(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記車両の無線通信装置が移動通信の基地局と通信する場合、次のような課題がある。高速道路などの移動経路を移動している車両と基地局との位置関係や無線通信に用いる電波の周波数などによっては、基地局から車両に直接届いた直接波と、基地局から送信され移動経路の面で反射して車両に届いた反射波とが互いに干渉し、ダウンリンク無線通信の受信レベルが低下するおそれがある。また、車両から基地局へのアップリンク無線通信においても、車両から基地局に直接届いた直接波と、車両から送信され移動経路の面で反射して基地局に届いた反射波とが互いに干渉し、受信レベルが低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両移動制御装置は、車両の移動経路上の移動を制御する車両移動制御装置であって、移動通信の基地局と無線通信する無線通信装置を有する第1車両の前記移動経路上の移動予定範囲について、前記基地局と前記第1車両との間の直接伝搬路を介した直接波と前記移動経路による反射を伴う反射伝搬路を介した反射波との干渉による受信レベル低下予測位置の有無を判定する判定部と、前記受信レベル低下予測位置があると判定した場合、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときに前記移動経路上の前記第1車両よりも前記基地局に近い位置で前記第1車両の前方又は後方を移動している第2車両が前記反射伝搬路の少なくとも一部を遮ると予測される前記第1車両と前記第2車両との間の目標位置関係を決定する車両位置決定部と、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときの前記第1車両と前記第2車両との位置関係が前記目標位置関係になるように、前記第1車両及び前記第2車両の少なくとも一方の速度を制御する制御部と、を備える。
【0007】
前記車両移動制御装置において、前記車両移動制御装置は、前記第1車両に設けられ、前記車両位置決定部は、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときに前記第2車両が前記反射伝搬路の少なくとも一部を遮ると予測される前記第2車両の反射波抑制位置範囲を決定し、前記制御部は、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときに前記第2車両が前記反射波抑制位置範囲に位置するように前記第1車両を加速又は減速するように制御してもよい。
前記車両移動制御装置において、前記車両移動制御装置は、前記第1車両に設けられ、前記車両位置決定部は、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときに前記第2車両が前記反射伝搬路の少なくとも一部を遮ると予測される前記第2車両の反射波抑制位置範囲を決定し、前記制御部は、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときに前記第2車両が前記反射波抑制位置範囲に位置するように前記第2車両に加速又は減速を要求してもよい。
前記車両移動制御装置において、前記車両移動制御装置は、前記第2車両に設けられ、前記車両位置決定部は、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときに前記第2車両が前記反射伝搬路の少なくとも一部を遮ると予測される前記第2車両の反射波抑制位置範囲を決定し、前記制御部は、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときに前記第2車両が前記反射波抑制位置範囲に位置するように前記第2車両を加速又は減速するように制御してもよい。
前記車両移動制御装置において、前記車両移動制御装置は、前記第2車両に設けられ、前記車両位置決定部は、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときに前記第2車両が前記反射伝搬路の少なくとも一部を遮ると予測される前記第2車両の反射波抑制位置範囲を決定し、前記制御部は、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときに前記第2車両が前記反射波抑制位置範囲に位置するように前記第1車両に加速又は減速を要求してもよい。
【0008】
前記車両移動制御装置において、前記車両位置決定部は、前記第2車両の反射波抑制位置範囲を、少なくとも前記第2車両の高さ寸法に基づいて算出して決定してもよい。
前記車両移動制御装置において、前記車両位置決定部は、前記第2車両の高さ寸法を含む情報を、前記第2車両から受信し、前記第2車両の反射波抑制位置範囲を、少なくとも前記第2車両の高さ寸法に基づいて算出して決定してもよい。
前記車両移動制御装置において、前記車両位置決定部は、前記第2車両を撮像装置で撮像した画像に基づいて、前記第2車両の高さ寸法を推定し、前記第2車両の反射波抑制位置範囲を、少なくとも前記第2車両の高さ寸法に基づいて算出して決定してもよい。
【0009】
前記車両移動制御装置において、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときの前記第1車両と前記第2車両との間の距離が所定の距離以下である場合に、前記第1車両及び前記第2車両の少なくとも一方を加速又は減速する制御を行ってもよい。
【0010】
本発明の他の態様に係る車両は、前記いずれかの車両移動制御装置を備える。
【0011】
本発明の更に他の態様に係るシステムは、前記いずれかの車両移動制御装置と、前記第1車両と、前記第2車両とを備える。
前記システムにおいて、前記車両移動制御装置は、前記第1車両及び前記第2車両それぞれに設けてもよい。
前記システムにおいて、前記基地局を更に含み、前記基地局は、前記基地局のアンテナのチルト角及び高度を含む情報を前記車両移動制御装置に送信してもよい。
前記システムにおいて、前記基地局を更に含み、前記基地局は、前記車両移動制御装置を備えてもよい。
前記システムにおいて、前記基地局を介して前記第1車両及び前記第2車両と通信可能なサーバを更に備え、前記サーバは、前記車両移動制御装置を備えてもよい。
【0012】
本発明の更に他の態様に係る車両移動制御方法は、車両の移動経路上の移動を制御する車両移動制御方法であって、移動通信の基地局と無線通信する無線通信装置を有する第1車両の前記移動経路上の移動予定範囲について、前記基地局と前記第1車両との間の直接伝搬路を介した直接波と前記移動経路による反射を伴う反射伝搬路を介した反射波との干渉による受信レベル低下予測位置の有無を判定することと、前記受信レベル低下予測位置があると判定した場合、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときに前記移動経路上の前記第1車両よりも前記基地局に近い位置で前記第1車両の前方又は後方を移動している第2車両が前記反射伝搬路の少なくとも一部を遮ると予測される前記第1車両と前記第2車両との間の目標位置関係を決定することと、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときの前記第1車両と前記第2車両との位置関係が前記目標位置関係になるように、前記第1車両及び前記第2車両の少なくとも一方の速度を制御することと、を含む。
【0013】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、車両の移動経路上の移動を制御する車両移動制御装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、移動通信の基地局と無線通信する無線通信装置を有する第1車両の前記移動経路上の移動予定範囲について、前記基地局と前記第1車両との間の直接伝搬路を介した直接波と前記移動経路による反射を伴う反射伝搬路を介した反射波との干渉による受信レベル低下予測位置の有無を判定するプログラムコードと、前記受信レベル低下予測位置があると判定した場合、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときに前記移動経路上の前記第1車両よりも前記基地局に近い位置で前記第1車両の前方又は後方を移動している第2車両が前記反射伝搬路の少なくとも一部を遮ると予測される前記第1車両と前記第2車両との間の目標位置関係を決定するプログラムコードと、前記第1車両が前記受信レベル低下予測位置に位置するときの前記第1車両と前記第2車両との位置関係が前記目標位置関係になるように、前記第1車両及び前記第2車両の少なくとも一方の速度を制御するプログラムコードと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、反射波防止部材やダイバーシチアンテナを設けることなく、基地局と車両との間の無線通信における直接波と移動経路による反射波との干渉による受信レベルの低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る車両と基地局との関係の一例を示す説明図である。本実施形態において、移動経路である道路90上を基地局80に近づく方向に走行している第1車両としての車両(以下「後続車両」ともいう。)10は、アンテナ12を介して移動通信の基地局80と無線通信する無線通信装置としての移動局11を有する。道路90の車両10の前方には、第2車両としての他の車両(以下「先行車両」ともいう。)20が同じ方向(基地局80に近づく方向)に走行している。
【0017】
道路90は、基地局80と車両10の移動局11との間の無線通信で基地局80のアンテナ81を見通せる見通し内の部分が多く、その路面は基地局80や移動局11からの受信電波を反射可能である。道路90は例えば高速道路である。
【0018】
車両10,20は、例えば乗用車、トラック、バスなどの自動車である。車両10,20は、隊列走行する複数の車両であってもよい。
【0019】
移動局11は、ユーザ装置(UE)、ユーザ端末、端末、端末装置、移動機等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。移動局11は、車両の中で利用者が携帯した状態で使用する装置でもよいし、車両に組み込んで設置された装置であってもよい。
【0020】
基地局80は、一つ又は複数のセル(セクタ、セクタセルとも呼ばれる。)を形成する。セルは地上又は海上に2次元的に形成してもよいし、上空から地上又は海上に向けて3次元的に形成してもよい。セルは、マクロセル、スモールセル、フェムトセル、ピコセル、大セル等であってもよい。複数のセルは、複二次元的に又は三次元的に隣り合うように分布するセルラー構造を構成してもよいし、階層的に一部又は全部が重なり合った階層セル構造を構成してもよい。基地局80は、マクロセル基地局、スモールセル基地局、フェムトセル基地局、ピコセル基地局、大セル基地局、地上等に固定設置された固定基地局、地上、海上、上空などを移動可能な移動型の基地局等であってもよい。基地局80は、eNodeB(evolved Node B:eNB)、gNodeB(gNB)、en−NodeB(en−gNB)、アクセスポイント等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。
【0021】
図2は、道路90上を移動している車両10の移動局11に到達する基地局80からの直接波310及び反射波320の一例を示す説明図である。
図2において、例えば道路90上を移動している車両10の移動局11が基地局80からのダウンリンクの無線信号を受信する場合、基地局80のアンテナ81から車両10の移動局111のアンテナ12に直接届く直接伝搬路31を介した直接波310と、基地局80のアンテナ81から送信され道路90の路面での反射を伴う反射伝搬路32を介して車両10の移動局11のアンテナ12に届く反射波320とが発生する。
【0022】
反射波320は、主に、道路90の路面上の反射ポイントP2における入射角と出射角が互いに等しい鏡面反射(正反射)によって発生する。反射波320は、道路90の路面の反射ポイントP2近傍における散乱反射を含んでもよい。
【0023】
なお、
図1,
図2及び後述の
図5〜
図9では、図示の都合上、反射伝搬路32の反射ポイントP2よりも基地局80に近い部分と道路90の路面とがなす第1角度と、反射伝搬路32の反射ポイントP2よりも基地局80から遠い部分と道路90の路面とがなす第2角度とが異なっているが、実際の第1角度と第2角度とは互いに等しい角度又はほぼ等しい角度である。
【0024】
直接波310と反射波320が車両10の移動局11のアンテナ12に届くと、車両10のアンテナ12の位置P1と基地局80のアンテナ81の位置P0との間の距離d、各アンテナ12、81の高度h
R,h
T、基地局80のアンテナ81のチルト角θ
T、無線通信に用いる電波の周波数fなどの条件によっては、移動局11のアンテナ12に到達した直接波310と反射波320とが互いに逆位相になって干渉し、移動局11でのダウンリンク無線通信の受信レベルが低下するおそれがある。また、車両10から基地局80へのアップリンク無線通信においても、車両10の移動局11のアンテナ12から基地局80のアンテナ81に直接届く直接伝搬路を介した直接波と、車両10の移動局11のアンテナ12から送信され道路90の表面での反射を伴う反射伝搬路を介して基地局80のアンテナ81に届いた反射波とが互いに逆位相になって干渉し、基地局80での受信レベルが低下するおそれがある。
【0025】
上記直接波310と反射波320との干渉による受信レベル低下を防止するために、反射波320を物理的に遮断する反射波防止板などの反射波防止部材を設置したりアンテナダイバーシチのためのアンテナの数を増やしたりすることが考えられるが、車載スペースの観点から反射波防止部材を設置することやアンテナ本数を増やすことが難しい場合がある。
【0026】
そこで、本実施形態では、道路90上で上記受信レベル低下の発生が予想される受信レベル低下予測位置(以下「受信レベル低下ポイント」という。)P1に車両10が位置するときに、その受信レベル低下の原因となる反射伝搬路32の少なくとも一部を遮ることが予測される反射波抑制位置P3〜P4の範囲(以下「反射波抑制エリア」という。)Aに先行車両20が位置するように、車両10及び先行車両20の少なくとも一方の速度を制御している。これにより、車両10が受信レベル低下ポイントP1に位置するときに、上記受信レベル低下の原因となる基地局80から車両10への反射伝搬路32の全部又は一部が先行車両20の車体によって遮られ、移動局11のアンテナ12には反射波の少なくとも一部が届かず、直接伝搬路31を介した直接波310はそのまま届くので、反射波の干渉による受信号レベルの低下を抑制することができる。しかも、車両10に反射波防止部材を設置したり移動局11のアンテナ本数を増やしたりする必要もない。
【0027】
なお、受信レベル低下ポイントP1は複数存在する場合がある。この場合、複数の受信レベル低下ポイントP1それぞれについて上記速度の制御を行う。
【0028】
図3は、本実施形態に係る車両10、20及び基地局80の主要な構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3の例は、車両10が車両移動制御装置14を備え、車両(自車両)10の速度を制御する例である。
【0029】
図3において、第1車両としての車両10は、アンテナ12を介して基地局80と無線通信可能な移動局11と、車両10を駆動する車両駆動部13と、車両10の移動を制御する車両移動制御装置14とを備えている。
【0030】
移動局11は、本実施形態の車両移動制御に用いる基地局80の情報を基地局80から受信することができる。基地局80の情報は、例えば、基地局80のアンテナ81の位置及び高度の情報、アンテナ81のチルト角(主ビームの方向と水平面とがなす角)などの指向性情報、無線通信の周波数の情報などである。基地局80の情報は、基地局80を介してサーバ、遠隔制御装置などの他装置から受信してもよい。
【0031】
車両駆動部13は、例えば、車両10を駆動するエンジン、モータなどの駆動源、駆動源の動力をタイヤ等の駆動出力部に伝える駆動伝達装置、車両10の進行方向を変える操舵装置などである。
【0032】
車両移動制御装置14は、例えば、位置情報取得部141、判定部142、車両位置決定部143と、制御部144と、先行車両測定部145とを備える。
【0033】
位置情報取得部141は、例えば、衛星測位システムの受信機の受信信号に基づいて、車両10に設けた移動局11のアンテナ12の高度を含む現在位置情報を取得する。衛星測位システムは、GPS(全地球測位システム)、GLONASS、Galileo、BDSなどのGNSS(全地球航法衛星システム)であってもよいし、特定の地域向けの準天頂衛星システム等のRNSS(地域航法衛星システム)であってもよいし、又は、それらのいずれか2以上のシステムを組み合わせたものであってもよい。
【0034】
判定部142は、車両10の道路90上の移動予定範囲について、基地局80と車両10との間の直接伝搬路を介した直接波と道路90による反射を伴う反射伝搬路を介した反射波との干渉による受信レベル低下ポイントP1の有無を判定する。この判定は、例えば、移動局11を介して基地局80から受信した基地局80の情報と、位置情報取得部141で取得した車両10のアンテナ12の現在位置情報(例えば高度、経度、緯度)と、
図2の平面大地反射モデルとに基づいて、行うことができる。
【0035】
車両位置決定部143は、受信レベル低下ポイントP1があると判定した場合、車両10が受信レベル低下ポイントP1に位置するときの先行車両20の反射波抑制エリアAを算出して決定する。先行車両20は、道路90上の車両10よりも基地局80に近い位置で車両の前方を移動している車両である。
【0036】
反射波抑制エリアAは、受信レベル低下ポイントP1に車両10が位置するときに、その受信レベル低下の原因となる反射伝搬路32の少なくとも一部を遮ると予測される反射波抑制位置P3〜P4の領域の範囲である。反射波抑制エリアAは、例えば、受信レベル低下ポイントP1の位置情報、基地局80のアンテナ81の位置情報、車両10のアンテナ12の位置情報、先行車両20の情報などに基づいて算出することができる。
【0037】
本例では車両10,20は基地局80に近づくように走行しているので、反射波抑制エリアAの基地局80に近い反射波抑制位置P3は、例えば、先行車両20の上後端部が反射伝搬路32の少なくとも一部を遮ると予測される位置である。反射波抑制エリアAの基地局80から遠い反射波抑制位置P4は、例えば、先行車両20の上先端部が反射伝搬路32の少なくとも一部を遮ると予測される位置である。
【0038】
車両10,20が基地局80から遠ざかるように走行している場合は、反射波抑制エリアAの基地局80に近い反射波抑制位置P3は、例えば、後続車両10の上後端部が反射伝搬路32の少なくとも一部を遮ると予測される位置である。基地局80から遠い反射波抑制位置P4は、例えば、後続車両10の上先端部が反射伝搬路32の少なくとも一部を遮ると予測される位置である。
【0039】
先行車両20の情報は、例えば、車両10を先行車両20との車間距離、先行車両20の最上部の高さ寸法(車高)、先行車両20の進行方向の長さ(車長)、先行車両20の車両10に対する相対速度又は絶対速度である。先行車両20の情報は、例えば先行車両測定部145で測定して取得することができる。
【0040】
なお、受信レベル低下ポイントP1の計算、受信レベル低下ポイントP1の有無の判定及び反射波抑制エリアAの計算には、基地局80と車両10、20との間の道路90の形状、高度、位置、傾き等を考慮してもよい。
【0041】
また、本例では、車両10の位置情報取得部141が反射波抑制エリアAを算出して決定しているが、サーバ、遠隔制御装置、他の車両の搭載装置等の外部装置で算出された反射波抑制エリアAを受信して決定してもよい。
【0042】
制御部144は、車両10が受信レベル低下ポイントP1に位置するときに先行車両20が反射波抑制エリアAに位置するように車両10を加速又は減速するように車両駆動部13を制御する。
【0043】
先行車両測定部145は、例えば、車両10に対する先行車両20の位置や速度を検知するセンサ、車両10の前方の画像を撮像するカメラなどの撮像装置、又は、それらの組み合わせを有する。先行車両測定部145は、車両10を先行車両20との車間距離、先行車両20の最上部の高さ寸法(車高)、先行車両20の車両10に対する相対速度又は絶対速度などを計測する。先行車両測定部145は、撮像装置で撮影した先行車両20の画像に基づいて先行車両20の車高を推定してもよい。
【0044】
更に、先行車両測定部145は、先行車両20の進行方向の長さ(車長)を計測してもよい。先行車両20の車長は、先行車両20の画像に基づいて先行車両20の車種情報を取得し、その車種情報に基づいて算出して推定してもよい。
【0045】
なお、先行車両20の高さ寸法(車高)及び長さ(車長)の少なくとも一方を測定したり画像から推定したりすることができない場合は、予め設定した値を本制御の計算に用いてもよい。例えば、先行車両20の高さ寸法(車高)として1.5m等の値を予め設定してもよい。
【0046】
基地局80は、その基地局80の情報を記憶する情報記憶部(DB)801と、基地局80の情報を車両210に送信する情報送信部802とを備える。基地局80の情報は、前述のように、例えば、基地局80のアンテナ81の位置及び高度の情報、アンテナ81のチルト角などの指向性情報、無線通信の周波数の情報などである。
【0047】
図4は、
図3の車両10が実行する車両移動制御の一例を示すフローチャートである。
図5〜
図7はそれぞれ、
図4の車両移動制御を実施しているときの車両移動の一例を示す説明図である。
【0048】
図4において、車両10の判定部142は、移動局11が接続している基地局80から、表1の基地局80の情報(無線通信の周波数、アンテナ81の高度、経度及び緯度)を受信する(S101。
図5(a)参照)。
【0050】
次に、判定部142は、車両10の道路90上の移動予定範囲について、基地局80と車両10との間の直接伝搬路31を介した直接波と道路90による反射を伴う反射伝搬路32を介した反射波との干渉による受信レベル低下ポイントP1を計算し、その有無を判定する(S102,S103。
図5(b)参照)。例えば、表2の基地局80の情報(基地局80のアンテナ81の高度及び無線通信の周波数)と車両10のアンテナの高度とに基づいて、表3に例示する受信レベル低下ポイントP1の位置(基地局80からの距離)を計算する。受信レベル低下ポイントP1が複数ある場合は、それら複数の受信レベル低下ポイントP1の位置を計算する。受信レベル低下ポイントP1の位置としては経度及び緯度を計算してもよい。また、表3に例示するように、受信レベル低下ポイントP1の位置とともに、その受信レベル低下ポイントP1に対応する反射伝搬路32における道路90上の反射ポイントP2の位置(基地局80からの距離、又は経度・緯度)を計算してもよい。
【0053】
上記ステップS103の判定で、受信レベル低下ポイントP1がない場合は、本制御を終了する。
【0054】
上記ステップS103の判定で受信レベル低下ポイントP1がある場合、位置情報取得部141は現在位置情報(例えば経度及び緯度)を取得し(S104)、車両10の車両位置決定部143は、位置情報取得部141で取得した車両10の現在位置情報(例えば経度及び緯度)に基づいて、車両10が受信レベル低下ポイントP1に近づいたか否かを判定する(S105。
図6(a)参照)。例えば、車両10の基地局からの距離を計算し、その計算結果と予め設定した閾値Dth(基地局からの距離)とを比較し、車両10の位置(基地局からの距離)Dが閾値Dthになった位置P5に到達したときに車両10が受信レベル低下ポイントP1に近づいたと判定してもよい。
【0055】
なお、車両10が受信レベル低下ポイントP1に近づいたか否かの判定は、基地局80に接続している車両10の移動局11で測定される受信強度の変化(例えば、RSRP(参照信号受信電力)の値の変化)に基づいて行ってもよい。例えば、移動局11における受信強度が急激に低下し始め所定の閾値よりも低下したときに、車両10が受信レベル低下ポイントP1に近づいたと判定してもよい。
【0056】
閾値Dthは、車両10の速度に応じて事前に設定してもよい。例えば、車両10の速度が80km/h以上100km/h未満の場合に対して、閾値Dthを300mに設定し、車両10の速度が40km/h以上80km/h未満の場合に対して、閾値Dthを100mに設定してもよい。
【0057】
車両10が受信レベル低下ポイントP1に近づいたら(S105でYES)、車両10の車両位置決定部143は、先行車両測定部145の測定結果に基づいて先行車両が存在するか否かを確認する(106,S107。
図6(b)参照)。
【0058】
上記ステップS107の判定で先行車両が存在しない場合は、本制御を終了する。
【0059】
上記ステップS107の判定で先行車両20が存在する場合、車両10は先行車両20の情報を取得する。例えば、車両10は、先行車両測定部145により、車両10と先行車両20との車間距離、先行車両20の最上部の高さ寸法(車高)及び長さ(車長)、及び、先行車両20の車両10に対する相対速度又は絶対速度を測定して取得する(S108)。
【0060】
次に、車両10の車両位置決定部143は、先行車両測定部145の測定結果に基づいて、車両10での受信レベル低下の原因となる反射伝搬路32の少なくとも一部を遮ることが予測される反射波抑制位置P3〜P4の範囲である反射波抑制エリアAを計算して決定する(S109。
図7(a)参照)。
【0061】
次に、車両10の制御部144は、車両10が受信レベル低下ポイントP1に位置すると仮定した場合に先行車両20が反射波抑制エリアA内に位置するか否かを判断する(S110)。この判断は、例えば、車両10及び先行車両20が現在の車速のままで走行したと仮定して行う。
【0062】
上記ステップS110で車両10が受信レベル低下ポイントP1に位置すると仮定したときに先行車両20が反射波抑制エリアA内に位置しないと判断した場合(S110でNO)、車両10が受信レベル低下ポイントP1に位置する所定タイミングに先行車両20が反射波抑制エリアA内に位置するように車両10を加速又は減速させるように制御する(S111)。
【0063】
例えば、
図7(b)に示すように、車両10が受信レベル低下ポイントP1に位置すると仮定したときに先行車両20が反射波抑制エリアA内に位置せず反射波抑制エリアAよりも基地局80に近いエリアに位置すると判断した場合は、上記所定タイミングに先行車両20が反射波抑制エリアA内に位置するように車両10を加速して先行車両20に接近させる制御を行う。
【0064】
一方、車両10が受信レベル低下ポイントP1に位置すると仮定したときに先行車両20が反射波抑制エリアAよりも基地局80から離れたエリア(車両10に近いエリア)に位置すると判断した場合は、上記所定タイミングに先行車両20が反射波抑制エリアA内に位置するように車両10を減速させて先行車両20から遠ざける制御を行う。
【0065】
上記ステップS110で車両10が受信レベル低下ポイントP1に位置すると仮定したときに先行車両20が反射波抑制エリアA内に位置すると判断した場合(S110でYES。
図7(c)参照)、車両10はそのままの速度で走行する。
【0066】
なお、上記ステップS110でYESの場合、その後に先行車両20の速度又は先行車両20との車間距離を定期的に検知し、先行車両20の速度又は車間距離が変化した場合に上記S108〜S111の制御を繰り返してもよい。
【0067】
以上、
図3〜
図7の例によれば、基地局80に接続している車両10が基地局80に近づくように移動している場合に、車両10が単独で自車両の速度を制御することにより、基地局80と車両10との間の無線通信における直接波と道路90の路面による反射波との干渉による受信レベルの低下を抑制することができる。
【0068】
図8は本実施形態に係る車両及び基地局の主要な構成の他の例を示す機能ブロック図である。
図8の例は、車両(自車両)10及び先行車両20がそれぞれ車両移動制御装置14を備え、車両10及び先行車両20が互いに連携して車両10及び先行車両20の少なくとも一方の速度を制御する例である。
図8の例は、複数の車両が隊列走行する場合に適する。なお、
図8において、
図3と同様な部分についての説明は省略する。
【0069】
図8において、第2車両としての先行車両20は、車両10と同様に、基地局80と無線通信可能な移動局21と、車両20を駆動する車両駆動部23と、車両20の移動を制御する車両移動制御装置24とを備えている。
【0070】
更に、車両10及び20はそれぞれ、互いに接近したときに例えばマイクロ波、ミリ波等の電波(例えばITS(Intelligent Transport Systems)やCACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)で使用されている760MHz)又は光による無線通信をするための車車間通信部146,246を備えている。
【0071】
車両10及び20は、車車間通信部146,246を介して、本例の車両移動制御に用いる受信レベル低下ポイントP1、反射波抑制エリアA、車間距離情報等を送受信して共有することができる。これらの情報は、例えば車車間通信で送受信されるCACC情報に含めてもよい。
【0072】
図8の車両10,20が連携して実行する車両移動制御の一例では、先行車両20が存在する場合、車両10は、先行車両20の情報(例えば、車両10と先行車両20との車間距離、先行車両20の道路設置面から最上部までの高さ寸法(車高)及び長さ(車長)、及び、先行車両20の速度)を、車車間通信により先行車両20から受信して取得することができる。従って、反射波抑制エリアAの計算の精度を高めることができ、上記直接波と反射波との干渉による受信レベルの低下をより確実に抑制することができる。
【0073】
また、先行車両20の情報を車両10で測定する必要がないので、反射波抑制エリアAの計算及びその後の制御の処理スピードの高めることができるので、車両10,20の速度が高速になったときに、上記直接波と反射波との干渉による受信レベルの低下を確実に抑制することができる。
【0074】
図8の車両10,20が連携して実行する車両移動制御の他の例では、車両10が受信レベル低下ポイントP1に位置すると仮定したときに先行車両20が反射波抑制エリアA内に位置しないと判断した場合(S210でNO)、車両10が受信レベル低下ポイントP1に位置する所定タイミングに先行車両20が反射波抑制エリアA内に位置するように、車両10を加速又は減速させるだけでなく、車両20を加速又は減速させるように制御する(S211)。従って、車両10,20の速度が高速になったときに、上記直接波と反射波との干渉による受信レベルの低下を更に確実に抑制することができる。
【0075】
図8の車両10,20が連携して実行する車両移動制御の更に他の例では、
図9に示すように基地局80に接続している先行車両20が当該基地局から遠ざかるように道路90を走行する場合に速やかに対応可能である。この場合、道路90上で先行車両20に搭載された移動局21の受信レベル低下の発生が予想される受信レベル低下ポイントP1に先行車両20が位置するときに、その受信レベル低下の原因となる反射伝搬路の少なくとも一部を遮ることが予測される反射波抑制エリアAに、先行車両20と基地局との間に位置する車両(後続車両)10が位置するように、車両(後続車両)10及び先行車両20の少なくとも一方の速度を制御する。
【0076】
図10は、本実施形態に係る車両及び基地局の主要な構成の更に他の例を示す機能ブロック図である。
図10の例は、基地局80、車両10及び先行車両20が互いに連携する例である。なお、
図10において、
図3及び
図8と同様な部分についての説明は省略する。
【0077】
図10において、基地局80は、情報計算部803と情報送受信部804を備える。情報送受信部804は、車両10及び先行車両20の情報を取得する。情報計算部803は、前述の受信レベル低下ポイントP1及び反射波抑制エリアAを計算する。情報送受信部804は、情報計算部803で計算した受信レベル低下ポイントP1及び反射波抑制エリアAの計算結果を車両10及び先行車両20を送信する。
【0078】
図11は、
図10の車両及び基地局が連携して実行する車両移動制御の一例を示すフローチャートである。なお、
図11において、
図4と共通する部分については、説明を省略する。
【0079】
図11において、車両10が基地局80に近づくように移動している場合、基地局80は、情報送受信部804で車両10の情報(車両10のアンテナ12の高度の情報)を車両10の移動局11を介して受信し、情報記憶部801に記憶する(S201)。
【0080】
基地局80は、情報計算部403で基地局80と車両10との間の直接伝搬路31を介した直接波と道路90による反射を伴う反射伝搬路32を介した反射波との干渉による受信レベル低下ポイントP1を計算し、情報送受信部804で受信レベル低下ポイントP1の計算結果を車両10に送信する(S202)。受信レベル低下ポイントP1は、基地局80の情報(基地局80のアンテナ81の高度及び無線通信の周波数)と、車両10から受信した車両10のアンテナ12の高度の情報とに基づいて計算する。
【0081】
図11のステップS207の判定で先行車両20が存在する場合、基地局80は、情報送受信部804で先行車両20の情報を受信する(S208)。先行車両20の情報は、例えば、車両10と先行車両20との車間距離、先行車両20の道路設置面から最上部までの高さ寸法(車高)及び長さ(車長)、及び、先行車両20の速度である。
【0082】
基地局80は、情報計算部403で車両10での受信レベル低下の原因となる反射伝搬路32の少なくとも一部を遮ることが予測される反射波抑制位置P3〜P4の範囲である反射波抑制エリアAを計算して決定し、情報送受信部804で反射波抑制エリアAの計算結果を車両10送信する(S209)。
【0083】
また、
図9に示すように先行車両20が基地局80から遠ざかるように移動している場合、
図11において、基地局80は、情報送受信部804で先行車両20の情報(アンテナ12の高度の情報)を車両20の移動局21を介して受信し、情報記憶部801に記憶する(S201)。
【0084】
基地局80は、情報計算部403で基地局80と先行車両20との間の直接伝搬路31を介した直接波と道路90による反射を伴う反射伝搬路32を介した反射波との干渉による受信レベル低下ポイントP1を計算し、情報送受信部804で受信レベル低下ポイントP1の計算結果を先行車両20に送信する(S202)。受信レベル低下ポイントP1は、基地局80の情報(基地局80のアンテナ81の高度及び無線通信の周波数)と、先行車両20から受信した車両20のアンテナ22の高度の情報とに基づいて計算する。
【0085】
図11のステップS207の判定で先行車両20と基地局80との間に車両(後続車両)10が存在する場合、基地局80は、情報送受信部804で車両10の情報を受信する(S208)。車両10の情報は、例えば、車両10と先行車両20との車間距離、車両10の道路設置面から最上部までの高さ寸法(車高)及び長さ(車長)、及び、車両10の速度である。
【0086】
基地局80は、情報計算部403で先行車両20での受信レベル低下の原因となる反射伝搬路32の少なくとも一部を遮ることが予測される反射波抑制位置P3〜P4の範囲である反射波抑制エリアAを計算して決定し、情報送受信部804で反射波抑制エリアAの計算結果を車両10送信する(S209)。
【0087】
図10及び
図11の例によれば、基地局80が、車両10、20の情報を取得して受信レベル低下ポイントP1及び反射波抑制エリアAを計算するので、車両10、20における処理の負荷を低減することができる。
【0088】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに移動通信システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0089】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、Node B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0090】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0091】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であれよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0092】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。