(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電圧検出装置および電圧検出方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
<1.電圧検出方法>
図1を用いて本実施形態にかかる電圧検出方法について説明する。
図1は、本実施形態にかかる電圧検出方法を説明する図である。本実施形態にかかる電圧検出方法は、たとえば電気自動車やハイブリッド型自動車などの電源として用いられる組電池Bが有する電池スタックB1_n(nは1〜Nの自然数)の電圧を検出する方法である。そこで、まず
図1(a)を用いて組電池Bを備える組電池システムSの概要について説明する。
【0011】
図1(a)の組電池システムSは、組電池Bと電圧検出装置1とを備える。組電池Bは、互いに直列に接続された複数の電池スタックB1_nを有する。電池スタックB1_nは、互いに直列に接続された複数の電池セルを有する。
【0012】
電圧検出装置1は、複数の電池スタックB1_nの電圧をそれぞれ検出する複数の検出部10と、複数の検出部10を制御する制御部20とを有する。本実施形態にかかる電圧検出方法は、電圧検出装置1で実行される。
【0013】
本実施形態にかかる電圧検出方法では、電圧検出装置1の検出部10は、所定周期T0で電池スタックB1_nの電圧を検出する。また、電圧検出装置1は、電池スタックB1_nの電圧を検出するアクティブモードと、検出部10に流れる電流が所定値未満であるスタンバイモードとを切り替えて動作する。
【0014】
すなわち、
図1(b)に示すように、電圧検出装置1は、アクティブモードで電池スタックB1_nの電圧を検出し、検出後にスタンバイモードに切り替えて次の電圧検出を待つ。その後、スタンバイモードからアクティブモードに切り替わると、電圧検出装置1は電池スタックB1_nの電圧を検出する。このように、電圧検出装置1は、アクティブモードとスタンバイモードとを交互に切り替えて、電池スタックB1_nの電圧を所定周期T0で検出する。
【0015】
このとき、電圧検出装置1は、アクティブモードの開始タイミングt11〜t13(以下、開始タイミングt1とも称する)または終了タイミングt21、t22(以下、終了タイミングt2とも称する)の少なくとも一方を変更する。具体的には、所定周期T0の間にスタンバイモードとアクティブモードとを切り替えるが、切り替えるタイミングを所定周期T0ごとに変更する。
【0016】
図1に示す例では、電圧検出装置1は、アクティブモードの開始タイミングt1を所定周期T0ごとに変更する。具体的には、電圧検出装置1は、所定周期T0の間にスタンバイモードからアクティブモードに切り替えるが、かかるスタンバイモードからアクティブモードに切り替えるタイミング(アクティブモードの開始タイミングt1)を所定周期T0ごとに変更する。
【0017】
図1(b)では、電圧検出装置1は、アクティブモードの開始タイミングt12を、開始タイミングt11より遅くなるように変更する。したがって、
図1(b)では、アクティブモードの長さT12がアクティブモードの長さT11より短くなっている。
【0018】
上述したように、本実施形態にかかる電圧検出方法では、電圧検出装置1がアクティブモードとスタンバイモードを交互に切り替えて動作する。そのため、
図1(c)に示すように、電池スタックB1_nの電圧を検出するアクティブモードT11、T12では検出部10に流れる電流は所定値以上となり、電圧を検出しないスタンバイモードT21、T22では検出部10に流れる電流は所定値未満となる。なお、
図1(c)では、所定値を0Aとしている。すなわち、スタンバイモードでは電流がほぼ流れないものとする。
【0019】
これにより、検出部10に電流を流し続けている場合に比べ、検出部10に流れる電流の量を削減することができ、検出部10に電流が流れることによって発生する発熱を抑制することができる。
【0020】
ここで、本実施形態にかかる電圧検出方法でアクティブモードの開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更する点について説明する。仮に、開始タイミングt1または終了タイミングt2を変更しないものとする。この場合、たとえば一定の長さのアクティブモードが所定の周期で繰り返し発生するようになる。すなわち、検出部10に所定の周期で大きな電流が流れるようになり、かかる電流によって周期性のノイズが発生してしまう。
【0021】
そこで、本実施形態にかかる電圧検出方法では、アクティブモードの開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更することで、アクティブモードが所定の周期で発生しないようにしている。これにより、検出部10に大きな電流が所定の周期で流れないようになり、かかる電流によって発生する周期性のノイズを抑制することができる。
【0022】
以上のように、本実施形態にかかる電圧検出方法では、アクティブモードの開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更しつつ、アクティブモードとスタンバイモードを交互に切り替えることで、周期性ノイズを抑制しつつ検出部10の発熱を抑制することができる。これにより、電圧検出装置1の温度上昇を抑制することができる。以下では、電圧検出装置1を含む組電池システムSについてさらに説明する。
【0023】
<2.組電池システムS>
図2は、本実施形態にかかる組電池システムSの構成例を示す図である。
図2に示す組電池システムSは、組電池Bと、組電池Bが有する電池スタックB1_nの電圧を検出する電圧検出装置1とを備える。
【0024】
<2.1.組電池B>
組電池Bは、接続部材を介して直列に接続される複数の電池スタックB1_n(n=1、2、・・・、N、N:自然数、以下、電池スタックB1とも称する)を有する。複数の電池スタックB1_nは、直列に接続される複数の電池セルをそれぞれ有する。
【0025】
<2.2.電圧検出装置1>
電圧検出装置1は、各電池スタックB1_nの電圧をそれぞれ検出する複数の検出部10_n(以下、検出部10とも称する)と、検出部10を制御する制御部20とを備える。
【0026】
<2.2.1.検出部10_n>
複数の検出部10_nは、所定周期T0で複数の電池スタックB1_nの電圧をそれぞれ検出する。なお、各検出部10_nの構成および動作は同じである。検出部10_nは、たとえば電池スタックB1_nと並列に接続される。複数の検出部10_nは、たとえばAD変換部11とモード設定部12とをそれぞれ備える。
【0027】
<2.2.1.1.AD変換部11>
AD変換部11は、電池スタックB1の電圧をデジタル信号に変換し、制御部20に出力する。検出部10がたとえば図示しないキャパシタを用いて電池スタックB1の電圧をいわゆるフライングキャパシタ方式で検出する場合、AD変換部11は、たとえばかかるキャパシタの両端の電圧をAD変換して制御部20に出力する。
【0028】
なお、検出部10は、制御部20からの指示に基づいて所定周期T0ごとに電池スタックB1の電圧検出を行う。具体的には、制御部20からの指示に基づいて所定周期T0ごとにAD変換部11が電池スタックB1の電圧をAD変換することで、所定周期T0ごとに電池スタックB1の電圧を検出するものとする。
【0029】
あるいは、検出部10は、たとえばタイマーを備えており、かかるタイマーに基づいて所定周期T0ごとに電池スタックB1の電圧を検出するようにしてもよい。すなわち、かかるタイマーに基づいてAD変換部11が、所定周期T0ごとに電池スタックB1の電圧をAD変換し、制御部20に出力するようにしてもよい。
【0030】
<2.2.1.2.モード設定部12>
モード設定部12は、制御部20からの指示に基づいて、検出部10の動作モードをスタンバイモードまたはアクティブモードに設定する。モード設定部12が動作モードをアクティブモードに設定した場合、検出部10は、たとえばAD変換部11に電流を供給し、電池スタックB1の電圧を検出できるようにする。この場合、検出部10には所定値以上の電流が流れることになる。一方、モード設定部12が動作モードをスタンバイモードに設定した場合、検出部10は、たとえばAD変換部11への電流供給を停止するなどして、検出部10に流れる電流が所定値未満となるようにする。
【0031】
<2.2.2.制御部20>
制御部20は、検出部10を制御し、所定周期T0で電池スタックB1の電圧を検出する。また、制御部20は、検出部10の動作モードをスタンバイモードまたはアクティブモードのいずれかに制御する。制御部20は、検出制御部21とモード制御部22と記憶部23とを備える。
【0032】
<2.2.2.1.検出制御部21>
検出制御部21は、所定周期T0で電池スタックB1の電圧を検出するよう検出部10を制御する。
図3(a)に示すように、検出制御部21は、所定周期T0で検出制御信号S1を生成し、検出部10に出力する。
【0033】
検出部10は、検出制御信号S1を受信すると、AD変換部11で電池スタックB1の電圧をAD変換して制御部20へ出力する。これにより、検出部10は、所定周期T0で電池スタックB1の電圧を検出する。また、検出制御部21は、検出制御信号S1をモード制御部22に出力する。なお、
図3(a)は、制御部20が生成する制御信号の例を示す図である。
【0034】
<2.2.2.2.モード制御部22>
図2のモード制御部22は、検出部10がスタンバイモードまたはアクティブモードのいずれかで動作するよう制御する。モード制御部22は、アクティブモードの開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更する。ここでは、アクティブモードの開始タイミングt1を変更する場合について説明する。モード制御部22は、モード切替部221とタイミング変更部222とを備える。
【0035】
モード切替部221は、検出部10の動作モードをアクティブモードとスタンバイモードとに切り替える。モード切替部221は、たとえば検出制御部21から検出制御信号S1を受け取ると、受け取ってから所定の期間経過後に検出部10の動作モードをアクティブモードからスタンバイモードに切り替える。
【0036】
具体的には、モード切替部221は、
図3(a)に示すように、検出制御部21が検出制御信号S1を生成してから所定の期間が経過した後にアクティブ終了信号SEを生成し、検出部10のモード設定部12に出力する。モード設定部12は、アクティブ終了信号SEを受信すると、検出部10の動作モードをアクティブモードからスタンバイモードに切り替える。
【0037】
また、モード切替部221は、タイミング変更部222が変更した開始タイミングt1で検出部10の動作モードをスタンバイモードからアクティブモードに切り替える。具体的には、モード切替部221は、タイミング変更部222から変更後の開始タイミングt1を受け取ると、かかる開始タイミングt1でアクティブ開始信号SSを生成し、モード設定部12に出力する。モード設定部12は、アクティブ開始信号SSを受信すると、検出部10の動作モードをスタンバイモードからアクティブモードに切り替える。
【0038】
タイミング変更部222は、アクティブモードの開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更する。たとえば、タイミング変更部222は、アクティブモードの長さT11〜T13(以下、アクティブモードの長さT1とも称する)が所定の上限値を超えないようにアクティブモードの開始タイミングt1を変更する。かかる上限値は、たとえば検出部10に流れる電流に応じて検出部10が発熱する発熱量に基づいて決定される。
【0039】
たとえば、組電池システムSがハイブリッド車両に搭載される場合、エンジンの近くに電圧検出装置1が配置される可能性がある。この場合、かかるエンジンの影響により、電圧検出装置1の周辺温度が高温になってしまう。このような環境において、検出部10に多くの電流が流れると、かかる電流によって生じる検出部10の発熱および周辺温度によって検出部10が非常に高温となり、検出部10が故障してしまう場合がある。
【0040】
かかる点を考慮し、本実施形態にかかるタイミング変更部222は、検出部10の発熱量が、検出部10が故障しない程度となるようにアクティブモードの長さT1の上限値を設定する。たとえば検出部10が図示しないサーマルシャットダウン回路を有している場合は、かかる回路がシャットダウンしないように上限値を設定する。なお、かかる上限値は、たとえば実験等によって予め定められているものとする。
【0041】
また、タイミング変更部222は、アクティブモードの長さT1が所定の下限値以下にならないようにアクティブモードの開始タイミングt1を変更する。かかる下限値は、検出部10による電池スタックB1の電圧検出にかかる時間に基づいて決定される。
【0042】
たとえば、検出部10がスタンバイモードからアクティブモードに切り替わった場合、検出部10のAD変換部11が安定してAD変換を行えるようになるためには一定の時間が必要である。そこで、タイミング変更部222は、AD変換部11が安定してAD変換を行う、すなわち検出部10が安定して電池スタックB1の電圧を検出するために必要な時間を、アクティブモードの長さT1の下限値に設定する。
【0043】
タイミング変更部222は、アクティブモードの長さT1が上述した上限値および下限値の間でばらつくようにアクティブモードの開始タイミングt1を変更する。
【0044】
以下、
図3および
図4を用いてタイミング変更部222が開始タイミングt1を変更する点について説明する。なお、
図3は、本実施形態にかかる検出部10の動作モードを説明する図であり、
図4は開始タイミングt1を変更しない場合の検出部10の動作モードを説明する図である。
【0045】
まず、
図4を用いて、仮にタイミング変更部222によって開始タイミングt1を変更しない場合について説明する。なお、
図4では検出制御信号S1の図示を省略している。
【0046】
図4(a)に示すように、開始タイミングt1を変更しない場合、モード切替部221は、所定周期T0でアクティブ開始信号SSを生成する。また、モード切替部221は、アクティブ開始信号SSから所定の時間Tが経過した後にアクティブ終了信号SEを生成する。
【0047】
したがって、検出部10は、所定周期T0でアクティブモードを繰り返すことになる。これにより、たとえば
図4(b)に示すように、所定周期T0で立ち上がりおよび立ち下がりが発生するパルス電流が検出部10に流れることになる。このように、検出部10に所定周期T0でパルス電流が流れると、
図4(c)に示すように、所定周期T0に応じた周波数Fでピークを有する周期性ノイズが発生してしまう。
【0048】
一方、アクティブモードの長さT1が上述した上限値および下限値の間でばらつくようにアクティブモードの開始タイミングを変更すると、
図3(b)に示すように、検出部10に流れる電流の立ち上がりのタイミングがばらつくことになる。そのため、かかる電流によって発生するノイズは、
図3(c)に示すように、たとえば
図4(c)の場合に比べて広い周波数帯域を有する周波数分布となる。このように、アクティブモードの開始タイミングを変更することで、周期性ノイズの発生を抑制することができる。
【0049】
続いて、
図5を用いて、タイミング変更部222による開始タイミングt1の具体的な変更方法について説明する。
図5は、開始タイミングt1の変更候補を示すテーブルTa1を示す図である。
図5に示すテーブルTa1は、たとえば記憶部23に記憶されており、タイミング変更部222は、かかるテーブルTa1に規定される変更候補に基づいて開始タイミングt1を変更する。
【0050】
図5に示すように、テーブルTa1には、電池スタックB1の電圧の検出回数と、アクティブモードの開始タイミングt1の変更候補とが対応づけられている。制御部20が電池スタックB1の電圧を所定周期T0で検出し始めると、タイミング変更部222は、電圧を検出した回数に応じて、次にアクティブモードを開始するタイミングt1をテーブルTa1に基づいて決定する。なお、
図5では、電池スタックB1の電圧検出を開始してからアクティブモードを開始するまでの経過時間をアクティブモードの開始タイミングt1として示している。
【0051】
具体的には、制御部20が2回電圧を検出した場合、タイミング変更部222は、次にアクティブモードを開始するタイミングt1として、3回目のタイミング「4.7ms」を変更後の開始タイミングt1としてモード切替部221に出力する。
【0052】
なお、テーブルTa1に示す開始タイミングt1の変更候補は、上述した上限値および下限値に応じて、開始タイミングt1がばらつくように予め決定されているものとする。このように、予め決定される開始タイミングt1の変更候補に基づいて開始タイミングt1を変更することで、タイミング変更部222の処理負担を軽減しつつ、アクティブモードの開始タイミングt1を変更することができる。
【0053】
また、
図5に示すように、記憶部23に複数のテーブルTa1〜Ta3を記憶するようにしてもよい。この場合、タイミング変更部222は、複数のテーブルTa1〜Ta3の中から1つのテーブルを選択してアクティブモードの開始タイミングt1を変更する。あるいは、たとえば検出部10が電池スタックB1の電圧検出以外にも、電池スタックB1の充放電など複数の処理を行う場合、かかる処理ごとにテーブルTa1〜Ta3を選択するようにしてもよい。
【0054】
<2.2.2.3.記憶部23>
記憶部23は、テーブルTa1など、制御部20の各部が行う処理に必要な情報を記憶する。また、記憶部23は、制御部20の各部が行う必要な情報を記憶する。記憶部23は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置である。
【0055】
<3.電圧検出処理>
図6を用いて、電圧検出装置1が行う電圧検出処理について説明する。
図6は、本実施形態に係る電圧検出処理を示すフローチャートである。
【0056】
まず、電圧検出装置1は、
図5に示すテーブルTa1に基づいてアクティブモードの開始タイミングt1を決定する(ステップS101)。また、電圧検出装置1は、AD変換を行うタイミングに基づいてアクティブモードの終了タイミングt2を決定する(ステップS102)。
【0057】
次に、電圧検出装置1は、アクティブモードの開始タイミングt1を経過したか否かを判定する(ステップS103)。アクティブモードの開始タイミングt1を経過していない場合(ステップS103;No)、ステップS103に戻り、開始タイミングt1の経過を待つ。
【0058】
一方、開始タイミングt1を経過していた場合(ステップS103;Yes)、電圧検出装置1は、電池スタックB1の電圧を検出する(ステップS104)。次に、電圧検出装置1は、アクティブモードの終了タイミングt2を経過したか否かを判定する(ステップS105)。終了タイミングt2を経過していない場合(ステップS105;No)、ステップS105に戻り、終了タイミングt2の経過を待つ。
【0059】
終了タイミングt2を経過していた場合(ステップS105;Yes)、電池スタックB1の電圧検出が完了したか否かを判定する(ステップS106)。電圧検出が完了していない場合(ステップS106;No)、ステップS101に戻る。電圧検出が完了している場合(ステップS106;Yes)、処理を終了する。
【0060】
なお、ステップS101およびステップS102の順序は入れ替えてもよく、ステップS101およびステップS102を同時に実行しても良い。また、ステップS102は、ステップS103またはステップS104の後に実行するようにしてもよく、ステップS103およびステップS104と同時に実行しても良い。
【0061】
<4.充放電システムへの適用例>
次に、
図7を用いて、
図2に示す組電池システムSを充放電システムST1に適用した場合について説明する。
図7は、充放電システムST1の概要を示す図である。
図7に示す、充放電システムST1は、ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、および、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車両駆動用電源として用いられる。
【0062】
充放電システムST1は、組電池Bと、電池監視システムWS1と、車両制御装置200と、モータ300と、電圧変換器400と、リレー500とを含むシステムである。また、電池監視システムWS1は、モニタIC34等を備えた複数のサテライト基板3と、監視装置2とを含むシステムである。また、充放電システムST1に含まれる組電池Bと電池監視システムWS1とが
図2に示す組電池システムSに相当し、電池監視システムWS1が電圧検出装置1に相当する。
【0063】
図7の組電池Bは、車体と絶縁された電池であり、複数のブロックにより構成されている。1つのブロックでは16の電池セルが互いに直列に接続され、これら16の電池セルが1つのサテライト基板3に設けられたモニタIC34と電気的に接続されている。そのため、1つのブロックの各電池セルの電圧は、1つのサテライト基板3に設けられたモニタIC34により計測される。
【0064】
なお、1つのサテライト基板3には第1モニタIC34aと、第2モニタIC34bとの2つのモニタICが設けられており、第1モニタIC34a及び第2モニタIC34bが、1つのブロックの電池セルを二分して、8セルずつを1つのグループとして受け持つようになっている。なお、この8セルにより構成されるグループが
図2の電池スタックB1に相当する。また、第1モニタIC34aおよび第2モニタIC34bが
図2の各検出部10に相当する。
【0065】
監視装置2は、複数の電池セルのそれぞれの個別電圧を監視すると共に、各電池スタックB1の電圧を監視する。つまり、組電池Bの充電状態を監視する。具体的には、モニタIC34は、監視装置2から通信ラインL3を介して受信する電圧計測要求に基づいて複数の電池セルのそれぞれの個別電圧(以下、「セル電圧」とも称する)を計測し、通信ラインL3を介して計測結果を監視装置2に送信する。
【0066】
監視装置2は、モニタIC34からセル電圧を受信すると共に、通信ラインL4を介して電池スタックB1の電圧(以下、「スタック電圧」と称する)を充電することによりスタック電圧を直接測定して充電状態を監視する。このように、監視装置2は、組電池Bの充電状態を監視する監視装置として動作すると共に、スタック電圧の検出を制御する制御部としても動作する。すなわち、監視装置2が
図2の制御部20に相当する。
【0067】
監視装置2は、モニタIC34が正常に動作しているか否かを判定する判定装置としても動作する。例えば、監視装置2は、モニタIC34から受信した各電池セルの個別電圧を加算することで算出したスタック電圧と直接検出したスタック電圧とを比較し、両者の差が許容値より大きい場合にモニタIC34が異常であると判定する。監視装置2は、モニタIC34が異常であると判断した場合には、フェールセーフ機能を実行する。
【0068】
車両制御装置200は、組電池Bの充電状態に応じて、組電池Bに対する充放電を行う。具体的には、組電池Bが過充電の場合、車両制御装置200は、電圧変換器400を用いて組電池Bに充電された電圧を直流から交流の電圧に変換し、モータ300を駆動させる。その結果、組電池Bの電圧は放電される。
【0069】
また、組電池Bが過放電の場合、車両制御装置200は、電圧変換器400を用いて回生制動によりモータ300が発電した電圧を交流から直流の電圧に変換する。その結果、組電池Bには電圧が充電される。このように、車両制御装置200は、監視装置2から取得した組電池Bの充電状態に基づいて組電池Bの電圧を監視し、監視結果に応じた制御を実行する。
【0070】
以上のように、本実施形態にかかる電圧検出装置1は、アクティブモードの開始タイミングt1を変更しつつ、アクティブモードとスタンバイモードを交互に切り替えることで、周期性ノイズを抑制しつつ検出部10の発熱を抑制することができる。これにより、電圧検出装置1の温度上昇を抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る電圧検出装置1を、例えばハイブリッド自動車等の車両駆動用電源として用いられる充放電システムST1に適用し、電圧検出装置1から発生する周期性ノイズを抑制することで、充放電システムST1がかかる周期性ノイズによってたとえば誤作動を起こすなど、周期性ノイズによる不具合を抑制することができる。また、電圧検出装置1の温度上昇を抑制することで、かかる温度上昇によってスタック電圧の検出が行えなくなる不具合を抑制することができ、充放電システムST1をより確実に動作させることができる。
【0072】
<5.変形例>
以上、実施形態にかかる電圧検出装置1について説明してきたが、電圧検出装置1は上記実施形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。上記実施形態および以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
【0073】
上述した実施形態では、アクティブモードの開始タイミングt1を変更する場合について説明したが、これに限られない。アクティブモードの開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更すればよく、たとえばアクティブモードの終了タイミングt2を変更するようにしてもよい。
【0074】
この場合、記憶部23は、開始タイミングt1の変更候補の代わりに検出部10の発熱量に応じた上限値および電圧検出に必要な下限値に基づいて規定される終了タイミングt2の変更候補をテーブルTa1として記憶しているものとする。
【0075】
また、タイミング変更部222は、検出制御信号S1より所定時間早いタイミングを開始タイミングt1とする。なお、かかる所定時間は、たとえばスタンバイモードからアクティブモードに切り替わった場合にAD変換部11によるAD変換が安定するまでの時間より長い時間である。
【0076】
タイミング変更部222は、検出部10が電圧を検出した回数に応じて、次にアクティブモードを終了するタイミングt2をテーブルTa1に基づいて決定する。なお、決定方法は、開始タイミングt1を変更する場合と同様である。
【0077】
このように、開始タイミングt1を変更する代わりに終了タイミングt2を変更することで、検出部10に流れる電流の立ち下がりのタイミングをばらつかせることができ、周期性ノイズの発生を抑制することができる。
【0078】
あるいは、アクティブモードの開始タイミングt1または終了タイミングt2の両方を変更するようにしてもよい。この場合、たとえばアクティブモードの長さT1を検出部10の発熱量に応じた上限値に固定し、開始タイミングt1を変更することで、開始タイミングt1または終了タイミングt2の両方を変更することができる。
【0079】
具体的には、タイミング変更部222は、
図5に示すテーブルTa1に基づいてアクティブモードの開始タイミングt1を変更するとともに、変更した開始タイミングt1に上述した上限値を加えることで終了タイミングt2を変更する。
【0080】
なお、ここでは、アクティブモードの長さT1を上限値に固定するとしたが、これに限られない。電圧検出に必要な下限値以上であり、かかる上限値以下であればよい。また、記憶部23に、
図5に示すテーブルTa1として、開始タイミングt1の変更候補の代わりに終了タイミングt2の変更候補を記憶するようにしてもよい。
【0081】
また、ここでは、アクティブモードの長さT1を固定するとしたが、これに限られない。アクティブモードの長さT1は、電圧検出に必要な下限値以上であり、検出部10の発熱に応じた上限値以下であれば可変にしてもよい。例えば
図5に示すテーブルTa1の代わりに、開始タイミングt1の変更候補および終了タイミングt2の変更候補を示すテーブルを記憶部23に記憶するようにすることで、アクティブモードの長さT1を可変にすることもできる。
【0082】
また、上述した実施形態では、テーブルTa1に基づいて開始タイミングt1を変更するとしたが、これに限られない。たとえば、タイミング変更部222が、ランダム関数を用いて開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方をランダムに変更するようにしてもよい。
【0083】
タイミング変更部222がランダムに開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更することで、開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方がよりランダムにばらつくことになり、周期性ノイズをより抑制することができる。
【0084】
なお、上述した実施形態では、アクティブモードの開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更するとしたが、これはスタンバイモードの開始タイミングまたは終了タイミングの少なくとも一方を変更する場合と同じである。
【0085】
すなわち、本実施形態にかかる電圧検出装置1は、アクティブモードおよびスタンバイモードを交互に繰り返すため、アクティブモードの開始タイミングt1はスタンバイモードの終了タイミングに相当し、アクティブモードの終了タイミングt2はスタンバイモードの開始タイミングに相当する。
【0086】
また、電圧検出装置1は、所定周期T0で電池スタックB1の電圧を検出する、すなわち所定周期T0でアクティブモードとスタンバイモードとを繰り返す。したがって、アクティブモードの長さT1の上限値はスタンバイモードの長さの下限値に相当し、アクティブモードの長さT1の下限値はスタンバイモードの上限値に相当する。したがって、たとえばアクティブモードの長さT1を固定するとは、スタンバイモードの長さを固定することと同じである。
【0087】
また、上述した実施形態では、例えば、組電池Bは、互いに直列に接続された複数の電池スタックB1_nを有するとしたが、組電池Bは、互いに並列に接続された複数の電池スタックB1_nを有してもよい。また、電池スタックB1_nは、互いに直列に接続された複数の電池セルを有するとしたが、電池スタックB1_nは、互いに並列に接続された複数の電池セルを有してもよい。
【0088】
上記実施形態および変形例にかかる電圧検出装置1は、複数の検出部10_nと、モード切替部221と、タイミング変更部222とを備える。複数の検出部10_nは、複数の電池セルが接続された複数の電池スタックB1_nを有する組電池Bの複数の電池スタックB1_nの電圧を所定周期T0でそれぞれ検出する。モード切替部221は、検出部10が電圧を検出するアクティブモードと、検出部10に流れる電流が所定値未満であるスタンバイモードとを切り替える。タイミング変更部222は、アクティブモードの開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更する。
【0089】
これにより、周期性ノイズを抑制しつつ検出部10の発熱を抑制することができ、電圧検出装置1の温度上昇を抑制することができる。
【0090】
上記実施形態および変形例にかかる電圧検出装置1のタイミング変更部222は、検出部10に流れる電流に応じた検出部10の発熱量に基づいて決定される値をアクティブモードの長さT1の上限値として開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更する。
【0091】
これにより、周期性ノイズを抑制しつつ検出部10の発熱を抑制することができ、電圧検出装置1の温度上昇を抑制することができる。
【0092】
上記実施形態および変形例にかかる電圧検出装置1のタイミング変更部222は、検出部10による電圧の検出にかかる時間をアクティブモードの長さT1の下限値として開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更する。
【0093】
これにより、周期性ノイズを抑制しつつ検出部10の発熱を抑制することができ、電圧検出装置1の温度上昇を抑制することができるとともに、検出部10による電池スタックB1の電圧検出をより確実に行うことができる。
【0094】
上記実施形態および変形例にかかる電圧検出装置1は、開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方の変更候補を複数記憶する記憶部23をさらに備える。また、タイミング変更部222は、複数の変更候補に基づいて開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更する。
【0095】
これにより、開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方をばらつかせることができるようになり、周期性ノイズをより抑制することができる。
【0096】
上記実施形態および変形例にかかる電圧検出装置1のタイミング変更部222は、開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方をランダムに変更する。
【0097】
これにより、開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方をランダムにばらつかせることができるようになり、周期性ノイズをより抑制することができる。
【0098】
上記実施形態および変形例にかかる電圧検出方法は、検出工程と、モード切替工程と、タイミング変更工程とを含む。検出工程では、複数の電池セルが接続された複数の電池スタックB1を有する組電池Bの複数の電池スタックB1の電圧を複数の検出部10において所定周期T1でそれぞれ検出する。モード切替工程では、検出部10において電圧を検出するアクティブモードと、複数の検出部10に流れる電流が所定値未満であるスタンバイモードとを切り替える。タイミング変更工程では、アクティブモードの開始タイミングt1または終了タイミングt2の少なくとも一方を変更する。
【0099】
これにより、周期性ノイズを抑制しつつ検出部10の発熱を抑制することができ、電圧検出方法を実行する電圧検出装置1の温度上昇を抑制することができる。
【0100】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。