(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のように、固定式の切離板や補助切離板をコンベアケース内に設けることで、切屑をスクレーパーやチェーンから除去することができるが、スクレーパーに付着している切屑の量は様々であり、仮に多くの切屑がスクレーパーに付着している状態で固定式の切離板や補助切離板に接触すると、切離板や補助切離板に対して無理な力が生じ易く、損傷を招くおそれがある。
【0007】
そこで、特許文献2のように、スラッジ掻き落とし板の上端部を支軸によってコンベアケースに揺動自在に支持し、スラッジ掻き落とし板の下側を移動できるようにすることが考えられる。
【0008】
しかし、特許文献2の場合、スラッジ掻き落とし板の下側が水平方向に移動する構造となっているので、スクレーパーの走行方向に作用するわずかな力であってもスラッジ掻き落とし板の下側が容易に移動してしまう。つまり、スクレーパーに付着している切屑が当たっただけでもスラッジ掻き落とし板が移動してしまい、切屑をスクレーパーから除去する効果が低くなってしまうおそれがある。
【0009】
また、スラッジ掻き落とし板を可動式にすると、切屑の堆積によってスラッジ掻き落とし板の動きが阻害されるおそれもある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スクレーパーに付着した切屑をスクレーパーから除去する除去部材を揺動可能に設ける場合に、除去部材による除去性能を長期間に亘って高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、除去部材を上下方向に揺動自在に設け、切屑を除去部材から落下させることができるようにした。
【0012】
第1の発明は、工作機械から排出される切屑を含んだクーラントが導入される導入口と、切屑を排出する排出口とを有するコンベアケースと、前記コンベアケースの底板に堆積した切屑を前記排出口へ向けて搬送するように前記コンベアケース内を循環走行するスクレーパーとを備えたクーラント処理装置において、前記コンベアケースには、該コンベアケースの内部における前記排出口の上方に、該排出口の上方まで移動した前記スクレーパーに付着した切屑に接触して当該切屑を除去するように配置される
板材で構成された除去部材と、該除去部材を上下方向に揺動可能に前記コンベアケースに支持する支軸とを備え、前記除去部材には、前記スクレーパーから除去した切屑を落下させるための切屑通過部が設けられ
、前記切屑通過部は、前記除去部材の一部を切り欠くことによって形成された切欠部と、前記除去部材に形成された貫通孔との少なくとも一方で構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、工作機械から排出された切屑を含んだクーラントは、コンベアケースの導入口から該コンベアケース内に導入される。コンベアケースの底板に堆積した切屑は、スクレーパーによって排出口へ向けて搬送されて該排出口から排出される。スクレーパーには切屑が付着することがあり、この切屑は排出口から排出されない場合がある。
【0014】
本発明では、除去部材がスクレーパーに付着した切屑に接触して当該切屑を除去するので、切屑がスクレーパーに付着したままになりにくい。例えば大きな塊状の切屑が除去部材に付着していた場合には、除去部材が支軸回りに揺動することで、各部に無理な力が加わりにくくなる。このとき、除去部材の揺動方向は上下方向であることから、除去部材の重量を利用して除去部材をスクレーパーに付着した切屑に積極的に接触させることができ、これにより、切屑の除去性能が高まる。また、除去部材が元の位置に戻ろうとする復元力も高まる。
【0015】
スクレーパーから除去された切屑は、除去部材の切屑通過部を通過して落下し、その下方に位置する排出口から排出される。これにより、切屑の堆積が抑制され、除去部材の揺動が阻害されなくなる。
【0016】
また、除去部材に形成した切欠部や貫通孔によって切屑通過部を容易に設けることが可能になる。
【0017】
第
2の発明は、前記除去部材における一端側が、前記排出口の上方まで移動した前記スクレーパーに対向するように配置され、前記除去部材における他端側が前記支軸により支持され、前記切屑通過部は、前記除去部材における他端側に設けられていることを特徴とする。
【0018】
すなわち、切屑通過部が切欠部や貫通孔で構成されている場合には、除去部材における切屑通過部が設けられた側は軽くなる。本発明では、除去部材における支軸側に切屑通過部が設けられることになるので、除去部材における支軸側が軽くなる。よって、切屑に接触する側である除去部材の一端側の重さが所定以上確保され、除去部材の重量を利用して切屑の除去性能が高まるとともに、復元力も高まる。
【0019】
第
3の発明は、前記除去部材における一端側には、重りが固定されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、切屑に接触する側である除去部材の一端側がより一層重くなるので、切屑の除去性能及び復元力がさらに高まる。
【0021】
第
4の発明は、前記重りは前記除去部材の揺動中心線方向に延びる補強部材であることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、重りを利用して除去部材の変形を抑制することが可能になる。
【0023】
第
5の発明は、前記補強部材は、前記除去部材の一端から離れて設けられていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、例えば除去部材の一端に対して無理な力が作用した場合には、当該一端には補強部材が無いので、一端が例えば屈曲等することで、除去部材の全体の破損を回避することが可能になる。
【0025】
第
6の発明は、前記除去部材は、外力が作用しない初期位置において上面が傾斜するように配置されることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、除去部材の上面に切屑が存在している場合に、その切屑が上面の傾斜によって下方へ移動しやすくなり、除去部材の上面への切屑の堆積が抑制される。
【発明の効果】
【0027】
第1の発明によれば、スクレーパーに付着した切屑を除去する除去部材を上下方向に揺動可能にコンベアケースに支持し、除去部材に、スクレーパーから除去した切屑を落下させるための切屑通過部を設けたので、除去部材による除去性能を長期間に亘って高めることができる。
【0028】
また、板材からなる除去部材に切屑通過部を容易に設けることができる。
【0029】
第
2の発明によれば、除去部材における支軸側に切屑通過部を設けたので、除去部材の切屑に接触する側の重さを所定以上確保することができ、除去部材の重量を利用した切屑の除去性能及び復元力を高めることができる。
【0030】
第
3の発明によれば、除去部材における一端側に重りを固定したので、切屑の除去性能及び復元力をさらに高めることができる。
【0031】
第
4の発明によれば、除去部材の剛性を高めることができる。
【0032】
第
5の発明によれば、補強部材が除去部材の一端から離れているので、無理な力が作用した場合には、当該一端が例えば屈曲等することになり、除去部材の全体の破損を回避することができる。
【0033】
第
6の発明によれば、除去部材の上面への切屑の堆積を抑制することができるので、除去部材の動きを良好に保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係るクーラント処理装置1を示すものである。クーラント処理装置1は、例えばマシニングセンタ等の工作機械(図示せず)から排出された切屑(例えば切削屑や金属粉等)を含んだクーラントを濾過(処理)するための装置である。工作機械から排出されたクーラントに含まれる切屑は、例えば糸状のものや粉状のもの等があり、これらが混ざっている。切屑はクーラント中の異物である。例えば、糸状の切屑の場合、互いに絡まり合って塊状になることもある。また、クーラントは水であってもよいし、その他の成分のものであってもよい。
【0037】
(クーラント処理装置1の全体構成)
クーラント処理装置1は、
図1に示す上流側部2A及び下流側部2Bを有するコンベアケース2と、
図2や
図3に示す複数のスクレーパー5と、ローラチェーン6と、ローラチェーン6を駆動する駆動装置7(
図1に示す)とを備えている。工作機械から排出された切屑を含んだクーラントは、コンベアケース2の上流側部2Aに導入される。クーラントは上流側部2Aから下流側部2Bに流れ、また、ローラチェーン6によって循環走行するスクレーパー5によって切屑が下流側部2Bに搬送されてコンベアケース2の外部に排出される。クーラントは、図示しないが、ポンプ等によって2次濾過装置に送られる。
【0038】
尚、この実施形態の説明では、各図に示す右側をクーラント処理装置1の右側とし、各図に示す左側をクーラント処理装置1の左側と定義するが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであって、実際の設置状態における左右方向は特に限定されず、どちら側を左にしてもよい。また、各図に示す上流側をクーラント処理装置1の上流側とし、各図に示す下流側をクーラント処理装置1の下流側とする。上流側及び下流側とは、工作機械(図示せず)から排出された切屑を含むクーラントの流れ方向の上流側及び下流側に対応している。設置状況によっては、上流側及び下流側を左側及び右側と呼ぶこともできる。
【0039】
(コンベアケース2の構成)
コンベアケース2は、該コンベアケース2の上流側を構成する上流側部2Aと、該コンベアケース2の下流側を構成する下流側部2Bとを有しており、
図2に示すように、上流側部2Aの方が下流側部2Bよりも長く形成されている。上流側部2Aは、工作機械の下部等に配置されるようになっている。上流側部2Aの下流側端部と、上流側部2Aの上流側端部とが接続されて一体化されるようになっている。尚、
図1では、スクレーパー5及びローラチェーン6を省略している。
【0040】
図1に示すように、コンベアケース2は、底板20と、左側板21と、右側板22と、上板23とを備えている。底板20、左側板21、右側板22及び上板23は、上流側部2Aと下流側部2Bとの境界部において分割可能に構成されている。上流側部2Aの上板23には、工作機械から排出される切屑を含んだクーラントが導入される導入口23aが形成されている。この導入口23aの上方に工作機械のクーラント排出部(図示せず)は配置されており、工作機械から排出されるクーラントは、導入口23aから上流側部2Aへ直接導入されるようになっている。また、左側板21及び右側板22は、コンベアケース2の左側壁部及び右側壁部をそれぞれ構成する部材である。
【0041】
下流側部2Bの下流部は上方へ屈曲するように形成されている。すなわち、下流側部2Bの左側板21及び右側板22の下流部は、上流部よりも上方へ延びるように形成され、この左側板21及び右側板22の形状に対応するように、下流側部2Bの上板23及び底板20の下流部は上方へ延びるように形成されている(
図3参照)。
図3に示すように、下流側部2Bの下流端部には、上下方向に延びる後端板部24が設けられている。後端板部24の上端部は、上板23の下流端に連なっている。
図4に示すように、後端板部24には開口部24aが設けられているが、この開口部24aは、クーラント処理装置1の運転時には別部材からなる閉塞部材(図示せず)によって閉塞される。
【0042】
図3に示すように、下流側部2Bの底板20には、上流側部2Aに近い側にマグネットユニット20aが設けられている。マグネットユニット20aは、複数の永久磁石を有しており、この永久磁石の磁力によって切屑を下流側部2Bの底板20に吸着することができるようになっている。
【0043】
下流側部2Bの底板20におけるマグネットユニット20aよりも下流側は、下流端へ近づくほど上に位置するように形成されたスロープ状をなしている。下流側部2Bの底板20の下流部の高さは、後端板部24の下端部と略同じ高さに設定されている。また、下流側部2Bの底板20の下流部は、後端板部24の下端部から上流側へ所定距離だけ離間している。これにより、下流側部2Bの底板20の下流部と、後端板部24の下端部との間に、切屑を排出するための排出口25が前記導入口23aから下流側に離れて形成されることになる。排出口25の左右方向の寸法は、下流側部2Bの左側板21と右側板22との離間寸法と同じであり、したがって、排出口25は左右方向に長い開口部となる。排出口25からは、切屑だけでなく、切屑に含まれているクーラントも排出されることがある。
【0044】
(スクレーパー5の構成)
スクレーパー5は、コンベアケース2内を循環走行してコンベアケース2の底板20に堆積した切屑を排出口25へ向けて搬送するための部材である。複数のスクレーパー5が循環走行方向に互いに間隔をあけて設けられている。スクレーパー5は、例えば金属製の板材で構成することができ、コンベアケース2内において左右方向に延びている。
図6に示すように、スクレーパー5の左端部は、コンベアケース2の左側板21の内面から右側に所定の間隔をあけて配置され、また、スクレーパー5の右端部は、コンベアケース2の右側板22の内面から左側に所定の間隔をあけて配置されている。これにより、スクレーパー5の左端部とコンベアケース2の左側板21との間、及びスクレーパー5の右端部とコンベアケース2の右側板22との間に、それぞれローラチェーン6を配設することが可能なスペースが確保される。
【0045】
スクレーパー5は、ローラチェーン6のリンク板6b(後述する)に固定される固定板部5aと、固定板部5aからローラチェーン6の循環軌道の外方へ向けて突出する突出板部5bとを有している。突出板部5bの先端部は、コンベアケース2の底板20に接近するようになっており、主に突出板部5bが切屑を掻き取って搬送する部分である。
【0046】
(ローラチェーン6の構成)
図5及び
図6に示すように、ローラチェーン6は、コンベアケース2内において左側板21の近傍及び右側板22の近傍にそれぞれ配設されており、無端状、即ち環状となっている。左右のローラチェーン6は基本的には同じ構造のものであり、左右対称になっている。左のローラチェーン6と、コンベアケース2の左側板21とは左右方向に離れており、また、右のローラチェーン6と、コンベアケース2の右側板22とも左右方向に離れている。
【0047】
左のローラチェーン6は左側板21に沿うように、コンベアケース2の上流部から下流部に亘っており、そのうち、下に位置する部分がコンベアケース2の上流部から下流部へ走行し、上に位置する部分が反対方向に走行する。コンベアケース2の上流部においてはローラチェーン6が折り返して走行する。さらに、コンベアケース2の下流部が上に位置していることから、ローラチェーン6は、コンベアケース2の下流部の排出口25の上方まで斜め上に向けて走行した後、コンベアケース2の下流部において折り返して走行する。右のローラチェーン6も同様に走行する。このようなローラチェーン6の走行軌跡は、後述するガイド板30〜33及びスプロケット72、73によって実現される。
【0048】
ローラチェーン6は、複数のローラ6aと、ローラ6aを回動可能に連結する左右のリンク板6bとを備えている。ローラ6aは、左右方向に延びる回転軸6d(
図7に示す)周りに回転可能に支持されており、ローラチェーン6の走行方向に所定の間隔をあけて並んでいる。リンク板6bは、ローラ6aの回転軸方向両側(左右方向両側)にそれぞれ配設されており、走行方向に隣合うローラ6aを回動可能に連結する部材である。具体的には、左側に配置されるリンク板6bは、あるローラ6aの回転軸6dの左端部と、このローラ6aに隣合って配置されているローラ6aの回転軸6dの左端部とを連結しており、ローラチェーン6の走行方向に長い形状になっている。また、右側に配置されるリンク板6bも同様であり、あるローラ6aの回転軸6dの右端部と、このローラ6aに隣合って配置されているローラ6aの回転軸6dの右端部とを連結している。したがって、左側のリンク板6bと、右側のリンク板6bとは、ローラ6aの左右方向の寸法Wと同程度離れることになる。左右のリンク板6bは同じ部材で構成することができる。
【0049】
図7に示すように、リンク板6bは、ローラ6aの外周面から該ローラ6aの径方向両側に突出するように形成されている。具体的には、リンク板6bの短径方向の寸法Bがローラ6aの外径Cよりも長く設定されており、リンク板6bの短径方向の中心とローラ6aの回転軸6dの中心とが一致しているので、
図7に示す状態でリンク板6bの上端部がローラ6aの外周面よりも上に位置し、リンク板6bの下端部がローラ6aの外周面よりも下に位置する。
【0050】
左のリンク板6bには、スクレーパー5の固定板部5aを固定するためのブラケット6eが取り付けられている。スクレーパー5はブラケット6eを介して右側のローラチェーン6に固定されることになる。スクレーパー5を左側のローラチェーン6に固定する構造も同様である。
【0051】
右のローラチェーン6におけるコンベアケース2の幅方向外側(右側)には、コンベアケース2の底板20側へ突出する突出部6cが設けられている。突出部6cは、リンク部材6bとは別部材とされ、右のリンク部材6bに対して固定されている。突出部6cの先端部は、
図7に示す状態で底板20近傍に達している。突出部6cは、ローラチェーン6の走行方向に間隔をあけて複数設けることができる。左のローラチェーン6にも同様な突出部が設けられている。
【0052】
ローラチェーン6の突出部6cが左のローラチェーン6とコンベアケース2の左側板21との間、及び右のローラチェーン6とコンベアケース2の右側板22との間にそれぞれ位置することになる。ローラチェーン6と左側板21との間、ローラチェーン6と右側板22との間に切屑が存在している場合に、その切屑をローラチェーン6の突出部6cによってローラチェーン6の走行方向に掻き出すことが可能になる。
【0053】
(駆動装置7の構成)
駆動装置7は、ローラチェーン6を駆動するモータ70(
図1、
図4に示す)と、モータ70の回転力が入力される減速機71(
図1、
図4に示す)と、駆動スプロケット72(
図2に示す)と、従動スプロケット73(
図2に示す)とを備えている。
図1に示すように、モータ70及び減速機71は、コンベアケース2の下流側部2Bの右側板22に取り付けられている。
図2に示すように、駆動スプロケット72は、コンベアケース2の下流側部2Bの下流部内において排出口25よりも上に配置されており、左右方向に延びる回転軸72aに結合されている。回転軸72aの両端部は、下流側部2Bの左側板21及び右側板22に対してそれぞれ軸受(図示せず)を介して支持されている。駆動スプロケット72は、ローラチェーン6の位置に対応して下流側部2Bの左側と右側にそれぞれ設けられている。モータ70の回転力は減速機71を介して回転軸72aに伝達される。回転軸72aが回転することで駆動スプロケット72が回転する。
【0054】
従動スプロケット73は、コンベアケース2の上流側部2Aの上流部内において導入口23aよりも下に配置されており、左右方向に延びる回転軸73aによって回転可能に支持されている。回転軸73aの両端部は、上流側部2Aの左側板21及び右側板22に対してそれぞれ軸受(図示せず)を介して支持されている。従動スプロケット73は、ローラチェーン6の位置に対応して上流側部2Aの左側と右側にそれぞれ設けられている。
【0055】
左のローラチェーン6は、左の駆動スプロケット72及び従動スプロケット73に巻き掛けられ、右のローラチェーン6は、右の駆動スプロケット72及び従動スプロケット73に巻き掛けられている。これにより、1つのモータ70によって左右のローラチェーン6を走行させることができ、複数のスクレーパー5を循環駆動することができる。
【0056】
(ローラチェーン6のガイド構造)
図5及び
図6に示すように、コンベアケース2の内部の左側には、左のローラチェーン6の下に位置する部分を案内する下側ガイド板30及び上側ガイド板31と、左のローラチェーン6の上に位置する部分を案内する第1補助ガイド板32及び第2補助ガイド板33とが設けられている。
【0057】
また、コンベアケース2の内部の右側にも同様に、右のローラチェーン6の下に位置する部分を案内する下側ガイド板30及び上側ガイド板31と、右のローラチェーン6の上に位置する部分を案内する第1補助ガイド板32及び第2補助ガイド板33とが設けられている。
図2に示すように、ガイド板30〜33は、コンベアケース2の上流側部2Aの上流部から下流側部2Bに亘って略連続するように設けられている。左側のガイド構造と右側のガイド構造とは基本的には同じであり、左右対称となっている。以下、右側のガイド構造について詳細に説明する。
【0058】
図7に示すように、下側ガイド板30は、右のローラチェーン6のローラ6aの下側に配設されて該ローラ6aを支持するとともに、ローラチェーン6の走行方向に延びている。下側ガイド板30の下端部はコンベアケース2の底板20に対して例えば溶接等の固定方法によって固定されている。これにより、下側ガイド板30がコンベアケース2の底板20によって支持されることになるので、別途支持部材を設ける必要がなくなり、コンベアケース2の構造がシンプルになる。
【0059】
また、下側ガイド板30は底板20から上方へ延びるように形成されており、シンプルな形状となっている。下側ガイド板30の板厚T1の寸法は、右側のリンク板6bと左側のリンク板6bとの間隔(寸法W)よりも短く設定されている。これにより、下側ガイド板30の上端部が右側のリンク板6bと左側のリンク板6bとの間に配置されてローラ6aの外周面に接触可能となる。
【0060】
図6に示すように、上側ガイド板31は、右のローラチェーン6のローラ6aの上側に配設され、ローラチェーン6の走行方向に延びている。上側ガイド板31は、コンベアケース2の右側板22に固定される固定板部31aと、該固定板部31aの下端部からコンベアケース2の内方(左方向)へ延びる横板部31bと、該横板部31bの先端側からローラ6aの上側まで延びる縦板部31cとを備えている。上側ガイド板31は、プレス金型(図示せず)によって折曲げ成形されたプレス成形品であり、固定板部31a、横板部31b及び縦板部31cは1枚の板材で構成されている。下側ガイド板30の板厚T1は、上側ガイド板31の板厚T2よりも厚く設定されている。言い換えると、プレス成形品である上側ガイド板31の板厚T2が相対的に薄いので、プレス成形時の成形性が良好になる。尚、下側ガイド板30の板厚T1と、上側ガイド板31の板厚T2とは同じにしてもよいし、下側ガイド板30の板厚T1を上側ガイド板31の板厚T2よりも薄く設定してもよい。
【0061】
固定板部31aは、コンベアケース2の右側板22に沿って上下方向に延びており、右側板22に対して例えば溶接等の固定方法によって固定されている。横板部31bは、右のローラチェーン6と、コンベアケース2の右側板22との間に形成されている空間を上方から覆う覆い部となる部分であり、この横板部31bを設けていることで、クーラント中の切屑が右のローラチェーン6とコンベアケース2の右側板22との間に堆積しにくくなる。
【0062】
図7に示すように、縦板部31cの下端部は、右のローラチェーン6のローラ6aの外周面から僅かに上に離れて配置されており、縦板部31cの下端部とローラ6aの外周面とが上下方向に対向する位置関係となっている。また、縦板部31cの下端部は、下側ガイド板30の上端部の直上方に位置している。これにより、ローラチェーン6が上下方向に位置決めされる。
【0063】
また、スクレーパー5に対して走行中に何らかの理由によってコンベアケース2の幅方向に力が作用することがあり、この場合、ローラチェーン6がコンベアケース2の幅方向に動こうとする。この実施形態では、下側ガイド板30の上端部が幅方向両側のリンク板6b、6bの間に位置していることで、下側ガイド板30の上端部と一方のリンク板6bとが接触し、ローラチェーン6の幅方向への動きが規制される。同様に、上側ガイド板31の下端部が幅方向両側のリンク板6b、6bの間に位置していることで、上側ガイド板31の下端部と一方のリンク板6bとが接触することでローラチェーン6の幅方向への動きが規制される。したがって、ローラチェーン6におけるコンベアケース2の下側を走行する部分の上下方向の位置決めと、幅方向の位置決めとが上側ガイド板31及び下側ガイド板30によって行われる。
【0064】
縦板部31cの下端部と、下側ガイド板30の上端部との間隔は、ローラ6aの外径寸法Cよりも長く設定されており、ローラチェーン6がスムーズに走行できるようになっている。縦板部31cの下端部と、下側ガイド板30の上端部との間隔は、リンク板6bの短径方向の寸法Bよりも短く設定することができる。
【0065】
両ガイド板30、31の板厚を薄くすることによって成形性が向上するとともに、コスト的にも有利になる反面、両ガイド板30、31の板厚が薄いとローラチェーン6の幅方向の動き量が多くなり、位置決めの効果が低下する懸念がある。このことに対して、本実施形態では、上側ガイド板31の縦板部31cの下端部における板厚方向の中心と、下側ガイド板30の上端部における板厚方向の中心とがコンベアケース2の幅方向にずれるように配置している。これにより、両ガイド板30、31の板厚が薄くても、ローラチェーン6の幅方向の動きの許容量が小さくなるので、位置決めの効果を高めることができる。
【0066】
尚、上側ガイド板31の縦板部31cの下端部における板厚方向の中心と、下側ガイド板30の上端部における板厚方向の中心とはコンベアケース2の幅方向について一致していてもよい。また、上側ガイド板31の縦板部31cの下端部における板厚方向の中心と、下側ガイド板30の上端部における板厚方向の中心とは、長手方向の一部のみ、コンベアケース2の幅方向にずれるように配置することもできる。
【0067】
図5及び
図6に示すように、第1補助ガイド板32及び第2補助ガイド板33は、下側ガイド板30及び上側ガイド板31と同様な構成にすることができる。第1補助ガイド板32は、右のローラチェーン6のうち、上側に位置する部分のローラ6aの下側に配設されて該ローラ6aを支持するとともに、ローラチェーン6の走行方向に延びている。また、第2補助ガイド板33は、右のローラチェーン6のうち、上側に位置する部分のローラ6aの上側に配設され、ローラチェーン6の走行方向に延びている。
【0068】
第1補助ガイド板32は、下側取付部材34によってコンベアケース2の右側板22に固定されている。また、第2補助ガイド板33は、上側取付部材35によってコンベアケース2の右側板22に固定されている。第1補助ガイド板32及び第2補助ガイド板33により、ローラチェーン6におけるコンベアケース2の上側を走行する部分の上下方向の位置決めと、幅方向の位置決めとが行われるようになっている。
【0069】
(スクレーパー5に付着した切屑の除去構造)
図8に示すように、コンベアケース2の下流部の内部には、排出口25の上方に、該排出口25の上方まで移動したスクレーパー5に付着した切屑に接触して当該切屑を除去するように配置される除去部材37が設けられている。さらに、コンベアケース2には、除去部材37を上下方向に揺動可能に該コンベアケース2に支持する支軸38が設けられている。
【0070】
除去部材37は、コンベアケース2の左右方向に長い金属製の板材で構成されている。
図9に示すように、除去部材37の一端側(
図9における上側)の端縁部には、複数の歯37aが除去部材37の長手方向に並ぶように形成されている。この歯37aの形状は特に限定されるものではなく、切屑を掻き取りやすい形状であればよい。また、歯37aは省略してもよく、この場合、除去部材37の端縁部は直線状になる。
【0071】
除去部材37の他端側(
図9における下側)には、長手方向(
図9の左右方向)の両側にそれぞれ取付部37bが除去部材37の下方へ折曲げられることによって形成されている。取付部37bは、支軸38によって回動可能に支持される部分である。
【0072】
また、除去部材37の他端側には、左右の取付部37bの間に、除去部材37の一部を切り欠くことによって形成された切欠部37cが設けられている。切欠部37cは、左右方向に長い形状である。この切欠部37cは、スクレーパー5から除去した切屑を落下させるための切屑通過部である。尚、図示しないが、切屑通過部は、除去部材37に形成された貫通孔であってもよい。また、除去部材37には、複数の切欠部や複数の貫通孔を設けることができ、切欠部と貫通孔の両方を設けることもできる。
【0073】
図8に示すように、除去部材37における一端側が、排出口25の上方まで移動したスクレーパー5に対向するように配置されており、除去部材37の歯37aとスクレーパー5の先端部とは接触しないように、両者の間には予め隙間が設けられている。このように配置された除去部材37は、その他端側が支軸38により支持される。支軸38は、コンベアケース2の左側板21における排出口25よりも上側の部分に対して左右方向に延びるように取り付けられ、また、コンベアケース2の右側板22における排出口25よりも上側の部分に対しても左右方向に延びるように取り付けられている。左側の支軸38が除去部材37の左側の取付部37bを貫通するようになっており、また、右側の支軸38が除去部材37の右側の取付部37bを貫通するようになっている。したがって、除去部材37は支軸38の中心線周りに上下方向に揺動可能になる。
【0074】
除去部材37に対して重力以外の外力が作用しないときには、除去部材37は
図8に実線で示す初期位置にある。初期位置では、除去部材37の上面が支軸38側に向かって下降傾斜するように配置される。初期位置の設定は、図示しないストッパ部材等によって可能である。
【0075】
除去部材37における一端側には、例えば金属製の重り37dが固定されている。重り37dは、除去部材37の下面に固定するのが好ましいが、上面に固定してもよい。この実施形態では、重り37dは除去部材37の揺動中心線方向(左右方向)に延びる補強部材である。重り37dは、除去部材37の一端に形成されている歯37aから離れて設けられている。重り37dは、除去部材37に対して溶接等の固定方法によって固定することができる。左右方向に延びる重り37dが除去部材37に固定されていることで、除去部材37の撓みや捩れ変形を抑制することができる。
【0076】
初期位置にある除去部材37に対して、例えば排出口25の上方まで移動したスクレーパー5に付着した切屑が接触すると、除去部材37に対して上向きの力が作用する。このときに除去部材37は、その自重によってスクレーパー5に付着している切屑を掻き落とそうとする。つまり、除去部材37が重ければ重いほど、スクレーパー5に付着している切屑を掻き落とす効果が高まるので、重り37dを支軸38から離して設けている。尚、重り37dを設けることなく、除去部材37の板厚を厚くすることによって除去部材37の重量を増加させてもよい。また、重り37dの形状や個数は特に限定されるものではなく、重り37dを短くして複数設けてもよい。
【0077】
除去部材37によって除去された切屑は排出口25から排出されるが、切屑の付着状況等によっては切屑がスクレーパー5から取れないこともある。この場合、除去部材37には自重を上回る力が作用することになるので、除去部材37が支軸38回りに上方へ揺動する。上方へ揺動した除去部材37を
図8に仮想線で示す。これにより、除去部材37が逃げるように動作することになるので、各部に無理な力が作用しにくくなる。上方へ揺動した除去部材37は、スクレーパー5が通過した後に、自重によって元の位置(初期位置)に戻る。この元の位置に戻ろうとする力(復元力)を高めるためにも、除去部材37は重い方がよい。
【0078】
また、スクレーパー5から除去された切屑が除去部材37の上方から落下することがある。この切屑は、除去部材37の切欠部37cを通過して落下し、その下方に位置する排出口25から排出される。これにより、切屑の堆積が抑制され、除去部材37の揺動が阻害されなくなる。
【0079】
(切屑に含まれるクーラントの分離構造)
図10に示すように、クーラント処理装置1は、スクレーパー5によって下流部まで搬送された切屑を案内する案内板40と、案内板40を延長する延長板41と、クーラント受け部材42とを備えている。案内板40、延長板41及びクーラント受け部材42によってクーラントの分離構造が構成されている。
【0080】
案内板40は、コンベアケース2の底板20の下流部に連続して排出口25へ向かって下降傾斜するように延びており、切屑を排出口25へ向けて案内する部材である。また、この案内板40は、コンベアケース2の左側板21から右側板22まで該コンベアケース2の幅方向に延びている。案内板40の先端側は、下方へ向けて湾曲しながら延びる湾曲部40aを有している。
【0081】
延長板41は、案内板40の先端側に対して切屑に含まれているクーラントが流通可能な隙間Sをあけて設けられ、案内板40を延長する方向に下降傾斜するように延びている。また、この延長板41は、コンベアケース2の左側板21から右側板22まで該コンベアケース2の幅方向に延びている。隙間Sは、コンベアケース2の幅方向に延びるスリット状に形成されている。延長板41における案内板40側の端部は、下方へ延びるように形成され、隙間Sを流通するクーラントを下方へ案内するクーラント案内板部41aとされている。クーラント案内板部41aは、下側へ行くほどクーラント処理装置1の上流側に位置するように傾斜している。
【0082】
一方、案内板40の湾曲部40aの下端部には、クーラント案内板部41aと対向するように配置される対向板部40bが設けられている。対向板部40bも下側へ行くほどクーラント処理装置1の上流側に位置するように傾斜している。
【0083】
図12に示すように、クーラント案内板部41aと対向板部40bとの間には、コンベアケース2の幅方向に間隔をあけて複数のスペーサ44が配置されている。スペーサ44の厚み分だけ、クーラント案内板部41aと対向板部40bとが離れることになり、隙間Sは、湾曲部40aと延長板41との間に形成されるとともに、クーラント案内板部41aと対向板部40bとの間にも形成されて上下方向に連通したクーラントの流路が構成される。隙間Sの大きさは、糸状の切屑が通過しない程度に設定されている。
【0084】
図12に示すように、案内板40の対向板部40bと、スペーサ44と、延長板41のクーラント案内板部41aとが、例えばボルトやビス等の締結部材45によって厚み方向に締結されている。これにより、クーラント案内板部41aが対向板部40bに固定されることになる。締結部材45は複数設けることができる。
【0085】
クーラント受け部材42は、上方が開放した箱状に形成されており、隙間Sの下方に配置されている。隙間Sを流通して下方へ流れたクーラントは、クーラント受け部材42によって受けることができるようになっている。クーラント受け部材42の内部空間は、図示しない配管によってコンベアケース2の内部と接続されており、クーラント受け部材42で受けたクーラントはコンベアケース2の内部に戻されるようになっている。
【0086】
クーラント受け部材42は、延長板41の先端側よりも案内板40側に配置されている。これにより、切屑が延長板41の先端側から落下する際に、クーラント受け部材42に引っ掛かり難くなる。
【0087】
コンベアケース2の底板20に堆積した切屑は、スクレーパー5によって排出口25へ向けて搬送されて案内板40に達する。案内板40は排出口25へ向けて下降傾斜しているので、案内板40上の切屑は排出口25側へ向けて移動しやすくなり、よって次の切屑が案内板40に達すると、その切屑によって前の切屑が排出口25側へ容易に移動する。このとき、
図11に示すように、案内板40の先端側と、延長板41との間には隙間Sがあるので、切屑100の一部が隙間Sに引っ掛かるようになる。これにより、切屑100の滞留時間が所定時間確保されるので、その間に切屑に含まれているクーラントが隙間Sを流通してクーラント受け部材42で受け止められ、コンベアケース2内に戻され、その結果、クーラントのリサイクル性が向上する。
【0088】
一方、隙間Sに引っ掛かっている切屑100は、延長板41が排出口25へ向けて下降傾斜しているので、排出口25側へ向けて移動しやすくなり、よって次の切屑が搬送されてくると、その切屑によって排出口25側へ容易に移動し、排出口25から排出される。したがって、切屑100が塊状になっていたとしても、次の切屑が搬送されてくれば、案内板40上及び延長板41上を移動して排出されるので、塊同士が絡み合うことによる塊の大型化が回避され、切屑がスムーズに排出される。
【0089】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係るクーラント処理装置1によれば、スクレーパー5により搬送された切屑を、下降傾斜する案内板40及び延長板41によって排出口25へ案内するようにし、案内板40と延長板41との間にクーラントが流通可能な隙間Sを形成し、この隙間Sの下方にクーラント受け部材42を配置したので、クーラントのリサイクル性を向上させながら、切屑の排出性を向上させることができる。
【0090】
また、ローラチェーン6の幅方向両側のリンク板6bをローラ6aの外周面から径方向に突出するように形成し、コンベアケース2の内部に、ローラ6aの下側に配設される下側ガイド板30と、ローラ6aの上側に配設される上側ガイド板31とを設けたので、コンベアケース2の構造の複雑化を回避しながら、スクレーパー5が固定されたローラチェーン6の軌道を乱れにくくしてスクレーパー5を安定して走行させることができる。
【0091】
また、スクレーパー5に付着した切屑を除去する除去部材37を上下方向に揺動可能にコンベアケース20に支持し、除去部材37には、スクレーパー5から除去した切屑を落下させるための切欠部37cを設けたので、除去部材37による除去性能を長期間に亘って高めることができる。
【0092】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0093】
図13及び
図14は、実施形態の変形例を示すものである。この変形例では、除去部材37の上面の左右方向両側にそれぞれガイド板39が設けられている。ガイド板39は、除去部材37の上面から上方へ突出するとともに、歯37aの近傍から切欠部37cの縁部近傍まで延びている。このガイド板39により、切屑を切欠部37cへ向けて案内することができる。