特許第6736314号(P6736314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6736314
(24)【登録日】2020年7月17日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20200728BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20200728BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20200728BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20200728BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20200728BHJP
   H01L 21/266 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   H01L21/265 U
   H01L27/088 B
   H01L29/78 301F
   H01L21/265 M
   H01L21/265 P
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-40080(P2016-40080)
(22)【出願日】2016年3月2日
(65)【公開番号】特開2017-17308(P2017-17308A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2019年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-131483(P2015-131483)
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桜井 ひと美
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0118768(US,A1)
【文献】 特開2003−168740(JP,A)
【文献】 特開2004−228527(JP,A)
【文献】 特開平06−104391(JP,A)
【文献】 特開平07−263684(JP,A)
【文献】 特開平08−032071(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0044798(US,A1)
【文献】 特開平03−215971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
H01L 21/266
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 27/088
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上の多結晶シリコン層のパターンに対しセルフアライン的に不純物層を形成する半導体装置の製造方法において、
半導体基板上に多結晶シリコン層を形成する工程と、
前記多結晶シリコン層上にダブルレジスト層を構成する第1のフォトレジスト層を塗布してからパターニングする工程と、
パターニングされた前記第1のフォトレジスト層にUV照射をする工程と、
前記UV照射した第1のフォトレジスト層をマスクとして前記多結晶シリコン層をエッチングして前記多結晶シリコン層からなるゲート電極および抵抗膜を形成する工程と、
前記UV照射した第1のフォトレジスト層を残したまま、前記半導体基板の全面にイオン注入を行い、前記多結晶シリコン層からなるゲート電極に対してセルフアライン的に高濃度のソース・ドレイン不純物層を形成する工程と、
前記UV照射した第1のフォトレジスト層上に第2のフォトレジスト層を塗布後パターニングして前記第2のフォトレジスト層の一部に開口部を設け、前記開口部に前記第1のフォトレジスト層を露出させる工程と、
前記開口部に第1の不純物をイオン注入する工程と、
からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の不純物をイオン注入する工程に続き、前記第2のフォトレジスト層を除去する工程と、
前記第1のフォトレジスト層上に第3のフォトレジスト層を塗布後パターニングして前記第3のフォトレジスト層の一部に第2の開口部を設け、前記第2の開口部に前記第1のフォトレジスト層を露出させる工程と、
前記第2の開口部に第2の不純物をイオン注入する工程と、
をさらに有する請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2のフォトレジスト層を除去する工程において、フォトレジスト除去用溶剤を用いることを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記開口部が少なくともMOSトランジスタの高濃度のソース・ドレイン不純物層形成領域を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記パターニングされた前記第1のフォトレジスト層にUV照射する工程を、前記第1のフォトレジスト層をパターニングする工程後、かつ前記多結晶シリコン層をエッチングする工程前に行う事を特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記パターニングされた前記第1のフォトレジスト層にUV照射する工程を、前記第1のフォトレジスト層をパターニングする工程後、かつ前記多結晶シリコン層をエッチングする工程前に行う事を特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2のフォトレジスト層形成におけるレジスト滴下量を前記第1のフォトレジスト層形成におけるレジスト滴下量よりも多くすることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3のフォトレジスト層形成におけるレジスト滴下量を前記第1のフォトレジスト層形成におけるレジスト滴下量よりも多くすることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項、または請求項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2のフォトレジスト層形成におけるレジストの粘度を前記第1のフォトレジスト層形成におけるレジストの粘度よりも高くすることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第3のフォトレジスト層形成におけるレジストの粘度を前記第1のフォトレジスト層形成におけるレジストの粘度よりも高くすることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項、または請求項記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、特に多結晶シリコン層のパターン対しセルフアライン的に形成されるイオン注入不純物層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコン層のパターンに対するセルフアライン的な不純物形成の利用例の一つとして、従来MOSトランジスタの製造において、トランジスタのソース・ドレイン領域の不純物層を形成する為、以下に示す工程をとっている。
【0003】
まず、図2(a)に示す様に、例えばシリコン基板11に、素子分離絶縁膜12と、ゲート絶縁膜13を形成する。続いて多結晶シリコン層14をシリコン基板11上の全面に形成した後、フォトレジストを塗布し多結晶シリコン層14のパターニングに対応したフォトマスクで露光を行い、第1のフォトレジスト層15を形成する。
【0004】
次に図2(b)に示す様に、第1のフォトレジスト層15をマスク材にして多結晶シリコン層14をエッチング除去し、多結晶シリコン層14から成るゲート電極14−1、14−2、抵抗14−3及び配線を形成した後、第1のフォトレジスト層15を除去する。
【0005】
次に図2(c)に示す様に、所望の、例えばゲート電極14−1を電極とするMOSトランジスタのソース・ドレインが所望の領域に形成されるよう、第2のフォトレジスト層16をパターニングし、ソース・ドレイン不純物層17をイオン注入法によって選択的に形成する。
【0006】
この時不純物のイオン注入が行われる、第2のフォトレジスト層16の開口部は、所望のMOSトランジスタのソース・ドレイン領域上のみでなく、ゲート電極14−1上にも形成されているので、ゲート電極14−1がイオン注入時のマスクとなり、ゲート電極14−1にセルフアライン的にソース・ドレイン不純物層17を形成する事ができるようになっている。
【0007】
これにより、以下に示す利点を有する事になる。
(1)ソース・ドレイン不純物層とゲート電極とのフォトレジストパターン加工の合わせずれを考慮する必要が無く、その分トランジスタの微細化が可能となる。
(2)ソース・ドレイン不純物層用のフォトレジストパターンを必要以上に微細に加工する必要が無く、少なくともソース・ドレイン不純物層用の加工をより平易に行う事ができる。
【0008】
以上示したように、多結晶シリコン層のゲート電極パターンに対しセルフアライン的にソース・ドレイン不純物層を持つMOSトランジスタが形成される。
更に、図2(d)に示す様に、必要に応じ、例えばゲート電極14−2を電極とするMOSトランジスタに対し、上記図2(c)の工程を所望の領域に繰り返し行う事で、ソース・ドレイン不純物層18を形成し、複数種類のMOSトランジスタを形成する。
【0009】
セルフアライン的にソース・ドレイン不純物層を持つMOSトランジスタおよびその製造方法は良く知られており、例えば、非特許文献1には上記手段によってMOSトランジスタのソース・ドレイン不純物層を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】岸野正剛著「超LSI材料・プロセスの基礎」オーム社、昭和62年12月25日、p.11−12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1に示されたMOSトランジスタの製造方法では以下に示す不具合を有する。
トランジスタのゲート電極として一般的に使用される多結晶シリコン層は単結晶グレインの集合体から成る為、ソース・ドレイン不純物のイオン注入時に注入不純物がグレイン間の隙間を通るチャネリング現象により、多結晶シリコン層からなるゲート電極を突き抜け、ゲート電極下シリコン基板のトランジスタのチャネル領域にも不純物が注入されてしまう。
【0012】
これは、トランジスタの閾値を決める重要要素の一つであるチャネル領域の不純物濃度が大きくばらつく要因となり、トランジスタ性能の安定化を阻害する事になる。
そこで、本願発明においては、チャネリング現象を防ぎ、トランジスタの閾値を安定化させることを可能とするMOSトランジスタの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する為に本発明では、多結晶シリコン層のパターンに対しセルフアライン的に不純物層を形成する際、以下に記載する手段をとる。
(1)多結晶シリコン層のパターニングに使用した第1のフォトレジスト層を残したまま、不純物をイオン注入する。
(2)多結晶シリコン層のパターニングに使用した第1のフォトレジスト層を残したまま、不純物層用の第2のフォトレジスト層をパターニングし、不純物をイオン注入する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、多結晶シリコン層のパターンに第1のフォトレジスト層を残したまま、不純物層形成のイオン注入を行う事により、以下に記載する効果を持つ。
(1)多結晶シリコン層のパターン越しのイオン注入時のチャネリング現象を抑制でき、例えばMOSトランジスタのソース・ドレイン不純物層を多結晶シリコン層のゲート電極に対しセルフアライン的にイオン注入により形成しても、トランジスタのチャネル領域への不純物注入が無い為、トランジスタの閾値を安定化させる事ができる。
(2)イオン注入前に多結晶シリコン層のパターン上の第1のフォトレジスト層を除去する必要がなく、後続のフォトレジスト除去工程、例えば第2のフォトレジスト層除去時に第1のフォトレジスト層を除去できるので、工程削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の半導体装置の製造方法を示す工程順断面図である。
図2】従来の半導体装置の製造方法を示す工程順断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず図1(a)に示す様に、例えばシリコン基板1に、素子分離絶縁膜2と、ゲート絶縁膜3を形成する。続いて多結晶シリコン層4をシリコン基板1上の全面に形成した後、フォトレジストを塗布し多結晶シリコン層4のパターニングに対応したフォトマスクで露光を行い、第1のフォトレジスト層5を形成する。
【0017】
引き続き、第1のフォトレジスト層5がパターニングされたシリコン基板表面にUV(紫外線)照射を行い、フォトレジスト層5の表面に耐溶剤性及び耐露光性を持つレジスト硬化層6を形成する。
【0018】
このときのUV照射は、温度170〜190℃、UV露光量12〜15J/cmという範囲の条件であれば、目的とする耐溶剤性及び耐露光性を持つレジスト硬化層6を形成することができる。
【0019】
一般にフォトレジストを露光・現像してパターン形成した後、やや高めの温度でベークを行いフォトレジスト内の有機溶剤を外部へ排出し、レジスト層を焼きしめる工程が入るが、このような単純なベークではフォトレジスト層表面に対する耐溶剤性や耐露光性の効果が期待できない。
【0020】
次に、図1(b)に示す様に、レジスト硬化層6を有する第1のフォトレジスト層5をマスク材にして多結晶シリコン層4をエッチング除去し、多結晶シリコン層4から成るゲート電極4−1、4−2、抵抗膜4−3及び配線を形成する。ゲート電極や抵抗膜としては多結晶シリコン層のほか、チタンやタンタルやタングステンドなどの高融点金属やそれらの金属シリサイドなどの単層膜または積層膜を用いても良い。
【0021】
これに引き続き、ゲート電極4−1、4−2、抵抗膜4−3及び配線の上にレジスト硬化層6を有する第1のフォトレジスト層5を残したまま、必要であれば、シリコン基板1全面にイオン注入を行い、多結晶シリコン層からなるゲート電極4−1、4−2に対してセルフアライン的にソース・ドレイン不純物層7を形成しても良い。ゲート電極4−1、4−2、抵抗膜4−3及び配線の上にはレジスト硬化層6を有する第1のフォトレジスト層5があるので、イオン注入された不純物イオンのチャネリングを抑制することができる。
【0022】
次に、図1(c)に示す様に、レジスト硬化層6を有する第1のフォトレジスト層5の上から第2のフォトレジスト層8を塗布してからパターニングする。第1のフォトレジスト膜5はパターン形成され、更に下地の多結晶シリコン層4がエッチングされているため、シリコン基板表面には第1のレジスト層5の厚みに多結晶シリコン層4の厚みを加えた段差が存在する。この段差が第2のフォトレジスト層8の塗れ拡がりを邪魔して塗布ムラを発生することがある。第2のフォトレジスト層形成においてレジスト塗布するときのレジスト滴下量を第1のフォトレジスト層形成においてレジスト塗布するときのレジスト滴下量よりも多くすることで上述の塗布ムラを回避することが可能となる。後述の第3のフォトレジスト層形成においても同様で、第3のフォトレジスト層形成においてレジスト塗布するときのレジスト滴下量を第1のフォトレジスト層形成においてレジスト塗布するときのレジスト滴下量よりも多くすることで上述の塗布ムラを回避することが可能となる。なお、第2のフォトレジスト層形成におけるレジスト滴下量と第3のフォトレジスト層形成におけるレジスト滴下量は同量で構わない。第2および第3のフォトレジスト層形成においてレジスト塗布するレジストの粘度を第1のフォトレジスト層形成においてレジスト塗布するレジストの粘度よりも高くするという手法を用いることでも塗布ムラを回避することが可能である。
【0023】
次に、所望の、例えばゲート電極4−1を電極とするMOSトランジスタのソース・ドレインが所望の領域に形成されるように第2のフォトレジスト層8に開口部を設け、ソース・ドレイン不純物層9をイオン注入法によって選択的に形成する。開口部には、最初に形成されたレジスト硬化層6を有する第1のフォトレジスト層5が露出されている。
【0024】
不純物のイオン注入が行われる、第2のフォトレジスト層8の開口部は、所望のMOSトランジスタのソース・ドレイン領域上のみでなく、ゲート電極4−1上にも形成されるが、第1のフォトレジスト層5に第2のフォトレジスト層8を形成するダブルレジスト法を用いているので、所望のゲート電極を第1のフォトレジスト層で選択的にマスクする事が可能となり、多結晶シリコン層から成るゲート電極に対しセルフアライン的に不純物のイオン注入が所望の部分だけに選択的に行える。ゲート電極4−1の上にはレジスト硬化層6を有する第1のフォトレジスト層5があるので、イオン注入された不純物イオンのチャネリングを抑制することができる。
【0025】
これにより、以下に示す利点を有する事になる。
(1)ソース・ドレイン不純物層とゲート電極とのフォトレジストパターン加工の合わせずれを考慮する必要が無く、その分トランジスタの微細化が可能となる。
(2)ソース・ドレイン不純物層用のフォトレジストパターンを必要以上に微細に加工する必要が無く、少なくともソース・ドレイン不純物層用の加工をより平易に行う事ができる。
(3)多結晶シリコン層から成るゲート電極上にフォトレジスト層があるので、不純物イオン注入時のチャネリングを抑制する事ができる。
(4)イオン注入前に多結晶シリコン層のパターン上の第1のフォトレジスト層を除去する必要がなく、後続のフォトレジスト除去工程、例えば第2のフォトレジスト層除去時に第1のフォトレジスト層を除去できるので、工程削減が可能となる。
【0026】
また、先の図1(a)で示した第1のフォトレジスト層5に硬化層6がある事で、第2のフォトレジスト層8を塗布しても第1のフォトレジスト層5に溶剤が浸透せず、第1のフォトレジスト層のパターンが崩れる事がない。
【0027】
更に、第2のフォトレジスト層8にリワークが必要になった場合、第2のフォトレジスト層が塗布、あるいはパターニングされたシリコン基板表面を、フォトマスクを使わず全面露光する事で可能となる。第2のフォトレジスト層がパターニングされ第1のフォトレジスト層5が露呈していても、レジスト硬化層6により耐露光性と耐溶剤性がある為、全面露光とその後に続く第2のフォトレジスト層除去の為のアルカリ溶剤処理が第1のフォトレジスト層に影響を与える事は無い。以上示したようにして多結晶シリコン層のゲート電極パターンに対しセルフアライン的にソース・ドレイン不純物層を持つMOSトランジスタが形成される。
【0028】
また、UV照射によるレジスト硬化層6の形成を、第1のフォトレジスト層5のパターニング後ではなく、多結晶シリコン層4のエッチング後に行う事でも耐露光性と耐溶剤性の効果を得る事は可能であるが、一般的にはUV照射による焼きしめによって第1のフォトレジスト層の縮退が発生する為、エッチングされた多結晶シリコン層4のパターンより内側に、レジスト硬化層6をもつ第1のフォトレジスト層5が形成され、レジストが縮退した部分は多結晶シリコン層の表面が露呈する事となる。
【0029】
この多結晶シリコン層の表面が露呈した部分は、後に続くソース・ドレイン不純物のイオン注入において、マスク材となるのは多結晶シリコン層のみとなり、前述の課題として挙げたイオン注入のチャネリングによってゲート電極下シリコン基板のトランジスタのチャネル領域にも不純物が注入されてしまい、トランジスタの閾値ばらつきを大きくしてしまう。さらに程度が酷ければ多結晶シリコン層の表面露呈部直下にもソース・ドレイン領域が形成され、ゲート電極パターンに対しセルフアライン的にソース・ドレイン不純物層を形成する事に支障を来たす事になる。
【0030】
一方、本願実施例で説明したように、第1のフォトレジスト層5のパターニング後、多結晶シリコン層4のエッチング前にUV照射を行い、レジスト硬化層6を形成すれば、多結晶シリコン層のエッチングは縮退後のフォトレジストパターンをマスクにして行われるため、エッチング後の多結晶シリコン層によるゲート電極の全ての上表面がレジスト硬化層6を持つ第1のフォトレジスト層で覆われた状態を維持でき、ソース・ドレイン不純物イオン注入時の完全なマスク材となる為、ソース・ドレイン不純物のゲート電極に対するセルフアライン的形成や、チャネリング防止を完璧に行う事ができる。
【0031】
更に、図1(d)に示す様に、必要であれば、例えばゲート電極4−2を電極とするMOSトランジスタに対し、上記図1(c)の工程を所望の領域に繰り返し行う事で、ソース・ドレイン不純物層10を形成し、複数種類のMOSトランジスタを形成することが可能である。即ち、第2のフォトレジスト層を選択的に除去した後に第1のフォトレジスト層上に第3のフォトレジスト層を塗布後パターニングして第3のフォトレジスト層の一部に第2の開口部を設けて、この第2の開口部に第1のフォトレジスト層を露出させ、そして、第2の開口部から第2の不純物をイオン注入してソース・ドレイン不純物層を形成することを、塗布するフォトレジスト層、開口部、不純物を変化させて繰り返し行うことで複数種類のMOSトランジスタを形成することが可能である。
【0032】
図1(c)の工程を繰り返し行う場合、多結晶シリコン層上の第1のフォトレジスト層上にダブルレジストとして形成されるソース・ドレイン不純物層用のフォトレジスト層は、ソース・ドレイン不純物層のイオン注入濃度が5×1014atms/cm以下であれば、湿式法すなわちフォトレジスト除去用溶剤のみでも除去可能である為、第1のフォトレジスト硬化層の対溶剤性が持続する限り、多結晶シリコン層上に第1のフォトレジスト層を残したままの不純物層用フォトレジスト層形成とイオン注入処理を複数回行う事が可能である。
【0033】
一方、レジスト硬化層を持つフォトレジスト層には、高濃度インプラ等処理後のフォトレジスト層に一般的に適用されるフォトレジストのアッシング処理を実施する。第1のフォトレジスト層5にはレジスト硬化層6があるが、レジスト表面部分のみなのでアッシング処理により硬化層6の除去が可能であり、レジスト硬化層6を除去後は通常のフォトレジスト除去用溶剤で第1、及びダブルレジストとして形成されたフォトレジスト層の双方の除去が可能である。
【0034】
勿論、ダブルレジストとして形成されたフォトレジスト層を除去後、第1のフォトレジストにアッシング処理を実施し溶剤処理により第1のフォトレジストを除去してもなんら問題無い。
【0035】
尚、本発明におけるソース・ドレイン不純物層とは、高濃度のN型、もしくはP型不純物層に限定されるものではなく、MOSトランジスタの最終形態でソース・ドレインを構成する一部となる、例えばLDD(Lightly Doped Drain)やDDD(Double Diffused Drain)、ソース・ドレイン間パンチスルーストッパーとしてのポケットインプラ層やハローインプラ層をも含む。
【0036】
同様に、本発明は、MOSトランジスタのソース・ドレイン不純物層の製造方法を一例として挙げたが、それに限定されるものではなく、多結晶シリコン層のパターンに対してセルフアライン的に形成する、不純物層の製造方法に適用可能である事は言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1、11 シリコン基板
2、12 素子分離絶縁膜
3、13 ゲート絶縁膜
4、14 多結晶シリコン層
4−1、4−2、14−1、14−2 ゲート電極
4−3、14−3 多結晶シリコン層からなる配線・抵抗膜
5、15 第1のフォトレジスト層
6 レジスト硬化層
7、9、10、17、18 ソース・ドレイン不純物層
8、16 第2のフォトレジスト層
図1
図2