(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
消弧性ガスが封入された容器内に対向配置される固定接触子部及び可動接触子部を有し、前記可動接触子部に、フランジ部を有する中空の操作ロッドと、前記操作ロッドの内径部に取り付けられる可動アーク接触子と、前記フランジ部に固定されるピストンと、前記ピストンに一体化されて前記固定接触子部方向に突起する突起フローガイドと、前記フランジ部に取り付けられる可動通電接触子及び絶縁耐弧材料のノズルと、前記ピストンの外径部に摺動接触するシリンダーと、を有し、開極動作時に前記ピストンと前記シリンダーによって構成される圧縮室内の容積を縮小して消弧性ガスを圧縮し、発生する高圧ガス流を導いて前記可動アーク接触子と前記固定接触子部に備える固定アーク接触子との間に発生しているアークに吹き付け、アークを消滅させて電流を遮断するガス遮断器において、
前記突起フローガイドは、前記ピストンと同一の素材で形成され、
前記突起フローガイドの先端部に、PTFE、又はPTFEを主成分として他の絶縁物を充填して成型される耐弧絶縁材料で形成されたフローガイド先端部を備える、ガス遮断器。
消弧性ガスが封入された容器内に対向配置される固定接触子部及び可動接触子部を有し、前記可動接触子部に、フランジ部を有する中空の操作ロッドと、前記操作ロッドの内径部に取り付けられる可動アーク接触子と、前記フランジ部に固定されるシリンダー及び可動通電接触子、絶縁耐弧材料のノズルと、前記シリンダーに一体化されて前記固定接触子部方向に突起する突起フローガイドと、前記シリンダーの内径部に摺動接触する外径部を有する固定のピストンと、を有し、開極動作時に前記ピストンと前記シリンダーによって構成される圧縮室内の容積を縮小して消弧性ガスを圧縮し、発生する高圧ガス流を導いて前記可動アーク接触子と前記固定接触子部に備える固定アーク接触子との間に発生しているアークに吹き付け、アークを消滅させて電流を遮断するガス遮断器において、
前記突起フローガイドは、前記シリンダーと同一の素材で形成され、
前記突起フローガイドの先端部に、PTFE、又はPTFEを主成分として他の絶縁物を充填して成型される耐弧絶縁材料で形成されたフローガイド先端部を備える、ガス遮断器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては、実施形態を説明するため、一部または全部を模式的に記載するとともに、一部分を大きくまたは強調して記載する等適宜縮尺を変更して表現した部分を含んでいる。
【0014】
本発明の実施形態を説明するに際して、先ず参考例に係るガス遮断器について説明する。
図1は、参考例に係るガス遮断器100の構成の一例を示す断面図及び要部拡大図である。
図1に示すガス遮断器100は、いわゆるパッファ型ガス遮断器である。
図1では、ガス遮断器100の消弧室における固定接触子部1と可動接触子部2の構成の一例を示している。また、
図1では、中心線の下部半断面が閉極状態を示し、上部半断面が開極状態(遮断動作完了時)を示す。
【0015】
図1に示すように、ガス遮断器100は、消弧性ガスが充填された図示されていない密閉容器内に固定接触子部1と可動接触子部2とが対向配置されている。なお、以下、可動接触子部2の位置関係についての説明を簡略化する観点から、可動接触子部2における固定接触子部1側の方向、すなわち
図1における左方向を前方、右方向を後方と定義する。
【0016】
固定接触子部1は、
図1に示すように、先端に耐弧片部3aを有する固定アーク接触子3と、この固定アーク接触子3を包囲して配置される指状の固定通電接触子4と、固定通電接触子を包囲するシールド5と、を有している。これら固定アーク接触子3、及び固定通電接触子4、シールド5は、同心円状に配置される。
【0017】
可動接触子部2は、
図1に示すように、前方に設けられるフランジ部7aと、フランジ部7aに設けられる複数個のガス流通孔7bと、後方に設けられる複数の排気孔7cと、内部に設けられるガイド7dと、で構成される中空の操作ロッド7を有している。操作ロッド7の先端内径部には、可動アーク接触子8が、ネジ部などにより固定されている。操作ロッド7のフランジ部7aには、ピストン9が複数のボルトなどにより固定されている。
【0018】
ピストン9は、操作ロッド7のガス流通孔7bと同じ位置に複数のガス流通穴9bを有し、かつ、その前方端面に一体構成されて前方に突起する
突起フローガイド9a、を有する。また、ピストン9の前方端面には、可動通電接触子10が複数のボルトなどによって固定されている。この可動通電接触子10により、PTFE(ポリテトラフローラエチレン)など絶縁耐弧性素材で形成されたノズル11が、ピストン9の前方端面に挟み付けられて固定されている。
【0019】
以上に述べた、操作ロッド7とそのガス流通孔7b、ピストン9とそのピストンのガス流通穴9b、ノズル11、ピストン9の突起フローガイド9a、可動アーク接触子8の部分の拡大図を
図1の下部に併記する。
【0020】
図1に示すように、可動アーク接触子8は、その前方部に外径から内径まで貫通する複数の微小間隙により分割される複数の腕部8bを有している。腕部8bの先端部には腕部8bより大外径の耐弧片部8aを有する。
図1に示すように、ピストン9の突起フローガイド9aは、可動アーク接触子8の外側に同心円状に配置されている。突起フローガイド9aの外側には、絶縁耐弧性のノズル11が同心円状に、かつ、適正なガスフロースペースBを確保して、取り付けられる。
【0021】
ピストン9の突起フローガイド9aと、可動アーク接触子8の先端に備える大外径の耐弧片部8aとでは、ガスフロースペースBのガス流のスムース化が図られている。
図1に示すように、可動アーク接触子8の先端の耐弧片部8aは、その腕部8bより大きい外半径R8aで、かつ、曲面はその厚さより大きな曲率半径r8aに形成されている。また、外側の突起フローガイド9aの先端部の曲率半径r9aは、その厚さより大きな値に形成されている。また、上記の構成において、ピストン9の突起フローガイド9aはピストン9と一体構造であるから、軽量化のため、その素材は主として、アルミ合金などの軽量金属が使用されている。
【0022】
図1上図の下半分に示す閉極中の状態に開極駆動力が働き、可動接触子部2中の可動部が矢印22の向きに駆動され、固定アーク接触子3と可動アーク接触子8が開離すると、その間にアークが発生する。この参考例による消弧室では、ピストン9が
右方向に駆動され、シリンダー6との間の圧縮室Aの容積が縮小して圧力が上昇し、圧縮室Aからの高圧ガス流がノズル11に導かれ、ノズル11のスロート部(流路面積最小部)C付近で最大流速となってアークに吹き付けられ、アークを消滅させることができる。この高圧ガス流は、ノズル11内に生じるばかりでなく、可動アーク接触子8の内部にも向かい、最終的には操作ロッド7の排気孔7cへ流れ、アークの消滅に貢献している。
【0023】
このような参考例によるガス遮断器100を送電系統に設置し、ガス遮断器100端子の直近で短絡故障が起こったとき、ガス遮断器100は系統における100%の短絡大電流を遮断しなければならない。このような大電流遮断状態の一例を
図2に示す。また、
図2におけるノズル11と、固定アーク接触子3及び可動アーク接触子8付近とを拡大して
図2の下部に併記する。
【0024】
図2中の拡大図に示すように、大電流の遮断では、固定アーク接触子3の先端の耐弧片部3aと可動アーク接触子8の先端の耐弧片部8aとの間にアーク20が発生する。このアーク20は、その高温ガスがノズル11からの流れ21a及び流れ21bによってアーク接触子間(固定アーク接触子3と可動アーク接触子8との間)から除去されるものの、大電流による大きなアークエネルギーのため、ノズル11内のガスフロースペースB内で圧縮室A方向に拡大し、ピストン9の突起フローガイド9aに接触することがある。
【0025】
アーク20がアルミ合金であるピストン9の突起フローガイド9aに接すると、そこにアーク20の一部が転移して、遮断電流の一部が流れ、その部分が溶融し、更に蒸発して、アーク接触子間にアルミ蒸気が流入する。アーク接触子間に流入したアルミ蒸気は、アーク接触子間の耐電圧性能を低下させる。従って、大電流遮断時、アーク接触子間が、ゼロ点後に印加される高い過渡回復電圧(TRV)に耐えることができなくなり、絶縁破壊が発生して遮断失敗となることがあった。
【0026】
[第1実施形態]
以上述べたように、参考例によるガス遮断器100では、大電流遮断時に、構成必須部材であるアルミ合金製の突起フローガイド9aにアークが転移して、発生するアルミ蒸気がアーク接触子間に流入し、絶縁性能が低下して、遮断不能を引き起こす可能性がある。このような問題を解決するため、以下に説明する各実施形態では、突起フローガイドの一部、又は全体を耐弧性の絶縁物とし、又はアルミを超える高溶融点金属材料とすることにより、大電流遮断時での金属材料の溶融を防ぎ、又は極少化させ、アーク接触子間への金属材蒸気の流入を最少化して、大電流遮断性能を向上させるようにしている。なお、以下の説明においても、可動接触子部2に関して、図中の左側方向を前方、右側を後方とする。以下の説明において、上記した参考例と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明する。
【0027】
図3は、本発明の第1実施形態に係るガス遮断器101の構成の一例を示す断面図及び要部拡大図である。
図3は、ガス遮断器101の消弧室の遮断動作途中の状態を示しており、開極が全開極動作行程の約50%進んだ状態を示している。
図3において、固定接触子部1と可動接触子部2は、消弧性のガスが封入された金属性や碍管など、図示されていない密閉容器内に対向配置される。
【0028】
図3において、固定接触子部1は、上記した参考例と同様に、先端に耐弧片部3aを有する固定アーク接触子3と、その周囲に同心的に配置された固定通電接触子4と、それを包囲するシールド5と、によって構成されている。
【0029】
可動接触子部2は、
図3に示すように、前方に形成されたフランジ部7aと、フランジ部7aに設けられる複数個のガス流通孔7bと、後方に設けられた複数の排気孔7cと、内部に設けられたガイド7dと、を備える中空の操作ロッド7を有している。操作ロッド7の先端内径部には、可動アーク接触子8がネジ部などにより固定され、操作ロッド7と通電可能となっている。フランジ部7aには、ピストン9が複数のボルトなどにより固定されている。
【0030】
ピストン9は、操作ロッド7のガス流通孔7bと同じ位置に複数のガス流通穴9bを有している。また、ピストン9は、その前方端面に一体構成されて前方に突起する突起フローガイド9aを有する。突起フローガイド9aの先端には、ネジなどで固定されるフローガイド先端部9a1を有する。フローガイド先端部9a1は、突起フローガイド9aに対して着脱可能である。この突起フローガイド9a及びフローガイド先端部9a1付近を拡大して
図3の下部に併記する。
【0031】
図3及びその拡大図において、ピストン9の突起フローガイド9aの先端にネジなどにより固定されるフローガイド先端部9a1の素材は、PTFE(ポリテトラフローラエチレン)あるいはPTFEに微量の絶縁物を充填した絶縁耐弧性材料、 又はCu−W合金(銅タングステン合金)の他、スチール材など、アルミの溶融点(約660℃)を超える高溶融点の金属材料が用いられる。なお、金属材料はCu−W合金またはスチール材に限定されず、アルミの溶融点を超える高溶融点の任意の金属材料を用いることができる。
【0032】
また、フローガイド先端部9a1は、突起フローガイド9aに対して着脱可能としているが、これに限定されず、突起フローガイド9aとフローガイド先端部9a1とを一体に形成してもよい。また、フローガイド先端部9a1の紙面横方向の長さは任意に設定可能である。つまり、フローガイド先端部9a1と突起フローガイド9aとの接続部(着脱部)の紙面横方向の位置は、
図3に示す位置に限定されず、任意に設定可能である。例えば、フローガイド先端部9a1の紙面横方向の長さを
図3に示すフローガイド先端部9a1よりも長く設定し、接続部の位置を紙面右方向に設定してもよいし、また、
図3に示すフローガイド先端部9a1よりも短く設定し、接続部の位置を紙面左方向に設定してもよい。
【0033】
また、
図3に示すように、可動アーク接触子8は、上記した参考例と同様に、その前方部に外径から内径まで貫通する複数の微小間隙により分割される複数の腕部8bを有し、腕部8bの先端部には腕部8bより大外径で大曲率半径の耐弧片部8aを有する。
図3に示すように、ピストン9の突起フローガイド9aは可動アーク接触子8の外側同心円状に配置される。
【0034】
また、ピストン9の前方端面には、可動通電接触子10が複数のボルトなどによって固定されている。この可動通電接触子10により、PTFE(ポリテトラフローラエチレン)などで形成された絶縁耐弧性素材のノズル11が、突起フローガイド9aの外側でかつ同心円状に、ピストン9に挟み付けられて固定されている。
【0035】
この突起フローガイド9a及びフローガイド先端部9a1と、それを包囲するノズル11との間隔空間は、上記した参考例と同様に、スムースなガスの流れを可能とするガスフロースペースBとして確保される。また、
図3の構成において、ピストン9には、軽量化を図って、アルミ合金などの軽量金属の素材が使用され、ピストン9と一体である突起フローガイド9aに関しても、アルミ合金などの軽量金属が使用される。
【0036】
ピストン9のフローガイド先端部9a1及び可動アーク接触子8の先端では、
図3の拡大図に示すように、耐弧片部8aの外半径R8aを、その後方の腕部8bに比べ大きくし、かつ、その曲率半径r8aも、その厚さと同等又はより大きくして、かつフローガイド先端部9a1の先端の曲率半径r9aも先端部の厚さより大きくすることにより、ガスフロースペースBの先端部におけるガス流のスムース化を図っている。
【0037】
図3は、図示されない開極駆動力によって、本第1実施形態における可動接触子部2のピストン9などの可動部に開極駆動力が矢印22の向きに働き、固定アーク接触子3と可動アーク接触子8とが全開極行程の約50%開離した開極動作途中の状態を示している。
【0038】
以上のように構成されたガス遮断器101の作用について説明する。電流を遮断する状態では、参考例の作用を示す
図2と同様、アーク接触子間(固定アーク接触子3と可動アーク接触子8との間)にアーク20(
図4参照)が発生する。第1実施形態による消弧室では、上記した参考例と同じく、ピストン9が
右方向に駆動され、シリンダー6との間の圧縮室Aの容積が縮小して圧力が上昇し、圧縮室Aからの高圧ガス流がノズル11に導かれ、ノズル11のスロート部(流路面積最小部)C付近で最大流速となってアーク20に吹き付けられ、アーク20を消滅させることができる。この高圧ガス流は、ノズル11内に生じるばかりでなく、可動アーク接触子8の内部にも向かって流れて操作ロッド7の排気孔7cから排出され、アーク20の消滅に貢献している。
【0039】
図3に示す第1実施形態における大電流遮断状態の一例におけるノズル11とアーク接触子付近を拡大して
図4に示す。
図4は、第1実施形態に係るガス遮断器101の作用を示す拡大断面図である。
図4に示すように、大電流を遮断するとき、固定アーク接触子3の先端の耐弧片部3aと、可動アーク接触子8の先端の耐弧片部8aとの間に発生している大電流アーク20は、その高温ガスがノズル11からの流れ21aと、流れ21bによってアーク接触子間から除去されるものの、大電流による大きなアークエネルギーのため、ノズル11内のガスフロースペースB内で圧縮室A方向に拡大し、ピストン9の突起フローガイド9aの先端に位置するフローガイド先端部9a1に接触することがある。
【0040】
第1実施形態では、前述のように、フローガイド先端部9a1が絶縁耐弧性のPTFEあるいはPTFEを主成分とする他の耐弧絶縁物との混合成型物、又はCu−W(銅タングステン合金)や、スチール材などアルミの溶融点を超える高溶融点材料で構成されている。絶縁耐弧性のPTFE系材料で構成される場合には、
図4に示すように、アーク20がフローガイド先端部9a1に接触したとしても、そこから低溶融点の金属材料の蒸気が発生することはなく、アーク接触子間に金属蒸気が流入することはない。
【0041】
また、フローガイド先端部9a1がアルミの溶融点を超える高溶融点の金属材料で構成される場合には、
図4に示すように、アーク20がフローガイド先端部9a1に接触したとしても、アーク20による金属蒸気の発生量は抑えられ、アーク接触子間に流入する金属蒸気量は極少に抑制される。
【0042】
以下に示す表1では、第1実施形態について、JEC規格における100%短絡条件での試験結果の一例を参考例と比較して示す。
【0044】
(評価結果)
表1に示すように、上記した参考例は、過渡回復電圧(TRV)ピークの77.3%で絶縁破壊が生じたのに対し、第1実施形態では、過渡回復電圧(TRV)ピークをクリアして遮断が成功したことを確認した。これにより、上記のように、アーク接触子間への金属蒸気の流入が防止されるか、又は極少化され、アーク接触子間の耐電圧性能が向上して、電流ゼロ点後に印加される高い過渡回復電圧(TRV)によっても絶縁破壊が発生せず、遮断を確実に行うことができることが確認された。
【0045】
このように第1実施形態によれば、フローガイド先端部9a1がPTFEあるいはPTFEを主成分とする他の耐弧絶縁物との混合成型物、又はCu−W(銅タングステン合金)や、スチール材などアルミの溶融点を超える高溶融点材料で構成されているので、大電流遮断時に、ピストン9の突起フローガイド9aの先端部に設置されるフローガイド先端部9a1からの金属蒸気の発生が防止される、又は蒸気の発生量が抑制される。これにより、アーク接触子間への金属蒸気の流入が防止されるか、又は極少化されるため、アーク接触子間の耐電圧性能が向上し、電流ゼロ点後に印加される高い過渡回復電圧(TRV)によっても絶縁破壊が発生せず、遮断を確実に行うことができる。すなわち、小型かつ簡単な構造で製造コストを抑えることができ、かつ、遮断性能に優れるガス遮断器を提供することができる。
【0046】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係るガス遮断器102の構成の一例を示す断面図及び要部拡大図である。なお、以下の説明においても、可動接触子部2に関して、図中の左側方向を前方、右側を後方とする。以下の説明において、上記した参考例及び第1実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化している。
図5は、第2実施形態におけるガス遮断器102の消弧室を示している。
図5の上図では、中心線より下半分が閉極中(閉極動作終了時)の状態を示し、上半分が開極中(開極動作終了時)の状態を示している。
【0047】
図5に示すように、第2実施形態では、シリンダー6が操作ロッド7のフランジ部7aにボルトなどにより締結されている。シリンダー6の前方の端面には、可動通電接触子10が複数のボルトなどによって固定されている。可動通電接触子10により、PTFE(ポリテトラフローラエチレン)など絶縁耐弧性素材のノズル11が、シリンダー6に挟み付けられて固定されている。
【0048】
図5の下図は、操作ロッド7と、ノズル11と、
シリンダー6の突起フローガイド
6aと、フローガイド先端部
6a1と、可動アーク接触子8とを含んだ部分を拡大して示している。
図3の拡大図から分かるように、シリンダー6の先端面部にはシリンダー6と一体化した突起フローガイド6aが設けられる。突起フローガイド6aの先端部には、フローガイド先端部6a1がネジなどにより固定されている。フローガイド先端部6a1は、突起フローガイド6aに対して着脱可能である。
【0049】
また、フローガイド先端部6a1は、突起フローガイド6aに対して着脱可能としているが、これに限定されず、突起フローガイド6aとフローガイド先端部6a1とを一体に形成してもよい。また、フローガイド先端部6a1の紙面横方向の長さは、任意に設定可能である。つまり、フローガイド先端部6a1と突起フローガイド6aとの接続部(着脱部)の紙面横方向の位置は、
図5に示す位置に限定されず、任意に設定可能である。例えば、フローガイド先端部6a1の紙面横方向の長さを
図5に示すフローガイド先端部6a1よりも長く設定し、接続部の位置を紙面右方向に設定してもよいし、また、フローガイド先端部6a1の紙面横方向の長さを
図5に示すフローガイド先端部6a1よりも短く設定し、接続部の位置を紙面左方向に設定してもよい。
【0050】
フローガイド先端部6a1の素材は、第1実施形態と同様に、PTFEあるいはPTFEを主素材として他の絶縁耐弧性物質を充填させた材料、又は、アルミの溶融点を超える高溶融点の金属材料が用いられる。なお、第2実施形態においても絶縁耐弧性のノズル11が同心円状に、且つ適正なガスフロースペースBを確保して、取り付けられることは第1実施形態と同様である。
【0051】
以上のように構成されたガス遮断器102の作用について説明する。電流を遮断する状態では、第1実施形態と同様、アーク接触子間(固定アーク接触子3と可動アーク接触子8との間)にアーク20(
図4参照)が発生する。第2実施形態による消弧室では、開極時にシリンダー6が操作ロッド7を介して、図示しない駆動力により
図5における
右方向に駆動される。これにより、シリンダー6と、固定のピストン9とによって構成される圧縮室Aの容積が縮小されてガスが圧縮され、高圧ガス流がガスフロースペースBを介してノズルスロート部C(
図3参照)に導かれてアーク20を冷却し、電流遮断が達成される。
【0052】
このとき、アーク20が拡大してフローガイド先端部6a1に接触した場合でも、フローガイド先端部6a1がPTFE等で構成されているので、フローガイド先端部6a1から金属材料の蒸気が発生することはなく、または、金属蒸気の発生量は抑えられ、アーク接触子間への金属蒸気の流入を防止、又は極少化する点は第1実施形態と同様である。
【0053】
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様、フローガイド先端部6a1がPTFE等で構成されているので、大電流遮断時にフローガイド先端部6a1からの金属蒸気の発生が防止される、又は蒸気の発生量が抑制される。これにより、アーク接触子間の耐電圧性能が向上し、電流ゼロ点後に印加される高い過渡回復電圧(TRV)によっても絶縁破壊が発生せず、遮断を確実に行うことができる。すなわち、小型かつ簡単な構造で製造コストを抑えることができ、かつ、遮断性能に優れるガス遮断器を提供することができる。また、第2実施形態は固定のピストン9を使用するので、ピストン9の駆動機構が不要となり、コストの上昇を抑えることができる。
【0054】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係るガス遮断器103の構成の一例を示す断面図及び要部拡大図である。なお、以下の説明においても、可動接触子部2に関して、図中の左側方向を前方、右側を後方とする。以下の説明において、上記した参考例及び第1、第2実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化している。
図6は、第3実施形態におけるガス遮断器103の消弧室を示している。
図6の上図では、中心線より下半分が閉極中(閉極動作終了時)の状態を示し、上半分が開極中(開極動作終了時)の状態を示している。また、
図6の下図は、要部を拡大した図である。
【0055】
図6に示すように、第3実施形態では、可動アーク接触子8が、第2実施形態と同様に、操作ロッド7の内径部にネジ止めなどの方法で固定され、操作ロッド7と通電可能に接触されている。ただし、第2実施形態と異なり、シリンダー
6と別部品として分離された
突起フローガイド12が、可動アーク接触子8の外径部のネジによって固定され、可動アーク接触子8と同様、操作ロッド7と通電可能に接触されている。その他の構成については第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0056】
突起フローガイド12は、シリンダー7に対して着脱可能である。ただし、突起フローガイド12は、シリンダー7に対して着脱可能であることに限定されず、突起フローガイド12とシリンダー7とを一体に形成してもよい。突起フローガイド12の素材は、第1及び第2実施形態と同様に、PTFEあるいはPTFEを主素材として他の絶縁耐弧性物質を充填させた材料、又は、アルミの溶融点を超える高溶融点の金属材料が用いられる。なお、第3実施形態においても絶縁耐弧性のノズル11が同心円状に、且つ適正なガスフロースペースBを確保して取り付けられることは第1及び第2実施形態と同様である。
【0057】
以上のように構成されたガス遮断器103の作用について説明する。電流を遮断する状態では、第1及び第2実施形態と同様、アーク接触子間(固定アーク接触子3と可動アーク接触子8との間)にアーク20(
図4参照)が発生する。第3実施形態による消弧室では、第2実施形態と同様、開極時にシリンダー6が操作ロッド7を介して、図示しない駆動力により
図5における
右方向に駆動される。これにより、シリンダー6と、固定のピストン9とによって構成される圧縮室Aの容積が縮小されてガスが圧縮され、高圧ガス流がガスフロースペースBを介してノズルスロート部C(
図3参照)に導かれてアーク20を冷却し、電流遮断が達成される。
【0058】
このとき、アーク20が拡大して突起フローガイド12の先端部に接触した場合でも、突起フローガイド12がPTFE等で構成されているので、突起フローガイド12の先端部から金属材料の蒸気が発生することはなく、または、金属蒸気の発生量は抑えられ、アーク接触子間への金属蒸気の流入を防止、又は極少化する点は第1及び第2実施形態と同様である。
【0059】
このように、第3実施形態によれば、突起フローガイド12がPTFE等で構成されているので、大電流遮断時に突起フローガイド12の先端部から金属蒸気の発生が防止される、又は蒸気の発生量が抑制される。これにより、第1及び第2実施形態と同様、アーク接触子間の耐電圧性能が向上し、電流ゼロ点後に印加される高い過渡回復電圧(TRV)によっても絶縁破壊が発生せず、遮断を確実に行うことができる。すなわち、小型かつ簡単な構造で製造コストを抑えることができ、かつ、遮断性能に優れるガス遮断器を提供することができる。また、第3実施形態は固定のピストン9を使用するので、第2実施形態と同様、ピストン9の駆動機構が不要となり、コストの上昇を抑えることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記の実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。