(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6736710
(24)【登録日】2020年7月17日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】コイルばねを利用した逆入力遮断装置
(51)【国際特許分類】
F16D 41/10 20060101AFI20200728BHJP
F16D 41/20 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
F16D41/10
F16D41/20 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-25440(P2019-25440)
(22)【出願日】2019年2月15日
【審査請求日】2020年6月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】飯田 輝信
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/141087(WO,A1)
【文献】
特開2003−269490(JP,A)
【文献】
実開昭62−138935(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/10,41/20, 7/02,13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の回転軸を中心として回転可能な入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸から前記出力軸への正方向への回転は伝達される一方、前記出力軸から前記入力軸への正・逆両方向への回転は前記出力軸が空転して遮断される逆入力遮断装置であって、
前記入力軸及び前記出力軸の外周面にはコイルばねが共通して装着されており、前記コイルばねの軸方向両端にはフック部が形成され、前記フック部の一方は前記入力軸に、他方は前記共通の回転軸を中心として回転可能な環状のリテーナに夫々係合されており、
前記リテーナには抵抗トルク付与手段によって抵抗トルクが付与され、
前記入力軸が正方向に回転すると、前記コイルばねは縮径して前記入力軸及び前記出力軸に共通して密着し、前記入力軸及び前記出力軸と共に前記リテーナが一体となって正方向に回転し、
前記入力軸から前記出力軸への正方向への回転の伝達が終了すると、前記入力軸は逆方向に所要量回転させられ、前記出力軸に対する前記コイルばねの密着が解除される、ことを特徴とする逆入力遮断装置。
【請求項2】
前記コイルばねの外周には筒状の制限部材が配設されている、請求項1に記載の逆入力遮断装置。
【請求項3】
前記制限部材の軸方向他端部には前記フック部の他方と整合する切欠きが形成されており、前記制限部材の軸方向他端部は前記リテーナの内側に嵌め合わされる、請求項2に記載の逆入力遮断装置。
【請求項4】
前記抵抗トルク付与手段は波ばねであって、前記波ばねは前記リテーナと共に固定のリテーナ収容部材に収納される、請求項1乃至3のいずれかに記載の逆入力遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸と出力軸との間の動力伝達を断・接するクラッチ装置、特に、コイルばねを利用して、入力軸から出力軸への正方向への回転のみを伝達し、出力軸から入力軸への正・逆両方向への回転は出力軸を空転させて遮断する逆入力遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、コイルばねを利用した逆入力遮断装置の一例が開示されている。引用文献1で開示された逆入力遮断装置は、共通の回転軸を中心として回転可能な入力軸及び出力軸を備えている。出力軸にはこれと同軸に断面円形のロッドが一体結合されており、このロッドが入力軸の中心を貫通している。ロッドにはコイルばねが挿通されており、コイルばねはロッドと入力軸との間に配置されている。コイルばねの軸方向両端にはフック部が形成され、フック部の一方は入力軸に、他方は共通の回転軸を中心として回転可能な環状のリテーナに夫々係合されている。
【0003】
上述した逆入力遮断クラッチにあっては、入力軸が正方向に回転すると、入力軸と係合するコイルばねは締り方向に作用し、コイルばねは縮径して出力軸に一体結合されたロッドの外周面に密着し、入力軸及び出力軸と共にリテーナが一体となって正方向に回転する。
【0004】
入力軸の正方向への回転が停止することで、入力軸から出力軸への正方向への回転伝達は終了する。入力軸の正方向への回転が停止した直後にあっては、入力軸の正方向への回転が停止しても、リテーナは慣性で正方向に幾分回転し、停止したコイルばねの他方のフック部に当接してこれをコイルばねが緩む方向に押す。これにより、出力軸に一体結合されたロッドに対するコイルばねの締め付けが開放される。これにより、ロッドはコイルばねに対して相対回転可能となり、出力軸から入力軸への正・逆両方向への回転は出力軸が空転して遮断されることとなる。
【0005】
このような逆入力遮断装置は、例えば特許文献2に示されるような所謂排煙ダンパーの機構部品に適用することができる。排煙ダンパーは、ビル等の建物の内部に設置され、建物の内部において火災が発生した際に建物の内部で発生した煙を建物の外部へ排出するための装置である。排煙ダンパーは建物の外部へ連通する排煙口を閉塞可能な羽根を有しており、この羽根は排煙口を閉塞する閉塞位置と排煙口を開放する開放位置との間で回動自在となっている。羽根はトーションばねによって排煙口が開放させられる方向に常時付勢されており、閉塞位置から開放位置への開方向への回動はトーションばねによる自由落下により、閉塞位置から開放位置への閉方向への回動はモーターによって夫々行われる。このような場合に、クラッチの一種である逆入力遮断装置を利用すれば、簡易な装置による自動的な動力伝達の制御が可能となって、例えば電磁クラッチにより制御する場合のような、電力をようすることなく、モーターと羽根との間の動力の伝達様式を適宜断接することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−122585号公報
【特許文献2】特開2001−116331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した逆入力遮断装置にあっては、中心軸周りの回動に対するリテーナの保持力(抵抗)は自身のイナーシャのみであるため、入力軸が正方向に回転した際に、コイルばねが充分に縮径することなくコイルばねがロッドに対して回転してしまい、入力軸から出力軸への回転トルクの伝達効率が低下乃至伝達しない虞がある。かかる虞を防止すべくリテーナのイナーシャを大きくすると、リテーナ及びこれを含む装置全体の重量及び/又はサイズが増大してしまう。更に、リテーナが有するイナーシャの大きさによっては、上述したリテーナの惰性による正方向への回転が不充分であって、コイルばねによる出力軸への締め付けが充分に解除されず、出力軸からの入力軸への回転が充分に遮断されない場合がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、軽量且つコンパクトであるにも拘らず、入力軸から出力軸へは回転トルクを効率的に伝達することができるとともに出力軸から入力軸への回転は確実に遮断される、新規且つ改良された逆入力遮断クラッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討及び実験の結果、リテーナに抵抗トルク付与手段によって抵抗トルクを付与するとともに、入力軸から出力軸への正方向への回転の伝達が終了した後に、入力軸を逆方向に所要量回転させることで、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0010】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する逆入力遮断装置として、共通の回転軸を中心として回転可能な入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸から前記出力軸への正方向への回転は伝達される一方、前記出力軸から前記入力軸への正・逆両方向への回転は前記出力軸が空転して遮断される逆入力遮断装置であって、
前記入力軸及び前記出力軸の外周面にはコイルばねが共通して装着されており、前記コイルばねの軸方向両端にはフック部が形成され、前記フック部の一方は前記入力軸に、他方は前記共通の回転軸を中心として回転可能な環状のリテーナに夫々係合されており、
前記リテーナには抵抗トルク付与手段によって抵抗トルクが付与され、
前記入力軸が正方向に回転すると、前記コイルばねは縮径して前記入力軸及び前記出力軸に共通して密着し、前記入力軸及び前記出力軸と共に前記リテーナが一体となって正方向に回転し、
前記入力軸から前記出力軸への正方向への回転の伝達が終了すると、前記入力軸は逆方向に所要量回転させられ、前記出力軸に対する前記コイルばねの密着が解除される、ことを特徴とする逆入力遮断装置が提供される。
【0011】
好ましくは、前記コイルばねの外周には筒状の制限部材が配設されている。この場合には、前記制限部材の軸方向他端部には前記フック部の他方と整合する切欠きが形成されており、前記制限部材の軸方向他端部は前記リテーナの内側に嵌め合わされるのがよい。好適には、前記抵抗トルク付与手段は波ばねであって、前記波ばねは前記リテーナと共に固定のリテーナ収容部材に収納される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の逆入力遮断装置にあっては、リテーナには抵抗トルク付与手段によって抵抗トルクが付与されているため、入力軸が正方向に回転した際に、コイルばねが縮径して出力軸に密着するよりも先にコイルばねが出力軸に対して回転してしまうことが防止される。つまり、本願発明の逆入力遮断装置にあっては、入力軸が正方向に回転した際に、コイルばねは確実に縮径して入力軸及び出力軸に共通して密着し、出力軸は入力軸と一体となって正方向に回転するため、リテーナ及びこれを含む装置全体の重量及び/又はサイズを増大させることなく、入力軸から出力軸への正方向への回転を効率的に伝達することが可能となる。
【0013】
入力軸から出力軸への正方向への回転の伝達が終了すると、入力軸は逆方向に所要量回転させられる。これにより、縮径していたコイルばねは拡径され、出力軸に対するコイルばねの密着が確実に解除され、出力軸からの正・逆両方向への回転は出力軸が空転して遮断されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願発明の逆入力遮断装置の好適実施形態の構造を示す図である。
【
図2】
図1に示す逆入力遮断装置の分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す逆入力遮断装置の入力軸を単体で示す図である。
【
図4】
図1に示す逆入力遮断装置の出力軸を単体で示す図である。
【
図5】
図1に示す逆入力遮断装置の制限部材を単体で示す図である。
【
図6】
図1に示す逆入力遮断装置のリテーナを単体で示す図である。
【
図7】
図1に示す逆入力遮断装置のリテーナ収容部材を単体で示す図である。
【
図8】
図1に示す逆入力遮断装置の入力軸を正方向に回転したときの作動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成された逆入力遮断装置の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0016】
図1及び
図2を参照して説明すると、本発明に従って構成された、全体を番号2で示す逆入力遮断装置は、入力軸4、出力軸6、コイルばね8、制限部材10、リテーナ12、リテーナ収容部材14、及び抵抗トルク付与手段16を備えている。
図1(及び
図8)においては、容易に理解することができるように、コイルばね8及びリテーナ12に夫々ハッチングを付して示している。
【0017】
図3に示すとおり、入力軸4は、所定程度の厚さを備えた板状部材である接続部18と、接続部18の軸方向片端面の中央にて軸方向に突出する作用部20とを有し、入力軸4の中央には軸方向に直線状に貫通した断面円形の貫通穴22が形成されている。接続部18の外周形状は、円周上において直径方向に対向した一対の部位(かかる部位を夫々番号24で示す)を相互に平行で且つ直線状に変形させた形状である。作用部20は貫通穴22を囲繞した円筒形状であって、その外周面の所定部位には、軸方向に直線状に延びる断面コの字形状の係合溝26が形成されている。かかる係合溝26は、
図3の左図を参照することによって理解されるとおり、周方向に見て、接続部18に形成された一対の部位24の中央に形成されている。このような入力軸4は、接続部18の外周に図示しないモーターの如き駆動源が接続されて回転駆動する。
【0018】
図4と共に
図1を参照して説明すると、出力軸6は全体的に円筒形状であって、その外径は入力軸4の作用部20の外径と実質上同一である(
図1を参照されたい)。出力軸6の内周面には相互に対向して軸方向に直線状延びる一対の接続溝28が形成されている。出力軸6の内側には図示しない従動部材の回転軸が挿通されるとともに、かかる回転軸が一対の接続溝28と係合することで、出力軸6は従動部材と一体に回転可能となる。
【0019】
図1及び
図2を参照して説明すると、コイルばね8は線材を巻回して形成され、その軸方向両端には軸方向両端にはフック部30a及び30bが夫々形成されている。フック部の一方30aは径方向内側に、他方30bは径方向外側に、夫々線材が巻回されることによって形成された円に対して法線方向に直線状に延びている。コイルばね8の内径は、フック部30a及び30bを除いて軸方向に一定である。コイルばね8の径については後に更に言及する。
【0020】
図5と共に
図1を参照して説明すると、制限部材10は円筒形状であって、制限部材10の内径は、入力軸4の作用部20及び出力軸6の外径よりも大きい。制限部材10の軸方向端部には、断面がコの字形状である切欠き32が形成されている。
【0021】
図6と共に
図1を参照して説明すると、リテーナ12は円環形状の板状部材であって、その内径は制限部材10の外径よりも僅かに大きい。リテーナ12の内周面には断面コの字形状の係合溝34が形成されている。かようなリテーナ12は
図7に示す固定のリテーナ収容部材14に収容される。
【0022】
図7と共に
図1を参照して説明すると、リテーナ収容部材14は、カップ状の本体36と、この本体36と組み合わされてその内側を閉塞するシールド体38とから構成される。本体36は、円環形状の端板40と、端板40の外周縁から軸方向に延びる円筒状の側壁42とを備えている。端板40の内面の中央には円形凹部44が形成されているとともに、円形凹部44の外側には内側円環突条46及び外側円環突条48が夫々同心上に形成されている。側壁42の延出端部の内面には環状溝50が形成されている。シールド体38は円環形状の板状部材であって、片側面の中央には円形凹部51が、外周には径方向外方に突出した環状突条52が夫々形成されている。シールド体38は、円形凹部51が本体36の端板40と軸方向において対向するとともに、外周縁が本体36の側壁42の開放端に整合した状態で、本体36の端板40に向かって軸方向に強制されることで、環状突条52が環状溝50に嵌入されて本体36に結合される。
【0023】
図1及び
図2を参照して説明すると、図示の実施形態においては、抵抗トルク付与手段16は環状の波ばねであって、これはリテーナ収容部材14の内側に配設され、リテーナ12に抵抗トルクを付与する。抵抗トルク付与手段は波ばねに限定されるものではなく、リテーナ12に抵抗トルクを付与さえすればどのような性質のものでもよく、例えば、リテーナ12の外周面に配設されてリテーナ収容部材14との間の摩擦によって抵抗トルクを付与する板ばねであっても、或いは、リテーナを金属で構成することで磁力によってリテーナに抵抗トルクを付与するようにしてもよい。
【0024】
次に、
図1及び
図2を参照して、上述した各構成部品が組み合わされた状態について説明する。
入力軸4及び出力軸6は、作用部20が出力軸6と軸方向に隣接するように同軸上に並列し、共通の回転軸oを中心として相互に回転可能な状態で配置される。コイルばね8は入力軸4の作用部20の外周面及び出力軸6の外周面に共通して装着され、コイルばね8の外周には制限部材10が配設される。ここで、コイルばね8の自由状態における外径は制限部材10の内径と同一乃至これよりも幾分小さく、コイルばね8は自由状態乃至これよりも幾分縮径した状態で制限部材10の内側に配置される。そして、コイルばね8が制限部材10の内側に配置された状態にあっては、コイルばね8の内径は、出力軸6の外径よりも大きく、出力軸6はコイルばね8に対して相対回転可能となる。コイルばね8のフック部の一方30aは入力軸4の係合溝26に係合され、他方30bはリテーナ12の係合溝34に係合される。このとき、円環形状であるリテーナ12の内側には、制限部材10の軸方向端部が、切欠き32に他方のフック部30bが整合した状態で遊嵌される。リテーナ12は抵抗トルク付与手段16(図示の実施形態においては波ばね)と共にリテーナ収容部材14の内側に収容される。リテーナ12は抵抗トルク付与手段16によって軸方向に押圧され、リテーナ12には固定のリテーナ収容部材14との間の摩擦による抵抗トルクが付与される。リテーナ収容部材14の内側においては、出力軸6の軸方向端部は本体36に形成された円形凹部44の内側に、抵抗トルク付与手段16はシールド体38に形成された円形凹部51に夫々整合される。
【0025】
続いて、
図1に示す逆入力遮断装置の作動について、
図8を参照して説明する。
図8における各矢印に示すように、入力軸4が、駆動源のモーターにより正方向(図示の実施形態においては、A−A断面図の右方向から見て時計方向)に回転すると、同図のB−B端面図に示すとおり、作用部20が正方向に回転し、係合溝26において係合されたフック部30aは、コイルばね8が縮径する方向に押される。このとき、本発明の逆入力遮断装置にあっては、リテーナ12には抵抗トルク付与手段16によって抵抗トルクが付与されているため、入力軸4が正方向に回転した際に、コイルばね8が縮径して出力軸6に密着するよりも先にコイルばね8が出力軸6に対して回転してしまうことが防止される。つまり、本願発明の逆入力遮断装置にあっては、入力軸4が正方向に回転した際に、コイルばね8は確実に縮径して入力軸4及び出力軸6に共通して密着し、出力軸6は入力軸4と一体となって正方向に回転するため、リテーナ12及びこれを含む装置全体の重量及び/又はサイズを増大させることなく、入力軸4から出力軸6への正方向への回転を効率的に伝達することができるようになる。このとき、入力軸4、出力部材6、コイルばね8、制限部材10、及びリテーナ12は一体となって抵抗トルク付与手段16による抵抗トルクに抗して正方向に回転する。
【0026】
そして、入力軸4から出力軸6への正方向への回転の伝達が終了すると、入力軸4は逆方向(図示の実施形態においては、A−A断面図の右方向から見て反時計方向)に所要量回転させられる。これにより、縮径していたコイルばね8は拡径され、出力軸6に対するコイルばね8の密着が確実に解除され、出力軸6は再びコイルばね8に対して相対回転可能となる(
図1に示す状態に戻る)。つまり、出力軸6からの正・逆両方向への回転は出力軸6が空転して遮断される。図示の実施形態においては、コイルばね8の外周には筒状の制限部材10が配設されているため、コイルばね8の上記拡径は、コイルばね8の外周面が制限部材10の内周面に当接乃至密接するまでに制限され、コイルばね8が過剰に拡径された状態で保持されることは確実に防止される。コイルばね8が過剰に拡径された状態で保持されると、コイルばね8に所謂クリープが生じ、コイルばね8が再度縮径乃至拡径する際に破損する可能性がある。また、入力軸4を逆方向に過剰に回転させても、コイルばね8の外周面が制限部材10の内周面と密着するとともに、他方のフック部30bがリテーナ12を逆方向に押し、入力部材4、コイルばね8、制限部材10、及びリテーナ12が一体となって抵抗トルク付与手段16の抵抗トルクに抗して逆方向に回転するだけで、コイルばね8が過剰に拡径された状態で保持されることはない。このことから、入力軸4を逆方向へ回転させる際にモーターを精密に制御させる必要はなく、モーターの制御系は簡単なものであってよい。
【0027】
以上、本発明の逆入力遮断装置について、添付した図面を参照して詳述したが、本発明の逆入力遮断装置は上述した実施形態に限定されることはなく、種々の変形例が考えられる。例えば、上述した実施形態においては、入力軸の作用部の外径と出力軸の外径は実質上同一であったが、これに替えて、入力軸の作用部の外径を出力軸の外径よりも大きくして、入力軸の作用部にはコイルばねが常時密着した状態(締付状態)となるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
2:逆入力遮断装置
4:入力軸
6:出力軸
8:コイルばね
10:制限部材
12:リテーナ
14:リテーナ収容部材
16:抵抗トルク付与手段(波ばね)
30:フック部
【要約】 (修正有)
【課題】軽量且つコンパクトであるにも拘らず、入力軸から出力軸へは回転トルクを効率的に伝達することができるとともに出力軸から入力軸への回転は確実に遮断される逆入力遮断クラッチを提供すること。
【解決手段】リテーナ12に抵抗トルク付与手段16によって抵抗トルクを付与するとともに、入力軸4から出力軸6への正方向への回転の伝達が終了した後に、入力軸4を逆方向に所要量回転させる。
【選択図】
図1