(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吸収性物品の製造装置においては、トップシートと吸収体との接合状態を強固なものとするために、コンベア上を搬送される吸収体の上にトップシートを重ね合わせた後、ローラなどによって吸収体とトップシートの複合体を押圧することがある。しかし、上記した従来技術のように、トップシートの全面に接着剤を塗布すると、この押圧工程においてトップシートの肌対向面における吸収体が設けられていない領域に接着層(接着剤が塗布された部分)が露出するため、押圧手段としてのローラやコンベアに接着層が付着してしまうおそれがある。コンベアやローラにトップシート上の接着剤が付着すると、この複合体がコンベアやローラに付着して巻き込まれ、製造装置にエラーが発生するおそれがある。そのため、コンベアやローラなどは、接着剤が付着してしまいやすい箇所を中心に定期的に洗浄する必要があり、吸収性物品の製造効率が低下する。
また、従来の製造方法によると、トップシートとバックシートのそれぞれに全面的に接着剤が塗布されることとなるが、トップシートとバックシートとが直接重なる領域(つまり吸収体の周囲の領域)においては、二重に接着剤が付着していることとなる。トップシートとバックシートが直接対向する面においても全面において接着剤による層(接着層)を介することとなる。
バックシートにおけるトップシートと対向する面とは反対側(肌非対向面)にカバーシートを設け、カバーシートとトップシートを接合する場合も、従来は両者に接着剤を全面塗布していた。
このような接着層を有する部分は、接着層を設けない部分と比べて、層が厚くなり、また、接着剤が固化するといったこともあり、肌触りが固くなってしまう。このように肌触りが固くなってしまうと、結果として吸収性物品全体の風合いの低下を招くおそれがあった。
【0006】
また、接着層を有する部分は、接着層を設けない部分と比べて固いために吸収性物品が曲がりにくくなり、肌の形状に合わせて吸収性物品が変形されにくくなってしまうというおそれもあった。肌と吸収性物品との間に隙間が生じてしまうと、吸収性物品が体液を確実に受け止められない場合が出てきてしまい、横漏れなどの問題が生じてしまうこともある。さらに、肌に当接している部位としていない部位とが存在するために風合いが低下してしまうおそれもあった。
【0007】
本発明は、以上の問題に鑑み、製造効率を向上させることができ、さらに、風合い等を向上させた吸収性物品並びに吸収性物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記従来発明の問題を解決する手段について鋭意検討した結果、トップシートと吸収体とを接合する際に両者が直接接する領域のみに接着剤を塗布するとともに、バックシートのうちの少なくとも吸収体と接しない領域に接着剤を塗布してバックシートとトップシートとを接合することとした。このような箇所にのみ接着剤を塗布することで、製造工程において接着剤を原因としたエラーの発生を防止するとともに、肌触りが柔らかく、風合いが良い吸収性物品を提供することができるという知見を得た。そして、本発明者らは、上記知見に基づけば従来技術の課題を解決できることに想到した。
【0009】
上記課題を解決するための吸収性物品の製造方法における吸収性物品は、一般に液透過性を備えたトップシートと、一般に液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートの間に配置された吸収体とを備える。なお、トップシートやバックシートよりも吸収体の方が平面部の面積が小さい場合には、トップシートとバックシートが直接対向する領域も備えるが、本吸収性物品は、上記三層を含む領域を少なくとも一部に備えている。
上記吸収性物品の製造方法では、トップシートと吸収体とを接合する際に、トップシートの肌非対向面のうちの吸収体と接する領域内のみに接着剤を塗布するなどして接着層を設ける。また、吸収体におけるトップシートと対向する面に接着層を設けてもよく、両者に接着層(この接着層を適宜「第一の接着層」と表記する。)を設けてもよい。これらの領域において、全面に第一の接着層を設けてもよく、一部に接着層を設けるようにしてもよい。例えば、吸収体の外周部に対応する領域に接着層を設けたり、さらに吸収体の中央部にも接着層を設けたりすることもできる。後者のように複数の領域において接着層を設けた場合においても、トップシートと吸収体の間に設けられていれば、あわせて第一の接着層という。トップシートのうちの吸収体と直接接しない領域には、第一の接着層を設けない。吸収体は、第一の接着層を介してトップシートと接合される。
また、トップシートとバックシートを接合する際に、バックシートの肌対向面のうち、少なくとも吸収体と接する領域以外の領域に接着剤を塗布するなどして接着層(この接着層を適宜「第二の接着層」と表記する。)を設ける。第二の接着層は、トップシートにおけるバックシートと接する面側に設けてもよく、トップシートとバックシートの両方に設けてもよい。当然、吸収体と対向する領域を含む全域に第二の接着層を設けることもできる。トップシートは、第二の接着層を介してバックシートと接合される。
【0010】
上記のように、上記製造方法では、トップシートと吸収体とを接合するにあたり、吸収体と直接接するトップシートの領域(以下「表面接触領域」ともいう。)のみに接着層を設ける。これにより、トップシートと吸収体とを接合した後に、これらの複合体をローラなどで挟み込んだ場合、トップシートの肌対向面側の押圧部材(ローラやコンベアなど)に第一の接着層が付着してしまうことを防止できる。トップシートがコンベア等に巻き込まれたりするエラーの発生も防止でき、またコンベア等に付着してしまった接着層を除去(洗浄等)する回数を減らすことも可能となる。押圧部材によって押圧しない場合などでも、複合体外部に接着層が露出することで、製造装置に複合体が接着してしまったり、接着層にゴミなどが付着してしまったりすることも防止できる。
以上のように製造することで、使用する接着剤の量(第一の接着層と第二の接着層を形成するために必要な接着剤等の総量)を減らすこともできる。
また、上記製造方法を用いると、トップシートを平面視した場合に(吸収性物品の断面方向において)接着層がない部分と、第一の接着層のみ存在する部分と、第二の接着層のみ存在する部分と、第一の接着層及び第二の接着層が存在する部分とを設けることができる。従来は全域に渡って第一の接着層及び第二の接着層が設けられていたため、これに比べて接着層の厚みが薄い/存在しない部分を設けることができる。従って、接着剤の固化等によって固くなってしまう領域を少なくすることができる。これにより、風合いを良くすることができ、また、肌の曲面に合わせて吸収性物品を曲げやすくして横漏れ等の防止性能を向上させたりすることができる。
【0011】
上記製造方法においては、トップシートと吸収体とを接着する第一の接着層と、トップシートとバックシートとを接着する第二に接着層とが、一部又は全部で離間している(接続していない)ようにすることが好ましい。
さらに、この製造方法において、第二の接着層をバックシートの一部に(非全面に)設けるようにすることが好ましい。
なお、吸収体とバックシートの間に第二の接着層を設けないように製造することもできる。
このように製造すれば、製造された吸収性物品をトップシート側から眺めた際(トップシートを平面視した場合/吸収性物品の断面方向において)、接着層がない部分と、第一の接着層か第二の接着層のいずれかしか存在しない部分を形成することができる(ただし、第一の接着層及び第二の接着層を有する部分も形成してもよい。)。したがって、従来のようにトップシート側複合体の肌非対向面側全面と、バックシートの肌対向面全面に接着層を塗布した場合と比べて接着層が薄い/存在しない領域を有する吸収性物品を製造することが可能となる。このようにして製造された吸収性物品の優秀性は上記した通りである。
特に、トップシートの長手方向において吸収体と接していない領域(紙おむつにおいて一般に前身頃や後身頃と呼ばれている領域)において上記のようにして接着層を薄くしたりなくしたりするように製造することが好ましい。このような領域は、別途のテープ部材などによって被装着者に吸収性物品を固定(装着)する機能が必要となるが、従来の全域に接着剤が塗布された吸収性物品と比べて柔らかく曲がりやすいため、被装着者の腰などの曲面に沿いやすくなり、漏れ防止性能を向上させたり、当該部位の被装着者への肌触りを向上させたりすることが可能となる(ごつごつした感じをなくしたり低減したりすることが可能となる)。
【0012】
上記製造方法は、さらに、トップシートと吸収体を接合する工程の後であって、トップシートとバックシートを接合する工程の前に、トップシートと吸収体の複合体を挟み込むように押圧してエンボスを付与する工程を備えていてもよい。
上記したとおり、本製造方法では、トップシートと吸収体とが直接接する領域のみに接着層を設けているため、これらを接合した後に提供される複合体は接着層が外表面に存在しない。従って、この複合体をローラやコンベアなどの押圧手段によって挟み込んでも、押圧手段に第一の接着層が付着・転着されない。言い換えれば、上記複合体を作製する工程後にエンボス加工を行うことが極めて容易になる。
このように複合体形成後にエンボス加工を行えば、複合体形成前にトップシート及び/又は吸収体にエンボス加工を行った後に両者を接合する場合と比べて、両者が密着させることができ、また、エンボスを明瞭に残すことも可能となる。すなわち、トップシート及び/又は吸収体にエンボス加工を行った後に両者を接合すると、加工時にエンボスがつぶれてしまったり、両者が組み合わされることによってエンボスがなだらかになってしまったりすることがあったが、この問題を克服することができる。
トップシート、吸収体及びバックシートを積層した後に、これら3層の積層体に対してエンボスを付与することも考えうる。しかし、その場合には、エンボスを付与する必要のないバックシートにも圧力が加わるため、バックシートに不必要なシワやヨレが生じ見た目が悪くなるばかりか、バックシートに破損や裂損が生じるおそれもある。この点、上記製造方法によれば、バックシートを接合する前のトップシートと吸収体の複合体に対してエンボスを付与するようにすることで、バックシートに上記のような問題が発生することを回避できる。
【0013】
上記課題を解決するための第二の吸収性物品の製造方法は、バックシートにおける肌非対向面側(トップシートと対向する側とは反対側の面)にカバーシートを設け、トップシートと吸収体とを接合した複合体(適宜「第一シート」と表記する。)と、カバーシートとバックシートとを接合した複合体(適宜「第二シート」と表記する。)とを作製した後、両シートを接合する。第一のシートにおいては、上記した製造方法同様、トップシートと吸収体とが対向する領域の一部又は全部のみに接着層(上記の「第一の接着層」)を設けている。第一シートと第二シートを接合する工程においては、トップシートを平面視した場合(トップシートの最大面を上側から眺めた際)、好適には吸収体が存在しない領域の外周部などの一部に接着層を設け、両者を接合する。このように構成すれば、カバーシートを設けた吸収性物品においても、上記同等の作用・効果を奏することができる。
なお、第一シートと第二シートとの間に設ける接着層は、吸収体が存する領域の一部又は全部、さらに吸収体が存しない領域の一部又は全部に存在していてもよい。第一シートと第二シートの接着を十分にした上で、接着層が設けられていない領域や薄い領域(第一シート及び第二シートそれぞれに接着剤を塗布して接着層を設けた場合と比べて接着層が薄い領域)を設ければ、上記したような作用・効果をより奏することが可能となる。
【0014】
本発明者らは、バックシート上に吸収体及びトップシートが順次積層された層構成(左記表現は、あくまで層構成の順番を意味しており、製造順を意味しないのは当然である。吸収性物品全域において一部に当該層構成を備えているものも含むことは上記したとおりである。)を有する吸収性物品であって、トップシートは、第一の接着層を介して吸収体と接合され、第二に接着層を介してバックシートと接合され、第一の接着層と第二の接着層とは、トップシートを平面視した際に一部又は全部が離間している(接続していない/少なくとも一部が離間している)構成が好適であることを見出した。
このような構成を備えた吸収性物品が極めて優れた作用・効果を奏することは上記した通りである。
また、本発明者らは、カバーシート上にバックシート、吸収体及びトップシートが順次積層された層構成を有する吸収性物品においても上記のように構成するとよいことを見いだした。本構成においては、トップシートと吸収体とを接着する層を第一の接着層、トップシートとバックシートとを接着する層を第二の接着層、トップシートとカバーシートとを接着する層を第三の接着層とそれぞれ表記する。そして、トップシートを平面視した際に第一の接着層及び第三の接着層がそれぞれ離間しているか一部で接続するようにしたり、第二の接着層及び第三の接着層がそれぞれ離間しているか一部で接続するようにしたり、あるいは両構成を具備するようにする。
すなわち、上記したように従来の構成よりも吸収性物品の断面方向において接着層の総厚を薄くしたりなくしたりした領域を設けたことで、当該領域を従来よりも柔らかくすることが可能となる。これにより、風合いをよくしたり、漏れ防止性能を向上させたりすることができる。
なお、漏れ防止性能に着目すれば、吸収体が存する領域よりも吸収性物品の長手方向端部側において少なくとも第一の接着層をなくし、さらには第二の接着層も有しない領域を設ければ、装着者の形状に合わせて吸収性物品が曲がりやすくなり(当該形状に添いやすくなり)好適である。
カバーシートとバックシートとの接合は、両者間を上記の接着層とは異なる接着層(第四の接着層)を介して行われる。吸収性物品の断面方向(厚み方向)における第一の接着層から第四の接着層の層の数や全接着層を合わせた厚みがゼロ又は従来構成よりも少なければ/小さければ、風合いがよくなり、漏れ防止性能の向上を図ることができる。特に漏れ防止性能向上の観点からは、各部材の接着性能に考慮しつつ、着用者の曲面が多い部分(腰や股下等)に対応する部分において上記層数や厚みをゼロにしたり従来よりも少なくしたりすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造効率を向上させることができ、さらに、吸収性物品の風合い等を向上させた吸収性物品並びに吸収性物品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0018】
本願明細書において、「長手方向」とは、吸収性物品(使い捨ておむつ)の前身頃と後身頃とを結ぶ方向を意味する。また、「幅方向」とは、長手方向に平面的に直交する方向を意味する。また、「厚み方向」とは、吸収性物品の平面に対して立体的に直交する方向であり、具体的にはトップシート、吸収体、及びバックシートが積層される方向を意味する。本願の図において、「長手方向」はY軸で示され、「幅方向」はX軸で示され、「厚み方向」はZ軸で示されている。
また、本願明細書において、「肌対向面」とは、吸収性物品の着用時において、着用者の肌に向かい合う面を意味する。また、「肌非対向面」とは、吸収性物品の着用時において、着用者の肌に向かい合わない面、すなわち肌対向面の反対側の面を意味する。
また、本願明細書において、「A〜B」とは、「A以上B以下」であることを意味する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品の製造方法の一部の工程を、吸収性物品の製造装置200の一例とともに示している。
図1では、吸収体30を成形し、吸収体30の肌対向面にトップシート10を接合し、吸収体30とトップシート10の複合体に対してエンボス加工を施し、その後その複合体の肌非対向面にバックシート20を接合する工程を示している。なお、
図1において矢印で示したMD(Machine Direction)は、吸収性物品の製造装置の流れ方向である。
【0020】
図1に示すように、まず、成形部210において個別の吸収体30を成形する。吸収体30は、尿などの体液を吸収し、吸収した体液を保持するための部材である。吸収体30は、吸収性材料によって構成される。例えば、吸収性材料は、その大部分が針葉樹や広葉樹などの繊維材料を解砕してなる親水性のフラッフパルプによって構成され、そのフラッフパルプ中に粒状の吸収性ポリマー(SAP:Superabsorbent polymer)が混合されたものを用いることができる。フラッフパルプは、極細の繊維材料が絡まり合って形成された繊維の集合体であり、吸収性ポリマー、この繊維材料に混合されることによって、その中に埋没保持されている。フラッフパルプとしては、例えば、針葉樹若しくは広葉樹などのパルプ繊維、レーヨン繊維、又はコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、その他にポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンテレフタレートのような合成繊維に親水化処理を施した短繊維などを用いることができる。これらの繊維は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
成形部210は、チャンバ211と成形ドラム212を備える。チャンバ211は、吸収体30を構成する吸収性材料を、成形ドラム212に供給する。成形ドラム212は、その周面に、得ようとする吸収体30の形状を象った複数の凹部213が設けられており、その凹部213には外部の吸引装置及び吸気装置に通じる空気孔214が形成されている。チャンバ211から供給された吸収性材料は、成形ドラム212の周面に設けられた凹部213に供給され、吸収体30の形状に成型される。凹部213に充填された吸収性材料は、空気孔214を通じて外部の吸引装置によって吸引されることで、成形ドラム212の周面に一定期間保持される。成形ドラム212の下方には、吸収体30を搬送するための第1搬送部220が設けられている。成形ドラム212は、第1搬送部220の搬送方向及び搬送速度に合わせて回転している。成形ドラム212の周面に保持された吸収性材料が第1搬送部220の搬送面と対面する位置まで来たときに、外部の吸気装置から供給された加圧空気が成形ドラム212の空気孔214を通じて噴出されて、吸収性材料によって構成された吸収体30が第1搬送部220の搬送面に載置される。
【0022】
第1搬送部220は、成形部210によって成形された吸収体30を装置下流側へと搬送する。第1搬送部220は、サクションコンベア221によって構成されている。サクションコンベア221は、駆動ローラ222と、従動ローラ223と、これらのローラに架け渡された無端縁の有孔ベルト224とを備えており、有孔ベルト224の搬送面上に、成形部210から供給された吸収体30が一定のピッチで載置される。有孔ベルト224の搬送面の下部には、空気を吸引するサクションボックス225が設けられており、有孔ベルト224に設けられた複数の孔を通じて、搬送面上の吸収体30がサクションボックス225により吸引される。これにより、吸収体30の搬送面からの脱落が防止されている。
【0023】
成形部210と第1搬送部220の合流ポイントの下流側には、トップシート10の連続体の貼合部230が設けられている。トップシート10は、着用者の股下の肌に直接接し、尿などの体液を吸収体30へ透過させるためのシート状の部材である。このため、トップシート10は、柔軟性が高い液透過性材料で構成される。液透過性とは、例えば、標準の大気圧下において常温の水を5mlその上に載せた場合に、1分未満の時間で水を透過する性質を意味する。トップシート10を構成する液透過性材料は、例えば、織布や、不織布、多孔性フィルムなどを採用することができ、また、例えばポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル、ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものなども用いることができる。不織布としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布などを挙げることができる。
【0024】
トップシート10の貼合部230は、グルーガン231と貼合ローラ232とを備える。グルーガン231は、ホットメルトなどの接着剤を塗布するため装置であり、霧状の接着剤を噴出するタイプであってもよいし、液状の接着剤を線状又は点状に塗布するタイプであってもよい。本実施形態では、グルーガン231は、トップシート10の連続体の肌非対向面(吸収体30側の面)に接着剤を塗布して接着層(第一の接着層)を形成するように設置されている。ただし、図示は省略するが、グルーガン231は、吸収体30の肌対向面(トップシート10側の面)に接着剤を塗布するように設置することも可能である。
【0025】
図2は、トップシート10に接着剤を塗布する領域を模式的に示している。
図2に示すように、トップシート10は、吸収体30と直接接する領域である表面接触領域11と、それ以外の外周領域12とに区分される。この場合に、グルーガン231では、トップシート10の肌非対向面のうち、表面接触領域11内のみに接着剤を塗布する。
図2に示した符号13は、トップシート10の接着剤塗布領域を示している。このように、本発明において、トップシート10の接着剤塗布領域13は、表面接触領域11内のみに存在し、外周領域12には存在しない。表面接触領域11内においては、全面的に接着剤を塗布することとしてもよいし、部分的に接着剤を塗布することとしてもよい。
図2に示した例では、接着剤塗布領域13は、表面接触領域11よりも多少小さく形成されている。なお、接着剤塗布領域13には、霧状の接着剤を塗布することもできるし、また直線状、斜線上、スパイラル線状などの各種線形状に接着剤を塗布することもできる。
図2に示した例では、模式的にトップシート10を個別に切り分けた状態を示しているが、
図1に示すような製造過程においては、トップシート10は搬送方向に連接した連続体をなしている。このため、
図1に示したグルーガン231は、トップシート10の連続体に接着剤を塗布した領域と塗布しない領域とが交互に形成されるように、トップシート10の連続体に対して間欠的に接着剤を塗布することとなる。
【0026】
トップシート10用の貼合ローラ232は、接着剤が塗布されたトップシート10を下流側に向かって搬送するとともに、このトップシート10と吸収体30に重ね合わせる。貼合ローラ232は、トップシート10と吸収体30の複合体をトップシート10側からサクションコンベア221へ押圧する。つまり、この複合体は、貼合ローラ232の周面とサクションコンベア221の搬送面との間に挟み込まれて厚み方向に圧縮される。これにより、トップシート10と吸収体30との接合状態が強化される。前述したとおり、本実施形態においては、トップシート10の肌非対向面のうち、吸収体30と直接接する表面接触領域11内にのみ接着剤が塗布されている。このため、トップシート10と吸収体30の複合体を挟み込むように押圧しても、トップシート10に付着した接着剤がサクションコンベア221の搬送面に転移することはない。
【0027】
トップシート10の貼合部230の下流側には、エンボス部240が設けられている。エンボス部240は、トップシート10と吸収体30の複合体に対して所望のエンボスパターンを付与するためのものである。エンボス部240は、エンボスローラ241によって構成されている。エンボスローラ241は、その周面に所望のエンボパターンに適合した突起部242が形成されている。
図2に示すように、複合体は、サクションコンベア221によって下流側に搬送されると、トップシート10側の表面がエンボスローラ241の突起部242に当接して圧縮される。つまり、複合体は、サクションコンベア221の搬送面とエンボスローラ241の突起部242との間に挟み込まれる状態となる。複合体がエンボスローラ241を通過すると、トップシート10側の表面に、突起部242のパターンに合わせたエンボスパターンが形成される。このようにして、トップシート10と吸収体30の両方に対して同時にエンボスが付与される。なお、ここで付与されるエンボスパターンの一例については、後述する。
【0028】
エンボス部240の下流側には、バックシート20の連続体の貼合部250が設けられている。バックシート20は、トップシート10を透過して吸収体30に吸収された体液が、おむつの外部へ漏出することを防止するためのシート状の部材である。このため、バックシート20は、液不透過性材料によって構成されることが好ましい。液不透過性とは、例えば、標準の大気圧下において常温の水を5mlその上に載せた場合に、1分以上経過してもその水を透過しない性質を意味する。バックシート20を構成する液不透過材料の例は、ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に、バックシート20としては、液不透過性を維持しつつ通気性を確保するために、0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0029】
バックシート20の貼合部250は、グルーガン251と貼合ローラ252とを備える。グルーガン251は、前述したトップシート10の貼合用のグルーガン231と同様の構成である。グルーガン251では、バックシート20の肌対向面(吸収体30側の面)に接着剤を塗布する。
【0030】
図2に示すように、バックシート20は、吸収体30と直接接する領域である裏面接触領域21と、それ以外の外周領域22とに区分される。この場合に、グルーガン251は、バックシート20の肌対向面のうち、少なくとも裏面接触領域21以外の外周領域22に接着剤を塗布する。
図2に示した符号23a〜23cは、バックシート20の接着剤塗布領域(第二の接着層)を示している。接着剤塗布領域23は、少なくとも外周領域22に存在するバックシート20の外周領域22には、全面的に接着剤を塗布することとしてもよいし、
図2に示すように部分的に接着剤を塗布することとしてもよい。また、本工程において第二の接着層の一部を形成し、他をさらに前工程において設けるようにしてもよい。例えば、23b及び23cは本工程よりも前工程において形成し、グルーガン251によって23aを形成するようにすることもできる。なお、
図2における第二の接着層23bや23cのように、裏面接触領域21に第二の接着層を設けてもよい。ただし、第二の接着層23は、
図2の上側から見た際、すなわちトップシート10を平面視した場合に、第一の接着層13と一部又は全部で接続しないようにされている。第2の接着層23は、例えば、霧状の接着剤を塗布して形成したり、直線状、斜線上、スパイラル線状などの各種線形状に接着剤を塗布して形成したりすることができる。
図2に示した例では、模式的にバックシート20を個別に切り分けた状態を示しているが、
図1に示すような製造過程においては、バックシート20は搬送方向に連接した連続体をなしている。このため、
図1に示したグルーガン251は、バックシート20の連続体に接着剤を塗布した領域と塗布しない領域とが交互に形成されるように、バックシート20の連続体に対して間欠的に接着剤を塗布することとなる。
【0031】
前述したように、トップシート10の接着剤塗布領域(第一の接着層)13は、表面接触領域11内のみに存在し、外周領域12には存在しない。このため、吸収性物品を平面視した際に、トップシート10の接着剤塗布領域(第一の接着層)13は、バックシート20の接着剤塗布領域(第二の接着層)23のうち、少なくとも、端部接着領域23aとは完全に離間している(接続していない)。また、吸収性物品を平面視した際に、トップシート10の接着剤塗布領域(第一の接着層)13は、バックシート20の一対の第一左右接着領域(第二の接着層)23b、23cと部分的に重畳してしてもよい(接続されていてもよい)。すなわち、吸収性物品の断面方向において、接着層が設けられていない領域と、第一の接着層13のみが設けられている領域と、第二の接着層23のみが設けられている領域とが存在することとなる。そのため、第一の接着層13と第二の接着層23が全域にわたって存在する従来の構成と異なり、接着層がない若しくは薄い(少ない)領域を設けることができる。
【0032】
バックシート20用の貼合ローラ252は、接着剤が塗布されたバックシート20を下流側に向かって搬送するとともに、このバックシート20を、トップシート10と吸収体30の複合体に重ね合わせる。これにより、トップシート10、吸収体30、及びバックシート20がこの順に積層された積層体が形成される。
【0033】
バックシート20の貼合部250の下流側には、第2搬送部260が設けられている。第2搬送部260は、搬送コンベア261と圧縮ローラ262とを備えている。搬送コンベア261は、上記したトップシート10、吸収体30、及びバックシート20の積層体を装置下流側に向かって搬送する。圧縮ローラ262は、この積層体をトップシート10の表面側から押圧することによって、積層体を厚み方向に圧縮する。つまり、積層体は、搬送コンベア261の搬送面と圧縮ローラ262の周面の間に挟み込まれる。
図2を用いて説明したとおり、バックシート20は、第二の接着層23が肌対向面側に露出しているため、この接着層を介してトップシート10及び吸収体30の複合体(第一のシート)と接合される。
【0034】
上記工程を経て、トップシート10の連続体と吸収体30とが接着剤で接合され、トップシート10の連続体とバックシート20の連続体とが接着剤で接合された積層体が得られる。なお、吸収体30とバックシート20の連続体は接着剤では接合されない。このようにして得られた積層体を、各吸収体30の間で切断することで、個別の吸収性物品が得られる。切断部の図示は省略しているが、周面にカッター刃が設けられた公知のカッターローラなどを利用すればよい。
なお、上記実施形態においては、トップシート10やバックシート20を連続体のまま製造した例を示したが、途中の工程において切断して個別に吸収性物品を製造することも当然に可能である。
【0035】
図1には図示しないが、
図2に示すようにバックシート20の肌非対向面側にさらにカバーシート24を設けてもよい。カバーシート24とバックシート20の間には、両者が当接する領域の全部又は一部に接着層(第四の接着層)を設け、両者を接合すればよい。接着層の形成方法や接合方法は、上記したような公知の方法を採用すればよい。カバーシート24の幅方向端部には接着剤塗布領域(第三の接着層)24a、24bが設けられている。
カバーシート24とバックシート20の複合体(第二のシート)は、肌当接面側(トップシート10側)第二の接着層及び第三の接着層が露出されている。したがって、これらの接着層を介して、トップシート10と吸収体30の複合体(第一のシート)と接合させることができる。接合方法は
図1を用いて説明した上記方法と同様の方法を採用できる。
このように、第一の接着層と第二の接着層、及び/又は、第一の接着層と第三の接着層が、トップシートを平面視した際に一部又は全部が離間しているため、従来の吸収性物品よりも接着層が薄かったり(少なかったり)なかったりする領域を設けることができる。当然第二の接着層と第三の接着層とも一部又は全部で接続しないようにすることが好ましい。
【0036】
図3は、上記の製造方法によって製造された吸収性物品100の平面図を示しており、
図4は、
図3のIV−IV線における長手方向断面図を示しており、
図5は、
図3のV−V線における幅方向断面図をしめしている。
図3から
図5に示されるように、吸収性物品100は、トップシート10とバックシート20の間に吸収体30が設けられ、トップシート10と吸収体30に亘って厚み方向に圧搾溝40が形成された構造となる。
【0037】
圧搾溝40は、
図1に示したエンボス部240によって、トップシート10及び吸収体30を同時に押圧することによって形成されたものでる。その結果、トップシート10及び吸収体30に亘って、厚み方向に圧搾溝40が形成されている。圧搾溝40が形成された部位においては、吸収体30を構成する吸収性材料の密度が高まることとなる。
【0038】
図3に示されるように、圧搾溝40は、吸収性物品の長手方向と平行に延びる仮想線Pに対して一方向に傾斜した第1圧搾溝41と、この仮想線Pに対して他方側に傾斜した第2圧搾溝42とを含む。第1圧搾溝41と第2圧搾溝42はそれぞれ複数形成されており、複数の第1圧搾溝41はすべて平行(仮想線Pに対する傾斜角が等角)であり、同様に複数の第2圧搾溝42もすべて平行(仮想線Pに対する傾斜角が等角)である。また、第1圧搾溝41と第2圧搾溝42とは、互いに交差している。具体的には、第1圧搾溝41のそれぞれは、複数の第2圧搾溝42との交差していることが好ましく、同様に、第2圧搾溝42のそれぞれは、複数の第1圧搾溝41と交差していることが好ましい。
【0039】
さらに具体的に説明すると、
図3に示したにおいて、トップシート10と吸収体30に形成された圧搾溝40は、斜方形格子状のパターンで形成されている。ここにいう「斜方形格子状のパターン」とは、長手方向及び幅方向に対して傾斜した方向に延びる複数の圧搾溝が交差して、斜方形(菱形)の非圧搾領域が区画されるパターンをいう。このため、各圧搾溝が長手方向と平行に延びる仮想線Pに対して傾斜する角度θは、90度未満であり、特に20〜80度、30〜60度、又は40〜50度の範囲であることが好ましい。図示した例では、各圧搾溝の傾斜角度θは45度となっている。また、斜方形格子状のパターンは、各圧搾溝41、42によって四方を囲われた非圧搾領域43がすべて正斜方形(正菱形)となる規則的なパターンとなっている。このように、斜方形格子状のパターンにおいては、複数の第1圧搾溝41、複数の第2圧搾溝42、これらの圧搾溝41、42によって周囲を囲われた非圧搾領域43、及び第1圧搾溝41と第2圧搾溝42とが交差した交点部44が形成されているものと観念することができる。
【0040】
ここで、吸収体30に関する具体的な数値について説明する。吸収体30の厚み、すなわち非圧搾領域43の厚みは、10mm〜40mmであることが好ましく、特に15mm〜30mmであることが好ましい。また、圧搾溝40の深さは、吸収体30の厚みに対して、30〜95%であることが好ましく、50〜95%又は60〜95%であることが特に好ましい。例えば、圧搾溝40が形成された部位における吸収体30の厚みは、少なくとも1mm以上であればよく、特に2mm以上又は5mm以上であることが好ましい。
【0041】
また、圧搾溝40の幅は、1mm〜5mmであることが好ましく、特に2mm〜4mmであることが好ましい。また、
図3に示した非圧搾領域43の長手方向における対角線の長さD1は、10mm〜50mmであることが好ましく、特に20mm〜40mm、あるいは30mmであることが好ましい。また、非圧搾領域43の幅方向における対角線の長さD2の好ましい数値範囲は、前述した長さD1と同様である。長さD1と長さD2は、ほぼ等しいことが好ましいが、異なっていてもよい。なお、非圧搾領域43の形状は、正斜方形(正菱形)に限られず、その他の斜方形とすることも可能である。
【0042】
また、吸収体30に形成された圧搾溝40は、股下部近傍に排出された体液を前身頃及び後身頃まで広く拡散することができるように、長手方向に亘って広い範囲に形成されていることが好ましい。具体的には、圧搾溝40が形成された領域の長手方向の長さは、各吸収体30の長手方向の長さに対して60%以上であることが好ましく、60%〜100%、70%〜100%、又は80%〜100%であることが特に好ましい。また、吸収体30に形成された圧搾溝40は、幅方向の中心近傍に排出された体液を幅方向外側に広く拡散することができるように、幅方向に亘って広い範囲に形成されていることが好ましい。具体的には、圧搾溝40が形成された領域の幅方向の最大幅は、各吸収体30の幅方向の最少幅に対して60%以上であることが好ましく、60%〜100%、70%〜100%、又は80%〜100%であることが特に好ましい。
【0043】
図4に示した長手方向断面図では、接着剤が塗布された部位(接着層)を黒色の太い線で示している。
図4に示すように、トップシート10には、吸収体30と直接接する領域内のみに接着剤塗布領域(第一の接着層)13が形成されている。他方で、バックシート20には、少なくともトップシート10と直接接する範囲(外周領域22)に接着剤塗布領域23(第二の接着層:端部接着領域23a)が形成されている。図示するように、トップシート10の接着剤塗布領域13とバックシート20の端部接着領域23aとは、長手方向に離間しており、両者の間には間隙C
1が設けられている。間隙C
1は、少なくとも1mm以上あればよい。
【0044】
図5に示した幅方向断面図においても、接着剤が塗布された部位を黒色の太い線で示している。
図5に示すように、トップシート10には、吸収体30と直接接する領域内のみに接着剤塗布領域(第一の接着層)13が形成されている。他方で、バックシート20には、平面方向において第一の接着層13と重ならないように接着剤塗布領域23(第二の接着層:一対の第二左右接着領域23b、c)が形成されている。すなわち、吸収性物品の断面方向(
図5のZ方向)において、第一の接着層及び/又は第二の接着層が存在しない領域が設けられている。
【0045】
図5に示すように、トップシート10に設けられた接着剤塗布領域(第一の接着層)13とカバーシートに設けられた接着剤塗布領域(第三の接着層)24a、24bとは幅方向に離間しており、両者の間には間隙C
2が設けられている。間隙C
2は、少なくとも1mm以上あればよい。
また、バックシート20の接着剤塗布領域(第二の接着層)23b、23cと、カバーシートに設けられた接着剤塗布領域(第三の接着層)24a、24bとは、互いに離間している。
【0046】
なお、図示した実施形態では、吸収体30が吸収性材料のみによって構成されている形態を例に挙げて説明した。ただし、吸収体30は、吸収性材料をコアラップシートによって被覆した構造を持つものであってもよい。コアラップシートは、吸収性材料からなる吸収性コアを包み込むことで、吸収性材料が漏れ出すことを防止する。コアラップシートは、柔らかと強度とを有する親水性の不織布で構成されていることが好ましい。コアラップシートを構成する不織布としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布等を親水化処理したものが挙げられる。また、コアラップシートとしては、不織布以外にも、公知のティシュペーパーなどを用いることができる。
【0047】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。