特許第6736637号(P6736637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6736637心臓弁置換のためのデバイス、システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6736637
(24)【登録日】2020年7月17日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】心臓弁置換のためのデバイス、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20200728BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2018-214473(P2018-214473)
(22)【出願日】2018年11月15日
(62)【分割の表示】特願2017-39225(P2017-39225)の分割
【原出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2019-22777(P2019-22777A)
(43)【公開日】2019年2月14日
【審査請求日】2018年11月15日
(31)【優先権主張番号】61/549,037
(32)【優先日】2011年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513157121
【氏名又は名称】トゥエルヴ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジョン モリス
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン ギフォード ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エル. ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジーン−ピエール ドゥーリ
(72)【発明者】
【氏名】ダリン ギッティングス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ルナ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ディーム
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス サットン
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−528117(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/072084(WO,A2)
【文献】 米国特許第05855601(US,A)
【文献】 特表2003−518984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然心臓弁の修復または置換のためのデバイスであって、前記天然心臓弁は、弁輪および前記弁輪に関連付けられた天然弁尖を有し、前記デバイスは、
流入端を有する弁支持体であって、前記弁支持体は、人工弁を支持するように構成されており、前記弁支持体は、断面形状を有する、弁支持体と、
前記弁支持体の前記流入端に近接して位置付けられた拡張可能なリング形状の保持器であって、前記保持器は、前記天然弁尖の内側または流入側において前記弁輪上の組織または前記弁輪付近の組織に係合して前記組織を密閉するように構成されている、保持器と、
前記弁支持体に結合された複数のアームであって、前記複数のアームは、前記弁輪または前記弁輪の下流の前記弁尖の内向き表面に係合するように構成されている、複数のアームと
を備え、
前記弁支持体は、前記保持器が前記組織との係合によって非円形の形状に変形されているときに前記人工弁が有能なままであるように、前記弁支持体の断面形状が実質的に円筒形のままであるように、前記保持器から機械的に分離されている、デバイス。
【請求項2】
前記保持器は、前記弁支持体の上流および半径方向外向きに延在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスは、複数の構成に移動可能であり、前記複数の構成は、第1の構成と第2の構成と第3の構成とを含み、
前記第1の構成では、前記弁支持体および前記保持器は、半径方向に収縮され、前記弁支持体は、第1の断面形状を有し、
前記第2の構成では、前記弁支持体および前記保持器は、半径方向に拡張され、前記弁支持体は、前記第1の断面形状よりも大きい第2の断面形状を有し、
前記第3の構成では、前記保持器は、前記弁輪上の組織または前記弁輪付近の組織と係合され、前記弁輪上の組織または前記弁輪付近の組織によって少なくとも部分的に変形される一方で、前記弁支持体は、前記第2の断面形状のままである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記保持器は、外周を有し、前記外周は、前記第2の構成で略円形であり、前記第3の構成で略非円形である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記弁支持体の少なくとも一部は、略円形であり、前記保持器は、前記組織に係合するときに略非円形に変形可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記弁支持体は、複数の支柱によって円周方向に接続された複数の柱を含み、前記保持器は、前記弁支持体から外向きかつ上流方向に延在する複数の弓形リブを含み、前記複数のリブは、前記弁支持体の周囲に分布している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記複数のアームは、前記弁輪または前記弁尖の表面を貫通するための1つ以上の組織係合要素を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記複数のアームは、前記弁輪または前記弁輪の下流の前記弁尖の係合によって、心房に向かう前記デバイスの移動を阻止するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記複数のアームは、患者の血管系を通した前記デバイスの送達のための内向き構成から、前記弁輪上の前記組織または前記弁輪付近の前記組織の係合のための外向き構成に移動可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
逆行血流を阻止するように前記弁支持体に結合された弁をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記拡張可能な保持器を覆う密閉膜をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
僧帽弁を処置するための人工心臓弁デバイスであって、前記僧帽弁は、弁輪および前記弁輪に関連付けられた弁尖を有し、前記人工心臓弁デバイスは、
弁を支持するように構成された弁支持体と、
前記人工心臓弁デバイスの流入端に位置付けられたリング形状の保持器であって、前記保持器は、心臓組織との流体シールを形成し、かつ、前記人工心臓弁デバイスの上流移動を阻止するように構成されている、保持器と、
前記弁支持体の下流部分に結合された複数のアームであって、前記複数のアームは、前記弁輪の下流の前記弁尖の内向き表面に係合するように構成されており、前記複数のアームは、不偏構成で前記弁支持体から外向きに付勢される、複数のアームと
を備え、
天然生体構造によって前記保持器上に及ぼされる歪曲力から前記弁支持体を機械的に分離して、これにより、前記天然生体構造によって前記保持器上に及ぼされる歪曲力によって前記保持器が非円形形状に形成されているときに、前記弁支持体を実質的に円筒形状に維持するように、前記保持器は、前記弁支持体に結合されている、人工心臓弁デバイス。
【請求項13】
前記人工心臓弁デバイスは、複数の構成に移動可能であり、前記複数の構成は、第1の構成と第2の構成と第3の構成とを含み、
前記第1の構成では、前記弁支持体および前記保持器は、半径方向に収縮され、前記弁支持体は、第1の断面形状を有し、
前記第2の構成では、前記弁支持体および前記保持器は、半径方向に拡張され、前記弁支持体は、前記第1の断面形状よりも大きい第2の断面形状を有し、
前記第3の構成では、前記保持器は、前記弁輪上の組織または前記弁輪付近の組織と係合され、前記弁輪上の組織または前記弁輪付近の組織によって少なくとも部分的に変形される一方で、前記弁支持体は、前記第2の断面形状のままである、請求項12に記載の人工心臓弁デバイス。
【請求項14】
前記第2の構成は、不偏構成である、請求項13に記載の人工心臓弁デバイス。
【請求項15】
前記弁支持体は、複数の支柱によって円周方向に接続された複数の柱を含み、前記保持器は、前記弁支持体から外向きかつ上流方向に延在する複数の弓形リブを含み、前記複数のリブは、前記弁支持体の周囲に分布している、請求項12に記載の人工心臓弁デバイス。
【請求項16】
前記複数のアームは、前記弁輪または前記弁尖を貫通するための1つ以上の組織係合要素を含む、請求項12に記載の人工心臓弁デバイス。
【請求項17】
前記複数のアームは、前記弁輪または前記弁輪の下流の前記弁尖の係合によって、心房に向かう前記人工心臓弁デバイスの移動を阻止するように構成されている、請求項12に記載の人工心臓弁デバイス。
【請求項18】
人工心臓弁デバイスであって、
人工弁を支持するように構成された拡張可能な弁支持体であって、前記弁支持体は、断面形状を有する、弁支持体と、
前記弁支持体に結合され、前記弁支持体を取り囲む拡張可能な保持器であって、前記保持器は、天然心臓弁輪または天然心臓弁尖の内側において、組織に係合して前記組織を密閉するように構成されている、保持器と、
前記弁支持体の下流部分に結合された複数のアームであって、前記複数のアームは、前記弁輪の下流の前記弁尖の内向き表面に係合するように構成されている、複数のアームと
を備え、
前記弁支持体は、前記保持器が前記組織との係合によって非円形の形状に変形されているときに前記人工弁が有能なままであるように、前記弁支持体の断面形状が実質的に円筒形のままであるように、前記保持器から機械的に分離されている、人工心臓弁デバイス。
【請求項19】
前記人工心臓弁デバイスが展開構成にあるときに、前記弁支持体の流入端は、前記保持器の一部から半径方向内向きである、請求項18に記載の人工心臓弁デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国仮特許出願第61/549,037号,出願日2011年10月19日,タイトル“SYSTEM FOR MITRAL VALVE REPLACEMENT,”に対する優先権を主張するものであり、該米国仮特許出願の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本願はまた、(1)国際特許出願PCT/US2012/043636,タイトル“PROSTHETIC HEART VALVE DEVICES AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS,”出願日2012年6月21日;(2)米国仮特許出願第61/605,699号,出願日2012年3月1日,タイトル“SYSTEM FOR MITRAL VALVE REPLACEMENT”;(3)米国仮特許出願第61,549,044号,出願日2011年10月19日,タイトル“CONFORMABLE SYSTEM FOR MITRAL VALVE REPLACEMENT”;および(4)国際特許出願第___________号,(代理人管理番号第82829−8006WO00),タイトル“PROSTHETIC HEART VALVE DEVICES, PROSTHETIC MITRAL VALVES AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS,”出願日2012年10月19日の主題の全体を参照により本明細書中に援用するものである。
【0003】
(技術分野)
本技術は、概して、人工心臓弁デバイスに関する。具体的には、いくつかの実施形態は、天然心臓弁の経皮的修復および/または置換のための人工僧帽弁およびデバイス、ならびに関連システムおよび方法を対象とする。
【背景技術】
【0004】
僧帽弁の適切な機能に影響を及ぼす症状は、例えば、僧帽弁逆流、僧帽弁逸脱、および僧帽弁狭窄を含む。僧帽弁逆流は、僧帽弁尖がピーク収縮圧力で並列に接合できず、左心室から左心房の中への血液の異常漏出をもたらす、心臓の障害である。僧帽弁尖の適正な閉鎖に影響を及ぼし得る、いくつかの構造因子がある。例えば、心臓疾患に罹患している多くの患者は、拡大した僧帽弁輪をもたらす、心筋の拡張を体験する。僧帽弁輪の拡大は、弁尖が収縮期中に接合することを困難にする。乳頭筋を僧帽弁尖の下側に接続する腱である、腱索の伸張または裂傷もまた、僧帽弁輪の適正な閉鎖に影響を及ぼし得る。断裂した腱索は、例えば、弁尖への不十分な張力により、弁尖を左心房の中へ逸脱させ得る。異常逆流もまた、例えば、虚血により、乳頭筋の機能が損なわれたときに起こり得る。左心室が収縮期中に収縮すると、罹患乳頭筋が、適正な閉鎖を達成するように十分収縮しない。
【0005】
僧帽弁逸脱、または僧帽弁尖が左心房の中まで異常に突出するとき、僧帽弁の不規則的な挙動を引き起こし、また、僧帽弁逆流にもつながり得る。僧帽弁の正常な機能はまた、拡張期の左心室の充填の障害を引き起こす、僧帽弁狭窄または僧帽弁口の狭小による影響も受け得る。
【0006】
典型的には、僧帽弁逆流の治療は、左心房の中へ戻って流れる血液の量を低減させるように、利尿剤および/または血管拡張剤の適用を伴ってきた。他の手技は、弁の修復または置換のいずれか一方のための外科的アプローチ(開胸および血管内)を伴ってきた。例えば、典型的な修復アプローチは、拡張した弁輪の部分を締めること、または切除することを伴ってきた。
【0007】
弁輪を締めることは、概して、弁輪または周辺組織に固定される、弁輪または弁輪周囲リングの埋込によって達成されてきた。他の修復手技はまた、相互と部分的に並列に弁尖を縫合すること、または締めることも伴ってきた。
【0008】
代替として、より侵襲的な手技は、機械弁または生物組織が僧帽弁の代わりに心臓に埋め込まれる、弁全体自体の置換を伴ってきた。これらは、従来、大規模な開胸術を通して行われ、したがって、非常に苦痛を伴い、有意な罹患率を有し、長い回復期間を必要とする。
【0009】
しかしながら、多くの修復および置換手技では、デバイスの耐久性、あるいは弁形成リングまたは置換弁の不適切なサイズ決定が、患者にとって付加的な問題をもたらし得る。また、修復手技の多くは、不良または不正確に配置された縫合糸が手技の成功に影響を及ぼし得る、心臓外科医の技能に大いに依存している。
【0010】
近年、大動脈弁置換への低侵襲アプローチが開発されている。事前に組み立てられた経皮的人工弁の実施例は、例えば、Medtronic/Corevalve Inc.(Irvine, CA, USA)からのCoreValve Revalving(登録商標) Systemと、Edwards Lifesciences(Irvine, CA, USA)からのEdwards−Sapien(登録商標) Valveとを含む。両方の弁システムは、三葉生体弁を収納する拡張可能なフレームを含む。フレームは、実質的に対称の円形大動脈弁に適合するように拡張させられる。これは、送達構成の拡張可能なフレームに、三葉人工弁(人工弁尖の適正な接合のためにそのような対称性を必要とする)を支持するように完璧に機能的である、大動脈弁輪における対称な円形の形状を与える。したがって、大動脈弁生体構造が実質的に均一かつ対称であるため、大動脈弁生体構造は、置換弁を収納する拡張可能なフレームに適する。一方で、僧帽弁は、略D字形であり、対称ではなく、僧帽弁の中のCoreValveおよびSapienシステムの拡張が、そのようなシステムを非機能的にすることを意味する。例えば、両方のシステムでは、フレームが、固着する(または固着するのに役立つ)とともに、形状を内側の置換弁に提供する。フレームが僧帽弁の非対称形状を成すほど十分に可撓性である場合には、取り付けられた三葉置換弁もまた、同様に成形され、弁尖が適正に接合することをほぼ不可能にし、漏出を可能にするであろう。加えて、フレームが非常に剛性であるため対称のままである場合、フレームの外径は、僧帽弁の交連を覆うことができず、同様に漏出を可能にするであろう。
【0011】
加えて、僧帽弁置換は、大動脈弁置換と比較して、独特の解剖学的障害物を提起し、経皮的僧帽弁置換を大動脈弁置換よりも有意に複雑かつ困難にする。第1に、比較的対称かつ均一な大動脈弁と異なり、僧帽弁輪は、非円形のD字形または腎臓のような形状を有し、しばしば対称性が欠けている、予測不可能な幾何学形状であり得る。そのような予測不可能性は、僧帽弁輪に一致する能力を有する人工僧帽弁を設計することを困難にする。弁尖および/または弁輪と補綴との間のぴったりした嵌合の欠如は、その間に間隙を残し、これらの間隙を通る血液の逆流を生じさせる。円筒形人工弁の配置は、例えば、天然弁の交連領域中に間隙を残し、潜在的に、これらの領域中で弁周囲漏出をもたらし得る。
【0012】
僧帽弁の大きく不規則な形状を克服しようとする現在のデバイスには、いくつかの欠点がある。第1に、デバイスの多くは、現在、弁輪および/または弁尖ならびに人工弁を支持するデバイス構造に接触する、デバイス構造間の直接構造接続を有する。いくつかのデバイスでは、人工弁を支持する同一のステント柱もまた、弁輪下組織に接触し、心臓に存在する歪曲力の多く、例えば、収縮期圧力、拡張期圧力、圧縮弁輪内力等を直接伝達し、人工弁を包囲するステント部分にフープ応力を引き起こす。大抵の心臓置換デバイスは、3つの弁尖の適正な開放および閉鎖のために人工弁の周囲で実質的に対称の円筒形支持体を必要とする、三葉弁を利用する。弁輪および/または弁尖歪曲力と人工弁との間に直接機械接続を提供するデバイスは、人工弁を包囲する対称円筒形構造を圧縮および/または歪曲させ、人工弁尖を機能不全にさせ得る。
【0013】
その不規則で予測不可能な形状に加えて、僧帽弁輪は、周辺組織からの有意量の半径方向支持が欠けている。大動脈弁は、例えば、天然構造支持を提供することによって人工弁に固着するのに役立つ、線維弾性組織によって完全に包囲される。一方で、僧帽弁は、外壁上の筋組織のみによって結合される。僧帽弁の内壁は、大動脈流出路の下部分から僧帽弁輪を分離する、薄い血管壁によって結合される。結果として、ステント補綴を拡張することによって付与される力等の僧帽弁輪への有意な半径方向力は、潜在的に致命的な結果とともに、大動脈路の下部分の虚脱につながり得る。
【0014】
左心室の腱索もまた、人工僧帽弁を展開することにおいて障害を提示し得る。これは、大動脈弁生体構造が腱索を含まないため、僧帽弁に特有である。左心室内の迷路のような腱索は、僧帽弁置換および修復において展開カテーテルをナビゲートして位置付けることをより困難にする。天然弁の心室側の人工弁または固着デバイスの展開および位置付けもまた、腱索の存在によって複雑になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
現在の手技と関連付けられる困難を考慮すると、機能不全の心臓弁を治療するための単純で効果的な低侵襲デバイスおよび方法の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本技術のいくつかの実施形態の具体的詳細が、図1−40Cを参照して以下で説明される。実施形態の多くは、人工弁デバイスを使用した天然僧帽弁の経皮的置換のためのデバイス、システム、および方法に関して以下で説明されるが、本明細書で説明されるものに加えて、他の用途および実施形態も本技術の範囲内である。加えて、本技術のいくつかの他の実施形態は、本明細書で説明されるものとは異なる構成、構成要素、または手技を有することができる。したがって、当業者であれば、本技術が、付加的な要素を伴う他の実施形態を有することができ、または本技術が、図1−40Cを参照して以下で示され、説明される特徴のうちのいくつかを伴わない他の実施形態を有することができると理解するであろう。
【0017】
この説明内の「遠位」および「近位」という用語に関して、特に指定されない限り、該用語は、オペレータおよび/または血管系または心臓内の場所を参照して、人工弁デバイスおよび/または関連送達デバイスの部分の相対位置を指すことができる。例えば、本明細書で説明される種々の人工弁デバイスを送達して位置付けるために好適な送達カテーテルを指す際に、「近位」は、デバイスのオペレータまたは血管系の中への切開により近い位置を指すことができ、「遠位」は、デバイスのオペレータからより遠位にあるか、または血管系に沿った切開からさらに遠い位置(例えば、カテーテルの端部)を指すことができる。人工心臓弁デバイスに関して、「遠位」および「近位」という用語は、血流の方向に対するデバイスの部分の場所を指すことができる。例えば、近位は、上流位置または血液流入の位置を指すことができ、遠位は、下流位置または血液流出の位置を指すことができる。参照しやすいように、本開示の全体を通して、同様または類似の構成要素または特徴を識別するために、同一の参照番号および/または文字が使用されるが、同一参照番号の使用は、部品が同一であると解釈されるべきであることを暗示しない。実際に、本明細書で説明される多くの実施例では、同一の番号が付けられた部品は、構造および/または機能が明確に異なる。本明細書で提供される見出しは、便宜のためにすぎない。
【0018】
以下の図面を参照して、本開示の多くの側面をより良く理解することができる。図面中の構成要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。代わりに、本開示の原理を明確に例証することに重点が置かれている。さらに、構成要素は、図示された構成要素が必然的に透明であることを示すためではなく、例証を明確にするためだけに、ある図中で透明として示すことができる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
弁輪および前記弁輪に連結された弁尖を有する天然心臓弁の修復または置換のためのデバイスであって、
縦軸に沿って延在する上流端および下流端を有する弁支持体であって、前記弁支持体は、外面および内面を有し、前記内面は、人工弁を支持するように構成され、前記弁支持体は、断面形状を有する、弁支持体と、
前記弁支持体の前記上流端に連結される、拡張可能な保持器であって、前記弁輪の上または付近の組織に係合するように構成される、保持器と、
を備え、前記弁支持体は、前記保持器が前記組織との係合によって非円形の形状に変形させられたときに、前記弁支持体の前記断面形状が十分安定したままであるように、前記保持器から機械的に分離される、
デバイス。
(項目2)
僧帽弁を治療するための人工心臓弁デバイスであって、
弁を支持するように構成される弁支持体と、
前記デバイスの上流端で前記弁支持体に連結される保持器であって、前記保持器は、少なくとも部分的に天然僧帽弁輪の弁輪下表面に沿って位置付け可能であり、前記保持器は、前記デバイスの上流移動を阻止するように構成される、保持器と、
を備え、前記保持器は、天然生体構造によって前記保持器に及ぼされる歪曲力から前記弁支持体を機械的に分離するよう、前記弁支持体に連結される、
デバイス。
(項目3)
僧帽弁を治療するための人工心臓弁デバイスであって、
天然僧帽弁輪において、またはその下流で心臓組織に係合するように構成される、拡張可能な保持器と、
前記拡張可能な保持器に連結され、それから下流方向に延在する、弁支持体であって、前記弁支持体は、人工弁を支持するように構成される、弁支持体と、
を備え、前記拡張可能な保持器が、前記天然僧帽弁輪の形状に一致するように構成される一方で、前記弁支持体は、実質的に不変のままである、
デバイス。
(項目4)
患者の天然心臓弁を治療するための人工心臓弁デバイスであって、
略円形の形状を有し、人工弁を支持するように構成される、弁支持体と、
前記弁支持体の上流部分に連結され、前記心臓弁の弁輪の上または下の心臓組織に係合するように構成される、変形可能な保持器と、
前記弁支持体の下流部分に連結される複数のアームであって、前記複数のアームは、天然弁尖に係合するように構成され、前記アームは、不偏構成で前記弁支持体から外向きに付勢される、複数のアームと、
を備え、前記弁支持体は、前記保持器の変形が、前記弁支持体の前記略円形の形状に実質的に影響を及ぼさないように、前記保持器から機械的に分離される、
デバイス。
(項目5)
前記保持器は、前記弁支持体の上流端の上流に位置付けられる、項目1に記載のデバイス。
(項目6)
前記保持器は、前記弁輪の内向き表面および前記弁輪の下流の前記弁尖の内向き表面から選択される、弁組織に係合するように構成される、項目1または4に記載のデバイス。
(項目7)
前記デバイスは、
前記弁支持体および前記保持器が半径方向に収縮させられる、第1の構成であって、前記弁支持体は、第1の断面形状を有する、第1の構成と、
前記弁支持体および前記保持器が半径方向に拡張させられる、第2の構成であって、前記弁支持体は、前記第1の断面形状よりも大きい第2の断面形状を有する、第2の構成と、
前記保持器が、前記弁輪の上または付近の組織と係合させられ、それによって少なくとも部分的に変形させられる一方で、前記弁支持体は、前記第2の断面形状でとどまる、第3の構成と、
を含む、複数の構成に移動可能である、
項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目8)
前記保持器は、不偏状態で前記第2の構成を成す、項目7に記載のデバイス。
(項目9)
前記保持器は、前記第2の構成から前記第3の構成へ変形可能である、項目7に記載のデバイス。
(項目10)
前記第1の構成の前記デバイスは、前記天然心臓弁に、またはその付近に位置付けられたガイドカテーテルを通した送達のために構成される、薄型外形を有する、項目7に記載のデバイス。
(項目11)
前記保持器は、前記第2の構成で第1の直径を有し、前記第1の直径は、少なくとも前記天然心臓弁の天然交連の間の距離に及ぶ、項目10に記載のデバイス。
(項目12)
前記天然心臓弁は、僧帽弁である、項目10に記載のデバイス。
(項目13)
前記保持器は、外周を有し、前記外周は、前記第2の構成で略円形であり、前記第3の構成で略非円形である、項目7に記載のデバイス。
(項目14)
前記保持器は、内周を有し、前記内周は、血液が前記弁支持体を通って流れるための通路を画定し、前記内周は、前記第3の構成で略円形である、項目7に記載のデバイス。
(項目15)
前記弁支持体は、略円形であり、前記保持器は、前記組織に係合するときに略非円形に変形可能である、項目1〜3のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目16)
前記保持器は、上流方向に前記弁支持体から外向きに延在する、複数の可撓性リブを含み、前記リブは、前記弁支持体の周囲に分布している、項目1〜3のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目17)
前記リブは、前記周囲に非対称に分布している、項目16に記載のデバイス。
(項目18)
前記リブは、前記周囲に対称に分布している、項目16に記載のデバイス。
(項目19)
前記保持器は、約2個から約30個のリブを含む、項目16に記載のデバイス。
(項目20)
前記保持器は、約6個から約20個のリブを含む、項目16に記載のデバイス。
(項目21)
前記可撓性リブは、弓形リブである、項目16に記載のデバイス。
(項目22)
前記弓形リブは、前記縦軸に向かって内向きに配向されるリブ先端を有する、項目21に記載のデバイス。
(項目23)
前記保持器は、前記天然心臓弁の前記弁輪の対応する断面寸法よりも大きい断面寸法を有する、項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目24)
前記保持器の表面上に配置され、少なくとも前記弁輪の上または付近の前記組織に対して密閉し、前記保持器と前記組織との間の血流を阻止するように構成される、密閉部材をさらに備える、項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目25)
前記密閉部材はさらに、前記弁支持体の前記内面または前記外面のうちの少なくとも1つの周囲に延在し、前記密閉部材は、前記弁支持体と前記保持器との間の空間内で血流を阻止するように構成される、項目24に記載のデバイス。
(項目26)
前記組織を穿刺するために前記密閉部材に連結される複数の穿刺要素をさらに備える、項目24に記載のデバイス。
(項目27)
前記弁支持体は、複数の支柱によって円周方向に接続される複数の柱を含み、前記保持器は、上流方向に前記弁支持体から外向きに延在する複数の弓形リブを含み、前記リブは、前記弁支持体の周囲に分布している、項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目28)
前記リブは、前記柱と一体である、項目27に記載のデバイス。
(項目29)
前記リブは、前記柱および前記支柱のうちの少なくとも1つに連結される、項目27に記載のデバイス。
(項目30)
前記個々のリブは、締結具で前記柱に連結される、項目27に記載のデバイス。
(項目31)
前記リブは、ハイポチューブで前記柱に連結される、項目27に記載のデバイス。
(項目32)
前記リブは、前記柱に溶接または接着される、項目27に記載のデバイス。
(項目33)
前記保持器は、上流方向で外向きに延在する複数の可撓性リブを含み、前記複数の可撓性リブは、密閉部材によって少なくとも部分的に覆われる、項目1に記載のデバイス。
(項目34)
前記密閉部材は、ポリマー、熱可塑性ポリマー、ポリエステル、合成繊維、繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、Dacron(登録商標)、またはウシ心膜組織のうちの1つ以上を含む、項目33に記載のデバイス。
(項目35)
前記密閉部材は、前記密閉部材の中への組織内方成長を推進する、項目33に記載のデバイス。
(項目36)
前記保持器の外面の周囲に配置される密閉部材をさらに備え、前記密閉部材は、前記組織に対して密閉し、前記保持器と前記組織との間の血流を阻止するように構成される、項目1に記載のデバイス。
(項目37)
前記保持器は、前記デバイスの上部分の周囲で円周方向に位置付けられる、複数の可撓性C字形リブを含み、前記保持器は、前記弁支持体の前記上流端に連結されるドーナツ型のフランジである、項目1に記載のデバイス。
(項目38)
前記C字形リブは、不偏状態で第1の曲率半径を有し、前記C字形リブが第2の曲率半径を有するように、前記C字形リブは、展開状態で変形させられるように構成され、前記第2の曲率半径は、前記第1の曲率半径よりも小さいか、または大きい、項目37に記載のデバイス。
(項目39)
前記複数のC字形リブのうちのいずれか1つの変形は、前記弁支持体を実質的に変形させない、項目37に記載のデバイス。
(項目40)
前記保持器は、前記弁支持体の周囲で円周方向に位置付けられる複数の可撓性リブを含み、
各個別リブは、複数のリブセグメントを含み、
各リブセグメントは、別のリブセグメントとは異なる特性を有し、前記特性は、形状、長さ、外形、可撓性、および前記縦軸に対する配向から選択される、
項目1に記載のデバイス。
(項目41)
各リブセグメントは、直線状、曲線状、コイル状、または傾斜のうちの1つから選択される、セグメント形状を有する、項目40に記載のデバイス。
(項目42)
前記保持器は、上流方向に前記弁支持体から外向きに延在する複数の可撓性リブを含み、各個別リブは、別のリブとは異なる特性を有し、前記特性は、形状、高さ、軸方向強度、可撓性、および前記縦軸に対する配向から選択される、項目1に記載のデバイス。
(項目43)
前記保持器は、上流方向に前記弁支持体から外向きに延在する複数の可撓性リブを含み、前記リブは、リブ先端を含み、前記リブ先端は、フック、鉤、または非外傷性表面を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目44)
前記保持器は、上流方向に前記弁支持体から外向きに延在する複数の曲線状リブを含み、1つ以上のリブは、展開構成で、略円形の形状から略非円形の形状に前記保持器の形状を修正するように変形させられる、項目1に記載のデバイス。
(項目45)
前記保持器は、前記弁支持体の周囲に分布している複数の可撓性リブを含み、1つ以上のリブは、前記展開構成で屈曲または回転する、項目1に記載のデバイス。
(項目46)
前記保持器は、前記弁支持体の周囲に分布している複数の可撓性リブを含み、前記複数の可撓性リブのそれぞれは、前記弁支持体の中に載置された弁に対する収縮期血圧の力の下で、前記弁輪に対する前記デバイスの移動を阻止するのに十分なカラム強度を有する、項目1に記載のデバイス。
(項目47)
前記保持器は、前記弁支持体の周囲に分布している複数の可撓性リブを含み、前記可撓性リブは、前記天然心臓弁を有する心臓の中で生成される拡張期および収縮期歪曲力を吸収するように構成される、項目1に記載のデバイス。
(項目48)
前記保持器は、自己拡張式である、項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目49)
前記保持器は、ニチノールを含む、項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目50)
前記弁輪の上または付近の前記組織は、内径および前記内径に対して略直角の外径を有する、略非円形の形状を有し、
前記保持器が、周囲外径および前記周囲外径に対して直角の周囲内径を有する外周囲を有する一方で、前記保持器は、前記弁輪の上または付近の前記組織と係合させられ、それによって少なくとも部分的に変形させられ、
前記周囲外径は、前記外径よりも大きく、
前記周囲内径は、前記内径よりも大きい、
項目1に記載のデバイス。
(項目51)
前記保持器が、前記内径よりも大きい直径を有する、外周を有する一方で、前記保持器は、拡張および不偏構成にある、項目50に記載のデバイス。
(項目52)
前記保持器は、拡張構成に向かって付勢され、前記保持器が、前記弁輪の上または付近の前記組織と係合させられ、それによって少なくとも部分的に変形させられたときに、前記保持器は、前記組織に対して軸力を及ぼす、項目50に記載のデバイス。
(項目53)
前記デバイスは、弁輪上組織または前記弁輪の上流の組織に係合しない、項目1に記載のデバイス。
(項目54)
前記弁支持体は、複数の支柱によって円周方向に接続される複数の柱を含み、前記柱および支柱は、山形構成で形成される、項目1に記載のデバイス。
(項目55)
前記保持器および前記弁支持体のうちの少なくとも1つは、ニチノールメッシュを備える、項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目56)
前記保持器および前記弁支持体のうちの少なくとも1つは、形状記憶材料を含む、項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目57)
前記弁支持体は、複数の支柱によって円周方向に接続される複数の柱を含み、
前記保持器は、前記柱に連結される複数の可撓性リブを含み、
前記柱は、前記リブよりも剛性である、
項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目58)
前記弁支持体の前記下流端で前記柱に連結される接続リングをさらに備える、項目57に記載のデバイス。
(項目59)
円周方向支持を前記保持器に提供するために前記複数の可撓性リブに係合する、支持リングをさらに備える、項目57に記載のデバイス。
(項目60)
前記保持器または前記弁支持体のうちの少なくとも1つの上に複数の組織係合要素をさらに備え、前記組織係合要素は、前記弁輪の上または付近の組織に係合するように構成される、項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目61)
前記組織係合要素は、鉤、フック、またはスパイクのうちの1つである、項目60に記載のデバイス。
(項目62)
前記保持器は、前記弁支持体の前記上流端に連結される拡張可能なメッシュを含み、前記拡張可能なメッシュは、裏返って、前記弁支持体の第2の断面寸法よりも大きい第1の断面寸法を有する前記保持器を形成するように構成される、項目1に記載のデバイス。
(項目63)
前記保持器は、前記弁支持体の前記上流端に連結される拡張可能なメッシュを含み、前記拡張可能なメッシュは、丸まって、前記弁支持体の第2の断面寸法よりも大きい第1の断面寸法を有する前記保持器を形成するように構成される、項目1に記載のデバイス。
(項目64)
上流方向、下流方向、または横方向への前記デバイスの移動を阻止する、1つ以上の安定化部材をさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目65)
前記弁支持体に連結され、アームと前記外面との間に前記弁尖を受容するように構成される、複数のアームをさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目66)
前記アームは、前記弁輪の弁輪下表面に係合する、項目65に記載のデバイス。
(項目67)
前記弁支持体に連結され、前記弁輪の下流の前記弁尖の内向き表面に係合するように構成される、複数のアームをさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目68)
前記アームは、前記弁尖の前記内向き表面を貫通するための1つ以上の組織係合要素を含む、項目67に記載のデバイス。
(項目69)
前記複数のアームは、前記弁輪または前記弁輪の下流の前記弁尖の係合によって、心房に向かった前記デバイスの移動を阻止するように構成される、項目65または67に記載のデバイス。
(項目70)
前記複数のアームは、患者の血管系を通した前記デバイスの送達のための内向き構成から、前記弁輪の上または付近の前記組織の係合のための外向き構成に移動可能である、項目65または67に記載のデバイス。
(項目71)
前記アームは、前記保持器に係合するためのアーム拡張部を含む、項目65に記載のデバイス。
(項目72)
前記アームは、前記弁支持体と一体的に形成される、項目65に記載のデバイス。
(項目73)
1つ以上のアームは、1つ以上の横方向に配向したアーム支柱と接続される、項目65に記載のデバイス。
(項目74)
前記デバイスの下流移動が、弁輪上表面または心房組織との心房保持器の係合によって遮断されるように、前記弁輪の前記弁輪上表面または前記心房組織に係合するように構成される前記心房保持器をさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目75)
逆行血流を阻止するように前記弁支持体に連結される弁をさらに備える、項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目76)
前記弁は、三葉弁である、項目75に記載のデバイス。
(項目77)
前記弁は、二葉弁である、項目75に記載のデバイス。
(項目78)
前記弁は、ウシ心膜を備える、項目75に記載のデバイス。
(項目79)
複数の交連付着構造が、前記弁を前記弁支持体の前記内面に連結する、項目75に記載のデバイス。
(項目80)
前記弁支持体に連結される一時弁をさらに備え、前記弁支持体はさらに、前記デバイスが前記天然心臓弁に埋め込まれた後に置換弁を受容するように構成される、項目1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目81)
前記一時弁は、前記置換弁が前記弁支持体の中に受容されたときに、前記弁支持体の前記内面に対して変位させられるように適合される、項目80に記載のデバイス。
(項目82)
前記一時弁は、除去可能な弁を備え、前記置換弁は、前記一時弁が除去された後に前記弁支持体内に固定される、項目80に記載のデバイス。
(項目83)
前記保持器から前記天然僧帽弁輪の少なくとも部分的に上流の位置まで延在する、心房拡張部材をさらに備える、項目2または3に記載のデバイス。
(項目84)
弁輪および複数の弁尖を有する天然心臓弁の置換のための方法であって、
折り畳み構成で前記弁尖の間に人工装具を位置付けるステップと、
前記人工装具の保持器が前記弁輪の上または下の組織に係合する弁輪下位置にあるように、前記人工装具が拡張することを可能にするステップであって、前記保持器は、前記弁輪下位置で、前記弁輪の対応する直径よりも大きい直径を有する、ステップと、
弁支持体が拡張することを可能にするステップであって、前記弁支持体は、前記弁支持体の上流端で前記保持器に連結される、ステップと、
を含み、前記弁支持体は、前記組織に係合するときの前記保持器の変形が、前記弁支持体を実質的に変形させないように、前記保持器から機械的に分離される、
方法。
(項目85)
前記人工装具は、項目1〜83のいずれか1項に記載のデバイスを備える、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記弁尖の間に前記人工装具を位置付ける前に、カテーテルによって前記デバイスを送達するステップをさらに含む、項目84に記載の方法。
(項目87)
拡張構成で前記デバイスを暴露するように、前記カテーテル上のシースを後退させ、前記保持器の前記上流部分が前記組織に係合するように、上流方向に前記デバイスを移動させるステップをさらに含む、項目86に記載の方法。
(項目88)
右心房からの経中隔アプローチ、左心室切開または穿孔を介した経心尖アプローチ、または大動脈を通した経大動脈アプローチのうちの1つ以上によって、送達構成で前記デバイスを保持するように構成される前記カテーテルをナビゲートするステップをさらに含む、項目86に記載の方法。
(項目89)
患者の僧帽弁であって、弁輪および弁尖を有する僧帽弁を治療する方法であって、
前記弁輪内に、またはそれに隣接してデバイスを埋め込むステップを含み、前記デバイスは、弁支持体と、前記弁支持体の上流端に連結される変形可能な保持器とを備え、少なくとも前記保持器は、前記弁尖の間に配置され、前記保持器は、前記弁輪の上または付近の組織に係合して、上流方向への前記デバイスの移動を防止するように構成され、
前記弁支持体は、前記保持器が前記組織との係合によって変形させられた場合に、前記弁支持体の断面形状が実質的に変化しないように、前記保持器から機械的に分離される、
方法。
(項目90)
前記デバイスを埋め込むステップは、
前記デバイスが送達構成にあるときに、前記弁尖の間および前記弁輪の下流に前記デバイスを位置付けるステップと、
前記保持器が前記弁尖の間に延在する状態で、前記送達構成から拡張構成へ前記デバイスを拡張するステップと、
前記弁輪の上または下流の前記組織を前記保持器と係合させるように、上流方向に前記デバイスを移動させるステップと、
を含む、項目89に記載の方法。
(項目91)
前記保持器が前記弁輪の上または下流の前記組織に係合した後に、前記弁支持体を半径方向に拡張するステップをさらに含む、項目89に記載の方法。
(項目92)
前記デバイスは、項目1〜83のいずれか1項に記載のデバイスである、項目89に記載の方法。
(項目93)
前記僧帽弁に埋め込む前にカテーテルによって前記デバイスを送達するステップをさらに含む、項目89に記載の方法。
(項目94)
拡張構成で前記デバイスを暴露するように、前記カテーテル上のシースを後退させ、前記保持器が弁輪下組織に係合するように、上流方向に前記デバイスを移動させるステップをさらに含む、項目93に記載の方法。
(項目95)
右心房からの経中隔アプローチ、左心室切開または穿孔を介した経心尖アプローチ、または大動脈を通した経大動脈アプローチのうちの1つ以上によって、送達構成で前記デバイスを保持するように構成されるカテーテルをナビゲートするステップをさらに含む、項目89に記載の方法。
(項目96)
前記弁支持体に連結された1つ以上の安定化部材を天然組織と係合させるステップをさらに含む、項目89に記載の方法。
(項目97)
弁輪を有する患者の僧帽弁を治療するシステムであって、
項目1〜83のいずれか1項に記載のデバイスを備える、デバイスと、
その中に前記デバイスを保持するように構成される管腔を有する、カテーテルと、
を備える、システム。
(項目98)
前記僧帽弁に前記デバイスを配置した後に前記デバイスに連結するように構成される、置換弁をさらに備える、項目97に記載のシステム。
(項目99)
前記置換弁に連結される送達カテーテルをさらに備える、項目98に記載のシステム。
(項目100)
前記カテーテルは、前記デバイスの複数部分を半径方向に拡張するように構成される、拡張可能な部材を備える、項目99に記載のシステム。
(項目101)
前記カテーテルは、格納式シースを備え、前記デバイスは、前記シース内に含有され、前記デバイスは、前記シースが後退させられたときに自己拡張するように構成される、項目99に記載のシステム。
(項目102)
前記カテーテルは、ガイドワイヤを摺動可能に受容するように適合されるガイドワイヤ管腔を備え、前記ガイドワイヤ管腔は、それを通して前記ガイドワイヤが摺動可能に挿入され得る、近位および遠位ポートを有する、項目99に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1および2は、本技術の実施形態による、種々の人工心臓弁デバイスによる置換に好適な天然弁構造を有する、哺乳類の心臓の概略図である。
図2図1および2は、本技術の実施形態による、種々の人工心臓弁デバイスによる置換に好適な天然弁構造を有する、哺乳類の心臓の概略図である。
図3図3は、弁輪および弁尖を示す、天然僧帽弁の概略断面側面図である。
図4A図4Aは、本技術の実施形態による、種々の人工心臓弁デバイスとの組み合わせに好適である、i)僧帽弁内の逸脱弁尖、またはii)損なわれた乳頭筋を有する心臓の左心室内の僧帽弁逆流のいずれか一方を有する、心臓の左心室の概略図である。
図4B図4Bは、本技術の実施形態による、種々の人工心臓弁デバイスとの組み合わせに好適である、心筋症に罹患している患者の心臓の概略図である。
図5A図5Aは、天然僧帽弁尖の正常な閉鎖を示す、心臓の天然僧帽弁の概略図である。
図5B図5Bは、本技術の実施形態による、種々の人工心臓弁デバイスとの組み合わせに好適である、拡張した心臓内の天然僧帽弁尖の異常閉鎖を示す、心臓の天然僧帽弁の概略図である。
図5C図5Cは、本技術の実施形態による、種々の人工心臓弁デバイスとの組み合わせに好適である、弁輪の寸法を示す、心臓の僧帽弁の概略図である。
図6A図6Aは、本技術の種々の実施形態による、静脈血管系からの天然僧帽弁への順行性アプローチを示す、心臓の概略断面図である。
図6B図6Bは、本技術の種々の実施形態による、ガイドワイヤ上のガイドカテーテルの配置によって維持された心房中隔(IAS)を通したアクセスを示す、心臓の概略断面図である。
図7図7および8は、本技術の種々の実施形態による、大動脈弁および動脈血管系を通した天然僧帽弁への逆行性アプローチを示す、心臓の概略断面図である。
図8図7および8は、本技術の種々の実施形態による、大動脈弁および動脈血管系を通した天然僧帽弁への逆行性アプローチを示す、心臓の概略断面図である。
図9図9は、本技術の種々の実施形態による、経心尖穿孔を使用した天然僧帽弁へのアプローチを示す、心臓の概略断面図である。
図10A図10Aは、本技術の実施形態による、人工心臓弁デバイスの等角図を示す。
図10B図10Bは、本技術の実施形態による、天然僧帽弁に埋め込まれた図10Aの人工心臓弁デバイスを示す、心臓の切断図を図示する。
図10C図10C−10Dは、それぞれ、本技術の実施形態による、人工心臓弁デバイスの側面図および上面図である。
図10D図10C−10Dは、それぞれ、本技術の実施形態による、人工心臓弁デバイスの側面図および上面図である。
図11図11は、本技術の実施形態による、その中に載置された人工弁を伴う弁支持体の等角図である。
図12図12A−12Hは、本技術の付加的な実施形態による、弁支持体を保持器に連結する種々の機構の側面図である。
図13-1】図13A−13Gは、本技術の付加的な実施形態による、種々の可撓性リブ構成の部分側面図である。
図13-2】図13A−13Gは、本技術の付加的な実施形態による、種々の可撓性リブ構成の部分側面図である。
図14図14A−14Jは、本技術のさらなる実施形態による、歪曲力に応答して屈曲する種々の可撓性リブの側面図である。
図15図15A−15Eは、本技術のさらなる実施形態による、種々のリブ構成を示す、人工心臓弁デバイスの概略上面図である。
図16図16A−16Bは、本技術による、保持器の付加的な実施形態を示す、人工心臓弁デバイスの概略側面図および断面図である。
図17A図17Aは、長軸および短軸を図示する、天然僧帽弁の概略上面図である。
図17B図17B−17Cは、本技術の実施形態による、それぞれ、拡張構成および展開構成の保持器の概略上面図である。
図17C図17B−17Cは、本技術の実施形態による、それぞれ、拡張構成および展開構成の保持器の概略上面図である。
図18図18は、本技術のさらなる実施形態による、拡張構成で示された人工心臓弁デバイスの側面図である。
図19図19は、本技術の実施形態による、接続リングを有する人工心臓弁デバイスの等角図である。
図20図20A−20Bは、本技術の付加的な実施形態による、保持器支持リング、および保持器支持リングを有する人工心臓弁デバイスの等角図である。
図21図21は、本技術の実施形態による、複数の安定化要素を有する、拡張構成の人工心臓弁デバイスの等角図である。
図22図22は、本技術の実施形態による、拡張したアームを有する、人工心臓弁デバイスの拡大概略側面図である。
図23図23A−23Cは、本技術のさらなる実施形態による、デバイスの縦軸に対する種々の角度でデバイスに連結されたアームを有する、人工心臓弁デバイスの拡大部分側面図である。
図24図24A−24Cは、本技術の付加的な実施形態による、デバイスに連結された種々の長さのアームを有する、人工心臓弁デバイスの拡大部分側面図である。
図25図25A−25Eは、本技術の種々の実施形態による、弁尖の内向き表面上に配置されたアームを有する、埋め込まれた人工心臓弁デバイスを伴う、心臓の断面図である。
図26図26A−26Cは、本技術による、人工心臓弁デバイスとともに使用するための組織係合要素の種々の実施形態を図示する概略図である。
図27図27A−27Cは、本技術の種々の実施形態による、弁尖の内向き表面上に係合するように構成された組織係合要素を伴うアームを有する、人工心臓弁デバイスの拡大部分側面図である。
図28A図28A−28Bは、本技術のさらなる実施形態による、デバイスが天然弁尖の外向き表面に係合するためのアームを有する、展開構成で僧帽弁MV(断面で図示される)に埋め込まれた人工心臓弁デバイスを示す、側面図である。
図28B図28A−28Bは、本技術のさらなる実施形態による、デバイスが天然弁尖の外向き表面に係合するためのアームを有する、展開構成で僧帽弁MV(断面で図示される)に埋め込まれた人工心臓弁デバイスを示す、側面図である。
図28C図28Cは、本技術の別の実施形態による、弁尖の外向き表面に係合するように構成された組織係合要素を伴うアームを有する、人工心臓弁デバイスの拡大部分側面図である。
図29A図29Aは、本技術の付加的な実施形態による、僧帽弁(断面で図示される)に埋め込まれて示された人工心臓弁デバイスであって、天然弁尖の外向き表面に係合するためのアーム、および天然弁尖の内向き表面に係合するためのアームを有する、デバイスの側面図である。
図29B図29Bは、図29Aに示されるような弁尖の内向きおよび外向き表面に係合するアームの拡大図である。
図30-1】図30Aおよび30Cは、本技術の付加的な実施形態による、保持器の外形と類似の外形を伴うアームを有する、人工心臓弁デバイスの等角図である。図30Bおよび30Dは、本技術による、僧帽弁(断面で図示される)に埋め込まれて示された、それぞれ、図30Aおよび30Cの人工心臓弁デバイスの側面図である。
図30-2】図30Aおよび30Cは、本技術の付加的な実施形態による、保持器の外形と類似の外形を伴うアームを有する、人工心臓弁デバイスの等角図である。図30Bおよび30Dは、本技術による、僧帽弁(断面で図示される)に埋め込まれて示された、それぞれ、図30Aおよび30Cの人工心臓弁デバイスの側面図である。
図31A図31Aは、本技術のさらなる実施形態による、複数の相互接続されていないアームを有する、人工心臓弁デバイスの側面図である。
図31B図32Bは、本技術のさらなる実施形態による、複数の円周方向に接続されたアームを有する、人工心臓弁デバイスの側面図である。
図32図32A−32Dは、本技術の付加的な実施形態による、アーム位置パターンの概略上面図である。
図33-1】図33A−33Eは、本技術の付加的な実施形態による、デバイスの様々な構造上に組織係合要素を有する、人工心臓弁デバイスの側面図である。
図33-2】図33E−33Gは、本技術の他の実施形態による、人工心臓弁デバイスとともに使用するために好適な組織係合要素の拡大側面図である。
図34図34A−34Bは、本技術の別の実施形態による、組織係合要素を伴って構成された密閉部材を有する、人工心臓弁デバイスの等角図および拡大詳細図である。
図35-1】図35A−35Fは、本技術の付加的な実施形態による、人工心臓弁デバイスとともに使用するために好適な組織係合要素の実施形態の拡大側面図である。
図35-2】図35A−35Fは、本技術の付加的な実施形態による、人工心臓弁デバイスとともに使用するために好適な組織係合要素の実施形態の拡大側面図である。
図36A】本技術の種々の実施形態による、心房拡張部材410を有する、人工心臓弁デバイス100の等角図である。
図36B図36B−36Cは、本技術による、デバイスに印加された捻転力を伴わない(図36B)および伴う(図36C)心房拡張部材を有する、人工心臓弁デバイスの実施形態の概略上面図である。
図36C図36B−36Cは、本技術による、デバイスに印加された捻転力を伴わない(図36B)および伴う(図36C)心房拡張部材を有する、人工心臓弁デバイスの実施形態の概略上面図である。
図37A図37Aは、本技術の実施形態による、送達システムの側面部分切断図である。
図37B図37Bは、本技術の実施形態による、送達システムの遠位端の拡大断面図である。
図37C図37C−37Dは、本技術の実施形態による、図37Bの送達システムとともに使用するために構成された弁支持体の拡大部分側面図である。
図37D図37C−37Dは、本技術の実施形態による、図37Bの送達システムとともに使用するために構成された弁支持体の拡大部分側面図である。
図38図38A−38Dは、本技術の実施形態による、僧帽弁への順行性または経中隔アプローチを示す、心臓の断面図である。
図39A図39A−39Cは、本技術の別の実施形態による、経中隔アプローチを使用して人工心臓弁デバイスを埋め込む方法を図示する、心臓の断面図である。
図39B図39A−39Cは、本技術の別の実施形態による、経中隔アプローチを使用して人工心臓弁デバイスを埋め込む方法を図示する、心臓の断面図である。
図39C図39A−39Cは、本技術の別の実施形態による、経中隔アプローチを使用して人工心臓弁デバイスを埋め込む方法を図示する、心臓の断面図である。
図40A図40A−40Cは、本技術の側面による、経心尖アプローチを使用して人工心臓弁デバイスを埋め込む方法のさらなる実施形態を図示する、心臓の断面図である。
図40B図40A−40Cは、本技術の側面による、経心尖アプローチを使用して人工心臓弁デバイスを埋め込む方法のさらなる実施形態を図示する、心臓の断面図である。
図40C図40A−40Cは、本技術の側面による、経心尖アプローチを使用して人工心臓弁デバイスを埋め込む方法のさらなる実施形態を図示する、心臓の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(概説)
システム、デバイス、および方法が、僧帽弁等の天然心臓弁の経皮的置換のために本明細書で提供される。以下に記載される詳細のうちのいくつかは、当業者がそれらを作製して使用することを可能にするように十分な様式で、以下の実施例および方法を説明するように提供される。しかしながら、以下で説明される詳細および利点のうちのいくつかは、本技術のある実施例および方法を実践するために必要ではなくてもよい。加えて、本技術は、請求項の範囲内であるが、詳細に説明されていない、他の実施例および方法を含んでもよい。
【0021】
本技術の実施形態は、僧帽弁を含む心臓弁等の身体の弁を治療するシステム、方法、および装置を提供する。本装置および方法は、静脈または動脈を通して心臓の中へ血管内送達されるカテーテルを使用する、経皮的アプローチを可能にする。加えて、本装置および方法は、心臓内の標的場所への人工置換弁の経心尖、経心房、および直接大動脈送達を含む、他の低侵襲アプローチを可能にする。本装置および方法は、人工装具が、弁輪および/または弁尖の弁輪下表面との係合によって天然弁の場所に固着されることを可能にする。加えて、本明細書で説明されるようなデバイスおよび方法の実施形態は、多くの既知の手術および手技と組み合わせることができ、例えば、順行性または逆行性アプローチ、およびそれらの組み合わせで、僧帽弁または三尖弁等の心臓の弁にアクセスする既知の方法と組み合わせることができる。
【0022】
本明細書で説明されるデバイスおよび方法は、天然生体構造によって印加される歪曲力を吸収することができる、デバイスの固着部分から人工弁を機械的に分離しながら、可変的形状の天然僧帽弁生体構造に適応および一致する可撓性を有する、弁置換デバイスを提供する。本デバイスは、経時的に心臓の動的条件に耐えるために必要な構造強度および完全性を有し、したがって、置換弁を永久的に固着し、患者が実質的に通常の生活を再開することを可能にする。本デバイスおよび方法はさらに、低侵襲的にそのようなデバイスを送達し、患者に新しい永久置換弁だけでなく、より低いリスクの手技およびより速い回復も提供する。
【0023】
本明細書で説明されるデバイスおよび方法は、同時に、経時的に心臓の動的条件に耐えるために必要な構造強度および完全性を提供し、したがって、置換弁を永久的に固着し、患者が実質的に通常の生活を再開することを可能にしながら、可変的形状の天然僧帽弁生体構造に適応および一致する可撓性を有する、弁置換デバイスを提供する。本デバイスおよび方法はさらに、低侵襲的にそのようなデバイスを送達し、患者に新しい永久置換弁だけでなく、より低いリスクの手技およびより速い回復も提供する。
【0024】
本技術の種々の実施形態によれば、天然心臓弁が、弁輪および弁輪に連結された弁尖を有する、天然心臓弁の修復または置換のためのデバイスが開示される。本デバイスは、縦軸の周囲に延在する上流端および下流端を有し、外面および内面を有する、弁支持体を含むことができる。弁支持体は、断面形状を有することができ、内面は、人工弁を支持するように構成することができる。本デバイスはまた、弁支持体の上流端に連結される、拡張可能な保持器を含むこともできる。保持器は、弁輪の上または下流の組織に係合するように構成することができる。種々の実施形態では、弁支持体は、保持器が組織との係合によって非円形の形状に変形させられたときに、弁支持体の断面形状が十分安定したままであるように、保持器から機械的に分離される。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態は、僧帽弁を治療するための人工心臓弁デバイスを対象とする。本デバイスは、弁を支持するように構成される弁支持体を含むことができる。本デバイスはまた、弁支持体に連結され、少なくとも部分的に天然僧帽弁輪の弁輪下表面に沿って位置付け可能である、保持器を含むこともできる。保持器はまた、デバイスの上流移動を阻止することもできる。保持器は、天然生体構造によって保持器に及ぼされる歪曲力から弁支持体を機械的に分離するよう、弁支持体に連結される。
【0026】
いくつかの実施形態では、本デバイスは、保持器から天然僧帽弁輪の少なくとも部分的に上流の位置まで延在する、心房拡張部材を備えてもよい。他の実施形態では、本デバイスはさらに、弁支持体から半径方向外向きに延在する複数のアームを備えてもよい。アームは、例えば、天然僧帽弁尖に係合するように構成することができる。デバイスのいくつかの実施形態はさらに、弁輪下組織に係合し、上流または下流方向へのデバイスの移動を制限するための1つ以上の安定化部材を備えてもよい。
【0027】
さらなる実施形態では、僧帽弁を治療するための人工心臓弁デバイスは、天然僧帽弁輪において、またはその下流で心臓組織に係合するように構成される、拡張可能な保持器を含むことができる。本デバイスはまた、拡張可能な保持器に連結され、それによって少なくとも部分的に包囲される弁支持体を含むこともできる。弁支持体は、一時弁または他の実施形態では永久弁構造のいずれか一方等の人工弁を支持するように構成することができる。これらの配列では、拡張可能な保持器が、天然僧帽弁輪の形状に一致するように構成される一方で、弁支持体は、実質的に不変のままである。
【0028】
その上さらなる実施形態では、患者の心臓弁を治療するための人工心臓弁デバイスは、略円形の形状を有し、人工弁を支持するように構成される、弁支持体と、弁支持体の上流部分に連結される変形可能な保持器とを含むことができる。変形可能な保持器は、心臓弁の弁輪の上または下の心臓組織に係合するように構成することができる。弁支持体は、保持器の変形が、弁支持体の略円形の形状に実質的に影響を及ぼさないように、保持器から機械的に分離することができる。本デバイスはまた、弁支持体の下流部分に連結される複数のアームを含んでもよい。アームは、複数のアームを天然弁尖に係合するように構成することができるように、不偏構成で弁支持体から外向きに付勢することができる。
【0029】
本開示はさらに、血管内または他の低侵襲形態のアクセスを使用する、人工弁および他のデバイスの送達のためのシステムを提供する。例えば、本技術の実施形態は、僧帽弁が弁輪を有する、患者の僧帽弁を治療するシステムを提供する。本システムは、本明細書で説明されるような僧帽弁を治療するデバイスと、カテーテル内でデバイスを保持するように構成される管腔を有する、カテーテルとを備える。
【0030】
さらに別の側面では、本技術の実施形態は、患者の心臓弁を治療する方法を提供する。僧帽弁は、弁輪、および弁輪に連結された弁尖を有する。本方法は、弁輪内に、またはそれに隣接して、本明細書で説明されるようなデバイスを埋め込むステップを含むことができる。本デバイスは、いくつかの実施形態では、変形可能な保持器に連結され、それによって少なくとも部分的に包囲される弁支持体を含むことができる。変形可能な保持器は、弁支持体の上流端に連結することができる。変形可能な保持器は、弁尖の間に配置し、弁輪の上または付近の組織に係合して、上流方向へのデバイスの移動を防止するように構成することができる。さらに、弁支持体は、保持器が組織との係合によって変形させられた場合に、弁支持体の断面形状が実質的に変化しないように、変形可能な保持器から機械的に分離することができる。
【0031】
その上さらなる側面では、本技術の実施形態は、弁輪および複数の弁尖を有する天然心臓弁の置換のための方法を提供する。本方法は、デバイスが折り畳み構成である間に、弁尖の間に本明細書で説明されるような人工装具を位置付けるステップを含むことができる。本方法はまた、人工装具の保持器が弁輪の上または下流の組織に係合する弁輪下位置にあるように、人工装具が拡張することを可能にするステップを含むこともできる。保持器は、弁輪下位置で、弁輪の対応する直径よりも大きい直径を有することができる。本方法はさらに、弁支持体が保持器内で拡張することを可能にするステップを含むことができ、弁支持体は、弁支持体の上流端で保持器に連結される。種々の実施形態では、弁支持体は、保持器が組織に係合するときの保持器の変形が、弁支持体を実質的に変形させないように、保持器から機械的に分離することができる。
【0032】
本明細書で説明されるデバイスおよび方法は、僧帽弁等の非円形で非対称形状の弁および二葉弁または二尖弁を治療するために構成することができる。本明細書で開示されるデバイスおよび方法の多くはさらに、心臓または天然弁が漸進的拡大または歪曲を受け得る状態でさえも、人工装具の長期的(例えば、永久的)で確実な固着を提供することができる。
【0033】
(心臓および僧帽弁生理学)
図1および2は、正常な心臓Hを示す。心臓は、肺静脈PVを介して肺から酸素を豊富に含む血液を受容し、僧帽弁MVを通して、この酸素を豊富に含む血液を左心室LVの中へ送出する、左心房を備える。収縮期の正常な心臓Hの左心室LVが、図2で図示されている。左心室LVは、収縮しており、血液は、矢印の方向へ大動脈弁AVを通って外向きに流れる。僧帽弁は、左心室内の圧力が左心房LA内の圧力よりも高いときに逆流を防止する「逆止弁」として構成されるため、僧帽弁MVを通る血液の逆の流れまたは「逆流」が防止される。
【0034】
僧帽弁MVは、図2で図示されるように、閉鎖するように均等に交わる、または「接合」する、遊離縁FEを有する一対の弁尖を備える。弁尖LFの反対端は、弁輪ANと呼ばれる組織の環状領域を介して、周辺心臓構造に付着している。図3は、僧帽弁の弁輪および弁尖の概略断面側面図である。図示されるように、弁尖LFの反対端は、弁尖組織LFならびに心臓壁の隣接筋組織の両方と明確に異なる、弁輪ANと呼ばれる密性結合組織の線維輪を介して、周辺心臓構造に付着している。弁尖LFおよび弁輪ANは、様々な強度、靱性、線維性、および可撓性を有する、異なる種類の心臓組織から成る。さらに、僧帽弁MVはまた、本明細書では弁尖/弁輪接続組織LAC(重複平行線によって示される)と呼ばれる、各弁尖LFを弁輪ANに相互接続する組織の独特な領域を備えてもよい。一般に、環状組織ANは、弁尖組織LFよりも強靱、線維性、かつ強い。
【0035】
図2を参照すると、僧帽弁尖LFの遊離縁FEは、弁尖LFのそれぞれの下面を覆って固定された複数の分岐腱を含む、腱索CT(本明細書では「腱索(chordae)」と呼ばれる)を通して、左心室LVの下部分に固定される。腱索CTは、ひいては、左心室LVおよび心室中隔IVSの下壁から上向きに延在する、乳頭筋PMに付着している。
【0036】
ここで図4A−4Bを参照すると、心臓内のいくつかの構造欠陥が、僧帽弁逆流を引き起こし得る。図4Aに示されるように、不十分な張力が腱索を介して弁尖に伝達されるため、断裂した腱索RCTが、弁尖LF2を逸脱させ得る。他の弁尖LF1が正常な外形を維持する一方で、2つの弁尖は適正に交わらず、左心室LVから左心房LAの中への漏出が、矢印によって示されるように起こるであろう。
【0037】
逆流はまた、図4Bに示されるように、心臓が拡張され、増大したサイズが、弁尖LFが適正に交わることを妨げる、心筋症に罹患している患者でも起こる。心臓の拡大は、僧帽弁輪を拡大させ、遊離縁FEが収縮期中に交わることを不可能にする。前および後尖の遊離縁は、通常、図5Aに示されるように接合線Cに沿って交わるが、図5Bに示されるように、有意な間隙Gが、心筋症に罹患している患者において残され得る。
【0038】
僧帽弁逆流はまた、図4Aで図示されるように、乳頭筋PMの機能が損なわれている、虚血性心疾患に罹患した患者でも起こり得る。左心室LVが収縮期中に収縮すると、乳頭筋PMは、適正な閉鎖を達成するように十分接触しない。次いで、弁尖LF1およびLF2の一方または両方が逸脱する。再度、漏出が左心室LVから左心房LAへ起こる。
【0039】
図5A−5Cはさらに、僧帽弁の弁尖Lの形状および相対サイズを図示する。図5Cを参照すると、全体的な弁は、長軸MVA1および短軸MVA2を伴う略「D」字形または腎臓のような形状を有することが分かり得る。健康なヒトでは、長軸MVA1は、典型的には、長さが約33.3mmから約42.5mm(37.9+/−4.6mm)の範囲内であり、短軸MVA2は、長さが約26.9から約38.1mm(32.5+/−5.6mm)の範囲内である。しかしながら、減少した心機能を有する患者では、これらの値は、より大きくあり得、例えば、MVA1は、約45mmから55mmの範囲内であり得、MVA2は、約35mmから約40mmの範囲内であり得る。接合線Cは、曲線状またはC字形であり、それにより、比較的大きい前尖ALおよび実質的により小さい後尖PLを画定する(図5A)。両方の弁尖は、前尖ALが弁の中央で後尖よりも実質的に幅広い、上または心房側から略三日月形に見える。図5Aで図示されるように、接合線Cの対向端において、弁尖は、それぞれ、前外側交連ACおよび後内側交連PCと呼ばれる角でともに接合する。
【0040】
図5Cは、僧帽弁輪の形状および寸法を示す。弁輪は、弁尖LFよりも厚くて強靱であり、心室および心房壁の筋組織とは明確に異なる線維組織から成る、弁の周囲の環状領域である。弁輪は、頂点間軸IPDに沿って位置する第1の頂点部分PP1および第2の頂点部分PP2、ならびに谷間軸IVDに沿って位置する第1の谷部分VP1および第2の谷部分VP2を伴う、鞍様形状を含んでもよい。第1および第2の頂点部分PP1およびPP2は、2つの谷部分VP1、VP2の底を含有する面に対して高度がより高く、典型的には、ヒトでは約8〜19mm高く、したがって、弁に全体的な鞍様形状を与える。頂点間範囲IPDと呼ばれる、第1および第2の頂点部分PP1、PP2の間の距離は、第1および第2の谷部分VP1、VP2の間の距離である、谷間範囲IVDよりも実質的に短い。
【0041】
当業者であれば、患者の寸法および生理学が患者間で変化し得、一部の患者が異なる生理学を含み得るが、本明細書で説明されるような教示は、僧帽弁の種々の状態、寸法、および形状を有する多くの患者によって使用するために適合できることを認識するであろう。例えば、実施形態に関する研究は、一部の患者が、境界明瞭な頂点および谷部分を伴わずに、弁輪を横断する長い寸法および弁輪を横断する短い寸法を有してもよく、それに従って、本明細書で説明されるような方法およびデバイスを構成できることを示唆する。
【0042】
(僧帽弁へのアクセス)
僧帽弁または他の房室弁へのアクセスは、経皮的に患者の血管系を通して達成することができる。経皮的とは、典型的には、例えば、Seldinger技法を通した針アクセスの使用等の外科的切開手技または低侵襲手技を使用して、心臓から遠隔にある血管系の場所が皮膚を通してアクセスされることを意味する。遠隔血管系に経皮的にアクセスする能力は、周知であり、特許および医学文献で説明されている。血管アクセスの点に応じて、僧帽弁へのアプローチは、順行性であり得、心房中隔を横断することによる左心房の中への進入に依存し得る。代替として、僧帽弁へのアプローチは、大動脈弁を通して左心室に進入する、逆行性であり得る。いったん経皮的アクセスが達成されると、介入ツールおよび支持カテーテルが、本明細書で説明されるように種々の様式で、血管内で心臓まで前進させられ、標的心臓弁に隣接して位置付けられてもよい。
【0043】
経中隔アプローチを使用して、下大静脈IVCまたは上大静脈SVCを介して、右心房RAを通り、心房中隔IASを横断して、僧帽弁MVより上側の左心房LAの中へ、アクセスが得られる。
【0044】
図6Aに示されるように、針2を有するカテーテル1が、下大静脈IVCから右心房RAの中へ前進させられてもよい。いったんカテーテル1が心房中隔IASの前側に到達すると、針2は、例えば、左心房LAの中への卵円窩FOまたは卵円孔において、中隔を貫通するように前進させられてもよい。この時点で、ガイドワイヤが針2と交換され、カテーテル1が引き出されてもよい。
【0045】
図6Bに示されるように、心房中隔IASを通したアクセスは、通常、典型的には上記で説明されるように配置されたガイドワイヤ6上のガイドカテーテル4の配置によって、維持されてもよい。ガイドカテーテル4は、本明細書でさらに詳細に説明されるように、デバイスの導入を可能にして僧帽弁を置換するように、後続のアクセスを得る。
【0046】
代替的な順行性アプローチ(図示せず)では、好ましくは肋骨を除去することなく、肋間切除を通して、外科的アクセスが得られてもよく、小さい穿孔および切開が左心房壁に加えられてもよい。次いで、ガイドカテーテルが、この穿孔および切開を通して左心房の中へ直接配置され、巾着縫合によって密閉されてもよい。
【0047】
上記で説明されるような僧帽弁への順行性または経中隔アプローチは、多くの点で有利であり得る。例えば、順行性アプローチの使用は、通常、ガイドカテーテルおよび/または人工弁デバイスのより正確かつ効果的な中心化および安定化を可能にするであろう。正確な位置付けは、人工弁デバイスの配置の精度を促進する。順行性アプローチはまた、カテーテルおよび介入ツールの導入および操作中に弁下デバイスを損傷するリスクを低減させ得る。加えて、順行性アプローチは、逆行性アプローチの場合のように大動脈弁の横断と関連付けられるリスクを減少させてもよい。これは、全く、または相当な損傷のリスクを伴わずに横断することできない、人工大動脈弁がある患者に特に関係があり得る。
【0048】
僧帽弁への逆行性アプローチの実施例が、図7および8で図示されている。僧帽弁MVは、大動脈弓AAから、大動脈弁AVを横断して、僧帽弁MVより下側の左心室LVの中へのアプローチによってアクセスされてもよい。大動脈弓AAは、従来の大腿動脈アクセス経路を通して、ならびに上腕動脈、腋窩動脈、橈骨動脈、または頸動脈を介したより直接的なアプローチを通してアクセスされてもよい。そのようなアクセスは、ガイドワイヤ6の使用により達成されてもよい。いったん定位置になると、ガイドカテーテル4は、ガイドワイヤ6上で追跡されてもよい。代替として、好ましくは、肋骨を除去することなく肋間で、大動脈自体の穿孔を通してガイドカテーテルを配置し、胸部の切開を通して、外科的アプローチがとられてもよい。ガイドカテーテル4は、本明細書でさらに詳細に説明されるように、人工弁デバイスの配置を可能にするように後続のアクセスを得る。
【0049】
いくつかの特定の場合において、僧帽弁への逆行性動脈アプローチが、ある利点により選択されてもよい。例えば、逆行性アプローチの使用は、経中隔穿孔の必要性を排除することができる。逆行性アプローチはまた、より一般的に心臓専門医によって使用されており、したがって、精通しているという利点がある。
【0050】
僧帽弁への付加的なアプローチは、図9に示されるように、経心尖穿孔を介する。このアプローチでは、心臓へのアクセスは、従来の開胸術または胸骨切開術、あるいはより小さい肋間または剣状突起下切開または穿孔であり得る、胸部切開を介して獲得される。次いで、アクセスカニューレが、心尖における、またはその付近の左心室の壁の中の、巾着縫合によって密閉される穿孔を通して配置される。次いで、本発明のカテーテルおよび人工装具は、このアクセスカニューレを通して左心室に導入されてもよい。
【0051】
経心尖アプローチは、僧帽または大動脈弁へのより短く真っ直ぐな直線経路を提供するという特徴を有する。さらに、それが血管内アクセスを伴わないため、経心尖手技は、他の経皮的アプローチで必要とされるカテーテル法を行うために介入心臓学の必要な訓練を受けていない場合がある外科医によって行うことができる。
【0052】
人工治療デバイスは、該アプローチのために特異的に設計されてもよく、またはアプローチ間で交換可能であり得る。当業者であれば、本明細書で説明される実施形態に従って、個別患者のための適切なアプローチを識別し、識別されたアプローチのための治療装置を設計することができる。
【0053】
人工弁デバイスの配向および操縦は、多くの既知のカテーテル、ツール、およびデバイスと組み合わせることができる。そのような配向は、所望の結果を達成するように、所望の場所へのデバイスの全体的な操縦、次いで、デバイス構成要素の精密な操縦によって達成されてもよい。
【0054】
全体的な操縦は、いくつかの方法によって達成されてもよい。操縦可能なガイドワイヤが、ガイドカテーテルおよび人工治療デバイスを適正な位置に導入するために使用されてもよい。ガイドカテーテルは、例えば、患者の鼠径部内の大腿動脈への外科的切開またはSeldingerアクセスを使用して導入されてもよい。ガイドワイヤを配置した後、ガイドカテーテルが、ガイドワイヤ上で所望の位置に導入されてもよい。代替として、上記で説明される他の経路を通して、より短い異なる形状のガイドカテーテルを導入することができる。
【0055】
ガイドカテーテルは、僧帽弁に対する所望の配向を提供するように事前成形されてもよい。経中隔アプローチを介したアクセスのために、ガイドカテーテルは、それを通ってガイドカテーテルが延在する中隔穿孔の場所から僧帽弁に向かって遠位端を配向するように、その先端で曲線状、傾斜、または他の好適な形状を有してもよい。図7および8に示されるような逆行性アプローチについては、ガイドカテーテル4は、大動脈弓AAを越え、大動脈弁AVを通して配置された後に、僧帽弁MVに向かって旋回するように構成される、事前成形されたJ先端を有してもよい。図7に示されるように、ガイドカテーテル4は、介入ツールまたはカテーテルの配向が僧帽弁MVの軸とより密接に整合させられるように、左心室LVの中へ下方に延在し、J字形構成を成すように構成されてもよい。いずれにしても、事前成形されたガイドカテーテルは、ガイドカテーテルの管腔を通過させられるスタイレットまたは剛性ガイドワイヤを用いて、血管内送達のために真っ直ぐにされるように構成されてもよい。ガイドカテーテルはまた、より微細な操縦調整のために、その形状を調整する引張ワイヤまたは他の手段を有する場合もある。
【0056】
(人工心臓弁デバイスおよび方法の選択された実施形態)
本明細書で説明されるような本技術の実施形態は、本明細書で説明されるように心臓の弁のうちの1つ以上を治療するために使用することができ、特定の実施形態では、僧帽弁の治療のために使用することができる。本技術の実施形態による、人工心臓弁デバイス、システム構成要素、および関連方法の実施例が、図10A−40Cを参照してこの節で説明される。図10A−40Cを参照して説明される実施形態の特定の要素、下部構造、利点、用途、および/または他の特徴は、本技術の付加的な実施形態によれば、相互と好適に入れ替え、置換し、または別様に構成できることが理解されるであろう。さらに、図10A−40Cを参照して説明される実施形態の好適な要素は、独立型および/または内蔵型デバイスとして使用することができる。
【0057】
システム、デバイス、および方法が、患者の心臓内の人工心臓弁の経皮的埋込のために本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、方法およびデバイスが、人工置換心臓弁の低侵襲埋込による、弁疾患の治療のために提示される。一実施形態では、人工置換弁は、患者の心臓内の左心房と左心室との間の僧帽弁の埋込および置換に好適な人工弁デバイスであり得る。別の実施形態では、人工弁デバイスは、患者の心臓内の別の弁(例えば、二尖または三尖弁)の埋込または置換に好適であり得る。図10Aは、本技術の実施形態による、拡張構成102の人工心臓弁デバイス100の等角図を示し、図10Bは、心臓の左心房、左心室、および天然僧帽弁を描写する心臓の断面図の概略図である。図10Bはまた、心臓の天然僧帽弁領域に埋め込まれた拡張可能な人工弁デバイス100の実施形態も示す。
【0058】
図10Aに示されるように、デバイス100は、少なくとも部分的に内側弁支持体120を包囲し、それに連結される拡張可能な保持器110を含むことができる。デバイス100はさらに、弁支持体120に連結され、その内側に載置され、または別様にそれによって担持される、人工弁130を含むことができる。図10C−10Dは、それぞれ、本技術による、人工心臓弁デバイス100の側面図および上面図である。図10Aを参照すると、デバイス100はまた、デバイス100と天然組織との間、および/または保持器110と弁支持体120との間の弁傍(例えば、補綴近傍)漏出を防止するように、保持器110の(示されるような)内面141または外面142の周囲に、および/または弁支持体120の内面126(図10Dに示される)または外面127(図10Aに示される)の周囲に延在することができる、1つ以上の密閉部材140を含むこともできる。
【0059】
人工心臓弁デバイス100は、送達構成(図示せず)、拡張構成102(図10A)、および展開構成104(図10B)の間で移動可能であり得る。送達構成では、人工心臓弁デバイス100は、本明細書で説明される経中隔、逆行性、または経心尖アプローチを介して心臓の中に位置付けられる小径ガイドカテーテルを通した送達に好適な薄型外形を有する。いくつかの実施形態では、人工心臓弁デバイス100の送達構成は、好ましくは、僧帽弁MVへの経中隔アプローチについては約8〜10mm、逆行性アプローチについては約8〜10mm、または経心尖アプローチについては約8〜12mmを超えない大きさの外形を有するであろう。本明細書で使用されるように、「拡張構成」は、拘束または歪曲力の存在がなく、非拘束サイズに自由に拡張させられたときのデバイスの構成を指す。本明細書で使用されるような「展開構成」は、いったん天然弁部位で拡張させられ、天然生体構造によって及ぼされる拘束または歪曲力を受けているデバイスを指す。
【0060】
再び図3を参照すると、本明細書で使用されるような「弁輪下」は、天然口の面POの上または下流DNに位置する僧帽弁MVの一部分を指す。本明細書で使用されるように、天然弁口の面POは、長軸MVA1または短軸MVA2のいずれか一方または両方を含有する、弁を通る血流の方向と略垂直な面である(図5C)。したがって、僧帽弁MVの弁輪下表面は、面POの心室側に位置する組織表面であり、好ましくは、左心室LVに向かって略下流に面するものである。弁輪下表面は、弁輪AN自体、または天然弁尖LFの後ろの心室壁上に配置されてもよく、あるいは、面POより下側に位置する、内向きIFまたは外向きOFのいずれか一方の天然弁尖LFの表面を備えてもよい。したがって、弁輪下表面または弁輪下組織は、弁輪AN自体、天然弁尖LF、弁尖/弁輪結合組織、心室壁、またはそれらの組み合わせを備えてもよい。
【0061】
手術中、人工心臓弁デバイス100は、送達カテーテル(図示せず)内で送達(例えば、折り畳み)構成である間に、僧帽弁MV付近の心臓内の場所等の心臓内の所望の場所に血管内送達することができる。図10Bを参照すると、デバイス100は、天然弁輪AN内、またはその下流の位置まで前進させることができ、そこでデバイス100は、拡張構成102に向かって拡大するように送達カテーテルから放出することができる(図10A)。デバイス100は、所望の場所で天然組織に係合し、デバイス100の形状を展開構成104に変形または別様に変化させるであろう(図10B)。いったんカテーテルから放出されると、デバイス100は、収縮期力に抵抗し、デバイス100の上流移動を防止するよう、拡張可能な保持器110の少なくとも一部分が天然弁の弁輪下表面に係合するように、位置付けることができる(図10B)。図10Bで図示される実施形態では、保持器110の上流周囲113は、外向きに押勢され、天然弁輪ANの下で折り畳まれる、天然弁尖LFの内向き表面IF(図3)に係合する。弁尖LFは、弁輪ANの心室側に係合し、上流方向にさらに押勢されることを妨げられ、したがって、天然弁輪の面より下側で保持器110を維持する。しかしながら、いくつかの実施形態では、保持器110のいくつかの部分は、弁輪ANより上側に延在してもよく、保持器110の少なくともいくつかの部分が、左心房LAに向かったデバイス100の移動を防止するように弁輪下の場所で組織に係合する。図10Bに示されるように、弁尖LFは、保持器110の外面142に対して並列に位置し、密閉部材140との血液密閉シールを形成することができる。
【0062】
本技術の側面によれば、拡張可能な保持器110は、展開構成104である間に、不規則な形状の僧帽弁輪ANに一致し、デバイスを固着するように、および弁傍漏出を防止するように、天然弁輪ANに対してデバイス100を効果的に密閉する。本明細書でさらに説明されるように、保持器110は、保持器110が天然力に適応および/または一致し得る一方で、弁支持体120がその構造完全性を維持するように、心臓に存在する歪曲力から弁支持体120を機械的に分離する。したがって、保持器110は、天然生体構造によって保持器110に及ぼされる力から弁支持体120を機械的に分離するような様式で、十分に可撓性および弾性であり得、および/または弁支持体120に連結することができる。代替として、または上記の特徴に加えて、弁支持体120は、その円筒形または他の所望の形状を維持するよう、および弁支持体構造120内に収納された人工弁130の適正な開放および閉鎖を確保するよう、より剛性であり得、および/または保持器110の半径方向強度よりも優れた半径方向強度を有し得る。いくつかの実施形態では、弁支持体120は、保持器110の半径方向強度よりも少なくとも100%、または他の実施形態では200%、およびさらなる実施形態では少なくとも300%大きい半径方向強度を有する。一実施形態では、弁支持体120は、約10Nから約12Nの半径方向強度を有することができる。したがって、その円周に対して半径方向圧縮力を及ぼすことによって、その不偏形状から変形させられた場合、弁支持体120は、所与の程度の変形について、保持器110によって示されるであろうよりも約2倍から約20倍大きいフープ力を示すことができる。
【0063】
保持器110は、デバイス100の可撓性上流部分を備え、保持器110の少なくとも一部分が天然僧帽弁輪における、またはその付近の組織に係合するように、埋め込まれる。保持器110は、図10Cに示されるように、デバイス100の略外向き配向部分であり得る。一実施形態では、保持器110は、組織に係合するための弓形外面142、および血液が弁支持体120を通って流れるための通路を画定する内側管腔を有する、ドーナツ型のフランジ190を形成する。別の実施例では、外面142は、直線状、三角形、または不規則な形状等の他の形状を有することができる。いくつかの実施形態では、保持器110は、それらの下流端116で弁支持体120に連結される、複数の円周方向に位置付けられた弾性的に変形可能な可撓性リブ114を含むことができる。いったん展開されると、可撓性リブ114の上流領域118の少なくとも一部分は、天然弁(例えば、僧帽弁)における、またはその付近の表面に係合するように、弁支持体120から外向きに拡張することができる。
【0064】
加えて、図10A−10Dはまた、可撓性リブ114が、一実施形態では、可撓性リブ114の先端117およびC字形構成の開口部119がデバイス100の縦軸101に向かって配向された、一般的なC字形構成を有することができることも図示する。図10A−10Dに示されるように、各個別可撓性リブ114は、独立し得るか、または保持器110の任意の他の(例えば、隣接する)可撓性リブ114に未接続であり得る。しかしながら、示されていない、いくつかの実施形態では、保持器110は、保持器110の1つ以上の可撓性リブ114を接続する、円周方向コネクタを有することができる。いくつかの実施形態では、可撓性リブ114は、それらの長さに沿って、複数の分離したセグメントに分割されてもよい(図13A−13Gに関して以下で示される)。複数の可撓性リブ114は、変形可能な材料から、または弾性あるいは形状記憶材料(例えば、ニチノール)から形成することができる。他の実施形態では、保持器110は、可撓性リブ114に加えて、またはその代わりに、メッシュまたは織物構造を備えることができる。例えば、保持器110は、ダイヤモンドパターンまたは他の構成で配列された複数の可撓性ワイヤまたはフィラメントを含むことができる。特定の実施例では、保持器110は、例えば、約0.010インチから約0.130インチの壁厚さを有する、事前成形されたニチノール管で形成することができる。
【0065】
図11は、図10A−10Dに示される人工心臓弁デバイス100の種々の実施形態で使用することができる、弁支持体120の実施形態を示す。図11は、本技術による、拡張構成102で示された弁支持体120の等角図である。図10A−10Dおよび11をともに参照すると、弁支持体120のいくつかの実施形態は、三尖弁または他の人工弁130を支持するように構成される円形、卵形、楕円形、腎臓形、D字形、または他の好適な断面形状を伴って、縦軸101の周囲に形成された上流端121および下流端123を有する、略円筒形であり得る。いくつかの実施形態では、弁支持体120は、複数の支柱124によって円周方向に接続された複数の柱122を含む。柱122および支柱124は、拡張し、人工弁130の完全性を維持するために十分な弾性およびカラム強度を提供することができる、種々の幾何学的パターンで配列することができる。例えば、複数の柱122は、カラム強度を弁支持体120に提供するように、複数列の支柱124を横断して縦方向に延在することができる。しかしながら、他の実施形態では、弁支持体120は、金属、ポリマー、または繊維メッシュあるいは織物構造を含むことができる。
【0066】
概して、複数の柱122は、縦軸101と略平行な軸方向に沿って延在することができ、支柱124は、縦軸101の周囲で円周方向に、かつ縦軸101に対して直角に延在することができる。柱122は、弁支持体120の縦高さH1(図10Cに示される)全体に延在することができ、一実施形態では、高さH1は、約14mmから約17mmであり得る。図11を参照すると、支柱124は、縦軸101の周囲に一連のリングを形成することができ、各リングは、円周方向に拡張可能な幾何学形状を有する。図11に示される実施例では、支柱124は、山形構成を形成するように一連のジグザグに形成される。代替的な拡張可能な幾何学形状は、正弦波パターン、ダイヤモンド構成、閉鎖セル、開放セル、または他の拡張可能な構成を含むことができる。複数の支柱124は、支柱および柱が交差する複数の節点125を画定するよう、複数の柱122に付着することができる。複数の支柱124および複数の柱122は、変形可能な材料から、または弾性あるいは形状記憶材料(例えば、ニチノール)から形成することができる。
【0067】
図11に示されるように、弁支持体120は、内面126および外面127を有し、弁支持体120は、弁支持体120の内部管腔内で人工弁130を受容して、逆行性血流(例えば、左心室から左心房の中への血流)を阻止するように構成される。したがって、弁支持体120は、人工弁組織を固定することができる足場を提供し、保持器110に対して人工弁130の縦方向位置を維持するように十分な軸方向剛性を有する足場を提供することができる。弁支持体120はさらに、デバイス100が外部半径方向圧力を受けているときに、人工弁130の弁尖132が接合または別様に密閉することを確実にするように、円形(または他の所望の断面形状)を維持する半径方向剛性を有する、そのような足場を提供することができる。一実施形態では、弁支持体120は、人工弁に付着するか、または他の実施形態では弁尖132の接合部分と整合させられるように構成される、縦軸101に沿った支持領域145を有することができる(図11に示される)。
【0068】
弁130は、上流方向への血流を遮断し、弁支持体120を通る下流方向への血流を可能にするように適合される、一時的または永久的な弁を備えてもよい。弁130はまた、デバイス100が天然僧帽弁に埋め込まれた後に弁支持体120の中に配置されるように構成される、置換弁であってもよい。弁尖132は、PTFE、Dacron(登録商標)、熱分解炭素を含む、種々の可撓性かつ不透過性の材料、または心膜組織等の他の生体適合性材料あるいは生物組織、またはブタ心臓組織あるいはウシ心膜等の異種移植弁組織で形成されてもよい。弁130の他の側面が、以下でさらに説明される。
【0069】
弁支持体120の管腔内の内面126は、血液が弁支持体120の外部の周囲で漏出し得る、弁支持体120の内側から弁支持体120の外側への血流を防止するように、不透過性密閉部材140によって少なくとも部分的に覆うことができる。別の実施形態では、密閉部材140は、弁支持体120の外面127に添着することができ、いずれかの実施形態では、弁130と一体的に形成され、または弁130に直接取り付けられてもよい。付加的な実施形態では、密閉部材140は、弁支持体120の内面126および外面127の両方の少なくとも一部分の上に適用することができる。
【0070】
本技術の側面によれば、図11に示されるように、人工弁130は、弁交連Cと整合するように構成される、柱122または交連付着構造128に縫合し、リベットで留め、接着し、結合し、または別様に締結することができる。柱122または交連付着構造128は、人工弁130の取付を促進する縫合糸または他の締結手段の取付を促進するように、その上に形成された小穴129、ループ、または他の特徴を含むことができる。一実施形態では、図11に示されるように、取付構造128は、取付構造128が弁支持体120の円周に分布し、柱122として機能するように、弁支持体120の構造フレームに統合することができる。示されていない、他の実施形態では、取付構造128は、(例えば、柱122の上端に沿って)柱122の部分上に形成された取付パッドであり得るか、または柱122、支柱124、あるいは弁支持体120の内面126に沿った他の構成要素に連結することができる別個の構造であり得る。人工弁130はまた、弁支持体120の内面126に取り付けられたスリーブであり得る、密閉部材140に取り付けられてもよい。
【0071】
いったん取り付けられると、人工弁130は、送達カテーテル(図示せず)に装填するためにデバイス100とともに折り畳むか、または圧縮するのに好適であり得る。一実施形態では、人工弁130は、三葉構成を有するが、二葉構成等の種々の代替的な弁構成が使用されてもよい。三葉対二葉構成の選択等の人工弁130の設計は、弁支持体120の好適な形状を判定するために使用することができる。例えば、三葉弁については、弁支持体120が、円形断面を有することができる一方で、二葉弁については、卵形またはD字形断面等の代替的な断面形状が可能である。特定の実施例では、弁支持体は、27mm等の約25mmから約30mmの円形断面直径を有することができる。
【0072】
いくつかの配列では、弁支持体120は、その中に事前に載置された永久人工弁を有することができ、または弁支持体120は、天然僧帽弁でのデバイス100の埋込に続いて、別個のカテーテル送達された弁を受容するように構成されてもよい。永久または置換弁が望ましい配列では、弁支持体120はさらに、内部管腔内に事前に載置された一時弁を含むことができる。デバイス100の配置と天然人工弁のさらなる埋込との間の期間が望ましい場合、弁支持体120に縫い込まれた、または弁支持体120内に別様に固定された一時弁が、その間に血流の調節を確保することができる。例えば、一時弁は、約15分から数時間または最大数日までの期間にわたって使用されてもよい。永久または置換人工弁は、一時弁内に埋め込まれてもよく、または一時弁が除去された後に埋め込まれてもよい。事前に組み立てられた経皮的人工弁の実施例は、例えば、Medtronic/Corevalve Inc.(Irvine, CA, USA)からのCoreValve ReValving(登録商標) System、またはEdwards Lifesciences(Irvine, CA, USA)からのEdwards−Sapien(登録商標)弁を含む。別個のカテーテル送達された弁を受容するように適合された場合、弁支持体120は、カテーテル送達された弁に係合し、その中でそれを保持するように、その内部管腔内に、またはその上端あるいは下端の上に、内向きに延在する隆起、段差、突起、またはフラップ等の特徴を有してもよい。本明細書で開示される人工心臓弁デバイスとともに使用するために好適な人工弁、一時弁、および置換弁の構造、送達、および取付に関する付加的な詳細および実施形態は、その内容全体が参照することにより本明細書に組み込まれる、2012年6月21日出願の「PROSTHETIC HEART VALVE DEVICES AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」と題された国際PCT特許出願第PCT/US2012/043636号で見出すことができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、保持器110の下流部分111は、弁支持体120の上流端121に、またはその付近に連結することができ、弁支持体120の形状に過度に影響を及ぼさない様式で弁支持体120から上流方向へ外向きに延在することができる。したがって、いくつかの実施形態では、保持器110は、弁輪の上または下の天然組織の形状に係合し、それに合わせて変形するように構成することができる一方で、弁支持体120の断面形状は、十分安定した、または実質的に変形されていないままとなる。例えば、保持器110が内向きに変形させられた場合、保持器110の組織係合部分112の下流に位置付けられたままとなる弁支持体120の断面形状が、実質的に変形されていないままとなるように、弁支持体120は(例えば、少なくとも上流端121で)、少なくとも保持器110の組織係合部分112から縦方向に下流に離間することができる。本明細書で使用されるように、「実質的に変形されていない」とは、弁支持体120が係合または変形させられていない状況を指すことができ、あるいは弁支持体120がわずかに変形することができるが、人工弁130が元の状態で有能なままである(例えば、弁尖132が逆行性血流を防止するように十分に接合する)シナリオを指すことができる。そのような配列では、デバイス100が収縮期圧力または心臓の送出作用からの力を受けているときでさえも、人工弁130の弁尖132は、十分に閉じることができる。
【0074】
図10A−10Dで図示されるように、保持器110は、弁支持体120および弁130が左心室内に存在するように、弁支持体110、弁支持体120の上流端121に、またはその付近に連結することができる。代替として、保持器110は、弁支持体120および弁130が弁輪内に、または天然心臓弁輪より上側に存在することができるように、弁支持体120の長さに沿ったいずれかの場所で弁支持体120に連結することができる。弁支持体120および保持器110は、当技術分野で公知である種々の方法、例えば、縫合、はんだ付け、溶接、結合、ステープル、リベットまたは他の締結具、機械的連動、摩擦、締り嵌め、またはそれらの任意の組み合わせによって連結されてもよい。
【0075】
図12A−12Hは、本技術の付加的な実施形態による、保持器110からの弁支持体120の機械的分離を可能にすることができる、保持持器110への弁支持体120の連結の付加的な機構の側面図である。図12A−12Dを参照すると、可撓性リブ114は、個々のハイポチューブ108(図12Bに示される)を使用して弁支持柱122(図12C)に連結することができる、リブ柱88(図12A)を含むことができる。例えば、図12Dに示されるように、リブ柱88は、個々の弁支持柱122と整合させられてもよく、ハイポチューブ112は、弁支持柱122およびリブ柱88の両方を覆って滑動させられてもよい。ハイポチューブ108は、組織係合部分112が弁支持体120から外向きに、かつ上流方向に延在することを可能にする様式で、可撓性リブ114が弁支持柱122に接続され、それと整合させられるように、弁支持柱122およびリブ柱88に圧着するか、または別様に取り付けることができる。
【0076】
保持器110および弁支持体が別個の構造である場合、2つの構造を相互接続するように、密閉部材140または他の重層構造が保持器110および弁支持体120の両方に取り付けられてもよい。例えば、弁支持体120は、スリーブ146の円周に形成される(例えば、スリーブ繊維の2つの層をともに縫合または結合することによって)か、または別様に組み込まれる、複数の縦ポケット109を含む、スリーブ146等の密閉部材140によって覆うことができる。図12Eに示されるように、各個別リブ114は、スリーブ146に形成されたポケット109内で拘束することができ、またはスリーブは、弁支持体の内面または外面126、127に連結することができる(図11)。他の実施形態では、弁支持体120および保持器110は、相互と一体的に形成することができる。例えば、可撓性リブ114は、弁支持体120の柱122と一体的に形成することができる。(図10Cおよび12Fに示される)。
【0077】
図12G−12Hに示される、さらなる実施形態では、保持器110は、弁支持体120のフレームとは別個である、保持器フレーム165を含んでもよい(図12G)。保持器フレーム165は、一実施形態では、変形可能および/または可撓性コネクタ166によって円周方向に接続されたリブ柱88を含んでもよく、弁支持体120を受容するか、またはそれを部分的に包囲するように構成することができる(図12H)。1つの配列では、保持器フレーム165は、カテーテルによって送達し、天然心臓弁内の標的部位に展開することができ、弁支持体120は、保持器フレーム165の展開および埋込に続いて別個に送達することができる。別の配列では、保持器フレーム165は、標的部位へのデバイス100の送達前に、支持フレーム120を受容するか、またはフレーム120に連結されるように構成することができる。
【0078】
図10A−10Dを再び参照すると、可撓性リブ114は、弁支持体120の柱122および/または支柱124ほど剛性ではなく、保持器110のより優れた可撓性、および/または弁支持体120の形状および位置に対するさらなる安定性を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、保持器110の可撓性は、保持器110が歪曲力を吸収することを可能にするとともに、(弁支持体120を実質的に影響を受けていない状態にしながら)デバイス100が天然弁輪の不規則な非円形の形状に一致することを可能にし、組織内方成長を促し、デバイス100と天然組織との間の漏出を防止するように密閉を作成することができる。加えて、所望の位置でデバイス100を固着するとともに、弁輪下の位置付けがデバイス100の上流移動を効果的に防止するように、天然弁輪よりも大きい上流展開円周150’を維持するよう、可撓性リブ114は、天然弁、心室、および/または大動脈構造に対して半径方向外向きに押勢するように構成することができる(図18Cにおいて以下でさらに説明される)。さらに、可撓性リブ114は、保持器110および/またはデバイス100の縦方向崩壊を防止するように、および上流方向へのデバイス100の移動に抵抗するように、十分な弾性およびカラム強度(例えば、軸方向剛性)を有することができる。
【0079】
本技術の実施形態によれば、弁130および弁支持体120は、天然組織によって保持器110に及ぼされる歪曲力、例えば、天然弁輪および/または弁尖によって及ぼされる半径方向圧縮力、縦方向の拡張期および収縮期力、フープ応力等から、効果的に機械的に分離される。例えば、天然組織による保持器110の変形が、(例えば、非円形または非対称断面へ)保持器110の断面を変化させることができる一方で、弁支持体120は、実質的に変形されていなくてもよい。一実施形態では、例えば、保持器110が弁支持体120(例えば、下流端123)に連結される場合に、弁支持体120の少なくとも一部分を、半径方向圧縮力によって変形させることができる。しかしながら、弁支持体120の上流端121および/または弁支持領域145(図11)は、少なくとも弁支持領域145が実質的に未変形であり得るように、保持器110および圧縮力から機械的に分離される。したがって、弁支持体120、および少なくとも弁支持領域145は、弁が安定した、および/または有望なままであるように、円形または他の望ましい断面を維持することができる。リブ114の可撓性は、歪曲力の吸収に寄与し、また、保持器110から、および天然生体構造から、弁支持体120および弁130を機械的に分離するのに役立つこともできる。
【0080】
図10Cに示されるように、保持器110は、それらの下流端116で弁支持体120に連結されるか、または別様に統合される、一連の円周方向に位置付けられた可撓性リブ114から成る。弁支持柱122と異なって、可撓性リブ114は、支柱によって円周方向に接続されなくてもよく、全体として個々のリブ114および保持器110のさらなる移動、撓曲、屈曲、回転、および/または変形を可能にすることができる。保持器110がリブ114を保持または接続するための円周方向支柱または支持材(図示せず)を含まなかった、ある実施形態では、支柱は、弁支持体120で利用される支柱124よりも可撓性であり得る。
【0081】
図13A−13Gは、本技術の付加的な実施形態による、種々の可撓性リブ構成の部分側面図である。図13Aを参照すると、リブ114は、一実施形態では、概して、弓形またはC字形組織係合部分112を有し、リブ114の下流端116でリブ柱88を含むことができる。いくつかの実施形態では、リブ柱88は、略直線状であり得、接続部(図示せず)から弁支持体120まで上流に望ましい距離で保持器110を拡張するための好適な長さLR1を有することができる。いくつかの実施形態では、リブ柱88は、デバイス100および/または弁支持体120の縦軸101と略平行であり得る(図10Cに示される)。図13Aに示されるC字形組織係合部分112の一般的曲率に従って、組織係合部分112の第1のセグメント80は、第1の移行部82から始まるリブ柱88から半径方向外向きに延在することができる。第1の移行部82は、リブ柱88から外向きに第1のセグメント82を配向するように、示されるような曲線状またはU字形セクションであり得る。第1のセグメント80は、第2の移行部84に到達するように、外向きおよび上流方向に弓形または略曲線状であり得る。組織係合部分112の第2のセグメント86は、弓形または略曲線状であり得、上流および内向き方向に第2の移行部84から(例えば、リブ柱88に対して)延在することができる。第2のセグメント86はまた、リブ先端117でわずかに下流に湾曲することもできる。リブ114のC字形組織係合部分112の開口部119は、第1の移行部82とリブ先端117との間の空間内に作成される。
【0082】
リブ形状の付加的な実施形態が、図13B−13Gに示されている。例えば、第1および第2のセグメント80、86等のリブセグメントは、略直線状であり得る(図13B−13E)。組織係合部分112の他の実施形態は、より小さい曲率またはより大きい曲率を伴う移行部82および84を有することができる。例えば、第1の移行部セグメント82は、明確に異なる変曲点を伴う曲線状セクション(図13Aおよび13C−13Eに示される)、または一定の半径方向曲線を伴う短い連続セグメント(図12B)を備えてもよい。組織係合部分112はまた、略正方形(図13B)または略三角形(図13C−13E)の組織係合部分112等の望ましいリブ形状を形成するように、付加的な移行部および/またはセグメントを含むこともできる。図13Aに示される組織係合部分112の実施形態と同様に、図13B−13Eに示される組織係合部分112は、保持器内部に向かって内向きに面することができる開口部119を有する(図10A−10Dに示される)が、当業者であれば、デバイス100の縦軸101に対して外向きに面する開口部119(図示せず)を有する等、リブ114を異なる方向に配向できることを認識するであろう。組織係合部分112の付加的な実施形態は、開口部119を伴わずに形成することができる。
【0083】
他の実施形態では、組織係合部分112は、他の独特な幾何学形状を帯びてもよい。図12Fに示されるように、組織係合部分112は、縦軸101に対して直角な軸90の周囲で輪になるか、または延在してもよい。または図12Gに示されるように、組織係合部分112は、半径方向外向きに延在する複数のセグメント、および/または不規則あるいはパターン化構成でリブ柱88に対して半径方向内向きに延在する複数のセグメントを有してもよい。
【0084】
再び図13Aを参照すると、組織係合部分112は、上面74と下面76との間に高さH1を有することができる。したがって、組織係合部分112の形状に加えて、心臓弁の所望の標的場所で生体構造に適応するように、組織係合部分112の全体的な高さH1を選択することができる。
【0085】
再び図13Aを参照すると、リブ114の組織係合部分112は、例えば、収縮期および拡張期中に、心臓に存在する歪曲力を吸収、変換、および/または軽減するように構成することができる。組織係合部分112の形状は、例えば、天然弁輪および/または弁尖Faによって及ぼされる半径方向圧縮力、縦方向の拡張期Fdおよび収縮期Fs力、フープ応力等の力に適応するように選択することができる。歪曲力の吸収は、弁支持体120から保持器110を機械的に分離する働きをすることができる。本技術によれば、リブ114が、歪曲力の下で、撓曲、屈曲、回転、または捻転してもよい一方で、弁支持体120は、その剛性および/または元の形状(例えば、略円形の形状)を実質的に維持する。特定の実施例では、デバイス100は、略円形の弁支持体120内で保持された三尖弁130を含むことができる(図10A−11)。展開されて動作可能であるとき、弁支持体120の断面形状は、弁130が有能なままであるように、保持器110が組織との係合によって非円形の形状に変形させられたときに、十分に安定したままとなることができる。
【0086】
図14A−14Jは、本技術のさらなる実施形態による、歪曲力Fに応答して撓曲する種々の可撓性リブ114の側面図である。個々のリブ114(したがって保持器110)の可撓性の程度は、保持器110の全てのリブ114の間で一貫していてもよく、または代替として、いくつかのリブ114は、同一の保持器110内の他のリブ114よりも可撓性であり得る。同様に、個々のリブ114の可撓性の程度は、リブ114の全長または組織係合部分112の曲率の全体を通して一貫していてもよく、または可撓性の程度は、各リブ114の長さおよび/または曲率に沿って変化してもよい。
【0087】
図14A−14Jに示されるように、リブ114の組織係合部分112は、デバイス100の埋込中または後に周辺組織によって印加することができる、様々な歪曲力Fに応答して、リブ柱88に対して撓曲してもよい。静止位置(図14A)から、組織係合部分112aは、それぞれ、下向きの力F1または上向きの力F2に応答して、位置112b(図14B)まで下向きに、または位置112c(図14C)まで上向きに撓曲してもよい。同様に、組織係合部分112aは、それぞれ、横方向に方向付けられた内向きの力F3または横方向に方向付けられた外向きの力F4に応答して、位置112d(図14D)まで内向きに、または位置112e(図14E)まで外向きに撓曲してもよい。図14A−14Eに示されるように、組織係合部分112aは、組織係合部分112の一般的形状を変化させることなく、横方向に方向付けられた力F3、F4に応答して内向き/外向きに、または略垂直に方向付けられた力F1、F2に応答して上向き/下向きに、撓曲および/または回転してもよい。一実施形態では、組織係合部分112の位置は、第1の移行部82の周囲での撓曲または回転によって生じることができる(図14A−14E)。
【0088】
他の配列では、リブ114は、下向きの力F1(図14F)に応答して形状/位置まで112f、および上向きの力F2に応答して形状/位置112gまで等、力に応答して組織係合部分112aの形状を変化させるように構成することができる(図14G)。図14F−14Gに示されるような組織係合部分112の形状および/または位置の変化は、例えば、セグメント80、86および/または移行部82、84の周囲での撓曲、回転、および/または変形によって起こり得る。図14H−14Jに示されるように、組織係合部分112a(図14H)はまた、リブ先端117が相互から離れて傾斜し得るように、例えば、正中線89から外れた独特の可変斜角ASで、移行部82において屈曲することによって、横方向に方向付けられた力F5に応答して(例えば、位置112iまたは112jまで)横方向に屈曲および/または回転してもよい。
【0089】
種々の形状および可撓性の変動を有することに加えて、個々のリブ114はまた、保持器110の円周150の周囲の種々の位置に配置することもできる。図15A−15Eは、本技術のさらなる実施形態による、種々のリブ構成を示す人工心臓弁デバイス100の概略上面図である。図15Aは、保持器110の円周150の周囲で対称かつ均等に離間された複数のリブ114を有する、デバイス100の実施形態を示す。いくつかの実施形態では、デバイス100は、第1の複数のリブ114aと、第2の複数のリブ114bとを含むことができる(図15B)。いくつかの実施形態では、第1の複数のリブ114aは、第2の複数のリブ114bとは異なる特性を有することができる。種々の特性は、リブのサイズ、リブ形状、リブ剛性、および保持器110の所与の領域内のリブ114の数を含むことができる。図15Cおよび15Dに示されるように、保持器110は、保持器110の円周150の周囲で対称(図15C)または非対称(図15D)に離間したリブ114の複数のグループを含むことができる。図15Cを参照すると、リブ114cおよび114eのグループは、他のグループ(例えば、114d)内とは異なる数のリブを含んでもよい。他の実施形態では、リブ114は、保持器110の円周150の周囲で均等に離間することができる(図15E)。保持器110は、一実施形態では、約2個のリブから約30個のリブ、および別の実施形態では約6個のリブから約20個のリブを含むことができる。
【0090】
図16A−16Bは、本技術による、保持器110の付加的な実施形態を示す、人工心臓弁デバイス100の概略側面図および断面図である。いくつかの実施形態では、保持器110は、自己拡張式メッシュ180から形成するか、または保持器110を形成するように裏返ることができる(図16A)、または回転することができる(図16B)、変形可能な材料または弾性あるいは形状記憶材料(例えば、ニチノール)から形成された材料で織ることができる。他の実施形態では、保持器110は、可撓性リブ114に加えて、自己拡張式メッシュまたは織物構造を備えることができる。一実施形態では、自己拡張式メッシュ180は、ダイヤモンドパターン(図16A)または他の構成で配列された複数の可撓性ワイヤまたはフィラメントを含むことができる。特定の実施例では、保持器110は、例えば、約0.010インチから約0.130インチの壁厚さを有する、事前成形されたニチノール管で形成することができる。
【0091】
個々のリブ114の可撓性特性は、不均等で独特の形状の天然組織に対してデバイス100に係合し、密閉するように、保持器110の可撓性および適合性を可能にすることができる。加えて、可撓性は、デバイス100と周辺生体構造との間で密閉を作成することを支援することができる。図17Aは、短軸50および長軸55を図示する、天然僧帽弁MVの概略上面図であり、図17B−17Cは、本技術の実施形態による、天然僧帽弁MVの概略図に重なる、それぞれ、拡張構成102および展開構成104の保持器110の概略図である。
【0092】
図17Bを参照すると、保持器110は、保持器110が拡張構成102(鎖線として示される)であるときに、天然弁輪の短軸50(図17A)よりも大きく、通常は弁輪の長軸55よりも小さい、直径D1を伴う外周150を有することができる。他の実施形態では、保持器110は、少なくとも天然交連Cの間の距離と同じくらいの大きさの直径D1を有してもよく、天然弁輪の長軸55と同じくらいの大きさか、またはそれよりもさらに大きくあり得る。いくつかの実施形態では、保持器110の外周150は、弁支持体120(または人工弁130)の直径(図示せず)の約1.2〜1.5倍である直径D1を有し、弁支持体120(または人工弁130)の直径より2.5倍大きくあり得る。従来の弁は、種々のサイズの罹患弁を治療するように複数のサイズで製造されなければならないが、弁支持体120および人工弁130は、本技術の側面によれば、多数の天然弁サイズに適合するように単一の直径のみで製造されてもよい。例えば、弁支持体120および人工弁130は、正確に天然生体構造に係合して適合する必要はない。具体的実施例では、弁支持体120は、成人患者については約25mmから約32mmの範囲内の直径(図示せず)を有してもよい。また、本技術の側面によれば、保持器110は、種々の天然弁サイズに適合するように、複数の直径で、または可変サイズの円周150を有して提供されてもよく、直径が約28mmから約80mmに及び、または他の実施形態では80mmより大きくてもよい。
【0093】
図17Cに示される保持器110の上面図は、保持器110が、鎖線によって示されるような拡張構成102に対して、太い線によって示されるような展開構成104に歪曲することを、1つ以上の可撓性リブ114および/またはリブセグメントの可撓性および/または変形がどのようにして可能にするかを図示する。図17Cに示されるように、保持器110は、僧帽弁輪に、またはその下に展開された、または埋め込まれたとき、点線によって示されるように、高度に可変の天然僧帽弁組織形状MVに一致することができる。リブ114は、保持器110の全体的形状が、完全拡張構成102の代わりに、展開(例えば、概して、より卵形またはD字形、あるいは他の不規則な形状)構成104を有するように、屈曲、捻転、および伸張することができる。図17B−17Cをともに参照すると、保持器110が、展開構成104で僧帽弁交連Cを覆う一方で、交連Cは、より円形の拡張構成102で非密閉または露出状態にされ、潜在的に弁傍漏出を可能にするであろう。保持器110はまた、不偏状態であるときに、略卵形またはD字形、あるいは他の形状に事前成形することもできる。
【0094】
多くの実施形態では、保持器110は、展開構成104(図17C)であるときに保持器110が天然僧帽弁輪に一致するように、十分な可撓性を有することができるが、保持器110は、展開構成104であるときに、保持器110が、天然弁輪、弁尖、および/または弁輪の直下の心室壁に対して半径方向外向きに押勢するように、その拡張構成102(例えば、図10Aおよび17B)に向かって付勢されたままとなるように構成することができる。いくつかの配列では、付勢された保持器形状によって生成される半径方向力は、天然弁の短軸50(図17A)がわずかに増加させられ、および/または弁輪の形状が別様に変化させられるように、天然生体構造を変形させるのに十分であり得る。そのような半径方向力は、弁130が心室収縮期中に閉じられるときの心房に向かった移動、ならびに弁130が開いているときの心室に向かった移動に抵抗するように、デバイス100の固着を増進することができる。さらに、保持器110と弁尖および/または心室壁あるいは他の構造との間の結果として生じる圧縮嵌合は、組織内方成長および封入を促すことによって、組織とデバイス100との間の長期結合を作成するのに役立つ。
【0095】
図18は、本技術のさらなる実施形態による、拡張構成102で示された人工心臓弁デバイス100の側面図である。デバイス100は、図10A−17Cを参照して上記で説明される人工心臓弁デバイス100の特徴に概して類似する、特徴を含むことができる。例えば、デバイス100は、弁支持体120と、弁支持体120の内部管腔内に収納された人工弁130とを含む。しかしながら、図18に示される実施形態では、デバイス100は、保持器210が僧帽弁の弁輪下領域中の組織と係合して一致するために好適であるように、卵形またはD字形の上流周囲213、および保持器210の円周250の周囲の複数の高度を有する、保持器210を含む。
【0096】
デバイス100(図10A)の保持器110と同様に、保持器210の組織係合部分212は、デバイス100の略外向き配向部分であり得る。図18に示されるように、保持器110は、一連の円周方向に位置付けられた弾性的に変形可能な可撓性リブ214を含むことができる。他の実施形態では、保持器210は、ダイヤモンドパターンまたは構成(図示せず)で配列された可撓性ワイヤまたはフィラメントを含むことができる。可撓性リブ214は、いくつかの実施形態では、弁支持体120の中に載置された弁130に対する収縮期血圧の力の下で、弁輪に対するデバイス100の移動を阻止するのに十分なカラム強度を提供することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、保持器210の上流周囲213は、単一の面内に位置しない。例えば、リブ214は、下流周囲215と上流周囲213との間の距離(例えば、高度)が円周250の周囲で変化することができるように、可変長を有することができ、および/または可変角度で相互からオフセットすることができる。例えば、上流周囲213は、天然僧帽弁の形状に適合するために複数の頂点251および谷252を有する、周縁を形成することができる(図5C参照)。本明細書で使用されるように、「頂点」および「谷」とは、下流周囲215に対する高度の変化によって形成される起伏形状を有する、上流周囲213の部分を指す。いくつかの実施形態では、上流周囲213の頂点部分は、弁を通る血流の方向と垂直な参照面に対して谷部分よりも約2〜約20mm、またはより好ましくは約5mm〜約15mm高い(さらに上流にある)。
【0098】
一実施形態では、保持器210の上流周囲213は、2つの谷252によって分離される2つの頂点251を有することができる。いくつかの実施形態では、第1の頂点は、第2の頂点とは異なる形状または高度を有することができる。他の実施形態では、谷252の形状は、逆の頂点251の形状とは異なり得る。したがって、頂点251および谷252は、保持器210の円周250の周囲で非対称に位置付け、成形することができる。種々の配列では、谷252は、天然弁輪の交連領域に沿って位置付けるために構成することができ、頂点251は、天然弁輪の弁尖領域に沿って位置付けるために構成することができる。一実施形態では、頂点251は、弁尖の中点領域付近に位置付けられるように構成される先端を有することができる。
【0099】
保持器210は、天然生体構造によって及ぼされる歪曲力に応答して変形可能であるが、弁支持体120は、円形または他の元の断面形状を維持するように十分な剛性を有し、したがって、開放および閉鎖するときに人工弁尖132の適正な機能を確保することができる。保持器210からのそのような機械的分離は、保持器210が変形させられている間に変形に抵抗するように十分な剛性を有する弁支持体120によって、および弁支持体120またはその中に含有された人工弁130への保持器210を通した力の伝達を軽減するよう、弁支持体120を保持器210に連結するための場所および手段を選択することによって、達成されてもよい。例えば、弁支持体120は、弁支持体120の上流端121のみで保持器210に連結されてもよく、保持器110はさらに、外向きおよび上流方向に弁支持体から離れて延在することができる。したがって、弁輪または弁輪下組織によって保持器210に及ぼされる力は、弁支持体120へのそのような力の伝達を軽減するように、保持器210の可撓性リブ214によって吸収することができる。
【0100】
(人工心臓弁デバイスとともに使用するために好適な付加的な構成要素および特徴)
人工心臓弁デバイス(例えば、上記で説明されるデバイス100)とともに使用するために好適である、付加的な構成要素および特徴が説明される。ある構成要素および特徴が特定のデバイス(例えば、デバイス100)に関して説明されるが、該構成要素および特徴はまた、本明細書でさらに説明されるような他のデバイスとともに使用するために好適であり得るか、または他のデバイスと合併できることが、当業者によって認識されるであろう。
【0101】
図10Aに関して上記で論議されるように、人工心臓弁デバイス100のいくつかの実施形態は、保持器110および/または弁支持体120の部分の周囲に延在する、密閉部材140を含むことができる。例えば、図10Aで図示される実施形態は、デバイス100と生体構造との間だけでなく、デバイス100の構成要素も通る弁傍漏出を防止するように、保持器110の外面142の周囲および弁支持体120の外面127の周囲に密閉部材140を有する。加えて、密閉部材140は、天然心臓弁内のデバイス100の埋込を促進するために組織の内方成長を推進するように構成することができる。一実施形態では、密閉部材は、円筒形であり、以下でさらに説明されるようにデバイス100の種々のフレームまたは骨格構造内または上で適合するように構成される、不透過性密閉材料を含むことができる、スリーブ146(図10A)であり得る。
【0102】
図10Aでは、スリーブ146は、弁支持体120の外面127の上にあるが、他の実施形態では、スリーブ146または他の密閉部材140は、弁支持体120の内面126の上に配置することができる。図10Aは、スリーブ146が保持器110の外面142の上に配置される、デバイス100の実施形態を図示するが、当業者であれば、スリーブ146を保持器110の内面141の上に配置することができる、他の構成を認識するであろう。
【0103】
当業者であれば、スリーブ146等の密閉部材140が、表面126、127、141、および142を完全に覆うことができ、または他の実施形態では、それぞれ、保持器110および支持体120の表面126、127、141、および142を少なくとも部分的に覆うことができることを認識するであろう。密閉部材140の任意の組み合わせが考慮される。加えて、密閉部材140は、保持器110と弁支持体120との間に密閉を作成することができる、(例えば、保持器110の表面141、142、および弁支持体120の表面126、127を覆うための)流体不浸透性材料の単一の連続シートを含むことができる。種々の実施形態では、スリーブ146等の密閉部材140は、組織と一体化して弁傍漏出を最小限化するように、Dacron(登録商標)、ePTFE、ウシ心膜、または他の好適な可撓性材料等の繊維または他の可撓性および生体適合性材料を含むことができる。他の実施形態では、密閉部材140は、ポリマー、熱可塑性ポリマー、ポリエステル、Gore−tex(登録商標)、合成繊維、天然繊維、またはポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことができる。弁130はまた、密閉部材140に取り付けられるか、または密閉部材140と一体的に形成されてもよい。
【0104】
人工心臓弁デバイス100はまた、弁支持体120または保持器110の所望の形状および/または剛性を維持するための付加的な支持特徴を含むこともできる。図19は、本技術の実施形態による、接続リング156を有する人工心臓弁デバイス100の等角図である。図19に示されるように、接続リング156は、弁支持体120に統合および/または連結された複数の交連柱158に連結することができる。図19に示されるように、接続リング156は、交連柱158の下流端157に連結することができるが、接続リング156はまた、交連柱158または弁支持体120の別の部分に連結されてもよい。接続リング156は、種々の対称または非対称幾何学的断面を有することができ、柱が屈曲または変形しないように交連柱158のための支持を提供することができる。
【0105】
図20A−20Bは、本技術の付加的な実施形態による、保持器支持リング160、および保持器支持リング160を有する人工心臓弁デバイス100の等角図である。図20Aに示されるように、保持器支持リング160は、デバイス100が拡張構成102であるときに保持器110の所望の円周150にほぼ類似するリング円周151を有する、円形状のリング要素であり得る。示されていない、別の実施形態では、支持リング160は、保持器110を異なる形状に促すよう支持リング160を構成することができるように、異なる形状(例えば、卵形、D字形、不規則等)を有することができる。一実施形態では、支持リング160は、送達カテーテル内に適合するように、およびデバイス100が天然心臓弁における、またはその付近の標的場所で展開されたときに、リング円周151に向かって拡張するように、送達構成(図示せず)で折り畳むことができる、形状記憶材料(例えば、ニチノール)から形成することができる。他の実施形態では、保持器支持リング160は、所望の程度の剛性を伴う、可撓性で弾性の材料(例えば、生体適合性ポリマーまたは金属)の固体、コイル状、または織物ワイヤあるいはバンドであってもよい。
【0106】
図21Bでは、スリーブ146等の密閉部材140は、保持器110の内面141内に配置された保持器支持リング160を露出するように、明確にするためだけに引き離されている。例えば、支持リング160は、保持器110のための付加的な円周方向支持を提供し、半径方向剛性を増進し、かつデバイス100の送達中および後に保持器110に及ぼされる歪曲力に抵抗して歪曲力を分配するよう、保持器110のC字形リブ114の開口部117の中に配置されるように構成することができる。
【0107】
(安定化部材を有する人工心臓弁デバイス)
図22は、天然弁部位においてデバイス100を安定させ、いくつかの実施形態では、傾転または横方向移動を防止するのに役立つように、またはデバイス100の上流あるいは下流移動を阻止するように、1つ以上の安定化部材501をさらに備える、拡張構成102の人工心臓弁デバイス100の一実施形態を図示する。いくつかの実施形態では、安定化部材501は、弁支持体120の下または下流端123から、あるいは交連柱158から延在する、1つ以上のアーム510を備えてもよい。別の実施形態では、アーム510は、リブ柱88の下流端から延在するように構成することができる(図22に示される)。アーム510は、構成に応じて、天然弁尖の内側または外側のいずれか一方で、天然組織、例えば、弁尖、弁輪下組織、または心室壁に係合するように構成される。
【0108】
図22は、本技術の実施形態による、拡張したアームを有する人工心臓弁デバイス100の拡大概略側面図である。図22に示されるように、個別アーム510は、アーム本体512と、アーム拡張部514と、アーム先端516とを備えてもよい。アーム本体512は、アーム本体長L1を有し、第1の接合部508で柱511に接続してもよい。柱511は、弁支持柱122、保持器リブ柱88、および/またはデバイス100の別の特徴(例えば、交連柱158)であり得る。一実施形態では、アーム本体512は、第1の接合部508で柱511に溶接され、結合され、圧着され、または別様に機械的に取り付けられてもよい。代替として、アーム510は、弁支持柱122またはリブ柱88等の柱511と一体的に形成されてもよい。第1のアーム角度AA1が、柱511およびアーム本体512の軸の交差によって形成され、先端516が、所望の場所、例えば、弁輪下組織または天然弁尖の後ろの心室壁で天然組織に係合することができるように、アーム512が位置付け可能であるように選択される。図23A−23Cは、本技術のさらなる実施形態による、デバイス100の縦軸101に対する種々の角度でデバイスに連結されたアーム510を有する、人工心臓弁デバイス100の拡大部分側面図である。一実施形態では、第1のアーム角度AA1は、約10°から約45°であり得る。他の実施形態では、第1のアーム角度AA1は、鈍角(図23A)、略垂直または約90°の角度(図23B)、あるいは鋭角(図23C)であり得る。
【0109】
再び図22を参照すると、アーム本体512は、アーム本体512の遠位端でアーム拡張部514に接続することができる。アーム拡張部514は、約0.5〜2mm等の、天然組織の中へ所望の距離で貫通するために選択または最適化することができる、アーム拡張部長L2を有することができる。アーム拡張部514は、第2のアーム角度AA2でアーム本体212から延在することができる。第2のアーム角度AA2は、アーム拡張部514とアーム本体512との間の交差によって形成し、約100°から約135°等の天然組織との係合の所望の角度を提供するように選択することができる。他の実施形態では、アーム拡張部514は、アーム本体512と平行または同一線上にあり得る(図示せず)か、あるいは完全に排除されてもよい。アーム拡張部514は、アーム先端516で終端する。アーム拡張部514がない実施形態では、アーム先端516は、アーム本体512の最遠位部分であり得る(図示せず)。
【0110】
アーム510は、デバイス100の縦軸101と平行な軸に沿ったアーム先端516(図22に示される)であり得る、第1の接合点508からアームの最遠位到達点まで延在する、アーム高さHA1を有してもよい。アーム高さHA1は、デバイス100が天然僧帽弁に対して所望の縦方向位置にあるときに(例えば、保持器110が弁輪下組織と係合しているときに)、アーム先端516が弁輪下生体構造内の所望の場所に係合するように、選択または最適化することができる。アーム高さHA1は、保持器110および/または弁支持体120の全体的な高さ、ならびに接合点508の場所に依存するであろう。図24A−24Cは、種々の長さ(L1+L2)のアーム510を有し、したがって、可変高さHA1を有する、人工心臓弁デバイスの拡大部分側面図である。示されるように、アーム高さHA1は、(柱511およびリブ114によって表される)デバイス100の全体的な高さHD1よりも大きく(図24A)、(リブ114の組織係合部分112によって表される)保持器110および(柱511によって表される)弁支持体120のそれぞれの高さHD1、HV1の中間(図24B)、または(リブ114によって表される)保持器110および弁支持体120の両方の全体的な高さHD1よりも小さくあり得る(図24C)。
【0111】
デバイス100とともに使用するために好適なアームまたは他の安定化部材の構造および取付に関する付加的な詳細および実施形態は、その内容全体が参照することにより本明細書に組み込まれる、2012年6月21日出願の「PROSTHETIC HEART
VALVE DEVICES AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS」と題された国際PCT特許出願第PCT/US2012/043636号で見出すことができる。
【0112】
図25A−25Eは、弁尖LFの内向き表面上に配置されたアーム510aを有する、埋め込まれた人工心臓弁デバイス100を伴う、心臓の断面図である。図25A−25Eで図示される人工心臓弁デバイス100の実施形態は、弁尖LFの半径方向に内側の位置、弁尖LFの半径方向に外側の位置、または弁尖LFの内側および外側の組み合わせまで拡張するように構成されるアーム510aを有する。例えば、図25Aは、拡張して弁尖LFの内向き表面に係合するアーム510aを示し、かつ弁尖LFを部分的に穿刺するアーム510aを示す。図25Bで図示される別の実施例では、アーム510aは、弁尖LFを完全に貫通してもよい。さらなる実施例では、デバイス100は、1)弁尖LFを完全に貫通する、および2)弁輪下組織を部分的に穿刺するアーム510aを組み込むことができる(図25C)。図25Dを参照すると、デバイス100は、弁尖LFおよび僧帽弁MVの環状組織の両方を完全に貫通する、アーム510aを組み込むように構成することができる。付加的な実施例では、図25Eは、アーム510aに沿って弁尖LFのさらなる長さに半径方向に係合するとともに、随意にアーム先端516において弁尖LFおよび/または環状組織ANを穿刺する、アーム510aを示す。いくつかの実施形態では、アーム510aの全体または一部分は、弁尖LFがアーム510aの外面に一致することを可能にする、曲率または他の好適な形状を有してもよい。
【0113】
図26A−26Cは、本技術による、人工心臓弁デバイス100とともに使用するための組織係合要素170の種々の実施形態を図示する概略図である。組織係合要素170は、鈍的要素等の非外傷的に組織に係合する、あるいは鉤またはスパイク等の心臓組織を部分的に穿刺するか、または完全に貫通する、任意の特徴を含むことができる。本明細書で使用されるように、「組織係合」とは、図26Aに示されるように、組織Tに力を及ぼすが、組織Tにとって非外傷性である等、組織Tを必ずしも穿刺しない、要素170を指す。本明細書で使用されるように、「部分的に穿刺する」とは、図26Bに示されるように、組織Tを少なくとも部分的に貫通するが、反対表面Sを突破しない、組織係合特徴170を指す。本明細書で使用されるように、「完全に穿刺する」とは、図26Cに示されるように、組織Tに進入するとともに退出することができる、組織係合特徴170を指す。「穿刺」のみは、部分的または完全穿刺のいずれか一方を指してもよい。組織係合要素170は、スパイク、鉤、または心臓組織を穿刺することが可能な当技術分野で公知である任意の構造、あるいは代替として、組織を穿刺することなく心臓組織に圧力を印加するように構成される任意の鈍的または非外傷性特徴の形態を成してもよい。そのような要素の位置付けに関するさらなる詳細が、本明細書に説明される。
【0114】
図27A−27Cは、本技術の種々の実施形態による、弁尖の内向き表面上に係合するように構成された組織係合要素170を伴うアーム510aを有する、人工心臓弁デバイス100の拡大部分側面図である。図27A−27Cで図示されるように、組織係合要素170は、下流方向(図27A)、上流方向(図27B)、または下流および上流方向(図27C)の両方のいずれかで、アーム510aの上に組み込み、そこから延在することができる。他の実施形態では、組織係合要素170は、上流および下流方向のいずれか一方または両方で、保持器110および/または弁支持体120の構成要素上に組み込み、そこから延在することができる。
【0115】
図28A−28Bは、本技術の種々の実施形態による、デバイスが天然弁尖LFの外向き表面に係合するためのアーム510bを有する、展開構成104で僧帽弁MV(断面で図示される)に埋め込まれた人工心臓弁デバイス100を示す、側面図である。図28Aは、弁尖LFがアーム510bと保持器110の外面142および/または弁支持体120の外面127との間で効果的に挟持されるように、弁尖LFの後ろに到達するように構成されるアーム510bを含む、デバイス100の実施形態を示す。別の実施形態では、図28Bに示されるように、アーム510bは、アーム510bと保持器110の外面142および/または弁支持体120の外面127との間の空間内で、弁尖LFを折り畳ませてもよい。図28Cは、本技術の種々の実施形態による、弁尖の外向き表面に係合するように構成された組織係合要素170を伴うアーム510bを有する、人工心臓弁デバイス100の拡大部分側面図である。図28Cに示されるように、アーム510bは、弁尖組織に向かって配向されるように、アーム510bの内面520上に組織係合要素170を含む。
【0116】
本技術の別の実施形態によれば、図29Aは、僧帽弁MV(断面で図示される)に埋め込まれた人工心臓弁デバイス100を示す側面図である。図29Aに示されるデバイスは、天然弁尖LFの外向き表面に係合するためのアーム510b、および天然弁尖LFの内向き表面に係合するためのアーム510aを有する。内側/外側アーム510a、510bはさらに、それぞれ、弁尖組織に係合または穿刺するためのアーム510a、510bの半径方向に内側の表面または半径方向に外側の表面上に組織係合要素170を備えてもよい。デバイス100の円周の周囲での内側/外側アーム510a、510bの配列は、事前設計されたパターンで交互に入れ替わることができる。例えば、内側アーム510aは、図29Bに示されるように、外側アーム510bと交互に入れ替わることができ、または代替として、アーム510a、510bは、デバイス100の配置に応じて、かつ天然後および前尖との整合に対して、ランダムに、または不規則な間隔で、半径方向外向きおよび/または半径方向内向きに延在してもよい。
【0117】
図30Aおよび30Cは、保持器110の外形と類似の外形を伴うアーム510を有する、人工心臓弁デバイス100の等角図であり、図30Bおよび30Dは、本技術の別の実施形態による、僧帽弁(断面で図示される)に埋め込まれて示された、それぞれ、図30Aおよび30Cの人工心臓弁デバイス100の側面図である。図30Aに示されるように、アーム510は、保持器110の外形と類似の全体的外形を有することができる。保持器110は、全体的な保持器110の外形を形成するために、様々な形状、サイズ、および/または外向きあるいは内向きに配向した組織係合部分セグメント80、86を有する、リブ114を含むことができる。したがって、アーム510はまた、保持器110の外形を模倣する、様々な形状、サイズ、および/または外向きあるいは内向きに配向したアームセグメントを有することもできる。図30A−30Bに示される実施形態では、デバイス100の増進した密閉および固着のために弁尖組織を保持器110の形状に一致させるよう、アーム510は、アーム510とリブ114の組織係合部分112との間で弁尖LFおよび/または弁輪AN組織を締め付けるように構成される。例えば、図30Aは、アーム拡張部514および/またはアーム本体512が、リブ114および/または組織係合部分セグメント80、86の形状を部分的に模倣し得る、一実施形態を図示する。
【0118】
図30C−30Dは、第1および第2のアーム拡張部514aおよび514b、および/またはアーム本体512が、リブ114の形状により密接に従う、別の実施形態を図示する。例えば、アーム510は、デバイス100の増進した密閉および固着のために弁尖組織を組織係合部分112の上下両方の領域に一致させるよう、アーム510とリブ114の組織係合部分112との間で弁尖LFおよび/または弁輪AN組織を締め付けるように構成される、アーム本体512および複数のアーム拡張部(例えば、第1のアーム拡張部514aおよび第2のアーム拡張部514b)を含むことができる。図30A−30Dによって包含される実施形態は、外向き表面係合アーム510bおよび/または内向き表面係合アーム510aに適用することができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、人工心臓弁デバイス100は、デバイス100の円周の周囲に複数のアーム510を組み込んでもよいが、他の実施形態では、デバイス100は、グループ(例えば、それぞれ、後および前尖に係合するよう第1および第2のグループ)で複数のアームを含んでもよい。加えて、アーム510は、図31Aに示されるように、他のアーム510を含む他の構成要素から独立して、保持器110および/または弁支持体120から延在してもよい。他の実施形態では、図31Bに示されるように、デバイス100はさらに、アーム支柱522を相互接続することによって、少なくとも1つの第2のアーム510yと相互接続された少なくとも1つの第1のアーム510xを含んでもよい。アーム支柱522は、円周方向に拡張可能であるように構成することができ、全てのアーム510(例えば、アーム510xおよび510y)またはアーム510の1つ以上のグループを接続してもよい。いくつかの実施形態では、アーム支柱522は、デバイス100から離してアーム510x、510yの外向き拡張部を制限することができる。
【0120】
本技術の側面によれば、アーム510は、デバイス100の円周150の周囲で対称および/または非対称に、デバイス100に連結する、および/またはデバイス100から延在することができる。図32A−32Dは、(例えば、図31Aに示されるような)保持器110のリブ114に対するアーム位置パターンの概略上面図である。アーム510は、リブ114を組み入れることができ(図32Aおよび32C)、保持器110のリブ114と同一の半径方向面内にあり得(図32B)、またはリブ114を組み入れることができるとともに、それと同一平面内にあり得る(図32D)。さらに、アーム510は、保持器110の拡張外周150の外側に延在し(図32B)、保持器110の拡張外周150の内側に延在し(図32A)、保持器110の同一の外周150まで延在し(図32C)、またはこれらの構成の組み合わせ(図32D)に構成されてもよい。
【0121】
上記の実施形態では、アーム510は、保持器110の展開から独立して組織に係合するように構成されてもよい。例えば、人工心臓弁デバイス100の送達に好適な送達カテーテルは、個別に、または別様に相互から独立して、アーム510および保持器110を展開するように動作可能である別個の機構を装備してもよい。このようにして、保持器110は、最初に、所望の最終位置が獲得されるまで、デバイス100の位置がオペレータによって査定および調整され得るように、天然組織と係合するよう解放されてもよい。保持器110の展開および位置付けに続いて、アーム510は、組織に係合するように解放することができる。そのような展開システムおよび方法は、アーム510が、いったん展開されるとデバイス100の任意の再配置を禁止し得る、組織係合要素170を装備するときに有用である。いくつかの実施形態では、保持器110は、いったん保持器110が展開されると、組織を貫通しない、またはデバイス移転を阻止する、非外傷性組織係合要素170を装備するであろう。したがって、デバイス100のいくつかの実施形態は、アーム510が非展開構成で拘束される限り、保持器110が拡張された状態でさえも再配置可能であり得、デバイス100は、アーム510が解放されたときのみ永久的に固着される。
【0122】
代替として、または上記で説明されるようにアーム510の上に存在する組織係合要素170に加えて、組織係合要素170が、デバイス100の他の構成要素の上に存在してもよい。図33A−33Eは、本技術の付加的な実施形態による、デバイス100の様々な構造上に組織係合要素170を有する、人工心臓弁デバイス100の側面図である。図33Aは、保持器110のリブ114の組織係合部分112上に組み込まれた組織係合要素170を示す。図33Bは、弁支持体120の支柱124に沿って組織係合要素170を有する、デバイス100の実施形態を図示する。同様に、図33Cは、弁支持体120の柱に沿って組織係合要素170を有する、デバイス100の実施形態を示す。図33Dに示される別の実施形態では、組織係合要素170は、リブ114ならびに弁支持体120の柱122および支柱124等のいくつかのデバイス構成要素の表面に沿って組み込むことができる。
【0123】
組織係合要素170が、図33A−33Dで概略的に示されているが、当業者であれば、要素が本明細書で説明される種々の組織係合要素170(例えば、非外傷性、部分的に穿刺する、完全に貫通する等)のうちのいずれか、または他の実施形態では異なる種類の組織係合要素170の組み合わせであり得ることを認識するであろう。加えて、組織係合要素170は、図33A−33Bで(例えば、デバイス100の上流移動を阻止するように)上流方向に配向されて示されるが、他の実施形態では、組織係合要素170は、(例えば、デバイス100の下流移動を阻止するように)下流方向に、または下流および上流配向方向(図33C−33Dに示される)の組み合わせで配向することができる。組織係合要素170は、デバイス100の円周または外面の周囲で対称に組み込むことができ、または他の実施形態では、組織係合要素170は、非対称に組み込むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、組織係合要素170は、後尖と整合させられたデバイス100の側面上に存在することができるが、左心室から大動脈弁を分離する壁が組織係合要素170による影響を受けないように、存在しないか、または前尖と整合させられたデバイス100の側面上で異なる配列を有することができる。
【0124】
図33Eは、デバイス100が僧帽弁の弁輪の上または下で展開されたときに、弁輪下組織を完全または部分的に貫通するようにスパイク174を構成することができる、リブ114のリブ先端117上のスパイク等の組織係合要素170を有する、デバイス100の実施形態を図示する。いくつかの実施形態では、組織係合要素170(例えば、スパイク)は、組織の中で組織係合要素170(例えば、スパイク)を保持するための鉤176または他の特徴を含むことができる。他の実施形態では、組織係合要素170(例えば、スパイク)は、弁輪下組織に係合するが貫通しないよう、鈍的であり得る。図33F−33Gは、リブ114のリブ先端117の上で使用するために好適な組織係合要素170(例えば、フック、スパイク等)の拡大側面図である。図3Fに示される一実施形態では、リブ先端117は、保持器110が展開された状態で、標的場所で心臓組織を部分的に穿刺するか、または別様に完全に貫通し得る、丸みを帯びたフック172を含んでもよい。図33Gに示される別の実施形態では、リブ先端117は、標的場所で心臓組織を穿刺するためのスパイク174、176等の鉤付き突起を含んでもよい。
【0125】
代替として、心臓組織に摩擦力を及ぼすように構成される、段差、隆起、または他の突起等の組織係合要素170もまた、1つ以上の弁支持体支柱124、弁支持柱122、および/または他の構成要素(例えば、密閉部材140)の上に存在してもよい。これらの組織係合要素170は、これらの特徴の外側部分の上に配置することができ、外向きに延在して天然弁尖に係合するように、および所望の場所でデバイス100を安定かつしっかりと固着するように構成することができる。代替として、隆起、スケール、ブリッスル、または指向性を有する他の特徴が、反対方向への移動を制限しながら、1つの方向への天然組織に対する移動を可能にするように、リブ114または密閉部材140の表面上に形成されてもよい。
【0126】
人工治療デバイス100の別の実施形態によれば、組織係合要素170を密閉部材140(例えば、スリーブ146)に組み込むことができる。図34A−34Bは、組織係合要素170を伴って構成された密閉部材140を有する、人工心臓弁デバイス100の等角図および拡大詳細図である。図34A−34Bをともに参照すると、組織係合要素170は、密閉部材140材料に織り込まれるか、または別様にそれに連結される、組織を貫通するほど十分に剛性かつ鋭い、金属またはポリマーワイヤ178または繊維を備えることができる。次いで、密閉部材140は、組織係合要素170が密閉部材140から半径方向外向きに延在して、隣接する弁尖または他の組織に係合するように、保持器110の外面および/または内面141、142、および/または弁支持体120の内面および/または外面126、127に取り付けることができる。
【0127】
図35A−35Fは、保持器110または弁支持体120等のデバイス特徴に組み込まれ得る、支柱、柱、アーム、および/またはリブ等の種々のデバイス構造(集合的に「ST」と呼ばれる)の上に組み込むことができる、付加的な組織係合要素の実施形態の拡大側面図である。例えば、付加的な組織係合要素は、組織係合要素170の代わりに、またはそれに加えて、1つ以上の切り抜き突起350(図35Aおよび35B)を備えてもよい。図35Cの側面図によって示されるような折り畳みまたは直線構成では、切り抜き突起350は、送達中に薄型外形を維持するように、構造STの表面に対して低い起伏を維持する。デバイス100が拡張し、構造STがその展開構成(例えば、図35Dに示されるような曲率)に変化すると、突起がより高い起伏までSTから分離する。突起350はまた、弁輪下組織を把持し、構造STからさらに遠く切り抜き突起を引き離すように構成されてもよい。デバイス構造STはまた、図35Eで図示されるように、その縁または面のうちの1つ以上に沿って鋭い突起352を含むように成形されてもよく、または図35Fに示されるように、尖ったスケール様突起354も含んでもよい。
【0128】
(心房拡張部材を有する人工心臓弁デバイス)
図36Aは、本技術の種々の実施形態による、心房拡張部材410を有する、人工心臓弁デバイス100の等角図である。心房拡張部材410は、円形、卵形、楕円形、腎臓形、または他の好適な断面を伴って、デバイス100の縦軸101の周囲に形成される、略円筒形であり得る。図36Aに示されるように、心房拡張部材410は、保持器リブ114に、弁支持体120の柱122に、または何らかの他のデバイス構成要素に連結することができる。一実施形態では、心房拡張部材410は、上向き方向にリブ114の拡張部411によって形成することができる。心房拡張部材410は、リブ114の拡張部411によって形成される上流部分412を含み、心房拡張部材410の支持および弾性のために種々の幾何学的パターン(例えば、山形、ダイヤモンド等)で配列することができる、相互接続支柱414および/または他の柱を含むことができる。心房拡張部材は、付加的な支持をデバイス100に提供し、および/またはデバイス100が下流または上流方向に移動することを防止するように、心臓内の弁輪内、弁輪上、または心房場所の中へ延在するように構成することができる。スリーブ146等の密閉部材140は、随意に、心房拡張部材410の内面420および/または外面422上に存在することができる。
【0129】
図36B−36Cは、本技術による、デバイス100に印加された捻転力を伴わない(図36B)および伴う(図36C)心房拡張部材410を有する、人工心臓弁デバイス100の実施形態の概略上面図である。図36Bは、保持器110を形成するように、心房拡張部材410およびデバイス100の周囲で円周方向に位置付けられた複数のリブ114を有する、拡張構成102のデバイス100を示す。図36Bは、天然心臓弁組織(例えば、僧帽弁輪)に一致するよう、リブ114がデバイス100および/または心房拡張部材410の外面430に対して撓曲、屈曲、および/または回転させられるように、捻転力Twが保持器110に印加される、展開構成104のデバイス100を示す。
【0130】
拡張可能な保持器、弁支持体、アーム、心房拡張部は、所望の結果に応じて、任意の数の好適な生体適合性材料、例えば、ステンレス鋼、Nitinol(登録商標)等のニッケルチタン合金、種々のポリマー、ELGILOY(登録商標)(Elgin, IL)、熱分解炭素、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または任意の数の他の材料あるいは材料の組み合わせから作製されてもよい。アーム部材はまた、組織内方成長を推進する材料、例えば、Dacron(登録商標)、PTFE、被覆等で被覆され、または覆われてもよい。
【0131】
(送達システム)
図37A−37Dは、本明細書で開示される人工心臓弁デバイスの送達に好適な送達システム10の一実施形態を図示する。送達システムを参照して使用されるように、「遠位」とは、システム10の縦軸に沿って送達システム10のハンドルからさらに遠い距離を有する位置を指し、「近位」とは、システム10の縦軸に沿って送達システム10のハンドルにより近い距離を有する位置を指す。
【0132】
図37Aは、血管系を通して患者の心臓まで、本明細書で開示される人工心臓弁デバイス100の実施形態を送達して展開するために使用され得る、送達システム10の一実施形態を図示する。送達システム10は、随意に、一実施形態では直径が34F以下であり、別の実施形態では28F以下である、送達シャフト16に連結されたハンドル12を有する、誘導カテーテルGCを含んでもよい。誘導カテーテルGCは、標的弁への特定のアプローチに好適な構成で操縦可能であり得るか、または事前成形されてもよい。送達カテーテル18は、止血弁HVを通して誘導カテーテルGCの近位端上に配置され、デバイス100が折り畳みまたは送達構成106で位置付けられる送達シース20まで延在する、可撓性の管状外側シャフト19を含む。可撓性内側シャフト28は、外側シャフト19内で摺動可能に位置付けられ、デバイス100を通って遠位端におけるノーズコーン21まで延在する。内側シャフト28は、それを通してガイドワイヤ24が摺動可能に位置付けられ得る、ガイドワイヤ管腔を有する。デバイス100は、以下でさらに完全に説明されるように、内側シャフト28に連結され、解放ワイヤ30によって内側シャフト28から解放可能である。送達シース20は、送達中にその折り畳み構成106でデバイス100を防御および保護することができる。外側シャフト20は、送達カテーテル18のハンドル14上の後退機構23に連結される。軸方向に摺動可能なレバー、回転可能なラックおよびピニオンギア、または他の既知の機構等の種々の後退機構23が使用されてもよい。このようにして、外側シャフト20は、シース20からデバイス100を解放(例えば、展開)するように、内側シャフト28に対して後退させられてもよい。
【0133】
図37Bは、内側シャフト28へのデバイス100の連結を図示するようにシース20が切り取られた、送達カテーテル18の遠位端を示す。複数の係止指部32が、ノーズコーン21に連結され、デバイス100の弁支持体120の内部を通して近位に延在する。図37Cに示されるように、弁支持体120の選択された数の柱122が、その近位端において各柱122から切り取られたタブ34を備える、連結要素61を有する。タブ34は、図37Bに示されるように柱122から内向きに偏向されてもよく、図37Dに示されるように係止指部32の中の窓42を通って延在するように構成される。解放ワイヤ30は、タブ34の中の穴40を通過し、デバイス100を内側シャフト28に固定するように、タブ34が窓42から引き出されることを防止する。引張ワイヤ30が近位または遠位方向に滑動することを摩擦が一時的に防止するように、引張ワイヤ30をタブ34と係止指部32との間で緊密に挟持することができる。このようにして、シース20は、シャフト28が生体構造に対してデバイス100の縦方向位置を維持している間に、デバイス100の拡張を可能にするように、デバイス100に対して後退させられてもよい。引張ワイヤ30は、例えば、内側シャフト28と外側シャフト19との間で、または1つ以上の指定管腔内で、ハンドル14まで近位に延在してもよい。ハンドル14の上の好適な機構(図示せず)は、オペレータが、タブ34から係脱されるまで解放ワイヤ30を近位方向に後退させることを可能にすることができる。したがって、デバイス100は、係止指部32から解放し、標的部位での展開のために拡張することができる。
【0134】
図38A−38Dは、人工心臓弁デバイス100を送達および展開するための経中隔または順行性アプローチを示す、心臓Hの概略断面側面図である。図38Aに示されるように、ガイドワイヤ24が、任意の数の技法を使用して血管内で、例えば、下大静脈IVCまたは上大静脈SVCを通して、心房中隔IASを通して、右心房RAの中へ前進させられてもよい。誘導カテーテルGCは、図38Bに示されるように、心房中隔ASの前側に到達するまで、ガイドワイヤ24に沿って右心房RAの中へ前進させられてもよい。この点で、ガイドワイヤ24は、心房中隔IASを貫通するために使用される針25と交換されてもよい(図38C)。誘導カテーテルGCは、図38Dに示されるように、針25上で左心房LAの中へ前進させられてもよい。誘導カテーテルGCは、僧帽弁に向かって送達カテーテル18(図37A)を方向付けるように、誘導カテーテルGCを成形または操縦するよう事前成形された、または操縦可能な遠位端を有してもよい。
【0135】
経中隔アプローチの代替案として、僧帽弁は、左心房内の切開を通して直接アクセスされてもよい。心臓へのアクセスが、肋骨を除去することなく、胸部内の肋間切開を通して得られてもよく、誘導カテーテルが、巾着縫合で密閉される心房切開を通して左心房の中へ配置されてもよい。次いで、送達カテーテルが、誘導カテーテルを通して僧帽弁まで前進させられてもよい。代替として、送達カテーテルは、誘導カテーテルを使用することなく、心房切開を通して直接配置されてもよい。
【0136】
図39A−39Cは、経中隔アプローチを使用して人工心臓弁デバイス100を埋め込む方法を図示する、心臓の断面図である。図39A−39Cをともに参照すると、送達カテーテル18の遠位端21が、僧帽弁MVに近接して前進させられてもよい。随意に、図39Aに示されるように、カテーテル18がガイドワイヤGW上で摺動可能に前進させられ得る、ガイドワイヤGWが使用されてもよい。折り畳み構成106でデバイス100を含有する送達カテーテル18のシース20は、図39Aに示されるように、天然弁尖LFの間の僧帽弁輪ANを通して前進させられる。次いで、図39Bを参照すると、シース20が遠位ノーズコーン21に対して近位に後退させられ、保持器110が弁尖LFを外向きに押勢して僧帽弁輪ANの下に折り畳むように、デバイス100が拡張することを可能にする。シース20が除去され、デバイス100が拡張させられた後に、拡張構成102に向かって拡張するにつれて、オペレータがデバイス100の配置をさらに制御することができるように、送達システムを依然としてデバイス100に接続することができる(例えば、示されていないシステム小穴がデバイス小穴に接続される)。例えば、デバイス100は、標的場所の上流または下流で拡張され、次いで、送達システム10からデバイス100を解放する前に、それぞれ、所望の標的場所内へ下流または上流に押勢されてもよい。いったんデバイス100が所望の部位に位置付けられると、引張ワイヤ30(図37A−37B)は、送達カテーテル18から展開構成104のデバイス100を着脱するように、近位方向に後退させられてもよい。次いで、送達カテーテル18は、図39Cに示されるように除去することができる。代替として、デバイス100が展開し、送達システム10から完全に解放されるように、デバイス100は、送達システム10に接続されなくてもよい。
【0137】
図40A−40Cは、経心尖アプローチを介した、僧帽弁MVへの折り畳み構成106のデバイス100の送達を図示する。図40Aを参照すると、送達カテーテル18は、心尖における、またはその付近の左心室内の穿孔を通して、心臓の左心室に挿入された、誘導カテーテルGCを通して前進させられる。カテーテルは、巾着縫合によって密閉することができる。代替として、送達カテーテル18は、誘導カテーテルを伴わずに巾着縫合で密閉した経心尖切開を通して直接配置されてもよい。シース20およびシース20内の(例えば、折り畳み構成106の)デバイス100は、図40Aに示されるように、天然弁尖LFの間の僧帽弁輪ANを通して前進させられる。図40Bを参照すると、シース20は、デバイス100が拡張および/または展開構成102、104まで拡張するように、近位に引っ張られる。送達システム10は、デバイスが拡張構成102に向かって拡張している間に、オペレータがデバイス100の配置を制御することができるように、シース20を除去した後にデバイス100に接続されたままとなることができる(例えば、示されていないシステム小穴がデバイス小穴に接続される)。引張ワイヤ30は、送達システム10からデバイス100を解放するように近位方向に後退させられてもよく、送達システム10が除去され、デバイスが展開構成104で僧帽弁MVに完全に埋め込まれることを可能にする。一実施形態では、デバイス100は、所望の標的場所の上流または下流で拡張され、次いで、送達システム10からデバイス100を解放する前に、それぞれ、下流または上流で、標的場所に引き込まれ、または押し込まれてもよい。代替として、デバイス100が展開し、送達システム10から完全に解放されるように、デバイス100は、送達システム10に接続されなくてもよい。
【0138】
示されていない別の実施形態では、デバイス100は、送達カテーテルの拡張可能なバルーンの上に載置し、バルーンの膨張によって、その機能的サイズまで拡張することができる。バルーン送達システムを使用するとき、デバイス100は、最初に標的場所にデバイスを位置付けるように、送達シャフトから前進させることができる。バルーンは、デバイス100を完全に拡張するように膨張させることができる。次いで、デバイス100は、デバイスを所望の埋込部位に(例えば、天然僧帽弁輪の直下に)位置付けるように、デバイス係止ハブを使用して調整されてもよい。別の実施形態では、バルーンは、最初に、左心房の中で弁アセンブリを部分的に拡張するように、部分的に膨張させることができる。次いで、送達システム10は、部分的に拡張した弁を(アプローチに応じて)埋込部位に押し込む、または引き込むように調整することができ、その後、弁アセンブリを、その機能的サイズまで完全に拡張することができる。
【0139】
(付加的な実施形態)
上記で説明され、図10A−40Cで図示される人工心臓弁デバイス構成要素の特徴は、本技術に従って構成される付加的な実施形態を形成するように修正することができる。例えば、図18で図示される人工心臓弁デバイス100、および安定化部材を伴わない上記で説明される他の人工心臓弁デバイスは、弁支持体または他の特徴に連結され、半径方向外向きに拡張して弁尖組織に係合するように構成される、アーム等の安定化部材を含むことができる。同様に、上記で説明され、図10A−40Cで図示される人工心臓弁デバイスのうちのいずれかは、密閉部材ならびに安定化特徴および組織係合要素等の特徴を含むことができる。上記で説明される人工心臓弁デバイス構成要素の特徴はまた、本技術の付加的な実施形態を形成するように入れ替えることもできる。
【0140】
以下の実施例は、本技術のいくつかの実施形態を例証する。
【実施例】
【0141】
1. 弁輪および弁輪に連結された弁尖を有する天然心臓弁の修復または置換のためのデバイスであって、
縦軸に沿って延在する上流端および下流端を有する弁支持体であって、前記弁支持体は、外面および内面を有し、内面は、人工弁を支持するように構成され、弁支持体は、断面形状を有する、弁支持体と、
弁支持体の上流端に連結される、拡張可能な保持器であって、弁輪の上または付近の組織に係合するように構成される、保持器と、
を備え、弁支持体は、保持器が組織との係合によって非円形の形状に変形させられたときに、弁支持体の断面形状が十分安定したままであるように、保持器から機械的に分離される、
デバイス。
2. 僧帽弁を治療するための人工心臓弁デバイスであって、
弁を支持するように構成される弁支持体と、
デバイスの上流端で弁支持体に連結される保持器であって、保持器は、少なくとも部分的に天然僧帽弁輪の弁輪下表面に沿って位置付け可能であり、保持器は、デバイスの上流移動を阻止するように構成される、保持器と、
備え、保持器は、天然生体構造によって保持器に及ぼされる歪曲力から弁支持体を機械的に分離するよう、弁支持体に連結される、
デバイス。
3. 僧帽弁を治療するための人工心臓弁デバイスであって、
天然僧帽弁輪において、またはその下流で心臓組織に係合するように構成される、拡張可能な保持器と、
拡張可能な保持器に連結され、それから下流方向に延在する、弁支持体であって、弁支持体は、人工弁を支持するように構成される、弁支持体と、
を備え、拡張可能な保持器が、天然僧帽弁輪の形状に一致するように構成される一方で、弁支持体は、実質的に不変のままである、
デバイス。
4. 患者の天然心臓弁を治療するための人工心臓弁デバイスであって、
略円形の形状を有し、人工弁を支持するように構成される、弁支持体と、
弁支持体の上流部分に連結され、心臓弁の弁輪の上または下の心臓組織に係合するように構成される、変形可能な保持器と、
弁支持体の下流部分に連結される複数のアームであって、前記複数のアームは、天然弁尖に係合するように構成され、アームは、不偏構成で弁支持体から外向きに付勢される、複数のアームと、
を備え、弁支持体は、保持器の変形が、弁支持体の略円形の形状に実質的に影響を及ぼさないように、保持器から機械的に分離される、
デバイス。
5. 保持器は、弁支持体の上流端の上流に位置付けられる、実施例1に記載のデバイス。
6. 保持器は、弁輪の内向き表面および弁輪の下流の弁尖の内向き表面から選択される、弁組織に係合するように構成される、実施例1または4に記載のデバイス。
7. デバイスは、
弁支持体および保持器が半径方向に収縮させられる、第1の構成であって、弁支持体は、第1の断面形状を有する、第1の構成と、
弁支持体および保持器が半径方向に拡張させられる、第2の構成であって、弁支持体は、第1の断面形状よりも大きい第2の断面形状を有する、第2の構成と、
保持器が、弁輪の上または付近の組織と係合させられ、それによって少なくとも部分的に変形させられる一方で、弁支持体は、第2の断面形状でとどまる、第3の構成と、
を含む、複数の構成に移動可能である、
実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
8. 保持器は、不偏状態で第2の構成を成す、実施例7に記載のデバイス。
9. 保持器は、第2の構成から第3の構成へ変形可能である、実施例7に記載のデバイス。
10. 第1の構成のデバイスは、天然心臓弁に、またはその付近に位置付けられたガイドカテーテルを通した送達のために構成される、薄型外形を有する、実施例7に記載のデバイス。
11. 保持器は、第2の構成で第1の直径を有し、第1の直径は、少なくとも天然心臓弁の天然交連の間の距離に及ぶ、実施例10に記載のデバイス。
12. 天然心臓弁は、僧帽弁である、実施例10に記載のデバイス。
13. 保持器は、外周を有し、外周は、第2の構成で略円形であり、第3の構成で略非円形である、実施例7に記載のデバイス。
14. 保持器は、内周を有し、内周は、血液が弁支持体を通って流れるための通路を画定し、内周は、第3の構成で略円形である、実施例7に記載のデバイス。
15. 弁支持体は、略円形であり、保持器は、組織に係合するときに略非円形に変形可能である、実施例1〜3のいずれか1項に記載のデバイス。
16. 保持器は、上流方向に弁支持体から外向きに延在する、複数の可撓性リブを含み、リブは、弁支持体の周囲に分布している、実施例1〜3のいずれか1項に記載のデバイス。
17. リブは、周囲に非対称に分布している、実施例16に記載のデバイス。
18. リブは、周囲に対称に分布している、実施例16に記載のデバイス。
19. 保持器は、約2個から約30個のリブを含む、実施例16に記載のデバイス。
20. 保持器は、約6個から約20個のリブを含む、実施例16に記載のデバイス。
21. 可撓性リブは、弓形リブである、実施例16に記載のデバイス。
22. 弓形リブは、縦軸に向かって内向きに配向されるリブ先端を有する、実施例21に記載のデバイス。
23. 保持器は、天然心臓弁の弁輪の対応する断面寸法よりも大きい断面寸法を有する、実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
24. 保持器の表面上に配置され、少なくとも弁輪の上または付近の組織に対して密閉し、保持器と組織との間の血流を阻止するように構成される、密閉部材をさらに備える、実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
25. 密閉部材はさらに、弁支持体の内面または外面のうちの少なくとも1つの周囲に延在し、密閉部材は、弁支持体と保持器との間の空間内で血流を阻止するように構成される、実施例24に記載のデバイス。
26. 組織を穿刺するために密閉部材に連結される複数の穿刺要素をさらに備える、実施例24に記載のデバイス。
27. 弁支持体は、複数の支柱によって円周方向に接続される複数の柱を含み、保持器は、上流方向に弁支持体から外向きに延在する複数の弓形リブを含み、リブは、弁支持体の周囲に分布している、実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
28. リブは、柱と一体である、実施例27に記載のデバイス。
29. リブは、柱および支柱のうちの少なくとも1つに連結される、実施例27に記載のデバイス。
30. 個々のリブは、締結具で柱に連結される、実施例27に記載のデバイス。
31. リブは、ハイポチューブで柱に連結される、実施例27に記載のデバイス。
32. リブは、柱に溶接または接着される、実施例27に記載のデバイス。
33. 保持器は、上流方向で外向きに延在する複数の可撓性リブを含み、複数の可撓性リブは、密閉部材によって少なくとも部分的に覆われる、実施例1に記載のデバイス。
34. 密閉部材は、ポリマー、熱可塑性ポリマー、ポリエステル、合成繊維、繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、Dacron(登録商標)、またはウシ心膜組織のうちの1つ以上を含む、実施例33に記載のデバイス。
35. 密閉部材は、密閉部材の中への組織内方成長を推進する、実施例33に記載のデバイス。
36. 保持器の外面の周囲に配置される密閉部材をさらに備え、密閉部材は、組織に対して密閉し、保持器と組織との間の血流を阻止するように構成される、実施例1に記載のデバイス。
37. 保持器は、デバイスの上部分の周囲で円周方向に位置付けられる、複数の可撓性C字形リブを含み、保持器は、弁支持体の上流端に連結されるドーナツ型のフランジである、実施例1に記載のデバイス。
38. C字形リブは、不偏状態で第1の曲率半径を有し、C字形リブが第2の曲率半径を有するように、C字形リブは、展開状態で変形させられるように構成され、第2の曲率半径は、第1の曲率半径よりも小さいか、または大きい、実施例37に記載のデバイス。
39. 複数のC字形リブのうちのいずれか1つの変形は、弁支持体を実質的に変形させない、実施例37に記載のデバイス。
40. 保持器は、弁支持体の周囲で円周方向に位置付けられる複数の可撓性リブを含み、
各個別リブは、複数のリブセグメントを含み、
各リブセグメントは、別のリブセグメントとは異なる特性を有し、特性は、形状、長さ、外形、可撓性、および縦軸に対する配向から選択される、
実施例1に記載のデバイス。
41. 各リブセグメントは、直線状、曲線状、コイル状、または傾斜のうちの1つから選択される、セグメント形状を有する、実施例40に記載のデバイス。
42. 保持器は、上流方向に弁支持体から外向きに延在する複数の可撓性リブを含み、各個別リブは、別のリブとは異なる特性を有し、特性は、形状、高さ、軸方向強度、可撓性、および縦軸に対する配向から選択される、実施例1に記載のデバイス。
43. 保持器は、上流方向に弁支持体から外向きに延在する複数の可撓性リブを含み、リブは、リブ先端を含み、リブ先端は、フック、鉤、または非外傷性表面を含む、実施例1に記載のデバイス。
44. 保持器は、上流方向に弁支持体から外向きに延在する複数の曲線状リブを含み、1つ以上のリブは、展開構成で、略円形の形状から略非円形の形状に保持器の形状を修正するように変形させられる、実施例1に記載のデバイス。
45. 保持器は、弁支持体の周囲に分布している複数の可撓性リブを含み、1つ以上のリブは、展開構成で屈曲または回転する、実施例1に記載のデバイス。
46. 保持器は、弁支持体の周囲に分布している複数の可撓性リブを含み、複数の可撓性リブのそれぞれは、弁支持体の中に載置された弁に対する収縮期血圧の力の下で、弁輪に対するデバイスの移動を阻止するのに十分なカラム強度を有する、実施例1に記載のデバイス。
47. 保持器は、弁支持体の周囲に分布している複数の可撓性リブを含み、可撓性リブは、天然心臓弁を有する心臓の中で生成される拡張期および収縮期歪曲力を吸収するように構成される、実施例1に記載のデバイス。
48. 保持器は、自己拡張式である、実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
49. 保持器は、ニチノールを含む、実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
50. 弁輪の上または付近の組織は、内径および内径に対して略直角の外径を有する、略非円形の形状を有し、
保持器が、周囲外径および周囲外径に対して直角の周囲内径を有する外周囲を有する一方で、保持器は、弁輪の上または付近の組織と係合させられ、それによって少なくとも部分的に変形させられ、
周囲外径は、外径よりも大きく、
周囲内径は、内径よりも大きい、
実施例1に記載のデバイス。
51. 保持器が、内径よりも大きい直径を有する、外周を有する一方で、保持器は、拡張および不偏構成にある、実施例50に記載のデバイス。
52. 保持器は、拡張構成に向かって付勢され、保持器が、弁輪の上または付近の組織と係合させられ、それによって少なくとも部分的に変形させられたときに、保持器は、組織に対して軸力を及ぼす、実施例50に記載のデバイス。
53. デバイスは、弁輪上組織または弁輪の上流の組織に係合しない、実施例1に記載のデバイス。
54. 弁支持体は、複数の支柱によって円周方向に接続される複数の柱を含み、柱および支柱は、山形構成で形成される、実施例1に記載のデバイス。
55. 保持器および弁支持体のうちの少なくとも1つは、ニチノールメッシュを備える、実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
56. 保持器および弁支持体のうちの少なくとも1つは、形状記憶材料を含む、実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
57. 弁支持体は、複数の支柱によって円周方向に接続される複数の柱を含み、
保持器は、柱に連結される複数の可撓性リブを含み、
柱は、リブよりも剛性である、
実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
58. 弁支持体の下流端で柱に連結される接続リングをさらに備える、実施例57に記載のデバイス。
59. 円周方向支持を保持器に提供するために複数の可撓性リブに係合する、支持リングをさらに備える、実施例57に記載のデバイス。
60. 保持器または弁支持体のうちの少なくとも1つの上に複数の組織係合要素をさらに備え、組織係合要素は、弁輪の上または付近の組織に係合するように構成される、実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
61. 組織係合要素は、鉤、フック、またはスパイクのうちの1つである、実施例60に記載のデバイス。
62. 保持器は、弁支持体の上流端に連結される拡張可能なメッシュを含み、拡張可能なメッシュは、裏返って、弁支持体の第2の断面寸法よりも大きい第1の断面寸法を有する保持器を形成するように構成される、実施例1に記載のデバイス。
63. 保持器は、弁支持体の上流端に連結される拡張可能なメッシュを含み、拡張可能なメッシュは、丸まって、弁支持体の第2の断面寸法よりも大きい第1の断面寸法を有する保持器を形成するように構成される、実施例1に記載のデバイス。
64. 上流方向、下流方向、または横方向へのデバイスの移動を阻止する、1つ以上の安定化部材をさらに備える、実施例1に記載のデバイス。
65. 弁支持体に連結され、アームと外面との間に弁尖を受容するように構成される、複数のアームをさらに備える、実施例1に記載のデバイス。
66. アームは、弁輪の弁輪下表面に係合する、実施例65に記載のデバイス。
67. 弁支持体に連結され、弁輪の下流の弁尖の内向き表面に係合するように構成される、複数のアームをさらに備える、実施例1に記載のデバイス。
68. アームは、弁尖の内向き表面を貫通するための1つ以上の組織係合要素を含む、実施例67に記載のデバイス。
69. 複数のアームは、弁輪または弁輪の下流の弁尖の係合によって、心房に向かったデバイスの移動を阻止するように構成される、実施例65または67に記載のデバイス。
70. 複数のアームは、患者の血管系を通したデバイスの送達のための内向き構成から、弁輪の上または付近の組織の係合のための外向き構成に移動可能である、実施例65または67に記載のデバイス。
71. アームは、保持器に係合するためのアーム拡張部を含む、実施例65に記載のデバイス。
72. アームは、弁支持体と一体的に形成される、実施例65に記載のデバイス。
73. 1つ以上のアームは、1つ以上の横方向に配向したアーム支柱と接続される、実施例65に記載のデバイス。
74. デバイスの下流移動が、弁輪上表面または心房組織との心房保持器の係合によって遮断されるように、弁輪の弁輪上表面または心房組織に係合するように構成される心房保持器をさらに備える、実施例1に記載のデバイス。
75. 逆行血流を阻止するように弁支持体に連結される弁をさらに備える、実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
76. 弁は、三葉弁である、実施例75に記載のデバイス。
77. 弁は、二葉弁である、実施例75に記載のデバイス
78. 弁は、ウシ心膜を備える、実施例75に記載のデバイス。
79. 複数の交連付着構造が、弁を弁支持体の内面に連結する、実施例75に記載のデバイス。
80. 弁支持体に連結される一時弁をさらに備え、弁支持体はさらに、デバイスが天然心臓弁に埋め込まれた後に置換弁を受容するように構成される、実施例1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
81. 一時弁は、置換弁が弁支持体の中に受容されたときに、弁支持体の内面に対して変位させられるように適合される、実施例80に記載のデバイス。
82. 一時弁は、除去可能な弁を備え、置換弁は、一時弁が除去された後に弁支持体内に固定される、実施例80に記載のデバイス。
83. 保持器から天然僧帽弁輪の少なくとも部分的に上流の位置まで延在する、心房拡張部材をさらに備える、実施例2または3に記載のデバイス。
84. 弁輪および複数の弁尖を有する天然心臓弁の置換のための方法であって、
折り畳み構成で弁尖の間に人工装具を位置付けるステップと、
人工装具の保持器が弁輪の上または下の組織に係合する弁輪下位置にあるように、人工装具が拡張することを可能にするステップであって、保持器は、弁輪下位置で、弁輪の対応する直径よりも大きい直径を有する、ステップと、
弁支持体が拡張することを可能にするステップであって、弁支持体は、弁支持体の上流端で保持器に連結される、ステップと、
を含み、弁支持体は、組織に係合するときの保持器の変形が、弁支持体を実質的に変形させないように、保持器から機械的に分離される、
方法。
85. 人工装具は、実施例1〜83のいずれか1項に記載のデバイスを備える、実施例84に記載の方法。
86. 弁尖の間に人工装具を位置付ける前に、カテーテルによってデバイスを送達するステップをさらに含む、実施例84に記載の方法。
87. 拡張構成でデバイスを暴露するように、カテーテル上のシースを後退させ、保持器の上流部分が組織に係合するように、上流方向にデバイスを移動させるステップをさらに含む、実施例86に記載の方法。
88. 右心房からの経中隔アプローチ、左心室切開または穿孔を介した経心尖アプローチ、または大動脈を通した経大動脈アプローチのうちの1つ以上によって、送達構成でデバイスを保持するように構成されるカテーテルをナビゲートするステップをさらに含む、実施例86に記載の方法。
89. 患者の僧帽弁であって、弁輪および弁尖を有する僧帽弁を治療する方法であって、
弁輪内に、またはそれに隣接してデバイスを埋め込むステップを含み、デバイスは、弁支持体と、弁支持体の上流端に連結される変形可能な保持器とを備え、少なくとも保持器は、弁尖の間に配置され、保持器は、弁輪の上または付近の組織に係合して、上流方向へのデバイスの移動を防止するように構成され、
弁支持体は、保持器が組織との係合によって変形させられた場合に、弁支持体の断面形状が実質的に変化しないように、保持器から機械的に分離される、
方法。
90. デバイスを埋め込むステップは、
デバイスが送達構成にあるときに、弁尖の間および弁輪の下流にデバイスを位置付けるステップと、
保持器が弁尖の間に延在する状態で、送達構成から拡張構成へデバイスを拡張するステップと、
弁輪の上または下流の組織を保持器と係合させるように、上流方向にデバイスを移動させるステップと、
を含む、実施例89に記載の方法。
91. 保持器が弁輪の上または下流の組織に係合した後に、弁支持体を半径方向に拡張するステップをさらに含む、実施例89に記載の方法。
92. デバイスは、実施例1〜83のいずれか1項に記載のデバイスである、実施例89に記載の方法。
93. 僧帽弁に埋め込む前にカテーテルによってデバイスを送達するステップをさらに含む、実施例89に記載の方法。
94. 拡張構成でデバイスを暴露するように、カテーテル上のシースを後退させ、保持器が弁輪下組織に係合するように、上流方向にデバイスを移動させるステップをさらに含む、実施例93に記載の方法。
95. 右心房からの経中隔アプローチ、左心室切開または穿孔を介した経心尖アプローチ、または大動脈を通した経大動脈アプローチのうちの1つ以上によって、送達構成でデバイスを保持するように構成されるカテーテルをナビゲートするステップをさらに含む、実施例89に記載の方法。
96. 弁支持体に連結された1つ以上の安定化部材を天然組織と係合させるステップをさらに含む、実施例89に記載の方法。
97. 弁輪を有する患者の僧帽弁を治療するシステムであって、
実施例1〜83のいずれか1項に記載のデバイスを備える、デバイスと、
その中にデバイスを保持するように構成される管腔を有する、カテーテルと、
を備える、システム。
98. 僧帽弁にデバイスを配置した後にデバイスに連結するように構成される、置換弁をさらに備える、実施例97に記載のシステム。
99. 置換弁に連結される送達カテーテルをさらに備える、実施例98に記載のシステム。
100. カテーテルは、デバイスの複数部分を半径方向に拡張するように構成される、拡張可能な部材を備える、実施例99に記載のシステム。
101. カテーテルは、格納式シースを備え、デバイスは、シース内に含有され、デバイスは、シースが後退させられたときに自己拡張するように構成される、実施例99に記載のシステム。
102. カテーテルは、ガイドワイヤを摺動可能に受容するように適合されるガイドワイヤ管腔を備え、ガイドワイヤ管腔は、それを通してガイドワイヤが摺動可能に挿入され得る、近位および遠位ポートを有する、実施例99に記載のシステム。
【0142】
(結語)
本技術の実施形態の上記の詳細な説明は、包括的となること、または本技術を上記で開示される正確な形態に限定することを目的としていない。本技術の具体的実施形態および実施例は、例証目的で上記に説明されるが、当業者によって認識されるように、種々の同等な修正が本技術の範囲内で可能である。例えば、ステップは所与の順序で提示されるが、代替的な実施形態は、異なる順序でステップを行ってもよい。本明細書で説明される種々の実施形態はまた、さらなる実施形態を提供するように組み合わせられてもよい。
【0143】
先述の内容から、本技術の具体的実施形態は、例証の目的で本明細書において説明されているが、本技術の実施形態の説明を不必要に曖昧にすることを回避するために、周知の構造および機能は詳細に示されず、または説明されていないことが理解されるであろう。文脈が許可する場合、単数形または複数形の用語はまた、それぞれ、複数形または単数形の用語を含んでもよい。
【0144】
また、「または」という言葉が、2つ以上の項目のリストを参照して、他の項目から排他的な単一の項目のみを意味するように明示的に限定されない限り、次いで、そのようなリストの中の「または」の使用は、(a)リストの中の任意の単一の項目、(b)リストの中の項目の全て、または(c)リストの中の項目の任意の組み合わせを含むものとして解釈されるものである。加えて、「備える」という用語は、任意のより多くの数の同一の特徴および/または付加的な種類の他の特徴が除外されないように、少なくとも記載された特徴を含むことを意味するために、全体を通して使用される。また、具体的実施形態が、例証の目的で本明細書において説明されているが、本技術から逸脱することなく、種々の修正が行われてもよいことも理解されるであろう。さらに、本技術のある実施形態と関連付けられる利点が、これらの実施形態との関連で説明されているが、他の実施形態もまた、そのような利点を示してもよく、全ての実施形態が、本技術の範囲内に入るために、そのような利点を必ずしも必要とするわけではない。したがって、本開示および関連技術は、本明細書で明示的に示されていない、または説明されていない、他の実施形態を包含することができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図28C
図29A
図29B
図30-1】
図30-2】
図31A
図31B
図32
図33-1】
図33-2】
図34
図35-1】
図35-2】
図36A
図36B
図36C
図37A
図37B
図37C
図37D
図38
図39A
図39B
図39C
図40A
図40B
図40C