(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の医療用管状体では、マーカーの視認性の更なる向上や、カテーテル内への挿入性、カテーテル内での摺動性などの性能を向上させるには、それぞれの構成上の特徴に応じた限界がある。マーカーの視認性を向上させるためにマーカーを単純に大型化したりマーカー数を増やしたりする方法は、カテーテル内への管状体の挿入や、カテーテル内での管状体の摺動に対して障害となる。管状体を縮径するときにマーカーが管状体の一部をなす支柱であるストラット、または隣接するマーカーと接触してしまい、縮径時でも管状体の外径を十分小さくできないからである。
本発明は、X線透視下での視認性、カテーテル内への挿入性、カテーテル内での摺動性に優れ、縮径状態でマーカーと管状体または隣接するマーカーどうしの接触を抑制でき、一層小さく縮径することのできる医療用管状体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するためにマーカーの様々な形状等について詳細な検討を行なった。本発明者は検討の中で、医療用管状体を縮径したときに、管状体内部に残される空間を利用できないものかと考え、この内部空間にマーカーを配置することにより本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち上記課題を解決し得た本発明の医療用管状体は、拡径可能な管状体と、前記管状体の内側に形成されたマーカーとを有するものである。本発明の医療用管状体のマーカーは拡径可能な管状体の内側に形成されているため、管状体の径が収縮する際に、管状体の内側の空隙が有効利用されてマーカーが空隙内に納まっていく。そのため、マーカーどうし、あるいは、マーカーと管状体とが互いに接触することがなくなるか、接触したとしても接触の程度は従来よりも軽減される。その結果、管状体の収縮時の径を従来よりも小さくすることができる。
【0011】
上記医療用管状体において、前記マーカーが前記管状体の内側面に固定されている態様が好ましい。マーカーが、例えば管状体の外側面など、内側面以外にも形成されていると、医療用管状体の外形を十分小さくすることができないためである。
【0012】
上記医療用管状体において、前記マーカーは、前記管状体の一部を構成する非変形部に形成されていることが好ましい。管状体のうち、管状体の拡径あるいは縮径により変形を伴う部位にマーカーが形成される場合には、管状体の変形に伴い管状体からマーカーが外れてしまう恐れがある。一方、拡径あるいは縮径によっても変形を伴わない部位(すなわち、非変形部)にマーカーを形成することにより、マーカーの脱落リスクを低減した医療用管状体を提供することができる。
【0013】
上記医療用管状体において、前記マーカーは、前記管状体の内側面の平面部に形成されていることが好ましい。管状体の内側面を平面とした場合には、管状体の内側面とマーカーとの接触面積を増やしやすいため、管状体とマーカーをより強固に固定することができる。
【0014】
上記医療用管状体において、前記マーカーは、前記管状体の内側面に溶接されていることが好ましい。マーカーの脱落リスクを低減した医療用管状体を提供することができる。
【0015】
上記医療用管状体において、前記マーカーは、前記管状体の縮径時の内側空隙に収容される大きさである。マーカーの大きさが、管状体の縮径時の内側空隙に収容できるものであれば、マーカーと管状体とが接触することはないため、医療用管状体の外形を十分小さくすることができる。
【0016】
上記医療用管状体において、前記マーカーを少なくとも2つ有しており、前記マーカーは、前記管状体の縮径時に前記マーカーどうしが互いに接触しない大きさを有していることが好ましい。マーカーどうしが接触しなければ、医療用管状体の外形を十分小さくすることができる。
【0017】
上記医療用管状体において、前記2つのマーカーが、前記管状体の軸方向の異なる位置に形成される構成とすることが望ましい。1つのマーカーが管状体の内側に納められる構成であったとしても、管状体内側の同じ空隙の中に2つのマーカーが存在する場合は、マーカーの大きさによってはマーカーどうしが接触する場合がある。そのため、2つのマーカーを、管状体の軸方向の異なる位置に形成することによりマーカーどうしの接触を回避することができ、医療用管状体の外形を十分小さくすることができる。
【0018】
上記医療用管状体において、前記管状体は長さの異なる複数の支柱を含んでおり、各支柱の端部に前記マーカーが形成されている構成とすることが好ましい。異なる長さの支柱を用いれば、管状体の軸方向の異なる位置にマーカーを形成することが容易になる。
【0019】
上記医療用管状体の縮径時において、前記マーカーの一方端は前記管状体との間に空隙を形成している態様を好ましく実施できる。管状体は設計通りに縮径するとは限らないため、多少の空隙を残しておくことは、管状体の小径化にとって有利に働く場合がある。
【0020】
上記医療用管状体において、前記マーカーは、前記管状体の径方向の長さよりも、軸方向の長さのほうが長い態様とすることができる。本発明の医療用管状体は、管状体の内側空隙を利用してマーカーを配するものであるが、管状体の内側空隙にも当然ながら限度があるため、管状体の軸方向に長く形成することによりマーカー容積を増大させることができる。
【0021】
上記医療用管状体が、自己拡張型であることが好ましい。本発明の医療用管状体は、マーカーが管状体の内側に向かって突起した形状であるので、どちらかといえばバルーン型の医療用管状体よりも自己拡張型の医療用管状体が好ましく用いられる。
【0022】
上記医療用管状体において、前記管状体は網目構造を有しており、該網目構造は、螺旋方向に連続したセルの組み合わせにより構成されていることが好ましい。
【0023】
上記医療用管状体において、前記マーカーは、柱状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の医療用管状体は、拡径可能な管状体と、前記管状体の内側に形成されたマーカーとを有するものであるため、マーカーどうし、あるいは、マーカーと管状体とが互いに接触することがなくなるか、接触したとしても接触の程度は従来よりも軽減される。その結果、管状体の収縮時の径を従来よりも小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1にかかる医療用管状体の展開図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる医療用管状体の端部拡大図である。
【
図3】
図3(a)は、実施の形態1にかかる医療用管状体(拡径時)を軸方向から見た図であり、
図3(b)は、実施の形態1にかかる医療用管状体(縮径時)を軸方向から見た図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態2にかかる医療用管状体の展開図である。
【
図5】
図5(a)は、実施の形態2にかかる医療用管状体(拡径時)を軸方向から見た図であり、
図5(b)は、実施の形態2にかかる医療用管状体(縮径時)を軸方向から見た図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態3にかかる医療用管状体の展開図である。
【
図7】
図7(a)は、実施の形態3にかかる医療用管状体(拡径時)を軸方向から見た図であり、
図7(b)は、実施の形態3にかかる医療用管状体(縮径時)を軸方向から見た図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態4にかかる医療用管状体の展開図である。
【
図9】
図9(a)は、実施の形態4にかかる医療用管状体(拡径時)の端部斜視図であり、
図9(b)は、実施の形態4にかかる医療用管状体(拡径時)を軸方向から見た図である。
【
図10】
図10(a)は、実施の形態4にかかる医療用管状体(縮径時)の端部斜視図であり、
図10(b)は、実施の形態4にかかる医療用管状体(縮径時)を軸方向から見た図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態5にかかる医療用管状体の展開図である。
【
図12】
図12(a)は、実施の形態5にかかる医療用管状体(拡径時)の端部斜視図であり、
図12(b)は、実施の形態5にかかる医療用管状体(拡径時)を軸方向から見た図である。
【
図13】
図13(a)は、実施の形態5にかかる医療用管状体(縮径時)の端部斜視図であり、
図13(b)は、実施の形態5にかかる医療用管状体(縮径時)を軸方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の医療用管状体は、拡径可能な管状体と、管状体の内側に形成されたマーカーとを有するものである。本発明の医療用管状体のマーカーは拡径可能な管状体の内側(すなわち、管状体の半径方向の内方)に形成されているため、管状体の径を収縮させても、マーカーが管状体内部の空隙に納まる。そのため、マーカーどうし、あるいは、マーカーと管状体とが互いに接触することがなくなるか、接触したとしても接触の程度は従来よりも軽減される。なお、本明細書においては、医療用管状体からマーカーを除いた構成を「管状体」と呼ぶこととする。
【0027】
(1)医療用管状体の用途
医療用管状体は、生体内管腔内で用いられるものであり、例えば生体内管腔の病変部に留置して生体内管腔の径を維持ないし拡張するためのステントや、生体内管腔に形成された血栓を除去するための血栓回収デバイス、あるいは末梢保護フィルターなどの末梢保護デバイス等が挙げられる。
【0028】
(2)医療用管状体の分類
医療用管状体には、例えば、(i)1本の線状の金属もしくは高分子材料からなるコイル状のタイプ、(ii)金属チューブをレーザーなどで切り抜き加工したタイプ、(iii)線状の部位を溶接し組み立てたタイプ、(iv)複数の線状金属を織って作ったタイプ等がある。
【0029】
医療用管状体は、病変部まで搬送(デリバリー)するために医療用管状体を設置する部位を有するカテーテル(デリバリーシステム:搬送装置)等に取り付けて用いられている。医療用管状体は、拡張機構の観点から、(i)バルーン外表面上に医療用管状体を装着(マウント)して病変部まで搬送し、病変部でバルーンによって医療用管状体を拡張するバルーン拡張型と、(ii)拡張を抑制する部材を有するカテーテルで病変部に搬送し、病変部で拡張を抑制する部材を取り外すことにより自ら拡張する自己拡張型とに分類することができる。
【0030】
医療用管状体は、バルーンやカテーテル等からなるデリバリーシステム内に設置された状態においては、管状体の長手方向軸に直交する方向(すなわち、管状体の半径方向)には縮小し、長手軸方向には伸びることにより、拡張状態よりも細長い円筒状の形態である縮径状態となる。自己拡張型では内部にバルーンを設けなくても良いことから、バルーン拡張型に比べて縮径状態の径を小さくすることができる。
【0031】
(3)管状体
管状体は、例えばメッシュなどの網目構造で構成されている拡径可能な構造体である。本発明において拡径可能とは、管状体の長軸に垂直な方向(径方向)に伸張することができ、径が伸張された状態からは逆に収縮(縮径)することもできることを意味する。管状体は、例えば周方向および軸方向に伸縮する、相互に連結している構造要素のパターンから形成される。本発明において管状体は、任意のパターンに適用可能であり、したがって、いかなる特定のステントの形状あるいは構造要素のパターンにも限定されない。
【0032】
(4)マーカー
医療用管状体をひとたび体内に入れると、その位置を目視で確認することはできない。そのため、X線透視下において医療用管状体を観察できるよう、X線不透過材料を含むマーカーが医療用管状体の所定位置に設けられる。マーカーは、X線を完全に遮断するものでなくてもよく、X線透視下においてマーカーの存在が検知できる程度のX線透過率を有していればよい。
【0033】
本願は、2013年4月16日に出願された日本国特許出願第2013−86133号に基づく優先権の利益を主張するものである。上記日本国特許出願第2013−86133号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【0034】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1にかかる医療用管状体について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる医療用管状体の展開図である。医療用管状体100は、遠位端101、近位端102を有し、遠位端101と近位端102の間には金属メッシュ部111を有している。金属メッシュ部111は、連続したセル112の組み合わせにより構成されている。金属メッシュ部111は、長手方向を中心軸として管状に曲げられ、金属メッシュ部111の2つの長辺どうしが接合されることにより管状体として構成される。これについては、
図9(a)、
図12(a)が参考となる。
【0035】
本発明の実施の形態1にかかる医療用管状体100は、例えば遠位端101あるいは近位端102のマーカーハウジングと、マーカーハウジングに固定されたマーカー121〜124を有している。このマーカーハウジングについては、医療用管状体100のマーカー121付近の拡大図を用いて以下に説明する。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる医療用管状体100のマーカー121付近の拡大図である。
図2において、遠位端101に形成されたマーカーハウジング131の内側面(すなわち、管状体の内側面)にはマーカー121が固定されている。
【0037】
金属メッシュ部111に使用される材料としては、拡径、縮径などの変形時や留置時の強度的な負荷に耐えうる材料であれば特に限定されるものではないが、医療用ステンレスである316Lステンレス、タンタル、Co−Cr(コバルトクロム)合金、Ni−Ti(ニッケル−チタン)合金等を好ましく用いることができる。特に、形状記憶特性や弾性特性を有し、加工性にも優れる点でニッケル−チタン合金が好ましく用いることができる。また、ニッケル−チタン合金の中でも、特に約50質量%〜約60質量%のニッケルを含む合金を好ましく用いることができる。
【0038】
金属メッシュ部111は、生分解性のポリマーまたは金属などの生分解性材料を含んでよい。あるいは、生分解性材料は、少なくとも2種類の生分解性のポリマーおよび/または金属の複合物であってもよい。
【0039】
金属メッシュ部111の作製方法としては、レーザー加工法、放電加工法、機械的な切削加工方法、エッチング方法などを好適に用いることができる。なお、本発明では、チューブ状物をセル112のパターンにカットして管状体を作製し、その後、管状体を拡径させた状態で形状記憶させ、管状体の内側からマーカー121等を取り付ける態様も好ましく実施することができる。
【0040】
マーカーハウジング131の材料には、強度や耐腐食性の点で金属メッシュ部111と同一の材料を用い、金属メッシュ部111と一体構造を形成していることが好ましい。
【0041】
マーカーハウジング131は、マーカー121を取り付けるための半径方向内側面を有している。なお本発明においてマーカーハウジング131は、マーカー121の取り付ける土台となる形状と大きさを有していればよい。マーカーハウジング131は、マーカー121の取り付け土台として形状が安定していることが望ましいため、管状体の伸縮動作によっては変形を起こさない非変形(非可動)の部位であることが望ましい。
【0042】
図3(a)は、実施の形態1にかかる医療用管状体(拡径時)100の遠位端101を軸方向から見た図であり、
図3(b)は、実施の形態1にかかる医療用管状体(縮径時)の遠位端101を軸方向から見た図である。
図3(a)(b)からわかるように、マーカー121〜124は、医療用管状体100を構成する管状体の内側に形成されているために、医療用管状体100の縮径時であっても、管状体の内側の空隙が有効利用されてマーカーが空隙内に納まっている。そのため、マーカーどうし、あるいは、マーカーと管状体とが互いに接触することがなくなるか、接触したとしても接触の程度は従来よりも軽減される。その結果、管状体の収縮時の径を従来よりも小さくすることができる。
【0043】
マーカーどうしだけではなく、マーカーハウジングどうしも、互いに接触しないことが好ましい。すなわち、マーカーハウジング131〜134の大きさは、医療用管状体100の縮径時に互いに接触しないことにより、医療用管状体100の縮径を阻害しない範囲であることが望ましい。マーカーハウジング131〜134は、医療用管状体100の長手方向軸に垂直な方向の断面形状が、例えば、円形、長円形、楕円形、正方形、長方形、斜方形とすることができる。
【0044】
マーカー121を構成する材料としては、医療用管状体100の構成材料よりも高いX線不透過性を有する材料であれば特に限定されない。生体への影響、または、マーカーハウジング131への取り付け時に変形しにくい等加工性の点で、金属材料であることが好ましい。特に人体に対して良好な生物学的適合性に優れている点で、白金、パラジウム、タンタルであることが好ましい。特に、マーカーハウジングの材料としてニッケル−チタン合金が用いられている場合は、電気化学的電位の差が小さく、腐食しにくい点でタンタルであることが好ましい。
【0045】
マーカー121〜124をそれぞれマーカーハウジング131〜134に取り付ける方法としては、医療用管状体100の搬送時や、病変部における留置操作時に脱落することがない方法であれば特に限定されない。その方法としては、例えば、溶接、ロウ付けやカシメ等が挙げられるが、中でも溶接によって取り付けられていることが好ましい。溶接の場合はマーカーハウジングやマーカー材とは異なる材料(ロウなど)を用いないからである。一方、ロウ付けの場合はマーカーハウジングやマーカー材と異なる材料を用いることになり、カシメの場合はマーカーハウジングの半径方向外側面の平滑性が得られ難くなる。マーカーを溶接により取り付ける場合、
図2に示したマーカーハウジングの内側面141は平坦であることが望ましく、また溶接スポットの直径分の直線長さが必要である点から、長円形や正方形、長方形であることが好ましい。
【0046】
溶接スポットの直径は、X線透視像に悪影響を及ぼさない観点から、マーカーの固定面の短辺の80%以下の長さであることが好ましく、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下とする。一方、マーカーの取り付け強度を保つ観点から、溶接スポットの直径は、マーカーの固定面の短辺の20%以上の長さであることが好ましく、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上とする。溶接スポットの直径は、具体的には、好ましくは40μm〜100μm程度、より好ましくは50μm〜90μm程度である。
【0047】
管状体の大きさは特に限定されないが、実施の形態1において、管状体の外径は、縮径時に例えば0.36〜0.46mm、拡径時に例えば4.0〜4.5mm程度である。また、マーカーの軸方向の長さは例えば1.0〜5.0mm、管状体の径方向におけるマーカーの長さは例えば0.20〜0.35mm程度である。
【0048】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2にかかる医療用管状体について、図面を用いて説明する。
図4は、本発明の実施の形態2にかかる医療用管状体の展開図である。医療用管状体100は、遠位端101、近位端102を有し、遠位端101と近位端102の間には金属メッシュ部111を有している。本発明の実施の形態2にかかる医療用管状体100は、基本的には、本発明の実施の形態1にかかる医療用管状体100と同様の構成を有しているため、同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0049】
本発明の実施の形態2にかかる医療用管状体100が実施の形態1にかかる医療用管状体100と異なる点は、実施の形態1では、マーカー121〜124が管状体の軸方向の同じ位置に形成されているのに対して、実施の形態2では、少なくとも2つのマーカー121とマーカー122が管状体の軸方向の異なる位置に形成されている点である。2つのマーカーを管状体の軸方向の異なる位置に形成させるための具体的態様は様々存在するが、
図4に示すように金属メッシュ部111とマーカーハウジング131(マーカー121の裏側であるため図示せず)とを繋ぐ支柱151と支柱152の長さを異ならせる方法がある。
【0050】
図5(a)は、実施の形態2にかかる医療用管状体(拡径時)100の遠位端101を軸方向から見た図であり、
図5(b)は、実施の形態2にかかる医療用管状体(縮径時)の遠位端101を軸方向から見た図である。
図5(a)(b)からわかるように、実施の形態1にかかる医療用管状体100と同様の効果、すなわち、マーカー121,122が管状体の内側に形成されているために、管状体の縮径時であっても、管状体の内側の空隙が有効利用されてマーカーが空隙内に納まり、縮径時の管状体の径を従来よりも小さくできるという優れた効果を有する。
【0051】
上記のような効果に加え、
図5(b)からわかるように、医療用管状体100が2つのマーカー121とマーカー122を有する場合であっても、マーカー121とマーカー122が管状体の軸方向の異なる位置にそれぞれ形成されているために、管状体の縮径時にマーカー121とマーカー122が干渉し合わずに管状体の内部空隙に納められる。このように、医療用管状体100が2以上のマーカーを有する場合には、各マーカーを管状体の軸方向の異なる位置にそれぞれ形成することが、医療用管状体100の縮径時の径を小さくするうえで有効な手法であることが分かる。
【0052】
なお、「管状体の軸方向の異なる位置」は、「マーカーどうしが接触しないために、管状体の軸方向において少なくとも一つのマーカーの長さ以上に離間した位置」を意味することは、当業者において容易に理解することができる。
【0053】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3にかかる医療用管状体について、図面を用いて説明する。
図6は、本発明の実施の形態3にかかる医療用管状体の展開図である。医療用管状体100は、遠位端101、近位端102を有し、遠位端101と近位端102の間には金属メッシュ部111を有している。本発明の実施の形態3にかかる医療用管状体100は、基本的には、本発明の実施の形態2にかかる医療用管状体100と同様の構成を有しているため、同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0054】
本発明の実施の形態3にかかる医療用管状体100が実施の形態2にかかる医療用管状体100と異なる点は、実施の形態2では支柱151と支柱152の長さが互いに異なり、支柱151と支柱153の長さは同一、支柱152と支柱154の長さも同一であるが、実施の形態3では支柱151〜154はそれぞれ異なる長さを有している点である。
【0055】
図7(a)は、実施の形態3にかかる医療用管状体(拡径時)100の遠位端101を軸方向から見た図であり、
図7(b)は、実施の形態3にかかる医療用管状体(縮径時)の遠位端101を軸方向から見た図である。
図7(b)からわかるように、マーカー121〜124が管状体の軸方向の異なる位置にそれぞれ形成されているために、管状体の縮径時にマーカー121〜124が互いに干渉し合わずに管状体の内部空隙に納められる。
このように、医療用管状体100が2以上のマーカーを有する場合には、各マーカーを管状体の軸方向の異なる位置にそれぞれ形成することが、医療用管状体100の縮径時の径を小さくするうえで有効な手法であることが分かる。本実施の形態は、支柱の長さの設計を変えるだけでマーカー121〜124の位置を容易に変えることができる点で有利である。
【0056】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4にかかる医療用管状体について、図面を用いて説明する。
図8は、本発明の実施の形態4にかかる医療用管状体の展開図である。医療用管状体100は、遠位端101、近位端102を有し、遠位端101と近位端102の間には金属メッシュ部111を有している。金属メッシュ部111は、螺旋方向に連続したセル112の組み合わせにより構成されている。本発明の実施の形態4にかかる医療用管状体100は、基本的には、本発明の実施の形態3にかかる医療用管状体100と同様の構成を有しているため、同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0057】
本発明の実施の形態4にかかる医療用管状体100が実施の形態3にかかる医療用管状体100と異なる点は、実施の形態3では支柱151〜154の長さをそれぞれ異ならせることにより管状体の軸方向におけるマーカー121〜124の位置を異ならせているのに対して、実施の形態4では
図8に示したようにセル112を螺旋方向に連続させて金属メッシュ部111を構成することにより、管状体の軸方向におけるマーカー121〜124の位置を異ならせている点にある。
【0058】
図9(a)は、実施の形態4にかかる医療用管状体(拡径時)の遠位端101付近の斜視図であり、(b)は、その遠位端101を軸方向から見た図である。また
図10(a)は、実施の形態4にかかる医療用管状体(縮径時)の遠位端101付近の斜視図であり、(b)は、その遠位端101を軸方向から見た図である。
【0059】
図10(a)および(b)から分かるように、マーカー121〜124が管状体の軸方向の異なる位置にそれぞれ形成されているために、管状体の縮径時にマーカー121〜124が互いに干渉し合わずに管状体の内部空隙に納められる。このように、医療用管状体100が2以上のマーカーを有する場合には、各マーカーを管状体の軸方向の異なる位置にそれぞれ形成することが、医療用管状体100の縮径時の径を小さくするうえで有効な手法であることが分かる。実施の形態3の方法では、支柱を非常に長く形成する場合に支柱が生体内管腔で変形してしまう可能性もあるが、本実施の形態では、金属メッシュ部111自体の構成により管状体の端部を斜めに構成しているため、長い支柱を用いる必要がなく管状体の端部の剛性が保たれる点で有利である。
【0060】
実施の形態4では、
図8から分かるようにマーカー121〜124は、医療用管状体100の軸方向に対して一定の角度をもって一直線上に並んでいる。
図8は展開図であるが、金属メッシュ部111を曲げて管状に形成して医療用管状体100を横から観察してもマーカー121〜124は一直線上に並んで見える。これは、管状体の端部が、円筒を斜めに切った形状(すなわち、注射針の先端のような形状)をなしているためである。管状体の径が収縮していくにつれて、マーカー121〜124が並ぶ直線と管状体の軸方向とのなす角が小さくなっていく。そして、管状体の収縮が完了すると
図10(a)に示されるように、マーカー121〜124が並ぶ直線は管状体の軸と平行になる。このようなマーカーの動きを利用すれば、マーカー121〜124が並ぶ直線と管状体の軸とがなす角度から、例えば、拡径状態、半拡径状態、縮径状態などの管状体の伸縮の度合いを知ることができる。
【0061】
なお、
図10(b)にはやや極端に表示しているが、マーカー121〜124は、マーカーハウジング131〜134に固定されている側とは反対側に多少の空隙を残しており、縮径時の管状体の軸方向に完全に一直線に並んでいなくてもよい。もちろんマーカー121〜124が完全に一直線に並んでいることは、管状体内の空隙を最大限利用して容積の大きいマーカーを配置できる点では理想的であるが、管状体は必ずしも設計通りに縮径するとは限らないため、多少のクリアランスを残しておくことは、管状体の小径化にとって有利に働く場合がある。したがって、管状体の縮径時にマーカー121〜124が一直線状に並んでいない構成を採用することも一つの好ましい態様である。
【0062】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5にかかる医療用管状体について、図面を用いて説明する。
図11は、本発明の実施の形態5にかかる医療用管状体の展開図である。
図12(a)は、実施の形態5にかかる医療用管状体(拡径時)の遠位端101付近の斜視図であり、(b)は、その遠位端101を軸方向から見た図である。また
図13(a)は、実施の形態5にかかる医療用管状体(縮径時)の遠位端101付近の斜視図であり、(b)は、その遠位端101を軸方向から見た図である。
【0063】
本発明の実施の形態5にかかる医療用管状体100は、本発明の実施の形態4にかかる医療用管状体100とほぼ同様の構成を有しているが、実施の形態4ではマーカー121〜124が円柱状に形成されているのに対して、実施の形態5ではマーカー121〜124が角柱状に形成されている点で異なるものである。マーカー121〜124が角柱状であれば、マーカーハウジング131〜134との接触面が大きいため固定強度の観点で有利である。
【0064】
以上、本発明の実施の形態にかかる医療用管状体について具体例を用いて説明したが、本発明は上記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0065】
ステントに代表される医療用管状体は、カテーテルに設置された縮径状態においては、医療用管状体の長手方向軸に直交する断面において径方向に縮小し、長手軸方向に伸び、拡張状態より細長い円柱状の形状をなしている。カテーテルの構造上、自己拡張型の医療用管状体は、バルーン拡張型に比べ縮径状態の外径はより小さくしなければならない。そのため、縮径状態で外径を小さくすることができる本発明の医療用管状体は、自己拡張型において、より好ましく用いることができる。
【0066】
また、本発明の医療用管状体は、例示したものの他、薬剤コーティングステント、生分解性ステント等の様々な医療用管状体に好適に用いることができる。