特許第6736986号(P6736986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6736986
(24)【登録日】2020年7月20日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】電源切換装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/00 20060101AFI20200728BHJP
【FI】
   G05F1/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-111041(P2016-111041)
(22)【出願日】2016年6月2日
(65)【公開番号】特開2017-215917(P2017-215917A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】田村 浩明
【審査官】 山崎 雄司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−218390(JP,A)
【文献】 特開平04−088847(JP,A)
【文献】 特開平01−206852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/00
H02J 3/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2の交流電源のそれぞれから共通の負荷へ給電する2つの給電回路に、それぞれ2個のサイリスタ素子を逆極性に並列接続して構成した給電スイッチを設け、これらの給電スイッチのオン、オフを切り換えることにより負荷へ給電する電源を切り換える電源切換装置において、
前記2つの給電スイッチに切換指令が与えられたとき、オンしている側の給電スイッチの属する電源の相電圧を検出する手段と、この電圧検出手段により検出した相電圧の極性を判別する手段と、この極性判別手段により判別された相電圧の極性が正極性のときは、オフしている側の給電スイッチの正極性のサイリスタにゲートオン許可信号を与え、前記相電圧の極性が負極性のときは、オフしている側の給電スイッチの負極性のサイリスタにゲートオン許可信号を与える手段と、を有する切換制御回路を備え
前記電源の相電圧の極性を判別する手段は、前記電源の線間電圧を微分した電圧の90°または270°位相を検出する手段と、前記検出された90°または270°位相から前記電源の相電圧の位相を推定する位相推定手段と、前記推定された相電圧の位相から相電圧が正極性または負極性を判別する極性判別手段とで構成することを特徴とする電源切換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源切換装置において、
前記電源の線間電圧を微分した電圧の90°または270°位相を検出する手段は、前記電源の線間電圧を微分した電圧の変化量を求め、この変化量の負から正または正から負への変化をとらえて、90°位相または270°位相を示す信号を発生する手段を備えることを特徴とする電源切換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2系統の交流電源から選択的に負荷へ給電を行うための電源切換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、選択的に負荷に給電可能にした冗長化された2系統の交流電源を備える電源装置においては、給電中の電源系統に停電や電圧低下等の異常が発生すると、給電系統が電圧の正常な待機側の電源に切り換えられる。電源の切換は電源切換装置によって行われるが、電源系統を切り換える切換スイッチの同時オン状態が発生すると、2つの電源間に短絡が生じ、横流が流れる。
【0003】
一方、給電系統の切換えに遅れが生じると、負荷に対して停電もしくは電圧変動が生じる問題もある。
【0004】
このような電圧変動や、横流の発生を抑制するための電源切換装置として、従来から特許文献1や2に示される装置が知られている。しかし、このような従来の電源切換装置は、インバータを備える電源の電圧と、もう一方の商用交流電源の電圧とを同期させて切り換えを行う同期切換手段や、交流電源相互間に流れる横流分を検出する手段などを備えるので、構成が複雑になる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−019065号公報
【特許文献2】特公平07−004052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、前記の従来装置における問題を解決するため、同期切り換え手段や、交流電源相互間に流れる横流分を検出する手段などを設けることなく、電源切り換え時に横流の発生を防止することのできる、構成の簡単な電源切換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、この発明は、第1と第2の交流電源のそれぞれから共通の負荷へ給電する2つの給電回路に、それぞれ2個のサイリスタ素子を逆極性に並列接続して構成した給電スイッチを設け、これらの給電スイッチのオン、オフを切り換えることにより負荷へ給電する電源を切り換える電源切換装置において、
前記2つの給電スイッチに切換指令が与えられたとき、オンしている側の給電スイッチの属する電源の相電圧を検出する手段と、この電圧検出手段により検出した相電圧の極性を判別する手段と、この極性判別手段により判別された相電圧の極性が正極性のときは、オフしている側の給電スイッチの正極性のサイリスタにゲートオン許可信号を与え、前記相電圧の極性が負極性のときは、オフしている側の給電スイッチの負極性のサイリスタにゲートオン許可信号を与える手段と、を有する切換制御回路を備えることを特徴とするものである。
さらに、この発明においては、前記電源の相電圧の極性を判別する手段は、前記電源の線間電圧を微分した電圧の90°または270°位相を検出する手段と、前記検出された90°または270°位相から前記電源の相電圧の位相を推定する位相推定手段と、前期推定された相電圧の位相から相電圧が正極性か負極性かを判別する極性判別手段とで構成することができる。 また、前記電源の線間電圧を微分した電圧の90°または270°位相を検出する手段は、前記電源の線間電圧を微分した電圧の変化量を求め、この変化量の負から正または正から負への変化をとらえて、90°位相または270°位相を示す信号を発生する手段とする。
【0008】
また、第1と第2の交流電源のそれぞれから共通の負荷へ給電する2つの給電回路に、それぞれ2個のサイリスタ素子を逆極性に並列接続して構成した給電スイッチを設け、これらの給電スイッチのオン、オフを切り換えることにより負荷へ給電する電源を切り換える電源切換装置において、
前記各給電スイッチに対応して、前記給電スイッチの少なくとも負荷側の全相電圧を検出する電圧検出手段と、この電圧検出手段の出力を全波整流して直流電圧に変換する電圧変換手段と、この電圧変換手段の出力電圧が基準値より低下したことを判定する電圧判定手段と、前記2つの給電スイッチに切換指令が与えられたとき、オンしている側の給電スイッチの前記電圧判定手段の判定出力に基づいてオフしている側の給電スイッチのサイリスタにゲートオン許可信号を与える手段とを有する切換制御回路を備えることを特徴とするものである。
そして、この発明においては、前記電圧判定手段の判定出力を、前記負荷の有する誘導成分に対応する負荷電流の遅れ位相角に対応する時間だけ遅らせる時限要素を設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、2つの交流電源から共通の負荷へ給電する2つの給電回路にそれぞれ設けた、サイリスタ素子で構成した給電スイッチのオン、オフを切り換えて電源の切り換えを行うとき、オンしている側の給電スイッチに加わる電源の相電圧を検出し、この検出した相電圧の極性を判別し、電圧の極性が正極性の場合は、オフしている側の給電スイッチの正極性のサイリスタのゲートオンを許可し、電圧の極性が負極性の場合は、オフしている側の給電スイッチの負極性のサイリスタのゲートオンを許可するようにしているので、2つの給電スイッチの切換時に、2つの給電スイッチのサイリスタが同時にオンされることがなく、オンしている側のスイッチのサイリスタがオフした後にオフしている側の給電スイッチのサイリスタがオンに切り換えられる。このため、同期切換手段や、交流電源相互間に流れる横流分を検出する手段などを設けることなく、給電回路の切換時に横流が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の第1の実施例を示す回路構成図である。
図2】この発明の第1の実施例の動作波形図である。
図3】この発明の第2の実施例を示す回路構成図である。
図4】この発明の第3の実施例を示す回路構成図である。
図5】この発明の第3の実施例の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、この発明の電源切換装置の第1の実施例を示す構成図であり、三相交流回路の各相は同じ構成を有するので、ここでは、U相の回路構成だけを示し、他の相の回路構成は、ブロックで示す。
【0013】
図1において、1および2は、第1および第2の3相交流電源である。この2つの交流電源のそれぞれから、3相の給電路11および21を切り換えて共通の負荷5に給電する。給電路11および21には、それぞれ、電圧検出器12、22、および負荷5への給電路を選択的に切り換えるための給電スイッチ3、4が設けられている。給電スイッチ3および4の各相のスイッチ3U〜3Wおよび4U〜4Wは、それぞれ逆極性にした2つのサイリスタ3P、3N、および4P、4Nを並列接続して構成される。なお、ここでは、各相の給電スイッチにおいて電流の通流方向が電源から負荷側へ向けられたサイリスタ3P,4Pの極性を正極性、電流の通流方向が負荷から電源側へ向けられたサイリスタ3N、4Nの極性を負極性と定義する。
【0014】
給電スイッチ3および4には、各相ごとに、切換制御回路30および40が付属する。切換制御回路30および40は、外部からの切換指令により一方の給電スイッチがオンしているときは他方の給電スイッチがオフされ、2つの給電スイッチ3、4が同時にオンされることがないように、給電スイッチ3、4のオン、オフの切り換えを制御する。
【0015】
切換制御回路30は、給電スイッチ3に対する切換信号S3がオン(「1」)のとき、給電スイッチ3のサイリスタ3P,3Nへのゲート信号G3P、G3Nをオン(「1」)にし、給電スイッチ4のサイリスタ4P、4Nへのゲート信号G4P、G4Nをオフ(「0」)にする。そして、切換制御回路40は、給電スイッチ4に対する切換信号S4がオン(「1」)のとき、給電スイッチ4のサイリスタ4P、4Nへのゲート信号G4P、G4Nをオン(「1」)にし、給電スイッチ3のサイリスタ3P、3Nへのゲート信号G3P、G3Nをオフ(「0」)にする。
【0016】
切換制御回路30および40は、同じ構成を有するので、図1には、切換制御回路40の構成だけ詳細を示し、切換制御回路30は、ブロックで示し、詳細な構成の図示を省略する。
【0017】
切換制御回路40は、電圧検出器12で検出した3相交流電源1のU−V相の線間電圧E1UVの微分値を求める微分演算手段41を備える。この微分演算手段41は、検出した線間電圧E1UVを所定のクロック信号に同期してサンプリングして取り込み、前回取り込んだ電圧値と今回取り込んだ電圧値との変化分を求めることにより微分演算を行う。
【0018】
微分演算手段41の出力は、給電路11の線間電圧E1UVの90°および270°位相を検出するため、90°位相検出手段42aおよび270°位相検出手段42bに入力される。90°位相検出手段42aは、微分演算手段41から出力される線間電圧E1UVの微分値E1UV´の極性の変化を監視し、微分値、すなわち変化量が正から負へ変化するタイミングをとらえて線間電圧E1UVの90°位相検出信号S90を発生する。270°位相検出手段42bは、微分演算手段41から出力される線間電圧E1UVの微分値E1UV´の極性の変化を監視し、微分値すなわち変化量が負から正に変化するタイミングをとらえて線間電圧E1UVの270°位相検出信号S270を発生する。
【0019】
90°位相検出手段42aおよび270°位相検出手段42bからの検出信号S90およびS270は、電源1のU相電圧E1の位相を推定する位相推定手段43aおよび43bに入力される。
この位相推定手段43a、43bは、クロック信号Clをカウントするカウンタで構成する。位相推定手段43aを構成するカウンタは、90°位相検出信号S90によって、初期値設定器44aに設定された初期値60°からカウントを開始し、180°相当のクロック信号Clをカウントして240°のカウント値に達した時点で、カウント値をリセットする。位相推定手段43bを構成するカウンタは、270°位相検出信号S270によって、初期値設定器44bに設定された初期値240°からカウントを開始し、180°相当のクロックをカウントして420°(60°)に達した時点で、カウント値をリセットする。これによって、各々のカウント値から、検出した線間電圧の90°、270°位相から相電圧の位相がどれだけ進んだかを推定する。
【0020】
相電圧は、周知のとおり線間電圧に対して30°の位相遅れを有しているので、位相推定手段43a、43bのカウンタの初期値を初期値設定器44a、44bにより、相電圧位相の検出値90°、270°よりそれぞれ30°少ない60°、240°に設定することにより、検出した線間電圧の位相から相電圧の位相に変換され、位相推定手段43a、43bのカウント値から直ちに相電圧の位相を推定することができる。位相推定手段43a、43bのカウンタのリセット値を240°、60°に設定するのも同様の理由である。
したがって、位相推定手段43aおよび43bのカウント値は、相電圧E1、ここではU相電圧E1の位相の推定値を示すことになる。
【0021】
位相推定手段43aのU相電圧E1の位相推定値θを示すカウント値は、比較器45a、45bの比較入力に入力される。比較器45aは、位相推定値θを示すカウント値を設定器S13から負の基準入力に入力された設定値180°と比較し、位相推定値θが設定値180°以上のとき「1」となり、そして、設定値180°以下のとき「0」とする比較出力S45aを発生する。また、比較器45bは、比較入力に入力された位相推定値θを、設定器S14から正の基準入力に入力された設定値180°と比較し、位相推定値θが設定値180°以下のとき「1」となり、そして、設定値180°以上のとき「0」となる比較出力S45bを発生する。
位相推定手段43bのU相電圧E1の位相推定値θを示すカウント値は、比較器46a、46bの比較入力に入力される。比較器46aは、位相推定値θを示すカウント値を設定器S15から正の基準入力に入力された設定値0°と比較し、位相推定値θが設定値0°以上のとき「1」となり、そして、設定値0°以下のとき「0」とする比較出力S46aを発生する。また、比較器46bは、比較入力に入力された位相推定値θを、設定器S16から正の基準入力に入力された設定値0°と比較し、位相推定値θが設定値0°以下のとき「1」となり、そして、設定値以上のとき「0」となる比較出力S46bを発生する。
【0022】
比較器45bと比較器46aの出力S45bとS46aは、オアゲート47aおよびアンドゲート48aを介してフリップフロップ回路で構成された信号保持手段49aに入力される。そして、比較器45aと比較器46bの出力S45aとS46bは、オアゲート47bおよびアンドゲート48bを介してフリップフロップ回路で構成された信号保持手段49bに入力される。
【0023】
信号保持手段49aの出力は、給電路21の給電スイッチ4の正極性のサイリスタ4Pに対するゲートオン許可信号S4Pとしてアンドゲート48Pに入力される。また、信号保持手段49bの出力は、給電路21の給電スイッチ4の負極性のサイリスタ4Nに対するゲートオン許可信号S4Nとしてアンドゲート48N入力される。
【0024】
切換制御回路40の切換信号入力端C41には、外部から給電スイッチ4への切換信号S4が入力される一方、切換信号入力端C42には、給電スイッチ3への切換信号S3を否定した信号¬S3が入力される。切換制御回路30の切換信号入力端C31には、給電スイッチ3への切換信号S3が入力される一方、切換信号入力端C32には、給電スイッチ4への切換信号S4を否定した信号¬S4が入力される。
給電スイッチ4への切換信号S4が「1」となって給電スイッチ4にオンを指令するときは、給電スイッチ3への切換信号S3は、「0」となって給電スイッチ3にオフを指令する。その反対に、給電スイッチ3への切換信号S3が「1」となって給電スイッチ3にオンを指令するときは、給電スイッチ4への切換信号S4は、「0」となって給電スイッチ4にオフを指令する。
信号保持手段49a、49bには、給電スイッチ4への切換信号S4が、「0」となってオフが指令されるとき、ノットゲート51を介して「1」となるリセット信号が加わり、信号保持手段49a、49bがリセットされる。
【0025】
また、切換制御回路30から切換制御回路40に入力される切換信号S3は、ノットゲート52を介して、アンドゲート48aおよび48bに入力される。そして、切換制御回路40から切換制御回路30に入力される切換信号S4は、ノットゲート53を介して切換制御回路40内のアンドゲート48a、48bに相当する、ここには図示しない切換制御回路30内のアンドゲートに入力される。
なお、給電路21の電圧検出器22により検出された線間電圧E2UVは、切換制御回路30に入力される。
【0026】
次に、このように構成されたこの発明の電源切換装置の動作を、図2に示す動作波形図を参照して説明する。
【0027】
図1の電源切換装置において、横流防止対策が何も施されていない場合は、例えば、切換元の電源1から切換先の電源2への切換過程で、電源1側のU相の給電スイッチ3Uの正極性のサイリスタ3Pがオンし、これを通して負荷5に点線で示す電流IP1が流れているときに、電源2側のU相の給電スイッチ4Uの負極性のサイリスタ4Nがオンすると、これを通して電源1から電源2へ点線で示すように電流IN2が、サイリスタ3Pがオフするまで、横流として流れる。
この発明は、このような横流IN2が流れるのを防止するものである。
【0028】
今ここで、図1の電源切換装置は、給電スイッチ3をオンにし、給電スイッチ4をオフにして、電源1から給電スイッチ3を通して負荷5へ給電している状態におかれている。この状態から給電スイッチ3をオフに、給電スイッチ4をオンに切り換えて、電源2から給電スイッチ4を通して負荷5へ給電する状態に切り換える場合の切換動作について説明する。このため、ここでは、電源1が切換元電源となり、電源2が切換先電源となる。
【0029】
給電スイッチ3がオンし、電源1から給電路11を通して負荷5へ電流I1が供給されている状態においては、電圧出器12により図2(a)に実線で示すような電源1のU−V相間の線間電圧E1UVが検出される。
この切換元電源1の線間電圧E1UVが、切換先電源2側の切換制御回路40の微分演算手段41に入力され、微分される。この微分演算手段41からは、図2(b)に示すような線間電圧の微分電圧E1UV´が得られる。
【0030】
この微分電圧E1UV´の波形から明らかなように、微分電圧E1UV´が正となる期間は、図2(c)に示すように電圧正変化量が「1」となり、微分電圧E1UV´が負となる期間は、図2(d)に示すように、電圧負変化量が「1」となる。
【0031】
90°位相検出手段42aは、図2(d)に示す線間電圧E1UVの電圧負変化量を監視し、これが0から1へ立ち上がるのを検知して、90°位相検出信号S90を発生する。このため、90°位相検出手段42aから、図2(e)に示すように、線間電圧E1UVが90°位相となるt6時点で90°位相検出信号S90が発生される。
【0032】
また、270°位相検出手段42bは、図2(c)に示す線間電圧E1UVの正変化量を監視し、これが0から1へ立ち上がるのを検知して270°位相検出信号S270を発生する。したがって、270°位相検出信号S270は、図2(f)に示すように、線間電圧E1UVが270°位相となるt3時点で発生される。
【0033】
クロック信号Clをカウントして電源1の相電圧E1の位相を推定する位相推定手段43aおよび43bは、それぞれ図2(g)および図2(h)に示すように、90°位相検出信号S90および270°位相検出信号S270が入力されることによって、それぞれ初期値設定器44aおよび44bに設定された初期値60°および240°からカウントを開始する。カウントを開始した位相推定手段43aおよび43bは、それぞれ、270°位相検出信号S270および90°位相検出信号S90によりカウントを開始してから、それぞれカウント値が240°および60°になるまでカウントし、240°および60°に達したところでカウント値をリセットして初期値(60°および240°)に戻す動作をする。
【0034】
このため、位相推定手段43aは、t3時点まで、およびt6〜t10時点間でカウント動作を行い、位相推定手段43bは、t3〜t6時点間でカウント動作を行いうので、両位相推定手段のカウント値により、U相のスイッチ3Uが挿入されたU相電圧E1の位相推定値が示される。
位相推定手段43aおよび43bのU相電圧E1の位相推定値θを示すカウント値は、それぞれ比較器45aおよび45bによって設定器S13およびS14に設定された設定値180°と比較される。比較器45aは、カウント値(相電圧位相推定値)が180°以上であれば「1」となる信号S45aを発生し、比較器45bは、カウント値が180°以下であれば「1」となる信号S45bを発生する。したがって、比較器45aの出力から、相電圧E1の位相が180°以上にあることを検知でき、そして比較器45bの出力から相電圧E1の位相が180°以下であることを検知できる。
【0035】
位相推定手段43bの相電圧位相推定値を示すカウント値は、比較器46aおよび46bによって設定器S15、S16に設定された設定値0°と比較され、カウント値が0°以上であれば比較器46aが「1」となる信号S46aを出力し、カウント値が0°以下であれば比較器46bが「1」となる信号S46bを出力する。したがって比較器46aの出力から相電圧E1の位相が0°以上にあることを検知でき、そして比較器46bの出力から相電圧E1の位相が0°以下であることを検知できる。
【0036】
このため、比較器45bと46aのオア出力を取り出すオアゲート47aからは、相電圧E1の位相が0°(360°)から180°の間、図2(i)に示すように「1」となる出力が発生される。これは、相電圧E1の正極性を示すものであるから、オアゲート47aの出力から相電圧E1の正極性を検知できる。
【0037】
比較器45aと46bのオア出力を取り出すオアゲート47bからは、相電圧E1の位相が180°から360(0)°の間、図2(j)に示すように「1」となる出力が発生される。これは、相電圧E1の負極性を示すもので、オアゲート47bの出力から相電圧E1の負極性を検知できる。
【0038】
オアゲート47aおよび47bの出力は、それぞれアンドゲート48aおよび48bの一端に入力される。これらのアンドゲート48aおよび48bの他端には、ノットゲート52を介してスイッチ3の切換信号S3を否定した信号の¬S3が入力される。このため、アンドゲート48aからは、図2(i)に示すように相電圧E1が正極性となっているt5〜t9時点間において、スイッチ切換信号S3が、図2(k)に示すようにオフ、すなわち「0」となったとき、「1」となる出力S48aが得られ、これが信号保持手段49aよって、ゲートオン許可信号S4Pとして保持される。このゲートオン許可信号S4Pは、電源2側の給電スイッチ4の正極性のサイリスタ4Pにゲート信号を出力するアンドゲート48Pの一端に入力される。
【0039】
また、アンドゲート48bからは、図2(j)に示すように相電圧E1の負極性となっているt2〜t5時点間、またはt9時点以降において、スイッチ切換信号S3が、図2(k)に示すようにオフ、すなわち「0」となると、「1」となる出力S48bが得られ、これが信号保持手段49bよって、ゲートオン許可信号S4Nとして保持される。このゲートオン許可信号S4Nは、電源2側の給電スイッチ4の負極性のサイリスタ4Nにゲート信号を出力するアンドゲート48Nの一端に入力される。
【0040】
このように、アンドゲート48Pまたは48Nの一端にゲートオン許可信号S4PまたはS4Nが入力されている状態で、給電スイッチ4に切り換えを指令する切換信号S4がオン(「1」)となると、アンドゲート48Pまたは48Nからゲート信号G4P、G4Nが発生され、給電スイッチ4の正極性サイリスタ4Pまたは負極性サイリスタ4Nに出力されるため、サイリスタ4Pまたはサイリスタ4Nがオンされるようになる。
【0041】
図1における給電スイッチ3がオンされて、電源1から給電路11を通して負荷5に給電している状態で、t7時点で電源切換指令が与えられ、給電スイッチ3の切換信号S3がオン(「1」)からオフ(「0」)に切り換わり、給電スイッチ4の切換信号S4がオフ(「0」)からオン(「1」)に切り換わると、電源1側のスイッチ3へのゲート信号G3P、G3Nがアンドゲート38P、38Nによってオフにされる。このときは、まだ電源3のU相電圧E1が正極性にあるので、スイッチ3Uの正極性サイリスタ3Pはゲート信号がオフされても通流を継続する。これは、相電圧E1の電圧が負極性となり、サイリスタ3Pを通流する電流I1がゼロ点を通過するまで継続される。
【0042】
この状態で、電源2側の給電スイッチ4のスイッチ4Uの、スイッチ3Uの導通している正極性のサイリスタ3Pと電流通流極性が同じとなる負極性のサイリスタ4Nが導通すると、導通を継続している正極性サイリスタ3Pと導通を開始するスイッチ4Uの負極性サイリスタ4Nを通して電源1から電源2へ横流IP2が流れることになる。
【0043】
しかし、この発明においては、t7時点で電源切換指令が与えられても、相電圧E1が正極性にある場合は、ゲートオン許可信号S4Pを、スイッチ4Uの正極性サイリスタ4Pにゲート信号を与えるアンドゲート48Pだけに与え、負極性サイリスタ4Nにゲート信号を与えるアンドゲート48Nには与えないので、この期間に負極性のサイリスタ4Nがオンされることはない。
【0044】
また、ゲートオン許可信号S4Pが与えられることにより、アンドゲート48Pがオンとなり、正極性サイリスタ3Pのゲートにゲート信号G4Pが入力され、このサイリスタ4Pがオンされるが、サイリスタ4Pの通流方向が電源1側から流れる横流の通流方向に対して逆向きとなるため、このサイリスタ4Pによって横流は阻止されることになる。
このため、スイッチ3の正極性サイリスタ3Pが通流している電圧E1の正極性が終わるt9時点までは、スイッチ4(4U)は横流を通流させることがないので、電源1側から電源2に横流が流れることが防止される。
【0045】
相電圧E1の正極性が終わるt9時点で、電流I1がゼロとなるため、スイッチ3(3U)の正極性のサイリスタ3Pがオフし、スイッチ3(3U)が閉じて、電源1が遮断される。
電源1が遮断されても、電圧位相推定手段43aは、最後に線間電圧の90°位相(相電圧の60°)を検出したタイミング(t6)から相電圧が240°となるまでの間は電圧の有無に関わらず、カウントを継続するため、カウント初期値(60°)から、位相がさらに120°進んで相電圧E1の極性が変わってサイリスタがオフするタイミング(相電圧の180°位相)となるt9時点を経過したことを推定することができる。すなわち、位相推定手段43aの位相推定値を示すカウント値が180°以上になったとき、比較器45aから出力される「1」となる出力信号S45aが、サイリスタ3Uがオフするタイミング(相電圧の180°位相)を示すことになる。
【0046】
比較器45aの相電圧E1が負極性であることを示す「1」となった出力信号S45aが、オアゲート47b、およびアンドゲート48bを介して信号保持手段49bに入力され、切換先の切換信号S4がオン(「1」)になってから、相電圧E1が最初に負極性となったときに信号保持手段49bに保持されることなる。この結果、信号保持手段49bからアンドゲート48Nにゲートオン許可信号S4Nが与えられ、アンドゲート48Nを通してスイッチ4(4U)の切換信号S4がゲート信号G4Nとしてスイッチ4(4U)の負極性サイリスタ4Nのゲートに与えられる。これにより、スイッチ4(4U)の負極性サイリスタ4Nが導通し、電源2から負荷5への給電が開始され、電源の切り換えを完了する。
【0047】
なお、相電圧E1がゼロとなるt9時点で、給電スイッチ3のサイリスタ3Pがオフされることにより、切換回路40の入力電圧E1UVがゼロになると、位相検出手段(42a、42b)の出力信号が不定となるため、電圧正変化量および電圧負変化量、ならびに90°検出信号S90および270°検出信号S270は、図2(c)、(d)、(e)、(f)に格子状のハッチングで示すようにt9時点以降は不定となる。この結果、位相推定手段43a、43bが電圧正変化量および電圧負変化量の誤った立ち上がりでカウントを開始し、位相推定手段43a、43bの図2(e)、(f)のt9時点以降の格子状のハッチングで示すカウントは、誤カウントとなることがある。
しかし、このように切換回路40の位相推定手段43a、43bに誤カウントが生じても、すでに、給電スイッチ3から給電スイッチ4に切り換えが実行されたのちであるので、特に問題となることはない。
【0048】
このように、この発明によれば、電源の切り換えを行うとき、切換元の電源からの相電圧の極性を判定して、この相電圧の極性が正極性の場合は、切換先の電源の給電スイッチの正極性のサイリスタにゲートオン許可信号を与え、負極性の場合は、切換先の電源の給電スイッチの負極性のサイリスタにゲートオン許可信号を与えることにより、切換元の電源と切換先の電源との間の横流の発生を防止しているので、同期切換手段や、交流電源相互間に流れる横流分を検出する手段などを設ける必要がなくなり、構成を簡単にすることができる。
【0049】
また、電源2から電源1への切り換えを行うときは、スイッチ3側の切換制御回路30により、スイッチ4側の切換制御回路40と同様に切換時に電源間に横流を発生させることなく切り換えを行うことができる。
【実施例2】
【0050】
図3にこの発明の第2の実施例を示す。
前記の第1の実施例は、電源の相電圧を基準にして電源の切換を制御しているので、負荷5に誘導成分が含まれない場合は、確実に横流の発生を防止することができるが、負荷に誘導成分が含まれ負荷電流に電圧に対して遅れが生じると、横流の発生を防止することができない場合がある。
この第2の実施例は、このような問題を解決するために、負荷電流に遅れが生じても横流の発生を確実に防止することができるようにしたものである。
【0051】
この図3の第2の実施例においては、負荷5の誘導成分による負荷電流の遅れ分の位相角αを予め設定し、この遅れ分の位相角αを比較器4の比較基準値に加算するようにしている。
具体的には、比較器45a、45bの基準値設定器S13a、S14aには、180°に遅れ分の位相角αを加算して「180°+α」を設定する。また、比較器46a、46bの基準値設定器S15a、S16aには、0°に遅れ分の位相角αを加算して「0°+α」を設定し、電流の遅れ位相分を補正する。
その他の構成は、図1に示す第1の実施例と同じであるので、説明を省略する。
【0052】
第2の実施例における比較器45a、45b、46a、46bの出力は、第1の実施例と同様に、オアゲート47a、47bおよびアンドゲート48a、48bを介して信号保持手段49a、49bにゲートオン許可信号S4P、S4Nとして保持される。そして、比較器45a、45b、46a、46bは、比較する基準値が基準位相より位相角α分遅れた位相となるので、相電圧より位相角α分遅れた負荷電流Iの位相を基準値と比較して、負荷電流の極性を判定することと同等となる。
このため、転換元電源側のゲートオフ信号(電源切換信号)が出力された以降に、相電圧の所定の極性になってから、負荷電流の位相遅れ分経過したところでゲートオン許可信号S4P、S4Nが発生されることになる。
【0053】
これにより、負荷5が誘導成分を含み、負荷電流に遅れが生じても、この負荷電流の位相遅れを補正することができるので、電源の切換時に切換元のスイッチ3と切換先のスイッチ4とによって電源が短絡されることがなくなり、電源の切換時の横流の発生を防止することができる。
【実施例3】
【0054】
この発明の第3の実施例を図4に示す。
この第3の実施例は、電源1および2と負荷5との間に設けた給電スイッチ3および4の電源側の電圧E1a、E2aまたは負荷側の電圧E1b、E2bを検出して、給電スイッチの切り換え時に、切換元の電源電圧または負荷電圧が、所定値以下に低下してから、切換先の切換スイッチをオンすることにより、2つの電源間に流れる横流を抑制するようにしたものである。
【0055】
このため、給電スイッチ3よび4の電源側の電圧E1a、E2aおよび負荷側の電圧E1b、E2bを検出するために、給電スイッチ3よび4の電源側および負荷側に、それぞれ電圧検出器12a、12bおよび22a、22bを設ける。
電源1側の電圧検出器12a、12bの出力は、電源2側の給電スイッチ4の切り換えを制御する制御回路40に入力され、電源2側の電圧検出器22a、22bの出力は、電源1側の給電スイッチ3の切り換えを制御する制御回路30に入力される。
【0056】
給電スイッチ3および4の切り換えを制御する制御回路30および40は、同一の構成を有するので、ここでは、給電スイッチ4の制御回路40は構成の全体を示し、給電スイッチ3の制御回路30は、構成の一部だけを示し、図示を簡略にしている。
給電スイッチ3および4の各相のスイッチは、それぞれ2つのサイリスタ3PU(V,W)、3NU(V,W)およびサイリスタ4PU(V,W)、4NU(V,W)を逆極性に並列接続して構成する。
【0057】
給電スイッチ4を制御する制御回路40に入力された電圧検出器12a、12bで検出された電源1側の交流の電源側電圧および負荷側電圧は、それぞれ全波整流器REa、REbにより直流電圧E1aおよびE1bに変換される。この直流電圧E1aおよびE1bは、それぞれ比較器CPaおよびCPbで、基準電圧設定器S18aおよびS18bに設定された基準電圧Esと比較して、直流電圧E1aおよびE1bが基準電圧Esより高いか低いかを判定する。基準電圧Esは、電源1および2の定格電圧の10%以下の低い電圧に設定されている。
【0058】
比較器CPaおよびCPbは、直流電圧E1aおよびE1bが、基準電圧Esより高いときは「0」となる判定出力を発生し、基準電圧Esより低いときは「1」となる判定出力を発生する。
比較器CPaおよびCPbの判定出力は、それぞれ時限要素TaおよびTbとオアゲート47を介してアンドゲート48の一端に入力される。アンドゲート48の他端には、電源1側の給電スイッチ3の切り換えを制御する制御回路30から入力される給電スイッチ3への切換信号S3がノットゲート52を介して入力される。
【0059】
時限要素Ta、Tbは、サイリスタがオフするために電源側または負荷側の電圧が0Vになるタイミングに達する時間遅れtsを設けている。
【0060】
アンドゲート48の出力信号は、フリップフロップ回路等で構成された信号保持手段49により、ゲートオン許可信号SI4として保持される。信号保持手段49のリセット端子Rには、制御回路40の切換信号入力端C41に加えられた給電スイッチ4への切換信号S4がノットゲート51を介して入力される。このため、信号保持手段49は、切換信号S4が「0」となって給電スイッチ4にオフを指令するとき、ノットゲート51を介して「1」となるリセット信号が加わり、保持したゲートオン許可信号SI4を「0」にリセットする。
【0061】
信号保持手段49から入力されるゲートオン許可信号SI4は、スイッチ4のアンドゲート48PU、48NU、48PV、48NVおよび48PW、48NWを介して、相スイッチ4U、4V、4Wのそれぞれの正極性サイリスタ4PU、4PV、4PWおよび負極性サイリスタ4NU、4NV、4NWのゲートに入力される。アンドゲート48PU〜48NWのそれぞれの他端には、給電スイッチ4への切換信号S4が入力される。
【0062】
このため、アンドゲート48PU〜48NWは、給電スイッチ4へオンを指令する「1」となる切換信号S4と、他端に信号保持手段4から「1」となるゲートオン許可信号SI4とが入力されたときオンとなって給電スイッチ4の各相の正サイリスタおよび負極性サイリスタのゲートにゲート信号が入力さされ、各サイリスタ(4PU〜4NW)が導通することによって給電スイッチ4がオンとなって、電源2から負荷5への給電が行われる。
給電スイッチ3の各相スイッチのサイリスタ(3PU〜3NW)も、制御回路30よってスイッチ4のサイリスタと同様に制御される。
【0063】
図5にこのように構成された第3の実施例の電源切換装置の電源切換時の動作波形図を示す。
次に、この図を参照して第3の実施例の電源切換装置の電源切換動作を説明する。
【0064】
図4の電源切換装置は、今ここでは、給電スイッチ3をオンにし、給電スイッチ4をオフにして、電源1から給電スイッチ3を通して負荷5へ給電している状態におかれている。この状態から給電スイッチ3をオフに、給電スイッチ4をオンに切り換えて、電源2から給電スイッチ4を通して負荷5へ給電する状態に切り換える場合の切換動作について説明する。このため、ここでは、電源1が切換元電源となり、電源2が切換先電源となる。
【0065】
図5のt50時点においては、制御回路30の入力端C31に外部から入力される給電スイッチ3に対する切換信号S3は「1」となり、制御回路40の入力端C41に外部から入力される給電スイッチ4に対する切換信号S4は「0」となっており、この状態は、給電切換指令が出されるt51時点まで継続する。
給電スイッチ3がオンして、電源1から給電路11を通して負荷5へ給電している状態においては、給電スイッチ3の電源側に設けた電圧出器12aによって給電スイッチ3の電源側の3相交流電圧が検出され、これが制御回路40内の全波整流回路REaにより整流されて直流の電源電圧E1aに変換される。これは、図5(a)に電源電圧E1aとして示されている。
【0066】
また、同様に、給電スイッチ3の負荷側に設けた電圧検出器12bによって電源1から給電スイッチ3を通して負荷5に加わる3相交流電圧が検出され、これが全波整流回路REbにより整流されて直流の負荷電圧E1bに変換される。これは、図5(b)に負荷電圧E1bとして示される。
【0067】
この切換元電源1の給電スイッチ3の電源側の電源電圧E1aおよび負荷側の負荷電圧E1bは給電スイッチ3がオンしている状態では同じになる。この電圧E1a、E1bは、それぞれ、比較器CPaおよびCPbに入力され、常に、基準値設定器S18aおよびS18bに設定された基準値Esと比較される。電源切換が指令されるt51時点までは、電圧E1a、E1bは基準値Esより高いので、比較器CPaおよびCPbの判定出力は、図5(e)および(f)に示すように「0」となる。
このため、信号保持手段49から出力されるゲートオンし許可信号SI4は図5(j)に示すように「0」となっているので、給電スイッチ4のアンドゲート48PU〜48NWから各相のサイリスタのゲートに入力されるゲート信号G4は、図5(l)に示すように「0」となり、給電スイッチ4はオフしている。
【0068】
t51時点で、負荷5への給電を電源1から電源2に切り換えるために、図5(c)および(d)に示すように給電スイッチ3に対する切換信号S3を「1」から「0」に、給電スイッチ4に対する切換信号S4を「0」から「1」に同時に切り換える。
これにより、直ちに、制御回路30のゲートオン許可信号SI3を保持した信号保持手段39がリセットされることにより、ゲートオン許可信号SI3が「0」となるので(図5(i)参照)、給電スイッチ3の各相のサイリスタスイッチ3U〜3Wへのゲート信号G3が「0」となり(図5(k)参照)、給電スイッチ3の各相のサイリスタスイッチ3U〜3Wが、各相電圧がゼロになる点で順次オフし、給電スイッチ3がオフする。
【0069】
給電スイッチ3の各相のサイリスタスイッチ3U〜3Wが順次オフすることにより、給電スイッチ3の負荷側電圧E1bは、図5(b)に示すように、t51時点から次第に低下する。電源側電圧E1aは、電源1の異常がなければ、図5(a)に示すように一定の電圧に維持される。
【0070】
t52時点で負荷側電圧E1bが基準値Esに達すると、比較器CPbから「1」となる判定出力が発生する(図5(f)参照)。この「1」となった判定出力は、時限要素Tbによって、負荷電流の遅れ位相角に相当する時限tsだけ遅らされてアンドゲート48を通して信号保持手段49のセット入力に入力される。アンドゲート48は、すでにノットゲート52を介して入力される「0」となった切換信号S3によって開かれているので、信号保持手段49は、t52時点で、セットされ「1」となるゲートオン許可信号SI4を保持する(図5(j)参照)。
【0071】
この「1」となるゲートオン許可信号SI4が給電スイッチ4の各相のサイリスタスイッチのゲート回路のアンドゲート48PU〜48NWに入力されることにより、これらのアンドゲートの他端には、すでに「1」となる給電スイッチ4の切換信号S4が入力されているので、給電スイッチ4の各相のサイリスタスイッチのゲートに「1」となるゲート信号G4が入力され、これらのサイリスタスイッチが導通し、給電スイッチ4がオンとなる。
【0072】
このように給電スイッチ4は、t51時点で切換信号S4が与えられた後、電源1から負荷5に印加される電圧E1が予め設定された基準電圧Esに達するt52時点から、さらに時限要素Tbに予め負荷側の電圧が0Vとなるまでの時限tsだけ遅れたt53時点で、オンとなる。この時点では、給電スイッチ3から負荷5に印加される電圧E1bが、基準電圧Esよりも低く、十分低い電圧となり、かつ、負荷5に流れる電流もほぼゼロまで減少しサイリスタがオフしているため、給電スイッチ4をオンしても横流が発生しない。
【0073】
負荷5への給電を、電源2から電源1へ切り換える場合は、制御回路40と同様に、制御回路30で切換制御が行われる。
また、給電スイッチ3および4の電源側の電圧を検出する電圧検出器12aおよび22aは、給電中の電源に事故等により停電または電圧低下が発生した際に、健全な電源へ切り換える際に使用することになる。
【符号の説明】
【0074】
1,2:交流電源
11,21:給電路
12,22:電圧検出器
3,4:給電スイッチ
5:負荷
3P,3N,4P,4N:サイリスタ
30,40:切換制御回路
41:微分演算手段
42a:90°位相検出手段
42b:270°位相検出手段
43a,43b:相電圧位相推定手段(カウンタ)
44a,44b:カウント初期値設定器
45a,45b,46a,46b:比較器
47a,47b:オアゲート
38P,38N,48a,48b,48P,48N:アンドゲート
49a,49b:信号保持手段(フリップフロップ回路)
51,52, 53,54:ノットゲート
C31,C32,C41,C42:切換信号入力端
S3:給電スイッチ3に対する切換信号
S4:給電スイッチ4に対する切換信号
G3P,G3N,G4P,G4N:ゲート信号
SI3P,SI3N,SI4P,SI4N:ゲートオン許可信号
図1
図2
図3
図4
図5