【実施例1】
【0015】
[実施例1の回路の説明]
図1は、実施例1に係る包絡線検波回路の回路図である。
図1に示すように、包絡線検波回路100においてFET10のゲートは整合回路12を介し入力端子Inに接続されている。整合回路12は、キャパシタC2および分布定数線路L1からL3を含む。入力端子InとFET10のゲートとの間にキャパシタC2、分布定数線路L1およびL2が直列に接続されている。分布定数線路L1とL2の間のノードN2にはオープンスタブとして分布定数線路L3が接続されている。キャパシタC2は、主にDC(Direct Current)カットキャパシタとして機能する。整合回路12は、高周波信号の周波数において入力端子Inとゲートとのインピーダンスを整合させる回路である。整合回路12の構成は適宜選択できる。
【0016】
ノードN2には抵抗R2を介し電源16が接続されている。電源16はFET10のゲートにゲートバイアス電圧Vgを印加する。抵抗R2は、高周波信号が電源16に漏れることを抑制する。
【0017】
FET10のソースはグランド電位等の基準電位が供給された端子に接続されている。FET10のドレインはキャパシタC3を介し出力端子Outに接続されている。キャパシタC3は主にDCカットキャパシタとして機能する。ドレインとキャパシタC3との間のノードN1には電源14を介し抵抗R1が接続されている。電源14はドレインにドレインバイアス電圧Vdを印加する。ノードN1はキャパシタC1を介し接地されている。抵抗R1とキャパシタC1で時定数回路50を形成している。入力端子Inに例えば準ミリ波またはミリ波等の高周波信号である入力信号30が入力し、出力端子Outから入力信号30の包絡線信号が出力信号32として出力する。
【0018】
抵抗R1およびR2の抵抗値は、例えばそれぞれ400Ωおよび1kΩである。キャパシタC1からC3のキャパシタンスは、例えばそれぞれ0.485pF、0.453pFおよび2.2μFである。分布定数線路L1からL3の電気長は例えばそれぞれ0.00595×波長、0.0923×波長および0.0893×波長である。ドレインバイアス電圧Vdは例えば2V、ゲートバイアス電圧Vgは例えば0Vである。入力信号30の周波数は例えば80GHzである。
【0019】
[実施例1の動作の説明]
まず、実施例1に係る包絡線検波回路の動作を説明するために、比較例1の動作について説明する。
図2は、比較例1に係る回路を示す図である。
図2に示すように、回路110において、FET10のドレインが直接出力端子Outに接続されており、電源14およびキャパシタC1は接続されていない。ドレインにはチョークコイル等を介しドレインバイアス電圧Vdが印加されている。出力端子Outから出力信号34が出力される。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0020】
図3(a)および
図3(b)は、比較例1の回路における時間に対する入力信号および出力信号を示す模式図である。
図3(a)および
図3(b)において、横軸は任意単位(a.u.)の時間、縦軸は電圧(V)を示す。
図3(a)に示すように、入力端子Inに入力する入力信号30はほぼ正弦波である。電源16からゲートバイアス電圧Vgとして−0.6Vが印加されている。これは、FET10がB級動作するバイアス電圧である。
図3(b)に示すように、FET10は、ゲート電圧が−0.6V以下ではオフする。
【0021】
図3(a)および
図3(b)を参照し、時間t1では入力信号30は0Vである。このときFET10はオフのため出力信号34はほぼVdすなわち2Vとなる。時間t1とt2との間において入力信号30が0Vより徐々に大きくなると、FET10を流れる電流I2が徐々に増加し、出力端子Outの電位が低下する。これにより出力信号34は徐々に小さくなる。
【0022】
時間t2において、入力信号30がピークとなると、出力信号34はボトムとなる。時間t2からt3において入力信号30が徐々に小さくなると出力信号34が徐々に大きくなる。時間t3からt4においては入力信号30が0Vより小さくなる。このため、FET10はオフし、出力信号34はほぼドレインバイアス電圧Vdとなる。
【0023】
以上のように、回路110では、入力信号30の電圧が0V以下では出力信号34はほぼドレインバイアス電圧Vdとなり、入力信号30の電圧が0V以上では、出力信号34は入力信号30が反転増幅された信号となる。
【0024】
次に
図1の包絡線検波回路100の動作を説明する。
図4は、実施例1における時間に対する出力信号を示す模式図である。
図3(b)の回路110の出力信号34を破線で示している。
【0025】
図4に示すように、時間t1において、入力信号30が0Vのとき、FET10はオフしており、FET10のドレインからソースに電流I2は流れない。キャパシタC1に電源14のドレインバイアス電圧Vd相当の電荷が蓄積されていれば、ノードN1と電源14は同電位となり、抵抗R1にも電流I1は流れない。
【0026】
時間t1からt2において、入力信号30が0Vより徐々に大きくなると、FET10を流れる電流I2が徐々に増加する。キャパシタC1の電荷はFET10を介し電流I2としてグランドに流れる。よって、出力信号32(すなわちノードN1の電位)は破線(回路110の出力信号34)と同様に低下する。出力信号32が下がると、電源14から抵抗R1を介し電流I1が流れる。出力信号32は電流I2とI1により定まる。
【0027】
時間t2からt3において、入力信号30が小さくなると、電流I2が徐々に小さくなる。電源14から抵抗R1を流れる電流I1により出力信号32を大きくしようとするが、キャパシタC1に電荷が蓄積されてしまうため、出力信号32は大きくならない。よって、出力信号32は、時間t2からほとんどかわらない。
【0028】
時間t3からt4において、入力信号30が0V以下となりFET10がオフすると、電流I2は流れない。電流I1により出力信号32を大きくしようとするが、キャパシタC1に蓄電されてしまい、出力信号32はほぼ時間t2の出力信号32と変わらない。以上により、出力信号32は入力信号30の包絡線となる。
【0029】
実施例1によれば、FET10(第1トランジスタ)のゲート(制御端子)に高周波信号が入力する入力端子Inが接続する。FET10のソース(第1端子)は接地され、ドレインは出力端子Outに接続されている。抵抗R1(第1抵抗)の一端はノードN1(第1ノード)に接続され、他端が電源14(第1電源)に接続されている。キャパシタC1(第1キャパシタ)の一端がノードN1に接続され、他端が接地されている。時定数回路50は、一端がドレインに他端が出力端子Outに接続され、ドレインから出力される出力信号の電圧を保持すればよい。
【0030】
これにより、包絡線の検出が可能となる。FET10は入力信号30を反転増幅するため、出力の低下を抑制することができる。例えば、準ミリ波またはミリ波では、インピーダンスの不整合および/または伝送線路の損失により信号の損失が大きくなりやすい。このため、包絡線検波回路の出力が低下すると、包絡線信号がさらに小さくなってしまう。そこで、入力信号30が準ミリ波またはミリ波の場合、実施例1の包絡線検波回路を用いることが好ましい。
【0031】
上記動作においては、包絡線を検出するために、電流I1によりキャパシタC1を充電する時定数が十分大きいことが好ましい。抵抗R1の抵抗値R1およびキャパシタC1のキャパシタンスC1のとき時定数はR1×C1である。抵抗R1とキャパシタC1とで構成される時定数回路50の時定数は、入力信号30の周期以上が好ましく、周期の2倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましい。時定数が大きすぎると包絡線の速い変化を検出できない。よって、時定数は入力信号30の周期の1/100以下が好ましく、1/20以下がより好ましい。
【0032】
次に、FET10がB級動作することが好ましい理由を説明する。
図5(a)および
図5(b)は、FETがA級動作およびAB級動作する場合の時間に対する出力電圧を示す図である。
図5(a)に示すように、FETがA級動作のとき、入力信号30のいずれの時間においてもFET10はオフしない。このため、
図2の回路110の出力信号34cは正弦波となる。A級動作では、入力信号30が入力しない場合でもFET10には電流I2が流れる。このため、出力電圧はVd/2程度となる。入力信号30が入力すると、キャパシタC1に蓄積された電荷はFET10を介して移動できる。このため、
図1の出力信号32cとしては正弦波となる。キャパシタC1により高周波信号は減衰するため、出力信号32cの振幅は小さくなる。結果として、出力は正弦波であり、包絡線には成らない。
【0033】
図5(b)に示すように、FET10がAB級動作のとき、入力信号30の低い時間においてFET10がオフする。このため、
図2の回路110の出力信号34dは2V以上とはならない。しかし、FET10がオフしている時間が短いためA級動作と同様に、キャパシタC1の電荷がFET10を介してグランドに流れる時間が長くなる。これにより、A級動作と同様に、出力信号32dの振幅は小さくなる。結果として包絡線の振幅が小さくなる。
【0034】
以上のように、FET10のゲートにFET10がB級動作するようなバイアス電圧が印加されることが好ましい。
【0035】
入力信号30が入力しない場合にFET10に電流I2が流れないためには、FET10はC級動作でもよい。これにより、出力信号の振幅を大きくできる。
【実施例2】
【0036】
[実施例2の回路の説明]
図6は、実施例2に係る包絡線検波回路の回路図である。
図6に示すように、包絡線検波回路102は、バラン20、回路22および24を主に備えている。バラン20は入力端子Inから入力した入力信号30を位相が互いに反転した差動信号である入力信号30aおよび30bに変換する。回路22および24は各々実施例1の包絡線検波回路102である。時定数回路52aは回路22の抵抗R1とキャパシタC1で構成され、時定数回路52bは回路24の抵抗R1とキャパシタC1で構成されている。回路22および24のFET10のドレインはノードN3で結合し、回路22および24のキャパシタC3は共有されている。回路22および24の電源14は共有されている。その他の回路22および24の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0037】
バラン20が出力する差動信号のうち一方の入力信号30aは回路22の整合回路12を介しFET10のゲートに入力する。バラン20が出力する差動信号のうち他方の入力信号30bは回路24の整合回路12を介しFET10のゲートに入力する。回路22および回路24のFET10のドレインはノードN3に共通に接続される。ノードN3と出力端子Outとの間にキャパシタC3が接続されている。ノードN3で結合した高周波信号はキャパシタC3を介し出力端子Outから出力信号32として出力される。回路22および24の抵抗R1に共通に電源14が接続されている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0038】
[実施例2の動作の説明]
実施例2に係る包絡線検波回路の動作を説明するため、比較例2に係る回路の動作について説明する。
図7は、比較例2の回路を示す図である。
図7に示すように、回路112は回路26および27を備えている。回路26および27内のドレインはキャパシタC3を介しそれぞれ出力端子Out1およびOut2に接続されている。出力端子Out1およびOut2からそれぞれ出力信号36aおよび36bが出力する。電源14およびキャパシタC1は接続されていない。ドレインにはチョークコイル等を介しドレインバイアス電圧Vdが印加されている。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。
【0039】
図8(a)および
図8(b)は、比較例2における時間に対する入力信号および出力信号を示す模式図である。
図8(a)に示すように、回路26および27に入力する入力信号30aおよび30bの位相差は約180°であり、振幅はほぼ同じである。出力信号36aおよび36bは、
図3(b)と同様に、入力信号30aおよび30bが0V以下のとき、出力信号36aおよび36bはほぼVdで一定となる。入力信号30aおよび30bが0V以上のとき、出力信号36aおよび36bはそれぞれ入力信号30aおよび30bが反転増幅された信号となる。
【0040】
図9は、実施例2の変形例に係る包絡線検波回路を示す図である。
図9に示すように、回路114は回路28および29を備えている。回路28および29内のノードN1に抵抗R1を介し電源14が接続されている。ノードN1はキャパシタC1を介し接地されている。出力端子Out1およびOut2からそれぞれ出力信号38aおよび38bが出力される。時定数回路54aは回路28の抵抗R1とキャパシタC1で構成され、定数回路54bは回路29の抵抗R1とキャパシタC1で構成されている。その他の構成は
図7の回路112と同じであり説明を省略する。
【0041】
図10は、実施例2の変形例における時間に対する出力信号を示す模式図である。
図10に示すように、抵抗R1およびキャパシタC1を設けることで、出力信号38aおよび38bとしてそれぞれ回路112の出力信号36aおよび36bの包絡線が出力される。
【0042】
図11は、実施例2における時間に対する出力信号を示す模式図である。
図11に示すように、ノードN3において、回路114の出力信号38aおよび38bが合成され、出力信号32が出力される。出力信号38aと38bとが合成されるため、出力信号32はより包絡線に近い信号となる。
【0043】
実施例2によれば、バラン20は、入力端子Inに入力した高周波信号を差動信号である入力信号30aおよび30bに変換する。回路22は、実施例1と同様に、FET10(第1トランジスタ)、抵抗R1(第1抵抗)およびキャパシタC1(第1キャパシタ)を有する。回路22の抵抗R1およびキャパシタC1は時定数回路52a(第1時定数回路)を構成する。回路24は、実施例1と同様に、FET10(第2トランジスタ)、抵抗R1(第2抵抗)およびキャパシタC1(第2キャパシタ)を有する。回路24の抵抗R1およびキャパシタC1は時定数回路52b(第2時定数回路)を構成する。差動信号の一方の入力信号30bは回路24に入力し、他方の入力信号30aは回路22に入力する。
【0044】
これにより、出力端子Outに出力される出力信号32は実施例1より包絡線に近い信号となる。実施例1と同様に、回路22および24内のFET10はB級動作またはC級動作することが好ましく、B級動作することがより好ましい。回路22および24内の抵抗R1とキャパシタC1とで構成される時定数回路52aおよび52bの時定数は入力信号30の周期より長いことが好ましい。
【0045】
実施例1および2において、トランジスタとしてFETを例に説明したが、トラジスタはバイポーラトランジスタでもよい。この場合、第1端子、第2端子および制御端子は、それぞれエミッタ、コレクタおよびベースとなる。
【0046】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。