、先端に充填ノズル1を備えた充填ホース2が接続されている。
水素が充填される車両50では、充填ホース2先端の充填ノズル1と車両50側の充填口(図示せず)を接続して、水素ガスを充填する。
【0017】
充填ホース2には緊急離脱管継手30が配設されており、一定以上の引張荷重が付加されると緊急離脱管継手30が分離自在に構成されている。
例えば水素ガスの充填中に何らかの理由により車両が移動して充填ホース2が引っ張られると、緊急離脱管継手30が分離して、充填ホース2は水素ディスペンサー40側と充填ノズル1側(車両50側)に分離する。それにより、水素ディスペンサー40が転倒して破損し、水素ガスが噴射するという危険な事態を防止している。
【0018】
図1において、充填ホース2に沿って、充填ノズル1から水素ディスペンサー40側に、信号線3が配設されている。充填ノズル1には、図示しない受光器が配設されている。当該受光器は、車両から送信されるデータ(例えば、タンク内圧力、タンク内温度等のデータ)の信号を受信し、信号線3を介して水素ディスペンサー40側のハウジング本体内の制御機構に送信して、適正な水素充填制御を行っている。
図示の実施形態に係る供給装置においては、信号線3は、分離可能部分としての着脱部10(信号線分離機構)を水素ディスペンサー40の近傍に有している。そして信号線3は、着脱部10において着脱自在に構成されている。
着脱部10は、後述するロック機構11(
図2)を備えており、ロック機構11には緊急離脱機構12が設けられ、一定以上の引張荷重が付加されるとロック機構11を解除する様に構成されている。
【0019】
例えば水素ガスの充填中に何らかの理由により車両が移動して、信号線3に一定以上の引張荷重が付加されると、緊急離脱機構12が作動してロック機構11が解除され、着脱部10が分離し、信号線3は水素ディスペンサー40側と充填ノズル1側(車両50側)に分離する。
そのため、信号線3は着脱部10以外の不特定箇所で切断されてしまうことはなく、それに伴う不都合(火花の発生、水素ガスと火花の接触、信号線3の修復)が防止される。さらに信号線3に作用する引張力により、水素ディスペンサー40が引っ張られて転倒、破損することも防止される。
【0020】
着脱部10(信号線分離機構)の詳細について、
図2を参照して説明する。
図2において、着脱部(信号線分離機構)は全体を符号10で示されており、ベース部材15と、ケーシング16と、ベース部材15にケーシング16を固定するための取付ボルト17を有している。
ベース部材15とケーシング16は半径方向(
図2では左右方向)中央に開口部が形成され、当該開口部に、細長回転体形状の信号線保持部材13(
図3参照)が挿通している。
信号線保持部材13は、
図6で示す様に、ノズル側部品13−1(
図6では下側の部品)とディスペンサー側部品13−2(
図6では上側の部品)とに分離可能に構成されている。
【0021】
図2において、信号線保持部材13には信号線3が接続されており、信号線3は、充填ノズル1及びディスペンサー40に接続されている。なお信号線3は、
図5、
図6では図示を省略している。
ここで、信号線3のディスペンサー40側に接続されている領域(ディスペンサー側部品13−2に接続されている領域)には「弛み」が設けられている。そのため、充填ノズル1に接続される信号線3を介して信号線保持部材13に引張荷重(一定値を超えない引張荷重)が作用した場合、信号線保持部材13が充填ノズル1側に引っ張られても(
図5の状態になった場合でも)、ディスペンサー40側に接続される信号線3には引張力は作用しない。
図2で示す様に、信号線保持部材13のノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2が接合している場合には、充填ノズル1に接続されている信号線3とディスペンサー側に接続される信号線3は、従来技術や市販品と同様に、電気的に接続される状態を維持している。
【0022】
図2、
図3で示す様に、信号線保持部材13のディスペンサー側部品13−2には、軸方向(
図2で上下方向)において、ノズル側部品13−1との境界近傍に、第1の凸部13Aが設けられており、第1の凸部13Aには押圧部13AAと係止部13ABが設けられている。押圧部13AAと係止部13ABについては、
図5、
図6にも明示されている。
図2で示す様に、第1の凸部13Aは、通常はディスペンサー側部品13−2の円周方向外側より突出しているが、押圧部13AAを半径方向内方に押圧することにより(半径方向内方に)陥入可能に構成されている。
図3で示す様に、第1の凸部13Aの周方向両側(両隣)には、廻り止め用突起13Bが形成されている。
【0023】
信号線保持部材13のノズル側部品13−1には、ディスペンサー側部品13−2との境界近傍に、係止受部13Cが設けられている。係止受部13Cは、
図5、
図6でも示されている。
明確には図示されていないが、係止受部13Cには、ディスペンサー側部品13−2の第1の凸部13Aの係止部13ABが嵌入する嵌入用溝が形成されており、第1の凸部13Aがディスペンサー側部品13−2の円周方向外側に突出している時(通常時)は、前記嵌入用溝と係止部13ABとが係合しており(
図2の状態)、ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2が接合される。
一方、第1の凸部13Aが押圧されて半径方向内方に陥入した時には、前記嵌入用溝と係止部13ABとの係合が解除され(
図5の状態)、ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2の接合が解除されて分離する。
ここで、信号線保持部材13としては従来、公知の製品、例えば市販品、を適用することが可能である。
【0024】
着脱部10におけるロック機構11は、係止受部13Cが設けられているノズル側部品13−1、第1の凸部13Aが設けられているディスペンサー側部品13−2、ロック機構11の係合を解除する後述の緊急離脱機構12、ベース部材15、ケーシング16等を含んでいる。
図2において、ケーシング16の内部には、ロック解除部材14と、スプリング18(コイルスプリング)と、スプリング押圧板19が収容されている。
ロック解除部材14はスプリング18の半径方向内側に配置されており、半径方向中心部に開口部が形成された中空形状に構成されている。ロック解除部材14の開口部にディスペンサー側部品13−2を挿通しており、ロック解除部材14の中空部内に信号線保持部材13が配置されている。
【0025】
図4で示す様に、ロック解除部材14は中空体形状に形成されており、半径方向内方に突出した第2の凸部14A及び後述する凹部14bが形成されている。
第2の凸部14Aは、円周方向について、ディスペンサー側部品13−2の第1の凸部13Aに対応する位置に形成されている。ロック解除部材14において、第2の凸部14Aが形成されている領域と、第2の凸部14Aが形成されていない領域とは、滑らかな傾斜部(テーパー部)で接続されている(
図2参照)。
第2の凸部14Aにおいて、半径方向内方に突出している突出量は、第2の凸部14Aにより(ディスペンサー側部品13−2の)第1の凸部13Aを半径方向内側に押圧した際に、第1の凸部13Aとノズル側部品13−1の係止受部13Cとの係合を解除し、ノズル側部品13−1とディスペンサー側保持部材13−2に分離するために、必要かつ十分に(半径方向内方に突出している突出量が)設定されている。
【0026】
緊急離脱機構12は、第2の凸部14Aが形成されているロック解除部材14、スプリング18、スプリング押圧板19等を含んでいる。
図2において、スプリング押圧板19はディスペンサー側部品13−2に固定されており、ディスペンサー側部品13−2が長手方向(軸方向:
図2で上下方向)に移動すると、スプリング押圧板19も一体となって長手方向に移動する。
ここで、
図2は充填ノズル1に接続している信号線3に引張力が作用していない状態を示しているので、ディスペンサー側部品13−2の第1の凸部13Aは、長手方向(
図2の上下方向)について、ロック解除部材14の第2の凸部14Aが形成されていない領域に対向して位置している。従って、第1の凸部13Aは半径方向内方には押圧されておらず、ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2とに分離せず、一体に結合して、充填ノズル1からディスペンサー40まで信号線3が接続されている状態が保持される。
【0027】
図2において、充填ノズル1に接続している信号線3に引張力が作用すると、当該引張力がノズル側部品13−1を介してディスペンサー側部品13−2に作用し、ディスペンサー側部品13−2がノズル1側(
図2では下方)に移動し、スプリング押圧板19も下方に移動してスプリング18を圧縮する。
信号線3に作用する引張力が所定値未満の場合には、ディスペンサー側部品13−2の第1の凸部13Aは、ロック解除部材14の第2の凸部14Aが形成されている領域まで移動(
図2では下降)しない。その場合、スプリング押圧板19が下方に移動してスプリング18を圧縮するが、
図2で示す様に、スプリング押圧板19はロック解除部材14の上面部には到達していない。
【0028】
一方、信号線3に作用する引張力が所定値以上であれば、(
図5、
図6で示す様に、)スプリング押圧板19はロック解除部材14の上面部には到達してディスペンサー側部品13−2を下方に押圧するので、第1の凸部13Aは下方に移動し、ロック解除部材14のテーパ部を介して、第2の凸部14Aが形成されている領域まで移動(
図2、
図5、
図6では下降)する。そのため、第1の凸部13Aはロック解除部材14の第2の凸部14Aにより半径方向内方に押圧される。
第1の凸部13Aが第2の凸部14Aにより半径方向内方に押圧された状態が、
図5、
図6に示されている。
【0029】
第2の凸部14Aにより第1の凸部13Aが半径方向内方に押圧された結果、
図6で示す様に、ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2とは分離する。すなわち、緊急離脱機構12の作動により信号線保持部材13のロック機構11は解除され、ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2は分離する。ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2が分離することにより、ノズル側の信号線3に作用した引張力はディスペンサー側の信号線3には伝達されず、当該引張力によりディスペンサー40が倒れ、破損する恐れは無い。
ここで、信号線3に作用する引張力が所定値以上の場合、スプリング押圧板19はロック解除部材14の上面部に当接するため、スプリング押圧板19と一体に結合しているディスペンサー側部品13−2は、
図5、
図6で示す位置よりも充填ノズル1側(
図5、
図6では下方)に移動することはない。
【0030】
明確には図示されていないが、ケーシング16内のスプリング18の弾性反撥力は、所定値以上の引張力が信号線3に作用した場合におけるスプリング18の変形量が、ディスペンサー40側の信号線3の弛み量以下であるように設定されている。そして、当該所定値が作用した場合におけるスプリング18の変形量は、ディスペンサー側部品13−2の第1の凸部13Aが、ロック解除部材14の第2の凸部14Aが形成されている領域までの移動量(
図2、
図5では下降量)になる様に設定されている。
そのため、信号線3に作用する引張力が所定値またはそれ以上の場合には、上述した様に、ディスペンサー側部品13−2の第1の凸部13Aはロック解除部材14の第2の凸部14Aが形成されている領域まで移動(
図2、
図5、
図6では下降)して、信号線保持部材13のロック機構11は解除され、ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2とは分離する。一方、信号線3に作用する引張力が所定値未満の場合には、ディスペンサー側部品13−2の第1の凸部13Aはロック解除部材14の第2の凸部14Aが形成されている領域まで移動せず、信号線保持部材13のロック機構11は解除されず、ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2とは分離しない。
【0031】
図示の実施形態によれば、ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2が分離した後(
図6参照)で、且つ、充填ノズル1側の信号線3に作用した引張力が消失した後に、再び、
図2の状態に戻すことが出来る。
ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2の分離後、信号線3に作用した引張力が消失したならば、ノズル側部品13−1をディスペンサー側部品13−2に押し付ける。信号線保持部材13のロック機構11により、再びノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2が接続し、充填ノズル1からディスペンサー40まで信号線3が電気的に接続されている状態(
図2の状態)に復帰する。
【0032】
図3において、信号線保持部材13のディスペンサー側部品13−2における第1の凸部13Aの周方向両隣には、一対の廻り止め用突起13Bが形成されている。この廻り止め用突起13B間の寸法(周方向間隔)は、ロック解除部材14の第2の凸部14Aの周方向幅よりも僅かに大きく設定されている。
充填ノズル1側の信号線3に所定値以上の引張力が作用した場合には、ディスペンサー側部品13−2の廻り止め用突起13Bがロック解除部材14の第2の凸部14Aを挟んだ状態で、充填ノズル1側(
図2の下方)に移動する。
【0033】
図4で示された凹部14bと前記廻り止め用突起13Bとが係合することで、ロック解除部材14とディスペンサー側部品13−2が円周方向について相対移動しない様に構成されている。
ロック解除部材14とディスペンサー側部品13−2が円周方向について相対移動してしまうと、所定値以上の引張力が作用した場合に、第1の凸部13Aと第2の凸部14Aの円周方向位置が相違して、第2の凸部14Aが第1の凸部13Aを半径方向内方に押圧せず、ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2が分離しない恐れがある。前記図示しない廻り止めにより、ロック解除部材14とディスペンサー側部品13−2が円周方向について相対移動しない様にすれば、所定値以上の引張力が作用しても、ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2が分離しないという事態が防止される。
ノズル側部品13−1とディスペンサー側部品13−2が分離することによりノズル側の信号線3とディスペンサー側の信号線3に分離するので、所定値以上の引張力が作用した場合には信号線3は必ず信号線保持部材13で分離することになる。これにより、信号線3が不特定箇所で切断することと、それに伴う不都合(火花の発生、水素ガスと火花の接触)が防止される。
【0034】
図1〜
図6の第1実施形態の供給装置100によれば、信号線3に所定値以上の引張力が作用した場合に、信号線3は途中に着脱部10(信号線分離機構)を設け、着脱自在に配設されているので、着脱部10で信号線3は必ず分離され、不特定箇所で切断してしまうことがない。そして、分離した信号線3を着脱部10で再び接続することにより、容易且つ確実に離脱以前の状態に復旧させて、再利用することが出来る。
また、信号線3は着脱部10で離脱するため、信号線3の導通部が露出することが防止され、信号線3の導通部の露出に起因する火花の発生することや、火花が水素ガスと接触することも防止される。
さらに、一定以上の引張力が作用した場合に信号線3が着脱部10で離脱するため、水素ディスペンサー40が引っ張られて転倒し、破損してしまうことが防止される。
【0035】
また、第1実施形態に係る供給装置100によれば、着脱部10のロック機構11により、分離可能な信号線同士は着脱部10において接続した状態で保持される。そのため、車両50から送られてくるデータ(例えば、タンク内圧力、タンク内温度等のデータ)を示す信号は、信号線3を介して水素ディスペンサー40のハウジング本体内の制御装置に送信され、適正な充填制御が行なわれる。
そしてロック機構11は機械的に作動するため、確実且つ安全である。
【0036】
さらに、第1実施形態の供給装置100は、ディスペンサー側部品13−2において、第1の凸部13Aの周方向両隣に一対の廻り止め用突起13Bを形成し、ロック解除部材14において、第2の凸部14Aが形成されていない領域に、廻り止め用突起13Bと凹部14bとが当接して、ロック解除部材14とディスペンサー側部品13−2が円周方向について相対移動しない様に廻り止めを形成している。そのため、ロック解除部材14の第2の凸部14Aが、ディスペンサー側部品13−2の第1の凸部13Aを、半径方向内方に確実に押圧する。
【0037】
次に、
図7〜
図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図1〜
図6の第1実施形態では、上述した通り、ロック解除部材14と信号線保持部材13が円周方向について相対移動しない様に、廻り止めを形成している。
それに対して、
図7〜
図10の第2実施形態では、ロック解除部材24と信号線保持部材23が円周方向について相対移動しても、第2の凸部24Aが第1の凸部23Aを半径方向内方へ確実に押圧し、信号線保持部材23がノズル側部品23−1とディスペンサー側部品23−2に分離する様に構成されている。
【0038】
図7では明示されていないが、第2実施形態においても、信号線保持部材23は、ノズル側部品23−1とディスペンサー側部材23−2とに分離可能に構成されている。
図7から明らかな様に、第2実施形態の緊急離脱機構22では、信号線保持部材23(ディスペンサー側部品23−2)には第1の凸部23Aの周方向両隣に、廻り止め用突起は形成されていない。
信号線保持部材23、ノズル側部品23−1、ディスペンサー側部品23−2は、第1実施形態における信号線保持部材13、ノズル側部品13−1、ディスペンサー側部品13−2と比較すると、第1の凸部23Aの周方向両隣に廻り止め用突起がないことのみが異なっている。
【0039】
一方、第2実施形態のロック解除部材24においては、
図8及び
図9で示す様に、ロック解除部材24の内周側には、全周に亘って、半径方向内方に突出した第2の凸部24Aが形成されている。
信号線3の着脱部20において、信号線3が接続されており且つロック機構21で固定されている状態(第1実施形態の
図2の状態に対応)が、
図10で示されている。
図10において、ロック解除部材24の内周側全周に亘って第2の凸部24Aが形成されているため、所定値以上の引張力がノズル側信号線3に作用した場合に、ロック解除部材24と信号線保持部材23の円周方向について相対的な位置関係とは無関係に、ロック解除部材24の第2の凸部24Aが、ディスペンサー側部品23−2の第1の凸部23Aを半径方向内方へ確実に押圧する。その結果、信号線保持部材23はノズル側部品23−1とディスペンサー側部品23−2に分離する。
図7〜
図10の第2実施形態における上述以外の構成及び作用効果は、
図1〜
図6の第1実施形態と同様である。
【0040】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では、車両に水素ガスを充填する水素ガス充填装置を例示しているが、本発明は水素ガス充填装置についてのみ適用されるものではなく、例えばガソリンその他の燃料を車両に供給する供給装置についても適用可能である。