【実施例1】
【0026】
以下に本発明の実施例に係る可搬型歯科診療装置について詳細に説明する。
本実施例1に係る可搬型歯科診療装置は、
図1および
図2に示すように、基礎ユニット1、椅子モジュール(診療椅子モジュール)14、DIモジュール17、バキュームモジュール36等の複数の診療モジュールによって構成している。
【0027】
前記基礎ユニット1は、移動診療時に診療に必要な診療モジュールを取り除いた状態で構成するものである。
【0028】
どこまでの要素を基礎ユニット1に設定するかどうかは、その形状、大きさ、構造に限定されるものではないが、少なくとも歯科診療を行ううえで必要なエネルギーの供給を行う基幹部2は含むものとする。
【0029】
例えば、ドクター用の診療テーブル3を保持する主アーム4や、診療テーブル3の上下バランスを保つバランスアーム5を基礎ユニット1に含めても良いし、さらに、ドクター用の診療テーブル3までを含めて基礎ユニット1としても良い。
【0030】
また、衛生士やアシスタントがドクターの診療を補助するためのアシスタントテーブル6を保持する補助アーム7を基礎ユニット1に含めても良い。
【0031】
前記アシスタントテーブル6には、バキュームチップ8やシリンジ9等を具備し、ドクター用の診療テーブル3とは、反対側に配置して使用するものである。
【0032】
前記基礎ユニット1の基幹部2は、歯科医院等
での診療室の床に常設され、この床に埋設された水、空気、電力からなる常設の駆動エネルギー媒体を供給する駆動エネルギー媒体供給手段が基幹部2に接続され、さらに、排水手段も設けられている。
【0033】
前記基礎ユニット1の基幹部2へ供給する駆動エネルギー媒体としては、例えば歯科医院等の水道設備からの水道水、歯科医院等に設置したエアーコンプレッサーからのエアー(圧縮空気)、歯科医院等に設置した電気設備から供給される電力(例えばAC100V用のコンセントから供給される交流電力)等がある。
【0034】
水道水は、前記基礎ユニット1に設けられたうがいの為のコップに給水する給水口10への供給や、歯科診療時に使用する各種の歯科用インスツルメント類に使われる水として供給される。
【0035】
エアー(圧縮空気)は、各種の歯科用インスツルメントの動作用、口腔内の患部の清掃や冷却用として供給される。
電力は、各種の歯科用インスツルメントの動作用である駆動エネルギー媒体の一種として供給される。
【0036】
すなわち、電力は、椅子モジュール14、インスツルメントモジュール11等の駆動エネルギー媒体の一種として、さらには、図示しないが照明用として使用される無影灯や、光重合器等、歯科診療装置の制御用の駆動エネルギー媒体として使用される。
【0037】
また、前記椅子モジュール14の椅子本体14aには、キャスター18およびこのキャスター18用のストッパー19を設けている。さらに、前記基幹部2には、足踏み操作用のフットコントローラ20を接続配置している。
【0038】
また、歯科診療時に基礎ユニット1から多目的にエアーの使用が可能なようにドクター用の診療テーブル3の下部には、エアーワンタッチジョイント(図示せず)も設置されている。
【0039】
排水手段には、歯科診療に使用されたうがい水等をスピットン15から排水したもの、歯科診療時にバキュームチップ41から吸引された唾液等を、吸引時にセパレータ16にかけ、液体と気体に分離して排水する機能を持たせるようにする。
【0040】
図2は、本実施例1に係る可搬型歯科診療装置において、前記アシスタントテーブル6に代えて、診療モジュールの一種であるバキュームモジュール36を配置した可搬型歯科診療装置の構成例を示すものである。
【0041】
前記バキュームモジュール36は、基礎ユニット1のアシスタント側に設けられた補助アーム7に着脱自在に装着する構成としている。このバキュームモジュール36の詳細については後述する。
【0042】
次に、上述した歯科診療装置の各診療モジュールについて詳述する。
【0043】
(DIモジュール17)
図1又は
図2に示すドクター用の診療テーブル3には、診療モジュールの一種であるモジュール化されたDIモジュール(デンタルインスツルメントモジュール)17を着脱自在に結合している。
【0044】
このDIモジュール17には、DIモジュール本体17aに対して歯科診療で使用するインスツルメントモジュール11を構成するエアータービンハンドピース12、シリンジ13を組み込んでいる。
【0045】
前記インスツルメントモジュール11としては、前記エアータービンハンドピース12やシリンジ13の他、図示しないがマイクロモーターハンドピース、スケーラー、光重合器、口腔内観察カメラ等が必要に応じて組み込まれる。
【0046】
このようなインスツルメントモジュール11をDIモジュール17と組み合わせることによって集合診療モジュールを構成している。
【0047】
図4は前記インスツルメントモジュール11を組み込んだDIモジュール本体17aの構成及び水タンク21等を概略的に示すものである。
【0048】
前記DIモジュール本体17aには、前記基礎ユニット1に接続されているフットコントローラ20を接続することができるように構成している。
【0049】
また、前記DIモジュール本体17aの壁面には、
図4に示すように、水用ワンタッチジョイント(オス)24a、エアー用ワンタッチジョイント(オス)23a、及び、電力用コネクタ(オス)61aを配置している。
【0050】
そして、駆動エネルギー媒体の一種である水を供給する水タンク21の供給口に一端を接続し、他端に水用ワンタッチジョイント(メス)24bを設けた水用ホース24cを予め用意し、水用ワンタッチジョイント(メス)24bを前記水用ワンタッチジョイント(オス)24aに嵌着することで、前記DIモジュール本体17aに水を供給し得るように構成している。
【0051】
前記水用ワンタッチジョイント(オス)24a、水用ワンタッチジョイント(メス)24bにより水用ワンタッチジョイント24を構成している。
【0052】
駆動エネルギー媒体の一種である水の供給源としては、水タンク21の他に、例えば飲料水ボトル21A(収容水量500mL)を採用し、前記水用ホース24cを用いて前記DIモジュール本体17aに水を供給する構成とすることもできる。
【0053】
また、駆動エネルギー媒体の一種であるエアーを供給する例えば酸素ボンベ32の供給口に一端を接続し、他端にエアー用ワンタッチジョイント(メス)23bを設けたエアー用ホース23cを予め用意し、エアー用ワンタッチジョイント(メス)23bを前記エアー用ワンタッチジョイント(オス)23aに嵌着することで、前記DIモジュール本体17aにエアーを供給し得るように構成している。
【0054】
前記エアー用ワンタッチジョイント(オス)23a、エアー用ワンタッチジョイント(メス)23bによりエアー用ワンタッチジョイント23を構成している。
【0055】
駆動エネルギー媒体の一種であるエアーの供給源としては、酸素ボンベ32の他に、小型コンブレッサー32Aを採用し、前記エアー用ホース23cを用いて前記DIモジュール本体17aにエアーを供給する構成とすることもできる。
【0056】
さらに図示しない小型ポンプをエアーの供給源としてもよい。
【0057】
電力の供給用としては、一端に図示しないACコンセントに接続するプラグ62を備え他端に電力用コネクタ(メス)61bを備えた電源ケーブル63を予め用意し、プラグ62をACコンセントに、電力用コネクタ(メス)61bを電力用コネクタ(オス)61aに装着することで、前記DIモジュール本体17aに駆動エネルギー媒体の一種である所要の交流電力を供給し得るように構成している。
【0058】
さらに、電力については、別の態様として、駆動エネルギー媒体の一種である電力(直流電力)を供給するバッテリー(蓄電池)64の陽極、陰極に一端を接続し、他端に電力用コネクタ(メス)61bを備えた別の電源ケーブル65を予め用意し、この電源ケーブル65の電力用コネクタ(メス)61bを前記電力用コネクタ(オス)61aに装着することで、前記DIモジュール本体17aに駆動エネルギー媒体の一種である所要の直流電力を供給し得るように構成している。
【0059】
尚、前記バッテリー64からの直流電力は、当然前記ACコンセントからの交流電力とは異なるが、前記DIモジュール本体17a内に駆動電圧コントロール回路(図示せず)を設けることで、前記エアータービンハンドピース12やシリンジ13等の動作を支障なく実行できるように構成している。
【0060】
このようにして、前記DIモジュール17は、
図1、
図2に示す常設の設置態様の他、基礎ユニット1から分割した単体として可搬可能である臨時の診療モジュールとして再構成することができるようにしている。
【0061】
前記DIモジュール17には、補助的に収納ケース50も付加される。
【0062】
図5は前記DIモジュール17の水・エアー回路を示すものである。
【0063】
前記DIモジュール17の水・エアー回路は、エアー用ワンタッチジョイント(オス)23aに接続した接続チューブ25、及び、水用ワンタッチジョイント(オス)24aに接続した接続チューブ26を具備している。
【0064】
前記水・エアー回路においては、エアー用ワンタッチジョイント(オス)23aに供給されるエアーは、接続チューブ25を経て、レギュレータ27に供給され、このレギュレータ27により最適な圧力に調整された後、フットコントローラ20を構成する踏み込み式のドライブペダル28aを備えた切替弁28を経て前記エアータービンハンドピース12にドライブエアー又はチップエアーとして供給される。
【0065】
また、前記レギュレータ27により最適な圧力に調整されたエアーは、このレギュレータ27の後段のエアー管路から分岐した分岐接続チューブ25aから圧力調整弁28bを経て前記シリンジ13に供給される。
【0066】
さらに、前記エアーは、前記分岐接続チューブ25aから分岐したエアー管路に設けた開閉制御弁31を経て水タンク21に供給される。
【0067】
一方、前記水ワンタッチジョイント(オス)24aに供給される水は、接続チューブ26からシャトル弁29を経て水タンク21に供給される。
【0068】
また、前記シャトル弁29から分岐接続チューブ26aを経て前記シリンジ13に水が供給されるように構成している。
【0069】
前記分岐接続チューブ26aの途中から分岐した水流路には切替弁30aが配置され、前記切替弁28の吐出側に接続されたフットコントローラ20を構成する切替制御弁30により切替弁30aを制御して前記エアータービンハンドピース12に水を供給し、エアータービンハンドピース12からエアーと混合したスプレーを吐出し得るように構成している。
【0070】
(バキュームモジュール36)
次に、
図6、
図7を参照してバキュームモジュール36について説明する。
【0071】
このバキュームモジュール36は、前記基礎ユニット1のアシスタント側に設けられた補助アーム7に着脱自在に装着するように構成している。
【0072】
このバキュームモジュール36は、バキュームモジュール本体36aを具備し、バキュームモジュール本体36aには、ホース39を備えたバキュームチップ41を設置するハンガー42、バキュームチップ41の作動をオン/オフするスイッチ43、分岐接続部40を設けている。
【0073】
さらに、前記バキュームモジュール36は、前記基礎ユニット1のスピットン置台48から分離可能に構成したスピットン15を含み、スピットン15に連通させた接続ホース15a及び前記ホース39を分岐接続部40に接続する構成としている。
【0074】
前記スピットン15は、基礎ユニット1から分離したとき携帯用の台49に設置するようになっている。
【0075】
前記バキュームモジュール本体36aの内部には、
図7に示すように、空気・水・電気回路を設けている。
【0076】
前記空気・水・電気回路は、バキュームモータ38を回転させることによってバキュームタンク44内を陰圧にして、バキュームチップ41やスピットン15から分岐接続部40を経て吸引した水等の液体や空気をセパレータタンク45内で水と空気に分離して、空気は外部に排気し、液体はセパレータタンク45内に溜める構成としている。
【0077】
前記セパレータタンク45に溜まった水等の液体は、決められた水量以上に溜まると、フロート46を押し上げて、逆止弁47を閉じ、水分がバキュームタンク44に流れ込まないように構成している。
【0078】
前記スピットン15は、常設診療時、基礎ユニット1のスピットン置台48に搭載するが、臨時診療時には、基礎ユニット1から分離し
図6に示すように携帯用の台49に載せて使用するものである。
【0079】
前記バキュームモジュール本体36aの外壁部には、バキュームモータ38用の電力用コネクタ(オス)71aが設けられ、さらに、一端に図示しないACコンセントに接続するプラグ72を備え他端に電力用コネクタ(メス)71bを備えた電源ケーブル73を予め用意し、プラグ72をACコンセントに、電力用コネクタ(メス)71bを電力用コネクタ(オス)71aに装着することで、前記バキュームモータ38に所要の交流電力を供給し得るように構成している。
これら構造により、前記バキュームモジュール36を常設の又は臨時の診療モジュールの一つとして機能させることができるように構成している。
【0080】
(椅子モジュール14)
次に、椅子モジュール14について
図8を参照して説明する。
【0081】
患者が座る椅子モジュール14は、前記基礎ユニット1から取外し可能に構成している。
この椅子ジュール14は、椅子本体14aの底部に例えばストレッチャー車椅子の場合のようなキャスター18が装備されて、床面上を移動可能に構成されており、診療時にはストッパー19を踏み込むことによってロックをかけ、椅子本体14aが移動しないような構造としている。
【0082】
また、前記椅子本体14aのロックはストッパー19の再踏み込み、またはストッパー19を跳ね上げることによって解除することができるように構成する。
【0083】
さらには、前記ストッパー19を踏み込むことでキャスター18を下方へ押し下げると共に椅子本体14aを上方へ押し上げて移動可能とし、再踏み込みでキャスター18を上方へ押し上げると共に椅子本体14aを下方へ押し下げ、床に固定するようにしてもよい。
【0084】
さらに、椅子本体14aに電源ケーブル22aを具備するコンプレッサー装備22を付加し、コンプレッサー装備22を駆動エネルギー媒体の一種であるエアーの供給源とする構成も可能である。これら構造により、前記椅子モジュール14を常設の又は臨時の診療モジュールの一つとして機能させることができるように構成している。
次に、
図1、
図2、
図9乃至
図14を参照して常設診療時の診療態様、臨時診療時に対応するための診療モジュールの移動方法、及び、臨時診療時の診療態様について説明する。
【0085】
歯科医院等
での常設診療時には、
図1又は
図2に示すように、基礎ユニット1、椅子モジュール14及び複数の診療モジュールによって構成した可搬型歯科診療装置を使用して常設態様の診療を実行する。
【0086】
この場合、前記基礎ユニット1の基幹部2に対して、常設の水道設備からの水道水、常設のエアーコンプレッサーからのエアー(圧縮空気)、常設の電気設備から供給される電力を供給し、複数の診療モジュールを各々動作可能状態として常設態様の診療を実行するものである。
【0087】
一方、例えば訪問診療時のような臨時診療時には、
図9、
図10に示すように、DIモジュール17、バキュームモジュール36及び椅子モジュール14の移動の手順を行う。
【0088】
訪問診療時には、DIモジュール17、バキュームモジュール36及び椅子モジュール14を
図1に示す常設態様から分割する。
【0089】
前記DIモジュール17は、収納ケース50の上に載置する。また、収納ケース50の内部には、水タンク21、フットコントローラ20を収納する。そして、DIモジュール17、収納ケース50を椅子モジュール14の座部に載置する。
【0090】
同様に、バキュームモジュール36の上部には、スピットン15を携帯用の台49に載せたまま搭載し、これらも椅子モジュール14の座部に載置し、
図10に示すように椅子モジュール14に搭載した状態で例えば車椅子仕様車に載せて目的地に移動する。
【0091】
この場合、
図4に示すようなエアー供給用の酸素ボンベ32、水用ホース24c、エアー用ホース23c、電源ケーブル63、さらには、
図6に示すようなバキュームモジュール36用の電源ケーブル73も併せて携行する。
【0092】
目的地に到着したら、DIモジュール17を収納ケース50に載せたまま床に下ろし。また、バキュームモジュール36も床に下ろし、さらにスピットン15を携帯用の台49に乗せたまま床に下ろして椅子モジュール14とともに目的地における診療に供する。
【0093】
図11に示すように、椅子モジュール14の縦部に専用台53を現地で取り付け、その上にDIモジュール17、バキュームモジュール36を置いて診療を行ってもよい。
【0094】
図12は椅子モジュール14を使用しない場合のDIモジュール17、バキュームモジュール36、スピットン15の移動方法を示すものである。
【0095】
収納ケース50に搭載したDIモジュール17とスピットン15を載せたバキュームモジュール36とをベルト52などで連結し、この状態で例えば車椅子仕様車に載せて目的地に移動する。
【0096】
訪問診療時には、例えば
図13に示すように患者が寝ているベッド53の両脇にDIモジュール17、バキュームモジュール36を配置して診療を実行する。
この場合、前記DIモジュール17に対しては、水タンク21から水用ホース24cを経て水を供給し、酸素ボンベ32からエアー用ホース23cを経てエアーを供給し、電源ケーブル63を訪問先の商用電源であるAC100Vコンセントに接続して所要の電力を供給する。
【0097】
また、前記バキュームモジュール36に対しては、電源ケーブル73を訪問先の商用電源であるAC100Vコンセントに接続して所要の電力を供給する。
【0098】
このようにして、DIモジュール17、バキュームモジュール36を臨時態様で再構成し、訪問診療場所でベッド53を使用している患者に対する診療を実行することが可能となる。
【0099】
ベッド53を使用する必要のない患者の場合には、前記椅子モジュール14を使用することは言うまでもない。
【0100】
尚、
図12は椅子モジュール14を使用しない場合のDIモジュール17、バキュームモジュール36、スピットン15の移動方法を示すものである。
【0101】
図14は、
図9の構成例に替えて、フットコントローラ20を接続したDIモジュール17をキャスター35付きの収納カート35と組み合わせた構成例を示すものである。 この場合、収納カート35内には水供給用の水タンク21、エアー供給用の酸素ボンベ32を収納している。このような態様でも
図13に示す場合と同様にして訪問診療を実行することが可能である。
【0102】
次に、移動場所での臨時診療の別態様である災害時診療時における診療モジュールの移動方法及び再構成態様について
図15を参照して説明する。
【0103】
災害時診療時においては、災害時の診療場所に基礎ユニット1から分割したDIモジュール17に加えて、水タンク21、酸素ボンベ32、バッテリー64、さらには、水用ホース21c、エアー用ホース23c、電源ケーブル65をも移動場所に運搬する。
【0104】
そして、水タンク21、水用ホース21cを用いてDIモジュール17に水を供給し、酸素ボンベ32、エアー用ホース23cを用いてDIモジュール17にエアーを供給し、バッテリー64、電源ケーブル65を用いてDIモジュール17に電力を供給することで、前記DIモジュール17を動作させて災害時診療を実行する。
【0105】
前記水タンク21に替えて飲料水ボトル21Aを水供給源とすることもできる。
【0106】
図16は、臨時診療時と、常設診療時とにおけるマイクロモータ(マイクロモーターハンドピース)、タービン(タービンハンドピース)シリンジに対して駆動エネルギー媒体であるエアー(空気)を供給しない場合の回転速度、トルク、使用の可否の態様、及びエアー(空気)を供給した場合の回転速度、トルク、使用の可否の態様を示したものである。また、臨時診療時と、常設診療時とにおけるマイクロモータ(マイクロモーターハンドピース)、タービン(タービンハンドピース)、シリンジ、及び、スケーラーに対して駆動エネルギー媒体である水を入力した場合の注水量の比較を示すものである。
【0107】
図16から明らかなように、常設診療時においては、マイクロモータ(マイクロモーターハンドピース)、タービン(タービンハンドピース)、シリンジ、及び、スケーラーからなる歯科用インスツルメントのうちのマイクロモータ(マイクロモータハンドピース)については、エアー供給源からのエアーが十分に確保できることから、回転速度、トルクとも定格の機能を発揮させることができる。
【0108】
また、タービン(タービンハンドピース)、シリンジも通常通り使用することができる。
【0109】
さらに、マイクロモータ(マイクロモーターハンドピース)、タービン(タービンハンドピース)、シリンジ、及び、スケーラーのいずれについても、水供給源からの注水量による制限を受けることなく、各々の機能を通常通り使用することができる。
【0110】
一方、臨時診療時においては、マイクロモータ(マイクロモーターハンドピース)、タービン(タービンハンドピース)、シリンジ、及び、スケーラーからなる歯科用インスツルメントのうちのマイクロモータ(マイクロモータハンドピース)については、エアー供給源からのエアー供給はない、或いは酸素ボンベ32等から供給されることから、エアー供給量に限界があり、充分なエアー供給が難しい。
【0111】
そこで、エアー供給がなかったり、エアーの供給量を絞った状態で、常設エアーの供給と同様な回転速度や回転トルクを得ようとすると、回路や回転部分で発生する発熱量を十分冷却することができなくなるので故障したり、寿命が著しく短くなるなどの問題を発生する。
【0112】
そのため、回転速度、トルクの点で上述した常設診療時の場合よりも下回るようにマイクロモータへの供給電力量を制限することでその下回った範囲でマイクロモータ(マイクロモータハンドピース)を臨時診療に供することができる。
【0113】
そこで本実施例1では、
図17に示すように、臨時診療時と、常設診療時の供給量切換手段95を設ける。前記供給量切換手段95は、切換弁からなるエアー供給量切換部95a、切換弁からなる水供給量切換部95b、切換スイッチのような電力供給量切換部95cにより構成する。
【0114】
そして、臨時診療時は、エアーが流量を制限したエアー流量制限管路96を通過するように供給量切換部95aで切換える。同様に、臨時診療時は、水が流量を制限した水流量制限管路97を通過するように水供給量切換部95bで切換える。さらに、臨時診療時は、電力についてはマイクロモータへの電力を制限するような電力供給制限回路98を経由するように電力供給量切換部95cにより切換える。
【0115】
さらに、マイクロモータ(マイクロモーターハンドピース)、タービン(タービンハンドピース)、シリンジ、及び、スケーラーのいずれについても、水供給源である飲料水ボトル21A等の水供給源からの注水量によるため、短時間で水を消耗しないように注水量に制限を加えるように水流量制限管路97を通過するように水供給量切換部95bで切換えることで制約が生じるが、注水量の制約の範囲内でこれらを臨時診療に供することができる。
【0116】
前記供給量切換手段95としては、手動でバルブ分岐の切換えや切換スイッチの切換え操作を行っても良い。またバルブを電動バルブにすれば、電気的操作で切換えることも可能である。
【0117】
さらにエアー供給源、水供給源、電力供給源が、常設エネルギー源と臨時エネルギー源のどちらのエネルギー源が接続されたかが分かるように接続部に認識機能を設けておけば、前記供給量切換手段95を自動で切換えることも可能である。
尚、
図17で示すエアー供給源、水供給源、電力供給源は、
図4のDIモジュール17におけるエアー用ワンタッチジョイント23a、水用ワンタッチジョイント24a、電力用コネクタ61aに接続する各供給源に相当し、
図17で示す供給量切換手段95は
図4における供給量切換手段95に相当し、その内部に設けられた、エアー供給量切換部95a、水供給量切換部95b、電力供給量切換部95cの切換操作によって、常設診療と臨時診療の切換が可能となる。
【0118】
以上歯科用インスツルメントのうちマイクロモータについて説明したが同様にマイクロモータ以外のインスツルメントについても供給量切換手段95を設けて、供給エネルギーを制限してインスツルメントに供給することが可能となる。
【0119】
尚、酸素ボンベ32等からエアー供給した場合は、エアーを駆動源とするタービン(タービンハンドピース)、シリンジ等では、短時間でエアーを消耗してしまうためスケーラーについては使用できない事態も生じるように制限することもできる。
【実施例2】
【0120】
次に、本発明の実施例2に係る可搬型歯科診療装置について、
図18乃至
図23を参照して説明する。
【0121】
本実施例2に係る可搬型歯科治療装置81は、
図18に示すように、ドクター装置部82と、このドクター装置部82の一方の側面を覆うように構成した蓋体83a内に一体的に組み込んだアシスタント装置部83と、前記ドクター装置部82の他方の側面を覆うように構成した蓋体82aとを具備し、ドクター装置部82の両側に前記蓋体82a、83aを装着することで、全体を一体化し得るように構成している。
【0122】
前記ドクター装置部82は、
図19、
図20に示すように、このドクター装置部82を構成する装置枠体84の一方の側壁にトリプルシリンジ86a、マイクロモーターハンドピース(又はエアータービンハンドピース)86b、スケーラー86c等のインスツルメント類85がハンガー87に対して引き出し自在に備えられ、その下部に前記トリプルシリンジ86a、マイクロモーターハンドピース86b等に駆動エネルギー媒体の一種である電力を供給するためのプラグ(ACプラグ)75が電気コード76を介して電気的に接続し得るように設けられている。
【0123】
また、前記ドクター装置部82の装置枠体84には、駆動エネルギー媒体の一種である圧力水用の貯水タンク77が備えられている。
【0124】
尚、前記ハンガー87は回動自在に構成されており、ドクターはハンガー87を回動してインスツルメント類85を診療に好都合な位置に移動させることができるようになっている。
【0125】
また、前記ドクター装置部82には、歯科診療のためにドクターが各種操作を行う操作パネル88が設けられている。
【0126】
前記アシスタント装置部83は、
図21に示すように、蓋体83aの内側に、排唾を空気と共に吸引誘導するバキュームホース89を連結し、このバキュームホース89にて吸引された排唾を気液分離するためのセパレータ部90が蓋体83aの内壁に固定され、セパレータ部90の下面にはこのセパレータ部90に吸引装置、例えば図示しないが家庭用電気掃除機等を装着する吸引ホース92が連結されている。
【0127】
そして、前記バキュームホース89の端部には図示しない排唾用の吸引ノズルを着脱自在に装着する装着口89aが設けられ、この装着口89aはセパレータ部90の上端に支持杆90aを介して支持されたハンガー91の掛止部91aに係脱自在に係止されている。
【0128】
一方、前記セパレータ部90の下面には吸引ホース92が接続され、その開放端には例えば家庭用掃除機等の吸引装置を着脱自在に装着する装着口92aが設けられている。
【0129】
また、セパレータ部90内には図示しないが排唾貯留用のセパレータタンクが載置されている。尚、排唾とともに吸引される空気は、気液分離により大気中に放出されるようになっている。
【0130】
前記ドクター装置部82と、アシスタント装置部83とは、係止突起82cと、係止フック83cとにより係脱可能に構成されるとともに、ドクター装置部82には持ち運び用の把手82bを、アシスタント装置部83には持ち運び用の把手83bを各々設けている。
【0131】
本実施例2によれば、前記ドクター装置部82とアシスタント装置部83とを分離結合可能とした構成を採用しているので、ドクター装置部82とアシスタント装置部83とを一体化し、移動場所に簡略に搬送することができ、臨時診療である訪問診療や災害時診療に的確に対応することができる。
【0132】
また、本実施例2によれば、訪問診療や災害時診療の場合には、前記ドクター装置部82とアシスタント装置部83とを分離してドクター装置部2をドクター側に、アシスタント装置部3をアシスタント側に配置することが可能となり、アシスタント用具を患者越しに使用しなくてもよくなる。
【0133】
本実施例2に係る可搬型歯科治療装置81において、訪問診療の際には、前記ドクター装置部82に関しては、例えば、駆動エネルギー媒体の一種である水は、貯水タンク77により供給し、エアーは実施例1の場合と同様に、可搬型歯科治療装置81とともに運搬した酸素ボンベ32又は小型コンブレッサー32Aにより供給し、さらに、電力は前記プラグ75、コード76を用いて訪問宅の家庭内コンセントから供給することで前記インスツルメント類85を動作させ、歯科診療を実行することができる。
【0134】
また、前記アシスタント装置部83に関しては、既述したように家庭用電気掃除機等の吸引力を用いて患者の排唾動作を実行することができる。
【0135】
一方、災害時診療の場合は、前記ドクター装置部82に関しては、例えば駆動エネルギー媒体の一種である水は貯水タンク77により供給し、エアーは実施例1の場合と同様に可搬型歯科治療装置81とともに運搬した酸素ボンベ32又は小型コンブレッサー32Aにより供給し、さらに、電力は例えば可搬型歯科治療装置81とともに運搬したAC100Vの電圧を出力するように構成した小型発電機93、及び、前記プラグ75、コード76を用いて供給することで、前記インスツルメント類85を動作させ、歯科診療を実行することができる。
【0136】
また、前記アシスタント装置部83に関しては、例えば図示しないが運搬したエアー吸引機能を有する電源付きの小型コンプレッサー等を用いることで排唾動作の実行を可能とすることも可能である。
【0137】
前記可搬型歯科治療装置81としては、
図22に示すように、ベルト78a、キャスター79を備える専用搬送カート78を付加して、運搬の便宜をさらに向上させることも可能である。
【0138】
本実施例2によれば、訪問診療や災害時診療等の臨時診療に対応可能な臨時診療専用タイプの可搬型歯科治療装置81を実現することができる。
【0139】
尚、本実施例2に係る可搬型歯科治療装置81において、駆動エネルギー媒体の供給源種類としては上述した例に限らず、実施例1の場合と同様に種々の供給源を選択することが可能であり、特に限定するものではない。
【0140】
本実施例2の可搬型歯科診療装置81においては、訪問診療や災害時診療の他に、椅子やベッドがあれば、診療室の常設診療としても使用が可能である。
【0141】
常設診療時には、
図23に示すように、前記ドクター装置部82とアシスタント装置部83とを分離してドクター装置部82をドクター側に、アシスタント装置部83をアシスタント側に配置して患者の診療を行うことができる。
【0142】
その際、駆動エネルギー媒体の一種である水は、診療室内にある常設の基幹部2の水供給源に接続し、水道設備からの水道水を供給することができる。
【0143】
またエアーは基幹部2のエアー供給源に接続し、歯科医院等に設置したエアーコンプレッサーからエアー(圧縮空気)を供給することができる。
【0144】
さらに電力は前記プラグ75、コード76を用いて基幹部2内の電力供給部に接続することにより、歯科医院等に設置した電気設備から供給される商用電源を供給することができる。
【0145】
さらにまたアシスタント装置部83の吸引ホース92は、基幹部2に設けられたセントラルバキューム(図示なし)と接続することができる。
【0146】
尚、セントラルバキュームは、
図7に示すフロート46、逆止弁47、バキュームタンク44、バキュームモータ38をバキュームモジュール内に設けるのではなく、診療室内のバキューム機能を一つにまとめて診療室内外に設けたもので、バキュームモータを回転させることでバキュームタンク44内を陰圧にして各診療装置に分岐吸引できるようにしたものである。
【0147】
尚、既述した実施例1の
図17に示す場合と同様に、臨時診療時と、常設診療時の供給量切換手段95を設けることで、臨時診療時は、エアーが流量を制限したエアー流量制限管路96を通過するようにエアー供給量切換部95aで切換える。同様に、臨時診療時は、水が流量を制限した水流量制限管路97を通過するように水供給量切換部95bで切換える。さらに、臨時診療時は、電力についてはマイクロモータへの電力を制限するような電力供給制限回路98を経由するように電力供給量切換部95cにより切換える。
【0148】
一方、常設診療時では、エアーが流量を制限しない管路を通過するようにエアー供給量切換部95aで切換える。また、常設診療時では、水が流量を制限しない管路を通過するように水供給量切換部95bで切換える。さらに、常設診療時では、電力についてはマイクロモータへの電力を制限しない電路を経由するように電力供給量切換部95cにより切換える。
【0149】
このように構成すれば、本実施例2の可搬型歯科診療装置81を比較的簡略な構成からなる診療室内での常設診療用として活用することができる。