特許第6737105号(P6737105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6737105
(24)【登録日】2020年7月20日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】背糊塗布量検査装置
(51)【国際特許分類】
   B42C 11/06 20060101AFI20200728BHJP
   B42C 9/00 20060101ALI20200728BHJP
   G01B 11/06 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   B42C11/06
   B42C9/00
   G01B11/06 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-186034(P2016-186034)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-47668(P2018-47668A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 翔也
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−076661(JP,A)
【文献】 特開2010−137421(JP,A)
【文献】 特開平08−039961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42C 11/06
B42C 9/00
G01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤塗布装置と表紙貼り合わせ装置との間に設置され、
冊子の背側における接着剤の塗布高さを非接触検出センサにより計測する計測部と、
前記計測部によって得られた前記接着剤の所定の塗布高さ以上の領域が占める前記冊子の背側の面積に基づいて、当該冊子の接着剤の塗布量を判定する判定部と、
を有することを特徴とする背糊塗布量検査装置。
【請求項2】
前記非接触検出センサは、レーザー光を用いて、前記冊子の背側断裁面における前記接着剤の無塗布領域を基準とした接着剤の高さ寸法を計測する計測センサである請求項1に記載の背糊塗布量検査装置。
【請求項3】
前記非接触検出センサは、レーザー光を出射する照射部と、該照射部から出射され、前記冊子の背側で反射したレーザー光を受光して前記接着剤の高さ寸法を計測する計測センサとを有する請求項2に記載の背糊塗布量検査装置。
【請求項4】
前記計測部は、前記非接触検出センサによって得られた前記冊子の背側全領域における前記接着剤の高さ寸法の計測結果に基づいて前記接着剤の塗布量を算出する請求項3に記載の背糊塗布量検査装置。
【請求項5】
前記冊子の搬送方向に直交するように検出光を投光する投光部と、前記検出光を受光する受光部とを有する冊子位置検出部を有する請求項4に記載の背糊塗布量検査装置。
【請求項6】
前記計測部は、前記冊子の位置検出時から、一定の分解能で前記高さ寸法を計測する請求項5に記載の背糊塗布量検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背糊塗布量検査装置に関し、特に、無線綴製本式の綴じ本の製本工程に用いられ、綴じ本に用いるホットメルトタイプの背糊の塗布量を検査するための無線綴製本背糊塗布量検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本の製本工程では、まず、製本された状態においての複数ページを1枚の刷紙に面付けして印刷し、これをページ順となるよう折り畳むことで折丁とする。その後、本のページ数に応じて複数の折丁を重ねる丁合が行われ、複数に重ねられた折丁の1辺を結束し、結束を伴わないその他3辺を断裁により整える作業が行われている。
【0003】
折丁を綴じる方法としては、接着剤、ホットメルト接着剤、糸、針金等を用いる方法があるが、見開きで印刷絵柄が存在する雑誌や比較的厚い冊子に対しては、ホットメルト接着剤を背側に塗布し、塗布後、表紙を貼り付け包むことで製本する無線綴方法が用いられている。
【0004】
このホットメルト接着剤を用いた無線綴製本は、古くから自動化され多用されている。一般的な無線綴製本機は、折丁を積み重ねることで冊子一冊に相当する本文折り丁をクランプし搬送するバインダーと呼ばれる機構を有している。
【0005】
折り丁は末端揃えの状態で、背側が下に向くようにバインダー部で把持されており、背側をカッターで断裁およびホットメルト接着剤が浸透しやすいよう、凸凹加工を施す。
【0006】
その後、ローラによる転写またはノズルによる吹き付けによってホットメルト接着剤を塗布し、その後に表紙が貼り付けられて製本が行われる。
【0007】
上記の無線綴工程の中で、ホットメルト接着剤が部分的に塗布されないといった部分的な塗布量不良の場合、表紙が一応貼り付けられ、製本が完成した後で不良が検出されて返本となるという問題がある。
【0008】
ローラによりホットメルト接着剤を転写する場合には、本文に転写される前のローラに付着されたホットメルト接着剤の状態、またはそのローラが浸漬する糊釜の糊量等を観察すれば、本文背面の糊付け状態を推測することが可能である。
【0009】
しかしながら、ローラ部は非常に高温かつスペースが狭いため、センサ等の設置によるローラに付着されたホットメルト接着剤の状態観察は現実的ではない。
【0010】
また、糊釜の糊量等の観察による糊付け状態の推測の場合、不良が発生した冊子の判断が困難である。
【0011】
ノズルによるホットメルト接着剤の塗布の場合、ノズルの観察からでは、糊付けの状態を推測することが困難になっている。
【0012】
また、不良が発生する場合、ホットメルト接着剤が無塗布の状態ではなく、部分的に塗布されないといった不良が生じやすい。
【0013】
前述の不良の場合、表紙が出荷後に剥がれ落ちることにより、返本となる問題がある。
【0014】
上記の課題に対して、温度センサによりホットメルト接着剤の有無を検査する手法が提案されている(特許文献1参照)。ここで、温度センサの検出範囲は概ね小型のスポット形状であり、冊子の背表紙全領域を検査するためには、複数のセンサを利用する必要がある。
【0015】
そこで、センサカメラにより取得した画像からホットメルト接着剤の塗布範囲を認識し、検査基準枠と塗布範囲が乖離している場合、不良とする手法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−137421号公報
【特許文献2】特開2013−86360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ホットメルト接着剤が無塗布の場合の判定は可能だが、塗布量が不足している場合の不良判定は不可能であるという課題があった。
【0018】
また、特許文献2に開示された技術では、塗布領域中央で局地的に無塗布領域または塗布量が不足している領域が存在する場合、判定が困難であるという課題があった。
【0019】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、無線綴製本ラインにてホットメルト接着剤を塗布した直後の塗布量をインラインで定量的に検査でき、ジャミング等の障害要因とならない背糊塗布量検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するための背糊塗布量検査装置の一態様は、接着剤塗布装置と表紙貼り合わせ装置との間に設置され、
冊子の背側における接着剤の塗布高さを非接触検出センサにより計測する計測部と、
上記計測部によって得られた上記接着剤の所定の塗布高さ以上の領域が占める上記冊子の背側の面積に基づいて、当該冊子の接着剤の塗布量を判定する判定部と、を有する。
【0021】
また、上記背糊塗布量検査装置においては、上記非接触検出センサが、レーザー光を用いて、上記冊子の背側断裁面における上記接着剤の無塗布領域を基準とした接着剤の高さ寸法を計測する計測センサであることが好ましい。上記非接触検出センサに高さ情報をレーザー光を用いて光切断法により計測する計測センサを用いることにより、ホットメルト接着剤の塗布量の定量的な検査が可能である。
【0022】
また、上記背糊塗布量検査装置においては、接着剤の塗布が無い領域の高さを全冊子について検出してもよい。このようにすることにより、搬送系に起因する変位の影響を受けない。
【0023】
また、上記背糊塗布量検査装置においては、上記非接触検出センサが、レーザー光を出射する照射部と、該照射部から出射され、上記冊子の背側で反射したレーザー光を受光して上記接着剤の高さ寸法を計測する計測センサとを有するとしてもよい。
【0024】
また、上記背糊塗布量検査装置においては、計測部は、上記非接触検出センサによって得られた上記冊子の背側全領域における上記接着剤の高さ寸法の計測結果に基づいて上記接着剤の塗布量を算出してもよい。
【0025】
また、上記背糊塗布量検査装置においては、上記冊子の搬送方向に直交するように検出光を投光する投光部と、上記検出光を受光する受光部とを有する冊子位置検出部を有してもよい。
【0026】
また、上記背糊塗布量検査装置においては、上記計測部は、上記冊子の位置検出時から、一定の分解能で上記高さ寸法を計測してもよい。具体的には、エンコーダ等を用いることにより搬送系の速度変化の影響を受けずに、常に一定の分解能で検査を可能としてもよい。
【0027】
また、上記背糊塗布量検査装置においては、冊子に対する接着剤の塗布量が少ない場合に、不良と判定するようにしてもよい。
【0028】
また、上記背糊塗布量検査装置においては、接着剤の塗布領域内で、スポット状に無塗布領域が存在している場合に不良と判定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様によれば、無線綴製本ラインにて接着剤を塗布した直後の塗布量をインラインで定量的に検査でき、ジャミング等の障害要因とならない背糊塗布量検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】背糊塗布量検査装置の一実施形態における光学系を示した概念図である。
図2】背糊塗布量検査装置の一実施形態における取り付け位置を示した無線綴製本機の平面概念図である。
図3】背糊塗布量検査装置の一実施形態における取り付け位置を示した無線綴製本機の上面概念図である。
図4】背糊塗布量検査装置の一実施形態における取り付け位置を示した無線綴製本機の断面概念図であり、図2における搬送方向(矢印)の手前側から見た断面概念図である。
図5】背糊塗布量検査装置の一実施形態における検出可能な接着剤の塗布量の良・不良を示す冊子の背側の概念図であり、(a)は正常な塗布量、(b)は天地(上下)不足、(c)は天地欠け、(d)は幅不足、(e)は幅欠け、(f)はスポット欠けを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、背糊塗布量検査装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態は、以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づく設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本実施形態の範囲に含まれるものである。
【0032】
<背糊塗布量検査装置の構成>
図1に示すように、本実施形態の背糊塗布量検査装置1は、照射部2と計測センサ3と、判定部4とを有している。ここで、照射部2及び計測センサ3は、非接触検出センサとしての計測部5を構成している。このように構成された背糊塗布量検査装置1において、計測部5は、冊子6に塗布された接着剤7に、レーザー光Lを照射し、レーザー光Lの反射光を受光する構成を有している。なお、非接触検出センサとしての計測部5は、非接触で冊子6の背側に塗布された接着剤7の高さ寸法を検出可能であれば特に制限はなく、レーザーによるものに限られない。
【0033】
製本ラインでは、冊子6がラインの流れ方向に自動的に搬送されていく。このような冊子の背側にレーザー光Lを当てていると、計測センサ3には接着剤7の冊子6の流れ方向に沿って高さHを順次計測することができる。このような計測センサ3は、接着剤7の冊子6の流れ方向に沿う高さをプロファイルとして取得することができる。
【0034】
<製本装置の構成>
ここで、(無線綴)製本装置の一部としては、図2に示す位置関係で、背糊塗布量検査装置1と、冊子6を矢印方向に搬送する冊子搬送機構8と、接着剤塗布ローラ9を備えた接着剤塗布装置15とを有している。接着剤塗布装置15によって冊子6の背側に塗布される接着剤7は、例えばホットメルト接着剤である。
【0035】
すなわち、冊子6の接着剤7の塗布量不良を検査する背糊塗布量検査装置1は、接着剤塗布ローラ9により接着剤7の塗布が行われた直後にレーザー光Lを、冊子6に塗布された接着剤7に向けた状態で設置してある。
【0036】
<背糊塗布量検査装置の設置位置>
また、背糊塗布量検査装置1は、図3に示すように、無線綴製本ライン中の設置位置として、接着剤塗布装置13と表紙貼り合わせ装置14との間に設置される。この無線綴製本ラインにおいて冊子6は旋回動作する。
【0037】
<冊子位置検出部>
また、背糊塗布量検査装置1は、冊子6をその搬送方向で検出するために、光センサ等を備えた冊子位置検出部16を設置することが望ましい。例えば、冊子位置検出部16は、図4に示すように、冊子6の搬送方向に直交するように検出光を投光する投光部(投光素子)11と、上記検出光を受光する受光部(受光素子)12とを有することが好ましい。冊子位置検出部16による検出情報は判定部4に提供される。あるいは、製本機駆動部に近接センサ等を設置し、サイクル動作としてもよい。このような構成とすることで、冊子6のレーザー光Lによる検出領域への侵入を冊子位置検出部16で検出することができ、冊子6の通過時のみに接着剤量の計測が可能である。
また、冊子位置検出部16は、冊子6の搬送速度が変動する可能性があるため、エンコーダ等の設置により一定の間隔でデータを取り込むことが望ましい。この際、計測部5は、冊子6が冊子位置検出部16により位置検出された時から、一定の分解能で上記高さ寸法を計測することが好ましい。
【0038】
なお、冊子搬送機構8が通過する位置の下部に設置された背糊塗布量検査装置1のレーザー光Lは、冊子6の接着剤7を冊子6の厚み方向全領域に照射される。この厚み方向とは、冊子6の搬送方向及び照射方向に直交する方向である。
【0039】
冊子6の接着剤量は、判定部4が光切断法による高さ(H)のプロファイル計測を用いて算出される。例えば、照射部2からのレーザー光Lを受光するCCD等計測センサ3から得られる接着剤7の高さ寸法(高さ情報)から、冊子6の接着剤量が算出される。
【0040】
具体的には、冊子6の背側の接着剤無塗布領域10の高さを基準に、接着剤7の高さを計測することができる。ここで、計測部5は、冊子6が搬送時に傾く可能性を考慮し、接着剤無塗布領域10から傾き情報を有する基準平面を作成し、冊子6の接着剤量の計測に反映させることが望ましい。
【0041】
図5(a)〜(f)は、背糊塗布量検査装置1により検出可能な接着剤塗布量不良の概念図であり、判定部4は、冊子6の背表紙の全面において接着剤7の有無および塗布量不足を判定することができる。
【0042】
接着剤7の塗布量不足の領域が狭い場合は、後の背表紙圧着時に均一化されるため、良品判定を行うべきである。そのため、塗布量不足領域の面積又は接着剤7の体積を算出し、一定閾値により不良判定を行うことが望ましい。その他の不良判定としては、例えば、接着剤7の塗布領域内で、スポット状に無塗布領域10が存在している場合(図5(c),(f)参照)に不良と判定するようにしてもよい。
【0043】
接着剤7の塗布量不良は、背表紙圧着後には判別不可能となるため、不良判定時はシフト管理を実施し、別途排出機構から排出することが望ましい。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の背糊塗布量検査装置によれば、無線綴製本ラインにてホットメルト接着剤を塗布した直後の塗布量をインラインで定量的に検査でき、ジャミング等の障害要因とならない背糊塗布量検査装置を提供することができる。すなわち、インライン上でのホットメルト接着剤塗布量の不良を定量的な品質規格を基に自動検査することが可能な背糊塗布量検査装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 背糊塗布量検査装置
2 照射部
3 計測センサ
4 判定部
5 計測部
6 冊子
7 接着剤
8 冊子搬送機構
9 接着剤塗布ローラ
10 接着剤無塗布領域
11 投光部
12 受光部
13 接着剤塗布装置
14 表紙貼り合わせ装置
15 接着剤塗布装置
16 冊子位置検出部
L レーザー光
図1
図2
図3
図4
図5