(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6736633
(24)【登録日】2020年7月17日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】シート発泡体に用いられるシートカバー用射出フック式面ファスナーユニット
(51)【国際特許分類】
A44B 18/00 20060101AFI20200728BHJP
【FI】
A44B18/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-200571(P2018-200571)
(22)【出願日】2018年10月25日
(65)【公開番号】特開2020-25843(P2020-25843A)
(43)【公開日】2020年2月20日
【審査請求日】2018年10月25日
(31)【優先権主張番号】107127906
(32)【優先日】2018年8月10日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】508332748
【氏名又は名称】台湾百和工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】鄭 誠▲うえい▼
【審査官】
長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−143231(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/016122(WO,A1)
【文献】
国際公開第2017/138535(WO,A1)
【文献】
特開2002−078512(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0189811(US,A1)
【文献】
米国特許第09138032(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面ファスナーの第一表面に形成された複数の射出フックと、前記複数の射出フックを囲む周壁と、前記面ファスナーの縦方向の両側に位置する強化エンボスとを有する長尺状の前記面ファスナーと、
前記面ファスナーの前記第一表面に位置する前記強化エンボスに貼り付けられた2本の阻隔スポンジストリップと、
前記面ファスナーにおける前記第一表面とは反対側の第二表面に固定されたベース層と、
前記面ファスナーと前記ベース層との間に設置された磁性材料層と、
を含むことを特徴とする、シート発泡体に用いられるシートカバー用射出フック式面ファスナーユニット。
【請求項2】
面ファスナーの第一表面に形成された複数の射出フックと、前記複数の射出フックを囲む周壁と、前記面ファスナーの縦方向に沿って互いに平行となるように、前記複数の射出フックの間に形成され、その高さが前記射出フックのそれよりも小さい少なくとも2本の強化リブと、を有する長尺状の前記面ファスナーと、
前記面ファスナーの前記第一表面の縦方向の両側に接着固定される2本の阻隔スポンジストリップと、
前記面ファスナーにおける前記第一表面とは反対側の第二表面に固定されたベース層と、
前記面ファスナーと前記ベース層との間に設置された磁性材料層と
を含むことを特徴とする、シート発泡体に用いられるシートカバー用射出フック式面ファスナーユニット。
【請求項3】
面ファスナーの第一表面に形成された複数の射出フックと、前記複数の射出フックを囲む周壁と、前記面ファスナーの縦方向の両側に位置する強化エンボスと、前記面ファスナーの縦方向に沿って互いに平行となるように、前記複数の射出フックの間に形成され、その高さが前記射出フックのそれよりも小さい少なくとも2本の強化リブとを有する長尺状の前記面ファスナーと、
前記面ファスナーの前記第一表面に位置する前記強化エンボスに貼り付けられた2本の阻隔スポンジストリップと、
前記面ファスナーにおける前記第一表面とは反対側の第二表面に固定されたベース層と、
前記面ファスナーと前記ベース層との間に設置された磁性材料層と、
を含むことを特徴とする、シート発泡体に用いられるシートカバー用射出フック式面ファスナーユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のシートカバー用射出フック式面ファスナーユニットにおいて、
前記ベース層はポリエステル布層又は不織布層からなることを特徴とするシート発泡体に用いられるシートカバー用射出フック式面ファスナーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体としての剛性を十分にもつ、シート発泡体に用いられるシートカバー用射出フック式面ファスナーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートの製造においては、発泡材を、設計されたモールドに注入することで、所要のシート外形を成形する。また、シート発泡体が製造されてから、他の部品と組み立て且つその外面を覆うシートカバーを固定することで完成品となる。シートカバーを車両用シートに固定するには、フックアンドループ(hook−and−loop)式の分離可能な固定係合具(例えば、ベルクロ(Velcro)(登録商標))、例えば、マジックテープ(登録商標)と呼ばされた面ファスナーが使用されている。詳細的に、このようなシートカバーの固定構造は、ストリップ状の射出フック式面ファスナーを、車両用シート発泡体内に設け、面ファスナーのフックとシートカバー上のループとの係止により固定機能を提供することで、シートカバーを車両用シート発泡体に固定する。
【0003】
通常、車両用シートの製造過程において、この種類の射出フック式面ファスナーをモールド内の所定の位置に設置しておいて、発泡材を注入することにより、射出フック式面ファスナーが発泡過程においてシート発泡体と結合するようになる。
【0004】
例えば、
図1には、本願出願人が、米国に出願した特許文献1に記載されているストリップ状の射出フック式面ファスナー30が示され、該面ファスナーは、車用発泡シート又は家具用発泡シートに用いられるものである。
図1に示されるように、該面ファスナー30は、ベース材31を含む。該ベース材31は、一般に、その繊維組織材料の隙間に発泡材を注入することにより製造される。該繊維組織材料は、例えば、不織布又は繊維布である。そして、該面ファスナー30は、前記ベース材に塗布された磁性物質層32と、前記磁性物質層32に貼り付けたファスナーテープ40とを更に有する。前記ファスナーテープ40には、フック面となるように複数のフック43が形成されている。また、前記面ファスナー30は、前記ファスナーテープ40の両側のそれぞれに沿って前記ベース材31に設けられ、その高さが前記ファスナーテープ40に設けられたフック43の高さよりも大きい2つの側壁33を更に有する。前記側壁33が、シートの発泡処理過程において、発泡物質がフック43の間に滲入するのを防止するのに用いられるものである。
【0005】
図2には、車両用シート発泡体に応用される別の公知のストリップ状の射出フック式面ファスナー50が示されている。
図2に示されるように、面ファスナー50は、ベース材51、ファスナーテープ60の他に、保護用側壁の代わりに、ファスナーテープ60上に、該ファスナーテープ60のフック63と合わせることが可能な保護層70が直接的に接着されている。これにより、シートの発泡処理過程において、発泡物質がフック63の間に滲入するのを防止することができる。
【0006】
しかし、車両用シート発泡体に応用されるこれらの公知のストリップ状の射出フック式面ファスナーは、シートカバーを車両用シートに固定することができるが、欠点も、機能上の制限も存在している。
【0007】
例えば、公知のストリップ状の射出フック式面ファスナーを、発泡用モールドのボス(特に直線状ボス)に置く作業においては、該公知の面ファスナーは、材質及び/又は構造による全体剛性の不足、柔らかすぎることなどのため、該ストリップ状の射出フック式面ファスナーを、発泡用モールドの直線状ボスに置く際、両手で行わなければならないので、面ファスナーを置く全体の作業が遅くなってしまい、その結果、シート発泡体の生産速度も落ちてしまう。
【0008】
よって、車両用シートの製造において、十分な全体剛性を有し、また湾曲しにくく、片手で発泡用モールドの直線状ボスに置くことができる面ファスナーの提供が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8,322,002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の公知の面ファスナーの欠点及び応用上の制限を解決するためになされたものであり、十分な全体剛性を有し、また湾曲しにくく、片手で発泡用モールドの直線状ボスに置くことができるシートカバー用射出フック式面ファスナーユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の第一の実施例によると、シート発泡体に用いられるシートカバー用射出フック式面ファスナーユニットにおいて、面ファスナーの第一表面に形成された複数の射出フックと、前記複数の射出フックを囲む周壁と、前記面ファスナーの縦方向の両側に位置する強化エンボスとを有する長尺状の前記射出フック式面ファスナーと、前記面ファスナーの前記第一表面に位置する前記強化エンボスに貼り付けられた2本の阻隔スポンジストリップと、前記射出フック式面ファスナーにおける前記第一表面とは反対側の第二表面に固定されたベース層と、前記面ファスナーと前記ベース層との間に設置された磁性材料層とを含む、前記面ファスナーユニットを提供する。
【0012】
本発明の第二の実施例によると、シート発泡体に用いられるシートカバー用射出フック式面ファスナーユニットにおいて、面ファスナーの第一表面に形成された複数の射出フックと、前記複数の射出フックを囲む周壁と、前記面ファスナーの縦方向に沿って互いに平行となるように、前記複数の射出フックの間に形成され、その高さが前記射出フックのそれよりも小さい少なくとも2本の強化リブと、を有する長尺状の前記面ファスナーと、前記面ファスナーの前記第一表面
の縦方向の両側に接着固定される2本の阻隔スポンジストリップと、前記面ファスナーにおける前記第一表面とは反対側の第二表面に固定されたベース層と、前記面ファスナーと前記ベース層との間に設置された磁性材料層とを含む、前記面ファスナーユニットを提供する。
【0013】
本発明の第三の実施例によると、シート発泡体に用いられるシートカバー用射出フック式面ファスナーユニットにおいて、面ファスナーの第一表面に形成された複数の射出フックと、前記複数の射出フックを囲む周壁と、前記面ファスナーの縦方向の両側に位置する強化エンボスと、前記面ファスナーの縦方向に沿って互いに平行となるように、前記複数の射出フックの間に形成され、その高さが前記射出フックのそれよりも小さい少なくとも2本の強化リブとを有する長尺状の前記面ファスナーと、前記面ファスナーの前記第一表面に位置する前記強化エンボスに貼り付けられた阻隔スポンジストリップと、前記面ファスナーにおける前記第一表面とは反対側の第二表面に固定されたベース層と、前記面ファスナーと前記ベース層との間に設置された磁性材料層とを含む、前記面ファスナーユニットを提供する。
【0014】
本発明の他の特徴及びその利点については、後述の実施例の詳細な説明から、より明確かつ具体的に理解できるだろう。
【発明の効果】
【0015】
前記のように構成された、シートカバー用射出フック式面ファスナーユニットによれば、シートカバー用射出フック式面ファスナーユニットの置く作業がより簡単、便利、且つ迅速になり、シート発泡体の生産速度が向上し、製造コストも節約できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、従来のシート発泡体に用いられるストリップ状の射出フック式面ファスナーユニットを示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、他の従来のシート発泡体に用いられるストリップ状の射出フック式面ファスナーユニットを示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一の実施例に係る射出フック式面ファスナーユニット100を示す概略分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示された射出フック式面ファスナーユニット100を示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第二の実施例に係る射出フック式面ファスナーユニット200を示す概略分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示された射出フック式面ファスナーユニット200を示す概略斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第三の実施例に係る射出フック式面ファスナーユニット300を示す概略分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示された射出フック式面ファスナーユニット300を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図3〜
図8を参照しながら、本発明のシート発泡体に用いられるストリップ状の射出フック式面ファスナーユニットについて詳細に説明する。
【0018】
図3は本発明の第一の実施例に係る射出フック式面ファスナーユニット(以下、「面ファスナーユニット」と称することもある)100を示す概略分解斜視図である。
図4は
図3に示された面ファスナーユニット100を示す概略斜視図である。
図5は本発明の第二の実施例に係る射出フック式面ファスナーユニット200を示す概略分解斜視図である。
図6は
図5に示された射出フック式面ファスナーユニット200を示す概略斜視図である。
図7は本発明の第三の実施例に係る射出フック式面ファスナーユニット300を示す概略分解斜視図である。
図8は
図7に示された射出フック式面ファスナーユニット300を示す概略斜視図である。
【0019】
図3及び
図4に示されるように、本発明の第一の実施例に係る面ファスナーユニット100は、面ファスナー110の第一表面に形成された複数の射出フック112と、前記複数の射出フック112を囲むように、これらの射出フック112の周囲に形成された周壁111と、を含む長尺状の前記面ファスナー110を有している。
【0020】
前記面ファスナー110には、その縦方向の両側に強化エンボス114が形成される。該強化エンボス114を形成することにより、前記面ファスナー110全体の剛性が高められ、湾曲しにくくなる。
【0021】
前記面ファスナーユニット100は、2本の阻隔スポンジストリップ120を更に有する。前記2本の阻隔スポンジストリップ120のそれぞれが、接着剤により前記第一表面に形成された前記強化エンボス114に接着固定される。このような前記阻隔スポンジストリップ120により、シートの発泡処理が行われる過程において、発泡物質が射出フック112の間に滲入するのを防止することができる。
【0022】
また、前記面ファスナーユニット100は、前記面ファスナー110における前記第一表面とは反対側の第二表面に超音波又は熱融着により固定されたベース層130と、前記面ファスナー110と前記ベース層130との間に設置された磁性材料層140とを更に含む。前記ベース層130は、ポリエステル布層又は不織布層から構成される。
【0023】
次に、
図5及び
図6を参照しながら、第二の実施例に係る射出フック式面ファスナーユニット200を説明する。
【0024】
図5及び
図6に示されるように、第二の実施例に係る面ファスナーユニット200は、面ファスナー210の第一表面に形成された複数の射出フック212と、前記複数の射出フック212を囲むように、これらの射出フック212の周囲に形成された周壁211と、前記面ファスナー210の縦方向に沿って互いが平行するように、前記複数の射出フック212の間に形成され、その高さが前記射出フック212の高さよりも小さい2本の強化リブ214とを含む長尺状の前記面ファスナー210を有している。該強化リブ214を形成することにより、前記面ファスナー210全体の剛性が高められ、湾曲しにくくなる。
【0025】
前記第一の実施例と同様に、本実施例の面ファスナーユニット200も2本の阻隔スポンジストリップ220を更に有する。前記2本の阻隔スポンジストリップ220のそれぞれが、接着剤により前記第一表面の縦方向の両側に接着固定される。このような前記阻隔スポンジストリップ220により、シートの発泡処理が行われる過程において、発泡物質が射出フック212の間に滲入するのを防止することができる。
【0026】
また、前記面ファスナーユニット200は、前記面ファスナー210における前記第一表面とは反対側の第二表面に超音波又は熱融着により固定されたベース層230と、前記面ファスナー210と前記ベース層230との間に設置された磁性材料層240とを更に含む。前記ベース層230は、ポリエステル布層又は不織布層から構成される。
【0027】
次に、
図7及び
図8を参照しながら、第三の実施例に係る射出フック式面ファスナーユニット300を説明する。
【0028】
図7及び
図8に示されるように、第三の実施例に係る面ファスナーユニット300は、面ファスナー310の第一表面に形成された複数の射出フック312と、前記複数の射出フック312を囲むように、これらの射出フック312の周囲に形成された周壁311と、前記面ファスナー310の縦方向に沿って互いが平行するように、前記複数の射出フック312の間に形成され、その高さが前記射出フック312の高さよりも小さい2本の強化リブ314と、前記面ファスナー310の縦方向の両側に形成された強化エンボス316と、を含む長尺状の前記面ファスナー310を有している。該強化リブ314を形成することにより、前記面ファスナー310全体の剛性が高められ、湾曲しにくくなる。そして、前記強化エンボス316により、前記面ファスナー310全体の剛性が更に高められる。
【0029】
前記第一の実施例及び第二の実施例と同様に、本実施例の面ファスナーユニット300も2本の阻隔スポンジストリップ320を更に有する。前記2本の阻隔スポンジストリップ320のそれぞれが、接着剤により前記面ファスナー310の前記第一表面の縦方向の両側に形成された強化エンボス316に接着固定される。このような前記阻隔スポンジストリップ320により、シートの発泡処理が行われる過程において、発泡物質が射出フック312の間に滲入するのを防止することができる。
【0030】
また、前記面ファスナーユニット300は、前記面ファスナー310における前記第一表面とは反対側の第二表面に超音波又は熱融着により固定されたベース層330と、前記面ファスナー310と前記ベース層330との間に設置された磁性材料層340とを更に含む。前記ベース層330は、ポリエステル布層又は不織布層から構成される。
【0031】
本発明の面ファスナーユニットによれば、前記の構成特徴を有することで、従来の面ファスナーユニットができなかった効果、即ち、シートカバー用射出フック式面ファスナーユニットの置く作業がより簡単、便利、且つ迅速になり、シート発泡体の生産速度が向上し、製造コストも節約できることを発揮することができるため、産業上の利用性を有するものである。
【0032】
そして、上記の好ましい実施例及び図面により、本発明を詳細に説明したが、本発明はこれらの実施例に制限されるものでなく、本発明の技術的特徴から逸脱しない変形、変化や改良も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
100、200、300 (シートカバー用射出フック式)面ファスナーユニット
110、210、310 面ファスナー
111、211、311 周壁
112、212、312 射出フック
114 強化エンボス
214、314 強化リブ
316 強化エンボス
120、220、320 阻隔スポンジストリップ
140、240、340 磁性材料層