(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示された技術は、回転ドラムの回転を減速することにより遠心力を逓減させ、重なり合っている洗濯物を重力により落下させるようにしたものである。しかしながら、この従来技術では互いに絡まりあって塊となっている洗濯物は、そのまま落下することになるので、この塊を解きほぐすことはできない。このような状態で回転ドラムを回転すると、アンバランスは解消されていないので、再度アンバランスが検出され、回転ドラムの減速が繰り返されることになる。
【0008】
一方、上記特許文献2に開示された技術は、回転ドラムの回転時にあって、前部の振動検出手段によって検出された振動値と後部の検出手段によって検出された振動値との差を算出する。そして、この振動値の差が予め設定された閾値を超えた場合、回転ドラムの回転を減速または停止するようにしたものである。
【0009】
しかしながら、この従来技術によっても互いに絡まりあって塊となっている洗濯物は、依然として解きほぐされず回転ドラム内に残存することになり、アンバランスを解消する根本的な解決策とはならない。
【0010】
さらに上記特許文献1、2によると、回転ドラムの回転を減速あるいは停止するようにしているので、脱水運転を繰り返す毎に起動電力が必要となり消費電力が大きくなるばかりか、洗濯に要する時間すなわち運転時間が遅延してしまうという問題がある。特にコインランドリーに設置される洗濯機にあっては、運転時間の遅延は店舗における顧客の回転効率の低下を招来してしまうことになる。
【0011】
なお、これらの問題は、回転ドラム(洗濯槽)を備えるドラム式洗濯機だけでなく、縦型の洗濯機でも同様に起こり得ることである。
【0012】
本発明は上述したような点に着目したものであり、洗濯槽内に洗濯物の偏在があっても洗濯槽の回転を減速あるいは停止することを回避することができ、脱水運転時に洗濯槽のアンバランスを確実且つ速やかに解消することにより、運転時間の遅延を有効に回避することができる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以上のような問題点を鑑み、次のような手段を講じたものである。
【0014】
本発明の洗濯機は、基端側に駆動装置を配するとともに先端側を開口させてなる洗濯槽と、前記洗濯槽の軸線方向に沿って該洗濯槽の内周面に配設される複数の中空のバランサと、前記バランサの各々に個別に調整水を注水する注水装置とを備えてなる洗濯機であって、
前記洗濯槽が、軸線方向が略水平又は水平に近い角度傾斜して延出してなり前記軸線周りに回転可能に支持されたドラムを有するものであり、前記バランサが、前記注水装置により前記洗濯槽の先端側から注水された前記調整水の基端側への流れを抑制することにより前記調整水を先端側に滞留させ得る仕切部と、注水された前記調整水を前記洗濯槽の基端側から排出させ得る出口部とを
有し、前記仕切部が、前記洗濯槽の先端側から基端側へ向けて前記ドラムの回転中心に漸次近接するよう傾斜した傾斜面を有していることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、バランサが、洗濯物を攪拌し得るバッフルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、仕切部を設けることにより調整水を、洗濯槽のアンバランスの影響が最も顕著に表れる、駆動装置から最も離間した箇所である洗濯槽の先端側に重点的に貯留させることで、同じ調整水の量で先端側から基端側まで均一に配したときよりも、より脱水運転中の洗濯槽に大きな加重を加えることができる。これにより、脱水運転時に洗濯槽のアンバランスを確実且つ速やかに解消することができる。その結果、調整水の量の節約が可能となるのみならず、調整水の注水の要する時間や機会を有効に削減することができ、洗濯物の偏在による運転時間の遅延を有効に回避することができる。
また、仕切部が、洗濯槽の先端側から基端側へ向けてドラムの回転中心に漸次近接するよう傾斜した傾斜面を有している本発明によれば、調整水はドラムの回転による遠心力が作用することにより洗濯槽の先端側により優先的に貯留されることで、より少ない調整水の量でバランサの作用を有効に発揮させることができ、調整水の量の節減並びに注水時間の短縮による運転時間の短縮にも資する。
【0020】
また、バランサをバッフルであるようにした本発明によれば、洗濯槽のバランス調整と洗濯物を掻き上る等により攪拌する両機能を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は本実施形態の洗濯機1の構成を示す模式的な断面図である。
図2は、本実施形態の洗濯機1の部分的な縦断面を示した作用説明図である。
【0028】
本実施形態の洗濯機1は、例えばコインランドリーや家庭にて好適に使用され得るものであり、洗濯機本体1aと、略水平に延出してなる軸線S1を有した外槽3及びドラム2からなる洗濯槽1bと、受水ユニット5及びノズルユニット6を有する注水装置1cと、駆動装置40と、図示しない制御手段とを備えたものである。
【0029】
図1に示す洗濯機本体1aは、略直方体形状である。洗濯機本体1aの前面10aには、ドラム2に対して洗濯物を出し入れするための開口11が形成されるとともに、この開口11を開閉可能な開閉蓋11aが取り付けられる。
【0030】
外槽3は、洗濯機本体1aの内部に配置された有底筒状の部材であり、内部に洗濯水を貯留可能である。
図1に示すように、外槽3の外周面3aには例えば、左右、垂直及び奥行きの3方向の加速度を検出可能な加速度センサ12が取り付けられる。
【0031】
ドラム2は、外槽3内において外槽3と同軸に配置されるとともに、回転自在に支持される有底筒状の部材である。ドラム2は、内部に洗濯物を収容可能で、その壁面2aに多数の通水孔2b(
図1参照)を有する。
【0032】
駆動装置40は、
図1に示すように、図示しないモータを主体とし、ドラム2の底部2cに向けて延出する駆動軸17を回転させて、ドラム2に駆動力を与え、ドラム2を回転させる。
【0033】
図1に示すように、ドラム2の内周面2a1には、周方向に等間隔(等角度)でバランサとしてのバッフル(注水管)7が3つ設けられる。各バッフル7は、ドラム2の基端部2cから先端部に亘って上下方向に延び、ドラム2の内周面2a1から軸線S1に向けて突出して形成される。また各バッフル7は中空状であり、図示しないが横断面形状が円弧状に形成される。
【0034】
受水ユニット5は、導水樋5aが例えばドラム2の軸線S1に向けて径方向に三層重層されて構成されるもので、
図3に示すようにドラム2の内周面2a1に固定される。導水樋5aは、バッフル7と同数だけ設けられ、単独で何れかのバッフル7に調整水Wを流せる通水経路が内部に形成される。そしてバッフル7の内部には、
図1に示すように連通部材5a1が接続され、受水ユニット5から調整水Wが供給される。
【0035】
このような受水ユニット5とバッフル7とは、連通部材5a1でそれぞれ接続される
【0036】
ノズルユニット6は、このような導水樋5aに個別に調整水Wを注水するものである。ノズルユニット6は、3本の注水ノズル6aと、これらの注水ノズル6aにそれぞれ接続される給水バルブ62aとを有する。注水ノズル6aは、導水樋5aと同数だけ設けられ、それぞれ別々の導水樋5aに注水可能な位置に配置される。なお、本実施形態では調整水Wとして水道水が用いられる。また、給水バルブ62aとしては、方向切換給水バルブを採用することも可能である。
【0037】
このような構成であると、排水バルブ50aが開かれて外槽3内の洗濯水が排水口50より排出される脱水工程では、ノズルユニット6の何れかの注水ノズル6aから受水ユニット5の導水樋5a内に注水された調整水Wは、連通部材5a1を介してバッフル7内に流れ込む。例えば、何れかの注水ノズル6aから調整水Wが注水される場合には、
図2に矢印で示すように、導水樋5aから連通部材5a1を介してバッフル7に調整水Wが流れ込む。バッフル7内に流れ込んだ調整水Wは、ドラム2が高速回転状態にあると、遠心力によりドラム2の内周面2a1にはりついて滞留する。これにより当該バッフル7の重量が増加し、ドラム2のバランスが変化する。このようにバッフル7は、遠心力により調整水Wを貯めることが可能なポケットバッフル構造である。そして、脱水工程が終了に近づいてドラム2の回転速度が低下すると、バッフル7内の遠心力が次第に減衰し、調整水Wが重力によって流れ出て、排水管5を介して外槽3外へ排水される。このとき、調整水Wは開口部71を介してパルセータの下外方に流れ込む。そのため、調整水Wは、ドラム2内の衣類を濡らすことなく排水される。
【0038】
ここで、本実施形態に係る洗濯機1は、基端1e側に駆動装置40を配するとともに先端1d側を開口させてなる洗濯槽1bと、洗濯槽1bの軸線S1方向に沿って当該洗濯槽1bの内周面であるドラム2の内周面2a1に配設される複数の中空のバランサたるバッフル7と、バッフル7の各々に個別に調整水Wを注水する注水装置1cとを備えてなる洗濯機1であって、注水された調整水Wが洗濯槽1bの先端1d側から優先的に滞留させることができる構造を備えたことを特徴とする。以下、本実施形態の具体的な構成についてバランサであるバッフル7の構成を中心に説明する。
【0039】
バッフル7は、注水装置1cにより洗濯槽1bの先端1d側から注水された調整水Wの基端1e側への流れを抑制することにより調整水Wを先端1d側に滞留させ得る仕切部71と、注水された調整水Wを洗濯槽1bの基端1e側から排出させ得る出口部72とを有していることを特徴とする。
【0040】
仕切部71は、軸心方向から傾斜した方向に面するように外壁から設けた傾斜壁73を主体としてなるものである。そしてこの傾斜壁73の表面が、洗濯槽1bの先端1d側から基端1e側へ向けてドラムの回転中心に漸次近接するよう傾斜した傾斜面74である。
【0041】
出口部72は、注水装置1cを構成する5a1から一定量以上注水された調整水Wを洗濯槽1bの基端1e側から排出させ得るものである。
【0042】
そして
図2では、脱水工程中に複数回調整水Wが注水されるバッフル7の挙動について模式的に示している。このように、同図では一回毎の調整水Wの注水を断面にて示している。一回目の注水において、バッフル7の先端1d近傍に調整水Wが集中するようになっているので、最も少ない注水量であっても、その調整水Wがバッフル7の先端1dに優先して集中するようになっているので、バッフル7への注水量が少量、換言すればバッフル7への注水回数が少なくとも洗濯槽1bの偏心を有効に解消できるようになっている。なお、バッフル7への注水回数が増すごとに、調整水Wは定量的に増加するが、洗濯槽1bへの影響すなわち偏心たるアンバランスの解消度合いは漸次減少していく。
【0043】
また同図に示すようにこのバッフル7は出口部72が、所領量以上の調整水Wは優先的に洗濯槽1b外へ排出し得るように傾斜面74の先端1dに連続して設けられている。これにより、バッフル7に一定以上の調整水Wが注水されることが抑止され、過度の注水による誤制御の招来を有効に回避している。
【0044】
このように本実施形態の洗濯機1は、バランサたるバッフル7が、注水装置1cにより洗濯槽1bの先端1d側から注水された調整水Wの基端1e側への流れを抑制することにより調整水Wを先端1d側に滞留させ得る仕切部71と、注水された調整水Wを洗濯槽1bの基端1e側から排出させ得る出口部72とを備える。
【0045】
このような構成であると、仕切部71を設けることにより調整水Wを、洗濯槽1bのアンバランスの影響が最も顕著に表れる、駆動装置40から最も離間した箇所である洗濯槽1bの先端1d側に重点的に貯留させることで、同じ調整水Wの量で先端1d側から基端1e側まで均一に配したときよりも、より脱水運転中の洗濯槽1bに大きな加重を加え得るものとなっている。これにより、脱水運転時に洗濯槽1bのアンバランスを確実且つ速やかに解消することができる。その結果、調整水Wの量の節約が可能となるのみならず、調整水Wの注水の要する時間や機会を有効に削減することができ、洗濯物の偏在による運転時間の遅延を有効に回避せしめている。その結果、洗濯機1がコインランドリー店舗に設置されている態様のものであれば、運転時間の遅延の回避により、店舗の回転効率の向上に資するものとなる。また洗濯機1が家庭に設置されている態様のものであれば、運転時間の遅延の回避により、使用者の時間の有効利用に資する。
【0046】
また本実施形態では、バランサをバッフル7であるようにしているので、洗濯槽1bのバランス調整と洗濯物を掻き上る等により攪拌する両機能を実現せしめている。
【0047】
さらに本実施形態では、仕切部71が、洗濯槽1bの先端1d側から基端1e側へ向けてドラムの回転中心に漸次近接するよう傾斜した傾斜面74を有しているので、調整水Wはドラムの回転による遠心力が作用することにより洗濯槽1bの先端1d側により優先的に貯留されることで、より少ない調整水Wの量でバランサとしての作用を有効に発揮させることができ、調整水Wの量の節減並びに注水時間の短縮による運転時間の短縮に特に資するものとなっている。
【0048】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。これら各実施形態において、上記実施形態の構成要素に相当するものについては同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
【0050】
図3は本発明の第二実施形態の洗濯機1の構成を示す模式的な断面図である。
図4は、本実施形態の洗濯機1の部分的な縦断面を示した作用説明図である。
【0051】
本実施形態の洗濯機1は、洗濯機本体1aと、略水平に延出してなる軸線S1を有した外槽3及びドラム2からなる洗濯槽1bと、受水ユニット5及びノズルユニット6を有する注水装置1cと、駆動装置40と、図示しない制御手段とを備える点は、上記第一実施形態同様である。
【0052】
図3に示す洗濯機本体1aは、その前面10aが若干上方に向いて面することにより、ドラム2に対して洗濯物を出し入れするための開口11が斜め上方を向いて形成され、この開口11を開閉可能な開閉蓋11aを使用者が斜め上方から開閉する態様のものである。すなわち本実施形態に係る洗濯機1は、洗濯槽1bが斜め方向に取り付けられた、所謂斜めドラム式全自動洗濯機と称されるものである。
【0053】
本実施形態に係る洗濯機1についても上記実施形態同様、基端1e側に駆動装置40を配するとともに先端1d側を開口させてなる洗濯槽1bと、洗濯槽1bの軸線S1方向に沿って当該洗濯槽1bの内周面であるドラム2の内周面2a1に配設される複数の中空のバランサたるバッフル7と、バッフル7の各々に個別に調整水Wを注水する注水装置1cとを備えてなるものである。以下、本実施形態に示すバランサたるバッフル7について説明する。
【0054】
このバッフル7は、上記実施形態同様、注水装置1cにより洗濯槽1bの先端1d側から注水された調整水Wの基端1e側への流れを抑制することにより調整水Wを先端1d側に滞留させ得る仕切部71と、注水された調整水Wを洗濯槽1bの基端1e側から排出させ得る出口部72とを有している。そして本実施形態に係るバッフル7は、仕切部71が、バッフル7の外壁面から内方に向けて立設され先端1d側に位置づけられ優先的に調整水Wを貯留するための優先貯留領域75aとこの優先貯留領域75aから出口部72を介して基端1e側に位置づけられ調整水Wを排出するための排出助長領域75bとに仕切る仕切立壁75であることを特徴としている。
【0055】
そして
図4では、脱水工程中に複数回調整水Wが注水されるバッフル7の挙動について模式的に示している。このように本実施形態においても、バッフル7における洗濯槽1bの先端1d近傍に調整水Wが集中するようになっているので、最も少ない注水量であっても、その調整水Wがバッフル7のすなわち洗濯槽1bの先端1dに設けられた優先貯留領域75a内に優先して集中するようになっているので、バッフル7への注水量が少量、換言すればバッフル7への注水回数が少なくとも洗濯槽1bの偏心を有効に解消できるようになっている。また本実施形態では、バッフル7への注水回数が増すごとに調整水Wは定量的に増加するが、上記実施形態とは異なり、洗濯槽1bへ加えることができる加重は注水回数に比例して上昇していくようになっている。加えて、出口部72は上記実施形態同様、注水装置1cにより一定量以上注水された調整水Wを洗濯槽1bの基端1e側から排出助長領域75bへ向けて排出させ得るように仕切立壁の先端1dから連続して設けられている。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る洗濯機1であっても上記実施形態同様、調整水Wの注水の要する時間や機会を有効に削減することができ、洗濯物の偏在による運転時間の遅延を有効に回避することができる。
【0057】
特に本実施形態によれば、簡素な構成であってもバランス調整をより少ない調整水Wにより行い得る効果を得ることができる。
【0059】
本発明の第三実施形態に係る洗濯機1は、
図5に示すように、洗濯槽1bが、軸線S1方向が略垂直方向に延出する、所謂縦型全自動洗濯機と称される洗濯機1に本発明を適用したものである。
【0060】
このような縦型全自動洗濯機1では、ドラム2の底部2c中央には、パルセータ(撹拌翼)4が回転自在に配置される。
図5に示すように、パルセータ4は、略円盤形状のパルセータ本体と、パルセータ本体の上面に形成される複数の羽根部とを有する通常のものである。このようなパルセータ4は、外槽3内に貯留された洗濯水を撹拌して水流を発生させる。
【0061】
駆動装置40は、
図5に示すように、図示しないモータを主体とし、ドラム2の底部2cに向けて延出する駆動軸17を回転させて、ドラム2やパルセータ4に駆動力を与え、ドラム2やパルセータ4を回転させる。洗濯機1は、洗い工程では主としてパルセータ4のみを回転させ、脱水工程ではドラム2とパルセータ4とを一体的に高速で回転させる。
【0062】
同図に示すように、本実施形態に係る洗濯機1は上記各実施形態同様、基端1e側に駆動装置40を配するとともに先端1d側を開口させてなる洗濯槽1bと、洗濯槽1bの軸線S1方向に沿って当該洗濯槽1bの内周面であるドラム2の内周面2a1に配設される複数の中空のバランサたるバッフル7と、バッフル7の各々に個別に調整水Wを注水する注水装置1cとを備え、注水装置1cにより洗濯槽1bの先端1d側から注水された調整水Wの基端1e側への流れを抑制することにより調整水Wを先端1d側に滞留させ得る仕切部71と、注水された調整水Wを洗濯槽1bの基端1e側から排出させ得る出口部72とを有している。
【0063】
ここで、以下、本実施形態に係る洗濯機1が有するバッフル7について説明する。なお本実施形態に係るバッフル7は洗い工程において洗濯物の上方から洗濯水を注水するという、所謂滝洗いが可能なように構成及び制御されるものであるが、当該態様についての説明は省略する。
【0064】
仕切部71は、本実施形態では、バッフル7の内壁面から突出して形成された貯留壁76を有している。そしてこの貯留壁76は、その上面側に、下方への調整水Wの落下を抑制し得る貯留用底面77を有している。本実施形態では当該貯留壁76をバッフル7の上下方向中間よりもやや上側の位置に一つ設けた態様を図示しているが勿論、上下方向に複数の貯留壁76を設けたものとしたり、貯留用底面77が傾斜したものであったりしても良いことは勿論である。
【0065】
出口部72は、本実施形態では調整水Wを下方へ落下させ得る開口たる落下口78を有している。この落下口78は、本実施形態では同図に示すように、貯留壁76に設けられた孔であったり、スリットであったり、調整水Wが貯留壁76から落下し得るように形成しているが、本実施形態では例えば、調整水Wが注水される時間当たりの水量が、落下口78から調整水Wが落下する時間当たりの水量よりも多く設定されることで、貯留用底面77上に調整水Wが貯留される態様としている。
【0066】
そして
図5では、脱水工程中に複数回調整水Wが注水されるバッフル7の挙動について模式的に示している。このように、同図では一回毎の調整水Wの注水を断面にて示している。一回目の注水において、バッフル7の貯留用底面77よりも上側すなわち先端1d近傍に調整水Wが集中するようになっているので、も少ない注水量であっても、換言すればバッフル7への注水回数が少なかったり注水時間が短かったりしても洗濯槽1bの偏心を有効に解消できるようになっている。なお、バッフル7への注水回数が増すごとに、調整水Wは定量的に増加するが、本実施形態では調整水Wの水位が上昇することにより洗濯槽1bへ加えることができる加重すなわちアンバランス解消効果は逓増していく。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る洗濯機1であっても上記実施形態同様、仕切部71を設けることにより調整水Wを、洗濯槽1bのアンバランスの影響が最も顕著に表れる、駆動装置40から最も離間した箇所である洗濯槽1bの先端1d側に重点的に貯留させることで、同じ調整水Wの量で先端1d側から基端1e側まで均一に配したときよりも、より洗濯槽1bに大きな加重を加えることができる。これにより、脱水運転時に洗濯槽1bのアンバランスを確実且つ速やかに解消することができる。その結果、調整水Wの量の節約が可能となるのみならず、調整水Wの注水の要する時間や機会を有効に削減することができ、洗濯物の偏在による運転時間の遅延を有効に回避することができる。
【0068】
また、洗濯槽1bが、軸線S1方向が略垂直方向に延出するものであり、仕切部71が、バッフル7の内壁面から突出して下方への調整水Wの落下を抑制し得る貯留用底面を有するとともに、出口部72が、貯留用底面から調整水Wを下方へ落下させ得る開口を有している本発明によれば、所謂縦型の洗濯機1であっても、脱水槽の偏心による振動や騒音の発生を抑制できるという効果を、より少ない調整水Wの量でより短時間に実現し、運転時間の遅延を有効に回避することがすることができる。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本実施形態の構成は上述したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【0070】
例えば、上記実施形態では受水ユニットが3つの導水樋で構成され、それに対応して3つのバッフルが設けられるが、これに限らず、バッフルが3個以上設けられ、かつ導水樋がバッフルと同数設けられる構成であればよい。また、受水ユニットは、複数の導水樋が上下方向に重層されてなる構成であってもよく、これにより、受水ユニットの横幅を狭くして、ドラムの開口を広げることができる。さらに、バッフルは、洗濯機の動作(状況)に応じて、上広がり、或いは下広がりの形状であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態ではバッフルの仕切部として、傾斜面を有した傾斜壁と、仕切立壁とを適用する態様をそれぞれ別の実施形態にて開示したが勿論、これら傾斜壁並びに仕切立壁を併用した態様としても良い。
【0072】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。