特許第6736680号(P6736680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6736680水ガラス鋳造用硬化剤およびその製造方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6736680
(24)【登録日】2020年7月17日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】水ガラス鋳造用硬化剤およびその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/18 20060101AFI20200728BHJP
   B22C 1/10 20060101ALI20200728BHJP
   B22C 1/00 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   B22C1/18 B
   B22C1/10 C
   B22C1/00 G
   B22C1/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-541340(P2018-541340)
(86)(22)【出願日】2017年2月4日
(65)【公表番号】特表2019-505392(P2019-505392A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】CN2017072892
(87)【国際公開番号】WO2017133685
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2018年9月3日
(31)【優先権主張番号】201610082019.4
(32)【優先日】2016年2月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】315007271
【氏名又は名称】済南聖泉集団股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】祝建▲勳▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ヤオ▼慧民
【審査官】 大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−532209(JP,A)
【文献】 特開昭49−093216(JP,A)
【文献】 特許第5102619(JP,B2)
【文献】 特開昭50−080218(JP,A)
【文献】 特開昭49−037820(JP,A)
【文献】 特表2016−533900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00−3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造用の水ガラス硬化剤であって、
エステル、非晶質シリカ、水およびエタノールを含む、ことを特徴とする硬化剤。
【請求項2】
前記エステルは、グリセリンモノアセテート、グリセロールジアセタート、グリセロールトリアセテート、エチレングリコールジアセタート、炭酸プロピレン、またはジエステルのうちのいずれか1種または少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の硬化剤。
【請求項3】
前記エステルと非晶質シリカの重量比は(0.3〜4):1である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の硬化剤。
【請求項4】
前記エステルと非晶質シリカの重量比は(0.68〜2):1であり、
前記硬化剤は、20〜40質量%のエステル、30〜60質量%の非晶質シリカ、2〜12質量%のアルコール、3〜18質量%の水を含む、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋳造用の水ガラス硬化剤の製造方法であって、
(1)まず、配合比に基づき秤量したエステルを高速撹拌機の撹拌タンク内に仕込み、撹拌を開始するステップと、
(2)配合比に基づき秤量した水を投入し、配合比に基づき秤量したアルコールをさらに投入し、回転数を800回転/分以上に調節し、非晶質シリカを添加し、懸濁液となるように10〜20min撹拌し続け、前記鋳造用の水ガラス硬化剤を得るステップとを含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋳造用の水ガラス硬化剤の、鋳型と中子の製造における使用であって、
前記鋳型と中子は金属の鋳造に用いられる、ことを特徴とする使用。
【請求項7】
95〜98質量%の石英砂、1.8〜2.5質量%の水ガラス、および0.6〜1.6質量%の液体増強剤を含み、
前記液体増強剤は請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋳造用の水ガラス硬化剤である、ことを特徴とする水ガラス自硬性砂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、中国発明特許出願番号201610082019.4(出願日:2016年02月05日、発明の名称:水ガラス鋳造用硬化剤およびその製造方法と使用)に基づいて優先権を主張するものであり、その内容の全てが援用により本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は鋳物砂改質の技術分野に関し、特に、水ガラス鋳造用硬化剤およびその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0003】
鋳物は装置製造業のベース部材であり、鋳造業の発展は国の生産実力を示すものである。2008年の統計によれば、中国の鋳物の年間生産量は3350万トンであり、世界一の鋳造大国となっている。これらの鋳物の生成のほとんどは、自硬性砂で鋳型と中子を製造している。
【0004】
金属成形体の製造に用いられる鋳型は、基本的に2種類の構造形式で製造される。第1種は、いわゆる中子または型を形成し、それを鋳型として組み立てるものであり、前記鋳型は基本的に製造しようとする鋳物の雌型である。第2種は、中空体を形成し、いわゆるフィーダが平衡貯蔵容器として機能し、該容器は液体金属を受け、ここで対応する対策により、雌型となる鋳型にある金属と比べてより長時間金属を液相で保持することを確保する。金属が雌型内で凝固すると、液体金属は、金属が凝固した時に現れる体積収縮を平衡させるよう、その後平衡貯蔵容器から流出する可能性がある。
【0005】
鋳型は耐火材、例えば石英砂から構成され、その粒子は鋳型が成形された後に適当な結着剤により接合されることで、鋳型が十分な機械的強度を有することを保証する。耐火の造形基材を鋳型の製造に適用することもあり、該造形基材は適当な結着剤により処理される。耐火の造形基材は流動可能な形式で存在することが好ましく、それにより、適当な中空型内に充填可能であり、且つその場で緻密となる。結着剤によって造形基材の粒子同士間に強固な接合力を生じることで、鋳型は必要な機械的安定性を得ることになる。
【0006】
鋳型は各種の異なる要求を満たさなければならない。鋳込工程自体は、まず、液体の金属を1つまたは複数の鋳(分)型から構成される中空型内に受けるように、十分な安定性および耐温度性を有さなければならない。凝固工程が開始すると、鋳型の機械的安定性は凝固した金属層により保証され、該金属層は中空型の壁に沿って形成される。この時、鋳型の材料は、金属から放出される熱量の影響により、その機械的強度が失われ、耐火材料の単一粒子同士間における接合が除去されるように分解されなければならない。これは、例えば結着剤が熱の作用で分解されることにより達成される。冷却後、凝固した鋳物を振動する。ここで、理想的な場合、鋳型の材料は再び細砂に分解され、金型のキャビティーから注出されることができる。
【0007】
鋳型を製造するために、有機結着剤を使用することができるだけでなく、無機結着剤を使用してもよく、前記結着剤の硬化はそれぞれ冷硬化法または熱硬化法により行うことができる。鋳造業は機械製造業における汚染が最も酷い業界の1つであり、造形・中子成形用の結着剤は汚染の主な源である。現在、鋳造工場はフラン樹脂、ウレタン樹脂などの有機結着剤を広く採用し、これらの有機結着剤は液体金属が鋳型に注入される際に燃焼して分解し、トルエン、キシレン、フェノール、一酸化炭素および懸濁物などの有毒ガスや有害物質を放出する恐れがある。国内法令、規制による鋳造工場への日々高まる環境保護要求に伴い、水ガラス自硬性砂はますます注目されている。
【0008】
鋳込工程における分解生成物の排出を回避するために、無機材料に基づく結着剤または最大で非常に少ない有機化合物を含む結着剤を適用しなければならない。DE19925167Aには、結着剤としてアルカリ金属ケイ酸塩を含む放熱の供給組成物が記載されている。また、室温で自己硬化する結着剤系が既に研究・開発されている。このようなリン酸および金属酸化物に基づく体系は、例えばUS5,582,232A1に記載されている。さらに、より高い温度で硬化し、例えば熱型内で硬化する無機結着剤系もある。このような熱硬化性結着剤系は、例えばUS5,474,606A1から既知であり、この文献にはアルカリ金属水ガラスとケイ酸アルミニウムから構成される結着剤系が記載されている。
【0009】
典型的には、水ガラスとは、ケイ砂とソーダ灰から合成された無機結着剤であり、地球上で資源が最も豊かな物質の一つで、環境への影響が最も小さい鋳造樹脂である。新型の水ガラスは、1999年から登場し、現在までに水ガラスの添加量は1.8〜3.0%まで低下し、強度が高く、崩壊性が良く、古い砂が再利用でき、再利用率が80〜90%となり、使用時間が調整可能で、機械化造形生産ラインに使用可能で、単品または少量生産にも使用可能であるなどの利点を有する。
【0010】
水ガラスは、鋳物(中子)砂の結着剤として、技術、経済および生態の面における要求を良好に満たすことができ、広い応用の見通しを有する鋳造用結着剤である。しかし、水ガラス結着剤は、同じ添加量では、一般的な水ガラスの比強度≦0.3MPa(1%)であり、その力学的性能は有機樹脂よりも低く、且つ水ガラス砂の崩壊性が悪いため、その普及と応用を妨げていた。しかし、水ガラス増強剤の添加により、水ガラスの用量を限定する前提でその比強度を向上させることができる。
【0011】
CN104226890Aには鋳造用の水ガラス増強剤およびその製造方法が開示されている。該水ガラス増強剤の原料は、ポリオレフィンアルコール4〜5重量部、フルオロケイ酸塩0〜0.5重量部、糖アルコール類0.1〜8重量部、および無機酸0.1〜2重量部を含む。該新型の水ガラス増強剤は水ガラスの添加量を大きく減少することができるとともに、水ガラス砂の強度を著しく増加させることができ、その力学的性能を向上させ、適用範囲をさらに広げるが、成形後に長期間の貯蔵を経た後の強度に対する改善には限界がある。
【0012】
CN101027147Aには金属加工用鋳型を製造するための造形材料混合物が開示されている。鋳型を製造するために、耐火の造形基材および水ガラスに基づく結着剤を使用し、且つ一定の割合の粒状金属酸化物を結着剤に添加し、該粒状金属酸化物はシリカ、アルミナ、チタニア、および酸化亜鉛から選ばれるものである。成形後の鋳型の強度を大きく向上させるが、固体粉体の添加の連続性が悪く、添加時の粉塵飛散により作業環境が悪くなり、特に、エステル硬化水ガラス砂を使用する時、複数の成分のそれぞれの添加により、操作の複雑さを増加させるため、産業化に不利である。
【0013】
于欣偉らは、改質ナノシリカ−アクリレートポリウレタンエマルジョンの製造および特徴について、該エマルジョンは塗膜の硬度、吸水率および耐アルコール性などの性能に対していずれも著しく改善したことを報道した(于欣偉ら、改質ナノシリカ−アクリレートポリウレタンエマルジョンの製造および特徴、電解めっきと塗装、第22号、2014年)が、該エマルジョンを水ガラス自硬性砂の製造に用いることが開示されておらず、水ガラス鋳造用増強剤としていない。
【0014】
そのため、水ガラス砂の力学的性能をより良好に向上させることができることに加え、粉体による汚染を回避することができ、操作しやすく、計量、添加しやすく、且つ工業化生産が実現でき、水ガラス自硬性砂の普及と適用に将来的意義を有する水ガラス鋳造用増強剤を開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の技術の不足に対し、本発明の第1の目的は、エステル、熱分解法による非晶質シリカおよび/または沈殿法による非晶質シリカである非晶質シリカ、および水を含む新型の水ガラス鋳造用硬化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る硬化剤は鋳型または中子の製造に用いることができる。即ち、前記水ガラス鋳造用硬化剤を液体増強剤として水ガラス自硬性砂に用いる使用である。
【0017】
本発明は、硬化剤の各成分を均一に混合して懸濁液に調合した後、それを水ガラス自硬性砂の製造に用いることにより、水ガラス鋳造用硬化剤の一括投入を実現し、粉体による汚染がなく、操作しやすく、計量、添加しやすく、工業化生産を実現し、それに加えて、前記硬化剤を鋳型または中子の製造に用いることにより、水ガラス砂の強度を著しく増加させることができ、且つ成形後に長期間の貯蔵を経ても、その強度が依然として高いレベルに保持でき、鋳型または中子の力学的性能を大きく改善するものである。
【0018】
本発明に記載する「含む」とは、前記成分以外、他の成分をさらに含んでも良いことを意味し、これらの他の成分により前記硬化剤に異なる特性を付与する。これに加えて、本発明に記載する「含む」は、閉鎖式の「〜である」または「〜から構成される」に置き換えてもよい。
【0019】
本発明によれば、前記水ガラス鋳造用硬化剤に一定の割合の粒状の非晶質シリカが含まれ、該粒状の非晶質シリカの粒度は、好ましくは50μm未満であり、より好ましくは10μm未満であり、特に好ましくは5μm未満である。粒度は篩分析により特定されることができる。10μmのメッシュサイズを有する篩上の残留物は、好ましくは7重量%未満であり、特に好ましくは4重量%未満である。
【0020】
本発明によれば、好ましくは、粒状の非晶質シリカとして熱分解法による非晶質シリカまたは沈殿法による非晶質シリカのうちのいずれか1種または少なくとも2種の混合物を用いる。
【0021】
熱分解法による非晶質シリカまたは沈殿法による非晶質シリカは、本発明に係る水ガラス鋳造用硬化剤にも同様に適用する。熱分解法による非晶質シリカとは、通常、高温で気相から凝集したものを指す。熱分解法による非晶質シリカの製造は、例えば、四塩化ケイ素の火炎加水分解、或いはアーク炉においてコークスまたは無煙炭で石英砂を還元して一酸化ケイ素ガスを生成した後、シリカに酸化することにより行われることができる。アーク炉法により製造した熱分解法による非晶質シリカは、炭素をさらに含んでもよい。沈殿法による非晶質シリカは、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と無機酸との反応から得られ、その後、ここで生成した沈殿物から分離、乾燥、研磨されたものである。
【0022】
本発明によれば、前記非晶質シリカは、ZrSiOを熱分解して形成した非晶質シリカが好ましく、添加量が同じである場合、他の由来の非晶質シリカよりも高い中子重量を取得し、鋳型粒子の堆積がさらに緻密となることを表している。
【0023】
本発明によれば、前記水ガラス鋳造用硬化剤において、前記エステルは、グリセリンモノアセテート、グリセロールジアセテート、グリセロールトリアセテート、エチレングリコールジアセテート、炭酸プロピレンまたはジエステルのうちのいずれか1種または少なくとも2種の混合物であり、前記混合物の典型的であるが限定的ではない例として、グリセリンモノアセテートとグリセロールジアセテートとの混合物、グリセロールトリアセテートとエチレングリコールジアセテートとの混合物、グリセロールジアセテートとグリセロールトリアセテートとエチレングリコールジアセテートと炭酸プロピレンとの混合物である。
【0024】
本発明によれば、前記水ガラス鋳造用硬化剤における水は水道水などを用いても良く、ここでは特に限定されない。
【0025】
本発明によれば、前記水ガラス鋳造用硬化剤において、エステルと非晶質シリカは適当な重量配合比で混合されるが、典型的であるが限定的ではない重量比は(0.3〜4):1である。上記エステルと非晶質シリカの重量比は(0.3〜4):1であり、該範囲における各具体値を含み、例えば、0.3:1、0.4:1、0.45:1、0.68:1、0.8:1、0.92:1、1:1、1.2:1、1.3:1、1.6:1、1.8:1、2:1など、および上記の数値の間の具体値、例えば0.7:1、1.4:1などであってもよいことを出願人より声明する。紙面の都合と簡明のために、本発明では前記範囲に含まれる具体値を網羅的には列挙しない。しかし、本発明によれば、エステルと非晶質シリカの重量配合比は、好ましくは(0.68〜2):1である。
【0026】
本発明によれば、前記水ガラス鋳造用硬化剤は、20〜40質量%のエステル、30〜60質量%の非晶質シリカ、および5〜30質量%の水を含む。上記の各成分の含有量範囲は、該範囲における各具体値を含み、例えば、エステルが前記硬化剤を占める質量分率は、20%、22%、23%、23.5%、24%、25%、26.5%、27%、28%、29%、30%などであってもよく、非晶質シリカが前記硬化剤を占める質量分率は、30%、32%、33%、33.5%、34%、35%、36.5%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、43.5%、44%、45%、46.5%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、58%、60%などであってもよく、水が前記硬化剤を占める質量分率は、5%、6%、8%、10%、12%、13%、13.5%、14%、15%、16.5%、20%、22%、23%、25%、28%、30%など、および上記の数値の間の具体値であってもよいことを出願人より声明する。紙面の都合と簡明のために、本発明では前記範囲に含まれる具体値を網羅的には列挙しない。
【0027】
本発明によれば、典型的であるが限定的ではない前記硬化剤は、20質量%のエステル、50質量%の非晶質シリカ、30質量%の水を含んでも良く、或いは、23質量%のエステル、49質量%の非晶質シリカ、28質量%の水などを含んでも良い。
【0028】
本発明によれば、前記水ガラス鋳造用硬化剤にはアルコールをさらに含んでも良く、主に硬化剤の各成分の溶解を加速するために用いられ、他の公知の有機溶剤を用いても良い。典型的であるが限定的ではないアルコール系溶剤として、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の混合物であってもよいが、好ましくはエタノールである。有機溶剤としてエタノールを用いると、前記硬化剤の懸濁液をさらに均一に、安定させることができる。エタノールは、懸濁液の安定性、経済性、環境保全性のいずれにおいても最適な選択肢である。
【0029】
本発明によれば、前記硬化剤は、20〜40質量%のエステル、30〜60質量%の非晶質シリカ、2〜12質量%のアルコール、および3〜18質量%の水を含んでもよい。典型的であるが限定的ではない組み合わせとして、20質量%のエステル、60質量%の非晶質シリカ、2質量%のアルコール、および18質量%の水を含んでもよく、或いは、32質量%のエステル、50質量%の非晶質シリカ、3質量%のアルコール、および15質量%の水を含んでもよく、或いは、35質量%のエステル、48質量%の非晶質シリカ、5質量%のアルコール、および12質量%の水などを含んでもよい。
【0030】
本発明の第2の目的は、
(1)まず、配合比に基づき秤量したエステルを高速撹拌機の撹拌タンク内に仕込み、撹拌を開始するステップと、
(2)配合比に基づき秤量した水を投入し、オプションとして、配合比に基づき秤量したアルコールをさらに投入し、回転数を800回転/分以上に調節し、非晶質シリカを添加し、懸濁液となるように10〜20min撹拌し続け、前記水ガラス鋳造用硬化剤を得るステップとを含む、水ガラス鋳造用硬化剤の製造方法をさらに提供することである。
【0031】
本発明によれば、前記製造方法に使用されるエステル、水、非晶質シリカまたはアルコールは、いずれも前述したような本発明の第1の目的における重量配合比、質量分率および具体的な選択に従って秤量されるものであり、ここでは説明を省略する。
【0032】
本発明は、エステル、非晶質シリカおよび水を含む硬化剤の各成分を高速せん断により均一に撹拌して混合することで、均一な懸濁液に調合するものである。水ガラス自硬性砂の製造工程において、該均一な懸濁液を一括投入してもよい。これにより、粉体による汚染を効果的に回避し、さらに操作しやすく、計量、添加しやすく、大規模の工業化生産に用いることができ、生産効率を大きく向上させる。
【0033】
本発明によれば、ステップ(2)における回転数が800回転/分以上に設定され、例えば、900〜1000回転/分の範囲内に適当に調整してもよく、例えば、950回転/分、955回転/分、960回転/分、965回転/分、970回転/分、980回転/分、985回転/分、990回転/分、1000回転/分、および上記の数値の間の具体値であってもよい。紙面の都合と簡明のために、本発明では前記範囲に含まれる具体値を網羅的には列挙しない。
【0034】
本発明によれば、前記水ガラス鋳造用硬化剤の製造方法は、例えば、
(1)まず、配合比に基づき秤量したエステルを高速撹拌機の撹拌タンク内に仕込み、撹拌を開始するステップと、
(2)配合比に基づき秤量した水を投入し、回転数を800回転/分以上に調節し、非晶質シリカを添加し、均一な液体となるように10〜20min撹拌し続け、前記水ガラス鋳造用硬化剤を得るステップと含んでもよい。
【0035】
さらに好ましい技術案として、前記水ガラス鋳造用硬化剤の製造方法は、例えば、
(1)まず、配合比に基づき秤量したエステルを高速撹拌機の撹拌タンク内に仕込み、撹拌を開始するステップと、
(2)配合比に基づき秤量した水とアルコールを投入し、回転数を800回転/分以上に調節し、非晶質シリカを添加し、均一な液体となるように10〜20min撹拌し続け、前記水ガラス鋳造用硬化剤を得るステップとを含んでもよい。
【0036】
本発明によれば、水ガラス鋳造用硬化剤の製造を行う時、好ましくは、まず、エステルを撹拌タンクに添加して撹拌してから、他の成分を添加する。該添加順序により、材料を混合する際の粉塵汚染をより効果的に回避することができ、スラリーの均一にもさらに寄与する。
【0037】
本発明の第3の目的は、本発明の第1の目的における硬化剤の鋳型と中子の製造における使用を提供することである。
【0038】
本発明によれば、前記鋳型と中子は、好ましくは金属の鋳造に用いられ、特に鋳鉄と鋳鋼に用いられる。
【0039】
本発明は、鋳型と中子を製造する時、前記硬化剤の添加により、水ガラス砂の強度をより良好に増加させ、その力学的性能を向上させることができることに加え、粉体による汚染を効果的に回避することができ、操作しやすく、計量、添加しやすく、且つ業化生産が実現でき、水ガラス自硬性砂の普及と応用に将来的意義を有するものである。
【0040】
本発明の第4の目的は、95〜98質量%の石英砂、1.8〜2.5質量%の水ガラス、および0.6〜1.6質量%の液体増強剤を含む水ガラス自硬性砂を提供することであり、前記液体増強剤は、本発明の第1の目的に係る水ガラス鋳造用硬化剤である。
【0041】
本発明によれば、前記水ガラス自硬性砂は、95〜98質量%の石英砂、1.8〜2.5質量%の水ガラス、および0.6〜1.6質量%の液体増強剤を含み、その典型的であるが限定的ではない組み合わせとして、96質量%の石英砂、2.5質量%の水ガラス、および1.5質量%の液体増強剤を含み、或いは、96質量%の石英砂、2.4質量%の水ガラス、および1.6質量%の液体増強剤を含み、或いは、97.2質量%の石英砂、2.2質量%の水ガラス、および0.6質量%の液体増強剤を含み、或いは、97.5質量%の石英砂、1.8質量%の水ガラス、および0.7質量%の液体増強剤などを含む。紙面の都合と簡明のために、本発明では前記範囲に含まれる具体値を網羅的には列挙しない。
【発明の効果】
【0042】
従来の技術と比べ、本発明は少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0043】
(1)本発明は、エステル、非晶質シリカおよび水を含む硬化剤の各成分を高速せん断により混合して懸濁液に調合し、さらにそれを水ガラス自硬性砂の製造に用いることで、水ガラス鋳造用硬化剤の一括投入を実現し、粉体による汚染がなく、操作しやすく、計量、添加しやすく、工業化生産を実現した。
【0044】
(2)本発明は、硬化剤に非晶質シリカを添加し、特にケイ素微粉末を添加することにより、水ガラス砂の強度を著しく増加させることができ、且つ、成形後に長期間の貯蔵を経ても、その強は依然として高いレベルに保持され、鋳型または中子の力学的性能を大きく改善し、成形してから24h経た後の鋳型または中子の引張強度は0.605MPaに達することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明を理解しやすいために、本発明は以下の実施例を例示する。当業者であれば、前記実施例は本発明を理解するためのものに過ぎず、本発明を具体的に限定するものではないことを理解すべきである。
【0046】
実施例1:
製造プロセス:
(1)グリセロールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセロールトリアセテート、および炭酸プロピレンを秤量し、高速撹拌機の撹拌タンク内に添加し、撹拌を開始し、60min撹拌した。
(2)エタノールおよび水を添加し、撹拌の回転数を900〜1100回転/分に調整し、ケイ素微粉末を添加し、10min撹拌し続け、水ガラス自硬性砂の液体増強剤a(即ち、本発明の水ガラス鋳造用硬化剤)を得た。
【0047】
実施例2:
(1)エタノールをメタノールに置き換える以外、実施例1における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例1と同じである。
【0048】
実施例3:
(1)エタノールをプロパノールに置き換える以外、実施例1における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例1と同じである。
【0049】
実施例4:
(1)エタノールをイソプロパノールに置き換える以外、実施例1における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例1と同じである。
【0050】
実施例5:
(1)エタノールをブタノールに置き換える以外、実施例1における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例1と同じである。
【0051】
実施例6:
(1)エタノールをベンジルアルコールに置き換える以外、実施例1における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例1と同じである。
【0052】
実施例7:
(1)エタノールをエチレングリコールに置き換える以外、実施例1における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例1と同じである。
【0053】
実施例8:
(1)エタノールをポリエチレングリコールに置き換える以外、実施例1における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例1と同じである。
【0054】
実施例9:
(1)エタノールを添加しない以外、実施例1における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例1と同じである。
【0055】
実施例1〜9で製造した水ガラス自硬性砂の液体増強剤に対して安定性試験を行い、その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
安定性試験基準:JB/T5107−91『砂型鋳造用塗料』を参照する。
【0058】
操作ステップ:
代表的な硬化剤サンプルを100ml標高箇所に達するように乾燥したメスシリンダーに仕込んだ。静止状態において、異なる型番の硬化剤の検出要求の具体的な内容により5h放置し、上澄み層の面積を1mlまで読み取った。
【0059】
結果の計算:
【数1】
式中、
C―硬化剤の懸濁率、%
V―メスシリンダー内の硬化剤柱の上澄み層の面積、ml
【0060】
表1から分かるように、実施例2〜8と比べ、実施例1は有機溶剤としてエタノールを用いると、前記硬化剤の懸濁液がさらに安定し、実施例9と比べ、実施例1〜8はアルコール系溶剤を添加した後、製造した液体増強剤が懸濁液を形成することができ、且つ強い安定性を有する。
【0061】
実施例10:
製造プロセス:
(1)グリセロールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセロールトリアセテート、炭酸プロピレンを秤量し、高速撹拌機の撹拌タンク内に添加し、撹拌を開始し、60min撹拌した。
(2)エタノールおよび水を添加し、撹拌の回転数を900〜1100回転/分に調整し、ケイ素微粉末を添加し、10min撹拌し続け、水ガラス自硬性砂の液体増強剤b(即ち、本発明の水ガラス鋳造用硬化剤)を得た。
【0062】
実施例11:
(1)以下の質量に従ってエステル成分の添加量を調整する以外、実施例10における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例10と同じであり、水ガラス自硬性砂の液体増強剤c(即ち、本発明の水ガラス鋳造用硬化剤)を得た。
【0063】
実施例1、実施例10〜実施例11により得た水ガラス自硬性砂の液体増強剤を水ガラス自硬性砂の製造に用い、具体的な操作は以下の通りである。
【0064】
大林標準砂(中国通遼市大林型砂有限公司製)を1000g秤量し、ベーン式実験室用サンドミルに仕込み、8.64gの水ガラス自硬性砂の液体増強剤を添加し、1min撹拌し、20gの水ガラスSQ−1を添加し、1min撹拌し、砂を吐出し、標準の「8」字形の試験片を作製し、1h、4hおよび24hの引張強度を検出し、その結果を表2に示す。
【0065】
比較例1:
(1)ケイ素微粉末、エタノールおよび水を添加しない以外、実施例1における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例1と同じである。
【0066】
比較例2:
(1)ケイ素微粉末、エタノールおよび水を添加しない以外、実施例10における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例10と同じである。
【0067】
比較例3:
(1)ケイ素微粉末、エタノールおよび水を添加しない以外、実施例11における各成分に従って配合した。
(2)製造プロセスは実施例11と同じである。
【0068】
上記の比較例1〜3で得た有機エステルを水ガラス自硬性砂の製造に用い、具体的な操作は以下の通りである。
【0069】
大林標準砂(中国通遼市大林型砂有限公司製)を1000g秤量し、ベーン式実験室用サンドミルに仕込み、7.5gの有機エステルSG−25を添加し、1min撹拌し、30gの水ガラスSQ−1を添加し、1min撹拌し、砂を吐出し、標準の「8」字形の試験片を作製し、1h、4hおよび24hの引張強度を検出し、標準GB−2684を実行し、その結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例1、実施例10〜実施例11をそれぞれ比較例1〜比較例3と比較することにより分かるように、実施例1、10〜11において、有機エステル成分にケイ素微粉末を添加することにより、調合した水ガラス自硬性砂の液体増強剤で製造した水ガラス自硬性砂は、引張強度が著しく改善され、成形してから1h経ると、水ガラス自硬性砂の強度が著しく増加でき、成形後に長期間の貯蔵を経ても、製造した水ガラス自硬性砂の強度が依然として高いレベルに保持するため、鋳型または中子の力学的性能を大きく改善する。
【0072】
実施例12:
製造プロセスは実施例1と同じである。
【0073】
実施例13:
製造プロセスは実施例1と同じである。
【0074】
実施例14:
製造プロセスは実施例1と同じである。
【0075】
実施例15:
製造プロセスは実施例1と同じである。
【0076】
実施例16:
製造プロセスは実施例1と同じである。
【0077】
実施例17:
製造プロセスは実施例1と同じである。
【0078】
実施例18:
製造プロセスは実施例1と同じである。
【0079】
実施例12〜実施例18により得た水ガラス自硬性砂の液体増強剤を水ガラス自硬性砂の製造に用い、具体的な操作は以下の通りである。
【0080】
大林標準砂(中国通遼市大林型砂有限公司製)を1000g秤量し、ベーン式実験室用サンドミルに仕込み、8.64gの水ガラス自硬性砂の液体増強剤を添加し、1min撹拌し、20gの水ガラスSQ−1を添加し、1min撹拌し、砂を吐出し、標準の「8」字形の試験片を作製し、1h、4hおよび24hの引張強度を検出した。検出により、調合した水ガラス自硬性砂の液体増強剤で製造した水ガラス自硬性砂は、成形してから1h経ると、水ガラス自硬性砂の強度が著しく増加でき、その引張強度が0.395〜0.408の間となり、成形後に長期間の貯蔵を経ても、製造した水ガラス自硬性砂の強度は依然として高いレベルに保持され、成形してから24hになると、その引張強度は0.586〜0.605の間に達すことができ、鋳型または中子の力学的性能を大きく改善した。
【0081】
また、本発明は、エステル、非晶質シリカ、および水を含む硬化剤の各成分を高速せん断により混合してスラリーに調合し、さらにそれを水ガラス自硬性砂の製造に用いることにより、水ガラス鋳造用硬化剤の一括投入を実現し、粉体による汚染がなく、操作しやすく、計量、添加しやすく、工業化生産を実現する。
【0082】
本発明は、上記の実施例により本発明の詳細なプロセス設備とプロセスフローを説明したが、本発明は上記の詳細なプロセス設備とプロセスフローに限定されず、即ち、本発明は必ずしも上記の詳細なプロセス設備とプロセスフローに依存しなければ実施できないこと意味するわけではないことを出願人より声明する。当業者であれば、本発明に対するいかなる改良、本発明の製品の各原料に対する均等置換および補助成分の添加、具体的な形態の選択などが、いずれも本発明の保護範囲と公開範囲内に含まれることは明らかである。