(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の交流−直流変換部は、複数のスイッチング素子および前記複数のスイッチング素子に逆並列接続されたダイオードを含むスイッチング回路と、前記複数のスイッチング素子を導通状態と遮断状態との間で切り替えることで、前記第2の交流電力を直流電力に変換する制御部とを備える、
請求項1に記載の電力変換システム。
前記走行用電力変換装置は、前記第1の交流電力を直流電力に変換する第2の交流−直流変換部と、前記第2の交流−直流変換部により変換された直流電力を前記走行用電力に変換する直流−交流変換部とを有し、
前記蓄電装置は、前記第2の交流−直流変換部と前記直流−交流変換部とを接続する電力線に接続され、
前記第2の交流−直流変換部と前記直流−交流変換部とを接続する電力線の途中には、電力を遮断する状態と、電力を供給する状態との間で切り替えられる接触器が設けられ、
前記蓄電装置は、前記接触器が前記電力を供給する状態に切り替えられた場合に、前記直流−交流変換部に放電電力を供給する、
請求項1または2に記載の電力変換システム。
前記電気車の非常時ではない通常時において所定の周波数のキャリア信号に基づいて前記走行用電力変換装置におけるスイッチング素子を駆動させることで前記走行用モータに走行トルクを発生させる第1の走行モードと、前記所定の周波数よりも低い周波数のキャリア信号に基づいて前記スイッチング素子を駆動させることで前記走行用モータに走行トルクを発生させる第2の走行モードとの間で走行モードを切り替える走行電力制御部を更に備え、
前記走行電力制御部は、前記電気車の非常時に、前記走行モードを前記第2の走行モードに切り替える、
請求項5に記載の電力変換システム。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電力変換システムを、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の電力変換システム1の一例を示す図である。電力変換システム1は、例えば鉄道車両に搭載される。鉄道車両は、電気車の一例である。電力変換システム1には、集電装置400およびメイントランスの走行用巻線(500および302)を介して、架線から高圧交流電力が供給される。電力変換システム1は、高圧交流電力を走行用交流電力に変換して、走行用モータMに供給する。これにより電力変換システム1は、走行用モータMに走行トルクを発生させ、鉄道車両を走行させる。実施形態において、走行用モータMは、例えば、誘導電動機である。
【0009】
また、電力変換システム1は、集電装置400およびメイントランスの負荷用巻線(500および102)を介して、架線から低圧交流電力が供給される。メイントランスの負荷用巻線(500および102)から供給される交流電力は、メイントランスの走行用巻線(500および302)から供給される交流電力よりも低い電圧となっている。電力変換システム1は、低圧交流電力を負荷用交流電力に変換して、交流負荷L
ACに供給する。これにより電力変換システム1は、交流負荷L
ACを駆動させる。実施形態において、交流負荷L
ACは、走行用モータMを除く鉄道車両の負荷であって、例えば、100ボルトの交流電圧で動作する電子機器などである。また、電力変換システム1は、低圧交流電力を負荷用直流電力に変換して、直流負荷L
DCに供給する。これにより電力変換システム1は、交流直流負荷L
DCを駆動させる。実施形態において、直流負荷L
DCは、走行用モータMを除く鉄道車両の負荷であって、例えば、直流電圧で動作する電子機器などである。
【0010】
電力変換システム1は、例えば、補助電源用電力変換装置100と、バッテリ装置200と、走行用電力変換装置300とを含む。
【0011】
補助電源用電力変換装置100は、例えば、負荷用交流−直流変換部110と、交流負荷用直流−交流変換部120と、負荷電力制御部130、直流負荷用直流−交流変換部160と、直流負荷用交流−直流変換部170とを含む。
【0012】
負荷用交流−直流変換部110は、集電装置400からメイントランスの負荷用巻線(500および102)を介して供給された低圧交流電力を直流電力に変換する。
図2は、負荷用交流−直流変換部110の一例を示す図である。負荷用交流−直流変換部110は、例えば、スイッチング素子110a、110b、110c、および110dと、ゲート制御部110Aと、電圧センサ110Bを含む。スイッチング素子110a、110b、110c、および110dとは、正極線および負極線間に接続されている。スイッチング素子110a、110b、110c、および110dは、例えば逆並列に接続されたダイオードを内蔵したIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である。なお、スイッチング素子110a、110b、110c、および110dは、他の種類のスイッチング素子であってよい。
【0013】
ゲート制御部110Aは、負荷電力制御部130から供給された指令電圧に基づいて、スイッチング素子110a、110b、110c、および110dにおけるゲート端子にゲート信号を供給する。これにより、ゲート制御部110Aは、出力電圧を指令電圧に近づけるように、スイッチング素子110a、110b、110c、および110dを導通状態と遮断状態との間で切り替える。なお、負荷用交流−直流変換部110は、
図2に示した一例に限らず、昇圧コンバータまたは降圧コンバータ、昇降圧コンバータのいずれかであればよい。
【0014】
交流負荷用直流−交流変換部120は、電力が供給される正極線および負極線間にブリッジ接続された複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路である。なお、交流負荷用直流−交流変換部120は、インバータとも称される。各スイッチング素子は、例えばIGBTである。なお、スイッチング素子として、他の種類のスイッチング素子を使用してもよい。交流負荷用直流−交流変換部120は、負荷電力制御部130の制御に従って、スイッチング素子を導通状態と遮断状態との間で切り替えることで、直流電力を負荷用交流電力に変換する。
【0015】
交流負荷用直流−交流変換部120の負荷用交流−直流変換部110側には、負荷用交流−直流変換部110および交流負荷用直流−交流変換部120に並列して、コンデンサ122が接続されている。コンデンサ122は、交流負荷用直流−交流変換部120において安定した電力を交流負荷L
AC側に供給することができる容量に設定されている。すなわち、コンデンサ122の容量は、集電装置400から供給される交流電力が停止する無電区間(セクションとも称される)を鉄道車両が走行している場合に交流負荷L
ACへ負荷用交流電力の供給を補償するような高い容量でなくてよい。無電区間は、例えば、鉄道車両が走行する区間において所定距離ごとに設けられている。
【0016】
交流負荷用直流−交流変換部120により変換された負荷用交流電力は、コイル142、コンデンサ144、およびトランス(146および148)を介して交流負荷L
ACに供給される。
【0017】
負荷電力制御部130は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよい。負荷電力制御部130は、例えば、補助電源用電力変換装置100において変換された100Vの動作電力が供給されることで動作する。
【0018】
負荷電力制御部130は、負荷用交流−直流変換部110、交流負荷用直流−交流変換部120、直流負荷用直流−交流変換部160と、直流負荷用交流−直流変換部170を制御する。
【0019】
直流負荷用直流−交流変換部160は、上述した交流負荷用直流−交流変換部120と同様に、電力が供給される正極線および負極線間にブリッジ接続された複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路である。直流負荷用直流−交流変換部160は、スイッチング素子を導通状態と遮断状態との間で切り替えることで、直流電力を交流電力に変換する。
【0020】
直流負荷用直流−交流変換部160の負荷用交流−直流変換部110側には、負荷用交流−直流変換部110および直流負荷用直流−交流変換部160に並列して、コンデンサ162が接続されている。コンデンサ162は、直流負荷用直流−交流変換部160において安定した電力を、後段の直流負荷用交流−直流変換部170側に供給することができる容量に設定されている。コンデンサ162の容量は、コンデンサ122の容量と同じであってよいし、異なっていてもよい。
【0021】
直流負荷用直流−交流変換部160により変換された交流電力は、トランス(164および166)を介して直流負荷用交流−直流変換部170に供給される。トランス(164および166)は、例えば、直流負荷用直流−交流変換部160により変換された交流電力の電圧を100V程度まで降圧する。
【0022】
直流負荷用交流−直流変換部170は、直流負荷用直流−交流変換部160からトランス(164および166)を介して供給された交流電力を直流電力に変換する。例えば、直流負荷用交流−直流変換部170は、交流電力を直流電力に変換する。直流負荷用交流−直流変換部170は、負荷用交流−直流変換部110と同様に、上述した
図2に示すような構成であってよい。
【0023】
直流負荷用交流−直流変換部170により変換された直流電力は、コイル172、コンデンサ174を介して直流負荷L
DCに供給される。
【0024】
負荷用交流−直流変換部110における直流電力の出力端と交流負荷用直流−交流変換部120および直流負荷用直流−交流変換部160における直流電力の入力端とを接続する電力線には、バッテリ装置200が接続されている。バッテリ装置200は、例えば、絶縁区分が低圧のバッテリである。バッテリ装置200は、例えば、リチウムイオン電池などの蓄電池セルが直列または並列に接続された蓄電池ユニットである。
【0025】
バッテリ装置200は、負荷用交流−直流変換部110から交流負荷用直流−交流変換部120および直流負荷用直流−交流変換部160に供給される直流電力が低下した場合に、直流電力の低下に対応した電力を放電する。これにより、バッテリ装置200は、鉄道車両が無電区間を走行している場合、交流負荷用直流−交流変換部120および直流負荷用直流−交流変換部160に放電電力を供給する。
【0026】
走行用電力変換装置300は、例えば、走行用充電回路310と、走行用交流−直流変換部320と、走行用直流−交流変換部330と、走行電力制御部340とを含む。
【0027】
走行用充電回路310は、例えば、正極線に接続された接触器K10、接触器K10に対して並列に接続された接触器K11および抵抗体r10と、負極線に接続された接触器K12、接触器K12に対して並列に接続された接触器K13および抵抗体r11と、を含む。また、走行用充電回路310は、各接触器K10、K11、K12、およびK13を電磁的に動作させるためのコイル(不図示)などを備える。走行用充電回路310は、走行電力制御部340の制御に従って、各接触器K10、K11、K12、およびK13を遮断状態と導通状態との間で切り替える。走行用充電回路310は、高圧交流電力の供給を開始する場合、まず接触器K11およびK13を導通状態に切り替える。その後、走行用充電回路310は、接触器K10およびK12を導通状態に切り替えると共に、接触器K11およびK13を導通状態から遮断状態に切り替える。
【0028】
走行用交流−直流変換部320は、高圧交流電力が供給される正極線および負極線間に接続された複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路である。走行用交流−直流変換部320は、コンバータとも称される。なお、走行用交流−直流変換部320は、昇圧コンバータまたは降圧コンバータ、昇降圧コンバータのいずれかであればよい。スイッチング素子はIGBTであるが、これに限定されず、他の種類のスイッチング素子を使用してもよい。走行用交流−直流変換部320は、走行電力制御部340の制御に従って、スイッチング素子を導通状態と遮断状態との間で切り替えることで、メイントランスの走行用巻線を介して供給された高圧交流電力を直流電力に変換する。
【0029】
走行用直流−交流変換部330は、電力が供給される正極線および負極線間にブリッジ接続された複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路である。なお、走行用直流−交流変換部330は、インバータとも称される。走行用直流−交流変換部330は、走行用モータMの3相のそれぞれに対応した上ブリッジ側のスイッチング素子と下ブリッジ側のスイッチング素子との組を3つ備える。各スイッチング素子は、IGBTであるが、これに限定されず、他の種類のスイッチング素子を使用してもよい。走行用直流−交流変換部330は、走行電力制御部340の制御に従って、走行用モータMにおける各相のスイッチング素子を導通状態と遮断状態との間で切り替えることで、直流電力を走行用交流電力に変換する。
【0030】
走行電力制御部340は、例えばCPU等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI、ASIC、またはFPGA等のハードウェアにより実現されてもよい。走行電力制御部340は、例えば、補助電源用電力変換装置100において変換された100Vの動作電力が供給されることで動作する。走行電力制御部340は、走行用充電回路310、走行用交流−直流変換部320、および走行用直流−交流変換部330を制御する。
【0031】
走行用充電回路310における高圧直流電力の出力端と走行用交流−直流変換部320における高圧直流電力の入力端とを接続する電力線には、充電回路210を介してバッテリ装置200が接続されている。バッテリ装置200の放電電力の電圧は、例えば、走行用交流−直流変換部320に供給される交流電力にて生成される直流電圧よりも低く、且つ交流負荷用直流−交流変換部120に供給される直流電力の電圧よりも高くてよいが、これに限定されない。
【0032】
充電回路210は、例えば、正極線に接続された接触器K1、接触器K1に対して並列に接続された接触器K3および抵抗体r1と、負極線に接続された接触器K2と、を含む。また、充電回路210は、各接触器K1、K2、およびK3を電磁的に動作させるためのコイル(不図示)などを備える。充電回路210は、直流電力用の各接触器を遮断状態と導通状態との間で切り替える。充電回路210は、バッテリ装置200から放電電力の供給を開始する場合、まず接触器K2およびK3を導通状態に切り替える。その後、充電回路210は、接触器K1を導通状態に切り替えると共に、接触器K3を導通状態から遮断状態に切り替える。
【0033】
充電回路210は、鉄道車両の運転手などの管理者の操作に基づいて各接触器の状態を切り替える。充電回路210には、例えば、運転者が操作するマスターコントローラ(不図示)における所定の操作部(不図示)が操作された場合に、非常信号が供給される。マスターコントローラにおける操作部は、例えば、鉄道車両の非常時にバッテリ装置200から放電された電力により鉄道車両を走行させる操作を受け付ける緊急用ボタンなどである。鉄道車両の非常時は、地震などの天災や変電所の停止などの事態により集電装置400から鉄道車両に交流電力が供給されないことであってよいが、これに限定されず、鉄道車両の故障などが含まれていてよい。充電回路210は、非常信号が供給された場合、電力を遮断する状態から電力を供給する状態に切り替える。
【0034】
充電回路210における接触器K1またはK3と接触器K2とが導通状態に制御された状態において、走行用直流−交流変換部320の入力端に接続された正極線と負極線との間には、バッテリ装置200の放電電力の電圧が印加される。走行用直流−交流変換部330は、走行電力制御部340の制御に従ってスイッチング動作を行うことで、放電電力を、走行用モータMを駆動させる三相交流電力に変換する。
【0035】
以上説明した電力変換システム1によれば、負荷用交流−直流変換部110と交流負荷用直流−交流変換部120および直流負荷用直流−交流変換部160との間にバッテリ装置200を接続することで、メイントランスの負荷用巻線から負荷用交流−直流変換部110に供給される電力が低下した場合に、電力の低下に対応した電力をバッテリ装置200から放電することでバッテリ装置200から交流負荷用直流−交流変換部120および直流負荷用直流−交流変換部160に放電電力を供給することができる。これにより、電力変換システム1によれば、鉄道車両の交流負荷L
ACおよび直流負荷L
DCに供給される電力の低下を抑制することができる。
【0036】
また、電力変換システム1によれば、負荷用交流−直流変換部110は複数のスイッチング素子110a、110b、110cおよび110dとを含むスイッチング回路を含むので、負荷用交流−直流変換部110から出力される直流電力を安定化させることができる。すなわち、負荷用交流−直流変換部110によれば、ダイオードを用いた整流器よりも時間変化が少ない直流電力に変換することができる。これにより、電力変換システム1によれば、負荷用交流−直流変換部110から交流負荷用直流−交流変換部120および直流負荷用直流−交流変換部160への直流電力が低下した場合に、バッテリ装置200から交流負荷用直流−交流変換部120および直流負荷用直流−交流変換部160に速やかに放電電力を供給することができる。
【0037】
さらに、電力変換システム1によれば、バッテリ装置200から放電電力を供給することができるので、コンデンサ122およびコンデンサ162の容量を、鉄道車両が無電区間を通過する際に交流負荷L
ACおよび直流負荷L
DCに供給する電力を補償するための容量を考慮して大容量化する必要がない。
【0038】
さらに、電力変換システム1によれば、負荷用交流−直流変換部110から出力される直流電力を制御することで安定化させ、負荷用交流−直流変換部110から出力された電力をバッテリ装置200に供給することで、バッテリ装置200における充電抵抗に大きな負荷を与えることなく、バッテリ装置200を充電することができる。
【0039】
さらに、電力変換システム1によれば、非常時においてバッテリ装置200を放電させて、直流電力を走行用交流−直流変換部320に供給することができる。これにより、電力変換システム1によれば、非常時に、バッテリ装置200の放電電力を使用して走行用モータMを駆動させることで、鉄道車両を走行させることができる。
【0040】
以下、第1の実施形態の電力変換システム1の他の例について説明する。
図3は、第1の実施形態の電力変換システム1Aの一例を示す図である。電力変換システム1Aにおいて、バッテリ装置200は、走行用交流−直流変換部320と走行用直流−交流変換部330とを接続する電力線に接続されている。また、バッテリ装置200と走行用電力変換装置300とを接続する電力線の途中には、充電回路210が設けられている。電力変換システム1Aにおいて、バッテリ装置200は、非常時に、充電回路210が電力を供給する状態に切り替えられた場合に、走行用直流−交流変換部330に放電電力を供給する。
【0041】
この電力変換システム1Aによれば、非常時においてバッテリ装置200を放電させて、直流電力を走行用直流−交流変換部330に供給することができる。これにより、電力変換システム1Aによれば、非常時に、バッテリ装置200の放電電力を使用して走行用モータMを駆動させることで、鉄道車両を走行させることができる。
【0042】
また、電力変換システム1Aによれば、放電電力を走行用交流−直流変換部320に供給するよりも、走行用交流−直流変換部320における電力の損失を抑制することができ、バッテリ装置200の電力をより効率的に使用することができる。この結果、電力変換システム1Aによれば、非常時において更に長い距離を走行させることができる。
【0043】
図4は、第1の実施形態の電力変換システム1Bの一例を示す図である。電力変換システム1Bは、走行用交流−直流変換部320と走行用直流−交流変換部330とを一体化した走行用電力変換部350を備える。走行用電力変換部350は、メイントランスの走行用巻線を介して供給された高圧交流電力を、鉄道車両を走行させる走行トルクを発生する走行用モータを駆動させるための走行用電力に変換し、変換した走行用電力を走行用モータMに供給する機能を有する。電力変換システム1Bは、走行用電力変換部350の入力端に、充電回路210を介してバッテリ装置200を接続する。
【0044】
電力変換システム1Bによれば、走行用電力変換部350が一体化されても、バッテリ装置200および充電回路210を接続する電力線を走行用電力変換部350内に接続する必要がないので、走行用電力変換部350の設計変更をすることなく、非常時においてバッテリ装置200を放電させることで鉄道車両を走行させることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の電力変換システム1は、第1の走行モードと、第2の走行モードとの間で、鉄道車両の走行モードを切り替える点で、第1の実施形態とは異なる。以下、この点を中心に説明する。なお、第2の実施形態の説明は、
図1に示した電力変換システム1に適用した場合を説明するものとする。
【0046】
電力変換システム1は、集電装置400から交流電力が供給されている通常時において、通常走行モードで鉄道車両を走行させる。通常走行モードは、第1の走行モードの一例である。通常走行モードにおいて、走行電力制御部340は、所定の周波数(キャリア周波数ともいう)のキャリア信号に基づいて走行用直流−交流変換部330におけるスイッチング素子を駆動させることで走行用モータMに走行トルクを発生させる。
【0047】
電力変換システム1は、集電装置400から交流電力が供給されていない非常時において、非常走行モードで鉄道車両を走行させる。非常走行モードは、通常走行モードよりも電力の損失を抑制する走行モードであって、第2の走行モードの一例である。非常走行モードにおいて、走行電力制御部340は、所定の周波数(キャリア周波数ともいう)よりも低い周波数のキャリア信号に基づいて走行用直流−交流変換部330におけるスイッチング素子を駆動させることで走行用モータMに走行トルクを発生させる。
【0048】
図5は、第2の実施形態において走行モードを切り替える流れの一例を示すフローチャートである。走行電力制御部340は、通常時において、通常走行モードで鉄道車両を走行させる(ステップS100)。このとき、走行電力制御部340は、所定の周波数のキャリア信号および変調信号に従ってPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことで、走行用直流−交流変換部330におけるスイッチング素子をオンオフ制御する。
図6は、通常時および非常時におけるキャリア信号、変調波、およびPWM信号の一例を示す図である。走行電力制御部340は、(A1)に示す所定の周波数の通常時のキャリア信号および変調信号に基づいて、(B1)に示すPWM信号を生成する。走行電力制御部340は、PWM信号に従って走行用直流−交流変換部330におけるスイッチング素子をオンオフ制御することで、走行用モータMに走行用交流電力を供給する。
【0049】
次に、電力変換システム1は、架線電力が異常停止したか否かを判定する(ステップS102)。電力変換システム1は、マスターコントローラにおける操作部が操作された場合に、架線電力が異常停止したと判定してよいが、これに限定されない。電力変換システム1は、走行用電力変換装置300に設けたセンサ(不図示)またはメイントランスに印加される電圧を検出する電圧センサ(不図示)により架線電力の電圧が仕様範囲より低下した範囲にある場合に異常を判定してよい。
【0050】
電力変換システム1は、架線電力が異常停止した場合、非常用としての充電回路210を導通状態に切り替える(ステップS104)。これにより、バッテリ装置200の放電電力が充電回路210を介して走行用交流−直流変換部320に供給される。
【0051】
走行電力制御部340は、非常走行モードで鉄道車両を走行させる(ステップS106)。このとき、走行電力制御部340は、通常時のキャリア信号よりも低い周波数の非常時のキャリア信号および変調信号に従ってPWM制御を行うことで、走行用直流−交流変換部330におけるスイッチング素子をオンオフ制御する。走行電力制御部340は、(A2)に示す非常時のキャリア信号および変調信号に基づいて、(B2)に示すPWM信号を生成する。走行電力制御部340は、PWM信号に従って走行用直流−交流変換部330におけるスイッチング素子をオンオフ制御することで、走行用モータMに走行用交流電力を供給する。
【0052】
通常走行モードは、
図6における(A1)および(B1)に示すように、時刻T1からT2において5回立ち上がりおよび立ち下がるPWM信号によって走行用直流−交流変換部330を制御したのに対し、非常走行モードは、
図6における(A2)および(B2)に示すように、時刻T1からT2において2回立ち上がりおよび立ち下がるPWM信号によって走行用直流−交流変換部330を制御することができる。
【0053】
以上説明したように、第2の実施形態の電力変換システム1によれば、非常時に、通常走行モードにおけるキャリア信号の周波数よりも低いキャリア信号に基づいて走行用モータMを駆動するので、非常時における走行用直流−交流変換部330の電力損失を抑制することができる。この結果、第2の実施形態の電力変換システム1によれば、効率よくバッテリ装置200の放電電力を使用することができるので、非常時における鉄道車両の走行距離を長くすることができる。
【0054】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、架線からメイントランスの負荷用巻線を介して供給された低圧交流電力を直流電力に変換する負荷用交流−直流変換部110と、交流負荷L
ACを駆動させるための負荷用交流電力に変換する交流負荷用直流−交流変換部120と、直流負荷L
DCを駆動させるための負荷用直流電力に変換する直流負荷用直流−交流変換部160と直流負荷用交流−直流変換部170を有する補助電源用電力変換装置100と、負荷用交流−直流変換部110における直流電力の出力端と交流負荷用直流−交流変換部120および直流負荷用直流−交流変換部160における直流電力の入力端とを接続する電力線に接続されたバッテリ装置200であって、メイントランスの負荷用巻線から負荷用交流−直流変換部110に供給される電力が低下した場合に、電力の低下に対応した電力を放電することでバッテリ装置200から交流負荷用直流−交流変換部120に放電電力を供給するバッテリ装置200を持つことにより、電気車の負荷に供給される電力の低下を抑制することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。