(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る潤滑油組成物は、潤滑油基油と、(A)無灰摩擦調整剤(以下「(A)成分」ともいう)と、(B)ホウ素含有分散剤(以下「(B)成分」ともいう)と、を含有する。本実施形態に係る潤滑油組成物は、内燃機関用潤滑油組成物として好適である。
【0011】
潤滑油基油は、特に制限されず、通常の潤滑油に使用される基油であってよい。具体的には、潤滑油基油としては、鉱油系基油、合成系基油、又は両者の混合物が挙げられる。
【0012】
鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を単独又は2つ以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の鉱油系基油、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。これらの鉱油系基油は、1種単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0013】
好ましい鉱油系基油としては、以下の基油を挙げることができる。
(1)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留による留出油
(2)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留出油(WVGO)
(3)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス及び/又はGTLプロセス等により製造されるフィッシャートロプシュワックス
(4)上記(1)〜(3)の中から選ばれる1種又は2種以上の混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(5)上記(1)〜(4)の中から選ばれる2種以上の油の混合油
(6)上記(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の脱れき油(DAO)
(7)上記(6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(8)上記(1)〜(7)の中から選ばれる2種以上の油の混合油等を原料油とし、この原料油及び/又はこの原料油から回収された潤滑油留分を、通常の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる潤滑油
【0014】
ここで、通常の精製方法としては、特に制限されるものではなく、基油製造の際に用いられる精製方法を任意に採用することができる。通常の精製方法としては、例えば、以下の精製方法が挙げられる。
(a)水素化分解、水素化仕上げ等の水素化精製
(b)フルフラール溶剤抽出等の溶剤精製
(c)溶剤脱ろう、接触脱ろう等の脱ろう
(d)酸性白土、活性白土等による白土精製
(e)硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄等の薬品(酸又はアルカリ)精製
これらの精製方法は、1種単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び任意の順序で採用することができる。
【0015】
合成系基油としては、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、中でも、ポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、例えば、炭素数2以上32以下、好ましくは6以上16以下のα−オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びそれらの水素化物が挙げられる。これらの合成系基油は、1種単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0016】
潤滑油基油の40℃における動粘度は、油膜形成が充分となり、潤滑性により優れ、高温条件下での蒸発損失がより小さくなる観点から、好ましくは13.0mm
2/s以上、より好ましくは15.0mm
2/s以上、更に好ましくは17.0mm
2/s以上である。潤滑油基油の40℃における動粘度は、低温粘度特性を向上させ、省燃費性に更に優れる観点から、好ましくは42.0mm
2/s以下、より好ましくは40.0mm
2/s以下、更に好ましくは38.0mm
2/s以下である。
【0017】
潤滑油基油の100℃における動粘度は、油膜形成が充分となり、潤滑性により優れ、高温条件下での蒸発損失がより小さくなる観点から、好ましくは2.0mm
2/s以上、より好ましくは3.0mm
2/s以上、更に好ましくは3.5mm
2/s以上である。潤滑油基油の100℃における動粘度は、低温粘度特性を向上させ、省燃費性に更に優れる観点から、好ましくは8.0mm
2/s以下、より好ましくは7.0mm
2/s以下、更に好ましくは6.0mm
2/s以下である。
【0018】
潤滑油基油の粘度指数は、粘度−温度特性、熱・酸化安定性、及び揮発防止性が良好となり、摩擦係数を更に低減させられる観点から、好ましくは100以上、より好ましくは110以上、更に好ましくは120以上である。潤滑油基油の粘度指数は、低温粘度特性に優れる観点から、好ましくは180以下、より好ましくは170以下、更に好ましくは160以下である。
【0019】
本発明における動粘度及び粘度指数は、それぞれJIS K2283:2000に準拠して測定された動粘度及び粘度指数を意味する。
【0020】
潤滑油基油の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、例えば50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
【0021】
(A)無灰摩擦調整剤としては、例えば窒素含有無灰摩擦調整剤、酸素含有無灰摩擦調整剤が挙げられ、窒素含有無灰摩擦調整剤が好ましい。具体的には、(A)成分としては、アミン、アミド、イミド、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の化合物が挙げられる。これらの化合物は、例えば、炭素数6〜30の炭化水素基、好ましくは炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、より好ましくは炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を少なくとも1個有する。(A)成分は、省燃費性に更に優れる観点から、好ましくは、アミン、アミド及び脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、アミン及びアミドから選ばれる少なくとも1種である。
【0022】
アミンとしては、直鎖状又は分岐状の脂肪族モノアミン又は脂肪族ポリアミン、及びこれらのアルキレンオキシド付加物が例示される。これらのアミンの炭素数は、例えば6〜30であってよい。アミンは、好ましくは下記式(1)で表されるアミンである。
R
1−NH
2 (1)
[式(1)中、R
1は、炭素数6〜30の炭化水素基であり、好ましくは炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくは炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基である。]
式(1)で表されるアミンとしては、具体的には、例えばオレイルアミン、ステアリルアミンが挙げられる。
【0023】
アミドとしては、直鎖状又は分岐状の脂肪酸と、脂肪族モノアミン又は脂肪族ポリアミンとのアミドが例示される。これらのアミドの炭素数は、例えば7〜31であってよい。アミドは、好ましくは下記式(2)で表されるアミドである。
R
1−C(=O)−NH
2 (2)
[式(2)中、R
1は、式(1)におけるR
1と同一の定義内容を示す。]
式(2)で表されるアミドとしては、具体的には、例えばオレイルアミド、アクリルアミドが挙げられる。
【0024】
脂肪酸エステルとしては、直鎖状又は分岐状の脂肪酸と、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステルが例示される。脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよい。これらの脂肪酸エステルの炭素数は、例えば7〜31であってよい。脂肪酸エステルとしては、好ましくは脂肪酸と脂肪族多価アルコールとのエステルであり、より好ましくは直鎖状の脂肪酸と脂肪族多価アルコールとのエステルであり、更に好ましくは直鎖状の不飽和脂肪酸と脂肪族多価アルコールとのエステルである。これらの脂肪族多価アルコールのエステルは、完全エステルであっても部分エステルであってもよく、好ましくは部分エステルである。これらの脂肪族多価アルコールのエステルとしては、具体的には、例えばグリセリンモノオレエートが挙げられる。
【0025】
(A)成分の含有量は、省燃費性に更に優れる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。(A)成分の含有量は、長期保存安定性に優れる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下である。(A)成分の含有量は、省燃費性と長期保存安定性との両立の観点から、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは、0.1〜0.8質量%、0.1〜0.7質量%、0.1〜0.6質量%、0.2〜0.8質量%、0.2〜0.7質量%、0.2〜0.6質量%、0.3〜0.8質量%、0.3〜0.7質量%、又は0.3〜0.6質量%である。
【0026】
(B)ホウ素含有分散剤としては、ポリオレフィンから誘導されるアルケニル基又はアルキル基を有するコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン、マンニッヒ塩基等の含窒素化合物、及び、これらの含窒素化合物にホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素化合物を作用させた誘導体が挙げられる。これらの中でも、含窒素化合物にホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素化合物を作用させた誘導体が好ましい。上記のアルケニル基又はアルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよく、プロピレン基、1−ブテン基、イソブチレン基等のオレフィンのオリゴマーや、エチレンとプロピレンとのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基又は分枝状アルケニル基等であってよい。
【0027】
(B)成分の具体例としては、下記式(3)で表されるいわゆるモノタイプのコハク酸イミド又は下記式(4)で表されるいわゆるビスタイプのコハク酸イミドが、ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素化合物により変性された変性コハク酸イミドが挙げられる。
【0028】
【化1】
式(3)中、R
2は、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を表し、好ましくは炭素数60〜350のアルキル基又はアルケニル基を表す。R
2は、好ましくはポリブテニル基である。mは、1〜5の整数を表し、好ましくは2〜4の整数を表す。
【0029】
【化2】
式(4)中、R
3及びR
4は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を表し、好ましくは炭素数60〜350のアルキル基又はアルケニル基を表す。R
3及びR
4は、好ましくは、それぞれポリブテニル基である。nは、0〜4の整数を表し、好ましくは1〜3の整数を表す。
【0030】
(B)成分の含有量は、鉛に対する腐食防止性に更に優れる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、ホウ素元素換算で、好ましくは90質量ppm以上、より好ましくは100質量ppm以上、更に好ましくは110質量ppm以上である。(B)成分の含有量は、省燃費性に更に優れる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、ホウ素元素換算で、好ましくは180質量ppm以下、より好ましくは170質量ppm以下、更に好ましくは160質量ppm以下である。(B)成分の含有量は、鉛に対する腐食防止性と省燃費性とを更に高水準で両立させる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、ホウ素元素換算で、好ましくは、90〜180質量ppm、90〜170質量ppm、90〜160質量ppm、100〜180質量ppm、100〜170質量ppm、100〜160質量ppm、110〜180質量ppm、110〜170質量ppm、又は110〜160質量ppmである。(B)成分の含有量(ホウ素元素換算値)は、ICP元素分析法によって測定することができる。
【0031】
潤滑油組成物は、鉛に対する腐食防止性に更に優れる観点から、好ましくは(C)ホウ酸カルシウムで過塩基化された過塩基性有機酸金属塩(以下「(C)成分」ともいう)を更に含有する。有機酸金属塩としては、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属ホスホネート等が挙げられる。アルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム、バリウムであってよく、好ましくはカルシウムである。(C)成分は、例えば、上記の有機酸金属塩と、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムと、ホウ酸又は無水ホウ酸とを反応させることによって得られる。
【0032】
(C)成分の塩基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは150mgKOH/g以上である。(C)成分の塩基価は、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは400mgKOH/g以下、更に好ましくは300mgKOH/g以下である。本発明における塩基価は、JIS K2501:2003の9.の過塩素酸法により測定された塩基価を意味する。
【0033】
(C)成分の含有量は、鉛に対する腐食防止性に更に優れる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、カルシウム元素換算で、好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは110質量ppm以上、更に好ましくは120質量ppm以上である。(C)成分の含有量は、鉛に対する腐食防止性に更に優れる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、カルシウム元素換算で、好ましくは350質量ppm以下、より好ましくは330質量ppm以下、更に好ましくは300質量ppm以下である。(C)成分の含有量は、鉛に対する腐食防止性に更に優れる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、カルシウム元素換算で、好ましくは、100〜350質量ppm、100〜330質量ppm、100〜300質量ppm、110〜350質量ppm、110〜330質量ppm、110〜300質量ppm、120〜350質量ppm、120〜330質量ppm、又は120〜300質量ppmである。(C)成分の含有量(カルシウム元素換算値)は、ICP元素分析法によって測定することができる。
【0034】
潤滑油組成物は、その他の添加剤を更に含有していてもよい。その他の添加剤としては、粘度指数向上剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、消泡剤、流動点降下剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤等が挙げられる。
【0035】
粘度指数向上剤としては、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、オレフィンコポリマー系粘度指数向上剤、スチレン−ジエン共重合体系粘度指数向上剤等が挙げられる。これらの粘度指数向上剤は、非分散型及び分散型のいずれであってもよく、好ましくは非分散型である。粘度指数向上剤は、粘度指数向上効果が高く、粘度−温度特性及び低温粘度特性に優れる観点から、好ましくはポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であり、より好ましくは非分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤である。
【0036】
流動点降下剤は、例えばポリ(メタ)アクリレートであってよく、好ましくは重量平均分子量が1万〜30万、より好ましくは重量平均分子量が5万〜20万のポリ(メタ)アクリレートである。
【0037】
摩耗防止剤としては、亜リン酸エステル(ホスファイト)、リン酸エステル、並びに、これらのアミン塩、金属塩、及び誘導体等のリン系摩耗防止剤、ジサルファイド、ポリサルファイド、硫化オレフィン、硫化油脂等の硫黄系摩耗防止剤が挙げられる。
【0038】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。具体的には、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0039】
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000mm
2/s以上100000mm
2/s以下のシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸とのエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコールとのエステル等が挙げられる。
【0040】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0041】
防錆剤としては、例えば、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート等が挙げられる。
【0042】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0043】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、ベンゾトリアゾール又はその誘導体等が挙げられる。
【0044】
その他の添加剤の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として0.01〜20質量%であってよい。
【0045】
潤滑油組成物の40℃における動粘度は、潤滑性に優れる観点から、好ましくは31.0mm
2/s以上、より好ましくは33.0mm
2/s以上、更に好ましくは35.0mm
2/s以上である。潤滑油組成物の40℃における動粘度は、必要な低温粘度を確保し、省燃費性を更に向上させる観点から、好ましくは75.0mm
2/s以下、より好ましくは72.0mm
2/s以下、更に好ましくは70.0mm
2/s以下である。
【0046】
潤滑油組成物の100℃における動粘度は、潤滑性に優れる観点から、好ましくは5.0mm
2/s以上、より好ましくは7.0mm
2/s以上、更に好ましくは8.0mm
2/s以上である。潤滑油組成物の100℃における動粘度は、必要な低温粘度を確保し、省燃費性を更に向上させる観点から、好ましくは14.0mm
2/s以下、より好ましくは13.0mm
2/s以下、更に好ましくは12.0mm
2/s以下である。
【0047】
潤滑油組成物の粘度指数は、粘度−温度特性、熱・酸化安定性、及び揮発防止性が良好となり、摩擦係数を更に低減させられる観点から、好ましくは120以上、より好ましくは140以上、更に好ましくは150以上である。潤滑油基油の粘度指数は、低温粘度特性に優れる観点から、好ましくは270以下、より好ましくは260以下、更に好ましくは250以下である。
【0048】
潤滑油組成物におけるホウ素元素含有量は、鉛に対する腐食防止性に更に優れる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは180質量ppm以上、より好ましくは190質量ppm以上、更に好ましくは200質量ppm以上である。潤滑油組成物におけるホウ素元素含有量は、鉛に対する腐食防止性及び省燃費性に更に優れる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは440質量ppm以下、より好ましくは420質量ppm以下、更に好ましくは400質量ppm以下である。ホウ素元素含有量は、ICP元素分析法によって測定することができる。
【0049】
潤滑油組成物におけるカルシウム元素含有量は、鉛に対する腐食防止性に更に優れる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは1800質量ppm以上、より好ましくは1900質量ppm以上、更に好ましくは2000質量ppm以上である。潤滑油組成物におけるカルシウム元素含有量は、鉛に対する腐食防止性に更に優れる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは2700質量ppm以下、より好ましくは2600質量ppm以下、更に好ましくは2500質量ppm以下である。カルシウム元素含有量は、ICP元素分析法によって測定することができる。
【0050】
本実施形態に係る潤滑油組成物は、内燃機関用潤滑油組成物として好適に用いられる。内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、含酸素化合物含有燃料対応エンジン、ガスエンジン等が挙げられる。本実施形態に係る潤滑油組成物は、ディーゼルエンジン油として特に好適に用いられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0052】
以下に示す基油及び添加剤を用いて、表1,2に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。
(基油)
水素化精製鉱油(100℃における動粘度:4.4mm
2/s、粘度指数:127)
(添加剤)
A−1:グリセリンモノオレエート
A−2:オレイルアミン
A−3:オレイルアミド
a−1:モリブデンジチオカーバメート
B−1:ホウ酸変性ポリブテニルコハク酸イミド(ポリブテニル基の重量平均分子量:7420、ホウ素元素含有量:0.5質量%)
C−1:ホウ酸カルシウムで過塩基化されたカルシウムサリシレート(塩基価:190mgKOH/g、カルシウム元素含有量:6.8質量%)
D−1:カルシウムサリシレート、カルシウムフェネート、ジアルキルジチオリン酸等を含有する添加剤パッケージ(ホウ素元素含有量:0.12質量%、カルシウム元素含有量:1.5質量%)
E−1:スチレン−ジエン共重合体
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
(省燃費性)
実施例1〜8及び比較例1の各潤滑油組成物について、SRV試験による摩擦係数、及び100℃におけるHTHS粘度(ASTM D4683)により省燃費性を評価した。結果を表3に示す。
摩擦係数に関しては、摩擦係数が0.150以下の場合を「A」、摩擦係数が0.150を超え0.155以下の場合を「B」、摩擦係数が0.155を超える場合を「C」として評価した。
100℃におけるHTHS粘度(ASTM D4683)に関しては、100℃におけるHTHS粘度が6.5以下の場合を「A」、100℃におけるHTHS粘度が6.5を超え6.7以下の場合を「B」、100℃におけるHTHS粘度が6.7を超える場合を「C」として評価した。なお、全ての実施例及び比較例の150℃におけるHTHS粘度は2.9であった。
摩擦係数及び100℃におけるHTHS粘度のいずれについても、評価がA又はBであれば、省燃費性に優れているといえる。
【0056】
【表3】
【0057】
(銅に対する腐食防止性)
実施例1〜8及び比較例2の各潤滑油組成物について、腐食酸化安定度試験(JIS K2503:2010)に準拠して銅に対する腐食防止性を評価した。ただし、サンプル量100ml、試験温度135℃、試験時間168時間、空気流量5L/hとし、触媒は銅、鉛、スズとした。結果を表4に示す。銅の溶出量が少ないほど(例えば20質量ppm以下)、銅に対する腐食防止性に優れているといえる。
【0058】
【表4】
【0059】
(鉛に対する腐食防止性)
実施例1〜8の各潤滑油組成物について、腐食酸化安定度試験(JIS K2503:2010)に準拠して鉛に対する腐食防止性を評価した。ただし、サンプル量100ml、試験温度135℃、試験時間168時間、空気流量5L/hとし、触媒は銅、鉛、スズとした。結果を表5に示す。鉛の溶出量が少ないほど(例えば150質量ppm以下)、鉛に対する腐食防止性に優れているといえる。
【0060】
【表5】